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平成17年(ワ)第1309号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成19年1月18日
判決
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,5199万0700円及びこれに対する平成10年1
月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事実関係
本件は,被告の設置管理する病院において右足親指陥入爪の切除の手術を受
けた原告が,担当医師が手術に関する説明義務を怠り,適応のない術式の手術
を行った上,手術中に神経を損傷し,かつ,手術後も原告から疼痛等の症状の
訴えを受けていたにもかかわらず適切な治療を怠ったため,原告が反射性交感
神経性ジストロフィー及び挫骨神経痛を患うようになったなどと主張して,被
告に対し,債務不履行責任又は不法行為責任(使用者責任)に基づき,休業損
害,逸失利益,慰謝料等の賠償を求めている医療事故の事案である。
1前提事実
次の事実は,当事者間に争いがないか,又は括弧内摘示の証拠及び弁論の全
趣旨により認めることができる。
(1)原告(昭和16年5月○日生)は,平成10年1月12日,右足親指の陥
入爪(以下「本件陥入爪」という。)を主訴として,被告の設置管理するR
病院(以下「被告病院」という。)の外科を受診した(なお,以下,特に病
院名の明記のない限り,被告病院における診療経過である。)。
なお,原告は,平成3年ころから,別の症状を訴えて内科等に通院してい
た。
(2)原告は,平成10年1月14日,外科のA医師の執刀で,本件陥入爪の切
除術(以下「本件手術」という。)を受けた。
(3)原告は,平成10年1月15日,本件手術創部の疼痛等を訴えて,外科を
受診し,以後も,外科に通院した。
(4)原告は,平成14年7月12日,被告病院の紹介により,B大学病院(以
下「B大病院」という。)のペインクリニック科(麻酔科)を受診し,C医
師の診察を受けた。
C医師は,原告の診察後,被告病院に対し,「右足親指痛についてはCR
PSが疑われ,右大腿後面から足底にかけての疼痛は坐骨神経痛(L5/S
1のヘルニアによる)が最も疑われる。」旨の所見を報告した。
(5)なお,原告は,平成11年4月15日,被告との間で,冒頭に「本件陥入
爪手術に関し,下記のとおり示談が成立しましたので,今後いかなる事情が
発生いたしましても,双方とも異議の申し立てをしないことを確約いたしま
す。」という記載があり,次のような内容の記載のある示談書(以下「本件
示談書」といい,その内容をなす示談を「本件示談」という。)を交わし,
そのころ,被告から,下記エ(ア)の示談金30万円の支払を受けた。(甲C
1)
ア手術施行日
平成10年1月14日
イ手術場所
a市b町丁目番地被告病院外来手術室ⅰⅱ
ウ手術の状況と結果
平成10年1月14日,伝達麻酔にて陥入爪に対する手術を施行したが,
手術内容の説明が不十分であったこと及び爪母の切除が不完全であったこ

エ示談の内容
(ア)被告は,原告に対し,示談金として30万円を支払う。
(イ)原告は,被告に対し,上記に関する一切の請求を放棄する。
2前提となる医学的知見
証拠(甲B1の2,B5ないしB7,B9,B10,B11,乙B1,B2,
B4,B8)によれば,次の事実が認められる。
(1)反射性交感神経性ジストロフィー(ReflexSympatheti
cDystrophy。以下「RSD」という。なお,1994年国際疼
痛学会の慢性疼痛分類においては,RSD及びこれに類似する病態のカウザ
ルギーを複合性局所疼痛症候群として統合し,RSDは末梢神経損傷を伴わ
ない「CRPS(タイプ1)」,カウザルギーは末梢神経損傷を伴う「CR
PS(タイプ2)」として分類することが提唱されている。)
ア定義
RSDは,「神経損傷を伴わない四肢の外傷後にその程度に関係なく生
じる,疼痛を主症状とした難治性の疾患」,「きっかけとなった侵害的な
出来事の後に見られる症候群で,単一の末梢神経分布に限局せず,明らか
にきっかけとなった出来事と不釣り合いな強い症状を示す症候群」,「末
梢神経損傷後,又は神経損傷とは無関係に発症し,四肢の耐え難い異常な
疼痛や刺激に対する過敏状態を主症状とし,比較的限局性の自律神経症状
を伴う症候群」等と定義されている。
イ症状
RSDの三主徴として,感覚異常(自発痛,異痛症,痛覚過敏等),自
律神経障害及び運動障害があげられており,次のとおり様々な自覚的・他
覚的所見が同時に現れ,消長がある。また,その発現が原因となった障害
部位に限局することなく,その遠位側,次いで近位側へ(広域に)拡大す
る。
(ア)自発痛
RSD最大の特徴で,原因となった障害の程度とは不釣り合いに強い
自発痛が生じる。この疼痛は,障害の直後又は通常1か月程度で生じる
が,数か月してから生じることもある。当初は障害された場所に限局さ
れているが,治療されずに放置されると,次第に疼痛の範囲が広がり,
最後には罹患肢全体の疼痛になる。
(イ)異痛症(アロディニア)
痛覚刺激でない刺激が疼痛を惹起させる現象である。
(ウ)皮膚変化
皮膚には,自律神経障害,すなわち,血管・発汗運動神経障害が出現
し,深部組織を含めて異栄養症(ジストロフィー)に陥る。具体的には,
障害部位に(びまん性)浮腫(他覚所見として重要である。)が現れ,
漸次遠位側,次いで近位側に広がる。浮腫は,初め軟らかく,のちに硬
くなる。皮膚色は,初め赤みを帯び,経時的に蒼白となり,また,長く
放置されると萎縮する。その他,皮膚温の異常(当初は発汗過多に伴っ
て低下していることが多いが,赤みを帯びている部分は上昇する。),
発汗異常(早期は発汗過多に傾くが,急性期を過ぎるとやがて発汗過小
に傾く。)等もある。
なお,これらの症状の程度は,疼痛の強さとは無関係である。
(エ)運動障害
筋力低下,腱反射亢進,偽性麻痺等
ウ診断基準
(ア)RSDの診断基準については,医学文献・雑誌により,
a臨床雑誌「整形外科」2003年7月号(乙B1)
(a)有害な出来事,あるいは不動の原因があること
(b)原因に比べて不釣り合いに強い持続痛,あるいは異痛症,痛覚
過敏があること
(c)疼痛のある部位に浮腫,皮膚血流の変化あるいは発汗異常があ
る期間存在したこと
(d)痛痛や機能異常の程度を説明するに足りる状況が他にないこと
b同上
(a)次の症状・徴候の4つ又は5つが認められること
①説明できないびまん性疼痛があること
②腱側同一部位に比べて皮膚の色調が異なること
③びまん性の浮腫
④腱側同一部位に比べて皮膚の温度差がある
⑤関節可動域の制限
(b)患肢の使用によって,上記の症状・徴候が発現あるいは増強す
ること
(c)発端となった創傷あるいは手術の部位より広範かつ遠位部をも
含めて,上記の症状・徴候が存在すること
c「ペインクリニシャンのためのキーワード100」(乙B2)
(a)きっかけとなる侵害的な出来事又は運動制限の原因が存在する
こと
(b)上記出来事と不釣り合いに強く,持続する疼痛,アロディニア
又は痛覚過敏があること
(c)浮腫,皮膚血流量の変化又は異常発汗が疼痛部位に見られるこ

(d)疼痛や運動機能異常の程度が他の状況では説明できないこと
d「神経内科」54巻4号(乙B4)
(a)外傷などの侵害刺激やギプス等の不動の時期があったこと
(b)原因となる刺激から判断して不釣り合いに強い持続痛,異痛症
又は痛覚過敏があること
(c)病期のいずれかの時期において,疼痛部位に浮腫,皮膚血流変
化又は発汗異常があること
(d)これらの症状が他の理由では説明できないこと
等の基準が報告ないし提唱され,また,補助診断として,レントゲン検
査,骨シンチグラフ検査等の画像診断や,交感神経ブロックの効果等が
考慮されることもあるが,その病因がいまだ十分に解明されていないこ
とも相俟って,統一的な診断基準は確立しておらず,また,疼痛等の原
因となる他の病態を除くという消去法的な除外診断を求める基準もあり,
その確定診断ないし類似の病態との鑑別や,発症時期の特定は困難を伴
うことが多い。
(イ)B大病院においては,平成14年7月当時,RSDの診断に関する
補助的基準として,「ギボンズのRSDスコア」と呼ばれる診断基準を
採用していた。
上記基準は,①異痛症,痛覚過敏,②灼熱痛,③浮腫,④皮膚色調(
蒼白・光沢),体毛の変化(脱毛),⑤発汗の変化(過多・減少),⑥
温度の変化(低下・上昇),⑦X−Pの変化(骨脱灰像・ズディック骨
萎縮),⑧血管運動の定量的評価(レイノー現象・冷感・紅潮),⑨骨
シンチ上RSDの所見骨(集積像),及び⑩交感神経ブロックの有効性
という各指標項目について,それぞれ,陽性を1点,偽陽性を0.5点,
陰性を零点として合計点を計算し,合計点が3点以下であればRSDで
はない,3.5点以上4.5点以下であればRSDの可能性がある,5
点以上であればRSDの可能性が高いと判断するものである。
(ウ)なお,RSDは,伝統的には,
a第1期(急性期。発症から3∼6か月)
疼痛,腫脹が目立ち,発汗過多もよく見られる。関節の可動域制限
は,疼痛や腫脹によるものであり,いまだ可逆的である。
b第2期(ジストロフィー期。亜急性期。その後の3∼6か月)
疼痛が最高に達し,腫脹が硬さを増し,関節の可動域制限は完成さ
れたものになり,拘縮に至る。発汗過多から過小に傾き,皮膚は乾燥
気味になり,萎縮も見られる。当初赤色調だった皮膚色は白色調に変
化する。皮膚温は相変わらず冷たい。
c第3期(萎縮期。慢性期。発症後6∼12か月以降)
疼痛は基本的に耐え難いまま残る。皮膚の萎縮が進み,蒼白色を呈
するようになり,発汗も減少したままである。
の三期に分けられ,非可逆的に進行するとされていた。しかし,最近は,
これと異なる研究結果が多数発表されており,上記のようなRSDの伝
統的な病期分類は,治療方針等の検討上,全く意味がないと指摘する見
解すらある。
エ治療方法等
(ア)RSDは,その病因がいまだ十分に解明されていないため,治療法
はいまだ確立されておらず,決定的な治療方法はなく,実際の治療は困
難を伴うことも多い。
(イ)一般には,個々の症例に応じて,理学療法(リハビリ,温熱療法等
),薬物療法,交感神経ブロック療法(ただし,ブロック療法に対する
効果は一様ではない。)を適宜組み合わせて行われているのが現状であ
る。早期に治療を開始すれば,よく反応して効果も高く,予後もよいと
されており,数多くの医学文献等で早期治療の重要性が謳われている。
(2)陥入爪
ア定義
陥入爪は,爪甲が内方に湾曲してめり込んで発赤し,皮膚に疼痛を生じ
る状態をいう。通常,側面に炎症を伴い,爪周炎を合併する。また,しば
しば,二次感染を背景に肉芽形成を生じる。
イ治療方法等
治療方法には,保存療法(抗生物質含有のステロイド軟膏を外用)と手
術療法がある。後者の手術療法には,通常,鬼塚法と呼ばれる術式と児島
法と呼ばれる術式がある。鬼塚法は,病変部の爪甲側縁,爪母,爪床,側
爪郭を一塊として切除する方法で,児島法に比して,手技も容易で一般的
であり,また,肉芽形成の高度な場合は,完全に肉芽腫を切除するために
も,側爪郭,爪床を末節骨にまで切り込むことから,児島法よりも確実で
あるとされている。
なお,いずれの術式も,爪母切除の際に末節骨の骨膜にまで切除が加わ
るため,術後に疼痛を伴うことが多い。
3争点
(1)過誤その1−本件手術の適応の有無
(2)過誤その2−本件手術の手技上の過誤の有無(A医師が本件手術の際に原
告の右足親指の神経を損傷したか。)
(3)過誤その3−本件手術に関する説明義務の懈怠の有無
(4)原告は,本件手術後にRSDを発症したか。
(5)過誤その4−被告病院の医師は,原告が本件手術後にRSDを発症したこ
とを早期に診断し,ペインクリニック等の適切な治療を受けさせることを怠
ったか。
(6)原告の主張する挫骨神経痛が上記(5)の過誤に起因するものか。
(7)上記各過誤と相当因果関係のある損害の内容及び金額
(8)本件示談の効力
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(本件手術の適応)について
(原告)
ア本件手術の内容は,原告の右足親指の爪の2か所に穴をあけ,針で親指
皮膚の裏側まで貫通し,それぞれ両側から糸を廻して結ぶというものであ
った。
イしかし,本件陥入爪は,右足親指の爪の右端が多少食い込んだ程度のも
のであり,この食い込んだ爪を切除すれば十分であって,原告もこの術式
を希望していたものであり,上記アのような術式の本件手術を行う必要は
なかった。
(被告)
ア本件陥入爪は,両側の爪縁が爪溝に食い込み,また,外側側爪部には感
染・膿を伴った肉芽組織が多少認められ,陥入爪による爪周囲炎と診断さ
れた。
爪周囲炎は,日常的にみられる病変であるが,爪周囲炎から深部腱鞘な
どへ炎症が波及し,あるいは,細菌感染が周囲組織及び血行性に全身に広
がり,重度感染症や敗血症に至る危険性があり,また,爪が爪根で再生さ
れ,繰り返すことが多い疾患であるため,A医師は,対症療法だけではな
く,原因たる本件陥入爪を切除する必要があると判断した。
イなお,本件手術は,爪縁の食い込んだ部分を皮膚とともに切除し,爪根
部から基節骨までの間約2ないし3ミリメートル程度の軟部組織を掻爬し,
皮膚縁と爪甲を縫合する鬼塚法の術式で行われた。これは,当時及び現在
において,陥入爪の手術方法として一般的に採られている手術方法である。
ウしたがって,本件陥入爪は本件手術の適応があった。
(2)争点(2)(本件手術の手技上の過誤)について
(原告)
A医師は,本件手術の際,原告の右足親指の神経を損傷した。
(被告)
ア本件手術は,上記(1)のとおり,爪縁の食い込んだ部分を皮膚とともに
切除し,爪根部から基節骨までの間約2ないし3ミリメートル程度の軟部
組織を掻爬し,皮膚縁と爪甲を縫合する鬼塚法の術式で行われた。これは,
当時及び現在において,陥入爪の治療(手術)方法として一般的に採られ
ている手術方法であり,本件手術は,術中に異常等もなく,通常のとおり
に終了した。
イ本件手術の術野には,大きな神経が走行していることはなく,本件手術
により大きな神経を損傷するということは,医学的にあり得ない。
ウなお,本件手術は,末節骨の骨膜にまで切除が及ぶため,術後に疼痛を
生じることが多いが,そのことは神経損傷の発生を意味するものではない。
本件手術後の原告の疼痛の訴えも,本件手術後には通常見られる程度のも
のであり,また,時間の経過とともに徐々に軽減しており,術後1か月間
は異常の訴えはなかった。
エしたがって,A医師が本件手術の際に原告の右足親指の神経を損傷した
ことはない。
(3)争点(3)(説明義務の懈怠)について
(原告)
A医師は,本件手術にあたり,原告に対し,手術の内容,方法,危険性に
ついての説明を全くしなかった。原告は,その説明を十分に受けていれば,
本件手術を受けなかった。
(被告)
アA医師は,原告に対し,本件陥入爪は治療が必要であること,根治的な
治療方法として,食い込んでいる爪縁を切除する方法があること(A医師
が説明した術式は,本件当時一般的に採られていた鬼塚法であり,具体的
には,①指の付け根にゴムを巻き駆血(止血),伝達麻酔のため局所麻酔
を指の付け根に注射する,②爪縁の爪溝にくい込んだ部分を皮膚とともに
切除し,できる限り爪根を切除する,③皮膚縁と爪甲を縫合する,という
ものである。),本件陥入爪は両側の爪縁がくい込んでいるため両側を切
除した方がよいこと,将来再発することもあり得ることについて,カルテ
に図示しながら説明し,原告もこれを承諾したため,本件手術を実施する
ことにした。
イしたがって,A医師は,本件手術に関して,原告に対する説明義務を尽
くしている。
(4)争点(4)(原告は本件手術後にRSDを発症したか。)について
(原告)
ア原告は,本件手術直後から右足親指に激しい疼痛が発生し,2ないし3
か月が経過してもその疼痛が一向に治まらず,かえって増強し,且つ,そ
の範囲も右下肢全体に拡大して,痺れも発生した。
RSDを引き起こす外傷は,必ずしも重症でなくてもよく,指の打撲,
切創,骨折等も引き金となりうるとされており,また,RSDは,外傷直
後に出現する場合と,ある程度の時間が経過してから出現する場合がある。
イ原告は,平成14年7月12日,B大病院のペインクリニック科でC医
師の診察を受け,右下肢RSDと診断された。
なお,内科のD医師は,平成14年1月16日,整形外科のE医師宛の
依頼書において,「平成10年1月14日に当院外科にて右Ⅰ趾の陥入爪
のopeを受けたのですが,その回復は不良で右Ⅰ趾はずっと痛みとしび
れが続いた状態で,それをかばって右下肢全体の痛みが出現,持続してい
るという状態です」と述べたことに対し,E医師は,「現在の症状はカウ
ザルギー様のものと考えられ,疼痛のコントロールをしていくしかない」
と回答した。これを受け,D医師及び外科のF医師(当時の主治医。)ら
が協議して,慢性疼痛に対する治療として,原告をB大病院のペインクリ
ニック科へ紹介することとし,原告は,F医師作成の診療情報提供書(傷
病名は右母趾陥入爪術後,右下肢慢性疼痛カウザルギー疑い)を持参して,
B大病院のペインクリニック科のC医師の診察を受けたところ,C医師は,
主として強い異痛症から,RSDと診断した。その後,F医師及びG医師
は,平成15年6月1日,原因となった疾病・外傷名として「右下肢慢性
疼痛,右下肢反射性交感神経性ジストロフィー」,参考となる経過・現症
として「平成10年1月14日,右母趾陥入爪手術,術後,右母趾痛およ
びシビレ感出現,その後右下肢全体の疼痛出現」という内容の身体障害者
診断書・意見書を作成し,また,平成17年1月28日,上記身体障害者
診断書について,愛知県Hセンターから,「右下肢反射性交感神経性ジス
トロフィーがメインの疾病名でしょうか」という照会を受けたことに対し,
「そうです」と回答した。
ウこれらの臨床症状や診断経過等に照らせば,原告は,本件手術後にRS
Dを発症したというべきであり,この事実は,被告病院の医師も認めてい
る。
(被告)
ア原告が本件手術後にRSDを発症したことについては,医学的な根拠を
もって診断されているものではない。
イC医師は,ペインクリニック科の治療目的から,原告の疼痛等の訴えを
そのまま基礎にして(ただし,原告は本件手術直後から強い疼痛が続いて
いると訴えており,その訴え自体,実際の臨床経過と異なっている。),
原告の病態はRSDが最も近いと診断したものであり,客観的な検査等に
基づきRSDと判断したものではない。
また,C医師は,上記診断の際,「ギボンズのRSDスコア」と呼ばれ
るRSDの判断基準を補助とし,その具体的な適用として,異痛症が陽性
で1点,ビリビリした疼痛を灼熱痛と捉えて陽性で1点,浮腫が偽陽性で
0.5点,交感神経ブロックが奏功したので1点(合計3.5点)と判断
しているが,異痛症や灼熱痛,交感神経ブロックの効果は原告の訴えが根
拠となっており,客観的な評価がなされているものではなく,浮腫につい
ても診療記録には一切記載されていないことに加え,皮膚の異常の有無等
についても診療記録には記載がなく,サーモグラフィーやレントゲン撮影
等の検査は行われていない。もともと,原告は,本件手術以前から,様々
な訴えが多く,その訴えにも修飾が多く,虚偽の事実も含まれているほか,
自律神経失調症,パニック発作等の心因的疾患も複数認められており,原
告の訴える症状をそのまま病態の診断の根拠とすることはできないという
べきである。
(5)争点(5)(RSDの早期診断義務等の懈怠)について
(原告)
アRSDは,疼痛が末梢から中枢に移動し,交感神経を刺激してさらに疼
痛を増幅させ,次第に頑固で治癒困難な疼痛となるため,早期の治療が重
要である。また,RSDは,神経損傷を伴う場合とこれを伴わない場合が
あり,また,外傷直後に出現する場合と,ある程度の時間が経過してから
出現する場合があるので,疑わしい場合には,RSDを常に念頭に置き,
早期に発見,治療することが必要であるとされており,このような知見は,
当時,すでに一般的な医学的知見であり,広く行われていた(甲B15)。
したがって,被告病院の医師は,本件手術から2,3か月が経過しても,
疼痛が消えず,さらに増強し,その範囲も広がっていく状態にあれば,R
SDの可能性を疑い,自ら又はこのような疼痛を専門的に取り扱うペイン
クリニック科へ紹介して,神経ブロック療法等の治療を実施すべき注意義
務があった(なお,ペインクリニックは,日本では,昭和37年に東京大
学に麻酔科の外来として発足したのが最初であり,以来,各大学病院に続
々とペインクリニック部門が置かれ,現在では,ほとんどの大学,官公,
市立の大きな病院で麻酔科のある病院に設置されており(甲B12),ま
た,B大病院のペインクリニックは,昭和41年11月には設置され(甲
B13),平成10年1月29日から原告の主治医となった外科のI医師
の出身大学であるJ大学病院においても,1965年には麻酔学講座が開
設され,1987年にはペインクリニックが施行されている(甲B14)。
)。
イしかるに,I医師は,本件手術後1か月以上経過して,本件手術創部に
異常がないのに強い疼痛が生じてくることは,医学的に考えにくく,次第
に治まると判断し,経過観察することとし,その後も,強い疼痛と痺れ,
さらに疼痛が右下肢全体に拡大した旨,RSDを疑わせる症状を訴える原
告に対し,これらが心因的なものであると安易に判断し,真摯に疼痛の原
因を追及せず,向精神薬を主とした対症療法に行うにとどまり,I医師の
後医の主治医も,B大病院のペインクリニック科へ紹介するまで,同様の
治療を続けた。
そのため,原告は,被告病院に対する不信感を募らせ,他の病院で診察
を受けざるをえなくなり,その疼痛を一層増強させたのみならず,疼痛の
あまり,右足を庇って不自然な姿勢で歩行を続けたため,右挫骨神経痛ま
で発症する結果となった。
(被告)
ア原告は,本件手術後,疼痛を訴えているが,本件手術は,通常,術後の
疼痛を伴うものであり,平成10年2月5日までは,疼痛が徐々に軽減し
ていた。しかし,原告は,同年2月26日,初めて強い疼痛等を訴えた。
原告は,その際,整形外科で,腱反射・筋力テスト等を受けたが,いずれ
も正常であり,他方,腰椎レントゲン検査で軽度の変形性脊椎症を認めた
ため,挫骨神経痛と診断された。原告は,同年3月12日,「もう爪は帰
ってこない。」,「頼んでもいないところまで手術された。」などと訴え,
不定愁訴と強い疼痛を訴えたが,本件手術創部には異常がなく,疼痛等の
原因となる他覚的所見もなく,それまで本件手術創部の快復及び疼痛の軽
減が見られていたことから,医学的に了解可能な訴えでなく,一方で,原
告は,当時,内科を受診し,娘などの家庭の悩みを訴え,向精神薬等を処
方されていたため,元来の精神状態から疼痛の症状が過剰に増幅し,医学
的に結びつかないことや事実と異なることを結びつけて,疼痛を訴えてい
ると判断された。
イ被告病院は,原告からのこのような訴えに対し,整形外科において精査
するとともに,内科の受診歴を確認し,心因的な要因については,内科及
び外科において時間をかけて原告の訴えを聞き,家族にも治療に加わって
もらうため,夫に一度話をすることを指導した。また,整形外科において,
疼痛の緩和等のため,原告からの希望を受け,リハビリ治療及び外用剤に
よる治療を継続的に実施し,経過を観察していた。
しかるに,原告は,平成10年3月12日以降,同年5月21日まで外
科を受診せず,また,同年4月以降,整形外科を受診することも少なくな
り,同年5月以降は,被告病院以外の病院に通院して,被告病院の医師の
指導に従わず,被告病院による治療に拒否的,非協力的になったため,被
告病院の医師としては,疼痛に対する積極的な治療や転院指導を十分にで
きる状態にはなかった(なお,原告は,これまでに,複数の病院に通院し
ているが,現在通院中のC医師を含め,どの病院においても,疼痛の原因
について説明を受けたことはなく,説明を聞く気もなく,治療を受けても
効果がなかった旨供述しており,原告は,他の病院においても担当医師の
指導に十分従わなかったことがうかがわれる。)。
ウこのような診療経過に鑑みれば,被告病院の医師が,原告に対して神経
ブロック療法等の治療を行わず,原告を他院へ転院させなかったことにつ
き,医師としての注意義務に違反する点はない。
エなお,原告は,本件手術後,外科,整形外科及び内科を受診し,経過観
察を受けていたが,原告の訴える疼痛の原因となる他覚的所見はなく,ま
た,原告の訴える疼痛は本件手術から1か月以上経過後の平成10年2月
26日に初めて生じており,多くの場合原因となる契機の直後から疼痛が
発生して持続するという,RSDの一般的な経過とは異なる上,RSDは,
体質的・精神的な要因が影響しているとされているところ,原告には自律
神経失調症,パニック発作等の複数の心因的疾患が存したものである。そ
もそも,RSDは,発症原因が明らかではなく,その発生を予見すること
ができないため,予見可能性及び回避可能性がない。
これらの事情によれば,仮に原告が本件手術後にRSDを発症したとし
ても,本件手術及びその後の被告病院における診療経過との間には,相当
因果関係がないというべきである。
(6)争点(6)(挫骨神経痛の原因)
(原告)
上記(5)のとおり
(被告)
ア原告は,平成10年3月12日に腰椎レントゲン検査を受け,加齢によ
るものと考えられる軽度の変形性脊椎症の所見が見られ,この変形性脊椎
症に伴う右挫骨神経痛と診断され,リハビリと外用剤による治療を受けて
いた。
原告は,平成10年11月26日,K病院を受診して,右挫骨神経痛を
訴え,同年12月11日に腰椎MRI検査を受け,L5/S1間の椎間板
の突出が認められたが,これは,上記変形性脊椎症の所見にも符合するも
のである。原告は,その後も,K病院から紹介を受けたO病院で,平成1
1年9月27日に腰椎MRI検査を受け,L5/S1の椎間板ヘルニアと
診断され,また,L整形外科クリニックから紹介を受けたM総合病院で,
平成14年1月21日にMRI検査を受け,L5/S1の椎間板変性及び
膨隆,L3/L4の椎間板変性と診断されているが,これらの所見も上記
所見に符合し,加齢により進行したものである。
そもそも,平成10年3月当時は,本件手術からわずか2か月後,原告
が強い疼痛を訴え始めてから約1か月後のことであり,原告が主張するよ
うに,本件手術後の疼痛により足をかばっていたため生じたものであると
は,考えられない。
イしたがって,原告の挫骨神経痛は,平成10年当時から生じていた加齢
による変形性脊椎症等によるものであり,本件手術及びその後の診療経過
との間には,相当因果関係がない。
(7)争点(7)(原告の損害)について
(原告)
ア逸失利益2396万1700円
原告は,RSD及び挫骨神経痛という重篤な障害を負い,右下肢親指の
神経損傷に伴う疼痛,痺れ等の後遺障害が生じたものであり,後遺障害別
等級表の第5級に該当する(労働能力喪失率79パーセント)。
原告は,平成12年8月,L整形外科クリニックで右足親指の陥入爪の
再手術を受けた際,担当医師から「右足親指の神経はもうダメだ。」と指
摘されたため,症状固定の時期を同月(原告59歳)とし,平成12年産
業計・企業規模計・女子労働者の平均賃金年収353万1000円を基礎
として,就労可能年数11年に相当する新ホフマン係数8.590により
計算する(100円未満切捨)。
(計算式3,531,000円×8.590×0.79=23,961,719円)
イ後遺障害慰謝料1350万円
ウ通院慰謝料200万円
原告は,本件手術後,疼痛,痺れ等の治療のために,別紙通院明細表の
とおり,被告病院及びその他の医療機関に通院した。
エ休業損害868万9000円
原告は,本件手術後,通常の家事労働に全く従事できなくなった。原告
は,本件手術当時,57歳であり,症状固定までの930日につき,女子
労働者の平均賃金年収341万0200円を基礎として計算する(100
円未満切捨)。
(計算式3,410,200円×930/365=8,689,002円)
オ通院交通費
B大病院分24万円(1日2000円高速代×120日)
N病院分4万円(1日1万円×4日)
カ雑費
補助用具購入費合計135万円
ベッド7万円
杖1万円
リキカ・サポーター等3万円
布団10万円
キ治療費135万円
ク弁護士費用200万円
(被告)
争う。
(8)争点(8)(本件示談の効力)について
(原告)
ア本件示談は,当時,原告が,RSDという重大な疾患に罹患しているこ
とを認識せず,将来疼痛や痺れの症状がよくなるという前提で合意したも
のである。このことは,30万円という本件示談金の額からも窺われる。
イしたがって,本件示談は,原告の錯誤により無効であるか,又は原告に
とって当時予想外であった本訴請求に係る損害にはその効力が及ばないも
のである。
(被告)
ア被告は,平成11年3月ころ,原告より相談を受けた市会議員から,原
告と示談するよう勧められた。被告としては,原告の訴えを認めるもので
はなかったが,上記市会議員から示談による解決を繰り返し勧められたこ
と,原告の訴えには心因的な要因があること,合併症であるとはいえ本件
手術後に陥入爪の再発があったこと等の事情から,原告との間の紛争を示
談により解決することを決め,同年4月15日,原告との間で,上記陥入
爪の再発等を含めた本件の紛争全てについて,被告が原告に対して本件示
談金を支払うことで解決することとし,本件示談をした。
イ原告は,本件示談の際,疼痛がいずれ良くなるとは思っておらず,将来
より一層悪くなる可能性があるが,被告に認めてもらったため30万円で
解決しようと考えた旨,自ら供述しているのであるから,本件示談を無効
とし,あるいは本訴請求に係る損害にその効力が及ばないと解すべき理由
はない。
第3当裁判所の判断
1本件の診療経過等について
(1)上記第2の1の前提事実,並びに証拠(甲A2,A3,B3,乙A2,A
3,A9の1,A15,A20,A22の1,3,A30ないしA32,C
医師,A医師及びI医師の各証言,原告本人の供述。ただし,甲A3及び原
告本人の供述については,当裁判所の認定に反する部分を除く。)及び弁論
の全趣旨によれば,本件の診療経過等について,別紙診療経過一覧表の「裁
判所の認定」欄に記載の事実を認めることができる(同欄に記載のない日付
の診療経過は,「被告の主張」欄に記載のとおりである。)。
(2)なお,原告は,別紙診療経過一覧表の「原告の主張」欄に記載のとおり,
本件手術直後から平成10年2月26日までの期間にも,原告がA医師及び
I医師に対して診察の度に本件手術創部(右足親指)の激しい疼痛を訴えて
いた旨主張し,原告本人の供述及び陳述(甲A3)中には上記主張に沿う部
分がある。
しかしながら,証拠(乙A2)によれば,診療記録上,上記期間中の診察
の内容について,平成10年1月15日に「painつよい」,同月19日
に「pain」,同年2月5日に「painまだ少々」,同月26日に「¯
pain(+)」「歩くのもおっくう」という記載のあることが認められ,
この事実によれば,原告からの本件手術創部の疼痛の訴えは,同年1月15
日から同年2月26日までの期間中,当初強かったものの,その後減少し,
いったん治まる傾向を示していたことが認められる。平成10年2月26日
の原告からの疼痛の訴えについては,原告の主張するとおりに診療記録上記
載されていることに鑑みても,同日以前の原告からの疼痛の訴えについて,
A医師及びI医師がことさらに事実に反する記載をするとは考えられず,原
告の上記供述及び陳述は上記診療記録上の記載に反するものであって,たや
すく採用できず,本件証拠上,その他に原告の上記主張を裏付けるような的
確な証拠はない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
2争点(1)(適応の誤りの有無)について
(1)上記1に認定のとおり,①平成10年1月12日の受診時の,原告の右足
親指の爪は,両側の爪縁が爪溝に食い込む陥入爪になっており,且つ,外側
側爪部には感染・膿を伴った肉芽組織が認められ,陥入爪による爪周囲炎と
診断されたこと,②爪周囲炎は,深部腱鞘等に炎症が波及し,あるいは,細
菌感染が周囲組織及び血行性に全身に広がり,重度感染症や敗血症に至る危
険性がある病態であるため,A医師は,原因たる陥入爪を切除する必要があ
ると判断し,外科的治療として本件手術を実施したこと,③なお,本件手術
は,爪縁の食い込んだ部分を皮膚とともに切除し,爪根部から基節骨までの
間約2ないし3ミリメートル程度の軟部組織を掻爬し,皮膚縁と爪甲を縫合
するという,鬼塚法の術式で行われたが,この鬼塚法は,本件手術当時,陥
入爪の外科的治療方法として一般的に採用されていた術式であること,以上
の事実が認められる。
これらの事実によれば,本件陥入爪は本件手術の適応があったと認めるこ
とができ,被告病院の医師の判断にその適応を誤った過誤があると認めるこ
とはできない。
(2)したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。
3争点(2)(本件手術の手技上の過誤)について
(1)原告は,執刀医であるA医師が本件手術の際に原告の右足親指の神経を損
傷した旨主張する。
(2)しかしながら,上記1及び2に認定のとおり,本件手術は,当時,陥入爪
の外科的治療方法として一般的に採用されていた術式により行われ,術中に
異常等もなく終了したことが認められるのであり,本件証拠上,原告の上記
主張を認めるに足りる証拠はない。
なお,上記1に認定のとおり,本件手術日の翌日,原告は,外科を受診し
て本件手術創部の疼痛を訴えていることが認められるが,上記第2の2(2)
イの前提事実のとおり,本件手術は,術式上,爪母切除の際に末節骨の骨膜
にまで切除が及ぶため,術後に疼痛を伴うことが多いことに加え,上記1に
認定のとおり,その後原告からの上記疼痛の訴えがいったん軽減しているこ
とを併せ考慮すれば,原告からの上記疼痛の訴えをもって,本件手術の際に
原告の主張するような神経損傷が発生したと推認することはできない。
(3)したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。
4争点(3)(説明義務の懈怠)について
(1)原告は,被告病院の担当医師が,本件手術にあたり,原告に対し,手術の
内容,方法,危険性についての説明を全くしなかった旨主張する。
(2)しかしながら,上記1に認定のとおり,①A医師は,本件手術に先立ち,
原告に対し,本件陥入爪が治療を要するものであること,根治的な治療方法
としては,食い込んでいる爪縁を切除する方法があり,本件陥入爪は両側の
爪縁が食い込んでいるため,爪の両側を切除した方がよいこと,将来再発す
ることもあり得ること等について,カルテに適宜図示しながら説明したこと,
②原告は,A医師の上記説明を理解した上で,本件手術を受けることを承諾
したこと,③そのため,A医師は,本件手術を実施したこと,以上の事実が
認められ,これらの事実によれば,A医師は,原告に対し,本件手術の内容,
方法及び危険性について,一通りの説明をしたということができるから,被
告病院の担当医師に本件手術に関する説明義務を怠った過誤があると認める
ことはできない。
(3)なお,A医師は,原告に対し,本件手術に関する説明の際,RSDについ
ての説明はしていないが,上記第2の2(1)エの前提事実及びC医師の証言
によれば,RSDはその病因が十分に解明されておらず,過去にRSDの発
症歴がある等の特段の事情のない限り,外科的手術の実施にあたり,その発
症を具体的に予見することはできないことが認められることを考慮すれば,
本件手術に関する説明の際,A医師が原告に対してRSDについての説明を
しなかったことをもって,医師としての説明義務を怠った過誤があるという
ことはできないというべきである。
(4)したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。
5争点(4)(RSD発症の有無)について
(1)まず,上記第2の2(1)ウの前提事実,上記1に認定の事実及びC医師の
証言によれば,C医師は,平成14年7月12日の初診の際,原告の主訴の
内容,すなわち,本件手術以来疼痛が続いていること,上記当時も足がびり
びりと痛み,その疼痛が足全体に広がってきていること等の症状をそのまま
診断の基礎とし,その特徴から,原告の患う疼痛を強い異痛症と理解し,上
記訴えに係る発生機序,臨床症状から,原告の訴える症状を説明する病態と
してはRSDが最も近いと診断し,被告病院(F医師)宛の同日付報告書に
おいても,その所見として,右足親指の疼痛についてはCRPSが疑われる
旨報告したこと,C医師は,原告について,B大病院でRSDの補助的な診
断基準として採用されている「ギボンズのRSDスコア」の基準を適用し,
異痛症,灼熱痛及び交感神経ブロック有効がいずれも陽性で各1点,浮腫が
偽陽性で0.5点と判定し,その結果,合計3.5点となり,上記基準の適
用上もRSDの可能性があると判断したこと,以上の事実が認められる。
しかしながら,上記診断基準の適用に関して,C医師の証言によっても,
原告の訴える疼痛が灼熱痛にあたるかどうかは,灼熱痛という用語の解釈上,
上記判定と異なる判定の余地のあることが少なからず窺われる上(尋問調書
p26以下),浮腫について,C医師は,「腫れているというようなことで
」という表現で,原告に浮腫らしき症状が見られたという趣旨を供述してい
るにとどまり(それゆえ,C医師も,上記のとおり偽陽性と判定している。
),診療記録上も,どの部位にどのような態様の浮腫が見られたのか一切明
らかでなく,客観的な他覚所見として不明瞭であるといわざるを得ない(な
お,上記1に認定のとおり,I医師は,本件手術後,原告の外来診察の際に,
本件手術創部に異常が見られないことを幾度か確認しているので,その際,
本件手術創部には浮腫等の異常な他覚所見は見られなかったと推認すること
ができる。)。これらの事情に鑑みると,上記診断基準の適用に関するC医
師の上記判定の内容については,必ずしもそのままには採用し難い面がある。
また,C医師の上記診断は,原告の症状がRSDであることを確定的に診
断する内容ではなく,むしろ,C医師自身が,原告に対してサーモグラフィ
ーやXP等の検査を実施せず,その理由につき「RSDの治療を先に始めた
いという気持ちがありましたので,それらの検査をすることなく治療に入っ
たというのが現状です」と供述し,あるいは,「ある程度私たちとしては痛
みをくんで治療を開始するというところがあります」旨,「取りあえず訴え
られた痛みというものをそのまま受け止めて,それをできるだけ患者さんと
一緒に軽減させて」いく旨供述しているように,C医師は,ペインクリニッ
ク科における治療の方針・目的から,患者である原告の訴える疼痛等の症状
をそのまま診療の前提として,早期に治療を開始することを最優先にしたこ
とが認められるのであって(もっとも,このような治療方針は,証拠(甲B
5,10,11)によれば,医学文献・雑誌上,RSDの治療について,「
(RSDが)疑わしき場合は(RSDと)診断するくらいの気持ちが必要で
ある」,「疑わしきは罰するの態度でこの疾患に対応する必要がある」,「
CRPSが疑われる場合はなるべく早期にペインクリニックの専門医に受診
させた方がよい」等の見解の示されていることが認められることに照らして
も,不適切なものではない。),上記診断内容が,事後的に,他覚所見や各
種検査結果等の客観的な臨床症状又は所見によって裏付けられた形跡は窺わ
れない。
これらの事情に鑑みれば,C医師が原告の病態についてRSDが最も近い
又はRSDが疑われると診断している事実は,当裁判所が本件手術後に原告
がRSDを発症したかどうかを判断する上で決定的な積極的事情として考慮
することはできない。
(2)原告は,本件手術後に原告がRSDを発症したことの根拠として,①整形
外科のE医師が,内科のD医師からの照会に対し,平成14年1月17日付
で,原告の症状についてRSD様の疼痛である旨回答したこと,②外科のF
医師が,同年6月27日,原告をB大病院のペインクリニック科へ紹介する
際の同日付診療情報提供書において,原告の傷病名につき「右母趾陥入爪術
後,右下肢慢性疼痛(カウザルギー疑い)」と記載したこと,③外科のF医
師及びP医師が,平成15年6月1日付で,原告について,「原因となった
疾病・外傷名」として「右下肢慢性疼痛(Complexregiona
lpainsyndrome),右下肢反射性交感神経性ジストロフィ
ー」という内容の身体障害者診断書・意見書を作成したこと,④F医師及び
P医師が,平成17年1月7日付で,愛知県Hセンターから,身体障害者手
帳交付診断書の障害程度等級についての照会を受け,同月28日付で,「右
下肢反射性交感神経性ジストロフィーがメインの疾病でしょうか」という照
会事項につき「そうです」と回答したこと,以上の事情を主張する。
しかしながら,上記①の点については,証拠(乙A3p4)によれば,原
告がD医師に対し,右下肢の疼痛が持続し治まらない旨訴え,身体障害者の
認定を受けられないか相談し,D医師が原告をE医師に紹介したところ,E
医師は,疼痛に対する根本的な治療方法がなく,また,身体障害の認定が無
理であることを説明したことが認められ,上記回答も,E医師が整形外科的
な治療方法がないことを説明した一環にすぎず,確定的な診断ではないと考
えられる。また,上記②の点については,平成14年6月27日の診療記録
(乙A2p19)には,カウザルギーが疑われる旨の記載はなく,上記記載
がいかなる根拠又は診断基準に基づく判断であるかも明らかではない。した
がって,上記①及び②の各点は,後記(3)の認定説示に照らしても,本件手
術後に原告がRSDを発症したかどうかを判断する上でさほど重要な積極的
事情であるとはいいがたい。また,上記③及び④の各点についても,本件証
拠上,F医師又はP医師が,独自の判断で,原告が本件手術後にRSDを発
症したと診断したことは窺われず,上記1に認定のとおり,平成15年3月,
F医師が,C医師に疼痛の増強時の処置方法を照会し,C医師からその教示
を受けていること,F医師及びP医師が平成15年4月1日付で作成した身
体障害者診断書・意見書の「原因となった疾病・外傷名」欄には「右下肢慢
性疼痛,右挫骨神経痛」と記載されているにとどまり,カウザルギーやCR
PSに言及していないこと(乙A2p48),同年6月4日の診療記録には,
C医師に電話してCRPSの病名を使用してもかまわないとの了承を得た旨
の記載があること(乙A2p26)等にも鑑みれば,F医師及びP医師が疼
痛の治療等を専門領域とするペインクリニック科のC医師による診断内容を
尊重し,これを前提とした結果であることは推測に難くなく,原告の症状が
RSDであるかどうかを判断する上で独立に考慮すべき必要性に乏しいとい
うべきである。
(3)次に,上記第2の2(1)ウの前提事実のとおり,RSDに関しては,統一
的な診断基準はいまだ確立していないが,原告について,上記前提事実中の
各診断基準を適用すると,次のとおりであるということができる。
ア上記第2の2(1)ウ(ア)a,c及びdの各診断基準について
これらの診断基準は,いずれも,要旨,①原因となる契機(侵害的な障
害や刺激,運動制限)の存在,②その原因の内容・程度に比して不釣り合
いに強い持続痛,あるいは異痛症,感覚過敏の存在,③浮腫,皮膚血流量
の変化(皮膚色や皮膚温の異常等),発汗異常等の自律神経障害所見の存
在,④上記②及び③の症状が他の病態ないし理由では説明できないこと,
以上の要件を内容とするものであるということができる。
そして,上記1に認定の事実によれば,原告には,本件手術による侵襲
という原因となる契機があることから,上記①の要件を満たすということ
ができ,また,原告は,平成10年2月26日以降,上記侵襲の内容・程
度に比して不釣り合いに強いと考えられる疼痛を継続的に訴えていること,
C医師は,平成14年7月12日の初診時に,原告の主訴の内容から原告
には強い異痛症が認められるという診断を示していることから,これらの
訴えの内容及び診断に即すれば,上記②の要件を満たすということもでき
る。しかしながら反面,上記③の要件について,浮腫以外の所見について
はこれが存在したことを的確に認めるに足りる証拠はなく,また,浮腫に
ついても,上記(1)の認定説示に徴して,これが存在したかどうかについ
ては疑問が残ることからすると,上記③の要件を満たすとは必ずしもいい
難いところである。
したがって,これらの診断基準を適用する限り,本件証拠上,本件手術
後に原告がRSDを発症したかどうかについては,これを肯定する余地が
ないではないが,断定するには至らないというべきである。
イ同bの診断基準について
この診断基準の要件,すなわち,
(ア)次の症状・徴候の4つ又は5つが認められること
a説明できないびまん性疼痛があること
b腱側同一部位に比べて皮膚の色調が異なること
cびまん性の浮腫
d腱側同一部位に比べて皮膚の温度差がある
e関節可動域の制限
(イ)患肢の使用によって,上記の症状・徴候が発現あるいは増強するこ

(ウ)発端となった創傷あるいは手術の部位より広範かつ遠位部をも含め
て,上記の症状・徴候が存在すること
の各要件について,上記アの認定説示に徴し,原告の訴えに従えば,上記
(ア)aの要件を満たすということができる反面,同cの要件を満たすとい
えるかどうかについて疑問が残る上,同b,d及びeの各要件については
これらを的確に認めるに足りる証拠はないから,結局,(ア)の要件を満た
すということはできない。また,上記(イ)の要件についても,これを認め
るに足りる証拠はない。
したがって,上記イの診断基準を適用する限り,本件証拠上,本件手術
後に原告がRSDを発症したと認めることはできない。
ウなお,上記1に認定の事実によれば,補助診断として,原告の訴える疼
痛には交感神経ブロックが一定の効果を示したことが認められるが,レン
トゲン検査等の画像診断については,本件証拠上,原告の症状がRSDに
よるものであるかどうかを鑑別するためにこれが実施されたことは認めら
れず,上記交感神経ブロックの効果からただちに上記疼痛がRSDによる
ものであると断定することもできない。
エしたがって,上記ア及びイの診断基準の適用上,本件手術後に原告がR
SDを発症したと認定することは困難である。
もとより,これらの診断基準は,いずれもいまだ確立したものではない
から,これらの診断基準を満たさないという一事によって原告の症状がR
SDでないと即断することは,なお慎重を期さなければならないというべ
きであるが,少なくとも,本件手術後に原告がRSDを発症したかどうか
を判断する上で,消極的事情として考慮せざるを得ない。
(4)加えて,上記1に認定の事実及びC医師の証言によれば,原告は,平成1
0年3月12日に整形外科で変形性脊椎症に伴う右挫骨神経痛と診断され,
その後も,受診した複数の病院でほぼ同旨の診断を受けており(なお,C医
師の初診時の所見上も,右大腿後面から足底にかけての疼痛については挫骨
神経痛(L5/S1のヘルニアによる)が最も疑われるとの診断結果が示さ
れている。),原告の訴える疼痛について,そのうち右下肢痛は挫骨神経痛
に基づく部分があると認められるから,本件手術から一定期間の経過後に原
告が右下肢痛を訴えるようになったことをもって,RSDの特徴に従い,右
足親指の疼痛が右下肢に拡大したものであるとはたやすく即断し難く,また,
原告には平成3年以降の長年にわたる内科通院歴があって,自律神経失調症
等と診断されており,原告からの疼痛の訴えを評価するにあたっては,この
ような心因性の疾患による影響等も考慮に入れなければならない(乙B1に
よれば,RSDは診断基準が確立しておらず,酷似した病変もいくつか存す
るため,診断の際には,軽微な外傷でも常にRSDを念頭に置くとともに,
RSDが疑わしい患者では厳密な鑑別が必要であり,身体所見を系統的に精
査し,心因的要因の関与を見極める必要があるとされていることが認められ
る。)。
(5)上記(1)ないし(4)に認定説示の事情を総合考慮すれば,本件証拠上,原告
が本件手術後にRSDを発症したとは,いまだ認め難いというべきである。
したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。
5争点(4)(RSDの早期診断義務違反等)について
上記4に認定のとおり,原告が本件手術後にRSDを発症したとは認め難い
のであるから,この点に関する原告の主張は,その前提を欠くものであり,そ
の余の点につき判断するまでもなく,理由がないというべきである。
6争点(5)(挫骨神経痛の原因)について
(1)上記1に認定のとおり,①原告は,平成10年3月12日,I医師の紹介
により整形外科を受診し,担当のQ医師に対し,同年1月14日ころより右
側臀部から大腿に疼痛があるなどと訴えて,腰椎レントゲン検査を受け,Q
医師は,その検査所見上,軽度の加齢によると考えられる変形性脊椎症が見
られ,また,右挫骨神経(挫骨切痕)に圧痛が認められたため,変形性脊椎
症に伴う右挫骨神経痛と診断したこと,②原告は,平成10年11月26日,
K病院を受診して,右挫骨神経痛を訴え,同年12月11日に腰椎MRI検
査を受け,その検査所見上,L5/S1間の椎間板の突出が認められたこと,
③原告は,K病院から紹介を受けたO病院で,平成11年9月27日に腰椎
MRI検査を受け,L5/S1の椎間板ヘルニアと診断されたこと,④原告
は,L整形外科クリニックから紹介を受けたM総合病院で,平成14年1月
21日にMRI検査を受け,L5/S1の椎間板変性及び膨隆,L3/L4
の椎間板変性と診断されたこと,以上の事実が認められる。
(2)これらの事実(特に上記①の事実)に加え,C医師は右挫骨神経痛と本件
手術ないしRSDは特に関係がない旨証言していること(尋問調書p13),
乙B3及び原告の年齢等を併せ考慮すれば,原告の右挫骨神経痛は腰椎の加
齢的変化に起因するものであると認めるのが相当であり,原告が疼痛を感じ
て足をかばったことにより腰に負担があった(乙A3p4)としても,それ
によって上記右挫骨神経痛が惹起されたということはできない。
したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。
7以上の認定説示によれば,被告病院の医師には原告の主張する過誤があった
と認めることはできないから,原告の本訴請求は,その余の点につき判断する
までもなく理由がないが,なお,事案に鑑み,争点(8)(本件示談の効力)に
ついて附言する。
(1)上記第2の1の前提事実のとおり,本件示談書には,その本文中に「手術
の状況と結果」として「平成10年1月14日,伝達麻酔にて陥入爪に対す
る手術を施行したが,手術内容の説明が不十分であったこと及び爪母の切除
が不完全であったこと」,「示談の内容」として「被告は,原告に対し,示
談金として30万円を支払う。原告は,被告に対し,上記に関する一切の請
求を放棄する。」という記載のあることが認められる。
上記「手術の状況と結果」欄の記載の文言のみをみると,本件示談は,本
件手術後の陥入爪の再発及びその再発に関する説明義務の懈怠に関する事項
の解決を図ったものであり,RSDによる症状かどうかはさておき,原告が
本件手術後に訴え続けていた右足親指の疼痛等の症状についてまで念頭に置
いたものではないと解する余地がないではない。
しかしながら反面,上記1に認定の事実によれば,原告は,本件示談が成
立した平成11年4月15日当時,すでに右足親指の激しい疼痛や右下肢の
疼痛,痺れの症状を訴えていたことが認められることに加え,証拠(原告本
人の供述)によれば,原告は,上記の当時,一方で,これらの症状が将来必
ずしも快復するものではないかもしれない,又はより一層悪化するかもしれ
ないという危機感を持ちながらも,他方で,被告病院に責任を認めてほしい
という心情から,自身の判断により本件示談をしたことが認められ,これら
の事実によれば,原告は,上記訴えに係る疼痛や痺れの症状,その予後不良
の可能性を認識予見した上で,本件示談をしたと認めざるを得ず,また,上
記1に認定の事実によれば,被告病院においても,本件示談の当時,原告か
ら本件手術後に上記疼痛や痺れが発生したとして苦情や不満等の申入れを受
けていたことが認められるのであって,これらの事情に加え,本件示談書の
冒頭に「本件陥入爪手術に関し,下記のとおり示談が成立しましたので,今
後いかなる事情が発生いたしましても,双方とも異議の申し立てをしないこ
とを確約いたします。」という記載があること等も併せ考慮すれば,本件示
談は,本件手術後の陥入爪の再発及びその再発に関する説明義務の懈怠に関
する事項に限定せず,本件手術に起因する又はその可能性がある上記疼痛や
痺れの症状,予後不良の可能性を巡る紛争も含めて解決を図ったものである
と認めるのが,本件示談に顕れた当事者の意思の解釈として相当である。
したがって,結局,原告の主張する,原告の被告に対する損害賠償請求権
が仮に認められるとしても,本件示談によりすでに放棄されているというべ
きである。
(2)これに対し,原告は,本件示談は,原告が,RSDという重大な疾患に罹
患していることを認識せず,将来疼痛や痺れの症状がよくなるという前提で
合意したものであるから,原告の錯誤により無効であるか,又は原告にとっ
て当時予想外であった本訴請求に係る損害にはその効力が及ばないものであ
る旨主張し,原告の陳述(甲A3)中には,上記主張に沿う部分がある。
しかしながら,上記4に認定説示のとおり,原告が本件手術後にRSDを
発症したとは認め難いのであるから,原告の上記主張中,本件示談の当時,
原告がRSDという重大な疾患に罹患していることを認識していなかった旨
主張する点は,その前提を欠くものである。
また,上記1に認定の事実によれば,原告は,本件示談が成立した平成1
1年4月15日当時,すでに右足親指の激しい疼痛や右下肢の疼痛,痺れの
症状を訴えていたことが認められることに加え,上記(1)に認定のとおり,
原告は,上記の当時,上記訴えに係る疼痛や痺れの症状,その予後不良の可
能性を認識予見した上で,本件示談をしたと認めざるを得ず,原告の上記主
張のように,将来疼痛や痺れの症状が快方に向かうという前提で本件示談を
したということはできない。
(3)原告は,本件示談後,右足親指の疼痛は快復せず,むしろ疼痛が悪化して
痺れや歩行困難に陥った旨供述し,あるいは,「ここまで悪くなるとは夢に
も思っていませんでした」として,本件示談後の症状の推移(悪化)が予想
外のものであったというような趣旨を供述する。
確かに,上記1に認定のとおり,原告は,本件示談後の平成15年8月こ
ろ,身体障害者福祉法別表第4級の身体障害の認定を受けていることが認め
られる。しかし,その認定の基礎となった病態は,いずれも本件示談の当時
にすでに発生していたものであり(ただし,上記認定のとおり,原告が本件
手術後にRSDを発症したということはできない。),しかも,そのうちの
右挫骨神経痛については,上記6に認定説示のとおり,被告病院がその発症
等の責任を負うものではなく,上記1に認定の診療経過に照らして,本件示
談後,本件示談当時に比して,原告が供述するほどの症状の著しい悪化があ
ったことは認め難く,本件証拠上,原告の上記供述以外にこれを認めるに足
りる証拠はないから,原告の上記供述はそのままにはたやすく採用できず,
当裁判所の上記結論を覆すものではない。
8結論
よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文
のとおり判決する。
(証拠及び診療経過一覧表は省略)
名古屋地方裁判所民事第4部
裁判官寺本明広
裁判官大寄悦加
裁判長裁判官倉澤守春は,転補のため署名押印できない。
裁判官寺本明広

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