弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人岡田俊男、同江島晴夫の上告理由第一点について。
 論旨は、まず、原判決には租税債務の立証責任に関する法則の適用を誤つた違法
がある、という。
 しかし、原判決は、Dの昭和二三年度における所得金額が不明であるとして同人
敗訴の判決を下したものではなく、Dの提出した同年度の確定申告書記載の金額が
誤りであることにつきみるべき立証がないから、右申告書記載の金額をもつてDの
当該年度における所得金額と認むべきであるとして、同人敗訴の判決を下したもの
であること、その引用する第一審判決の説示理由に徴して明らかであるから、租税
債務の立証責任を不当に控訴人(原告、以下同じ。)に課したものではない。また、
申告納税の所得税にあつては、納税義務者において一旦申告書を提出した以上、そ
の申告書に記載された所得金額が真実の所得金額に反するものであるとの主張、立
証がない限り、その確定申告にかかる所得金額をもつて正当のものと認めるのが相
当であるから、原判決(その引用する第一審判決、以下同じ。)には所論のごとき
不当に控訴人に立証の必要を認めた違法はない、といわなければならない。
 論旨は、さらに、原判決は控訴人主張の所得金額につき何らの判断をも示さず、
理由不備の違法をおかしているというのであるが、原判決が控訴人主張の所得金額
は証拠上肯認し得ない旨を判示していること、判文上明らかである。
 それ故、論旨は、すべて採用できない。
 同第二点について。
 論旨は、原判決が本件審査決定の通知書はその方式において欠くるところがない
と判断したことが、昭和二五年法律七一号による改正所得税法四九条六項に違反す
る、という。
 しかし、右改正所得税法の附則一〇項によれば、本件審査決定のごとく昭和二五
年三月三一日以前にあつた確定申告書の更正に対する審査決定の通知に係るものに
ついては、従前の所得税法五〇条の例によることとなつていて、右改正所得税法四
九条六項の規定に従うことを必要とされていない。
 されば、原判決には所論の違法はなく、論旨は、叙上に反する独自の見解に立脚
するに過ぎないものであつて、排斥が免がれない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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