弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役6年に処する。
未決勾留日数中220日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1(平成16年11月17日付け起訴状第1記載の公訴事実関係)
   被告人は,Aと共謀の上,出会い系サイトで知り合ったBを呼び出し,同女
を強いて姦淫した上,同女から現金を強取しようと企て,平成15年1月11日午
前4時ころ,神戸市C区D町Ea番地のb先路上に駐車中の軽四輪貨物自動車内に
おいて,助手席に座っていたB(当時16歳)に対し,上記Aにおいて,同女の背
後からその顔面を両手で押さえるなどして,同女を後部座席に引きずり込んだ上,
こもごも,「早よ,脱げ。」「やられるのと,しばかれるのとどっちがええん
や。」「こいつしばいてまおか。」「殺すぞ。」などと語気鋭く申し向けるなどの
暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧した上,上記Aにおいて,強いて同女を姦淫
し,被告人において,同女から取り上げたバッグ内の財布から現金約9000円を
抜き取って強取した。
第2(平成16年11月17日付け起訴状第2記載の公訴事実関係)
   被告人は,Aと共謀の上,Bに命じて呼び出したFを強いて姦淫した上,同
女から現金を強取しようと企て,同日午前7時ころ,同市G区Hc丁目d番地のe
先路上に駐車中の上記自動車内において,後部座席に座っていたF(当時15歳)
に対し,上記Aにおいて,同女の両肩を両手で押して仰向けに倒した上,同女の身
体の上に覆いかぶさり,「ええ加減にせんと切れるぞ。」などと語気鋭く申し向け
るなどの暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧した上,上記Aにおいて,強いて同女
を姦淫し,被告人において,同女のかばん内の財布から現金約4000円を抜き取
って強取した。
第3(平成16年12月14日付け起訴状記載の公訴事実関係)
   被告人は,I及びJと共謀の上,金品窃取の目的で,平成15年8月22日
午後10時5分ころ,Kが看守する兵庫県西宮市L町f番g号Mビルh号N事務所
に,その出入口扉横の無施錠の小窓から侵入した上,同所において,同女ほか1名
の所有又は管理に係る現金約6万2778円及びクレジットカード等111点(物
品時価合計約2万4660円相当)を窃取した。
第4(平成17年2月3日付け起訴状記載の公訴事実関係)
   被告人は,Oと共謀の上,金品窃取の目的で,平成16年3月2日午前3時
10分ころ,神戸市P区Qi丁目j番地kRビル2階所在の株式会社S代表取締役
Tが看守する同会社事務所に,出入口ドアの施錠をこじ開けて侵入し,同所におい
て,同人管理に係る領収証1枚在中の封筒1点を窃取した。
(証拠の標目)―括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号―
省略
(事実認定の補足説明)
 弁護人は,強姦についての共謀の存在を争い,被告人も,当公判廷において,判
示第1及び第2の各犯行(以下「本件犯行」という。)時はAが和姦していると思
っていたなどと,これに沿う弁解をしている。しかしながら,本件の共犯者である
Aは,同人が強姦行為を行っている間に被告人が金品を奪うという役割分担を被告
人との間で事前に決めた上で本件犯行を行った旨明確に供述しているところ,(1)そ
の内容が具体的かつ詳細であること,(2)被告人が運転する普通乗用車の後部座席に
隠れ潜んでいたAが突然Bに襲いかかって姦淫し,さらに,その後被告人とBが車
外に出た隙に同車内でFを姦淫した本件犯行の状況等につきAが供述するところ
は,各被害者の供述や本件犯行当時の被告人とのメールでの交信内容とも符合して
いること,さらに,(3)Aは本件により既に有罪判決を受けて服役中であり,虚偽の
供述を殊更行う理由等も見受けられないばかりか,被告人からの誘いに対し,逆に
本件のような手口を提案して被害者2名を強姦したことなど,A自身にとって不利
益な事実を素直に供述しているのであって,あえて被告人に責任を転嫁するような
姿勢はうかがえないことなどに照らし,Aの供述の信用性は極めて高いといえる。
また,被告人も,捜査段階においては強姦の共謀があったことを認めていたとこ
ろ,その内容は上記A供述及び各被害者供述と根幹部分で合致するものであって,
その信用性は十分である。なお,被告人は,当公判廷において,Aが女の子を強姦
しているとは思っていなかったなどと弁解するが,上記の犯行状況やBが被告人か
ら「やられるのと,しばかれるのどっちがええんや。」などと脅された旨明言して
いることに照らし,その内容自体極めて不自然,不合理というほかなく,到底信用
できない。したがって,弁護人の主張は採用できない。
(法令の適用)
 被告人の判示第1及び第2の所為はいずれも刑法60条,241条前段(なお,
その有期懲役刑の長期は,行為時においては平成16年法律第156号による改正
前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によること
になるが,これも犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6
条,10条により軽い行為時法の刑による。)に,判示第3及び第4の所為のうち
建造物侵入の点は刑法60条,130条前段に,窃盗の点は刑法60条,235条
にそれぞれ該当するところ,これらの建造物侵入と窃盗との間にはいずれも手段結
果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪としていずれも重い
窃盗罪の刑で処断することとし,各所定刑中判示第1及び第2の各罪につき有期懲
役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本
文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に前記改正前の刑法14
条の制限内で法定の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3
号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で,被告人を懲役6年に処し,同法21
条を適用して未決勾留日数中220日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法
181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件は,共犯者と共謀の上で犯した強盗強姦2件(判示第1及び第2)及び同様
の建造物侵入,窃盗2件(判示第3及び第4)からなる事案である。
 まず,判示第1及び第2の各犯行について見ると,その身勝手で自己中心的な動
機に酌量の余地はない。犯行態様も,出会い系サイトを通じて女性を呼び出した
上,強姦するとともに金員を強取する計画に基づき,各自の役割を分担しながら敢
行されたもので,卑劣かつ巧妙な計画的犯行であり,判示第1の被害者をして,そ
の友人である判示第2の被害者を呼び出させ,同様に姦淫して金員を強取した点も
含め,誠に悪質である。被害者はいずれも年若いのに,強姦された挙げ句に金品ま
でも奪われたもので,その精神的肉体的苦痛は大きく,被害感情に厳しいものがあ
るのも当然である。しかるに,被告人からは積極的な慰謝の措置は講じられておら
ず,その見込みもない。
 次に,判示第3及び第4の各犯行について見ると,いずれもその利欲的な動機に
酌量の余地がない上,判示第3については被害額も少なくなく,犯情は悪い。
 以上の事情からすれば,被告人の刑事責任は重大であるといわざるを得ない。
 しかしながら,他方では,判示第1及び第2の各犯行の実現について共犯者が主
導的な役割を果たしたことも否定できず,被告人自身には強姦そのものを自ら実行
する意図はなかったこと,共犯者が各被害者に示談金として60万円を支払ってお
り,一定限度では被害回復がされていること,起訴事実が異なるとはいえ,共犯者
との刑の均衡という要素にもあながち無視できないものがあること,判示第4につ
いては被害額が軽微であること,被告人は若年で,罰金前科以外に前科を有してお
らず,被告人なりに反省の情を示していることなど,被告人のために酌むべき事情
も認められるのでこれらの事情を総合考慮して刑を量定した。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成17年9月22日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官  的 場  純 男
      裁判官  西 野  吾 一
   裁判官  三重野  真 人

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