弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1 原告の訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 宮島競艇施行組合からの要望(平成11年8月19日付け宮艇業第166号)にある広島
場外場の設置についての広島市と宮島競艇施行組合との間の協定書締結について,被告
が,平成15年3月24日宮島競艇施行組合に対して行った,これに同意しない旨の回答が
無効であることを確認する。
 2 被告は,原告に対し,宮島競艇施行組合がモーターボート競走の施行者として広島市
α13番8号に場外発売場を設置するために国土交通大臣に対して確認申請を行う際に求
められる同意書(別紙「場外舟券売場の設置に関する同意書」と同一内容の記載のある文
書)を交付せよ。
第2 事案の概要
原告は,被告が宮島競艇施行組合(以下「施行組合」という。)に対して行った,広島場
外発売場の設置に関する協定書締結に同意しない旨の回答が,行政処分に当たり,か
つ,権限を逸脱濫用した違法無効な処分であるとして,上記回答が無効であることの確認を
求め(請求1),被告に対し,勝舟投票券の場外発売場の設置についての国土交通大臣の
確認の申請を行う際に添付を求められる被告作成の同意書の交付を求めた(請求2)。
 1 法令等の定め
(1) モーターボート競争法施行規則8条1項は,「場外発売場を設けようとする者は,当
該場外発売場がその位置,構造及び設備に関し,告示で定める基準に適合するものであ
ることについて,国土交通大臣の確認を受けなければならない。」と定める。
  (2) 「場外発売場の位置,構造及び設備の基準」と題する運輸省(現国土交通省)の告
示は,場外発売場の位置,構造及び設備の基準として,「文教施設及び医療施設から適当
な距離を有し,文教上又は衛生上著しい支障をきたすおそれがないこと。」を掲げる(乙
3)。
(3) 海上技術安全局長が各地方運輸局長等に宛てた,平成12年6月30日付け(海総
第323号)「モーターボート競争法施行規則の一部を改正する省令の運用について」と題
する通達には,次のような記載がある(乙1)。
 「2 第8条関係
   (1) 場外発売場の位置,構造及び設備の基準は,最小限の基準を示したものであ
るので,当該基準に定められていない事項についても,周辺地域との調和,周辺住民の利
便の増進又は警備,防犯上の観点等から必要と考えられる施設を設置するよう場外発売場
を設けようとする者を指導すること。
(中略)
(4) 確認申請書には,当該場外発売場において勝舟投票券の発売を開始する予
定の年月日を記載させ,かつ,地元及び管轄警察との調整がとれていることを証明する書
類を添付させること。」
(4) 海上技術安全局総務課長が各地方運輸局船舶部長等に宛てた「場外発売場の設
置確認について」と題する通達(一部改正海総第325号平成12年6月30日)には,次のよ
うな記載がある(乙2)。
「4 地元との調整については,当該場外発売場の所在する市町村の自治会(又は町
内会)の同意,市町村の長の同意及び市町村の議会が反対を議決していないことをもっ
て,地元との調整がとれていることとする。」
(5) 海上技術安全局総務課調整官が各地方運輸局船舶部監理課長等に宛てた,平成
12年6月30日付け「場外発売場の設置確認の事務手続について」と題する事務連絡に
は,次のような記載がある(乙4)。
「3 局長通達記2(4)の地元との調整がとれていることを証明する書類とは,場外発売
場を設けようとする者に対する自治会(又は町内会)の同意書(第3号様式),市町村の長の
同意書等をいう。」
 2 争いのない事実(末尾に証拠の記載がないもの)及び証拠により容易に認められる事

(1) 原告は,貸ビル業等を営む株式会社である。
(2)原告は,平成5年1月7日,施行組合との間で,原告がモーターボート競走の場外発
売場であるボートピア広島の施設会社となり,広島市α13番8号に場外発売場施設を建設
し,これを施行組合に賃貸することを合意した。なお,上記の施設会社とは,場外発売場等
の施設を建設し,これを施行者又は施行者から当該事務の委託を受けたモーターボート競
走会(以下「施行者等」という。)に賃貸する民間会社をいう。
   施行組合は,平成6年10月4日,ボートピア広島の設置事業を遂行する旨の決議を
した。
  (甲2,8)
 (3) 施行組合は,平成11年8月19日,「広島場外場設置に関する要望書」と題する書
面により,被告に対し,場外発売場の設置について被告が協力するよう要望した。(甲9) 
 (4) 被告は,施行組合に対し,平成15年3月24日,「広島場外場の設置について」と題
する文書を送付し,これにより,「市議会で反対請願不採択の議決がなされているが,周辺
環境等への影響についての懸念を払拭することはできず,また,地元で根強い反対の声が
あること。」を理由として,上記要望に同意しない旨の回答をした(以下「本件不同意」とい
う。)。(甲24)
3 争点
(1) 本件不同意の行政処分性。
  (2)本件不同意が違法無効であるか。
  (3)原告の被告に対する同意書交付請求権の有無。
4 争点(1)(本件不同意の行政処分性)に関する当事者の主張
(1) 被告の主張
行訴法3条4項にいう「処分」とは,行政庁がその優越的な地位に基づき公権力の行
使として行う行為であって,これにより直接国民の権利又は法律上の利益に影響を及ぼす
ものをいうところ,設置確認の際の市町村長の同意は,法令上の根拠を有するものではな
く,国土交通省の内部部局の長による通達等に基づいて添付が要求されているにすぎず
上記同意に関する手続等を定めた規定も存在しない。国土交通大臣は,設置確認の申請
に上記同意を証する書類が添付されていなくても,設置確認の申請を受理し,場外発売場
の位置,構造及び設備の基準に基づき審査した上で設置確認の可否を判断することにな
る。すなわち,上記同意の有無は,国土交通大臣が場外発売場の設置確認を行う際の判
断資料の一つにすぎず,ただちに,同設置確認に法律上の影響を及ぼすものではないか
ら,同設置申請者の権利又は法律上の利益に影響を及ぼすものではない。したがって,本
件不同意は,行政処分には当たらないから,本件訴えはいずれも不適法である。
  (2) 原告の主張
 ア 原告は,モーターボート競走における場外発売場施設の建設を行い,施行者に対
し場外発売場を賃貸等する施設会社であり,単独で国土交通大臣に対して場外発売場の
設置確認の申請権を有する者である。
    場外発売場の設置確認に係る確認申請書には,市町村の長の同意書が添付され
ていなければ,当該確認申請は不適法な申請として当局に受理されず,この同意書の添付
があってはじめて,その内容の審理・審査が行われるのである(甲44,48,49)。そして,設
置予定地の町内会は場外発売場の設置を同意し(甲28),かつ,広島市議会は場外発売
場設置反対請願を否決した(甲43)から,原告は,被告のみが同意しないために,設置確
認申請を受理されないという不利益を強いられている。したがって,本件不同意による設置
同意の拒否は,場外発売場の建設・賃貸を禁止する事実上の効果を有するものであり,原
告はこれを争うほかに救済を受けることはできない。
  イ 一般に,施設会社は,場外発売場の建設・賃貸のほか,場外発売場におけるトー
タリゼータ設備(発売機,払戻機を含む。)やテレビ放映設備等の設置負担を行い,施行者
の場外発売場における管理・運営の補助業務をも行う(甲51)。原告も同様に,本件場外発
売場(ボートピア広島)について,トータリゼータ設備等の負担や,有料席券の発売,入退
場者のチェック業務,有料席への案内,整理及びサービス業務を行う予定であり,場外発
売場設置について重大な利害関係を有する。
   ウ 以上のとおり,本件不同意は,場外発売場の建設・賃貸等を禁止する事実上の効
果を有するものであり,その違法を確認することが適切かつ必要であるから,本件不同意は
行政処分に当たり,原告は,本件不同意が違法であることの確認を求める法律上の利益を
有する。また,被告の同意がなければ,国土交通大臣に対し,場外発売場設置確認申請
自体行うことができないから,被告に対する設置同意の義務づけ判決を得る必要がある。
 5 争点(2)(本件不同意が違法無効であるか)に関する当事者の主張
(1) 原告の主張
  ア 原告は,場外発売場設置にあたり,広島市から,場外発売場設置同意を前提とし
て様々な指導,助言及び要請等を受けて,その諸手続を進め,そのために,既に総額30
億2400万円の資金を拠出した。被告及び広島市が,これまで場外発売場設置同意を前
提として行ってきた様々な指導等と背馳する同意拒否の態度を取ることは,法の一般原則
である,禁反言ないし信頼保護の法理に著しく反する。
  イ 当該場外発売場の位置,構造及び設備の基準についての国土交通省の告示にお
いては,「文教施設及び医療施設から適当な距離を有し,文教上又は衛生上著しい支障を
きたすおそれがないこと」が基準とされ,この基準に関し,地元市町村長の同意が求めら
れ,設置確認申請には,かかる同意があることを証する文書の添付が必要とされている。す
なわち施行者と市町村の長との協定書ないし市町村の長の同意書は,当該場外発売場が
告示で定められた基準に適合するものであることを国土交通大臣が確認する際の判断資
料の1つであり,基準適合性の有無の判断はあくまでも国土交通大臣が行うものである。し
たがって,市町村の長が協定書締結ないし同意にあたって考慮すべき事項は,当該場外
発売場に告示で定められた基準に適合しない事実があるか否か,すなわち「文教施設及び
医療施設から適当な距離を有し,文教上又は衛生上『著しい』支障をきたすおそれがない
こと」の有無である。このことは,被告の回答に「市議会で反対請願不採択の議決がなされ
ているが,周辺環境等への影響についての懸念を払拭することはできず,また,地元で根
強い反対の声があること。」が理由として挙げられていることや過去の実例からも明らかであ
る。
   以上によれば,市町村長は,「文教施設及び医療施設から適当な距離を有し,文
教上又は衛生上『著しい』支障をきたすおそれ」が存する場合でなければ,基準適合性の
資料としての協定書の締結あるいは同意書の提出をしなければならないのであって,市町
村の長の同意は,覊束的な行為というべきである。このように解さなければ,市町村の長に
場外発売場の建設を認めるかどうかの決定権を委ねる結果となり,市町村長に法律上付与
されていない権限を与えたことになってしまい,モーターボート競走法の規定を潜脱するこ
とは明白である。そして,次のウに述べる事情に照らせば,被告は,施行組合に対し,設置
同意をする義務がある。
仮に,市町村長に,同意に関する裁量権が認められるとしても,次のウに述べる事
情に照らせば,本件における被告の判断は合理的根拠がなく裁量権を逸脱濫用し違法で
ある。
ウ 本件においては,周辺環境等への影響についての懸念は存しない。
    (ア) 施行組合は,平成14年12月25日及び平成15年1月15日,広島市に「場外発
売場の設置を検討するに当たり施行組合に求める事項の回答」(甲21,甲22)を提出し,
下記のとおり具体的資料にもとづき詳細に回答した。その後,広島市より特段の異論・質問
等は一切受けていない。
a 場外発売場の立地予定地は,交通アクセスの良い場所であること,施設予定地
に専用駐車場を設けないので車両の出入りによる混雑は発生しないこと,予定地近隣は複
数の百貨店が立地し,現在も昼間の交通量が多いこと,座席予定数が652席であることを
考慮すると,現在の交通量に大きく影響を与える可能性は極めて低い。
b 施設利用者等に係る円滑な交通計画(施設利用者及び通行人の誘導方策,駐
車・駐輪対策等)については,交通整理員6名を配置し対処する。これらの事項は,いずれ
も警察の指示に基づき適切に遂行することが予定されている。
c 施設利用者に対し,公共交通機関を利用するようPRを実施し,場内放送及び掲
示による利用促進を実施する。
d 施設周辺の環境美化を図るための清掃計画(清掃範囲,清掃方法,清掃員の人
数,清掃時間等について)は,施設周辺の環境美化を図るため清掃員6名を配置し施設周
辺の清掃を実施する。
e 暴力団・青少年,迷惑行為者等に対する対応策(専門の警備員の配置,啓発活
動,警察との連携方策等)については,
(a) 公営競技の実施規則等で暴力団排除・青少年の入場拒否を明示し,暴力団
排除・青少年の入場拒否に必要な設備及び表示等を整備する。
(b) 専門の警備要員を配置し,管轄警察署と連携を密にすることにより場内の秩
序維持に努める。
(c) 施設内に内部及び周辺を監視するための装置を整備した警察官詰所,警備
員詰所を設置する。
f 周辺景観に配慮した看板や外壁,デザイン計画等については,施設オーナー
(原告)から賃借する立場であるが広島市と協議したものとする。
g トラブルや苦情等に対する責任ある対応体制について
(a) 施設内の必要な場所に苦情処理のための設備等を設置する。
(b) 施設の内外に照明設備,テレビカメラ,ビデオ等を設置し常時専門警備要員
が監視する体制をとる。
(c) 非常時に備え,非常放送装置や,非常口・非常照明等を設置し,消化設備等
も整備する。
  尚,このことについて最終的には警察との協議となる。
h 地元住民等との協議機関の設置及びその運営方法について
  場外発売場の周辺地域の交通,環境並びに防犯等の秩序を維持するため,地
元住民組織の役員で構成する協議機関「ボートピア広島環境保全協議会」(案)を設置し,
関係者相互の連絡調整を図って環境保全対策を講じるものとする。
i 上記のほか地元に対する環境対策として施行組合が必要と考える事項について
(a) 施設の運営にあたっては,関係法令及び関係機関との協議事項を遵守する。
(b) 放送,照明等により周辺環境に著しい影響を与えることのないように配慮す
る。
j 売上が見込みを下回った場合の対応策については,広島市,警察,ボートピア広
島環境保全協議会(案)及び原告と協議し責任をもって対処したい。
    (イ) また,施行組合は,上記回答にのっとり,下記のとおりの協定書案を提案し,履
行を誓約している。
「第2条 乙(宮島競艇施行組合)及び丙(広島県西部競艇施行組合)は前条の業
務を開始するにあたっては,関係法令及び関係機関との協議事項を遵守するとともに,住
民の安全対策と環境保持に万全を期し,特に次の事項について厳正に履行するものとす
る。
 a 交通安全について
   (a) 場外発売場の周辺に違法駐車・違法駐輪が発生しないように必要な交通整
理員を配置する。
   (b) 場外発売場周辺における交通傷害発生防止のために交通整理員を配置
し,車両及び歩行者の誘導を行う。
   (c) 利用者に対し,公共交通機関を利用するようPRを徹底し,そのための表示
等を整備する。
 b 暴力団・青少年に対する専門警備員の配置について
   (a) 公営競技の実施規則等に暴力団排除・青少年の入場拒否を明示し,暴力
団・青少年の入場拒否に必要な設備及び表示等を整備する。
   (b) 専門の警備員を配置し,管轄警察署と連携を密にすることにより,場内の秩
序維持に努める。
c 環境保全について
   (a) 放送,照明等により周辺環境に著しい影響のないよう配慮する。
   (b) 場外発売場より発生するゴミは,協議により範囲を定め清掃を実施し,周辺
の環境美化を維持する。
   (c) 場外発売場周辺の生活環境保全のために,地元住民とで構成する「環境保
全協議会」を設け,関係者相互の連絡調整を図る。」
(ウ) さらに,原告は,施設設置予定地の町内会による設置についての同意及びα地
区の若手経営者達が結成した八丁堀まちづくり協議会の賛同があるほか,文教施設並び
に医療施設からも施設設置についての個別の同意をそれぞれ既に取得し,これらへの施
設設置計画内容の説明に際し,地元に対する福祉面での協力も誓約している。
エ 被告の主張に対する反論
   被告は,設置同意は,市長の自由裁量に委ねられるものであるとし,本件において
は,「地元で根強い反対の声があること」等を理由として,被告が同意しないことは適法であ
る旨主張する。
    しかしながら,前記のとおり,原告は,本件場外発売場設置により影響があると想定
される地元の住民,文教施設並びに医療施設に対し,施設設置計画内容を詳細に説明
し,施設設置についての同意を既に得ており,「地元で根強い反対の声があること」との指
摘にはそもそも根拠がない。また,広島市議会は,平成12年7月6日に経済環境委員会に
おいて,また平成12年7月7日には本会議において,「場外発売場計画中止を求める請
願」につき,3回にわたる慎重な審理のうえ,いずれも圧倒的多数の賛成により不採択が議
決されている。
     さらに,平成8年7月4日,原告は,広島市に対し,建築確認申請を行い,同年12
月10日,広島市は,原告に対し,施設設置について,建築物の名称「ボートピア広島」,主
要用途「場外発売場」とする建築確認を行っている(確認番号第144号)。広島市は,建築
確認までに5か月以上もの期間を費やしており,場外発売場の建設可否について実質的な
判断を行った上で建築確認がされたことは明らかである。
     以上によれば,場外発売場の設置について被告が同意しないこと,あるいは施行
組合との間で協定書を締結しないことは,被告の市長としての権限上許されないものである
ことは明らかであり,仮に被告に裁量権があるとしても,その判断は合理的根拠がなく権限
の逸脱濫用であることも明白である。
  (2) 被告の主張
原告の主張は争う。市長の設置に関する同意は,市長の自由裁量に委ねられた事実
行為である。
    本件における場外発売場の設置予定地の近くには学校法人広島YMCA等の文教
施設があること,同予定地の前面道路は,バス路線としても使用されており,向かい側には
人気の宝くじ売場があり,現在でも混雑していること,地元からの反対の声が強いこと等の
事情を考慮すると,本件不同意が明らかに不合理であり裁量権を濫用したものであるとはい
えない。
 6 争点(3)(原告の被告に対する同意書交付請求権の有無)に関する当事者の主張
(1) 原告の主張
前記4(1)で主張したとおり,原告は,被告に対し,本件場外発売場の設置同意を求め
る権利を有するから,被告に対し,同意書の交付を求める権利を有する。
  (2) 被告の主張
原告の主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 モーターボート競争法施行規則8条1項は,前記のとおり定めるところ,同条項にいう
「場外発売場を設けようとする者」とは,同法にいう「施行者」に限られず,原告のような施設
会社もまたこれに当たると解せられる(甲44及び調査嘱託の結果参照)。したがって,原告
は,同条項に基づき,国土交通大臣に対し本件場外発売場の設置確認申請をする権利を
有する者であるといえる。
  ところで,前記「事案の概要」の「1 法令等の定め」に摘示したとおり,国土交通省の告
示,海上技術安全局長及び海上技術安全局総務課長の各通達,海上技術安全局総務課
調整官の事務連絡が存在し,このため,場外発売場を設置しようとする者は,地元との調整
がとれていることを証明する書類として,当該施設予定地の所在する自治会又は町内会の
同意書及び市町村の長の同意書を取得し,これを添付して,同設置の確認申請をするの
が通例である(この点は弁論の全趣旨により明らかである。)。しかし,上記の各通達や事務
連絡は行政庁内部の事務処理上の準則にすぎないから,上記各同意書やこれによる同意
の存在は,国土交通大臣が上記確認の判断に際して当該確認申請が国土交通省の上記
告示所定の要件を充足しているか否かを判断するための資料あるいは事実にとどまるもの
であり,場外発売場の設置確認をするための法令上の要件ではない。したがって,本件不
同意は,これによって直接原告の前記設置確認申請権の範囲を確定することが法律上認
められているものではないから,行政処分には当たらないというべきである(最高裁第三小
法廷平成6年(行ツ)第104号平成8年10月8日判決参照)。そうすると,原告の本訴におけ
る無効確認請求及び同意書交付請求の各訴訟はいずれも不適法であるといえる。
  もっとも,証拠(甲44の(1)及び(2))によれば,国土交通省海事局総務課は,原告訴訟
代理人から,「市長の同意がなければ,場外発売場の設置確認申請は不適法な申請とし
て,当局に受理されないこととなると解してよろしいか。」との照会に対し,平成16年4月14
日,「差し支えない。」と回答したことが認められる。しかし,同回答は,それが,「市長の同意
が設置確認のための法律上の要件である。」とする趣旨であるとすれば法令の解釈を誤っ
たものであり,「市長の同意がなければ前記告示の要件を充足していないものと判断す
る。」とする趣旨であれば,正当な解釈であるといえるが,いずれにしても,行政庁の解釈で
あって,前記結論を左右するものではない。原告は,国土交通大臣に対し,本件場外発売
場の設置確認申請をし,これを却下されれば,その判断に誤りがあるとして,抗告訴訟を提
起してその取消しを求めることができるのである。
2 結論
よって,その余の原告の主張について判断するまでもなく,原告の訴えはいずれも不
適法であるから,これらを却下することとし,主文のとおり判決する。
広島地方裁判所民事第3部
            裁判長裁判官   能 勢 顯 男
                裁判官   磯 貝 久 子
                裁判官   財 津 陽 子

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