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       主   文
被告が昭和四〇年六月七日原告に対してなした懲戒免職処分を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者双方の求める裁判
一 原告
 主文同旨の判決
二 被告
 「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決。
第二 原告の主張
一 懲戒処分の存在
 原告は、昭和二三年六月四日盛岡郵便局に事務員として採用され、昭和二五年八
月三一日郵政事務官に昇任し、爾来同局に勤務し、他方、組合専従者たることの許
可を得て昭和三九年八月以降、全逓信労働組合(以下「全逓」という。)東北地方
本部(以下「東北地本」という。)執行委員長の地位にあつたものであるところ、
被告は、昭和四〇年六月七日原告に対し、国家公務員法(以下「国公法」とい
う。)八二条に基づき、免職の懲戒処分(以下「本件処分」という。)をなした。
 なお、原告は人事院に対し右処分の審査請求を申し立てたが、人事院は、昭和四
五年一〇月六日付(原告の判定書受領は同年一一月一四日)で本件処分を承認する
旨の判定をした。
二 違法事由(その一)
1 被告が本訴において主張する本件処分事由の一部違法性について
(一) 本件処分に際し、被告から原告に対し交付された「処分説明書」によれ
ば、処分理由として「貴職は、盛岡郵便局勤務のものであるが、全逓信労働組合東
北地方本部執行委員長の役職に従事中のところ、さきに懲戒処分に付され将来を厳
重に戒められていたにもかかわらず、同執行委員長として同組合中央本部の発出し
た違法なストライキ実施指令に基づき、昭和四〇年三月一七日酒田郵便局、横手郵
便局において一時間のストライキを、また同年四月二三日仙台郵便局において半日
ストライキを実施せしめ多数の組合員をこれに参加せしめ、自らも酒田郵便局、仙
台郵便局に赴き、これを実践指導したばかりでなく、同年同月一五日および同月二
二日仙台郵便局に赴き同局管理者らの制止を無視し、多数の組合員を指揮して同局
庁舎内で示威行進を行ない、あるいは多数のビラを許可なく同局庁舎内に貼付する
等し業務の正常な運営を著しく阻害したものである。」と記載されている。ところ
が、被告は、本訴において右処分説明書に明記された行為のほかに後記被告の主張
二2(三)(1)②ないし④、⑥、⑦、同二2(四)(1)②ないし⑬の各行為に
ついても本件処分事由であると主張するに至つた。しかし、右各行為については、
本件処分事由として主張することは許されない。
(二) 右理由を述べれば、次のとおりである。およそ行政処分なるものは、法律
を根拠としてなされるものであつて処分権者が、その処分をするには、処分を許容
する法条が存し、かつその法条に該当する事実の存在することが必要不可欠であ
る。行政処分には、根拠法条とこれに該当する事実からなる「理由」が存在したけ
ればならず、そこから処分のいわば主文が導き出されなければならないのである。
而して、一般の行政処分においては、法は必ずしも処分時に処分の理由を示さなけ
ればならないとしていないから、処分者は、後に当該処分の効力が争われる際、根
拠法条とそのときまでに判明したそれに包摂される事実の存在とを主張することが
できる。ところが、国家公務員に対する懲戒処分にあつては国公法八九条が処分者
に対し、処分にあたり、あらかじめ「処分の事由」すなわち根拠法条とこれに該当
する事実を記載した説明書の交付を義務づけていることから、右の一般の行政処分
とは全く異るものである。国公法八九条が処分説明書の交付義務を規定する趣意
は、身分の安定と保障を旨とすべき国家公務員に対し、いやしくも恣意的な懲戒処
分のなされないことを保障し、直ちに身分を失う等の不利益をもたらすという意味
で当該公務員にとつて刑事罰に比すべき民事罰ともいいうる懲戒処分につき、その
手続の公正を担保し、かような重大な法的効果を直ちに発生せしめる処分であるか
らいかなる理由により処分されたのかを被処分者に明確に示されなければならない
(後に人事院における公平審査手続が予定されているが、処分理由が明確でなけれ
ば不服の有無、従つて審査申立をすべきか否かわからない。)ことにあるというこ
とができる。従つて、処分権者は処分をなすにあたり、処分理由を構成する事実を
調査し、これについての実体形成を遂げ、正しい法条を擬律する義務があるという
べく、処分説明書には、この実体形成の結果と法律の適用をあますところなく表示
しなければならないのである。そうだとすれば、処分は司法裁判における判決に比
すべきものであり(行政判決)、処分説明書は、判決を表示した判決書に該当する
と考えられる。しかして、判決書に相当するこの説明書には事実の記載が要求さ
れ、それは刑事判決における「罪となるべき事実」にあたるものであるから、日時
場所および方法をもつて具体的に特定されなければならないことは当然である。こ
のことは反面、右説明書に処分理由として記載されていない事項は、処分理由とす
べきでないことを意味する。
たとえ処分説明書中に「等」という文字が記載されていたとしても、それは文章中
に記載ある事実と異る事実を指すものと解することは到底許されないというべきで
ある。
2 本件処分事由の不存在
 被告が本件処分事由として主張する事実は、すべて不存在であるから、本件処分
は違法として取消さるべきものである。
以下、被告主張の処分事由に対する原告の反駁を加えながら、右不存在の事由を明
らかにする。
(一) 被告の主張二1(本件処分をなすに至つた経緯)について
(1)全逓の闘争指令発出の経緯について
 具体的にストライキ実施郵便局の決定がなされるに至つた経緯についての被告の
主張を除き、その余の事実は、いずれも認める。そして、結局のところ、昭和四〇
年三月一七日のストライキ実施郵便局が酒田郵便局(以下「酒田局」という。)お
よび横手郵便局(以下「横手局」という。)の両局に決定したこと、同年四月二三
日のストライキ実施郵便局が仙台郵便局(以下「仙台局」という。)に決定したこ
とは認める。けれども右ストライキ実施郵便局の決定は直接全逓中央本部がなした
ものであり、なお、この決定に際し、東北地本傘下の各地区本部の協議に基づきそ
の地区本部毎に候補局が選出され、これが東北地本を経由して全逓中央本部に上申
されたけれども、原告は、右決定に関与しておらない。
(2) 闘争指令発出に対する郵政省の措置について
 全部認める。
(二) 同二2(1)(酒田局関係)について
(1) 認める事実
 原告は、昭和四〇年三月一六日、闘争指令第二一号に基づく一時間ストライキの
責任者として酒田局に赴き、同局局長P1に対し、全逓酒田地方郵便局支部(以下
「酒田支部」という。)の執行権を停止する旨の通告をなしたこと、翌三月一七日
午前八時三〇分から同九時二三分で原告の指導のもとに勤務時間内一時間のストラ
イキが実施されたこと、右ストライキには、当日同時刻に同局に勤務すべき酒田支
部の組合員たる同局職員六一名が参加したこと、右ストライキ中の被告主張の時刻
ごろ酒田市浜田堀南飽海地区労働会館(局から約一、五〇〇米)において職場大会
を開催し、右組合員らがこれに参加したこと、原告は右大会に参加し、これの終了
後大会参加者の隊列の先頭に並んでこれを引率し、午前九時二三分ごろ同局に到着
したこと、そして、右大会に参加した右組合員は、同時刻ごろ就労するに至つたこ
と、従つて、欠務した時間は午前八時三〇分から同九時二三分までの五三分間であ
ること、そのために、貯金窓口担当者五名のストライキ参加中、午前八時三〇分か
ら同九時二三分まで特定郵便局長三名がこの処理に当つたこと、貯金外務員の集
金・募集のため局外へ出発が約四五分遅延したこと、保険窓口担当者一名のストラ
イキ参加中、保険課課長代理がこの処理に当つたこと、保険外務員の集金・募集の
ための出発が約四五分遅延したこと。
(2) ところで、右ストライキを企画し実施させたのは全逓中央本部であり、原
告は、同本部の決定・指示によりその責任者として派遣されたものである。しかし
て、右ストライキは、原告が派遣される以前において、その準備指令等により既に
全逓山形地区本部の指導のもとにその態勢が確立されておつたところである。そし
て、右ストライキは、平穏かつ整然と行なわれ、その間管理者側と何等のトラブル
も発生せず、原告が右ストライキ終了後酒田局長に挨拶に行つた際、同局長は原告
に対し、「委員長さんにきてもらいきちつとやつてもらつてご苦労様でした。」と
述べていることからも明らかなとおり、酒田局の管理者からは、むしろ原告が統制
をとつて指導したことに感謝されているのである。また、右ストライキによつて業
務上何んらの支障も生じなかつた。すなわち、右ストライキは、午前八時三〇分か
らの勤務者のみを対象とし郵便業務従事者を除外したのでその業務はまつたく平常
と変わりなく行なわれ、また、貯金、保険の外勤職員は、出発時間が定時から四五
分遅れたが、集金票・徴収原簿は平常どうり持出しており、その取立率は、貯金四
〇・五%(平常三九・九%)保険六七%(平常六五%)といずれも平常を上回る好
成績となつている(このことは東北地方の県民性によるものと考えられる。)。ま
た、貯金、保険の窓口担当者は、右ストライキに参加しているが、その間市内の特
定局長、酒田局の課長代理等が窓口業務に従事したためそれらの業務は支障なく平
常どうり行なわれた。
 また、右ストライキについては、市民から何等の苦情もなかった。
(三) 同二2(二)(横手局関係)について
(1) 認める事実
 昭和四〇年三月一七日午前八時三〇分から同九時二二分まで横手局において、被
告の主張するとおり、ストライキが実施されたこと、該ストライキには、全逓秋田
地区本部横手地方郵便局支部(以下「横手支部」という。)の組合員である同局職
員三六名が参加したこと、右ストライキ実施中の被告主張の時刻ごろ、右参加者ら
は、同局から約一〇〇米離れた横手市<以下略>平源旅館において集会をなしたこ
と、但し、右ストライキは純然たるウオーク・アウトであつて右集会はストライキ
とは何等関係のないことである。
(2) そして、右ストライキは、原告とは終始何ら関係なく実施されたものであ
る。すなわち、全逓中央本部は、直接全逓秋田地区本部に対し、右ストライキ実施
指令を発しており、これを受けた同地区本部は、単一組合の一機関として同指令を
誠実に実行する義務を負担するに至り、当然のこととして右ストライキに参加して
いるのである。そして、横手局の組合員も大幅賃金引上げのためには右ストライキ
は当然のことであると受止め、当局のストライキ切崩し工作を排除してこれに参加
したのである。ところで、右ストライキ実施の手続的経緯を述べれば、指令第二〇
号によりストライキ準備送令が発出され、その段階で全逓中央本部の設定した規模
に合致する候補者を各地区一局の割合で同本部に上申させ(勿論、横手局も含まれ
ていた。)、この中から同本部がストライキ拠点局として横手局を決定した。そし
て、指令第二一号によるストライキ突入指令発出と同時に同本部は、横手局がスト
ライキ拠点局となつたこと、ストライキ実施責任者として東北地本書記長P2を指名
したこと、その他詳細なストライキ実施要領を下部機関に通知した。ストライキ実
施要領については、同本部で細部を決定し、これに基づきストライキを行なうべき
ことを指令したので、東北地本の段階において右ストライキの細部につき協議をし
かつ指示するといつた余地は全く存しなかつたものである。しかして、同書記長
は、右決定に従い横手局に赴いたのであり、これにつき原告から指示を受けたり、
また、右ストライキ実施につき原告と協議したりしたことは全くなかつたのであ
る。
 又このストライキによつて同局における業務は停廃せず、実際上殆んど阻害され
ていない。
(四) 二2(三)(仙台郵政局関係)について
(1) 同年四月一五日および同月二二日の各ビラ貼り行為について
 四月一五日に被告主張の時刻、場所において、全逓組合員が被告主張の如き内容
の四種類のビラを当局の許可を得ないで貼付したことは認める。しかし、原告が多
数のビラを無許可で同庁舎内(仙台郵政局は現在は仙台中央郵便局と改称されてい
るが、以下当時の呼称による。)に貼付せしめたとの事実は否認する。右ビラ貼り
行為は、全逓宮城地区本部の企画に基づき、同地区本部青年部が東北地本傘下の各
地区の青年部の応援を求めて、これら青年部員を中心に実施されたものである。又
同月二二日のビラ貼り行為については、当日被告主張の各時間、場所において被告
主張の如き内容のビラを全逓組合員らが当局の許可を得ないで貼付したことは認め
る。しかし右ビラ貼り行為は、同地区本部によつて企画実施されたものであつて、
その所属組合員、役員をして行わしめたものである。ところで、全逓の組織機構
上、地区本部は、郵政局との団体交渉関係を除く地区内の一切の行動を企画実施し
ているのであつて、右宮城地区本部は、その組合員の所属する局所の一として仙台
郵政局(同局職員は、全逓宮城地区本部郵政支部を結成している。)を選定して右
両日のビラ貼り行為をなしたのである。仙台郵政局がたまたま東北地本に対応する
官庁だから同局へのビラ貼り行為は東北地本が行なつたと速断することは許されな
いし、また右宮城地区本部の行動が即東北地本の行為であるとする地区本部の独自
性を認めない見方は、組織の実態を見誤るものである。以上のとおり、原告は右両
日のビラ貼り行為につき、何ら関係がないのである。被告は、原告がたまたま右ビ
ラ貼り行為の行なわれている際、その場所に居合せたとの一事をもつて、原告が右
両日のビラ貼り行為を指揮したものとデツチ上げ、原告を処分する口実にしたもの
である。以下、右両日のビラ貼り行為について、原告の主張を明らかにする。
① 四月一五日のビラ貼り行為について
 本件ビラ貼り行為は、前述のとおり、東北地本とは全く関係なく全逓宮城地区本
部が企画実施したものである。
すなわち、同地区本部は、同年四月初めの地区執行委員会において、同月一五日予
定の仙台郵政局との集団交渉を盛上げるため、先に公共企業体等労働組合協議会
(以下「公労協」という。)が作成し、宮城県公労協を経由して送付されたビラ
(ステツカー)を同局の庁舎内に貼付することを決定し、そのための要員として約
二〇名の同地区本部青年部所属の組合員を動員するほか東北地本青年部長P3にその
協力方を要請し、当日右組合員によつて、同日午前三時二五分ごろから同四時一〇
分ごろまでの間に約二、○○○枚のビラを同局のタイルの壁、ガラス窓等に貼付し
た。この貼付されたビラは、細長い「ステッカー」と称されるものであつて、その
内容は、「団結の力で破れ、低賃金=公労協」といつたもので、いずれも賃金引上
げに関係するものである。原告は、右宮城地区本部によつて右ビラ貼りが行なわれ
ることを知つており、その際、管理者側と組合員との間にいざこざが発生すると当
日予定していた団体交渉等に悪影響を及ぼすものと考え、上部機関の役員としてか
かることの発生しないように配慮して右ビラ貼りの行なわれている場所に行つたも
のであつて、このことは当然なことである。そして、その場所において右組合員を
激励したこともなければそのことについて相談を受けたこともなく、また、極く短
時間その場にいたに過ぎなかつたものである。
② 四月二二日のビラ貼りについて
 本件ビラの作成、その送付経緯、内容等はいずれも前記①に述べたと同様であ
る。本件ビラは、前述の四月一五日に貼付されずに残つたビラであるが、それは約
七〇〇枚から一、○○○枚であつて、全逓宮城地区本部の事務室に保管されていた
ものである。ところで、全逓中央本部から後記四月二三日実施予定の仙台局におけ
るストライキの責任者として派遣された全逓中央執行委員P4は、同月一九日全逓宮
城地区本部事務室に赴いた際、右貼り残りのビラのあることを発見し、同地区本部
役員に対し速かに貼付すべきことを指示した。そこで、右指示を受けた同地区本部
は、同月二二日夜、全逓仙台地方郵便局支部(以下「仙台支部」ともいう。)の組
合員を動員し、同地区本部の役員らがこれを応援して、本件ビラ貼り行為をしたも
のである。原告は、当日右P4中央執行委員の指示により、前記仙台局におけるスト
ライキに参加するため東北地本事務室に待機していたのであるが、その間、右ビラ
貼りが行なわれている際その現場に行つたことはあるが、それは、前記①に述べた
と同様上部機関の役員として右ビラ貼りによつて管理者との間にいざこざの発生す
ることのないように配慮したためであつて、その時間もわずかであり、ビラ貼りを
している組合員に話しかけたり激励したこともない。ただ、右ビラ貼りの現場にお
いて剥れかかつているビラを手で押えつけたことはあるが、このことは組合役員と
して当然のことをなしたに過ぎず、右ビラ貼り行為とは全く関係のないことであ
る。それ以上に、原告が右ビラ貼りに関与したことはない。
③ いわゆる闘争中の企業施設内におけるビラ貼り行為につき、これをすべて違法
ということはできない。けだし、憲法二八条の精神からいつてもビラ貼り行為は、
公労法上争議行為を禁止されている組合にとつて団結を守り労使対等の交渉の立場
に立つ最も有力な行動に外ならず、また、企業内組合にとつて当該企業を離れた組
合活動はあり得ず、しかして使用者の所有に属する施設といえども同時に組合員も
その活動のために利用する権利を有しており、業務に支障のない限り使用者はこれ
を受忍すべきである。そして、平常時においても情報宣伝活動は組合活動の主要な
部分を占めかつ組合は当然に情報宣伝活動の自由をもつているが、ただ使用者の施
設管理権との関係において一定の掲示場所を限定するような協定を締結しているに
過ぎず、組合が争議行為に入つた場合は情報宣伝活動は争議目的達成のため不可欠
の要素となり、これなくしては争議行為を遂行し得ないほどの重要性をもつに至
り、日常の掲示場所以外の場所にビラを貼付することは施設管理上特に差支えのあ
る場合を除き使用者は受忍しなければならないからである。
 本件にあつては、かようなビラ貼付行為は従前から闘争の都度行なわれてきたも
のであつて、当局はこれを黙認ないし放任していたこと、また右行為は、全逓中央
本部からの、管理者の机・椅子・更衣箱には貼らないこと、ビラ貼りの場所の選定
にあたつては業務上支障のないと判断される場所を選んで貼ることとの指導方針に
基づいて行なわれており、郵政業務には特別の支障が生じたとは認められないこと
から、右ビラ貼り行為は正当な組合活動というべきであつて、従つてこれを本件処
分事由とすることは許されないといわなければならない。
(2) 団体交渉申し入れについて
東北地本は、四月一五日仙台郵政局に対し団体交渉を申し入れ、同局人事部管理課
長との間にそれに関し窓口折衝が行なわれたのであるが、被告は、該折衝につき、
「執拗に集団交渉のための郵政局長または人事部長との会見申し入れをなさしめ
た」とか「管理課長に対し、人事部長との集団交渉を執拗に強要した」とか「直ち
に本省へ上申せよ、検討して回答せよと強要するに至つた」とか主張するが右主張
は失当である。以下、当日の団体交渉のための窓口折衝の経緯について述べる。
① 東北地本は、公労協の統一行動日である四月一五日に全逓中央本部からの指導
もあつて、仙台郵政局と団体交渉を行なうことを企画した。当時は春闘期間中であ
つたが、両者においては団体交渉の行なわれないような雰囲気にはなかつた。そこ
で正式な手続を踏んで団体交渉を申し入れることにし、その折衝には、従前から組
合側の交渉委員として当局と窓口折衝を行なつてきた東北地本副委員長P5を当てる
ことにした。ところで、全逓中央本部と郵政省との間には、団体交渉の方式とその
手続に関し協約が存し、該協約によると、団体交渉には中央、地方および支部の各
交渉があり、この地方交渉が各地方本部とそれに対応する各郵政局の間で行なわれ
るものである。そして、地方本部の役員ならびにその傘下の各地区本部の執行委員
長が組合側の交渉委員となつているが、この交渉委員以外にもその席上には必要あ
るとき組合員が説明員として出席できることとなつている。また、地方交渉におい
ては、権限外の事項についても誠実に交渉し、これを中央交渉に上移することとさ
れている。
② 当日午前九時一五分ごろ、先ずP5副委員長は仙台郵政局人事部管理課に赴き、
地方交渉の際の当局側窓口担当者である管理課長に対し、郵政局長または人事部長
との交渉を求めた。その議題は、賃金七、五〇〇円引き上げ、初任給二万円の支
給、職員宿舎の設置、日曜配達の廃止、悪質管理者の追放の五項目であり、右交渉
に出席する組合側の人員は、代表三〇名とすることであつた。これに対し、右課長
は、「このようた状態では会えない。」と答えるのみであつたので、巳むなく同副
委員長は、その場を引揚げている。この間わずか一〇分位であり、右両者の話し合
いも平常行なわれているものと何ら変るところがなかつた。
③ P5副委員長は、その後午前九時四五分ごろ、再度右管理課長に対し、前項同様
な申し入れをしたところ、同課長は「こういう状態では会えない。」「ビラ貼りや
大衆動員のある状態では会えない。」ということを繰返すのみで前進はみられなか
つた。これに対しP5副委員長は、前記要求項目は正当なものであり、しかもその中
には東北地本独自の要求もあることを主張し、かつ当局が前記交渉の申し入れを拒
否することの本当の理由の説明を求めた。しかし同課長は「上司の命令で会わせる
わけにはいかない。」と拒否を続け、交渉拒否を理由づける納得できる回答はなさ
れなかつた。その後更に前記窓口折衝を続けた結果、組合側と当局との間で参加人
員は二〇名とすること、管理課長に対し前記要求項風を読み上げること、同課長は
これを本省に上申することで合意に達し当日予定していた団体交渉を打ち切り、か
つ右局庁舎内で行なわれていた集団抗議行動を収拾することになつた。その結果、
午前一一時一〇分ごろ、右管理課長席に組合員の代表二〇名が集まり、P5副委員長
が代表して前記五項目の要求を読み上げ、管理課長がこれに対し「権限のあるもの
は、検討して回答する。ないものは本省に伝えます。」と答え、当日の団体交渉の
申し入れは終了した(厳密には、団体交渉のための窓口折衝が終了したと解するの
が相当である。)。この間、窓口折衝が一向に進展しないことにしびれをきらした
組合員一〇名位が人事部管理課の室に這入り込もうとしたことがあつたが、原告ら
組合役員は、前記話し合いを軌道に乗せ団体交渉を成立させるために右組合員を懸
命に説得して室外に出している。
④ 以上述べたところから明らかなとおり、本件団体交渉の申し入れにつき、原告
らは終始団体交渉のルールに則つて行動し、無用のトラブルが発生しないよう努力
していたのであり、その要求項目はいずれも交渉事項として相当なものであり(仮
りにその中に権限外事項があつたとしても、それは交渉拒否の理由にならな
い。)、参加人員も当初から三〇名に限定して申し入れ最終的には二〇名まで譲歩
して解決を図つている(地方交渉については、組合側の交渉委員だけでも相当な人
数になり、しかも説明員として組合員が交渉の席上に出席できることを考えると
き、右人数又はその名目が集団交渉なる由をもつて団体交渉を拒否することは許さ
れない。)。この間の話し合いは、前記P6管理課長が認めているように「言葉はお
となしい話ぶり」であつて問題とされるようなことは何ら存しない。組合側のかか
る態度に比し、右郵政局管理者の態度は極めて不誠実なものであつた。すなわち、
ビラ貼りや大衆動員のあつた場合、要求項目の如何に拘わらず団体交渉に応じない
ようにとの本省からの指示に基づいて、前日予め集団的な交渉要求であれば、要求
項目のいかんにかかわらず会わない旨打ち合せをなしており、この打ち合せに従
い、P5副委員長からいくら交渉拒否の理由について説明を求められても「上司の命
令であるから会わせるわけにはいかない。」「こういう状態では会えない。」とい
つた極めて不誠実な態度に終始したのである。憲法二八条によつて保障されている
団体交渉を否認する郵政局のこのような態度に対し、この反省を求め、しかもごく
少数の組合役員が平常と変りない態度で団体交渉を行なうよう要求する行為を「執
拗」なものとして非難することは、いかなる意味においても許されない。そして、
本件において非難されるべきは、むしろ流動的な労使関係において、かたくなに自
己の主張を維持し最後まで交渉に応じようとしなかつた仙台郵政局の管理者である
といわなければならない。従つて、前述の如く本件団体交渉申し入れ行為について
は被告主張の如き非難されるべき点は何ら存しないのであるが、仮にこれらの事実
が存するとしても、右団体交渉の申し入れを本件処分事由とすることはそれ自体当
局の前記団体交渉の拒否という不当労働行為を是認するものであつて、失当であ
る。
(3) 集団示威行動について
① 当日仙台郵政局庁舎内において午前九時三一分ごろから同一一時三六分までの
間に集団示威行進が行われたことは認める。右集団示威行進は、全逓中央本部の指
導に基づき東北地本青年部が計画したものであるが、その目的とするところは、各
組合員の切実な要求である大幅な賃金引き上げにつき、郵政当局に全く誠意が認め
られないことに対する抗議と共に当日予定していた団体交渉の拒否に対する抗議行
動としてなされたものである。そして、本件集団示威行動は、東北地本のP3青年部
長と全逓宮城地区本部のP7青年部長が直接指揮し、原告が指揮したことはない。
② そこで、以下、本件集団示威行動の態様について述べ、それが正当な組合活動
の範囲内にあることを明らかにする。
 前記(2)の②で述べたとおり、P5副委員長が当局に対し団体交渉を申し入れ、
P6管理課長が拒絶し、右P5副委員長が人事部管理課の室を去つた後である午前九
時三一分ごろ、仙台郵政局の玄関前に集合していた全逓宮城地区本部の在仙関係者
から動員した約一〇〇名の組合員および東北地本傘下他五地区本部から動員された
組合員約二〇名計一二〇名位の組合員は、三列縦隊を組み、二手に分かれて、一方
を東北地本のP3青年部長が指揮し、他方を全逓宮城地区本部のP7青年部長が指揮
して、同局局舎内に入り、東北地本P2書記長の呼笛による誘導により一階から四階
までの階段およびその各階のホールをワツシヨイ、ワツシヨイと示威行進した後、
午前九時四五分三階エレベーター前のホールに座り込んだ。そして、前記(2)の
③で述べたように、P5副委員長が午前一一時二〇分ごろ要求書を読み上げ、団体交
渉の打ち切りを宣し、原告らが人事部管理課の室を退出した後、右座り込んでいる
組合員に対し右P5副委員長から当日の郵政当局との交渉経過が報告され、引き続き
原告の音頭で「団結頑張ろう。」とのシユプレヒコールがあり、その後午前一一時
三六分ごろ右座り込みの組合員は解散して庁舎外に出ている。その間、管理課長と
の話し合いが長引いたため、これにしびれを切らした組合員が午前一〇時ごろ三階
ホールを示威行進しながら団体交渉を要求し、一部の組合員が人事部管理課の室に
入室しようとしたが、原告らに制止されて座り込んでいた場所に戻るといつたこと
があつた。ところで、示威行進といつても、一階から四階までの階段および三階エ
レベーター前のホールに行くまでの一四分間と該ホールにおける極くわずかの時間
だけであり、その大部分は静かに座り込んでいたのである。しかして、座り込み中
の労働歌の合唱やシユプレヒコールもほんのわずかな時間行なわれたに過ぎず、し
かも右郵政局局舎自体の構造からして、廊下の物音が事務室に響いて執務の邪魔に
なるといつたことはなかつたものである。
③ ところで、労働者が使用者の反省を求めて、またさらには、その団結力を誇示
する方法として、当該施設内において、示威行進を行なうことは、職場占拠と異な
り使用者の排他的占有状態を脅かす積極的行動を伴うものではないのであるから、
暴力行為などを伴わない限り、それ自体正当な団体行動権の行使として是認されな
ければならない。
そして、使用者はその範囲において、これを受忍すべきである。しかして、本件の
如き集団示威行動は、従前から春期ならびに年末の各闘争の都度仙台郵政局内にお
いて慣行的に行なわれていたものであり、それにつき暴力行為等が伴わない限り問
題とされることなく、またこれにつき独立して懲戒処分の対象とされることはなか
つたところである。しかるに、被告は、本件集団示威行動は、前述のとおり、正当
な組合活動の範囲内にあるにもかかわらず、本件に限り、その責任を追及しようと
するものであつて、不当である。
(五) 同二2(四)(仙台局関係)について
(1) 同年四月二三日仙台局において、午前雰時から同一二時までストライキが
実施されたことは、被告主張のとおりである。ところで、被告は、原告が右ストラ
イキ実施についての実践指導者であるとして、原告の言動のみならず東北地本、全
逓宮城地区本部等の他の役員らの言動についてもその責任を問うているが、右スト
ライキを企画し実施させたのは全逓中央本部であり、同本部は、該ストライキ実施
責任者として全逓中央執行委員P4を指名したのである。このことは、右ストライキ
は半日に亘ることからその責任者には可成の処分のなされることが予想されたの
で、四月一九日開催の全逓中央執行委員会で決定されたものである。しかして、右
全逓中央執行委員P4は、四月二二日午前一一時四五分ごろ、仙台局を訪れ、同局局
長に対して「四月二三日のストライキを指揮するためその責任者として私がきた。
四月二二日、二三日の二日間仙台局の支部執行権は一時停止し、私が執行する。地
本、地区の役員は、私の指揮下に入つて行動させる。」旨通告した。原告は、右ス
トライキに際し、東北地本の委員長としてその傘下の地区本部の役員らを指導した
ことはなく、右全逓中央執行委員の指揮下において、東北地本・地区本部の他の役
員らと全く同じ立場においてその指示に従つて行動したに過ぎないのであつて、原
告を右ストライキの責任者であり他の役員以上にこれを実践指導したとする被告の
主張は誤りである。
(2) 以下、右主張を明らかにするため、右ストライキ当日における原告の言動
について述べる。
① 午前五時四七分ごろ、「全逓」の腕章、鉢巻を着用して、前記全逓中央執行委
員の指示に従い、仙台局通用門附近で、同執行委員らと共に、職場大会の会場を仙
台局庁舎内と思い誤つて同局にくる組合員を誘導すべく監視していた。
② この間、午前七時九分ごろ、仙台局で夜勤に従事中の組合員の労働条件を点検
するため、同局一階事務室に入室したところ、同局郵便課長から退去を要求され、
これに抗議し約五分間同課長と話し合つたが、トラブルを避けるため退室した。
③ 午前八時ごろ、仙台局通用門附近に立つていたところ、前記全逓中央執行委員
宛同局局長名の「ピケ解散要求の文書」を渡されたが、右原告らの行動はピケツテ
ングではないとしてこれを返還した。
④ 午前八時一六分ごろ、他の組合役員らと共に再び前記郵便課事務室に入室し、
前記郵便課長に対し、宿直勤務者の小包の早期引き継ぎ方を要請し、直ちに退室し
た。
⑤ 午前八時四二分ごろから約四分間通用門附近で同所にいた役員らと一緒に労働
歌を合唱した後、前記全逓中央執行委員の指示に従い職場大会の会場に向つた。
⑥ 午前九時二四分ごろ、右全逓中央執行委員および他の東北地本・地区本部の役
員らと一緒に仙台駅前の日乃出会館で行なわれた職場大会会場に入場し、同大会に
おいて、中央執行委員の中央情勢報告に次いで行なわれた東北地本傘下の各地区本
部委員長の挨拶に続いて挨拶し、同大会終了後、午前一一時三六分ごろ、右全逓中
央執行委員らと共に組合員の先頭に立ち、同会場から仙台局まで行進し同局構内に
入り、午前一一時四六分ごろから同局裏庭で全逓宮城地区本部書記長P8の司会によ
り開かれた集会において、右全逓中央執行委員の挨拶に次いで「団結頑張ろう」の
音頭をとつた。なお、その直後ストライキ参加者は全員就労した。
 以上がストライキ当日における原告の言動の総べてであつて、そのことから明ら
かなとおり、原告は、終始全逓中央執行委員の指揮下にあつてその指示に従つて行
動していたものであつて、原告が他の組合役員に指示するとかその行動について相
談を受けたことはない。しかして、その行動には他の組合員と比較して特に目立つ
た点はなかつたのである。
 なお、被告は、原告が夜勤者の勤務状態を見るため郵便課事務室に入つた行為に
つき、それは非違行為である旨主張するが、組合役員が組合員の働らいている職場
を訪れ労働条件、その労働環境等を点検することは、組合活動を行なうために欠く
べからざることであつて、このことは東北地本内において労使間の慣行として永い
間認められてきたところであり何等非難されるべきことではない。
(3) 次に、右ストライキによる業務阻害の点について述べれば、本件ストライ
キの結果若干業務に停滞をきたしたことは認めざるを得ない。例えば、貯金、保険
関係の集金業務が半日停滞したこと、通常配達便(速達便を除く)の一号便が欠便
となり約九万通の配達が半日遅れたこと、速達配達便は、ストライキ中は全部欠便
となつたこと(但し、当日の午後完全にその配達を完了している。)である。とこ
ろで、被告は、小包一、八○○個の配達遅延があつたと主張するが、この中には前
日からの滞留分も含まれているのであつて、本件ストライキのため遅延したもので
はない。また、郵便、貯金、保険の窓口業務は、市内の各特定郵便局長ならびに仙
台局の管理者らが代行しているのでその業務は支障なく遂行されたのである。しか
して、右ストライキの結果市民からの苦情は一件もなかつたのである。また、当日
は、郵便物の配送を郵政省から請負つている日本郵便逓送株式会社の従業員をもつ
て組織する日本郵便逓送労働組合が本件ストライキに歩調を合わせて半日ストライ
キに突入しており、その結果仙台地方においては、ストライキ参加人員六二名、参
加車両三〇台で五一便が欠便となつているのであり、このことが仙台局における業
務停滞に影響を与えたことも充分考えられるのである。要するに、本件ストライキ
は平穏かつ整然と行なわれ、国民生活に重大な支障をきたすような結果は発生して
いない。
3 法律上の主張
 ストライキは、憲法上保障された争議行為であるから、これに対し、懲戒処分を
なし得ない。これを詳述すれば、次のとおりである。
(一) 公共企業体等労働関係法(以下公労法という。)一七条は、憲法二八条に
違反し無効である。而して、公労法一七条が違憲・無効であれば、ストライキは同
条違反とはならず、それが平穏に行なわれる限り、信用失墜行為でも全体の奉仕者
にふさわしくない非行にも該当しない。従つて、本件ストライキを同条違反とし、
国公法八二条に基づいてなされた本件処分は、無効である。
(二) 仮りに、右主張が容れられないとしても、労働組合の集団的行為であるス
トライキに対しては、公労法違反を理由として国公法上の懲戒規定を適用すること
はできない。けだし、国公法上の懲戒規定は、個人の非違行為に対する懲罰を目的
として規定されているものであるところ、ストライキは、団体行動権の行使であ
り、個人の行為に分解することができないからである。従つて、ストライキが公労
法違反となつたとしても、そのことは集団法としての労働法の範囲内における制
裁、すなわち、公労法一八条の解雇以外の効果を認めることはできない。そうであ
るとするならば、国公法八二条一号にいうところの「この法律又はこの法律に基づ
く命令」のうちに公労法が含まれないことはもとより当然であるとともに、公労法
一七条違反が個人の行為と無関係であることは、当該行為が国公法上の懲戒規定に
は該当しないことになる。
(三) 公労法一七条がストライキを禁止しているのは、国民生活全体の利益を図
るという政策目的のためである。この点において、同条は、保護法益を指揮命令権
の確保、職場秩序の維持を目的とする国公法上の懲戒規定と異なるものである。従
つて、公労法一七条に違反することが直ちに国公法上の懲戒規定に該当することに
はならない。公共企業体の職員の行なうストライキもそれが国民生活に重大な障害
をもたらし社会公共にきわめて大きな影響を与えるということであれば、正当なら
ざるストライキとして右国公法上の懲戒規定に該当する場合があるかも知れない
が、しかし、そのことは、公労法一七条とは全く別なことなのである。公労法一七
条につき、この解釈を超えて労働組合の団体行動権の行使を全面的に違法にする機
能を有すると解するならば、同条は、憲法二八条に違反する。果たしてそうである
とするならば、公労法一七条はその保護法益のゆえにその違反者に対しては、同法
一八条の解雇以外の効果をもたらすことはできない。ある行為がある法令上違法と
されたからといつて、その違法性が必ずしもすべての法益に及ぶものではなく、そ
の行為を違法とする法令の目的に鑑みて、その保護しようとする法益等との関係に
おいてのみ相対的にこれが及ぶにすぎないのである。しかして、公労法一七条の形
式的違反が直ちに国公法上の懲戒規定に該当しないとすれば、ストライキの結果国
民生活に重大な障害が生じ、社会公共に大きな影響を与えたときにのみかかる結果
をもたらした公務員が国公法九九条、八二条三号に該当するというべきである。本
件酒田局、仙台局におけるストライキについては、前述したところから明らかとな
つたとおり、国民生活に重大な障害をもたらしたとか、社会公共にきわめて大きな
影響を与えたとは到底いうことはできない。
 仮りに、右主張が容れられないとしても、すでに述べたとおり、公共企業体の職
員の団体行動権もまた保障されるべきであるとする憲法二八条の趣意からすれば、
短時間の単純な労務不提供であつて、暴力を伴わず、政治目的でもなく、かつ国民
生活に殆んど障害をもたらさないストライキについては国公法上の懲戒規定には該
当しないから、これを適用することはできない。けだし、かかるストライキは、公
務員の信用を失墜するものではなく、非行ということもできないからである。本件
ストライキは、まさにかかる態様のストライキであつた。
三 違法事由(その二)-不当労働行為
 本件処分は前述の第二、二、2(四)(2)④記載の如く不当労働行為性を有す
るものであるが、更に仮に被告主張の処分事由が存在するとしても、本件処分は、
労働組合法七条一号および三号に該当し無効である。
1 労働組合法七条は、公共企業体の職員および労働組合にも適用される。ところ
で、本件処分の理由とされているビラ貼り行為、集団示威行動が正当な組合活動で
あることは既述のとおりであり、ストライキもまた公労法一七条が憲法違反であれ
ば正当な組合活動に他ならず、従つて、本件処分は、原告が労働組合の正当な行為
をしたことの故をもつてなされたものであるから、労働組合法七条一号前段に該当
する。
2 原告は、全逓の組合役員を歴任し、東北地方における組合活動の指導者として
従来から活発な活動を行なつてきたものであるところ、仙台郵政局ひいては被告
は、東北地本が原告の統率のもとに強力な組合活動を行なつていることをこころよ
からず思い、原告を郵政事業から放逐し、それによつて東北地本の組合活動に介入
し支配することを企図し、争議行為等の存在に籍口して本件処分をなしたのであつ
て、労働組合法七条三号前段に該当する。
四 違法事由(その三)-懲戒権の濫用
 仮に原告の前記主張が理由がないとしても、本件処分は著るしく苛酷なものであ
り、懲戒権の濫用として無効である。以下、その理由を詳述する。
1 全逓各地方本部委員長らに対する処分との比較
 昭和四〇年の春闘に際しその責任を問われ懲戒免職処分となつたのは原告が唯一
人であり、原告以外の各地方本部委員長は、起訴休職中の一人を除き、いずれも停
職九ケ月ないし一年の懲戒処分に過ぎないこと、しかも原告は、全逓中央本部の指
令に従い他の地方本部委員長とまつたく同一の行動をとつたに過ぎないこと、本件
処分は、仙台局における半日ストライキの責任者でありかつ昭和四〇年春闘の各ス
トライキならびに闘争戦術を企画、実施させた全逓中央執行委員P4の解雇処分より
もはるかに重い処分であること等からみて、本件処分が著るしく過重であり、不当
であることは明白である。
2 原告のみが特別に重い処分に付された形式的理由
 全逓各地方本部委員長の昭和四〇年春闘以前の処分歴をみるに、原告より処分回
数の多い者が三名もおり、その処分内容も似たりよつたりである。よつて、その過
去の処分歴からは原告が本件春闘によつて特に重く処分される理由は説明できな
い。ところで、昭和四〇年春闘につき、右各地方本部委員長の処分事由は、三月一
七日と四月二三日の各ストライキの実践指導のみであるが、原告の場合は右ストラ
イキ以外に示威行進およびビラ貼りの各行為が付加されている。処分量定の形式的
な差異はこの点にある。しかしながら、各郵政局庁舎内でのビラ貼りや示威行進、
廊下での坐り込みは全逓中央本部の指導に基づき春闘期間中全国各地の各郵政局等
で一せいに実施されたことであつて、東北地本のみで行なわれたものではない。例
えば、全逓関東地方本部の場合、東京郵政局庁舎へのビラ貼りは随時行なわれてお
り、かつ三月二五日には郵政省前に約一、〇〇〇名の組合員を動員し中央本部の宣
伝カーを使い集団示威行動を行なつているが、この際は同庁舎内広場においてこれ
ら組合員が労働歌を合唱し、デモ行進を行なつている。このように原告は他の各地
方本部委員長とまつたく同じ行動をとつているのにかかわらず原告に対してのみ右
各地方本部委員長には不問に付している集団示威行進、ビラ貼りをことさらにとり
上げ(しかも前述したとおり、原告はビラ貼りには関係ないことは明白である。)
懲戒免職といつた一番重い処分にしたことは、どのように考えても正常な感覚では
納得できないのである。そして、このことは他の意図をもつた極めて恣意的なもの
であることを裏付けるものということができる。
3 本件処分は、急激に力をつけてきた東北地本の組織に対する意図的な報復およ
ぴ同組織への弾圧の一として、当時定員不足により慢性的遅配が続いていた東北に
おける郵便業務の渋滞の責任を組合に転嫁することをねらい、当時の仙台郵政局長
P9の組合敵視を根本とする労務対策の表われとして行なわれたものである。
4 処分説明書に記載された処分事由の一部が不存在の場合、当該処分は相当性を
欠く。前記第二の二の2(三)、(四)の(1)で述べたように本件処分事由のう
ち、横手局におけるストライキ、仙台郵政局における四月一五日および同月二二日
の各ビラ貼り行為につき、原告はまつたく関係のないことが明らかとなつたのであ
るから、これらを処分事由のうちに含ましめてなされた本件処分を維持するとすれ
ば、まさに懲戒権の過大行使となるのであり、この面からも本件処分は相当性を欠
きその取消しは免れない。
5 ILO結社の自由委員会の苛酷な行政処分の排除勧告
 全逓は、ILOに対し、郵政当局のなしたストライキに対する苛酷な懲戒処分の
救済を求めて提訴したところ、ILO結社の自由委員会は、昭和三八年五月の理事
会において日本政府に対し、ストライキ一律禁止の再検討、苛酷な懲戒処分の排
除、不当労働行為の根絶、救済制度の完備等を求めるとして全逓の主張を認めた中
間報告を出しており、さらに昭和四八年秋ごろには右中間報告をさらに前進した最
終結論(救済の勧告)が出されるということである。このことは郵政当局が本件処
分を含め現在まで全逓のストライキ実践指導者またはその参加者に対しなした厳し
いそして苛酷な懲戒処分が国際労働問題となつていることを示し、国際的にみても
許容されないことを裏付けるものであり、この点からしても本件処分は著るしく苛
酷で不当なものである。
第三 被告の主張
一 認否
 原告主張一の事実は全部認める。
 同二の主張については後記第三、二、3末尾記載の如くこれを争う。
二 被告が原告に対し本件懲戒処分をしたのは、次のような理由に基づく。
1 本件処分をなすに至つた経緯
(一) 全逓の闘争指令の発出の経緯について
(1) 全逓は、公労協が昭和四〇年三月六日、ILO八七号条約批判、スト権奪
還、大幅賃金引上げなどの数項目の闘争目標を貫徹するために、昭和四〇年春期闘
争第二次統一行動としての第一波統一ストライキを、同年三月一七日に実施する旨
決定したのに呼応して、同月八日、中央執行委員会を開催し、全国の拠点郵便局所
においては、午前八時三〇分から同九時三〇分までの一時間の時限ストライキの実
施を、その他の郵便局所においては、全国一斉休憩時間中の総決起大会を開催する
ことを決定し、同日、全逓中央執行委員長の闘争指令第二〇号(準備指令)を、全
逓の下部の各級機関宛てに発出した。さらに、全逓は、三月一五日に至り、前記指
令発出後の情勢分析をなした結果、前記指令による時限ストライキ突入方針を変更
する必要なしと確認したうえ、同日同委員長名の闘争指令第二一号をもつてストラ
イキ突入等の実施指令を発出するに至つた。
 他方、全逓は、同年三月八日付の全逓企第四五号の指導文書をもつて、三・一七
ストライキの実施個所数を各地方本部毎に決定し、地本傘下におけるストライキ実
施箇所を二箇所と指定通知するとともに、その具体的なストライキ実施郵便局の指
定は、地方本部とその傘下の各地区間で協議し、三月一二日までに中央本部に報告
し、中央本部と協議のうえ最終決定を行なう旨を全逓傘下の各地方本部および地区
本部委員長あてに指導した。
 右指導を受けた東北地本では、三月一〇日傘下各地区本部委員長会議を招集し、
協議のうえ、東北地本傘下において各地区本部毎に一局、合計六局のストライキ候
補局を選出し、これを中央本部に報告した。その後、東北地本と中央本部と協議し
た結果、東北地本傘下のストライキ実施郵便局を最終的に酒田局および横手局の両
局とすることに決定した。
(2) 次に、公労協は、昭和四〇年四月一四日、拡大共闘委員会を開催し、七、
五〇〇円の賃上げ獲得のために四月一五日にストライキ宣言を発表すること、およ
び四月二三日、第二波の半日ストライキに突入するとの準備指令を、同月一五日付
で各単産委員長等に発出することを確認した。全逓は、右のストライキ宣言および
準備指令に呼応して、四月一九日(被告準備書面には四月二〇日記載されている
が、弁論の全趣旨から四月一九日の誤記と認める。)、中央執行委員会を開催し、
これより先の四月一二日付の指令第二五号(準備指令)をもつて四月二三日、各中
央郵便局および各統括局、またはこれに準ずる局の中から別途指定する局の半日ス
トラィキ突入等を指令していた当該指令内容の実行ならびに半日ストライキに突入
しない職場における休憩時間中の総決起大会の開催等の行動を命ずるために、同月
二〇日付で指令第二六号を下部の各級機関に宛てて発出した。そして、前叙した場
合と同様な方法で(但し、地区本部委員長会議が開催されたのは四月一七日)地本
傘下における半日ストライキの実施郵便局を仙台局に決定した。
(二) 闘争指令発出に対する郵政省の措置について
 前記の全逓闘争指令第二一号に対し、郵政大臣は、昭和四〇年三月一六日付の警
告書をもつて、全逓臨時組合代表者P10に宛てて、三月一七日の一時間ストライキ
は公労法一七条に違反する違法な争議行為であるから、これを取り止めるよう申し
入れるとともに、万一これを実施した場合には、その責任者、指導者は勿論のこ
と、これに参加した者についても厳正なる処分をもつて臨む旨の警告を発した。さ
らに、仙台郵政局長(以下郵政局長という。)においても、同日付の文書または電
報をもつて東北地本委員長および各地区本部執行委員長に宛てて、郵政大臣の前記
警告と同趣旨の警告を発した。
 また、前記の全逓闘争指令第二六号に対し、郵政大臣は、四月二一日付の警告書
をもつて、前記全逓臨時組合代表者に宛てて、万一組合が四月二三日の半日ストラ
イキを実施するような場合においては、その責任者、指導者に対しては解雇を含む
厳正な処分を行なうとともに、これに参加した職員については、減給以上の処分を
もつて臨むとの趣旨の警告を発出し、他方、郵政局長においても、同日付の文書ま
たは電報をもつて、東北地本委員長および各地区本部執行委員長に宛てて、郵政大
臣の前記警告と同趣旨の警告を発した。
2 本件処分事由としての事実関係について
(一) 酒田局関係
 原告は、前記郵政大臣および郵政局長の各警告を無視し、違法な闘争指令第二一
号に基づく一時間ストライキを実施せしめる目的をもつて、昭和四〇年三月一六
日、酒田局におもむき、同局局長P1に対し、一六日および一七日の両日、酒田支部
の執行権を停止し、自己がストライキの実施責任者である旨の通告をなし、翌一七
日、春闘統一行動総決起大会(以下大会という。)と称し、午前八時八分ごろ大会
会場に入場し、酒田局の管理者の再三にわたる解散要求ならびに就労命令(午前八
時四二分ごろ、大会会場入口階段付近において、同大会開催責任者である原告宛て
および同支部長P11宛ての酒田局局長名の解散要求書ならびに午前八時三〇分から
勤務を要する同局庶務会計、貯金、保険各課の職員に郵便課外務主事一名を加えた
六一名に対する各人宛の就労命令書を、同局保険課長P12が支部執行委員P13に手
交して伝達方を依頼し、さらに、同八時五五分ごろ同所において、前記両名に対す
る解散要求書を前同様の方法で、同執行委員に伝達方を依頼した。)を無視して集
会を強行実施し、この間、全逓山形地区本部書記長P14をして約二五名の部外の応
援者を指導せしめて、同局通用門前においてピケの任に当らしめ、また、大会終了
後においては、原告は、大会参加者の隊列の先頭に並んでこれを引率して、午前九
時二三分ごろ同局構内に到着し、参加した同局職員は、同時刻ごろ就労するに至つ
た。なお、酒田局におけるストライキの実施ならびに業務阻害等の状況は、次のと
おりである。
(1) 大会開催場所および日時。酒田市浜田堀南飽海地区労働会館(局から約
一、五〇〇米)。昭和四〇年三月一七日午前八時三五分ごろから同九時八分ごろま
での約三三分間
(2) 欠務した時間。午前八時三〇分から同九時二三分までの五三分間
(3) 参加人員。①欠務者数六一名ほか勤務時間外の参加者数四名②同局職員以
外の部内の参加者数七名③部外の参加者数約数約二五名(ピケ要員)
(4) 業務阻害の状況。①郵便外務主事一名のストライキ参加中、郵便外務員に
対する書留郵便物の授受は、郵便外務主任がこれに当つた。②貯金窓口担当者五名
のストライキ参加中、同八時三〇分から同九時二三分まで特定郵便局長三名がこれ
に当つた。③貯金外務員の集金、募集のための局外への出発が、約四五分遅延し
た。④保険窓口担当者一名のストライキ参加中、保険課課長代理がこれに当つた。
⑤保険外務員の集金、募集のための出発が、約四五分遅延した。⑥以上の外、同局
局長は、貯金および保険の窓口に、他局の利用を願う旨の掲示を行ない、業務の運
営を極力正常化させるよう措置せざるをえなかつた。
(二) 横手局関係
 原告は、前述した酒田局の場合と同様、東北地本書記長P2および全逓秋田地区本
部執行委員長P15と相互意思相通じて、一時間ストライキを実施せしめる目的をも
つて、右両名を、一六日、横手局におもむかしめ、同書記長をして、同局局長P
16に対し、一六日および一七日の両日、横手支部の執行権を停止し、同書記長がス
トライキの実施責任者である旨の通告をなさしめ、翌一七日、春闘統一行動総決起
大会(以下大会という。)と称し、以下に述べるが如き行為に出でしめた。同書記
長および同地区本部執行委員長ならびにその他の大会参加者は、同日午前八時三〇
分ごろ大会会場に、二〇数名の者は個々的に、その他の者は一団となつて入場し、
横手局の管理者の中止要求ならびに就労命令(午前八時四三分ごろ同書記長、同地
区本部執行委員長および横手支部長P17の各人宛のP16局長名の中止要求書ならび
に同八時三〇分から勤務を要する同局庶務会計、貯金、保険各課の職員三六名に対
する各人宛の就労命令書を、同局庶務会計課長P18、郵政局人事部管理課課長補佐
P19、同貯金部管理課服務係長P20らが大会会場におもむき、P19課長補佐がこれ
を交付しようとしたところ、同書記長は、自己宛ての中止要求書のみを同八時五七
分ごろ受領するに至つたが、その他の分の受領を拒絶した。)を無視して集会を強
行実施し、また、大会終了後においては、前記地区本部執行委員長を先頭に、隊伍
を組んで同九時一五分局構内に入り、気勢を上げた後、同九時二〇分解散し、同九
時二二分に就労するに至つた。なお、横手局におけるストライキの実施ならびに業
務阻害等の状況は、次のとおりである。
(4) 大会開催場所ならびに日時。横手市<以下略> 平源旅館(局から約一〇
〇米)。昭和四〇年三月一七日午前八時三〇分ごろから同九時一〇分ごろまでの約
四〇分間
(2) 欠務した時間。午前八時三〇分から同九時二二分までの五二分間
(3) 参加人員。①欠務者数三六名 ほか勤務時間外の参加者数一一名②局員以
外の部内の参加者数一三名③部外の参加者数一名
(4) 業務阻害の状況。①貯金窓口担当者三名のストライキ参加のため、午前八
時三〇分から同九時四〇分までの間、同局貯金課長および同庶務会計課課長代理の
二名がこれに当つた。②貯金外務員の募集および集金のための局外への出発が、約
三〇分遅延した。③保険窓口担当者一名のストライキ参加のため、午前八時三〇分
から同九時三〇分までの間、特定郵便局長一名がこれに当つた。④以上の外、同局
局長は、公衆室の入口および同局の玄関に、他局の利用を願う旨の掲示を行ない、
業務の運営を極力正常化させるよう措置せざるを得なかつた。
(三) 仙台郵政局関係
 原告は、前記指令第二五号(記の四項に「各級機関は、四月一五日全国一せいに
休憩時間、または時間外に職場大会を開催し、スト宣言を発表し、闘争態勢の確立
をはかり、政府、郵政省に大幅賃上げ要求を打電せよ。」とある部分参照のこ
と。)の趣旨に従い、昭和四〇年四月一五日および二二日、仙台郵政局において、
同局管理者らの制止を無視し、多数の組合員を指揮して同局庁舎内で示威行進を行
ない、あるいは多数のビラを許可なく同局庁舎内に貼付せしめる等し、よつて職場
の秩序を紊乱し、業務の正常な運営を著しく阻害したものである。その詳細は以下
に述べるとおりである。
(1) 原告は、四月一五日、
① 東北地本傘下の多数の組合員を動員し、同地本役員ならびに全逓宮城地区本部
書記長P8(以下全逓宮城地区本部書記長という。)らと相互意思相通じ、同地区書
記長をして、午前三時二五分ごろから同四時一五分ごろまでの間において、「団結
の力で破れ低賃金(公労協)」、「ヤレ押せソレ押せ春闘だ闘いとるまでドンと押
せ(公労協)」等と記載した四種類のビラ約二、三〇〇枚を当局の許可を得ない
で、かつまた、管理者等の再三にわたる制止を無視して、郵政局庁舎内の一階ない
し三階の各個所に貼付せしめたばかりでなく、同四時ごろ、黒ジャンバーを着用し
て庁舎の一階ホールに立つていた原告に対し、同局人事部管理課長P6(以下管理課
長という。)が、「ビラ貼りを直ぐ止めよ」と申し入れをしたにもかかわらず、
「まあまあ」と言つてこれに応じないばかりか、同四時ごろから同一五分ごろまで
の間、庁舎の一階を徘徊してビラ貼りを監視し、威勢を添え、
② 相互意思相通じ、宮城地区書記長をして、同六時四二分ごろから同八時ごろま
での間、東北地本傘下の各地区および仙台市周辺の各支部から動員された青年部員
約二〇名を八回にわたり、同局建築部管財課長P21(以下管財課長という。)、同
人事部管理課課長補佐P19(以下管理課課長補佐という。)および同人事部管理課
労働係長P22(以下労働係長という。)らの管理者の制止を無視して、同局庁舎内
の組合事務室に誘導して入室せしめたため、同七時三〇分ごろ管理課長らが、前記
ビラの撤去および無断入室者の退去方を申し入れるため、同局庁舎内の東北地本事
務室におもむいたところ、前記書記長が、同室入口ドア前で両手をひろげて入室を
阻止したため、その場に出てきた東北地本青年部長P3(以下東北地本青年部長とい
う。)に対し、原告宛のビラ撤去ならびに退去方の申入書の伝達方を依頼したとこ
ろ、同人は、これが受領を拒絶したので、止むなく口頭で前記趣旨の伝達方を依頼
したが、原告は、この申し入れにも応ぜず、③ 相互意思相通じ、東北地本書記長
をして、午前八時一七分ごろ、全逓旗および横断幕を同局庁舎玄関前の柵に組合員
を指揮して取り付けさせたので、同九時過ぎごろ、管財課長および管理課課長補佐
が東北地本事務室におもむき、庁舎構内の全逓旗、横断幕の撤去ならびに組合員の
退去方の要求文書を原告に手交するため、該文書の内容を説明したうえ、これを受
領するよう申し入れたが、原告は、これが受領を拒否し、かつ、この申し入れにも
応ぜず、④ 相互意思相通じ、東北地本副委員長P5をして、午前九時一五分ごろか
ら同九時二八分ごろまでの間、管理課長席にいた同課長に対し、賃金七、五〇〇円
引き上げ、高校卒の初任給を二万円とすること、日曜配達の廃止等五項目につき、
執拗に集団交渉のための郵政局長または人事部長との会見申し入れをなさしめ、⑤
 相互意思相通じ、全逓宮城地区本部書記長をして携帯マイクを使用せしめ、午前
八時三〇分ごろから同局庁舎玄関前で約一二〇名の組合員が整列して労働歌を合唱
したりしながら集会を開いていたのに対し、同時刻過ぎごろ、さらに整列するよう
呼びかけしめたうえ、白地に赤の全逓の文字入りの鉢巻をつけさせ、労働歌を合唱
させて気合を入れしめ、同九時二五分ごろには、東北地本青年部長をして、前記約
一二〇名の組合員に対し、三列縦隊を組ましめ、「ピイピイ」と笛を吹かせて気合
を入れさせたうえ、同九時三一分ごろ、前記組合員らは、二班に分かれ、一班は東
北地本青年部長、二班は全逓宮城地区本部青年部長P7(以下全逓宮城地区本部青年
部長という。)が、それぞれの先頭となつて入局せしめ、管理者らの再三にわたる
庁内デモ中止命令および庁内デモ禁止の掲示を無視し、「ピイピイ」と笛を吹か
せ、「ワツシヨイ、ワツシヨイ」の音頭を取らせながら、東北地本書記長の誘導の
下に、一階から四階までの階段および各階のホールを利用してデモ行進をなさし
め、同九時四五分ごろには、デモ隊をして三階人事部長室前のホールに坐り込ま
せ、労働歌を合唱せしめ、原告自身もデモ隊が入局する際には、正面玄関入口の監
視員室寄りでこれを監視するとともに、入局終了後は、デモ隊の約二米後について
回わり、さらに、同九時四六分ごろには、前記坐り込み中の組合員に挨拶してい東
北地本青年部長の傍に立つて事態の推移を見守るの挙に出て、⑥ 相互意思相通
じ、東北地本副委員長をして管理課長席の同課長に対し、午前九時四七分ごろから
同課長に集団交渉を執拗に強要せしめていたが、同一〇時ごろに至るや、東北地本
書記長、全逓宮城地区本部執行委員P23、同地区本部青年部長およびその他の組合
員らとともに、東北地本副委員長に合流し、同課長に対し、人事部長との集団交渉
方を執拗に強要したが、同課長がこれを拒絶するや、前記の者らは、同一〇時四三
分ごろ退室するに至つたが、その後、同一〇時四五分ごろ、さらに、東北地本副委
員長をして人事部長との集団交渉方を強要せしめたが、前同様、同課長がこれを拒
絶したところ、同副委員長は、同課長の前で要求書を読み上げたのち直ぐ解散させ
るから代表者として二〇名の青年部組合員を入室せしめることを認めて貰いたいと
申し入れてきたので、同課長は、その時点における周囲の諸事情を考慮したうえ、
右申し入れに応じ、同一一時一〇分ごろ、右の者らと会見したところ、同副委員長
は、前記の要求書の内容を読み上げたばかりでなく、申し入れ条件に反し、「直ち
に本省へ上申せよ」、「検討して回答せよ」と強要するに至つたが、遅れて入室し
てきた原告は同副委員長とともに、話し合いを打切る旨の宣言をして同一一時二〇
分ごろ同室を退去し、⑦ 相互意思相通じ、他方、東北地本書記長をして、午前一
〇時四七分ごろ、坐り込み隊に「管理課長にいくら話してもらちがあかない。実力
行使する。」と発言せしめたうえ、坐り込み隊にジグザグデモを指導せしめ、同局
庁舎の三階ホールを数回デモ行進しながら人事部長室前で、「人事部長に会わせ
よ」と大声で叫び、デモ隊を人事部長室に入室させようとしたので管理者側がこれ
を阻止していたところ、同一一時二一分ごろ原告はデモ隊に向つて、「元の状態に
かえつて下さい」と指示して坐らせ、これに引続き、同副委員長をして管理課長と
の交渉模様を発表させた後、「坐り込み、デモ、ビラ貼りは最低である組合運動
だ。他の郵政局では交渉にも応じている」等と挨拶せしめたが、さらに原告は、
「郵政局管理者の実態は、このようなものであり、ストにおいて、さらに物溜め闘
争をやる」と挨拶した後、同一一時三二分ごろ、東北地本青年部長をして、午後の
スケジユールを説明せしめ、労働歌を合唱せしめた後、同一一時三六分ごろ、原告
は、右手を上げながら大声で「団結頑張ろう」の三唱の音頭を取り、坐り込み隊を
解散させた。
(2) 原告は四月二二日、
① 午後八時一六分ごろから同八時二六分ごろまでと、同九時一五分ごろから同九
時二〇分ごろまでの間において、全逓宮城地区本部執行委員長P24および同地区本
部執行委員P23らと相互意思相通じて、前叙の四月一五日における四種類のビラと
同様のビラおよび「生きる権利だ大巾賃上げ、四・二三ストライキで要求貫徹(公
労協)」と記載したビラ約一、二一四枚を、当局の許可を得ないで、かつまた、同
局管理者らの再三にわたる制止を無視し、あるいは隠密裡に、庁舎内の各場所に貼
付させた。
② 原告は、午後八時一六分ごろ、右①で掲記した地区の役員らが、一階の階段か
ら二階の階段の壁面にかけ順次ビラを貼付しながら上つてくるその後からついてき
て、自らも該ビラを手で押しつけるなどの挙に出でていたので、同局人事部管理課
課長補佐P25および同課労働係長P22が原告に対し、これを中止するよう口頭で申
し入れたところ、「あまりがやがやするな」とうそぶいたうえ、そこでのビラ貼り
を中止して前記の者らとともに玄関ホールの方面に行つた。
③ 午後八時二〇分ごろ、玄関ホールに居た原告に対し、人事部管理課課長補佐P
19が、「ビラ貼りを止めてすぐ退去させてくれ、一五日のビラ貼りでまだ足らんの
か」と申し入れたところ、原告は、「たいしたことはない」と言つて応じなかつた
ので、同八時二二分ごろ、同所において同課長補佐が、さらに、「委員長ビラ貼り
を止めさせて退去させてください」と申し入れたが、原告は、「やめさせない。ビ
ラ貼りは労働者の労働運動の最小限のものだ」と言つてこの申し入れにも応じなか
つたので、前記労働係長が、同八時二四分ごろ、重ねて「委員長ビラ貼りを止めな
さい」と申し入れたところ、「考え中である」とのみ言つて応じないで、ビラ貼り
状況を監視していたが、同八時二五分ごろに至り東北地本事務室へ引き上げた。
④ 午後九時一六分ごろ、一階階段付近に居た原告に対し、管理課長が、ビラ貼り
の中止方を申し入れたがこれに応じなかつた。
 前叙した四月一五日および二二日のビラ貼りにつき、郵政局においては、そのよ
うな行為を阻止するため、予め多数の管理者側職員を配置せざるのやむなきに至
り、また、多数のビラの撤去ならびに清掃のため多額の経費を要するに至つたほ
か、デモ隊の不法侵入の予防ならびに示威行進、あるいは坐り込みに対する中止、
または排除のために多数の職員の配置を必要とするに至つたばかりでなく、管理者
に対する集団交渉の強要、示威行進あるいは長時間にわたる坐り込み等のため、業
務遂行に著しい支障を生じ、職場秩序を著しく紊乱した。
(四) 仙台局関係
(1) 原告は、全逓中央執行委員P4および東北地本傘下の各地区本部役員ならび
に全逓仙台地方郵便局支部(以下支部という。)の役員らと相互意思相通じ、前記
郵政大臣および郵政局長の各警告を無視して違法な闘争指令第二六号に基づく半日
ストライキを実施せしめる目的をもつて、昭和四〇年四月二二日、前記中央執行委
員および東北地本書記長ならびに全逓宮城地区本部執行委員長P24、同書記長P8、
同執行委員P23とともに、仙台局におもむき、同局局長P26に対し、前記中央執行
委員は、「四月二二日、二三日の二日間、支部の執行権は一切停止し、私が執行す
る」と通告し、四月二三日、四・二三半日スト第三次公労協春闘統一行動と称し、
仙台局の管理者らの再三にわたる解散要求ならびに就労命令を無視して集会を強行
したものであるが、これが実施に当り、各人の分担して行なつた役割は、以下述べ
るとおりである。
① P4全逓中央執行委員
(ア)四月二三日、午前七時五七分ごろ、仙台局の通用門入口付近において、前記
中央執行委員宛の仙台局局長名のピケの解散要求書を、同局会計課長P27(以下会
計課長という。)が交付を試みたところ、同人はこれを受領し、(イ)同九時三五
分ごろ職場大会会場の受付において、同人宛の同局長名のストライキ中止要求書な
らびに当日勤務を要する同局の各課職員三八三名に対する各人宛の就業命令書を、
同局庶務課長P28(以下庶務課長という。)が東北地本執行委員P29に手交してこ
れが伝達方を依頼し、(ウ)さらに、同一〇時五九分ごろ同所において、前同スト
ライキ中止要求書ならびに当日勤務を要する同局の職員一六名に対する各人宛の就
業命令書を、庶務課長が全逓宮城地区本部執行委員P30に手交してこれが伝達方を
依頼し、(エ)また、職場大会会場における大会終了後、同一一時三六分ごろスト
ライキ参加者は、全逓中央執行委員を先頭にして隊列を組んで「がんばろう」と歌
いながら局構内に入り、全逓宮城地区本部書記長の司会の下に、同一一時四〇分ご
ろから同局裏庭で集会を開催したので、同時刻ごろ「職場大会のための庁舎横内の
使用は認めないから即刻解散し当局職員を就業せしめられたい。」と記載した前回
要求書ならびに命令書を、庶務課長が交付を試みたところ、全逓中央執行委員は、
これが受領を拒絶した。
② 原告本人
 原告は、四月二三日午前五時四五分ごろから同九時ごろまでの間、仙台局通用門
入口付近において、全逓の腕章、鉢巻を着用して東北地本書記長、同青年部長およ
び全逓宮城地区本部書記長、P23同地区本部執行委員ならびに支部書記長P31らと
ともに、ピケ態勢の下で局員の入局を監視していたが、その間、(ア)同七時九分
ごろ、無断で郵便課発着口から同課一階事務室に入り、同局職員二名と話していた
ので、郵便課長が、二回にわたつて退去を要求したところ、「あなたたちと同じく
私も最高責任者であり、これ等を見る義務がある」と言つて同七時一五分ごろまで
坐り込み、(イ)同七時五七分ごろ、同局通用門前路上の局消耗品倉庫入口付近で
立哨していたので、会計課長が、ピケ解散要求書を手交したところ、「ピケなど張
つていない。書き直して来なさい」と言つてこれに応ぜず、同要求書を返還し、
(ウ)同八時一六分ごろ東北地本書記長およぴ全逓宮城地区本部書記長らととも
に、同八時三〇分から宿明となる宿直勤務者を職場大会に参加せしめる目的をもつ
て、前記事務室へ無断入室し、宿直勤務者からの小包の引き継ぎ方を郵便課長に要
求し、(エ)同八時四二分ごろから同四六分ごろまでの間、前記消耗品倉庫入口付
近において、全逓中央執行委員および東北地本書記長ならびに全逓宮城地区本部執
行委員P23とともに、スクラムを組み、同局通用門前のピケ隊に向い体を左右に振
りながら全逓歌と頑張ろうの歌を合唱し、(オ)同九時二四分ごろ、ジヤンバー、
赤腕章の姿で、全逓中央執行委員および全逓宮城地区本部執行委員長とともに、職
場大会会場に入り、大会終了後の同一一時三六分ごろ、デモ隊の先頭に立つて頑張
ろうの歌をうたい、手をたたきたがら局通用門から構内に入り、同四六分ごろ、局
裏庭で無許可で開催された集会において、「団結頑張ろう」の三唱の音頭をとつ
た。
③ 東北地本書記長
 東北地本書記長は、(ア)四月二二日午後一一時四〇分ごろ、仙台局に無断入局
して局内を徘徊し、(イ)同月二三日午前四時二〇分ごろ、同局一階郵便課事務室
に無断入室して宿直勤務者の作業を監視し、(ウ)同五時四七分ごろ、局通用門付
近で全逓の腕章、鉢巻を着用し、原告らとともに、ピケ態勢の下で局員の入局を監
視し、同九時三〇分ごろピケ隊に挨拶した。
④ 東北地本執行委員P29
 東北地本執行委員P29は、(ア)四月二三日午前五時五五分ごろ、全逓宮城地区
本部執行委員P23とともに、スト決行中と記載した立看板を、局通用門入口に管理
者の許可を得ないでかけ、(イ)大会終了後の同一一時四八分ごろ、同局保険課の
ストライキ参加者を引率して同課分室の表通用門前に至り、そこで一人一人に対
し、ご苦労さんと挨拶した。
⑤ 東北地本執行委員P32
 東北地本執行委員P32は、四月二二日午後一一時二〇分ごろ、同局庶務課事務室
に無断入室し、同三五分ごろまで居坐つた。
⑥ 東北地本青年部長
 東北地本青年部長は、四月二三日午前五時四七分ごろ②の冒頭で述べた行為に及
んだ。
⑦ 全逓宮城地区本部執行委員長
 全逓宮城地区本部執行委員長は、四月二三日午前七時二五分ごろ、庶務課長の制
止を無視し、同執行委員P23とともに、組合員五名を指揮して仙台局の会議用椅子
三七脚を、エレベーターを使用して無断で持ち出し、局通用門入口付近に並べてピ
ケ隊に使用せしめた。
⑧ 全逓宮城地区本部書記長
 全逓宮城地区本部書記長は、
 (ア)四月二二日午後一一時二〇分ごろ、仙台局庶務課事務室に無断入室し、同
三五分ごろまで居座り、(イ)同一一時四〇分ごろ、一階夜間窓口において、臨局
中の仙台南局貯金課長P33に執拗に抗議し、(ウ)同月二三日午前八時二五分ご
ろ、一階郵便課事務室へ無断入室して徘徊していたので、庶務課長が退去を命じた
ところ、同人はこれに応ぜず、同課長に対し、「宿明者は同八時三〇分に必ず帰え
せ」と言つて宿明者の勤務を監視し、(エ)同一一時二一分ごろ、局裏庭広場にお
いて、携帯マイクをもつて大会会場から帰つてきた組合員対し、「ご苦労さんで
す。一一時五〇分まで集会をやりますからしばらくお待ち願います」と呼びかけて
集会を司会し、同一一時四六分ごろ、「只今から入局されたい」と、マイクで放送
して解散させた。
⑨ 全逓宮城地区本部執行委員P23
 全逓宮城地区本部執行委員P23は、
 (ア)四月二三日午前四時二〇分ごろ、仙台局一階郵便課事務室に無断入室して
同課の職員の勤務を監視し、(イ)同五時五五分ごろ、④、(ア)で述べたように
無断で立看板をかけ、(ウ)同六時一五分ごろ、携帯マイクを肩にかけて局通用門
付近で原告らとともに、局員の入局を監視し、(エ)同七時二五分ごろ、前記⑦の
行為に及んだ。
⑩ 全逓宮城地区本部執行委員P30
 全逓宮城地区本部執行委員P30は、四月二三日午前八時ごろから大会会場の北入
口付近で入場者の監視に当つた。
⑪ 全逓宮城地区本部青年部長P7
 全逓宮城地区青年部長P7は、(ア)四月二三日午前五時四〇分分ごろ、全逓の腕
章と鉢巻を着用して、仙台局保険課分室に無断入室して、局員の入局を監視し、
(イ)同八時四二分ごろ、局通用門入ロ付近でピケ隊に向い、体を左右に振りなが
ら全逓歌、頑張ろうの音頭をとつた。
⑫ 支部支部長P34
 支部支部長P34は、四月二三日午前九時三四分ごろ、大会会場受付で組合員の入
場の監視の任に当つた。
⑬ 支部書記長P31
 支部書記長P31は、
 (ア)四月二三日午前〇時七分ごろ、仙台局一階郵便課出入口の扉のガラスに一
〇枚のビラを貼付し、(イ)同四時三分ごろ、東北地本書記長および全逓宮城地区
本部執行委員P23とともに、同局一階郵便課輸送係に無断入室して郵便業務応援者
の作業を監視し、(ウ)同五時四七分ごろ、②の冒頭で述べたような行為に及ん
だ。
(2) 仙台局におけるストライキの実施ならびに業務阻害等の状況は、次に述べ
るとおりである。
① 大会開催場所ならびに日時。仙台市日乃出会館七階ホール(局から約一、○○
○米)。四月二三日午前八時五〇分ごろから同一一時一〇分ごろまでの約二時間二
〇分間
② 欠務した時間。午前七時から同一一時四六分までの間但し、保険課職員は、同
一一時四八分までの間。最高四時間四六分間最低四六分間
③ 参加人員。(ア)欠務者数三九九名ほか、勤務時間外の参加者数約五〇名
(イ)局員以外の部内の参加者数約五〇名(ウ)部外の参加者数約一五名
④ 業務阻害の状況。(ア)運送便仙台駅と仙台局間の八便およびその他の一〇便
の郵便物を、郵政局郵務部輸送課課長補佐P35外五名の管理者が処理した。(イ)
通常配達便(速達を除く)市内九六区、市外六区の一号便の配達は、全部欠便とな
り、持出不能郵便物数は、第一、二種郵便で五万通、第三種以下の郵便で四万通に
達した。また、私書箱配布一万通および大口配達二万通は、郵政局郵務部施設課課
長補佐P36外四名の管理者が代行した。(ウ)速達配達便ストライキ中は全部欠便
となり、そのため、午後二時二〇分に至り、はじめて出発した。なお、速達郵便物
七千通の内、前記管理者が、大口の四百個所三千通を配達した。(エ)小包配達便
ストライキ中は全部欠便となり、その数は、一、八〇〇個に達した。(オ)貯金外
務出発が四時間三〇分遅れとなり、午後一時三〇分に出発した。持出不能集金票は
七〇〇件に達した。(カ)保険外務出発が四時間三〇分遅れとなり、午後一時三〇
分に出発した。持出不能徴収原簿は、八三七件、取立不能徴収原簿は七四八件に達
した。(キ)電信業務ストライキ中、五通の発信申込があつたが、四通は、発信者
に事情を懇示して電報局から発信することを了承して貰い、他の一通は、午後に発
信することの了解を得た。(ク)窓口業務(ⅰ)郵便 ストライキ中の書留引受数
は一二九件、小包引受数は書留八件、普通一五〇件、速達四〇件、料金別後納郵便
引受数七、五七二通。この窓口業務の処理には、仙台局郵便課課長代理一名と、仙
台二十人町特定郵便局長外三名の特定郵便局長が当つた。(ⅱ)貯金ストライキ中
の取扱数は、貯金関係受入七二件一、七一五、七六八円、貯金関係払出六五件一、
五七二、六九七円、非現金五件、翌日組入七九件。この窓口業務の処理には、小牛
田局貯金保険課長P37、仙台南局貯金課長P33外二名の特定郵便局長が当つた。
(ⅲ)保険ストライキ中の取扱数は、保険料受 入四件、五、六二〇円、貸付利息
受入五件、四、二四五円、解約その他一〇件。この窓口業務の処理には、塩釜局保
 険課長P38外一名の特定郵便局長が当つた。
3 法律の適用関係について
 原告の各違法行為およびこれに対する該当法条は、次のとおりである。
(一) 酒田局における、一時間ストライキの実施についての実践指導行為
(二) 横手局において一時間のストライキを実施せしめた行為
(三) 仙台郵政局における
(1) 四月一五日の同局庁舎内でのビラ貼り行為
(2) 前記2(三)日、(1)、②掲記の多数の組合員を同局庁舎内の東北地本
事務室に、管理者らの入局阻止を無視して全逓宮城(3) 同③掲記の全逓旗等の
柵への無断取付け行為およびこれが徹去ならびに退去方の申し入れに対する拒否行

要求の拒否行為(4) 同④掲記の東北地本副委員長をして、管理課長へ、郵政局
長または人事部長との間の集団交渉のための会見申し入れを執拗になさしめた行為
(5) 同⑤掲記の多数の組合員を指揮して同局庁舎内に、管理者らの入局阻止を
無視して入局させた行為および入局後、管理者らのデモ中止命令あるいは同禁止命
令を無視して示威行進ならびに坐り込みを行なわせた各行為
(6) 同⑥掲記の管理課長に対する東北地本副委員長による集団交渉の強要行為
および同課長に対する同副委員長による要求書についての回答あるいは本省への上
申方の各強要行為ならびに同課長に対し同副委員長および地本書記長らとともに、
人事部長との間の集団交渉を執拗に強要した行為
(7) 同⑦掲記の東北地本書記長とともに同庁舎内において、多数の組合員を指
揮して示威行進を行なつた行為
(8) 前記2(三)(2)、①ないし④掲記の四月二二日の郵政局庁舎内でのビ
ラ貼り行為
(四) 仙台局における
(1) 半日ストライキの実施についての実践指導行為
(2) 前記2(四)(1)②、(ア)掲記の同局郵便課事務室への無断入室行為
および退去要求の拒否行為
(3) 同(イ)掲記のピケ解散要求の拒否行為
(4) 同(ウ)掲記の同局郵便課事務室への無断入室行為
(5) 同(オ)掲記の同局構内での無許可集会の実施行為
(6) 同③、(ア)掲記の東北地本書記長をして同局に無断入局せしめた行為
(7) 同(イ)掲記の同書記長をして同局郵便課事務室へ無断入室せしめた行為
(8) 同④、(ア)掲記の東北地本執行委員らをして無断でスト決行中の立看板
をかけさせた行為
(9) 同⑤掲記の東北地本執行委員をして同局庶務課事務室へ無断入室せしめた
行為
(10) 同⑦掲記の全逓宮城地区本部執行委員長らをして同局の会議用椅子を持
ち出さしめた行為
(11) 同⑧、(ア)掲記の全逓宮城地区本部書記長をして同局庶務課事務室へ
無断入室せしめた行為
(12) 同(イ)掲記の全逓宮城地区本部書記長をして仙台南局貯金課長に対
し、執拗に抗議せしめた行為
(13) 同(ウ)掲記の全逓宮城地区本部書記長をして郵便課事務室へ無断入室
せしめた行為ならびに退去命令を拒否せしめた行為
(14) 同(エ)掲記の全逓宮城地区本部書記長をして同局裏庭における職員の
大会参加を、そそのかしたり、またはあおらしめた行為
(15) 同⑨、(ア)掲記の全逓宮城地区本部執行委員をして同局郵便課事務室
へ無断入室せしめた行為
(16) 同(イ)掲記の全逓宮城地区本部執行委員をして立看板をかけさせた行

(17) 同(エ)掲記の全逓宮城地区本部執行委員らをして同局の会議用椅子を
持ち出さしめた行為
(18) 同⑪、(ア)掲記の全逓宮城地区本部青年部長をして同局保険課分室へ
無断入室せしめた行為
(19) 同⑬、(ア)掲記の支部書記長をしてビラを貼付せしめた行為
(20) 同(イ)掲記の支部書記長をして郵便課輸送係へ無断入室せしめた行為
 以上掲記の各行為のうち、三月一七日の酒田局および横手局ならびに四月二三日
の仙台局における時限ストライキの実施行為は、公労法一七条および国公法九九条
に、その他の各行為は、同法九九条にそれぞれ違反し、共に同法八二条一号および
三号に該当する。
 しかして、被告は本件処分の事由として、原告主張のいわゆる基本的事由の外に
これに直接随伴して発生し、原告に予見可能な違法行為についても前記の如く原告
の責任を追及しているものである。
三 原告の法律上の主張に対する反論
1 公労法一七条は憲法二八条に違反するとの主張について
 公労法一七条が憲法二八条に違反しないことは累次にわたる最高裁判所の判決に
おいて確定しているところである。原告の主張は、理由がない。
2 国公法上の懲戒規定は、労働組合の集団的行為であるストライキには適用する
ことができないとの主張について
 被告の主張するところは、第一点として、原告が公労法一七条前段で禁止されて
いる争議行為を同条後段の禁止規定に反して、共謀し、そそのかし、あおる等の行
為(以下「あおり行為等」という。。)に出でたというのであつて、このあおり行
為等は争議行為が実行されたか否かにかかわりなく独立して成立する違法行為であ
るから、該行為が労働組合の集団的行為として行なわれたものであるとしても「個
人の行為に分解することができない」と評価すべきものではなく、原告主張は、こ
れを容れる余地がない。次に、被告の主張の第二点は、原告が東北地本の最高責任
者として、本件ストライキの各拠点局に臨局し、あおり行為等の対象たる本件の各
ストライキを実施するため自らこれに直接関与して実践指導し、あるいは東北地本
の書記長をしてストライキ拠点局に赴かしめ、その実践指導せしめたというにあ
る。しかして、この実践指導行為がストライキ当日勤務すべき義務を負つている職
員が参加したストライキ行為に吸収されて、その結果として個人の行為に分解する
ことができないというが如き理論は、その成立をみる余地は全然あり得ないのであ
る。従つて、原告のこの点に関する主張は、理由がない。
3 公労法一七条と国公法上の懲戒規定とは、その保護法益を異にするから、公労
法一七条違反については同条の解雇に限られるべきである旨の主張について
 公労法一七条の立法目的が、国民生活全体の利益の保障という見地から業務の正
常な運営を阻害する争議行為を禁止したものであることは原告主張のとおりである
が、右の業務の正常な運営の確保ということは、企業秩序の維持という観点を離れ
ては考えられないところであるから、同条は国民生活全体の利益を保護するために
公共企業体等の業務の正常な運営の確保ということを企業秩序として要請している
というべく、業務の正常な運営を阻害するような、企業からの全部的あるいは部分
的に離脱する行為等を企業秩序違反行為として禁止していることは明らかである。
従つて、同条の立法目的を企業秩序とは無関係な法規範であるとして、国公法上の
懲戒規定の適用があり得ないとする原告の主張は明らかに誤りである。すなわち、
公労法一七条は、国民生活全体の利益すなわち国民経済と公共の福祉の増進、擁護
のために、業務の正常な運営を阻害する争議行為を禁止し、業務の正常な運営を確
保することを企業秩序としているものであるから、企業経営者は、このような業務
の正常な運営の確保と企業秩序を維持するために最大の努力を要請されており、他
方、郵政職員はその職務を遂行するに当つては法令に従い、且つ、上司の職務上の
命令に忠実に従う義務を有しており(国公法九八条一項)、業務の正常な運営を阻
害することなく職務を遂行すべきことを職務上の義務とされているものである。
 郵政職員は右の如き職務上の義務を負担しており、その争議行為については、労
働法上の保護も存在しないのであるから争議行為を行なうことにより、右の義務に
違反した場合に国公法八二条により懲戒をなしうることは当然である。
 また、常識的に考えても、公労法一八条による解雇に対し、制裁としては解雇よ
りはるかに軽い、停職、減給、戒告の適用を否定するのは不合理であるばかりでな
く労組法八条の適用除外により、損害賠償責任が認められていることと比較しても
不均衡であるというべきである。
 この点に関する最近の判例の傾向をみるに、最高裁大法廷の全逓中郵判決では
「争議行為禁止違反が違法であるというのは、これらの民事責任を免れないとの意
味においてである。」と判示している。同判決は公労法一八条の解雇を製裁として
把握し、また、争議行為禁止違反者に対する制裁という見地から刑事制裁と民事上
の制裁とを区別していることは、判決全体の論旨からして明らかであるから、右引
用の判示部分の民事責任とは、刑事制裁に対比しての民事責任を意味するものであ
つて、これには、懲戒責任を含んでいるものと解するのが相当である。さらに、最
高裁昭和四三年一二月二四日判決(千代田丸事件、民集二二巻一三号三〇五〇頁)
は「公労法一八条は同法一七条に違反する行為した職員は『解層されるものとす
る。』と規定している。しかし、同条の趣旨とするところは、右の違反行為をした
職員は当然にその地位を失うとか、一律に必ず解雇されるべきであるというのでは
なく、例えば、日本電信電話公社法三一条、三三条等の定める職員の身分保障に関
する規定にかかわらず、解雇することができるというにあり、解雇するかどうか、
その他どのような措置をするかは職員のした違反行為の態様、程度に応じ、公社の
合理的な裁量に委ねる趣旨と解するのが相当である。」と判示している。
右判決の「その他どのような措置・・・」とあるのは、公労法一七条違反行為で解
雇までには至らない程度のものに対しては、どのような措置をするかは公社の裁量
に委ねられているとする趣旨であつて、その他の措置としては、懲戒以外のものは
考えられない。従つて、右判決は、公労法一七条違反行為に対する懲戒を容認して
いるものとみるべきである。
 右千代田丸事件判決の理解について、高松高等裁判所昭和四五年一月二二日判決
(労民集二一巻一号三七頁)は「又一審原告等は、公労法一七条違反の争議行為に
対する制裁は同法一八条所定の解雇に限られるべきであると主張するのであるが、
公労法一八条の趣旨は同法一七条違反の争議行為をした者に対し、国鉄法二九条、
三一条等の職員の身分保障に関する規定に拘らず解雇することができるというにあ
るのであつて、公労法一八条によつて解雇するのか否か、又は国鉄法三一条による
措置をとるかは職員のした違反行為の態様、程度に応じ合理的な裁量に委ねられて
いるものと解すべきである。」と判示して千代田丸事件上告審判決を引用している
のである。右高松高裁判決のいう国鉄法三一条は、懲戒規定であり、同条による措
置とは懲戒の意であるから、従つて、同判決は右千代田丸事件判決のいう「その他
の措置」とあるのを懲戒と理解し、公労法一七条違反に対する懲戒を肯定したもの
である(同事件の一審判決である高松地方裁判所昭和四一年五月三一日判決(労民
集、一七巻三号七二六頁)も懲戒を肯定している。)。
以上のほか、下級審判決では、東京地方裁判所昭和四三年九月三〇日判決(訟務月
報一四巻一〇号一一七一頁)が、公労法一七条違反国公法九八条一項違反を理由と
する国公法八二条による懲戒免職処分を適法有効とし、同裁判所同四三年一二月二
四日(石神井郵便局事件、同三五年(行)第六九号判例集未登載)が、「原告らの
行為が国家公務員法の規定に違反するものである以上、同法第八二条の適用を免れ
ないものであり、これらの諸行為が公労法上の職員の争議行為として組織的強制の
もとに集団的に行なわれたものであるとしても、争議行為は公労法第一七条により
禁止されており、しかも同条が違憲でないことは東京中央郵便局事件最高裁大法廷
(昭和四一年一〇月二六日)の判示のとおりであるからこれらの諸行為に対して国
家公務員法第八二条の適用は排除されないものと解するのが相当である。」とし
て、公労法一七条違反の争議行為に対し、国公法八二条の適用があることを判示
し、また、新潟地方裁判所同四四年一一月二五日判決(労民集二〇巻六号一五五三
頁)も、公労法一七条違反の争議行為に対する懲戒を容認しているものと考えられ
る(ただし、この事件は直接には一八条解雇が問題となつている。)。
四 本件処分が不当労働行為である旨の主張は争う。
五 懲戒権濫用の主張に対する反論
 被告が原告のみを懲戒免職処分にし、その余の地方本部の各委員長に対しては停
職処分に付したに過ぎないことは認める。
しかし、原告に対する本件処分が懲戒権を濫用したものである旨の主張は争う。
 元来、国家公務員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、か
つ職務の遂行に当つては、全力をあげてこれに専念しなければならないことは勿論
のこと、その職務の内外を問わず公務員として「その官職の信用を傷つけ、または
官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」(国公法九九条)のであつ
て、このことは、国家公務員に課せられた最高の使命というべきである。しかる
に、原告は、この最高使命に背反して、さきに違法行為を行ない、あるいはこれを
行なうよう指導したため国公法八二条により、昭和三三年四月二八日停職六月、同
三四年一月二四日停職一月、同年四月四日停職三月、同三五年一月二八日停職四
月、同年七月六日停職三月、同三六年四月一○日停職三月、同年六月一三日停職一
月の各懲戒処分に付され、将来を厳重に戒められていたにもかかわらず、今回重ね
て、郵政大臣および郵政局長の各警告を無視して前記の各違法行為をなし、もつ
て、それぞれ業務の正常な運営を阻害し、職場秩序を著しく紊乱したものであるか
ら、原告の組合における地位、過去における数回に及ぶ懲戒処分ならびに本件違法
行為の悪質の程度、その及ぼした影響等諸般の事情を総合勘案してなされた本件処
分が、適法かつ妥当であることは明白である。
第四 証拠(省略)
理   由
一 原告主張一の事実は、全部当事者間に争いがない。
二 原告は、被告の主張する本件処分事由のうちには、処分説明書との関係におい
てその主張の許されない事由がある旨主張するので、先ずこの点について検討す
る。
1 およそ、懲戒処分をなすに当つては懲戒権者において基本事由すなわち懲戒に
該当する一定の具体的非違行為の存在を確定したうえ、さらに附加事由すなわち右
行為に関連して、諸般の情状を考慮して相当と認める処分をするのが当然の事理と
解せられるところ、国公法八九条一項がとくに処分者に対して懲戒処分に際して当
該職員に対し「処分の事由」を記載した説明書 (処分説明書)の交付を要求して
いるのは、当該職員に処分理由を熟知させ、これに不服がある場合には人事院に対
する行政不服審査法による不服申立て(審査請求又は異議申立て)等の機会を与え
ることによつて、その職員の身分を保障し、併せて懲戒処分の公正(国公法七四条
一項参照)を確保するにあると解せられ、処分説明書に記載を要する「処分の事
由」の範囲、程度については、右法の目的に照らして、次のように解するのが相当
である。すなわち、懲戒処分の基本事由たる事実はすべて記載を要するが、その記
載は事実関係の同一性を識別できる程度をもつて足り(明記を欠く事実が記載事実
と同一性の範囲に属するかどうかは、前記法の目的に照らし、具体的事案に応じて
判定されることとなる。)、付加事由については記載を要しないものと考える。
2 この観点から本件について検討するに、成立に争いのない乙第一号証の一の
「処分説明書」の処分の理由欄に記載されている事項は、原告の主張するとおりで
あることが認められ、これに反する証拠はない。しかして、ここで問題となるの
は、原告の指摘にかかる各処分事由についてであつて、先ず、仙台郵政局関係(但
し、被告の主張二2(三)(1)⑦については示威行進そのもの及び事後の附随行
動であるから、処分説明書に明記されているというべきである。)について検討す
るに、被告主張の同②、③の各行為は、処分説明書に明記されておらず、それに記
載ある無許可ビラ貼り行為、示威行進のいずれの概念にも包含されないから、前記
意味における事実関係の同一性の範囲外であるといわざるを得ず(処分説明書には
「等」と記載されているが、その意味するところは、右無許可ビラ貼り行為、示威
行進に包含され、これと同一性を有すると認められる範囲内の行動を指すものと解
すべきである。)、その記載を欠くものと解さざるを得ない。しかし、同④、⑥の
各行為は、処分説明書に明記されていないが、いずれも示威行進の中心目的ともい
うべき行為であつて、前記意味における事実関係の同一性の範囲内にあるものとい
うべきであるから、右記載に包含されているものと解する。次に、仙台局関係につ
いて検討するに、処分説明書には半日ストライキの実践指導行為について明記され
ておつて、被告の主張する処分事由はいずれもこれの補助的手段であるかあるいは
通常これに随伴する行為であるから、いずれも前記意味における事実関係の同一性
の範囲内にあるものというべく、処分説明書に記載があるものと解する。
3 懲戒処分の公正を期し、不公正な懲戒処分から国家公務員の地位を保障しよう
とする前記法条の趣旨からみて、処分説明書に全く記載のない事実を懲戒処分の基
本事由として主張し、当該処分を正当づけることは許されないところというべく、
従つて、右指摘にかかる仙台郵政局関係の前記②、③の各行為につき、被告は、本
訴において本件処分の基本事由として主張することは許されないところというべき
である。しかして、本件処分事由の存否を検討するにあたつても、右各行為を除外
した事由について検討することとする。
三 被告の主張二の1の事実(本件処分をなすに至つた経緯)のうち、(一)の事
実(全逓の闘争指令発出の経緯について)につき、具体的なストライキ実施郵便局
の決定がなされるに至つた経緯すなわち、三月一七日のストライキ実施郵便局が酒
田局および横手局の両局に、四月二三日のストライキ実施郵便局が仙台局にそれぞ
れ決定されるに至つた経緯を除き、全部当事者間に争いがなく、(二)の事実(闘
争指令発出に対する郵政省の措置)は、全部当事者間に争いがない。
 そこで、以下、右ストライキ実施郵便局の決定がなされるに至つた経緯について
検討する。
 成立に争いのない甲第一号証の一、同号証の五、乙第二号証の三及び証人P39の
証言によれば、三月一七日実施のストライキについてみれば、全逓中央本部は、昭
和四〇年三月八日指令第二〇号(ストライキ準備指令)発出と同時に中央執行委員
長名の各地方本部・地区本部委員長宛の「三・一七の戦術実施について」と題する
指導文書(全逓企第四五号)を発出した。該指導文書は、要するに、三月一七日の
ストライキにつき各地方本部(全国で一一ケ所設置されている。)毎の実施拠点数
の決定がなされたこと(東北地本にあつては二ケ所)、その拠点となる郵便局につ
いては、地方本部とその傘下の各地区本部とが協議し、三月一二日までに全逓中央
本部企画部に報告し、同本部と協議のうえ最終決定を行なうべきこと、右ストライ
キ拠点となる郵便局は、この実施により組織問題等の発生する可能性のない定員一
〇〇名程度の普通郵便局であつて、民間の各組合、公労協加入の組合等がストライ
キを集中的に実施するような地域を選定し、共闘を高める配慮を行なうこと、その
他ストライキ実施についての具体的方法・指示等を与え、各級機関(全逓中央本部
の下部機関である各地方本部、地区本部および支部を指す。以下、同じ。)は、以
上の要領によりストライキ実施を指導せられたい、とするものであつた。右指令・
指導を受けた原告は、三月一〇日ごろ、その傘下の各地区本部委員長会議を開催
し、その協議に基づき、各地区本部毎に一局宛合計六局の普通郵便局を右ストライ
キ拠点の候補局として選出し、これを全逓中央本部に報告したものであつて、同本
部は、これに基づいてその職場の組合員の意識とか郵政当局の右ストライキに対す
る対処の仕方等を検討した結果、東北地本傘下にあつては、右ストライキの拠点局
として酒田局および横手局の両局と決定し、指令第二一号(ストライキ実施指令)
発出と同時にその旨東北地本に連絡したものである。次に、四月二三日実施の半日
ストライキについては、その実施規模からその拠点局につき、中央郵便局および統
括局(県庁所在地に在る中心的郵便局を指す。)又はこれに準ずる局としたもので
あるが、東北地本傘下において仙台局と決定されるに至つた経過は、ほぼ三月一七
日のストライキの場合と同様、原告は、各地区本部委員長会議を開催し、その協議
に基づきストライキ拠点の候補局を選出し、これを全逓中央本部に報告し、同本部
はごれに基づいて決定したものであることが認められる。
 右認定を左右するに足りる証拠はない。
 右認定事実によれば、三月一七日および四月二三日の各ストライキにつき、それ
らの拠点局を決定したのは、全逓中央本部であり、原告がこの決定をしたものでな
いことは、原告主張のとおりであるが、原告は、これらの決定に際し、東北地本の
執行委員長として、全逓中央本部の指導に基づき、東北地方におけるストライキ拠
点局につきその傘下の各地区本部委員長と協議し、その結果をその候補局として報
告したものであつて、叙上の限度においてこれらの決定に関与したものというべ
く、原告がこれに何ら関与していない旨の弁疏は理由がない。
四 以下、被告主張の個々の処分事由の存否につき検討する。
1 酒田局関係について
(一)当事者間に争いのない事実
 原告は、昭和四〇年三月一六日、闘争指令第二一号に基づく一時間ストライキの
責任者として酒田局に赴き、同局局長P1に対し、酒田支部の執行権を停止する旨通
告したこと、三月一七日午前八時三〇分から同九時三〇分まで原告の指導のもとに
勤務時間内一時間のストライキが実施されたこと、該ストライキには、当日同時刻
に勤務すべき酒田支部の組合員たる同局職員六一名が参加したこと、右ストライキ
中の被告主張の時刻ごろ酒田市浜田堀南飽海地区労働会館(酒田局から約一、五〇
〇米)において職場大会が開催され、右組合員らがこれに参加したこと、原告は、
右大会に参加し、これの終了後大会参加者の隊列の先頭に並んでこれを引率し、午
前九時二三分ごろ同局に到着し、右大会に参加した同局職員は、同時刻ごろ就労す
るに至つたこと、しかして、欠務した時間は午前八時三〇分から同九時二三分まで
の五三分間であること、そのために、貯金窓口担当者五名のストライキ参加中午前
八時三〇分から同九時二三分まで特定郵便届長三名がこれの処理に当つたこと、貯
金外務員の集金、募集のための出発が約四五分遅延したこと、保険窓口担当者一名
のストライキ参加中、保険課課長代理がこれの処理に当つたこと、保険外務員の集
金、募集のための出発が約四五分遅延したこと。
(二)成立に争いのない甲第一号証の一一、乙第一〇号証、その方式および趨旨に
より公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第
四号証の一ないし五、証人P14の証言および原告本人尋問の結果によれば、次の事
実を認めることができる。原告は、昭和四〇年三月一五日午後指令第二一号(スト
ライキ実施指令)発出と同時に全逓中央本部から酒田局におけるストライキに際
し、同局に赴きこれを指揮すべき旨の指令を受け、翌一六日午後山形県酒田市に赴
いた。なお、これより先、指令第二〇号(ストライキ準備指令)発出と同時に全逓
山形地区本部は該指令を完全に実施すべく地区執行委員会を開催し、同地区本部内
のいずれの局がストライキ拠点局と指定されても十分それに対処できるための態勢
作りを協議し、翌日から同地区本部役員が同局においてストライキ態勢確立のため
活発なオルグ活動を展開しておつて、原告が同局に到着したころにはその態勢は確
立されていたものである。
 そして、原告は、同日午後五時過ぎ同局において行なわれた同局勤務の組合員の
集会に出席し、そこで原告の任務と右ストライキについての状況報告をしたのち、
午後六時三五分ごろ、酒田局局長P1に対し、三月一六日、一七日の両日酒田支部の
執行権を停止し、原告がストライキの責任者である旨通告した(叙上のとおり、執
行権を停止する旨通告したことは、当事者問に争いがない。)。
 なお、同支部組合掲示板にも原告名をもつて、指令第二一号により三月一六、一
七日の二日間支部執行権は停止されたので、組合員は、原告の指揮に従うべき旨の
文書が掲示された。
 翌三月一七日午前八時一五分ごろから同八時三五分ごろまでにかけて、「三・一
七春闘統一行動全逓酒田分会スト会場」と表示された飽海地区労働会館に、当日酒
田局に勤務すべき組合員六一名他勤務時間外の組合員四名、同局職員以外の部内の
組合員七名が三々五々右会場に入場し、原告は、午前八時八分ごろ、全逓山形地区
本部執行委員長P40、同地区本部執行委員P41とともに右会場の到着し、同会場入
口付近において入場者の状況を観察していたの組あるが、午前八時三二分ごろ、同
会場に入場し、参集した前記組集員らに対し、本件ストライキの目的・情勢等につ
き演説し、同集ろは、午前九時八分ごろ終了した。なお、当日午前七時五〇分ごろ
示ら部外の応援者約二五名が全逓山形地区本部書記長P14の指示但しり酒田局通用
門において一応ピケツテングを実施していた(但し、単に通用門前に集つていた程
度で隊列を作るとか、スクラムを組む等のことはなかつた。)が、午前九時二七分
ごろ、原告は、右の者らに対し「御苦労さんでした、春闘を勝ち抜きましよう。」
との挨拶をし、その後右の者らは解散した。
 右ストライキによる業務への影響については、前記のとおり、ほぼ当事間に争い
のないところであるが、貯金・保険の各外勤出発が定時から四五分それぞれおくれ
たが、貯金外勤については持出不能集金票はなく、保険外勤についても持出不能徴
収原簿、取立不能徴収原簿はなく、貯金・保険の各外勤の取立率は、いずれも原告
主張のとおり平常を上回る好成績となつている。なお、右の外に、郵便外務主事一
名のストライキ参加中、郵便外務員に対する書留郵便物の授受は、郵便外務主任が
当つた。
 以上の認定を左右するに足りる証拠はない。
 なお、前記乙第四号証の一によれば、前記大会の開催中の午前八時四二分ごろ、
右大会会場入口階段付近において、原告および酒田支部長P11宛の酒田局局長の解
散要求書ならびに午前八時三〇分から勤務すべき同局庶務会計、貯金、保険各課の
職員に郵便課外務主事一名を加えた六一名に対する各人宛の就労命令書を同局保険
課長P12が酒田支部執行委員P13に手交して伝達方を依頼し、さらに、午前八時五
五分ごろ、前同所において、原告外一名に対する解散要求書を前同様の方法で、同
執行委員に伝達方を依頼した事実を認めることができるけれども、同執行委員が原
告に対し、右各依頼事項を伝達したことを認めるに足りる証拠はない。
2 横手局関係について
(一)当事者間に争いのない事実
 昭和四〇年三月一七日午前八時三〇分から同九時二二分まで横手局においてスト
ライキが実施されたこと、該ストライキには、横手支部の組合員である同局職員三
六名が参加したこと、右ストライキ実施中の被告主張の時刻ごろ右参加者らは、同
局から約一〇〇米離れた横手市<以下略>平源旅館において集会したこと。
(二) 被告は、原告が右ストライキを実施せしめたと主張するので、先ずこの点
について検討する。
 前記三で認定した事実の外に、前記甲第一号証の一、乙第二号証の三、成立に争
いのない甲第一号一証の一〇、同第二号証の二の二(乙第二号証の一、以下同趣旨
の書証については甲号証のみを掲記する。)、同号証の二のホ、乙第一四号証の
一、二、証人P39の証言によれば、原告は、昭和四〇年春闘に対処するため、同年
二月二七日および二八日の両日第一九回東北地本執行委員会を開催し、三月から四
月にかけてのストライキ態勢確立の対策等を検討し、決定したこと、指令第二〇号
は、各級機関に対し、三月一七日午前八時三〇分から同九時三〇分までの一時間の
ストライキを実施できるよう準備すべきことを命じていること、指令第二一号は、
各級機関に対し、前記全逓企第四五号の指導文書に基づき、右ストライキに突入す
べきこと、このストライキに突入する支部の執行権は、三月一六日および一七日の
二日間停止し、その支部の組合員は、上部機関から派遣される責任者の指導に従つ
て一切の行動を行なうべきことを命じたこと、全逓中央本部は、右指令第二一号発
出と同時に、右ストライキ拠点局となつた酒田局には原告を、横手局には東北地本
書記長P2をそれぞれ責任者として派遣することを決定し、その旨原告および右書記
長に指示したこと、しかして、同書記長は、該指示に従い、後記認定のとおり、横
手局に赴き、同局長に対し横手支部の執行権を停止し自己が右ストライキの責任者
である旨通告し、本件ストライキを指導したことが認られる。
 右認定を左右するに足りる証拠はない。
 右認定事実によれば、東北地本書記長が本件ストライキの責任者者として横手局
に赴いたこと、同書記長が同局局長に対し横手支部の執行権を停止し自己が右スト
ライキの責任者である旨通告したことは、いずれも直接的には全逓中央本部の指
示・指導によるものであり、また、右ストライキは、全逓中央本部の指令第二一号
の発出によつて突入したものであるけれども、原告は、東北地本執行委員長とし
て、右ストライキ指令等を受ける立場にあつて、前記指令第二〇号、第二一号を受
けていること、また、ストライキ態勢確立のため東北地本執行委員会を開催しその
方針を決定していること、その他前記三認定のとおりその傘下の各地区本部委員長
と協議をして右ストライキ拠点局の選出に当つていること等から、原告が本件スト
ライキにつき、全逓中央本部および東北地本書記長らと相互意思相通じてこれを実
施せしめたというべきである。
 原告は、本件ストライキには全く関係しておらない旨弁疏するが、理由がない。
(三) 次に、本件ストライキの実施状況については、前記当事者間に争いのない
事実の外に、前記甲第一号証の一〇、その方式および趣旨により公務員が職務上作
成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第五号証の一ないし五、
成立について争いのない同第一一号証によれば、次の事実を認めることができる。
東北地本書記長P2は、前記全逓中央本部の指令・指示に基づき、三月一六日横手局
に赴き、同局局長P16に対し、「三月一六日、一七日の両日支部の執行権を停止
し、秋田地区における責任者は私である。」と通告した。そして、前記のとおり、
翌三月一七日午前八時三〇分から同九時一〇分ごろまで平源旅館において職場大会
が開催されたのであるが、右大会参加者は、前述の三六名の列に、勤務時間外の同
局職員一一名、同局以外の被告の職員一四名であつた。しかして、右大会ならびに
その参加者に対しては、その開催後の午前八時五七分ごろ、横手局庶務会計課長P
42、郵政局人事部管理課課長補佐P19、同貯金部管理課服務係長P20らが右大会会
場において、P2東北地本書記長、全逓秋田地区本部委員長P15および横手支部長P
17の各人宛の右山局長名の中止要求書ならびに午前八時三〇分から勤務すべき同局
庶務会計、貯金、保険各課の職員三六名に対する各人宛の就労命令書を右P19課長
補佐が交付しようとしたところ、同書記長は、自己宛の中止要求書のみを受領した
が、その他の分の受領は拒絶した。
 右大会終了後、これに参加した前記職員らは、前記P15委員長を先頭に、二列縦
隊となつて、午前九時一五分ごろ横手局構内に入り、同局中庭において円陣を作り
集会を開き気勢をあげた後、午前九時二〇分ごろ解散し、同九時二二分に就労する
に至つたものである。以上の認定を左右するに足りる証拠はない。
(四) 右ストライキによる業務に対する影響については、前記乙第五号証の一に
よれば、被告の主張する事実を認めることができる(但し、貯金外務員の募集およ
び集金については、当日団体だけ持出すことになつており、それは予定どおり持出
された。)。
 右認定を左右するに足りる証拠はない。
3 仙台郵政局関係について
(一) 被告の主張二2(三)(1)①(四月一五日のビラ貼り行為)について
 前記甲第一号証の五、同号証の一〇、乙第一四号証の一、二、成立について争い
のない甲第一号証の九、同第二号証の四のイ、その方式および趣旨により公務員が
職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第六号証の一な
いし四、及び証人P6、同P5、同P23、同P24(但し、後記信用しない部分を除
く。)の各証言、並びに原告本人尋問の結果(但し、後記信用しない部分を除
く。)によれば、全逓中央本部は、昭和四〇年春闘の要求項目である大幅な賃金引
き上げ等の早期実現を目途して、同年三月各地方本部・地区本部委員長に対し、郵
政局に対する交渉強化、ビラ貼り行為を実施し大衆に宣伝することを指導した。そ
して、同年三月一五日、各地方本部・地区本部委員長に宛てて全逓中央執行委員長
名の「三月以降の闘い方及び三、一七スト戦術実施の追加指導」と題する指導文書
(全逓企第五九号)を発出し、集団交渉、ビラ貼り行動等の具体的実施方法等を指
導した。一方、全逓宮城地区本部は、右指導文書の趣旨に従い、四月初旬地区執行
委員会を開催し、先に東北公労協(事務局長は東北地本書記長)が作成し宮城県公
労協を経由して配布された「団結の力で破れ低賃金」、「家計簿は七、五〇〇円待
つている」等を内容とするステツカーを青年部を主体に、公労協の統一行動日であ
る四月一五日に仙台郵政局庁舎内に貼付することを決定し、その旨東北地本に連絡
し、同地本青年部長P3の指導および協力を要請した。しかして、四月一五日午前三
時二五分ごろから同四時一五分ごろまでの間にかけて同局管理者の制止を無視し
て、全逓宮城地区本部執行委員長P24が同地区本部青年部組合員約二〇名指揮し
て、前記東北地本青年部長および同地区本部役員らも参加して、同局庁舎一階の表
面玄関ボール北側ガラス壁(内側)、表面玄関表面ガラス壁(内側)、表面玄関ホ
ール大理石壁等に約一、四三〇枚、二階の保険部事務室の北側ガラス壁等に約五四
〇枚、三階の局長室北側ガラス壁等に約三三〇枚、合計約二、三〇〇枚の前記ステ
ッカーを貼付した。なお、このステツ力ー貼りの行なわれていた際、その場所には
東北地本書記長も立会つており、管理者側の口頭による中止要求を無視して右組合
員に対し「いいから貼れ」とか「かまわんどんどん貼れ」等といつて、その行為を
指導していた。原告は、後記認定にかかる当日予定の仙台郵政局との集団交渉に備
え、他の組合役員らとともに同庁舎一階の東北地本事務室(なお、全逓宮城地区本
部の事務室もそれと隣り合わせにある。)に待機していたのであるが、前記ステツ
カー貼付行為の終了直前の午前四時ごろ、一階ホールに立ち右行為を見ており、郵
政局管理課長P6から口頭で右行為を中止するよう要求されるや「まあまあ」といい
ながら裏玄関の方に移動し、午前四時一五分ごろまで一階を徘徊し、右行為を見て
おり、その後前記組合員らに対し「では引き揚げようか。」と声をかけた。
 右原告の行動に関する認定部分に反する証人P24の証言並びに原告本人尋問の結
果(なおこの点については後記のとおり)は、前掲各証拠に照らして措信し難く、
他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
 右認定事実によれば、本件ステツカー貼付行為の実施を決定し、実行したのは、
直接的には全逓宮城地区本部であるけれども、全逓中央本部から東北地本委員長宛
にビラ貼り活動をなすべき旨の一般的指示がなされており、東北地本事務室と全逓
宮城地区本部の事務室は隣り合わせになつていることからその役員らの折衝は常に
行なわれていたものと容易に推測し得るところであり、また、本件ステツカー貼付
行為については全逓宮城地区本部から東北地本青年部長に協力要請がなされ、同部
長もその行為に参加しており、東北地本書記長も右行為の現場におつて組合員を激
励していること、また、原告自身も本件ステツカー貼付行為の行なわれている際そ
の場所に行き、同所を徘徊し、郵政局管理者の中止要求に対しては「まあまあ」と
いつたり、組合員らに対し「では引き揚げようか」と声を掛けたりしていることか
ら、原告は、本件ステツカー貼付行為につき、東北地本の役員のみならず、全逓宮
城地区本部の役員らとも相互意思相通じていたものと推認することができる。
 原告は、本件ステッカー貼付行為には全く関与しておらず、原告が右現場にいた
のは単に上部機関の役員として当局側とのトラブルを避けるために過ぎない旨供述
する(甲第一号証の一一の公平委員会における供述も含む。)ところであるが、右
認定したところから明らかとなつたとおり、原告が右現場にいたのはそのことだけ
に止まらなかつたものというべきであるから、原告の右ステツカー貼付行為に無関
係である旨の供述は措信しない。
(二) 同(1)の④ないし⑦(集団交渉要求行為および集団示威行動)について
 前記甲第一号証の五、同号証の九、同号証の一一、その方式および趣旨により公
務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第六号証
の七、同号証の一〇ないし一九、成立について争いのない乙第一二号証の一、二、
同号証の五、証人P6、同P21、同P43、同P3(但し、後記信用しない部分を除
く。)、同P7(但し、後記信用しない部分を除く。)、同P5(但し、後記使用し
ない部分を除く。)の各証言、原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めるこ
とができる。
(1) 全逓中央本部は、昭和四〇年三月、各地方本部・地区本部委員長に対し、
郵政局に対する交渉強化等をなすべき旨の指導をなしたことは、前記(一)に認定
したところであるが、東北地本にあつては、種々の事情から他の地方本部と比較し
て郵政局との交渉が遅延していたため全逓中央本部から早急に集団交渉を実施すべ
き旨の指示がなされた。そこで、原告は、昭和四〇年四月一〇日東北地本執行委員
会を開催し、同月一五日に予定されていた公労協のストライキ宣言(公労協の統一
行動日でもある。)に呼応し、全逓宮城地区本部の青年部から約一〇〇名の組合員
を、その他の東北地本傘下の五地区本部からはそれぞれ約五名の組合員を動員し、
その動員者を以つて、仮りに、それができない場合は各地区本部の代表者を以つて
郵政局長と後記項目につき集団交渉を実施し、その際庁舎内集団示威行進をも併せ
て実施すること等の具体的行動方針を決定した。しかして、東北地本書記長は、右
決定のなされた当日、全逓宮城地区本部に対しては約一〇〇名、その他の五地区本
部に対してはそれぞれ約五名を、四月一五日午前八時までに郵政局庁舎前に集合さ
すべき旨の動員要請を行なつた。
(2) 東北地本副委員長P5は、四月一五日午前九時一五分ごろ、前記郵政局長と
の集団交渉を実現させるべく、同局人事部管理課長P6の部屋(同局三階人事部長室
に接した人事部事務室内にある。)に赴き、同課長に対し、当日の午前中に局長ま
たは人事部長と組合側の出席人員三〇名との間で、賃金を七、五〇〇円引き上げる
こと、初任給を二万円とすること、職員宿舎を設置すること、日曜配達を廃止する
こと、悪質管理者を処分追放することの五項目(前四項目について権限外であろう
から本省に上申すること。)につき交渉したい旨要求したのであるが、同課長は、
集団的な交渉に応じてはならない旨の本省からの指示を受けていたので、その旨同
副委員長に伝え右要求を拒絶したのであるが、同副委員長は、尚も「とにかく会わ
せてほしい。」とか「会わせろ。」等と要求し続け、右課長もそれに対し強く拒絶
したため同副委員長は、午前九時二八分ごろ同課長室を退室した。
(3) 他方、同日午前八時三〇分ごろから、前記経過を辿つて動員された全逓組
合員約一〇〇名が郵政局庁舎玄関前において、全逓宮城地区本部書記長らの指導に
より白地に赤の全逓の文字入りの鉢巻をつけ、労働歌を合唱して気勢を挙げていた
のであるが、午前九時三一分ごろ、東北地本青年部長P3の号令により三列縦隊とな
り、約三分間同庁舎玄関前を集団示威行進した後、約五〇名毎の二グループに分か
れ、一方は右P3青年部長、他方は全逓宮城地区本部青年部長P7がそれぞれ指導
し、予め同局および監察局職員以外の入局規制をしていた管理者との間に少しの間
話合いをしたが、その者らを押し返えして入局し、右P3青年部長の指導するグルー
プは、表階段から、右P7青年部長の指導するグループは、裏階段からそれぞれ昇り
始め、前者のグループは、東北地本書記長の呼笛の誘導により三列縦隊で「ワツシ
ョイ、ワツシヨイ」と掛け声をかけながら一階から四階までの階段を示威行進し、
同階において裏階段から昇つてきた後者のグループと合流した後、同階から三階に
降り、郵政局長宝前のホールにおいて「ワツシヨイ、ワツシヨイ」と掛け声をかけ
ながら二、三回示威行進した後、同その直の集団交渉を求めるべく座り込み待機す
るに至つた。その直後の午前九時四六分ごろ、前記P3青年部長は、携帯マイクを使
用し労働歌の合唱を指導した。これに対し、管財課長P21は、解散命令および座り
込み禁止の立札を立てたが全く無視された。原告は、前記組合員らがグループとな
つて郵政局庁舎内に入局する際、同庁舎玄関入口付近でこれを見ていたが、入局後
その約二メートル後を追尾した。それに対し、前記管財課長は、原告の後から携帯
マイクを使用して庁舎内集団示威行動禁止と庁舎外退去を連呼したが、全く無視さ
れた。そして、原告は午前九時四六分ごろ、前記三階ホールの郵政局長室前に座り
込み中の組合員らに挨拶していた前記P3青年部長の傍に立ち事態の推移を見てい
た。
(4) 他方、前記P5副委員長は、午前九時四七分ごろ、再度前記管理課長室に赴
き、同課長に対し、前同様集団交渉を要求し、同課長が前回同様の回答をしたとこ
ろ、同副委員長は、「こういう状態とはどういう状態か、何故会えないのか」と詰
寄り、同課長との間に押問答を繰返えしていた。一方、原告ら組合役員は、右集団
交渉を当日午前中の早い時間に実施することを打ち合わせていたのに一向にそのた
めの窓口折衝が進展しないので、その様子を窺うため、午前一〇時ごろ、同課長室
に入室し、午前一〇時一七分ごろまで同副委員長ともども交渉に応ずべきことを要
求した後退室した。また、同副委員長も、午前一〇時四三分ごろ、一旦退室し、前
記三階ホールに座り込んでいた組合員らに窓口接衝の経過を報告した後、午前一〇
時四五分ごろ、再度管理課長室に赴き、同課長に対し、前同様の要求をしたが同課
長が局長、人事部長が不在である旨告げると同課長に対し、要求書を読み上げ直ぐ
解散するので代表二〇名の入室を認めてもらいたい旨要求したので、同課長は、課
長補佐、係長らと協議した結果周囲の状況上止むを得ないと判断し、右条件のもと
に右要求を受け入れた。しかして、前記各地区本部の代表二〇名が入室し(原告も
遅れて入室した。)、前記副委員長が前記交渉項目と同趣旨の要求書を読み上げた
後前記申し入れ条件に反し、これの本省への上申と内容を検討して回答すべきこと
を求め、同課長が「このような事態のあつたことは当然報告する。」と答えると、
同副委員長は、「今日は、これで要求することを打切る。」と発言し、原告ら組合
役員および右組合代表者は、午前一一時二〇分ごろ同課長室から退室した。
(5) なお、この間の午前一〇時一四分ごろから約一〇分間前記三階ホールに座
り込んでいた組合員らは、前記P3青年部長の音頭で「人事部長会見に応じろ、代表
団頑張れ、大幅賃上げを闘いとろう。」とのシユプレヒコールを繰返えしていた。
そして、同時刻ごろ、前記P5副委員長と管理課長との折衝にしびれを切らした右組
合負の内約一〇名が前記管理課長室に入室しようとしたこともあつたが、同課長室
にいた原告ら組合役員は、管理者とともに説得して制止した(この間は約五分間で
あつた)。その後、P5副委員長が再度管理課長室に入室した直後の牛前一〇時四七
分ごろ、P2東北地本書記長は、窓口接衝が進展しないので気勢をあげるため、「管
理課長にいくら交渉してもらちがあかないから、これから実力行使する。」と発言
し、前記座り込んでいた組合員を立たせて隊形を整えさせたのち、二班に分かれ、
約一二分間「ワツシヨイ、ワツシヨイ」と掛け声をかけたり、「人事部長に会わせ
ろ」等とシユプレヒコールを繰返えし、渦巻状の示威行進をしたりし、あるいは、
人事部長室に入室するかのような気勢を示したりした(但し、右組合員らに入室の
意思は認められない。)そのため、その間同所付近はかなり喧噪状態となつた。原
告は、午前一一時二〇分ごろ、前記経過を辿つて管理課長に要求書を読み上げ同室
からP5副委員長らと退室した直後、前記組合員らに対し、「もとの状態に戻れ。」
と号令をかけて起立させ、P5副委員長が前記交渉経過を報告した後、「仙台郵政局
の労務政策はこのようなものだ。」とか「こういう姿勢だから半日ストライキを繰
返えして物留め闘争をやる。」等と発言し、前記P3青年部長が午後の行動計画を説
明し、労働歌を合唱した後、午前一一時三〇分ごろ、原告は右手を挙げながら大声
で「団結頑張ろう。」の三唱の音頭を取り、その後右組合員らは、もときたと同様
集団示威行進をしながら庁舎外に退出し、解散するに至つた。右認定に反する証人
P3、同P7、同P5の各証言は、前掲各証拠に照らして措信できず、他に右認定を左
右するに足りる証拠はない。
(三) 同(2)(四月二二日のビラ貼り行為)について
 前記甲第一号証の五、同号証の一一、乙第一二号証の一、二、成立につい争いの
ない甲第一号証の二、乙第一二号の三、その方式および趣旨により公務員が職務上
作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第七号証の一ないし
三、及び証人P6、同P22、同P23、同P24、同P4の各証言によれば、次の事実を
認めることができる。
 四月一九日夕刻、同月二三日の仙台局における半日ストライキの責任者として、
全逓中央本部から派遣された全逓中央執行委員P4は、前記全逓宮城地区本部事務室
を訪れた際、前記四月一五日に貼付されずに残つたステツカー約一、二〇〇枚が放
置されているのを発見し、同執行委員は、当時教育宣伝部を担当していた関係上、
同地区本部執行委員長P24に対し、右二三日の半日ストライキに向け気勢をあげる
意味においても早急に貼付すべきことを指示した。これを受けた同委員長は、同月
二〇日地区執行委員会を開催し、同月二二日に右ステツカー全部を仙台郵政局庁舎
内に貼付することを決定した。しかして、同日午後八時一六分ごろから同八時二六
分ごろまでと、午後九時一五分ごろから同九時二〇分ごろまでの二回に分け、同地
区青年部組合員約二〇名を動員し、管理者の制止を無視し、あるいは密かに、一階
から二階にかけてのガラス壁、入口扉、階段の手摺等に右ステツカー全部を貼付し
た。
 原告は、当日、翌日の仙台局における半日ストライキに備え、同局一階の東北地
本事務室に待機していたのであるが、右ステツカー貼りが行なわれることは当日の
夕方ごろから知つており、それの姶まつた午後八時一六分ごろ、その現場に赴き、
ステツカーを貼つている組合員の後について回りながら、貼付されたステツカーの
まくれた個所を手で押える(この点は当事者間に争いがない。)等し、二階におい
て同局管理者が原告に対し、右ステツカー貼りを中止するよう要求したのに対し、
「あまりがやがやするな。」といつて一階の方に降りて行き、また、午後八時二〇
分ごろ、同局管理課課長補佐が原告に対し、「ビラ貼りを止めさせてくれ、一五日
のビラ貼りで済まんのか。」とか「委員長、ビラ貼りを止めさせて退去させて下さ
い。」等と要求したのに対し、「たいしたことはない。」、「止めさせない、ビラ
貼りは労働者の労働運動で最少限のものだ。」と答え、さらに同局管理課労働係長
が「ビラ貼りを止めさせなさい。」と要求したのに対し「考え中だ。」と答えるの
みであつていずれも管理者の制止を無視し、暫くして前記東北地本事務室に引揚げ
たが、また、その後の午後九時一六分ごろ、一階階段付近において、管理課長から
右ステツカー貼付行為の中止を求められたけれどもこの要求にも応じなかつたもの
である。
 また、東北地本副委員長P5は、原告が右東北地本事務室に引揚げた後の午後八時
二〇分ごろ、同事務室から一階ホールに現われ、管理者が前記ステッカーを貼つて
いる組合員らに対し制止をしているにもかかわらず「ゆつくり貼りなさい。」と指
示したり、午後八時二五分ごろ、右玄関ホールにおいてステツカーを貼つている組
合員に対し、それを中止して組合事務室に引揚げるよう指示したりした。
 なお、右ステツカー貼付行為によつて、仙台郵政局にあつてはその清掃費用とし
て清掃請負業者に二、五〇〇円の出費を余儀なくされたものである。
 右認定事実を左右するに足りる証拠はない。原告は、本件ステツカー貼付行為に
は全く無関係である旨弁疏するのであるが、叙上認定事実によれば、たしかに右ス
テツカー貼付行為を指示したのは全逓中央執行委員P4であり、その指示に従い全逓
宮城地区本部が直接実行したものであるが、原告も叙上認定の限度でその現場にお
り、貼付されたステツカーのまくれた個所を手で押えたり、ステツカーを貼付して
いる組合員の後について回つたり、管理者の制止に対しては叙上認定のとおり返答
していること、また、右ステツカー貼付行為は右地区本部が実行したといつても東
北地本副委員長もその現場において叙上認定の行為に及んでいること等から、原告
は、本件ステツカー貼付行為につき、その主張するように当局との間にトラブルの
発生しないために右現場にいたということもあつたと思われるが、単にそれのみに
止まらず、右地区本部と相互意思相通じていたものと推認することができるのであ
つて、原告のこの点に関する弁疏は採用し難い。
4 仙台局関係について
(一) 仙台局において被告主張の半日ストライキが実施されたことは、当事者間
に争いのないところである。
 前記甲第一号証の一、二、同号証の一〇、一一、成立について争いのない甲第一
号証〇七、八、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められ
るから真正な公文書と推定すべき乙第八号証の一、及び証人P28、同P4、同P23、
同P24、同P31の各証言、並びに原告本人尋問の結果によると、次の事実が認めら
れる。
 全逓中央本部は、指令第二六号発出に先立ち、四月一九日開催の中央執行委員会
において、同月二三日に実施予定の半日ストライキの東北地本における拠点局に仙
台局を決定するとともに、その実施責任者に全逓中央執行委員P4(同執行委員は、
昭和二六年当時全逓宮城地区本部書記長を歴任したことがある。)を派遣すること
を決定した。同執行委員は、該決定に従い、その当日の夕刻仙台局に到着し、原告
および全逓宮城地区本部役員らからストライキ態勢についての状況報告を受けた。
他方、これより先の指令第二五号(準備指令)発出以前から仙台局が右ストライキ
拠点局になることを予想して、それに備え、支部の指導機関である右宮城地区本部
のP23執行委員が同局の職場において教育宣伝活動、情勢報告等を主体とした活発
なオルグ活動を展開し、同指令発出後の四月一五日ごろ、さらに同地区本部書記長
P8もオルグ活動に入り、指令第二六号(突入指令)発出後は右二名の外に同地区本
部執行委員P30、同地区本部青年部長P7も右オルグ活動に入り、支部役員らととも
に、右ストライキ態勢を整えていたところであつて、右全逓中央執行委員が仙台局
に到着した時点においては、ストライキ態勢は整えられており、直ちに同執行委員
に引継ぐ状況となつていた。同執行委員は、四月二一日午後四時と五時の二回に分
け、仙台局において、職場集会が開催された席上、同局が右ストライキ拠点局とな
つたこと、支部の執行権を停止し、以後の一切の指揮命令権は同執行委員にあるこ
とを話した。その後、同執行委員は、東北地本事務室において、原告ら組合役員に
対し、右ストライキ実施についての具体的な指示を与えたり、その分担・役割を指
示したりした。そして、原告ら組合役員には、同執行委員の手足となりその指揮下
に入つて行動すべき旨の指示を与えた。同執行委員は、翌四月二二日午前一一時四
五分ごろ、原告、東北地本書記長P2、全逓宮城地区本部執行委員長P24、同書記長
P8、同執行委員P23とともに仙台局に赴き、同局局長P26に対し、「四月二三日仙
台局で実施する半日ストライキの指揮をとるため責任者として中央本部から派遣さ
れた、四月二二日、二三日の二日間当支部の執行権は一切停止し私が執行すること
になる。」と通告した。翌四月二三日牛前八時五〇分ごろから同一一時一〇分ごろ
まで仙台市日乃出会館七階ホールにおいて、欠務者三九九名、勤務時間外の組合員
約五〇名、仙台局員以外の被告の職員約五〇名、それ以外の者約一五名が参加し
て、「四・二三半日スト第三次公労協春闘統一行動」と称し、集会を実施した。こ
の間、仙台局庶務課長P28は、午前九時三五分ごろ、右集会会場の受付に赴き、東
北地本執行委員P29に対し、全逓中央執行委員P4宛の仙台局局長名のストライキ中
止要求書ならびに当日勤務を要する同局各課職員三八三名に対する各人宛の就労命
令書を手交してこれが伝達方を依頼しようとしたが、同執行委員は、右ストライキ
中止要求書のみを受取り、右就労命令書は受取らなかつた。その後午前一〇時五九
分ごろ、右同所において、右仙台局庶務課長が前記P30執行委員に対し、前同様の
ストライキ中止要求書ならびに当日勤務を要する同局職員一六名に対する各人宛の
就労命令書を手交してこれが伝達方を依頼しようとしたが、同執行委員はこれが受
領を拒否したものである。右ストライキにより、その欠務時間は午前七時から同一
一時四六分までの間(但し、保険課職員は、午前一一時四八分まで)最高四時間四
六分、最低四六分間に亘つた。
 以上の認定を左右するに足りる証拠はない。
(二) そこで、以下右ストライキに際しての各組合役員の言動につき、被告の主
張に添つて検討する。
(1) 被告主張二2(四)(1)①(P4全逓中央執行委員)について
①(ア)について
 前記乙第八号証の一、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと
認められるから真正な公文書と推定すべき乙第八号証の三、四、成立について争い
のない同第一三号証の三によれば、被告主張事実を認めることができる。
 右認定に反する証拠はない。
②(イ)について
 先に認定したとおりである。仙台局局長名の職員各人宛の就労命命書は伝達され
たかつたものである。
③(ウ)について
 先に認定したとおりである。仙台局局長名のストライキ中止要求書ならびに仙台
局職員各人宛の就労命令書は伝達されなかつたものである。
④(エ)について
 証人P28の証言により被告主張事実を認めることができ、この認定に反する証拠
はない。
(2) 同②(原告)について
 前記甲第一号証の二、同号証の一一、乙第八号証の三、四、同第一二号証の五、
成立について争いのない同第一三号証の六、その方式および趣旨により公務員が職
務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第八号証の一〇、
同号証の一二ないし一五、同号証の二五及び証人P43、同P44、同P45、同P23の
各証言並びに原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。
 原告は、四月二三日午前五時四五分ごろから同九時ごろまでの間、仙台局通用門
入口付近において、全逓の腕章、鉢巻を着用して全逓中央執行委員、東北地本書記
長、同青年部長および全逓宮城地区本部書記長、同地区本部執行委員P23(同人
は、携帯マイクを肩にかけていた。)並びに支部書記長P31ら組合役員とともに、
当局のストライキ切り崩し等の未然の防止と職場大会会場を同局内と思い誤つてく
る組合員の指導あるいは説得のために立つていた(但し、仙台局への通行の妨害と
なるようなことはなかった。)が、この間、
① 午前七時九分ごろ、同局一階郵便課事務室に入室し、郵便課長P45の退去要求
に対し、組合の最高責任者として組合員の作業を見る権利がある旨述べて退去せ
ず、同七時一五分ごろまで椅子に腰を下ろしていた(以上の事実は、ほぼ当事者間
に争いがない。)、
② 午前七時五七分ごろ、右通用門入口付近において、同局会計課長から全逓中央
執行委員P4宛の同局局長名の「ピケ解散要求書」の文書を受けるや、「ピケではな
い。」といつてこれを返還した(以上の事実もほぼ当事者間に争いがない。)、
③ 午前八時一六分ごろ、東北地本書記長、全逓宮城地区本部書記長とともに再び
前記郵便課事務室に入室し、前記課長に対し宿直勤務者の小包の早期引継ぎ方を要
求した(以上の事実は、当事者間に争いがない。)、
④ 午前八時四二分ごろから約四分間前記通用門付近(但し、仙台局構外)におい
て、スクラムを組み労働歌を合唱した(スクラムを組んでいた点を除き、当事者間
に争いがない。)、
⑤ 午前九時二四分ごろ、赤腕章をつけ、前記全逓中央執行委員ら組合役員ととも
に前記職場大会会場に入り、同中央執行委員の情勢報告に次いで行なわれた東北地
本傘下の各地区本部執行委員長の激励の挨拶の最後にそれと同様の挨拶をし、右大
会終了後の午前一一時三六分ごろ、他の組合役員とともに組合員の先頭に立つて、
「がんばろう」の歌を歌い、手を叩きながら仙台局通用門から構内に入り、午前一
一時四六分ごろ、同局裏庭で全逓宮城地区本部書記長の司会により開かれた無許可
集会において、前記全逓中央執行委員の挨拶に次いで「団結頑張ろう」の三唱の音
頭を取つた(以上の事実もほぼ当事者間に争いがない。)。
 以上の認定を左右するに足りる証拠はない。
(3) 同③(東北地本書記長)について
 前記甲第一号証の一〇、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したもの
と認められるから真正な公文書と推定すべき乙第八号証の一六によれば、被告主張
(ア)および(イ)の各事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
 被告主張(ウ)の事実については、先に認定したとおりである(但し、ピケ隊に
挨拶した点については、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと
認められるから真正な公文書と推定すべき乙第八号証の一七によりこれを認めるこ
とができ、これに反する証拠はない。)。
(4) 同④(東北地本執行委員P29)について
①(ア)について
 前記乙第八号証の一、同第一三号証の三によれば、被告主張事実を認めることが
できる。但し、右行為につき、原告が右の者らと意思連絡のあつた事実を認めるに
足りる証拠はない。
②(イ)について
 その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な
公文書と推定すべき乙第八号証の一八によれば、被告主張事実を認めることがで
き、これに反する証拠はない。
(5) 同⑤(東北地本執行委員P32)について
 その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な
公文書と推定すべき乙第八号証の一九、証人P43の証言によれば、東北地本執行委
員P32、全逓宮城地区本部書記長P8外一名の者は、四月二二月午後一一時二〇分ご
ろ、仙台局庶務課事務室に入室し、同局庶務課長の口頭による再三の退室命令を無
視し、同三五分ごろまで椅子に腰掛けていたことを認めることができるが、原告が
右行為につき右の者らと意思連絡を有した事実を認めるに足りる証拠はない。
(6) 同⑥(東北地本青年部長)について
 先に、(2)の冒頭で認定したとおり被告主張事実を認めることができる。
(7) 同⑦(全逓宮城地区本部執行委員長)について
 前記甲第一号証の五、成立に争いがない乙第一三号証の二、その方式および趣旨
により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙
第八号証の二二、同号証の二六及び証人P25、同P23の各証言によれば、全逓宮城
地区本部執行委員長、同地区本部執行委員P23の両名は、四月二三日午前七時二五
分ごろ、庶務課長の制止を無視し、前記(2)で認定した仙台局通用門付近に立つ
ていた組合役員らに使用させる目的を以つて、組合員五名を指揮して仙台局の会議
用椅子三七脚を無断で持ち出した事実を認めることができるが、原告が右行偽につ
き、右の者らと意思連絡のあつたことを認めるに足りる証拠はない。
(8) 同⑧(全逓宮城地区本部書記長)について
①(ア)について
 先に(5)で認定したとおりである。
②(イ)について
 前記乙第八号証の一六、同第一三号証の三及び証人P25の証言によれば、全逓宮
城地区本部書記長は、四月二二日午後一一時四〇分ごろ、仙台局一階夜間窓口にお
いて、臨局中の仙台南局貯金課長P33に対し、東北地本書記長ら七名で取り囲み、
「お前は帰れ。」とか「ここにいてはいかん。」等とこもごも繰返したことを認め
ることができるが、原告が右行為につき、右の者らと意思連絡のあつたことを認め
るに足りる証拠はない。
③(ウ)について
 前記乙第一二号証の五、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したもの
と認められるから真正な公文書と推定すべき同第八号証の二三及び証人P43の証言
によれば、被告主張事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠は
ない。しかして該事実によれば、全逓宮城地区本部書記長は、宿明者のストライキ
参加を目的として該行動に出ていたと思われるので、原告も右行為につき同書記長
との間に意思を通じていたものと推認することができる。
④(エ)について
 前記乙第八号証の二三、同第一二号証の五及び証人P43の証言により被告主張事
実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。
(9) 同⑨(全逓宮城地区本部執行委員P23)について
①(ア)について
 前記乙第一三号証の二、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したもの
と認められるから真正な公文書と推定すべき乙第八号証の二四及ぴ証人P25、同P
23の各証言によれば、P23執行委員は、四月二二日の夜半から当局のストライキ破
りの監視と仙台局で勤務中の組合員を激励する目的で同局内に行つていたのである
が、その間被告主張の行為に及んだことが認められ、この認定に反する証拠はな
い。しかして該認定事実によれば、原告が右P23執行委員の行為につき同執行委員
と意思を通じていたことを推認できる。
②(イ)について
 先に(4)①で認定したとおりである。
③(ウ)について
 先に(2)で認定したとおりである。
④(エ)について
 先に(7)で認定したとおりである。
(10) 同⑩(全逓宮城地区本部執行委員P30)について
 前記乙第八号証の一、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと
認められるから真正な公文書と推定すべき同第八号証の八により被告主張事実を認
めることができ、これに反する証拠はない。
(11) 同⑪(全逓宮城地区本部青年部長P7)について
①(ア)について
 その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な
公文書と推定すべき乙第八号証の二七、成立について争いのない同第一三号証の四
によれば、被告主張事実を認めることができるが、原告が右行為につき右の者と意
思連絡のあつたことを認めるに足りる証拠はない。
②(イ)について
 前記乙第八号証の一、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと
認められるから真正な公文書と推定すべき同号証の二八によれば被告主張事実を認
めることができ、これに反する証拠はない。
(12) 同⑫(支部支部長P34)について
 前記乙第八号証の一によれば被告主張事実を認めることができ、これに反する証
拠はない。
(13) 同⑬(支部書記長P31)について
①(ア)について
 前記乙第一三号証の二、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したもの
と認められるから真正な公文書と推定すべき同第八号証の二九及び証人P25、向P
31の各証言によれば、P31支部書記長は、四月二三日午前零時七分ごろ、東北地本
書記長P2とともに仙台局一階郵便課出入口の扉のガラスに管理者の制止を無視し
「労働運動の刑罰を許すな」「無罪判決を要求しよう」を内容とするビラ一〇枚を
貼付した事実を認めることができるが、原告が右ビラ貼付につき右の者らと意思連
絡のあつたことを認めるに足りる一証拠はない。
②(イ)について
 前記乙第八号証の二五及び証人P43の証言によれば、被告主張事実を認めること
ができる。しかして原告も該行為につき右の者らと意思連絡のあつたことが推認さ
れる。
③(ウ)について
 先に(2)冒頭で認定したとおり被告主張事実を認めることができる。
(三) 次に、本件ストライキによる業務に対する影響について検討する。
 前記乙第八号証の一、同第一三号証の六ないし九(同号証の七ないし九について
は成立について争いがない。)及び証人P46、同P45の各証言によれば、次の事実
を認めることができる。
(1) 運送便について
 仙台駅と仙台局間の人便およびその他同局と石巻間、同局と大内間などの自動車
運送便一〇便の郵便物につき、仙台郵政局郵務部輸送課課長補佐P35外五名の管理
者が処理した。
(2) 通常配達便(速達便を除く)について
 仙台市内九六区、市外六区の一号便の配達は、全部欠便となり、それにより持出
不能郵便物数は、第一、二種郵便で約五万通、第三種以下の郵便で約四万通に達し
た(以上の事実は、当事者間に争いがない。)。また、私書箱配付約一万通および
大口配達約二万通は、仙台郵政局郵務部施設課課長補佐P36外四名の管理者が代行
した。
(3) 速達配達便について
 ストライキ中は全部欠便となつた(この事実は、当事者間に争いがない。)。そ
のため、五時間四〇分遅延した午後二時二〇分に出発した(但し、配達はすべて完
了した。)。なお、速達郵便物七、〇〇〇通の内、前記管理者らが、大口の四〇〇
個所三、〇〇〇通を配達した。
(4) 貯金外務について
 出発が三時間三〇分遅延し、午後一時三〇分に出発した(この点は当事者間に争
いがない。)。持出不能集金票は七〇〇件(平常との対比五三%)に達した。
(5) 保険外務について
 出発が四時間三〇分遅延し、午後一時三〇分に出発した(この点は当事者間に争
いがない。)。持出不能徴収原簿は八三七件、取立不能徴収原簿は七四八件(以
上、平常との対比五九%)に達した。
(6) 電信業務について
 ストライキ実施中五通の発信申込があつたが、四通は、発信者に事情を説明して
電報局から発信することの了承を得、他の一通は、午後に発信することの了解を得
た。
(7) 窓口業務について
①郵便について
 ストライキ実施中書留引受数は一二九件、小包引受数は、書留八件、普通一五〇
件、速達四〇件、料金別後納郵便引受数七、五七二通であり、この窓口業務の処理
には、仙台二十人町特定郵便局長外三名の特定郵便局長が当つた。
②貯金について
 ストライキ実施中の取扱数は、貯金関係受入七二件一七一万五、七六八円、貯金
関係払出六五件五七万二、六九七円、非現金五件、翌日組入七九件であり、この窓
口業務の処理には、小牛田局貯金保険課長P37、仙台南局貯金課長P33外二名の特
定郵便局長が当つた。
③保険について
 ストライキ実施中の取扱件数は、保険料受入四件五、六二〇円、貸付利息受入五
件四、二四五円、解約その他一〇件であり、この窓口業務の処理には、塩釜局保険
課長P38特定郵便局長外一名が当つた。
(8) なお、被告は、ストライキ実施中小包配達便が全部欠便となり持出不能数
は一、八○○個に達した旨主張するが、たしかに乙第八号証の一、同第一三号証の
八は右主張に副う証拠であるところ、他方、証人P46の証言によれば、本件ストラ
イキ当時仙台市内の小包配達の大部分は訴外日本郵便逓送株式会社が請負つてお
り、当日同労組が半日ストライキに突入していたことが認められるのであつて、右
ストライキによる影響も考えられるところであつて、本件ストライキにより被告主
張全部の影響が生じたものと断定することはできない。
 以上の認定を覆えすに足る証拠はない。
五 法令の適用
1 酒田局、横手局および仙台局における各ストライキについて
 原告の勤務すべき郵政業務は、多かれ少かれ、また直接と間接の相違はあつて
も、等しく国民生活全体の利益と密接な関連を有し、その業務の停廃は国民生活全
体の利益を害し、国民生活に重大な障障をもたらし、社会公共にきわめて大きな影
響を与えるおそれがあるものであるところ、本件各ストライキは、酒田局において
は五三分間、横手局においては五二分間、仙台局においては四六分ないし四時間四
六分間の各欠務行為を行なつたものであつて、その及ぼした影響は、前示認定のと
おり軽視すべきでなく、右は争議行為の正当性の限界を超えたものであつて、公労
法一七条一項の禁止規定に違反して行なわれた違法な争議行為であるというべきで
ある。従つて、原告の右各行為は、いずれも国公法九八条一項、一〇一条一項、九
九条に違反し、同法八二条各号に該当するものといわなければならない。
2 仙台郵政局関係について
(一) 四月一五日および同月二二日のビラ(ステツカー)貼付行為について
 ビラ(ステツカー)貼付行為は、団結権保障の具体的内容として法的に尊重され
るべきであることは当然のことであるが、郵政当局の有する施設管理権を不当に侵
害することは許されないところというべきであり、本件についてみるに、前示認定
のとおり、原告は、全逓宮城地区本部役員らと共謀して本件行為をなしたものであ
つて、その貼付場所は、いずれも仙台郵政局庁舎内の広範にわたり、その枚数も多
数であること、その態様も同局管理者らの制止行為を全く無視して行なわれたこと
等の諸事情を考慮すると、同局の維持、管理上特別に支障をきたしたものというべ
く、原告らの右行為は、組合活動としての相当性の範囲を逸脱し違法なものという
べきである。従つて、原告の右行為は、国公法九九条に違反し、同法八二条一号お
よび三号に該当するものといわなければならない。
(二) 集団交渉要求行為について
(1) 郵政当局と全逓との団体交渉に関しては、公労法八条ないし一一条に規定
されているところであるが、証人P6、同P5(但し、後記信用しない部分を除
く。)の各証言によれば、右両者の間には、従前団体交渉の方式および手続に関
し、労働協約が存していたが、本件当時該協約は失効していた。しかし、仙台郵政
局と東北地本とは、右協約の精神に則り問題のある都度団体交渉(地方交渉といわ
れる。)を行なつてきたものである。しかして、右団体交渉の手続については、先
ず東北地本の交渉部長であるP5副委員長が仙台郵政局の窓口となつていた管理課長
と予めその日時、場所、交渉事項等の事務折衝を行なったうえでなされてきたもの
であり、その席には、交渉委員(両者それぞれ一三名位。)が出席することになつ
ており(但し、交渉事項によつては、その者以外に説明員と称される者も出席する
ことがある。)、これまで行なわれてきた団体交渉は、両者それぞれ約三名(最も
多いときでも約一〇名)の交渉委員が出席して行なわれるのが通例となつており、
交渉事項については、局長の権限内の事項に限られていた(但し、前記協約中に
は、局長の権限外の事項に発展した場合「上移」という制度が存し、本省と全逓中
央本部の交渉に移行することになつていた。)。以上の外に、集団交渉、すなわ
ち、右交渉委員の外に一般組合員が参加する交渉方式は、郵政当局としては行なわ
ない方針を固めておつて、仙台郵政局においても右申し入れについては拒絶する方
針であつて従来これが行なわれたことはなかつたことが認められる。以上の認定に
反する証人P5の証言(集団交渉が慣例的に行なわれていた旨の証言)は、証人P
6の証言に照らし措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
(2) 本件についてみるに、前記四3(二)に認定した事実に、前項認定事実を
併せ考えれば、本件交渉要求行為は集団交渉の要求ともいうべきものであり、従前
から行なわれていた交渉手続を無視したものであつて、第一回目の交渉要求行為に
ついてみれば、全逓組合員約一〇〇名が仙台郵政局玄関前に集合し、労働歌を合唱
する等している状況のもとにおいて、約一三分間にわたり、管理課長が集団交渉に
は応じられないとしてその申し入れを拒絶しているにもかかわらず、その要求を繰
返えしたことは、いささか執拗な要求であるとの評価を免れず、その後の第二回目
の交渉要求行為についてみれば、全逓組合員約一〇〇名が三階ホールに座り込み集
団交渉に応ずべき旨のシユプレヒコールを繰返えしたり、集団示威行動をしたりし
ている等の状況のもとにおいて、前同様の交渉要求を一時間以上にわたって繰返え
し、途中原告ら組合役員数名も一緒にその要求行為をしたことは、集団交渉の強要
であるとの評価を免れず、団体交渉が法的に尊重されなければならないことは当然
であるとしても、右各行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱し違法なものというべ
きである。従つて、右行為は、国公法九九条に違反し、同法八二条一号および三号
に該当するものといわなければならない。原告は、当局の本件交渉要求行為の拒絶
は不当である旨主張するが、前示認定した事情、特に集団交渉になりかねない事情
のもとでは、管理課長が右要求を拒絶したからといつて、仮りに交渉の対象事項中
に当局の権限内の事項が含まれていたとしても、不当な団交拒絶であるということ
はできない。
(三) 集団示威行動について
 集団示威行動は、団結権保障の具体的内容として尊重されるべきは当然である
が、本件についてみれば、前示認定したとおり、従前から行なわれた交渉手続を無
視し、集団交渉の実現をめざして、約一〇〇名の多数の組合員が当局の再々にわた
る中止命令を無視して庁舎内を示威行進等し、喧噪にわたる行為に及んだものであ
つて、正当な組合活動の範囲を逸脱した違法なものというべきである。従つて、右
行為は、国公法九九条に違反し、同法八二条一号および三号に該当するものといわ
なければならない。
3 仙台局関係(但し、ストライキを除く。)について
 前記四4(二)(2)①の仙台局郵便課事務室への無断入室行為および退去要求
の拒否行為、同②のピケ解散要求の拒否行為、同③の同局郵便課事務室への無断入
室行為、同⑤の同局構内での無許可集会の実施行為、同(3)の共謀による東北地
本書記長の同局および同局郵便課事務室への無断入室行為、同(8)の③の共謀に
よる全逓宮城地区本部書記長の同局郵便課事務室への無断入室行為および退去命令
拒否行為、同④の共謀による同書記長の同局裏庭における職員に対する大会参加の
そそのかし、またはあおり行為、同(9)の①の共謀による全逓宮城地区本部執行
委員P23の同局郵便課事務室に無断入室した行為、同(13)の②の共謀による支
部書記長の同局郵便課輸送係室に無断入室した行為は、いずれも違法な行為であつ
て、国公法九九条に違反し、同法八二条一号および三号に該当するものというべき
である。被告が本件処分事由として主張する右以外の各行為については、前示した
とおり、原告に意思連絡のあることが認められないから、その責任を問うことは許
されないところである。
 原告は、前記(2)の①、③の各行為(仙台局郵便課事務室への無断入室行為、
退去要求の拒否行為)は、正当な組合活動(点検活動)である旨主張するが、前示
認定したところによれば、原告の右入室行為は、同室勤務者の違法なストライキ参
加を確実にすることを目的としていたものと推認できるので、正当な組合活動の範
囲を逸脱した違法なものというべきであるから、原告の右主張は採用しない。
六 原告の主張に対する判断
1 原告は、公労法一七条は憲法二八条に違反し無効である旨主張するが、公労法
一七条の合憲性については最高裁判所の判例の明示するところであつて(最高裁判
所昭和四一年一〇月二六日大法廷判決・刑集二〇巻八号九〇一頁等参照)、当裁判
所も公労法一七条にに違憲の点はないものと解する。
 したがって、右に反する原告の主張は採用することができない。
2 原告は、本件ストライキは団体行動権の行使としてなされたものであるから、
個人の非違行為に対する懲戒を目的として規定された国公法八二条は適用されるべ
きではない旨主張するので検討する。
 国公法上の懲戒制度の目的は、使用者としての国の有する指揮命令権の確保、職
場秩序の維持にあるのに対し、争議行為は、労働者が一定の要求の貫徹を目指して
団結し、使用者としての国の労務指揮権を排除するものであるから、右両者は両立
し得ない関係にある。しかし、労働者の争議行為が、使用者としての国の懲戒権を
排除し得るのは、その争議行為が、その目的および態様に徴し、労組法七条一号所
定の正当性を具備する限りにおいてであつて、右正当性を逸脱する場合には、本来
かかる違法な争議行為をなすことは許されないものであり、従つて、これを組成す
る個々の労働者の行為も当然個別的労働関係上の規制を受けるものといわなければ
ならない。この見解は、公労法三条が公共企業体等の職員に関する労働関係につい
て労組法を適用し、かつ、同法八条の適用を除外しながら、同法七条一号本文の適
用を除外していないこと、公労法がその四〇条一項一号において国公法八二条の適
用を除外していないことに照らし肯認し得るところである。したがつて、右に反す
る原告の主張は採用できない。
3 原告は、公労法一七条と国公法八二条等の懲戒規定の保護法益の差異から、ス
トライキの結果国民生活に重大な障害が生じ社会公共に大きな影響を生ぜしめたと
きにのみ国公法上の懲戒規定が適用されるのであつて、そうでない場合は公労法一
八条所定の解雇に限られるべきである旨主張するので検討するに、公労法一七条の
保護法益が前掲判示の如く国民生活全体の利益であることは疑いを容れないところ
であり、同条の違反に対する法律効果としては、同法一八条の解雇ならびに損害賠
償の民事責任の追及にあることも明らかなところであるが、右各措置にのみ限定さ
れるのは、公労法一七条違反の争議行為が前掲判示の如き正当性を具備する限りに
おいてであつて、違法な争議行為の場合には前掲判示の如く懲戒処分による責任の
追及もあり得るのである。従つて、右の範囲においては、公労法一七条の保護法益
中には前記国民生活全体の利益の外に能率的な公務の運営又は企業運営の正常性を
確保する目的のための職場ないし企業の秩序の維持その他の法益を包含しているも
のと解さざるを得ない。そして、公労法一七条違反の争議行為が発生した場合、同
法一八条によつて解雇するか否か、又は、国公法八二条による措置をとるか否かは
労働者のなした争議行為の態様、目的、程度等に応じ、使用者たる国又は公共企業
体の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきである。
 したがつて、右に反する原告の主張は採用できない。
4 原告は、本件処分は労組法七条に違反する不当労働行為である旨主張するの
で、この点について検討する。
(一) 原告は、本件処分は原告が労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて
なされたものである旨主張するが、前述したところから明らかなとおり、本件スト
ライキは勿論、その他のステツカー貼付行為、集団示威行動、交渉要求行為等はい
ずれも労働組合の正当な行為の範囲を逸脱した違法な行為であり、従つて、これを
異なる事実を前提として主張する原告の右主張は採用しない。
(二) 次に、原告は、本件処分は被告が東北地本の組合活動に介入し支配するこ
とを企図してなされたものである旨主張するが、原告がその主張のとおり全逓の役
員を歴任し(原告が組合専従者として昭和三九年八月以降東北地本の執行委員長の
地位にあつたことは当事者間に争いがない。)、昭和二六年以降今日に至るまで東
北地方における組合活動の指導者として従来から活発な活動を行なつてきたもので
あることは、成立に争いがない甲第一号証の一一、原告本人尋問の結果により認め
ることができ、これに反する証拠はない。しかし、被告において、原告の主張する
ように、原告を郵政事業から放逐し、それによつて東北地本の組合活動に介入し支
配する意図のあつたことを認めるに足りる証拠はない。従つて、原告のこの点に関
する主張は採用しない。
5 原告は、本件処分は著しく苛酷なものであり、懲戒権の濫用として無効である
旨主張するので、以下この点につき検討する。国公法八二条には、被告の職員が同
条各号の一に該当する場合においては、懲戒権者は、懲戒処分として、免職、停
職、減給又は戒告の処分をすることができる旨規定されている。そして、右の四種
の処分には、おのずから軽重の差異のあることはいうまでもないが、懲戒事由に当
る所為をした職員に対し、懲戒権者がどの処分を選択すべきかについては、その具
体的基準を定めた法律の規定はない。ところで、懲戒権者は、どの処分を選択する
かを決定するに当たつては、懲戒事由に該当すると認められる所為の外部に表われ
た態様のほか右所為の原因、動機、状況、結果等を考慮すべきことはもちろん、更
に、当該職員のその前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の
職員及び社会に与える影響等諸般の事情をも斟酌することができるものというべき
であり、これら諸事情を総合考慮したうえで、被告の職場秩序の維持確保という見
地から考えて相当と判断した処分を選択すべきである。しかして、どの処分を選択
するのが相当であるかについての判断は、右のようにかなり広い範囲の事情を総合
したうえでなされるものであり、しかも、前述のように、処分選択の具体的基準が
定められていないことを考えると、右の判断は懲戒権者の合理的な裁量に任されて
いるものと解するのが相当である。従つてその裁量は、恣意にわたることをえず、
当該行為との対比において甚だしく均衡を失する等社会通念に照らして合理性を欠
くものであつてはならないが、懲戒権者の処分選択が右のような限度をこえるもの
として違法性を有しないかぎり、それは懲戒権者の裁量の範囲内にあるものとして
その効力を否定することはできないものといわなくてはならない。もつとも、懲戒
処分のうち免職処分は、被告の職員たる地位を失わしめるという他の処分とは異な
つた重大な結果を、招来するものであるから、免職処分の選択に当つては、他の処
分の選択に比較して特に慎重な配慮を要することは明らかであるが、そのことによ
つても、懲戒権者が免職処分の選択を相当とした判断について、裁量の余地を否定
することはできず、結局、それにつき、右のような特別に慎重な配慮を要すること
を勘案したうえで、裁量の範囲をこえているかどうかを検討してその効力を判断す
べきものであつて、右の検討の結果によつて合理性を欠くものと断定し得るときに
限り、その効力を否定せざるを得ないのである。
 本件につきこれを見るに、前記認定した事実に徴すると、原告のなした本件違反
行為の程度は軽視することはできず、原告の責任は重大であるといわざるを得な
い、しかし、他方、本件ストライキの中心目的は賃金引上げ等の経済的要求であ
り、右ストライキも特に暴力行為等は発生せず、酒田局および横手局における各ス
トライキについてみれば、現実には業務に対する大きな混乱は生じたかつたこと、
横手局におけるストライキについては、東北地本書記長P2、仙台局における半日ス
トライキについては、全逓中央執行委員P4のそれぞれ直接指導のもとにストライキ
が実施されたものであり、右各ストライキにつき、原告の指導性はさ程顕著でなか
つたこと、仙台郵政局における二回にわたるステツカー貼付行為の実施を決定し実
行したのは、主として全逓宮城地区本部(四月二二日のステツカー貼付については
全逓中央執行委員P4が指示をしている。)であつて、原告の指導性が顕著であると
は認められず、原告は、せいぜい右地区本部役員らと意思連絡のあつた程度に止ま
ること、その他仙台郵政局における集団交渉要求行為、集団示威行動等に、行き過
ぎの点があつたけれども特に暴力行為等は発生しなかつたこと、前記甲第一号証の
一によれば、今次春闘で全逓組合のうち約三、六〇〇名が処分を受け、全逓中央執
行委員についてみれば、P47(企画部長-組織の維持、運動・闘争全体の計画立案
とその指導担当)外P4(前述のとおり仙台局におけるストライキ指導責任者)等一
一名(いずれも四月二三日実施された半日ストライキにつき全国各拠点局における
指導責任者)が公労法一八条による解雇処分に付されたに止まることが認められ、
これに反する証拠はない。また、前記甲第一号証の一、成立に争いのない同第七号
証、同第七号証の一ないし八、証人P48、同P49、同P39の各証言によれば、今次
春闘に際し、東北地本傘下で実施されたとほぼ同程度のストライキ、集団示威行
動、ビラ貼り活動等が全国地方本部傘下においても実施され、その指導責任を問わ
れた右各地方本部執行委員長の処分(但し、処分説明書によれば、処分事由はいず
れもストライキ実施についてのみであつて、原告の如くその他のビラ貼り行為、集
団示威行動等につき処分事由として記載されていない。)をみるに、懲戒免職とな
つたのは原告のみであつて他の右各地本委員長(但し、東海地本執行委員長P
48は、昭和三五年二月六日以降起訴休職中につき処分がなかつた。)らは、いずれ
も最も重くて停職一年(関東地本執行委員長P49、近畿地本執行委員長P50、四国
地本執行委員長P51)であり、最も軽くて停職九月(北海道地本執行委員長P52)
であり、その他は停職一〇月(信越地本執行委員長P53、北陸地本執行委員長P
54、中国地本執行委員長P55、九州地本執行委員長P56)に止まつていること、右
各地本委員長の過去の処分歴をみても原告との間にほとんど差異がない(関東地本
委員長は、停職八回、北陸地本委員長は停職七回、減給一回、九州地本委員長は停
職八回、減給一回であつて、原告の停職七回に比しいずれも処分歴が多い。)こと
が認められ、これに反する証拠はない。右に述べたような諸事情を総合して考える
と、その方式及ぴ趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な
公文書と推定すべき乙第六号証の五、六及び証人P21の証言によれば第三被告主張
の二、2(三)(1)②の事実(但し「八回にわたり」とあるは「一〇回にわた
り」と認める)を認めることができ、又前同様公文書と推定すべき乙第六号証の七
ないし八及び同証人の証言によれば同③の事実を認めることができ、右認定を覆え
すに足る証拠はないけれども、原告につき例えかかる事情を考慮に入れるとして
も、被告が原告に対し本件処分を選択した判断は合理性を欠くものと断ずるほかは
なく、本件処分は裁量の範囲をこえた違法なものというべきである。
七 以上の説示から明らかなとおり、被告のなした原告に対する本件懲戒処分は、
その裁量権を濫用した違法なものとして取消さるべく、原告の本件請求は正当とし
てこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとお
り判決する。

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弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
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学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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