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平成26年(許)第17号
間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
平成27年1月22日第二小法廷決定
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1抗告代理人小原一人ほかの抗告理由第2の1について
1本件は,諫早湾及びその近傍において漁業を営む相手方らが,抗告人に対
し,諫早湾干拓地潮受堤防の北部及び南部各排水門(以下「本件各排水門」とい
う。)の開放を抗告人に命ずる確定判決に基づき,間接強制の申立てをした事案で
ある。
2記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。
(1)相手方らは,抗告人に対し本件各排水門の開放を求めた訴訟において,平
成22年12月21日から3年を経過する日までに,防災上やむを得ない場合を除
き,本件各排水門を開放し,以後5年間にわたってその開放を継続することを抗告
人に命ずる確定判決(以下「本件確定判決」という。)を得ている。
(2)他方,長崎地方裁判所は,平成25年11月12日,諫早湾の干拓地で農
業を営み,又は同湾内で漁業を営む者等の申立てに基づき,抗告人に対し,本件各
排水門を開放してはならない旨を命ずる仮処分決定(以下「別件仮処分決定」とい
う。)をした。
(3)相手方らは,平成25年12月24日,佐賀地方裁判所に対し,本件確定
判決に基づき,防災上やむを得ない場合を除き,本件各排水門を開放し,以後5年
間にわたってその開放を継続することを抗告人に対して命ずるとともに,その義務
を履行しないときは抗告人が相手方らに対し一定の金員を支払うよう命ずる間接強
制決定を求める申立てをした。
これに対し,抗告人は,別件仮処分決定により本件各排水門を開放してはならな
い旨の義務を負うなどしたため,本件各排水門の開放という本件確定判決に基づく
債務を履行するに当たり,債務者である抗告人の意思では排除することができない
事実上の障害があり,抗告人の意思のみでこれを履行することができないから,間
接強制決定は許されないと主張している。
3原審は,本件確定判決に基づく債務は債務者である抗告人が自己の意思のみ
で履行することができる債務であるとして,抗告人に対し,原々決定の送達を受け
た日の翌日から2箇月以内に,防災上やむを得ない場合を除き,本件各排水門を開
放し,以後5年間にわたってその開放を継続することを命ずるとともに,上記2箇
月の期間内にその義務を履行しないときは,相手方ら各自に対し,上記期間経過の
翌日から履行済みまで,1日につきそれぞれ1万円の割合による金員を支払うよう
命ずる間接強制決定をすべきものとした。
4本件確定判決に基づき抗告人が負う債務の内容は,防災上やむを得ない場合
を除き一定期間本件各排水門を開放することだけであるから,それ自体,性質上抗
告人の意思のみで履行することができるものである。このことは,抗告人が別件仮
処分決定により本件各排水門を開放してはならない旨の義務を負ったことにより左
右されるものではない。民事訴訟においては,当事者の主張立証に基づき裁判所の
判断がされ,その効力は当事者にしか及ばないのが原則であって,権利者である当
事者を異にし別個に審理された確定判決と仮処分決定がある場合に,その判断が区
々に分かれることは制度上あり得るのであるから,同一の者が仮処分決定に基づい
て確定判決により命じられた行為をしてはならない旨の義務を負うこともまたあり
得るところである。本件確定判決により本件各排水門を開放すべき義務を負った抗
告人が,別件仮処分決定により本件各排水門を開放してはならない旨の義務を負っ
たとしても,間接強制の申立ての許否を判断する執行裁判所としては,これら各裁
判における実体的な判断の当否を審理すべき立場にはなく,本件確定判決に基づき
間接強制決定を求める申立てがされ,民事執行法上その要件が満たされている以
上,同決定を発すべきものである。
以上によれば,抗告人が別件仮処分決定により本件各排水門を開放してはならな
い旨の義務を負ったという事情があっても,執行裁判所は本件確定判決に基づき抗
告人に対し間接強制決定をすることができる。
抗告人主張のその余の事情も間接強制決定をすることを妨げる理由となるもので
はない。
5これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用
することができない。
なお,本件各排水門の開放に関し,本件確定判決と別件仮処分決定とによって抗
告人が実質的に相反する実体的な義務を負い,それぞれの義務について強制執行の
申立てがされるという事態は民事訴訟の構造等から制度上あり得るとしても,その
ような事態を解消し,全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待されるとこ
ろである。
第2その余の抗告理由について
所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用
することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官千葉勝美裁判官小貫芳信裁判官鬼丸かおる裁判官
山本庸幸)

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