弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人藤原晃の上告理由について
 一 本件は、被上告人が、戸籍上同人の嫡出子とされている上告人に対し、両者
の間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起した事案である。記録によって認
められる事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 被上告人とDは、平成三年二月二日、婚姻の届出をした。
 2 Dは、平成三年九月二日、上告人を出産した。被上告人は、同月一一日、上
告人の出生の届出をし、上告人は、戸籍上、被上告人とDの嫡出子(長男)として
記載されている。
 3 被上告人とDは、平成六年六月二〇日、上告人の親権者をDと定めて協議離
婚した。
 4 被上告人は、平成七年二月一六日、本件訴えを提起した。
 二 第一審は、本件訴えを却下したが、原審は、本件訴えの適法性につき次のと
おり判断し、第一審判決を取り消して事件を第一審に差し戻す旨の判決をした。
 1 民法上嫡出の推定を受ける子に対し、父がその嫡出性を否定するためには、
同法の規定にのっとり嫡出否認の訴えによることを原則とするが、嫡出推定及び嫡
出否認の制度の基盤である家族共同体の実体が既に失われ、身分関係の安定も有名
無実となった場合には、同法七七七条所定の期間が経過した後においても、父は、
父子間の自然的血縁関係の存在に疑問を抱くべき事実を知った後相当の期間内であ
れば、例外的に親子関係不存在確認の訴えを提起することができるものと解するの
が相当である。
 2 本件においては、被上告人とDとの婚姻関係は消滅しているのであるから、
被上告人と上告人をめぐる家族共同体の実体が失われていることは明らかである。
また、被上告人が上告人との間に自然的血縁関係がないのではないかとの疑いを高
めたのは、平成七年一月二二日にDからその旨の電話を受けた時であり、被上告人
は、その後速やかに本件訴えを提起している。
 3 したがって、本件においては、被上告人は、上告人に対し、親子関係不存在
確認の訴えを提起し得るものと解すべきであり、本件訴えは適法といえる。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 民法七七二条により嫡出の推定を受ける子につき夫がその嫡出であることを否認
するためには、専ら嫡出否認の訴えによるべきものとし、かつ、右訴えにつき一年
の出訴期間を定めたことは、身分関係の法的安定を保持する上から十分な合理性を
有するものということができる(最高裁昭和五四年(オ)第一三三一号同五五年三
月二七日第一小法廷判決・裁判集民事一二九号三五三頁参照)。そして、【要旨】
夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情があっても、子の
身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、右の事情
が存在することの一事をもって、嫡出否認の訴えを提起し得る期間の経過後に、親
子関係不存在確認の訴えをもって夫と子との間の父子関係の存否を争うことはでき
ないものと解するのが相当である。
 もっとも、民法七七二条二項所定の期間内に妻が出産した子について、妻が右子
を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠
隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなど
の事情が存在する場合には、右子は実質的には民法七七二条の推定を受けない嫡出
子に当たるということができるから、同法七七四条以下の規定にかかわらず、夫は
右子との間の父子関係の存否を争うことができると解するのが相当である(最高裁
昭和四三年(オ)第一一八四号同四四年五月二九日第一小法廷判決・民集二三巻六
号一〇六四頁、最高裁平成七年(オ)第二一七八号同一〇年八月三一日第二小法廷
判決・裁判集民事一八九号四九七頁参照)。しかしながら、本件においては、右の
ような事情は認められず、他に本件訴えの適法性を肯定すべき事情も認められない。
 そうすると、本件訴えは不適法なものであるといわざるを得ず、これと異なる原
審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響
を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免
れない。そして、以上に説示したところによれば、本件訴えは却下すべきものであ
るから、右と結論を同じくする第一審判決は正当であって、被上告人の控訴はこれ
を棄却すべきものである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田
昌道)

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