弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人海野晋吉、同鈴木秀雄の上告趣意一点について。
 しかし、原判決挙示の証拠によれば、共謀その他原判示第二の事実認定を肯認す
ることができ、その証拠と事実との間に採証の法則に反し若しくは論理上の食い違
いのある点を発見することができない。所論は、結局証拠の取捨判断を非難するに
帰するから、採るを得ない。
 同二点について。
 しかし、本件のような旧法事件については、刑訴施行法一三条刑訴規則施行規則
三条三号の規定により、裁判所は開廷後引き続き一五日以上開廷しなかつた場合に
おいても、必要と認める場合に限り、公判手続を更新すれば足りるものであつて、
何等違法又は違憲でないことは当裁判所大法廷の判例(昭和二四年(れ)二、〇〇
〇号同二五年二月一五日、昭和二四年(れ)第二、一二七号同二五年一〇月二五日
各大法廷判決)とするところであるから、論旨は採用することができない。
 被告人B弁護人樫田忠美、同長友安夫の上告趣意一点乃至六点について。
 しかし、所論一点の訊問調書中には、原判決引用と同趣旨の供述記載が存するか
ら、原判決には同論旨のような虚無の証拠を採用した違法は認められないし、また、
証拠の取捨選択は、原審の裁量に属するところであるから、原審が右調書を採用し
他の証拠を採用しなかつたからといつて、違法であるとはいえないしその他原判決
の採証には論旨二点のような実驗則違反も認められない。それ故、論旨一、二点は
採用できない。
 次に、原判決挙示の証拠によれば、共謀並びに詐欺の意思その他原判示第一の詐
欺の事実認定を肯認することができる。されば、論旨三点は、原判示に副わない独
自の事実見解の下に法令の違反を主張するに過ぎないものであり、また、同四点は、
原審の裁量に属する証拠の判断を非難するに過ぎないものというべく、なお、同五
点主張の事実が国民及び裁判所に顯著なことは当裁判所の是認し難いところである
から、同三乃至五点の論旨はすべて採用できない。
 最後に同六点は、事実誤認の主張であつて、かかる主張が適法な上告理由となら
ないことは、当裁判所不動の判例であるから同六点の論旨も採ることができない。
 被告人Bの上告趣意書は旧刑訴四二三条所定の期間経過後に提出されたものであ
るから、これに対しては判断をしない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は海野、鈴木両弁護人の論旨二点に対する沢田裁判官の反対意見(前掲
各大法廷判決における同裁判官の少数意見)を除くの外裁判官全員一致の意見によ
るものである。
 検察官安平政吉関与
  昭和二五年一一月二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    岩   松   三   郎
 裁判官真野毅は米国出張中につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    齋   藤   悠   輔

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