弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 各被告本人の上告趣意について。
 原審の認定した所論強盗殺人に関する事実は、被告人等三名は被告人Aの発起に
より同人がかねて勝手を知つていた兵庫県印南郡a村bのB庵に押入つて金品を強
奪することを共謀し、まずAが同庵の様子を窺い、家人の寝静つているのを確めた
後、C、Dの両名が家人を脅迫して縛り上げる役割を定めた上Cは、住職Eの寝室
に、又Dは右Eの実妹Fの寝室にそれぞれ侵入し、最初Dは右Fに所携の庖丁を突
付けて脅迫したところ、同女が驚いて戸外に逃げ出そうとしたため、入口で待機し
ていたAの応援を得て、同女の手足を捕え、その場にあつた布紐等でこれを縛り、
なお同女が大声を挙げて救いを求めたので、両名相協力してその場にあつた風呂敷、
紐、暖簾切端等で同女の口部頸部を厳重に幾重にも緊縛した結果、間もなく同女を
して窒息死亡せしめ、又他方、Cは所携の庖丁を右Eに突付けて脅迫した上、その
場にあつた布紐等で同人の手足を縛り、更に救いを求める同人の口部頸部を厳重に
幾重にも緊縛した結果、間もなく同人を窒息死亡せしめた後、被告人等は交々同家
の各部屋を物色して右E等所有の現金二八〇円、白米約一斗五升衣類雑品二十数点
を強取したというのである。しかもこの原審認定の事実は、原判決の挙示する証拠
によつて証明し得るものと認められる。
 A及びDの両被告人は、被告人CがFを絞殺したのであつて自分等は唯同女を縛
り猿轡をしただけであると主張するのであるが、原審は前説示の通り被告人等がな
した猿轡の結果右Fは死亡したものと認定しているのであり、所論は事実審である
原審が、その裁量権の範囲内で適法になした事実の認定を非難するに帰着し、上告
適法の理由とならない。のみならず原審の認定したように、被告人等が強盗をする
ことを共謀して他家に侵入し各自手分をして家人を脅迫し、その手足を縛り更にそ
の口部及び頸部を緊縛する等の暴行をして、その結果被害者両名を死亡せしめた以
上、被告人等すべては、直接自ら手を下さなかつた被害者の死亡に対しても、その
責任を負わなければならないのである。それは犯罪の敢行を共謀した共犯者が互に
他の共犯者の行為を利用し合つてその犯罪遂行の意思を実現した場合においては、
その犯罪の成立に関しては他の共犯者の行為も自らの行為と何等区別すべき理由は
ないからである。従つて、もし被告人両名の主張するように、被告人CがFを絞殺
したものとすれば、被告人両名も亦F絞殺の責を負わなければならないことともな
るのであつて、かかる主張は、後に説明する通り、被告人等に殺意のあつたことを
認めていない原判決の趣旨に副わない弁解であるばかりでなく、必ずしも被告人等
のために利益な主張ではないのである。
 また、被告人等殊にCは殺意のなかつたことを強調するのであるが、たとえ被告
人等に殺意がなかつたとしても、なお強盗殺人罪の責を免れることはできないので
ある。刑法二四〇条後段は「強盗人ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス」
と規定して殺意の有無を問わず強盗犯人が暴行の結果人を死に致せば強盗殺人罪の
成立することを明らかにしているのである。それは暴行脅迫によつて他人の財物を
強奪する強盗というような危険極まる凶悪な犯罪を敢えてするものが、その暴行に
よつて人を死亡せしめるならば、たとえそれが予期に反した結果であつても、なお
その結果に対し加重的責任を負わしめるのが当然であると、法律は考えたのである。
それ故本件強盗殺人罪の成否には被告人等に殺意があつたかどうかということは、
全然関係のないことであるばかりでなく、原判決を通読して容易に了解し得るよう
に原審は被告人等に殺意があつたとは認定していないのである。
 尤も強盗殺人罪においても殺意の有無は犯情として量刑上斟酌せらるべき事項で
はあらう。しかし原審が被告人等に殺意のあつたことを認めず、しかも法定刑中死
刑を選択し被告人等を所断したのは、本件における犯情の全貌を慎重に考察した上
裁定した結果であることを窺い得るのであつて、原判決には何等の違法も存在しな
いのである。被告人等の立場から見れば、殺意のなかつた被告人等に対し原審の科
刑は重いと思われるかも知れないが、所論は結局事実審である原審がその裁量権の
範囲内において適法になした刑の量定を非難するに帰着し、上告適法の理由となら
ない。
 次に被告人Dは、第一審以来の審理の経過及び情況を述べ原判決には裁判上の不
公平があると主張するのであるが、記録によると同被告人に対し公判請求のあつた
のが、被告人A、C両名に対する第一審判決言渡後であり、従つてその第一審の審
判が右両名と全然別途になされ、第二審においてはじめて被告人等三名が併合審理
せられるに至つたものであることは、所論の通りである。しかし被告人Dに対する
第一審の審判が、A、C両被告人の審判を別途になされたことは、前説示のような
事情の下にあつては、むしろ当然のことであり、又これがために特に被告人Dに対
する審理が簡略になされたと認むべき証跡はない。しかも第二審においては覆審主
義の下に、事件の審理は被告人等三名併合して最初から繰返して新たになされたの
であるから、同被告人はその際自己に不利益な相被告人の供述に対し十分なる反問
と弁解との機会を与えられた筈なのである、同被告人の国選弁護人が被告人Cの国
選弁護人に比し冷淡であつたという事実に至つては記録上これを窺い知るに由ない
ところであるばかりでなく、仮りにかかる事実があつたとしてもその一事にもとず
き原判決に所論のような違法があるとはいい得ない。
 なお被告人等は或は現在における心境を述べ、或は家庭の事情を訴えて、当裁判
所に対し寛大な判決を求めるのであるが、上告は原判決に法令違反あることを理由
とする不服申立であり、上告審である当裁判所は、原判決に法令違反があつてこれ
を破棄し自判する場合の外は、仮りに所論のような事情があるとしても、原判決の
量刑を変更することは法律上できないのである。所論は上告適法の理由とならない。
 論旨はすべて採用に値しない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 竹原精太郎関与
  昭和二四年七月一四日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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