弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人重田光明、同人見福松の上告趣意第一点、第七点(ロ)について。
 しかし、犯行の時刻は本件犯罪については罪となるべき事実でもなく、また、法
津上刑の加重減免の原由たる事実でもないこと明らかであるから、これを判示しな
かつたからといつて、原判決には所論のような審理不尽又は判断遺脱の違法は存し
ない。諭旨は理由がない。
 同第二点について。
 しかし、所論の原判示事実の認定は原判決挙示の証拠就中原審公廷における被告
人の供述に照らして肯認することができ、その間反経験則の違法もない。されば、
原判決には所論のように証拠によらないで事実を認定した違法は毛頭存しない。論
旨は結局事実審たる原裁判所の裁量権内でした事実認定を非難するに帰し上告適法
の理由とならぬ。
 同第三点について。
 原判決は被告人の携帯していた挙銃が十九年式か十四年式かについては何等認定
判示をしていないこと判文上明らかであるから、原判決が十九年式と判断したこと
を前提とする所論は判示にそわない事実を独断するものでとるをえないのみならず、
かかる事実は本件では罪となるべき事実でなく、また、刑の量定にも影響のないこ
と明らかなところである。さればこれを判示しなかつたからといつて、原判決には
所論のように審理不尽乃至理由不備の違法ありとはいえない。論旨は理由がない。
 同第四点について。
 しかし、原判決の挙示する証拠特に被告人の原審公廷における供述として、「犯
人連行中最早や拳銃を使用する必要のないことを認めてズボンの後ポケツトに入れ
様と思つたところ拳銃の安全装置が土井方で威嚇発射した時直ぐに完全に掛けたつ
もりでおつたのに半分しかかかつていないことに気がつきこれは危いと思つた」旨
述べている。この供述によれば、安全装置を半分しかかけないでいて、完全にかけ
たように思つて拳銃を携行していたことが認められるのであつて、この一事だけで
も被告人に拳銃の携帯についての業務上の注意を怠つたものといえるのである。し
かのみならず、同公廷において被告人は更に、「右片手で銃口を前に向けた儘安全
装置をかけようとした……A巡査は私より六尺位離れて先きを道路の右側を歩いて
いました……私も道路の右側を……」と供述しているのである。この供述によれば、
被告人は安全装置の半分しかかかつていないことに気づいていて、しかも、同僚が
自分の近くの前方を歩いて行くのを知りながら、なお、銃口を前方に向けた儘で拳
銃の安全装置をかけようとしたことが明認でき、この被告人の所為は拳銃操作に関
する注意を怠つたものといわなければならぬ。蓋し拳銃の操作殊に安全装置をかけ
ようとするときには当然に銃口を空中又は地面に向けてする等事故の発生を未然に
防止する義務のあることは拳銃を業務上携帯する者に課せられている注意義務であ
ること多言を要しないところであるからである。されば、仮りに、所論のように被
告人が左手にもつていた補縄を一時はなち、両手で拳銃の安全装置をすることが被
告人の職責上等からできなかつたとしても、被告人に本件拳銃の暴発に因る死傷に
ついて業務上の過失がないとはいえない筋合であるといわなければならぬ。原判決
はその説示に適切を欠くうらみなしとしないが結局は正当であつて論旨は理由がな
い。
 同第五点について。
 しかし所論の原判示事実の認定は原判決挙示の証拠によつてこれを肯認しえられ、
その間反経験則等の違法はなく、従つて原判決には所論のような審理不尽、理由齟
齬の違法はない。所論は結局原審の裁量権内で適法にした証拠の取捨乃至事実認定
を非難するに帰し上告適法の理由とならぬ。
 同第六点について。
 論旨に縷述するところは原判決が被告人に刑の執行猶予を言渡さなかつたのを非
難するに帰し、上告適法の理由とならぬ。
 同第七点の(イ)(ハ)について。
 論旨(イ)に指摘する本件公判請求書中本件発生の日時として昭和二二年九月一
五日とあるのは昭和二一年九月一五日の誤記と認むベきことは、記録上明らかな右
請求書の日附も、右請求書が東京刑事地方裁判所に受附けられた日附も、ともに、
昭和二二年七月一四日であることから推して明白であるし、なお、原審公廷では検
事は本件発生の日時を昭和二一年九月一五日と判示している第一審判決書理由記載
の犯罪事実をそのとおりと公訴事実の陳述をしたことが記録上明認されるから、公
判請求書中の所論日附の誤記は原審公廷において明確に訂正されているものといえ
るのである。されば、原判決には所論のように不法に公訴を受理した違法あるもの
とはいえない。
 論旨(ハ)は原審は審判を受けない事件について判決をし、受けた事件について
判決をしない違法をしたというのであるが、公訴事実と原判示事実とはその基礎た
る事実(被告人が業務上の過失に因つて拳銃を暴発しBを即死させAを傷害した事
実)は同一であるから、原判決には所論の違法はない。
 同第八点について。
 原判決は所論のC及びAに対するDの各聴取書を証拠として採用していないので
あるし、仮りに所論のように右聴取書は証拠として取調ぶべきでないとしても、こ
れを取調べたからといつて、その取調べの際に適法になされた他の証拠の取調べま
でも当然に違法無效となるものとはいえない。されば所論の鑑定書、答申書を証拠
として判示事実を認定したからといつて、原判決には所論のように証拠とならない
ものを判示事実の認定に供した違法あるものとはいえない。論旨は理由がない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い全裁判官一致で主文のとおり判決する。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二六年七月五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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