弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
被告人を懲役4年6月に処する。
未決勾留日数中280日をその刑に算入する。
押収してある鉄パイプ1本(平成16年押第102号の3)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成16年6月5日,兵庫県A市B町Ca番地b所在の居酒屋甲店内
において,隣席に座ったD,E及びFらから自己らが所属していた暴走族グループ
の悪口を言われたことなどに憤激した分離前共同被告人Gに呼び出されたことか
ら,同H,同I及び同Jと共に相前後して同店前に集まり,G並びに当初からGと
一緒にいた同K及び同Lに合流したものであるが
第1 D,E及びFに制裁を加えるに当たり,同人らが死亡するかもしれないがそ
れでも構わないと決意し,上記各分離前共同被告人と共謀の上
  1 同日午後9時50分ころ,上記甲店前駐車場において,上記D(当時31
歳)に対し,H,G及び被告人が,その全身を多数回にわたって手拳で殴打し,足
で蹴るなどの暴行を加え,さらに,同日午後10時10分ころ,B町Mc番地d所
在の乙橋西詰め先路上において,Gが所携の刃物様のもので上記Dの顔面及び左大
腿部等を刺すなどしたが,上記Dに入院加療77日間を要する顔面,左上腕及び左
大腿刺傷,左眼窩底骨折,右第9肋骨骨折並びに左膝窩動脈外傷性仮性動脈瘤等の
傷害を負わせたにとどまり,同人を殺害するに至らなかった。
  2 同日午後9時50分ころ,上記甲店前駐車場及びB町Ce番地f所在の株
式会社丙店(以下「丙」という。)敷地内において,上記E(当時29歳)に対
し,I,J,G及びLが,所携の金属バットを用いるなどして,その全身を多数回
にわたって殴打し,足で蹴るなどの暴行を加え,さらに,同日午後10時10分こ
ろ,上記乙橋西詰め先路上において,Gが所携の刃物様のもので上記Eの両上腕及
び両大腿部等を刺すなどしたが,上記Eに入院加療約41日間を要する頭部挫滅
創,左第8・9肋骨骨折,肝損傷及び両大腿両上腕刺創等の傷害を負わせたにとど
まり,同人を殺害するに至らなかった。
  3 同日午後9時50分ころ,上記甲店前駐車場において,上記F(当時29
歳)に対し,G,K及びLが,所携の鉄パイプを用いるなどして,その全身を多数
回にわたって殴打し,足で蹴るなどの暴行を加え,さらに,そのころ,同所から上
記乙橋西詰め先路上までの間において,Gが所携の刃物様のもので上記Eの前額部
及び右大腿部等を刺すなどしたが,上記Fに加療約24日間を要する前額部,右大
腿部刺創,上門歯損傷,外傷性頸部症候群及び左肋骨右大腿打撲の傷害を負わせた
にとどまり,同人を殺害するにいたらなかった。
第2 上記D,E及びFを不法に監禁しようと企て,上記各分離前共同被告人と共
謀の上
  1 同日午後10時ころ,上記甲店前駐車場において,上記Dを同所に駐車中
の被告人運転の普通乗用自動車の後部座席に押し込み,直ちに同車を発進させ
  2 同日午後10時ころ,上記株式会社丙店敷地内において,上記Eを同所に
駐車中の上記普通乗用自動車の後部トランク内に押し込み,直ちに同車を発進させ
  3 同日午後10時ころ,上記甲店前駐車場において,上記Fを同所に駐車中
のI運転の普通乗用自動車の後部座席に押し込み,直ちに同車を発進させ
  上記各普通乗用自動車を上記乙橋西詰め先路上まで約6.9キロメートル疾走
させ,同日午後10時10分ころまでの間,約10分間にわたり上記D,E,Fを
上記各自動車後部座席内又は後部トランク内に閉じ込めて脱出することを不能なら
しめた。
(証拠の標目)―括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号―
 省略
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,判示第1の各犯行について,被告人には殺意及び殺人の共謀がな
く,傷害罪が成立するにとどまると主張するが,前掲関係各証拠によれば未必の殺
意及びこれを前提とする殺人の共謀を認めるに十分である。以下,補足説明する。
2 関係各証拠によれば,以下の事実を認めることができる。
 (1) 被告人らは,いずれも暴走族N会のメンバーであったものであるが,そのう
ちG,K及びL並びにOが,本件事件当日午後7時ころから甲で飲食を始めたとこ
ろ,隣席にいたD,F及びEらが,N会が他の暴走族に潰されたとか,その統率者
であったGが何もしなかったとかの発言をするなど,Gらを挑発するような言動を
したことから,これを聞いたGは,激高してDらに制裁を加えようと企て,凶器を
持って甲前に集まるよう,J,I,H及び被告人らに直接又は間接に連絡した。J
及びIが金属バットを,Hが木製バットを,被告人が鉄パイプを所持して甲前に集
合したところ,GがDらの言動を被告人らに伝えた上で,「いわしてしまえ。」な
どとDらに攻撃を加えるよう指示したことから,これに応じた被告人らは,上記の
凶器を手にして,Dらが甲から出てくるのを待ち構えた。
 (2) Dは,甲から出てきたところを手拳で一回殴打され意識を失って倒れ込み,
同人をかばおうとその上に覆いかぶさった交際相手の女性もたちまち引き離されて
しまい,腹部等を多数回足蹴にされるなどした後,普通乗用自動車(車種P。以下
「P」という。)の後部座席に積み込まれ,更に顔面を多数回殴打された。
   Fは,甲から出てきたところを手拳で1回殴打され意識を失って倒れ込み,
顔面を1回蹴り付けられ,腹部を鉄パイプで殴打され,足蹴にされた後,普通乗用
自動車(車種Q。以下「Q」という。)の後部座席に積み込まれた。
   Eは,甲駐車場において金属バットで頭部を1回殴打されたため,丙方向に
逃げ出したが,同店敷地内において金属バットで頭部を数回殴打され,さらに,頭
から出血させながら逃げたものの,金属バットで頭部や腹部等を多数回にわたり殴
打されて倒れ込み,意識がもうろうとなった状態で腹部等を足蹴にされ,Pの後部
トランク内に押し込まれた。
 (3) E及びDを積んだPがR町方面に向かい,その後方をFを積んだQが追走し
ていたところ,上記乙橋付近において,DがPのドアを開けて逃げようとしたこと
から,P及びQは停車した。その後,Gは,所携の刃物様のものを用い,Dの左上
腕部や左大腿部等を突き刺した上,顔面をえぐるようにして切り裂き,Fの前額部
及び右大腿部を突き刺し,Eの両上腕及び両大腿部等を突き刺すなどした。
 (4) 上記暴行の結果,D,F及びEは判示の各傷害を負ったが,Dは血液の約3
分の1が流出したため失血死の一歩手前の状態であり,Eの頭部の損傷は頭蓋骨が
見えるほどのものであった。
3 検討
  以上の犯行に至る経緯及び動機,凶器の性状及び使用状況,犯行前の集合状況
及びGによる指示の状況,攻撃態様並びに被害者に生じさせた傷害の程度,とりわ
け,無抵抗のEの顔面や腹部に金属バットを用いて強度の攻撃を執ように加えてい
るところ,上記の犯行に至る経緯からすると,Eが最初の一撃で倒れることなく逃
げ出したという点を除けば,被告人らにEのみを特別敵視するような事情はなかっ
たこと,被告人,H,J,K及びLが,それぞれ捜査段階において,Gから攻撃を
指示された時点で未必の殺意を有していたと供述していることなどを併せ考慮する
と,Gによる刺突行為及びそれによる傷害結果を考慮の対象から除くとしても,被
告人らとしては,Gから攻撃を指示された時点において,殺傷能力十分な凶器で被
害者3名に容赦ない暴行を加え,その結果生じるかもしれない被害者の死亡結果を
も認容する旨,他の共犯者らとの間で意思を相通じていたとみるのが相当であり,
以後はこの共謀に基づき判示各犯行に及んだものと認められる。もっとも,本件は
計画的なものではないこと,その動機もN会の悪口を言われたことに対する制裁で
あって,確定的ないし意欲的な殺意を抱くに十分なものとまでは認められないこと
などに照らすと,上記のとおり,被告人らの殺意は未必的なものにとどまるとみる
のが相当である。
  なお,被告人の公判供述中には,殺意がなかったと述べている部分もあるけれ
ども,その趣旨は積極的な殺害の意図や意欲はなかったというにあり,未必の殺意
を認めている捜査段階の供述を実質的に否定したり,上記認定に反するものとは解
されない。
4 以上のとおり,被告人らの間においては未必的な殺意の限度で共謀が成立して
いたと認められるから,弁護人の主張は理由がない。
(法令の適用)
被告人の判示第1の1ないし3の各所為は,いずれも行為時においては平成16年
法律第156号による改正前の刑法60条,203条,199条に,裁判時におい
てはその改正後の刑法60条,203条,199条に該当するが,これは犯罪後の
法令によって刑の変更があったときにあたるから刑法6条,10条により軽い行為
時法の刑によることとし(有期懲役刑の長期は,行為時においては上記改正前の刑
法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によることになる
ので,上記同様に刑法6条,10条により軽い行為時法のそれによる。),判示第
2の1ないし3の各所為は,いずれも行為時においては平成17年法律第66号に
よる改正前の刑法60条,220条に,裁判時においてはその改正後の刑法60
条,220条に該当するが,これについても上記同様に刑法6条,10条により軽
い行為時法の刑によることとし,判示第1の1ないし3の各罪について各所定刑中
いずれも有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法4
7条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に上記改正前の刑法
14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年6月に処し,
同法21条を適用して未決勾留日数中280日をその刑に算入し,押収してある鉄
パイプ1本(平成16年押第102号の3)は,判示第1の3の殺人未遂の用に供
した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用し
てこれを没収し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人
に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 本件は,暴走族グループの構成員であった被告人が,他の構成員らと共謀の上,
被害者ら3名に対し,未必の殺意をもって金属バット等で頭部を殴打するなどの暴
行を加えたが,殺害するに至らなかった殺人未遂(判示第1の1ないし3)及び被
害者ら3名を自動車に押し込んで連れ出した監禁(判示第2の1ないし3)からな
る事案である。
 まず,殺人未遂について見ると,暴走族特有の論理から被害者らに制裁を加えよ
うとした犯行動機には酌量の余地がない。金属バット等を用いて多数回にわたり一
方的かつ執ように被害者の頭部等を殴打し,次いでGが無抵抗の被害者らの腕や顔
などを刃物で多数回突き刺すなどした犯行態様も,極めて危険で残忍である。ま
た,被害者らはそれぞれ重篤な傷害を負わされている上,一部の者については,現
在でも嗅覚障害や歩行障害などの後遺症が残っており,日常生活で様々な不便を強
いられているなど,肉体的苦痛のみならず精神的苦痛にも甚大なものがあって,被
害者らは厳重処罰を強く希望している。また,監禁の違法性も小さいものではない
上,暴走族グループが苛烈な一方的暴行に及んだ本件犯行が地域社会に与えた恐怖
感や不安感にも大きいものがあり,社会的影響にも軽視できないものがあったと考
えられる。さらに,被告人は,殺人未遂については鉄パイプで被害者を殴打するな
どし,監禁についてもEをトランクに詰め込んで自動車を発進させるなど,いずれ
についても見逃し難い役割を果たしている。
 以上の諸事情からすれば,被告人の刑事責任はかなり重いといわざるを得ない。
 しかしながら,他方では,本件が被害者らの挑発的言動によって誘発されたこと
も否定できないこと,本件各犯行につき主導的な役割を果たしたのはGである上,
その他の共犯者と比較しても,被告人の役割は従属的なものであったといえるこ
と,被告人は22歳と若年で,共犯者との関係を絶って遠方で居住することを誓約
するなど,自己の行為を真しに振り返る姿勢を示していること,罰金前科1犯を有
するにすぎないこと,実母が被告人に対する今後の監督を誓約していることなど,
被告人のために酌むべき事情も認められるので,これらの諸事情を総合考慮して,
主文のとおり刑を量定した。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成17年9月8日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官  的  場  純  男
   裁判官  西  野  吾  一
   裁判官  三重野  真  人

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛