弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役二年に処する。
     被告人に対し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     押収の登記申請書百七通(昭和二十七年領第六四号検1乃至107)に
貼用してある消印を除去した「収入印紙」及び「取引高税印紙」(朱丸を以て表
示)はいずれもこれを没収する。
         理    由
 本件控訴趣意は弁護人松居喜三郎並に被告人の差出した末尾添付の各控訴趣意書
記載のとおりである。
 弁護人控訴趣意第一点。原判決には法令の適用を誤つた違法があるとの主張につ
いて。
 <要旨>印紙犯罪処罰法は明治四十二年四月二十八日法律第三十九号として制定さ
れたもので、昭和二十三年七月七日法律第一〇八号(旧)取引高税法の発布
施行に伴い取引高税印紙の発行されるまでは、印紙犯罪処罰法の処罰の客体となつ
たものは収入印紙であつたことは所論のとおりであるが、印紙犯罪処罰法はその処
罰の客体を印紙と明記してその種類を区別せず、而して昭和二十三年七月十二日法
律第百四十二号「印紙を以てする歳入金納付に関する法律附則2、」昭和二十四年
四月三十日政令第八十三号「酒税法施行規則等の一部を改正する政令第四条取引高
税法施行規則の一部改正の附則7によると、取引高税印紙は収入印紙に代えて、織
物消費税及び有価証券移転税を除くその他の租税、及びそのほかの国の歳入金を納
付するために現に発行されているもので、国の歳入の為めに用いられる機能におい
て収入印紙とその機を一にし、従つてその機能の保護さるべき価値を有する点にお
いても収入印紙と同様であるから、これが取締についても、また、収入印紙との間
に差等を設くべ砦理論上の根拠はない。されば印紙犯罪処罰法に所謂印紙はその制
定当時現実にその規定の客体となつた収入印紙を指すに止まらず、国、社会の要請
により発行されるこれと同価値を有する印紙をも意味し、本件取引高税印紙をも包
含するものと解釈するを妥当とする。
 よつて原判決が本件被告人が消印を除去した取引高税印紙を販売交付した行為に
つき印紙犯罪処罰法第二条第一項を適用処断したことは正当であつて、所論のよう
な違法はないから論旨は理由がない。
 同控訴趣意第二点。原判決には審判を受けた事件につき判決せず審判の請求を受
けない事件について判決した違法があるとの主張について。
 記録によると、(一)昭和二十七年十月十四日附追起訴状には、被告人が司法書
士Aに本件取引高税印紙を販売交付した日時中、起訴状別紙記載第一の一乃至七に
おける年月日の「月」は「十一月」となつており、原判決が認めた右応当事実原判
決別表第一〇三乃至九記載の年月日の月は「十月」となつていること、(二)また
右追起訴状中司法書士Bに販売交付した事実中起訴状別紙記載第二の十一の事実の
年月日の「月」が「十二月」で、その印紙が「万円券一枚とあるのに、原判決の認
定した事実の記載、判決別表第二の五〇では「月」が「十一月」で印紙が「一千円
券一枚」と記載されてあること、(三)、右追起訴状記載別紙第三の司法警士Cに
販売交付した分〇四の事実の年月日の日が「二十六日」と記載あるのに原判決の認
定した事実の記載原判決別表第三の四において「十六日」と記載されていることは
弁護人指摘のとおりである。
 原判決の右認定事実につきその挙示した証拠を取調べると、右(一)の事実につ
いては原判決記載の「十月」は起訴状記載のとおり「十一月」であることの誤謬で
あり、右(二)の事実については原判決記載の「十一月」は起訴状記載の如く十二
月であることの誤謬であり、その「一千円券一枚」の記載は起訴状記載のとおり
「一万円券一枚」の誤謬であることが肯認されると共に、しかもこれによつて原判
決の認めた事実が起訴事実と異なる事実であるとはその挙示の証拠(特に押収の登
記申請書)に照らして認めることができない。
 尤も取引高税印紙一万円券一枚の不法の販売交付を一千円券一枚のもののそれと
記載してあることを以て原判決が事実を誤認したものとして取上げるとしても、そ
の誤謬は本件のような六十六方三千四百円の巨額に達する印紙と不法に販売交付し
た事実に対する判決に影響を及ぼすものでもない。右(三)の事実については原判
決挙示の証拠によると、原判示犯罪事実の行われた日が原判決記載のとおり昭和二
十七年二月十六日頃であることが肯認できる。而して右は起訴状に記載された同年
同月二十六日頃に行われた事実と同一性を失うものでないことはその挙示の証拠に
よつて明かである。
 よつて原判決には所論のような違法あるものとは言われないから論旨は採用がで
きない。
 同控訴趣意第三点及び被告人の控訴趣意、量刑不当の主張について。
 所論に鑑み記録並に原判決の挙示した証拠を精査して原判決の認定した犯罪事実
に関する諸般の情状を考量すると、原判決の被告人に科した懲役二年の実刑は重き
に過ぎるものと認められるから、この点において論旨は理由がある。よつて刑事訴
訟法第三百九十七条同法第四百条但し書に則り原判決を破棄し当裁判所において自
判する。
 原判決の証拠によつて認定した事実はいずれも印紙犯罪処罰法第二条第一項に該
当し、刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十第に従い犯情最
も重い別表「四七」の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で被告人を懲役二年
に処し、情状により刑法第二十五条を適用して本裁判柘定の日から三年間右刑の執
行を猶予することとし、押収の登記申請書(昭和二十七年領第六四号検一の1乃至
107)に貼用してある消印を除却した「収入印紙」及び「取引高税印紙」(朱丸
をもつて表示)は本件犯罪行為の組成物件で、何人にもその所有を許さないもので
あのから刑法第十九条第一項第一号、第二項によりこれを没収することとして主文
のとおり判決する。
 (裁判長判事 原和雄 判事 小坂長四郎 判事 臼居直道)

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