弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人松永芳市同柳原武男の上告理由第一点について。憲法三七条一項の「
公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつ裁判所
による裁判を意味することは、当裁判所大法廷判決の判示したところである(昭和
二二年(れ)四八号同二三年五月二六日大法廷判決)。されば、所論の場合が違憲
でないことは、右大法廷の判決に徴し明らかであると共に、所論上申書を記録に編
綴したことが妥当を欠いたとしても、これがために直ちに原判決を違法ならしめる
ものでないから、論旨は採用できない。
 同第二点について。
 論旨は、本件売買につき上告人の養母Dに上告人を代理する権限があつたものと
した原審の認定が条理に反し違法であると主張して当裁判所の判例を援用するので
あるが、原判決挙示の証拠によれば右事実を認め得るのであつて、その認定には所
論のような違法はない。そして論旨援用の判例も原審の認定したような特別事情の
認められる本件とは異つた事案に関するものであるから適切でない。なお、論旨中
には違憲の語があるけれどもその主張の実質は結局原審が適法にした事実の認定を
非難するに帰着し上告適法の理由に当らない。
 同第六点について。
 論旨は、原審は被上告人の主張並びに立証のないのに拘らず、民法九五条但書に
規定する表意者に重大な過失のあつた事実を認定したが、右は主張責任及び立証責
任の法則に違背し引用の大審院判例に反すると主張する。しかし、原判決は上告人
の要素の錯誤による本件売買無效の主張に対し「DがEに売却済の事実を知らない
ということは容易に考えられない」と判示し、その表現は消極的ではあるが、Eに
売却済の事実はDにおいて知つていたものと認定した趣旨に外ならないと認められ
るので、原審は帰するところ所論錯誤の事実なしと認定したものである。それ故、
原判決の所論判示は錯誤あつたとの仮定的前提の下におけるいわば不必要の説明で
あるから、この点に関する違法は原判決の主文に影響がないので、論旨は採用でき
ない。
 その他の論旨は、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」
(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法
にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。よつて、
民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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