弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 原告
(主位的請求の趣旨)
(1) 被告が原告に対して平成16年7月27日付けでなした被告町長の公務日程に
関する公文書不存在の決定が無効であることを確認する。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(予備的請求の趣旨)
(1) 被告が原告に対して平成16年7月27日付けでなした被告町長の公務日程に
関する公文書不存在の決定を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
(本案前の答弁)
(1) 本件訴えを却下する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
(請求の趣旨に対する答弁)
 主文同旨
第2 当事者の主張
1 原告の請求原因
(1) 原告は,平成16年7月12日,当時の被告町長Aに対し,B町情報公開条例
(以下「本件条例」という。)5条に基づき,被告の同月1日から同月12日の公務
日程に関する文書(以下「本件文書」という。)の情報公開を請求した(以下「本
件情報公開請求」という。)。
(2) 被告は,平成16年7月27日,本件情報公開請求につき,公文書不存在決定
(以下「本件決定」という。)をした。
(3) 本件決定は,以下のとおり,無効又は違法というべきである。
ア 被告の義務
 被告は,本件条例1条が規定する次の努力義務を負担している。
(ア) 町民の知る権利を尊重する。
(イ)町の保有する情報の一層の公開を図る。
(ウ)町の諸活動を説明する責任を有する。
(エ)民主的な分かりやすい町づくり推進に努める。
イ 本件文書は,地方公共団体の首長で,上記義務を負う町長が公務を支障な
く進めるために,当然作成され,保管されているはずのものである。本件文書
を公文書として保有することは,記録の確保ばかりでなく,公務を支障なく進
める上で必要不可欠な団体事務である。したがって,被告が,本件文書を公
文書として保有することを怠ることは違法である。
ウ 被告は,過去において別表のとおり,同種の文書を公開したり,公開しなか
ったりしており,その取扱いは恣意的である。とりわけ,原告が平成15年8月
1日に行った同年7月1日から同月31日の期間における町長の日程表の情
報公開請求に対しては,B町の役場内のLANにおいて使用されているソフト
ウェア「サイボーズ」による同期間の予定表(乙8。以下,同ソフトウェアによる
予定表を「サイボーズによる予定表」という。)を公文書として開示したのであ
るから,本件情報公開請求に対しては,公文書不存在を理由に非開示とする
合理的理由はない。
エ そもそも本件条例がその対象となる「公文書」を「決裁又は供覧等の手続が
終了し」たものに限定していることは不当であり,同文言は削除すべきである
のに,これを理由に公開を拒むことは違法である。
(4) 被告町長は,平成17年4月21日にAが辞任し,同年5月23日にCが選任さ
れた。
(5) 本件情報公開請求の対象は,被告の平成16年7月1日から同月12日までの
期間のサイボーズによる予定表(乙10)だけではないから,原告には,訴えの利
益がある。
(6) よって,原告は,被告に対し,主位的に行政事件訴訟法3条4項,36条に基づ
き,本件決定の無効確認を,予備的に同法3条2項に基づき,本件決定の取消
しを求める。
2 被告の本案前の答弁の理由
(1) 本件条例2条2号によれば,文書のうち,公開の対象となる公文書とは,「実施
機関の職員が職務遂行上作成し,又は取得した文書であって,決裁又は供覧等
の手続が終了し,実施機関が現に保管又は保存しているものをいう。」とされて
いる。
 原告は,本件情報公開請求の対象として,担当職員の作成する手帳も当然含
むが,それ以外にも町長の公務日程に関する文書ならば,手書,メモを問わず,
たとえばカレンダー上に書かれたものなども含めて公開請求していると主張して
いる。しかしながら,被告の公務日程につき記載を行う文書は,後記のとおり総
務課担当職員の手帳以外には存在しないのであり,原告が本件情報公開請求
において公開を求める公文書は,被告において元々作成しておらず,存在しな
いから,判決により本件決定の無効又は取消しが宣言されても,開示すべき対
象がない。したがって,原告には,本件訴訟により回復すべき法的利益が存在
せず,訴えの利益がないので,本件訴えは不適法である。
(2) 仮に原告が本件情報公開請求の対象として平成16年7月1日から同月12日
までのサイボーズによる予定表を含ませていたと主張するのであれば,上記期
間のサイボーズによる予定表は,本件訴訟で書証(乙10)として提出され,原告
は既にその写しの交付を受けているから,原告には,この点について無効又は
取消しを求める訴えの利益がない。
3 請求原因に対する認否及び被告の主張
(1)請求原因(1),(2),(4)の各事実は認める。
(2) 請求原因(3)のうち,同ア(ア)ないし(エ)が本件条例1条の目的として記載されて
いる事実は認め,その余は否認ないし争う。
ア B町における町長の日程調整事務は,①まず,各課の職員等からB町総務
課の担当職員及び町長に対して口頭及び書面でスケジュールの打診があり,
②総務課の担当職員が所有する手帳(以下「本件手帳」という。)を確認する
ことにより既に町長の予定が入っていないか確認し,③既に予定が入ってい
る場合やスケジュールの打診が重複する場合,被告町長の判断等により打
診のあったスケジュールの可否について,問い合わせのあった課等に回答
し,担当職員が本件手帳に記入することによって十分円滑に遂行されており,
これ以外に町長の公務日程を記入した文書は作成されていない。
 そして,本件手帳は,当日生じた変更等は通常書き込まれないし,担当職員
が被告の日程調整事務を円滑に処理するための備忘メモにすぎないのであ
るから,「職務上作成し,又は取得した」ものではないし,「決裁又は供覧等の
手続」(本件条例2条2号)もなされず,本件手帳の備付けや保存について,
条例,規則又は要綱等による定めは一切存在しないのであるから,「実施機
関が現に保管又は保存している」ものでもない。したがって,本件手帳が,本
件条例により公開の対象となる「公文書」に該当しないことは明らかである。
イ 原告は,過去の決定が本件決定と異なることをもって,恣意的であると主張
するが,公文書公開請求は,請求対象文書等が異なることにより判断が異な
るのは当然であるから,原告の主張は失当である。
B町の職員はB町の役場内の各パソコンで職員別のサイボーズの予定表
に予定を任意に自ら書き込んでいるものであるが,被告町長のサイボーズに
よる予定表も存在する(乙8,10)。しかし,町長の予定表に記載された予定
は,他の職員が代理出席したり,町内行事が単に書き込んであるなど,必ず
しも町長の予定であるとは言えないことから,これは本来「被告町長の公務日
程に関する文書」には当たらないのであって,平成15年8月1日付けの原告
の情報公開請求に対し,被告がサイボーズによる予定表の印刷物(乙8)を公
開したのは,申立人である原告の意思を広くくみ取れば,この予定表を公開し
ても差し支えないと判断して,平成15年8月29日付で同期間の印刷物を原
告に公開することとしたにすぎない。ところが,これに対し,原告は,同年8月
29日に被告に対し不服申立を行い,同年11月11日の平成15年第5回B町
情報公開審査会において,原告の要求している文書はサイボーズによる予定
表の印刷物のような簡単なものではなく,もっと詳しいものであり,それがB町
にあるはずだと主張した。
 以上の経緯を踏まえ,被告は,本件情報公開請求についても,原告が公開
請求した本件文書は,平成16年7月1日から同月12日の期間のサイボーズ
の予定表の印刷物(乙10)ではなく,本件手帳であると判断して本件決定を
行ったものである。
ウ 以上からすれば,本件条例2条2号にいう「公文書」としての本件文書が存
在しないことは明らかであり,公文書不存在を理由とする本件決定には何ら
の違法性もない。
エ 原告は主位的に本件決定の無効確認を請求するが,行政処分の無効確認
が認められるためには,当該処分に重大かつ明白な違法性が存することが
必要であるところ,前記のとおり本件情報公開請求においては,対象となる公
文書そのものが不存在であり,また,本件決定が適法になされたことは明ら
かであるから,重大かつ明白な違法性は存しない。
第3 当裁判所の判断
1 請求原因(1),(2),(4)の各事実,同(3)のうち,同ア(ア)ないし(エ)が本件条例1条の
目的として記載されている事実は当事者間に争いがない。
2 被告の本案前の答弁について
(1) 被告は,本件情報公開請求の対象である本件文書は,被告において元々作
成されておらず存在しないものであって,判決により本件決定の無効又は取消し
が宣言されても開示すべき対象がないから,原告には訴えの利益がないと主張
する。
 そこで検討するに,甲6によると,B町情報公開条例は,次のとおり,規定して
いる。
(定義)
2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号
に定めるところによる。
(2) 公文書 実施機関の職員が職務遂行上作成し,又は取得した文書,図
画,写真及び電磁的記録(電子式方式,磁気的方式その他人の知覚によ
って認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であっ
て,決裁又は供覧等の手続が終了し,実施機関が現に保管又は保存して
いるものをいう。
(公文書の公開を請求できる者)
5条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関
の保有する公文書の公開を請求することができる。
(2) 本件条例の上記規定によると,情報公開請求の対象たる文書が,文書として
は存在しているが,本件条例に基づく公開の対象となる「公文書」に当たらない
ことを理由に文書不存在による非開示決定がなされている場合は,当該文書が
「公文書」にあたるとして文書不存在決定が無効又は取消されることにより,開
示すべき対象となる文書が存在することになるから,訴えの利益は肯定できると
いうべきである。
 そして,甲1ないし5,乙12及び弁論の全趣旨によると,後記3(2)アのとおり,
原告は,本件情報公開請求において,被告町長の平成16年7月1日から同月1
2日の公務日程に関する文書(本件文書)として,サイボーズによる予定表では
なく,B町総務課の担当職員の所有する本件手帳の開示を請求するものであ
る。また,本件手帳に同期間の被告町長の公務日程に関する記載がなされてい
ることは被告も自認するところである。したがって,本件情報公開請求の対象た
る本件文書は,本件手帳という文書としては存在すると認められるから,原告に
訴えの利益が肯定される。これに反する被告の主張は採用できない。
(3) さらに被告は,原告が本件文書にサイボーズによる予定表が含まれていたと
主張する場合,原告は被告から当該文書の交付を受けているため,当該文書に
関して無効又は取消しを求める訴えの利益はない旨主張する。しかし,訴えの
利益は本件文書の開示を求める利益があるかという観点から判断されるとこ
ろ,本件情報公開請求の対象たる文書が,サイボーズによる予定表のみである
というのであればともかく,上記のとおり本件手帳が存在し同手帳は原告に開示
されていない以上,本件決定の無効又は取消しを求める原告の訴えの利益が
否定されることはないから,被告の上記主張も採用できない。 したがって,本案
前の答弁についての被告の主張はいずれも理由がない。
3 本件決定の適法性について
(1) 当事者間に争いがない事実と甲1ないし5,乙3,7ないし10,12,証人Dの証
言及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。
ア B町における町長の日程調整は,総務課に所属する職員が担当している。D
は,平成14年4月に総務課係長に就任して秘書業務を兼務しているが,同人
は,昭和62年5月から,被告町長の秘書業務等を担当してきた。以前町長の
予定は町長室の黒板を使うことで把握されていたが,不便や不都合があった
ことから,担当職員であるDにおいて手帳を使用することとした。
 その後,B町役場内にLANが設置されてからは,担当職員は,その所持す
る手帳と役場内のLAN上のサイボーズによる予定表で町長の日程を把握す
るようになり,各課の職員等から口頭ないし書面で町長の日程についての打
診を受けると,本件手帳やサイボーズによる予定表で既に町長の予定が入っ
ていないかを確認した上で,町長の判断を仰ぎ,予定が決まった場合には本
件手帳に記入している。サイボーズによる予定表には,町長自身のほか,町
長から依頼を受けた総務課担当職員や会議を担当する各課の職員が書き込
んでいる。
イ 総務課担当職員が関与することなく,町長自らが日程の打診を受けて予定
を入れることもあり,そうした場合には本件手帳に同予定は記入されないし,
急に決まった予定については本件手帳に記入されないこともある。また,担当
職員は,本件手帳の枠外に自身の個人的な予定を記載することもある。
ウ 本件手帳は,B町文書事務取扱規程によって決裁又は供覧等の手続が予
定されておらず,実際にも決裁又は供覧等の手続はとられていない。また,サ
イボーズによる予定表についても決裁又は供覧等の手続はとられていない
(乙7)。
エ 原告は,平成15年7月9日,被告に対し,同月8日から同月10日の期間に
おける被告町長Aの日程表の情報公開請求を行った。同請求に対し,被告
は,同年7月9日に情報公開請求の対象文書として,上記期間に被告が出張
して参加した度会郡町村会の北海道方面の旅行会社作成に係る「ご旅行日
程表」の公開決定をし,原告はその写しを入手した(甲5)。
オ さらに,原告は,平成15年8月1日,被告に対し,同年7月1日から同月31
日の期間における被告の日程表の情報公開請求をした。同請求に対し,被告
は,上記期間の被告の日程表は作成していないため不存在との理由で,同
年8月13日に本件条例7条の4に基づくものとして,公文書不存在決定をし
た。その後,被告は,同月29日になって情報公開請求の対象文書が確認さ
れたとして上記期間における被告の日程表としてサイボーズによる予定表に
ついて公文書公開決定を行い,同日,本件条例7条3項に基づき,その旨を
原告に通知した(甲2,3,乙8)。
 上記サイボーズによる予定表によると,被告が,日々公務で出席する会議
等の記載のほかに,被告は,同年7月3日に県民局に,8日から10日に度会
郡町村会行政視察として,14日から16日に議員行政視察研修随行として,
28,29日に過疎対策で,それぞれ出張する旨の記載がなされている。
 これに対し原告は,同年8月29日に,同月13日付けの公文書不存在決定
の取消しを求める異議申立てを行い,その理由として,公務遂行の時間調整
の必要から首長の日程表作成は町長秘書の必須業務であり,関係職員もサ
イボーズによる予定表ではない日程表の存在を認めていると主張した。そし
て,原告は,同年11月11日の平成15年第5回B町情報公開審査会で,原
告が情報公開請求している文書はサイボーズによる予定表の印刷物のような
簡単なものでなく,より詳細な町長の予定表で,B町にある筈であると主張し
た(乙9,12)。
カ 被告は,原告が平成16年7月12日に行った本件情報公開請求について,
上記オの経緯をふまえ,その対象たる本件文書はサイボーズによる予定表は
含まれずに,本件手帳をいうものであると判断して,同月27日に本件条例7
条の4に基づくものとして,本件手帳が「公文書」に当たらないとして公文書不
存在を理由とする本件決定を行った。
キ 被告は,本件訴訟係属後,仮に原告が本件情報公開請求の対象として平成
16年7月1日から同月12日までのサイボーズによる予定表を含ませていた
と主張する場合に備えて,平成17年2月17日の本件第3回口頭弁論期日
に,上記期間中の被告のサイボーズによる予定表を,書証(乙10)として提出
した。
(2) 本件公開請求の対象文書の存否
ア 乙10によると,被告の平成16年7月1日から同月12日までの期間のサイ
ボーズによる予定表には,被告の公務の予定として,被告は,同月1日は9時
から定例課長会議ほかの,2日は10時から県水産基盤設備協会総会ほか
の,5日は9時から広域連合会議ほかの,7日は14時から合併協議会ほか
の,8日及び9日は議員研修随行の,12日は13時30分から教民常任委員
会ほかの記載がなされている。
 この事実と上記3(1)で認定した事実によると,被告の公務日程に関する文
書として,サイボーズによる予定表(乙10)と本件手帳があると認められる
が,それら以外に,町長の公務日程に関する文書が存在すると認めるに足り
る的確な証拠はない。そして,上記のとおり,原告の平成15年8月1日付け
情報公開請求に対する被告の決定に関し,原告は異議申立てをしてサイボー
ズによる予定表は公開請求の対象ではない旨強く主張していたこと,上記請
求と本件情報公開請求における対象文書がともに当時の被告町長Aの日程
に関する文書であることなどに鑑みると,原告は,本件訴訟においても,本件
文書にサイボーズによる予定表が含まれずに,本件手帳が公文書に当たると
主張してその公開を請求しているものと解される。そして,被告において,原
告の意図をそのように理解したことが不合理とはいえない。
イ そこで,本件手帳が本件条例により公開が請求できる「公文書」に当たるか
否かについて検討する。
本件条例では,公開が請求できる公文書とは「実施機関の職員が職務遂
行上作成し,又は取得した文書,図画,写真及び電磁的記録」であって,「決
裁又は供覧等の手続が終了し,実施機関が現に保管又は保存しているもの」
とされるところ(本件条例2条2号),本件手帳は,B町文書事務取扱規程によ
って決裁又は供覧等の手続が予定されいる文書に該当せず(同規程6条),
実際にも決裁又は供覧等の手続きはとられていないことによれば,「公文書」
には該当しない。そして,本件手帳は,上記認定のとおり,担当職員が知り得
た範囲の町長の予定を急遽決定されたものを除いて記載しているもので,必
ずしも正確性は担保されていないこと,その枠外には担当職員の個人的な予
定が記載されることもあること,担当職員が従前の取扱いの不便さを改善す
るために私的に使用し始めたものであることからすれば,町長の日程調整の
ために備忘録として便宜上用いられているものというべきであり,本件手帳
に,「決裁又は供覧等の手続」が採られていないことは不合理ではない。
(3)ア 原告は,情報公開請求に対する被告の取扱いが恣意的であると主張する。
確かに,平成15年8月1日付け情報公開請求と本件情報公開請求では,原
告が対象文書にサイボーズによる予定表を含ませているか否かについて,被
告の対応は異なっているが,被告のこの対応の相違は,上記3(1)における原
告の異議申立てにおける主張内容によれば不合理とはいえないから,被告の
取扱いが恣意的なものということはできない。
イ 原告は,町長の公務日程に関する文書を「公文書」として保管しないのは違
法であり,これを理由に公開を拒むことは違法である旨主張する。
そこで検討すると,町長の公務日程に関する文書は性質上決裁又は供覧
等の手続が不可欠というものではないし,被告は,上記のとおり,原告の平成
15年8月1日付け公開請求に対して,同月29日に同年7月1日から同月31
日までの期間における被告のサイボーズによる予定表の公開決定を行って
おり,本件情報公開請求に対しても,平成16年7月1日から同月12日までの
期間における被告のサイボーズによる予定表を,被告が情報公開請求された
対象文書の可能性があるとして,本件訴訟において証拠として提出している。
そして,上記各サイボーズによる予定表には,町長である被告の公務上の行
動が具体的かつ詳細に記載されており,公開にあたりB町担当者の決裁を得
ていてその正確性も担保されていると認められることや,本件条例は,その1
条で目的として,原告の請求原因(3)ア(ア)ないし(エ)のとおり,公正で民主的な
分かりやすい町づくりの推進に資するため町の保有する情報の一層の公開を
図るように規定していることからすれば,町長の公務日程に関する文書として
は,サイボーズによる予定表の公開が予定されているものと解するのが相当
である。サイボーズによる予定表が作成され存在している以上,被告が町長
の公務日程に関する文書を「公文書」として保管しないことが違法であるとい
うことはできない。
ウ また,原告は,本件条例がその対象となる「公文書」を「決裁又は供覧等の
手続が終了し」たものに限定しているのは不当であり,これを理由に公開を拒
むことは違法である旨主張する。
確かに,情報公開の対象となる「公文書」について決裁又は供覧等の手続
が終了した文書に限定する必然性があるとは特に認められないが,情報公開
請求権は条例によって認められる権利であるところ,本件条例が情報公開の
対象となる「公文書」を「決裁又は供覧等の手続が終了し」たものと規定してい
ることが,著しく不合理とまでいうことはできない。
 したがって,同規定に基づいてなされた本件決定が違法になるとは認められ
ない。
エ よって,原告の主張はいずれも採用できない。なお,甲1によると,被告は,
本件情報公開請求に対し本件条例7条の4に基づき公文書不存在決定であ
る本件決定をした旨記載しているが,甲6によると,その趣旨は,本件条例7
条4項に基づく決定であると解せられ,弁論の全趣旨によると,そのことを原
告も了解していると認められるから,本件決定に至る上記根拠条文の誤記
は,本件決定の効力に影響を与えるものとは認められない。
(4) したがって,本件文書が「公文書」として存在しないことを理由としてこれを開示
しないこととした本件決定が違法であるということはできず,他に,本件決定を無
効としあるいは取り消すべき事由を認めることはできない。 
4 結論
以上によれば,原告の本件請求はいずれも理由がないから,これを棄却するこ
ととし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用
して,主文のとおり判決する。
津地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官    水谷正俊
裁判官    本 山 賢太郎
裁判官    薄 井 真由子

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