弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における未決勾留日数中六〇日を原判決の刑に算入する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人内田武文提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、
これを引用し、これに対し次のとおり判断する。第一点(法令適用の誤)について
 証拠によれば、Aが盗難被害を受けた現金が一、〇〇〇円札三枚、一〇〇円貨二
個及び一〇円貨六個の計三、二六〇円であるのに対し、被告人が犯行後間もなく逮
捕された際に所持していた現金は、一、〇〇〇円札三枚、一〇〇円貨七個、五〇円
貨一個、一〇円貨六個及び一円貨四個の計三、八一四円であるから、逮捕時の被告
人の所持金のうち、一、〇〇〇円札三枚及び一〇円貨六個は、その全部が賍物であ
るといらことができるが、一〇〇円貨だけは、七個のうちのいずれの二個が賍物で
あるかは不明であり、原判決としてもこれを<要旨>特定していないことは所論のと
おりであるが、Aが一〇〇円貨七個のうちの二個の還付を受けるべき関係に
あることは、明白であり、一方、通貨は高度の代替性を有するものであつて、被告
人としては、七個のうちのいずれの二個がAに還付されることになつても、その利
益を害されるわけではなく、刑事訴訟法第三四七条第一項の解釈としても、還付さ
るべきものが通貨である場合、同種の通貨のうちのいずれを還付するかを特定する
ことは必ずしもその必要がないというべきであるから、原判決が、被害者還付の言
渡をするについて、これを特定することがなかつたとしても、これをもって右法条
の解釈、適用を誤つたものということはできない。論旨は理由がない。
 (その余の判決理由は省略する)
 (裁判長判事 江里口清雄 判事 上野敏 判事 横地正義)

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