弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主      文
    1 本件控訴を棄却する。
    2 控訴費用は控訴人の負担とする。
            事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
 1 控訴の趣旨
 (1) 原判決を取り消す。
 (2) 大分医科大学長が,平成13年12月12日付けでした部分開示決定(動物実験の廃
止を求める会が同年11月9日付けでした行政文書開示請求に対するもの。ただし,平成1
5年9月30日付けで大分医科大学長によって追加開示された文書に関する部分を除く。)の
うち次の部分を取り消す。
ア 「動物実験計画書」のうち,
 ① 「申請者氏名」及び「連絡先」の不開示部分
 ② 「実験題目」の不開示部分
 ③ 「実験内容」の不開示部分
イ 「ニホンザル戸籍簿」のうち,
 ① 不開示部分である「識別用各個別写真」
    ② 不開示部分である「処分者名」「飼育開始届申請者名」及び「実験利用記録」欄
の「利用者名」
 ③ 「実験利用記録」欄の「処置記録」の不開示部分
   ウ 「物品請求及び命令書・管理簿(乙)」及び「物品購入等請求書」のうち,下記不開
示部分
 ① 「品名」「規格品質」及び「納入者」又は「相手方」
 ② 「使用場所」における研究者名
 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 2 控訴の趣旨に対する答弁
   主文同旨
第2 事案の概要
   事案の概要は,次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第二 
事案の概要」記載のとおりであるから,これを引用する。
 1 原判決3頁7行目「原告」を「動物実験の廃止を求める会」に改める。
 2 同頁10行目「被告(当時は大分医科大学長)」を「大分医科大学長」に改める。
 3 同頁13行目「原告が」を「「動物実験の廃止を求める会」の権利義務を承継した控訴人
が」に改める。
 4 同5頁22行目「本件開示請求当時は、権利能力なき社団であった」を「本件開示請求
をした『動物実験の廃止を求める会』の権利義務を承継した法人である」に改める。
 5 同7頁13行目「不開示部分のみ」を「一部(研究者が研究のプライオリティに当たるとし
て不開示を希望したとする部分)」に改める。
 6 同8頁16行目及び17行目「原告」をいずれも「動物実験の廃止を求める会」に改める。
 7 同頁18行目「甲3」を「甲3,114」に改める。
 8 同10頁22行目「本件答申で開示すべきとされた部分」を「情報公開審査会への諮問
に際し開示するとした部分(上記(四))のほか,上記答申で開示すべきものとされた部分」に
改める。
 9 同11頁8行目,10行目及び18行目「重要な部分」の次にそれぞれ「として研究者が不
開示を希望した部分」を加える。
 10 同13頁10行目「本件開示請求当時」を「本件部分開示決定当時」に改める。
 11 同15頁17行目「実験者が、」を「大分医科大学所属の実験者が,動物実験に当たり,
同大学」に改める。
 12 同16頁8行目「本件開示請求当時」を「本件部分開示決定当時」に改める。
13 同17頁13行目「本件開示請求当時」を「本件部分開示決定当時」に改める。
 14 同30頁14行目「本件開示請求当時」を「本件部分開示決定当時」に改める。
 15 同42頁2行目「情報の情報の公開」を「情報の公開」に改める。
 16 同49頁5行目「原告が」の次に「権利能力なき社団当時から」を加える。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所の判断は,次のとおり付加・補正するほかは,原判決「事実及び理
  由」の「第三 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。
 1 原判決50頁3行目「乙19」を「乙18」に改める。
 2 同51頁21行目冒頭から同52頁16行目末尾を次のとおり改める。
  「ア まず,「動物実験計画書」中の「申請者氏名」欄及び「連絡先」欄に記載された情報
が情報公開法5条1号ただし書イに該当するか否かについて検討する。」
 3 同53頁8行目冒頭から同61頁19行目末尾を次のとおり改める。
  「   (イ) まず,「動物実験計画書」が,控訴人が主張するように,求められれば何人に
も提供することを予定している文書であるならば,ここに含まれている情報は,情報公開法5
条1号ただし書イに該当することになるので,この点について検討するに,証拠(乙16、18)
及び弁論の全趣旨によると,「動物実験計画書」について規定した大分医科大学動物実験
指針にも,同指針の基礎となった動物愛護法及び実験動物飼養基準にも,「動物実験計画
書」やこれに類する動物実験に関する書類を一般に公開すべき旨定めた規定は存在しな
いことが認められる。
        そして,他に「動物実験計画書」に含まれる情報を公開すべきとする法令の定
めや事実上の慣習が存在すると認めることはできない。
      (ウ) 次に,控訴人が主張するように,大分大学医学部のホームページにおいて
開示されている情報については,現に公衆が知り得る状態に置かれている情報であるという
ことができるところ,証拠(甲113)によると,現在、大分大学医学部のホームページにおい
て,解剖学講座第一及び眼科学講座の紹介のページに両講座の助手及び大学院生の氏
名が掲載されていることが認められる。しかしながら,同証拠によれば,ホームページでは,
解剖学講座第一のメンバーとして教授以外に6名,眼科学講座のメンバーとして教授以外
に20名以上の氏名が掲載されているところ,いずれの者がある特定の「動物実験計画書」
を申請したのかについて判明する情報は掲載されていないことが認められ,そうすると,ホ
ームページに氏名が掲載されているからといって,当該「動物実験計画書」に記載されてい
る氏名が現に公衆に知り得る情報に当たるとは言えないことは明らかである。さらに,このよ
うなホームページを作成して,講座の紹介等をするようになったのは比較的最近であると考
えられるところ,本件部分開示決定がされた平成13年12月当時において,大分大学医学
部のホームページに助手や大学院生の氏名が掲載されていたか否かは明らかでなく,将
来的に掲載されることが予定されるかどうかも不明である。
        そして,他に,各「動物実験計画書」記載の各申請者欄の氏名が,現に公衆
が知り得る状態に置かれている,あるいは将来的に公にする予定の下に保有されていると
認めるに足りる証拠はない。
      (エ) 以上のように,「動物実験計画書」中の「申請者氏名」欄及び「連絡先」欄に
記載された情報(ただし,講師以上の者を除く。)は,情報公開法5条1号ただし書イに該当
しないと認められ,他に同判断を左右するに足りる証拠はない。
    (オ) なお,控訴人は,被控訴人によって行われてきた動物実験の適法性を判断
する上で,「動物実験計画書」中の「申請者氏名」欄及び「連絡先」欄に記載された情報の
開示は必要不可欠であるから,これらの情報は開示されるべきである旨主張する。しかしな
がら,行政文書が開示されるべきか否かは,当該行政文書に含まれる情報が情報公開法5
条に規定されている不開示情報に該当するか否かによって判断されるべきであって,必要
性が高いからといって開示されるべき情報となるものではないことはいうまでもない。
    イ 次に,「申請者氏名」及び「連絡先」欄に記載された情報が情報公開法5条1号
ただし書ハに該当するか否かについてであるが,同条1号ただし書きハの規定は当該個人
が公務員である場合において,「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当
該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務の遂行の内容に係る部分」は不開示情報に
当たらないとするものであるところ,本件における「動物実験計画書」中の「申請者氏名」及
び「連絡先」に記載された情報が「当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」
に該当しないことは,その文言に照らして明らかであるから,情報公開法5条1号ただし書ハ
に該当するということはできない。ちなみに,そもそも同条1号ただし書ハの規定は,一般
に,公務員の職務活動の過程又は結果が記載されている場合には,政府の諸活動を説明
する責務が全うされるようにするという観点からはこれを公開する意義が大きいが,他方で,
公務員についても個人としての権利利益は十分に保護されるべきであることから,この両者
の要請の調和を図るために,所定の要件の下で「当該公務員の職及び当該職務遂行の内
容に係る部分」を開示することにしたものと解される。
   (二) 以上のとおり,本件各行政文書のうちの「動物実験計画書」中の「申請者氏名」及
び「連絡先」欄に記載された情報(ただし,講師以上の者を除く。)は,情報公開法5条1号の
不開示情報に該当すると認めることができるから,5条の他の号の要件該当性について判
断するまでもなく,本件部分開示決定のうち,上記情報を不開示とした部分は,適法という
べきである。」
4 同61頁20行目から21行目「研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な
部分」を「不開示部分」と改める。
5 同62頁16行目の末尾の次に「そして,この「おそれ」の程度は,単なる確率的な可能
性ではなく,法的保護に値する蓋然性が必要であると解すべきである。」
6 同頁17行目「甲4、」の次に「甲115」を加える。
 7 同頁19行目から20行目「研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部
分であるとして」を削る。
8 同63頁9行目「おそれ」を「蓋然性」に改める。
 9 同頁12行目から13行目「研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部
分に含まれる」を「本件部分開示決定によって不開示とされた」に改める。
 10 同66頁8行目「動物実験委員会」を「大分医科大学動物実験委員会」と改める。
11 同頁17行目「って、」の次に「このような情報は,」を加え,同行から18行目の「ことがあ
るもの」を削る。
 12 同69頁8行目「本件開示請求当時」を「本件部分開示決定当時」に改める。
13 同頁16行目「おそれ」を「蓋然性」に改める。
 14 同73頁10行目から13行目までを削る。
 15 同頁14行目「(三)」を「(二)」に改める。
 16 同頁17行目「認めることができるから、」の次に「上記情報につき同条6号柱書・同号
ハの該当性について判断するまでもなく,」を加える。
 17 同頁19行目から20行目「研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部
分について」を「不開示部分について」に改める。
 18 同頁22行目から同74頁1行目及び同頁13行目から14行目「研究者にとって研究の
プライオリティ等を示す最も重要な部分であるとして」をいずれも削る。
 19 同74頁10行目「おそれ」を「蓋然性」に改める。
 20 同75頁17行目冒頭から同77頁1行目末尾までを削る。
 21 同77頁2行目「(二)」を「(一)」に改める。
 22 同頁17行目「そのおそれ」の次に「,すなわち,法的保護に値する蓋然性」を加える。
 23 同頁19行目冒頭から同78頁8行目末尾までを削る。
 24 同83頁3行目及び同6行目「可能性」をいずれも「蓋然性」に改める。
 25 同86頁6行目冒頭から91頁7行目末尾までを削る。
 26 同頁8行目「(四)」を「(二)」に改める。
27同92頁4行目,同93頁及び6行目「おそれ」をいずれも「蓋然性」に改める。
 28同93頁16行目「(五)」を「(三)」に改める。
 29 同頁18行目から20行目にかけて「情報公開法5条1号又は同条4号に該当すると認
めることはできないものの、」を削る。 
 30同94頁13行目冒頭から同17行目末尾までを削る。
 31 同頁18行目「(三)」を「(二)」に改める。
 32 同頁20行目から21行目にかけて「情報公開法5条6号柱書・同号ハに該当すると認
めることはできないものの、」を削る。
第4 結論
   よって,控訴人の請求を棄却した原判決は正当であるから,本件控訴を棄却することと
し,控訴費用の負担について行訴法7条,民訴法67条1項,61条を適用して,主文のとお
り判決する。
   東京高等裁判所第24民事部
      裁判長裁判官   大 喜 多    啓    光
          裁判官   園    部    秀    穗
          裁判官   定    塚         誠

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