弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴趣意は末尾添付の各控訴趣意書と題する被告人並に弁護人橋本清次郎作
成の各書面記載の通りである。
 右各控訴趣意を通じてこれを要約すると、第一に「原判決は、被告人はA、B両
巡査から挙動不審のため職務質問を受けながら応答しようとしなかつたので、附近
の街燈の下まで任意同行を求められたところ、これを拒否し逃走しようとしてA巡
査の顔面を手拳をもつて数回殴り付け以て同巡査の職務の執行を妨害した事実を認
定したが、その引用した原審証人B、同Aの各供述は矛盾しこれとその引用した被
告人の供述とを綜合するも到底被告人が意識的にA巡査を殴打して暴行を加えた事
実は認められない。むしろこれらの証拠によるも、被告人がA巡査に逆手をとられ
て恐ろしさの余り力一ぱい振り切り正面でもみ合つたものに外ならないから、これ
を暴行と認定した原判決に事実誤認の違法がある」という。
 しかし原判決の挙示した右証人B、同Aの供述によると、被告人は外一名の者と
共に原判示の日の夜十一時過頃、函館市a町b番地附近の道路上を通行する挙動が
不審のかどで、警邏中のA、Bの両巡査に職務質問のため呼びかけられて三回目に
漸く停止したが同巡査等の質問に対して「梁川町へ行く」と答えたのみで、その外
は答えようともしないので、なお事情をきき質すために薄暗かつたその場所から近
くの明るい路上街燈の下まで来てくれというたところ、被告人は逃げようとする気
配を示したのでA巡査は左手を被告人の右肩にかけると、被告人ははげしく抵抗
し、手を振り廻してA巡査の顔に打ち当て、逃げ出した事実が現われており、よつ
て原判決がその挙示の証拠によつて認定した原判示暴行の事実は優に認められるか
ら、この点に関して原判決に所論のような違法はない。
 次に所論は、「原判決は、被告人及び弁護人の主張に対する判断の説示におい
て、A巡査が被告人の肩に手をかけて同行を求めた行為を、警察官職務執行の正当
な範囲を越えた違法のものと認めながら、この違法な行為を排除する為めに被告人
のとつた自力救済の行為を被告人の暴行と認めたうえ、これに対し暴行による公務
執行妨害の法条を適用したのは、警察官等職務執行法第一条第二条の趣旨に悖り、
不当に法令を適用した違法がある」というけれども、警察官の不審者に対する職務
質問は或は犯罪の予防及び制止の処置を講ずる前提として、或は犯罪捜査の前提と
して不審者を停止させて事情をきき質すことであつて、これがために必要な限度を
越えて勾引に類する強制力を以てする同行をしたり身柄を抑留したり、答弁を強要
したり、暴行に及んだりすることの許されないことは警察官等職務執行法第二条、
第一条の規定の趣旨から明かなところである。しか<要旨>しながら、警察官が異常
な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して不審者と認めた者に対し職務質問の
め停止を要求してもその者がこれに応じなかつた場合これを停止させるに
妥当な方法によつて、その者の行動を停止させることは、警察官がその職権職務を
忠実に遂行するために必要なことで、具体的に妥当な方法と判断される限り暴行に
亘らぬ実力を加えることも正当性ある職務執行上の方法と謂わなければならない。
本件において原判決の引用した証拠に現われている被告人のA巡査から職務質問を
受けた現揚の状態は時刻は判示の日の夜十一時過ぎであつて、現場附近にはほかに
通行人なく、当夜は雨降りであつたが小降りながらもまだやんでいない中を、よい
風態でもない被告人等は雨具も持たず風呂敷包を小脇にして急ぎ足で通りかかり、
それにA巡査等は当夜警邏に先だち函館市内に窃盗事件が発生して本署から非常警
邏の指示を受けて居た際であつたから、A巡査等が被告人等の挙動に対し或は何ら
かの犯罪を犯し若しくは犯そうとしているのではないかと疑うに足りる相当な理由
があつたものと謂わなければならないしそれを質問しようと呼びとめても被告人等
は一回目は振り向きもしない、二回目には一寸振り向いただけで歩行を続け、三回
目に停つたが、同巡査等の質問に対して梁川町へ行くと言うただけであとは答えよ
うともしない、小脇にかかえた風呂敷布包については、お前なんかに見せる必要は
ないと突ぱね、疑を深めた同巡査らがなお質問しようとして薄暗いその場から近く
の街燈の下まで来てくれというと、被告人は逃げようとする気配が現われたので、
A巡査が被告人の右肩に左手をかけたところが、被告人は闘争的な態度で手を振り
廻してA巡査の顔面にうち当てそこから逃走したが格闘の上で捉まつたという次第
であるから、A巡査が被告人の肩に手をかけた行為は同巡査の職務質問に反抗的
で、且つ逃げようとする被告人を停止させて質問しようとする職務遂行上の妥当な
方法として用いられたもので、その場においての職務執行上の正当な方法であつ
て、これによつて同巡査の被告人を停止させて質問した職務の執行を違法とならし
めるものではない。従つてこれに暴行を加えその執行を妨害した前叙被告人の行為
は公務執行妨害罪を構成することは勿論であつて原判決には所論のような違法はな
い。原判決は被告人及び弁護人の主張に対する判断の説示において、A巡査が被告
人の肩に手をかけた行為は警察官等職務執行法第二条の規定の趣旨から言うて職務
執行の範囲を越えた違法のものと言い得ようとの言句をはさみその判断の経路を説
明しているけれども、結局その挙示の証拠によつてA巡査の本件職務執行の適法性
を認め、判示被告人の暴行が同巡査の職務の執行を妨害した事実を認定し、これに
刑法第九十五条を適用しているから不法に法令を適用したものということはできな
い。
 以上の次第で本件控訴は理由がないから、刑事訴訟法第三百九十六条によつてこ
れを棄却し、訴訟費用につき同法第百八十一条を適用して主文の通り判決する。
 (裁判長判事 原和雄 判事 小坂長四郎 判事 東徹)

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