弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人葛西千代治の上告理由は別紙のとおりである。
 上告理由第一点について。
 論旨は、本件土地について昭和二五年二月一三日に定められた買収計画の取消の
違法及び昭和二七年三月七日の買収計画が右計画と重複することの違法を主張し、
この点に関する原判示を非難するのである。
 よつて原判決が認定したところを見るに、本件土地については昭和二五年二月一
三日に買収計画が定められたのであるが、右計画に関する訴訟の係属中に、被上告
人青森市農業委員会は、右の計画に所有者を誤つた違法があるとしてこれを取り消
し、あらためて本件昭和二七年三月七日の買収計画を定め、その旨公告し計画を縦
覧に供したのである。そして、右計画の取消については公告することなく、同年三
月八日付書面をもつて被買収者に通知したというのである。
 論旨は、「その一」及び「その三」として、当初の買収計画については、異議、
訴願を経て取消訴訟が裁判所に係属中であつたから、被上告人青森市農業委員会は、
右計画を取り消すことはできないというのである。
 しかし、買収計画に関する異議決定、訴願裁決があり、訴訟が裁判所に係属中で
あつたからといつて、それだけの理由で、当初買収計画を定めた農業委員会が、自
らその誤りのあることを認めた場合に、これを取り消すことができないと解すべき
理由はない。論旨援用の大阪高等裁判所の判決及び当裁判所の判決は、いずれも、
訴願裁決庁はひとたびした訴願裁決を自ら取り消すことができない旨を判示したに
止まり、原処分庁の取消権限を否定しているのではない。原判決引用の一審判決の
この点に関する判示は正当であり、原判決に所論のような違法はない。
 論旨は、「その二」として、買収計画が公告によつて効力を生ずるものである以
上、計画の取消もまた公告がなければ取消の効力を生じないというのである。
 しかし、さきに定められた買収計画と相牴触する買収計画を定めた場合には、特
段の事情のないかぎり、さきの買収計画は当然に取り消されたものと解すべく、原
判決がこの点について「前に樹立された第一五次買収計画と牴触すると認められる
後の本件第二二次買収計画の樹立によつて前の第一五次買収計画は当然取り消され
たものと解すべきである」と判示したのは正当である。そして、本件買収計画は公
告され縦覧に供されたのであるから、所論の被買収者に対する取消通知の効力いか
んにかかわらず、当初の買収計画は取り消されたものと解すべきである。かく解す
るならば、所論のように、取消の効力発生前に重複して計画を定めたことにならな
いことはいうまでもない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨は、本件買収計画は適法な買収申請なくして定められた違法があるというの
である。
 しかし、原判決が引用する一審判決は、訴外Dは、同E、同Fの委任により買収
申請書を作成提出した事実を認定しており、所論のように、右D一人の申請ではな
い。所論甲一号証は原審の右の認定の妨げとなるものではない。また申請書記載の
土地所有者に誤りがあつても、申請人が不法占拠者であるとは断定できないのみな
らず、その土地が確認でき、しかも買収適地である以上、所論のような申請書の瑕
疵によつて申請を無効と解すべきではない。そして原判決の引用する一審判決は、
前記三名が本件土地をそれぞれ約三〇数年前から賃借して住家等を建築の上使用し
て来つた事実を、上告人らの明らかに争わないところとして確定しているのであつ
て、本件買収計画を違法とすべき理由はない。論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条一項に従い、裁判官全員の一致
で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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