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令和2年10月22日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成30年(ワ)第35053号商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日令和2年8月27日
判決
原告ハリスウイリアムズデザインインコーポレイテッド
(以下「原告ハリス」という。)
原告株式会社アイインザスカイ10
(以下「原告アイインザスカイ」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士遠山光貴
被告株式会社ブライト15
(以下「被告ブライト」という。)
被告A
(以下「被告A」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士中野丈20
被告ら訴訟代理人弁理士飯島紳行
同藤森裕司
同伊藤大地
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。25
2訴訟費用は原告らの負担とする。
3原告ハリスのために,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定め
る。
事実及び理由
第1請求
1被告ブライトは,別紙本件標章目録記載の標章を付した別紙商品目録記載の商5
品を譲渡し,引き渡し,輸入してはならない。
2被告ブライトは,別紙商品目録記載の商品の広告に,別紙本件標章目録記載の
標章を付して,これを展示し,頒布してはならない。
3被告ブライトは,第1項に記載した商品を廃棄せよ。
4被告らは,連帯して,原告ハリスに対して282万5758円及びこれに対す10
る平成30年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支
払え。
5被告らは,連帯して,原告アイインザスカイに対して1130万3030円及
びこれに対する平成30年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合に
よる金員を支払え。15
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,商標権者である原告ハリス及び原告ハリスから当該商標について独占
的通常使用権の設定を受けた原告アイインザスカイが,被告ブライトによる別紙
本件標章目録記載の標章(以下,同目録の番号に従い「本件標章1」などといい,20
本件標章1ないし9を「本件標章」と総称することがある。)が付された男性用下
着の輸入,販売,所持及び本件標章を付した広告掲載の各行為が原告らが有する
商標権ないし独占的通常使用権を侵害すると主張して,被告ブライトに対し,商
標法36条1項及び2項に基づき本件標章を付した別紙商品目録記載の商品の
譲渡,引渡し,輸入の停止及び本件標章を付した広告掲載の停止並びに当該商品25
の廃棄を求めるとともに,被告ブライト及び被告Aに対し,民法709条,民法
719条1項及び商標法38条2項に基づき損害賠償金及び遅延損害金の支払
を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容
易に認められる事実)
原告ハリスは,5
いい,その商標を「原告商標」という。)を有し,カナダなどでも原告商標(2
UNDR)についての商標権を有する。
原告ハリスは,販売代理店を介するなどして,日本を含む複数の国で,原告
商標(2UNDR)を付した男性用下着(以下,それらを総称して「2UND
R商品」ということがある。)を販売している。10
ランピョンエンタープライゼスリミテッド(以下「ランピョン社」という。)
は,所在地及び代表者等を原告ハリスと同じくするカナダ法人である。
原告アイインザスカイは,原告商標権について,日本国内における独占的通
常使用権の設定を受けた株式会社である。(弁論の全趣旨)
被告ブライトは衣料品の販売等を目的とする株式会社であり,被告Aは遅く15
とも平成23年8月20日から現在まで被告ブライトの代表取締役である者
である。(弁論の全趣旨)
原告商標権の内容は以下のとおりである。(争いがない)
ア登録番号
商標登録第5696029号20
イ商品及び役務の区分
第25類
ウ指定商品
男性用下着,男性用ズボン下,肌着,ボクサーブリーフ,ボクサーショー
ツ,男性用水着,男性用水泳着,男性用ボード用ショートパンツ,下着,水25
泳着,被服,運動用特殊衣服
エ登録日
平成26年8月22日
オ登録商標(標準文字)
2UNDR
ランピョン社は,平成27年1月頃,シンガポール法人であるMSTGO5
LFPTELTD(以下「Mゴルフ社」という。)に対して意向表明書(L
etterofIntent)を交付して,Mゴルフ社との間で2UND
R商品の販売等についての代理店契約を締結した(以下「本件代理店契約」と
いう。)。(甲30の1及び2,弁論の全趣旨)
本件代理店契約では,Mゴルフ社は,2UNDR商品をシンガポール国内で10
販売することができること,2UNDR商品の販売促進等について努力をする
ことなどが定められていた。(甲30の1及び2)
ランピョン社は,Mゴルフ社に対し,平成27年2月頃に1248点,同年
6月頃に1200点の合計2448点の2UNDR商品(箱型のパッケージに
包装されていたもの)を販売した。(甲29の1及び2,乙31の2ないし7)15
Mゴルフ社は,被告ブライトに対し,平成28年5月27日に380点,同
年9月28日に38点,同年10月7日に1969点の合計2387点の2U
NDR商品(箱型のパッケージに包装されていたもの)を販売し,被告ブライ
トは,それらを日本国内に輸入した(以下,被告ブライトがMゴルフ社から輸
入した上記の2UNDR商品(包装のパッケージを含む。)を「本件商品」とい20
い,本件商品の輸入行為を「本件輸入行為」という。)。(乙34ないし36,弁
論の全趣旨)
本件商品は,ランピョン社が本件代理店契約に基づいてMゴルフ社に販売し
たものであった。(乙23の1,弁論の全趣旨)
本件商品には,本件標章6,7又は9が商品又は包装に付されていた。(争い25
がない)
被告ブライトは,遅くとも平成28年8月頃から平成29年12月15日頃
までの間,ヤフー株式会社が運営する「Yahoo!ショッピング」や楽天株
式会社が運営する「楽天市場」(以下,これらのウェブサイトを「本件各サイ
ト」という。)や実店舗において,本件商品を販売し(以下「本件販売行為」と
いう。),本件各サイトの販売のためのウェブページにおいて広告に本件標章5
(本件標章1ないし9)を付して電磁的方法により提供した(以下「本件広告
行為」という。)。(争いがない)
被告ブライトは,ランピョン社がMゴルフ社に販売した際のパッケージに包
装された状態で本件商品を販売した。(甲2,3(いずれも枝番を含む。),乙
9,弁論の全趣旨)10
被告ブライトは,遅くとも平成28年8月頃から現在に至るまで,本件商
品を譲渡や引渡しのために所持している(以下「本件所持行為」といい,本件
輸入行為,本件販売行為,本件広告行為及び本件所持行為を「本件各行為」と
総称する。)。(争いがない)
3争点15
原告商標と本件標章の類否(争点1)
被告らの本件各行為がいわゆる真正商品の並行輸入として商標権侵害の違
法性を欠く場合に当たるか(争点2)
過失の有無(争点3)
損害額(争点4)20
4争点に対する当事者の主張
争点1(原告商標と本件標章の類否)について
(原告らの主張)
ア原告商標について
原告商標の外観は,数字1文字(「2」)とアルファベット大文字4文字(「U25
NDR」)からなるものである。
原告商標の観念について,指定商品が男性用下着等であることを考慮すれ
ば,アンダーウェアの観念が生じるほか,ゴルフ用の下着として販売してい
るという取引実態からすれば,ゴルフで規定打数より2打少ないことを意味
する「ツーアンダー」の観念も生じる。
イ本件標章1及び2について5
本件標章1及び2の外観,称呼及び観念は,いずれも原告商標と同一又は
類似のものである。
ウ本件標章3について
本件標章3は,「ツーアンダー」の片仮名文字を普通の書体で横書きして
なるものであり,「ツーアンダー」の称呼が生じ,ゴルフ用の下着として販売10
しているという取引実態からすれば,アンダーウェア又はゴルフで規定打数
より2打少ないことを意味する「ツーアンダー」の観念が生じる。
エ本件標章4及び5について
本件標章4は,数字1文字(「2」)とアルファベット小文字4文字(「un
dr」)と,その右側に括弧書きで併記されたカタカナ6文字(「ツーアンダ15
ー」)からなるものであり,本件標章5は,数字1文字(「2」)とアルファベ
ット大文字4文字(「UNDR」)と,その右側に括弧書きで併記されたカタ
カナ6文字(「ツーアンダー」)からなるものである。本件標章4及び5のう
ち「ツーアンダー」の部分は称呼を併記したにすぎないから,「ツーアンダー
ツーアンダー」と2回称呼されるものではなく,本件標章4及び5からは「ツ20
ーアンダー」との称呼が生じる。また,本件標章4及び5からは,アンダー
ウェア又はゴルフで規定打数より2打少ないことを意味する「ツーアンダー」
の観念が生じる。
オ本件標章6について
本件標章6は,数字1文字(「2」)とアルファベット大文字4文字(「UN25
DR」)からなるものである。本件標章6のうち,「2」と「UNDR」の間
の縦線は数字とアルファベットを分けるためにデザイン上入れただけであ
り,「2」と「UNDR」を分けて称呼するとの意味を有するものではないか
ら,本件標章6からは「ツーアンダー」との称呼が生じる。また,本件標章
6からは,アンダーウェア又はゴルフで規定打数より2打少ないことを意味
する「ツーアンダー」の観念が生じる。5
カ本件標章7ないし9について
本件標章7は,数字1文字(「2」)とアルファベット大文字4文字(「U
NDR」)からなるものであり,「2」と「UNDR」が同じ面積になるよ
うに「2」と「UNDR」を縦線で区切っているにすぎず,それらを分け
るという趣旨ではない。また,「UNDR」の部分については,「2」と同10
じ形になるように「UN」と「DR」を上下に分けたにすぎず,それらを
分けるという趣旨ではない。したがって,本件標章7からは,「ツーアンダ
ー」との称呼が生じる。また,本件標章7からは,アンダーウェア又はゴ
ルフで規定打数より2打少ないことを意味する「ツーアンダー」の観念が
生じる。15
本件標章8のうち,「PERFORMANCEWEAR」の部分はス
ポーツ用の服という意味を有する普通名称であり,「2UNDR」の部分
とは異なり配列上の工夫がなく,「2UNDR」の部分と文字の大きさも
異なる。したがって,「2UNDR」の部分と「PERFORMANCE
WEAR」の部分はこれを分離して観察することが取引上不自然であるほ20
どに不可分に結合しているとはいえないから,本件標章8の要部は「2U
NDR」の部分である。そして,その要部についての外観,称呼,観念は
本件標章7と同様である。
本件標章9のうち,「SwingShift」の部分は「2UNDR」
の部分とは異なり配列上の工夫がなく,「2UNDR」の部分と字体や文25
字の大きさも異なる。したがって,「2UNDR」と「SwingShi
ft」はこれを分離して観察することが取引上不自然であるほど不可分的
に結合しているとはいえないから,本件標章9の要部は「2UNDR」の
部分である。そして,その要部についての外観,称呼,観念は本件標章7
と同様である。
キ原告商標と本件標章との類否5
以上によれば,原告商標と本件標章は,いずれも「ツーアンダー」という
称呼が生じ,アンダーウェア又はゴルフで規定打数より2打少ないことを意
味する「ツーアンダー」の観念が生じる点で同一であり,また,それらの外
観も類似又は同一のものであるといえることから,全体として類似するもの
であると認められる。10
(被告らの主張)
ア原告商標について
原告商標は,「2UNDR」の欧文字を標準文字で表してなるところ,当該
文字は造語であるから,原告商標からは特定の観念が生じない。そして,原
告商標の構成中,「2」は数字であるから「ニ」又は「ツー」の称呼を生じる15
ものの,その後に続く「UNDR」が欧文字であることから,「ツー」の称呼
を生じるのが自然である。また,原告商標の構成中,「UNDR」は,欧文字
4文字を羅列してなる造語といえるから,アルファベット読みに,「ユウエ
ヌデイアアル」の称呼を生ずるものである。したがって,原告商標からは全
体として「ツーユウエヌデイアアル」の称呼のみを生ずるものというのが相20
当である。
イ本件標章1及び2について
原告商標と本件標章1及び2の類否は争わない。
ウ本件標章3について
本件標章3は,「ツーアンダー」の片仮名文字を普通の書体で横書きして25
なるところ,当該文字は造語であるから本件標章3からは特定の観念が生じ
ない。そして,本件標章3からはその構成文字に相応して「ツーアンダー」
の称呼を生ずる。
エ本件標章4及び5について
本件標章4は,「2undr(ツーアンダー)」の文字を普通の書体で横書
きしてなり,本件標章5は,「2UNDR(ツーアンダー)」の文字を普通の5
書体で横書きしてなるところ,いずれも造語であるから本件標章4及び5か
らは特定の観念が生じない。そして,本件標章4及び5は,その構成中の「(ツ
ーアンダー)」が読み方を特定したものであると自然に理解できるから,本
件標章4及び5からは「ツーアンダー」の称呼のみを生ずる。
オ本件標章6について10
本件標章6は,「2」,縦線,「UNDR」の欧文字4文字を横書きしてなる
ところ,上記の縦線の存在により,本件標章6は「2」の標章部分と「UN
DR」の標章部分がそれぞれ独立した標章として理解される。そして,本件
標章6の構成中の「2」は数字であるところ,「UNDR」が欧文字であるこ
とから「ツー」の称呼を生じるのが自然である。また,本件標章6の構成中15
の「UNDR」は,欧文字4文字を羅列した造語といえるから,アルファベ
ット読みに「ユウエヌデイアアル」の称呼を生ずるものであり,特定の観念
は生じない。
カ本件標章7ないし9について
本件標章7は,大きく「2」の数字が左側に表され,「2」の右側に縦線20
が設けられ,縦線の右側に上段に「UN」,下段に「DR」の欧文字4文字
が並べられている構成であるところ,上記の縦線の存在により,本件標章
7は「2」の標章部分と「UN」及び「DR」からなる標章部分がそれぞ
れ独立した標章として理解されるものである。
本件標章7の構成中の「2」は数字であり,「UN」及び「DR」が欧文25
字であることから「ツー」の称呼を生じ,「(数字の)2」という観念が生
じる。本件標章7の構成中の「UN」及び「DR」は,上下2段に欧文字
2文字を並記してなるものといえるから,アルファベット読みに「ユウエ
ヌ」と「デイアアル」の称呼を生ずるものであるが,特定の観念は生じな
い。
本件標章8は,上段に本件標章7とほぼ同一構成からなる標章が配され,5
下段に黒く塗りつぶされた横長長方形図形内に「PERFORMANCE
WEAR」の文字が白塗りされた標章が配されてなる。
上段の標章部分については,本件標章7と同様に,その構成中の「2」
からは「ツー」の称呼と「(数字の)2」の観念が生じ,その構成中の「U
N」「DR」からは「ユウエヌ」と「デイアアル」の称呼を生ずるものであ10
るが,特定の観念は生じない。
下段の標章部分については,「PERFORMANCEWEAR」の
文字に相応して「パフォーマンスウエア」の称呼が生ずるものであるが,
特定の観念は生じない。
本件標章9は,上段に本件標章7とほぼ同一構成からなる標章が配され,15
下段に手書き風の「SwingShift」の欧文字が横書きされた標
章が配されてなる。
上段の標章部分については,本件標章7と同様に,その構成中の「2」
からは「ツー」の称呼と「(数字の)2」の観念が生じ,その構成中の「U
N」「DR」からは「ユウエヌ」と「デイアアル」の称呼を生ずるものであ20
るが,特定の観念は生じない。
下段の標章部分については,「SwingShift」の構成文字に
相応して「スイングシフト」の称呼が生ずるものであるが,特定の観念は
生じない。
キ原告商標と本件標章との類否25
外観
原告商標と本件標章3ないし9は,外観においては文字種や構成文字数
が異なり,外観上明確に区別できるものである。
称呼
原告商標からは,全体として「ツーユウエヌデイアアル」の称呼のみが
生ずるのに対し,本件標章3ないし5からは「ツーアンダー」の称呼が生5
じ,本件標章6からは「ツー」又は「ユウエヌデイアアル」の称呼が生じ,
本件標章7からは「ツー」,「ユウエヌ」又は「デイアアル」の称呼が生じ,
本件標章8からは「ツー」,「ユウエヌ」,「デイアアル」又は「パフォーマ
ンスウエア」の称呼が生じ,本件標章9からは「ツー」,「ユウエヌ」,「デ
イアアル」又は「スイングシフト」の称呼が生じるから,原告商標は本件10
標章3ないし9と構成音が全く異なる。
観念
原告商標と本件標章3ないし9は,いずれも特定の観念が生じないもの
であるから,比較することができない。
まとめ15
原告商標と本件標章3ないし9は,外観において明確に区別することが
でき,称呼及び観念において相紛れるおそれもないから,非類似であると
いえる。
争点2(被告らの本件各行為がいわゆる真正商品の並行輸入として商標権侵
害の違法性を欠く場合に当たるか)について20
(被告らの主張)
ア本件輸入行為について
商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品に
つきその登録商標と同一の商標を付されたものを輸入する行為は,許諾を
受けない限り商標権を侵害するものである。しかし,そのような商品の輸25
入であっても,①当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から
使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり(第1要件),②当
該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法
律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,
当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって(第2
要件),③我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理5
を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標
を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異が
ないと評価される(第3要件)場合には,商標権侵害としての実質的違法
性を欠くと解するのが相当である。
第1要件について10
被告ブライトがMゴルフ社から輸入した本件商品は,原告ハリスから許
諾を得て,ランピョン社によってMゴルフ社に販売されたものである。本
件商品に付されている本件標章は,商標権者である原告ハリス又は当該商
標権者から使用許諾を受けたランピョン社により適法に付されたもので
あるから,本件輸入行為は第1要件を具備する。15
第2要件について
本件商品の包装には,原告ハリス又は原告ハリスから使用許諾を受けた
ランピョン社の住所表示や同社のホームページのドメイン名(2UNDR.
COM)が付されている。本件標章は原告商標と同一の出所を表示するも
のであるから,本件輸入行為は第2要件を具備する。20
第3要件について
本件商品は,Mゴルフ社がランピョン社から購入したものであるところ,
ランピョン社と原告ハリスの所在地,代表者はいずれも同一であり,原告
商標権の住所表示もランピョン社の旧所在地や同社の代表者の旧住所と
一致していることなどに照らせば,原告ハリスは直接的に又は間接的に本25
件商品の品質管理を行い得る立場にあるといえるから,本件商品と原告ア
イインザスカイが販売する2UNDR商品は原告商標や本件標章が保証
する品質において実質的に差異がない。また,本件商品と原告アイインザ
スカイが販売する2UNDR商品を対比しても,商品の品質,原材料及び
産地についての差異はなく,それらの包装も微細な点を除いて一致してい
るから,需要者が本件商品やその包装から認識できる品質は原告アイイン5
ザスカイが販売する2UNDR商品と同じであるといえる。したがって,
本件輸入行為は第3要件を具備する。
小括
以上によれば,本件輸入行為は,商標権侵害としての違法性を欠くもの
であるといえる。10
イ本件販売行為,本件所持行為及び本件広告行為について
上記アに記載した第1要件ないし第3要件を具備し,商標等が付された商
品の輸入行為に違法性がないと認められた場合には,その輸入行為後に当該
商品を所持し,販売し,販売のための広告に当該商標等を付すことは,輸入
行為とは別に商標権の出所識別機能や品質保持機能を害し,新たに違法性を15
帯びると評価される行為を伴わない限り,違法性が阻却されるというべきで
ある。
本件輸入行為は,上記アのとおり,第1要件ないし第3要件を具備するも
のである。そして,被告らは,本件輸入行為によって取得した本件商品に手
を加えて販売するなど,輸入行為とは別に原告商標の出所識別機能や品質保20
持機能を害することによって新たに違法性を帯びると評価されるような行
為をしていないから,本件販売行為,本件所持行為及び本件広告行為はいず
れも違法性が阻却される。
したがって,本件販売行為,本件所持行為及び本件広告行為は,商標権侵
害としての違法性を欠くものであるといえる。25
(原告らの主張)
ア本件輸入行為について
Mゴルフ社が原告ハリスの販売代理店ではなくなったこと
本件商品は,Mゴルフ社が原告ハリスの販売代理店でなくなった後に購
入されたものであり,物理的形状等が真正商品と同じであるとしても法律
的には真正商品ではなく,商標権の出所表示機能及び品質保証機能を害す5
るものであるから,本件輸入行為は,以下のとおり,上記第1要件,第2
要件,第3要件をいずれも充足しない。
①第1要件又は出所識別機能について
第1要件は,商標権者の意思で適法に流通に置かれることまでを含む
ものであり,商標が付された時点で商標権者の許諾があっても,その後,10
当該商品が流通に置かれる前に販売代理店が販売権限を喪失した場合
には,適法に流通に置いたとはいえないから第1要件を具備しない。す
なわち,流通とは公衆に譲渡することをいい,商標の使用許諾を受けた
者が許諾を受けていない不特定の者に対して譲渡することを意味する
ところ,商標権者が販売代理店に販売権限を与えている場合には,商標15
権者から販売代理店までの間の商品の流れは特定の者に対する譲渡で
あるから流通には該当せず,販売代理店から不特定の者に対して譲渡が
あって初めて流通に置いたといえる。販売代理店が商品を適法に取得し
た後,第三者に販売する前に販売権限を喪失した場合も,本来は流通に
置かれるべきではなかった商品が商標権者の意思によらずに流通に置20
かれたものであるから,商標等の出所表示機能を害する。本件では,商
標権者である原告ハリスから許諾を得たランピョン社からMゴルフ社
に対する譲渡は流通に該当せず,Mゴルフ社から被告ブライトに対する
輸出が流通に該当する。そして,その時点ではMゴルフ社は販売権限を
喪失しているから,本件輸入行為は第1要件を充足せず,原告商標や本25
件標章の出所表示機能を害する。
②第2要件について
Mゴルフ社は,本件商品を被告ブライトに販売した当時,本件代理店
契約の終了により本件商品の販売権限がなかったのであるから,Mゴル
フ社と原告ハリス等との間には法律的経済的に同一人と同視し得るよ
うな関係がなく,本件輸入行為は第2要件を充足しない。5
③第3要件又は品質保証機能について
商標権者は,販売権限のない者が販売した商品については自ら直接又
は販売代理店を通じた間接的な商品の品質管理を行うことができない
から,本件輸入行為は第3要件を具備しない。また,原告ハリスは,正
規代理店が販売した商品については欠陥について保証をするが,正規代10
理店ではない者が販売した商品についてはそのような保証をしていな
い。本件商品は正規の販売代理店ではないMゴルフ社が販売したもので
あり,原告ハリスによる保証がない点で原告商標や本件標章の品質保証
機能を害するものであるから,本件輸入行為は第3要件を具備しない。
原告ハリスとMゴルフ社との間で販売地域制限の合意があったこと15
本件代理店契約には,本件商品の販売地域をシンガポールに限定する旨
の合意が存在したから,Mゴルフ社が本件商品を日本に輸出したことは販
売地域制限の合意に反するものであるところ,販売地域制限の合意は商品
の出所表示機能や品質保証機能にとって重要なものであるから,それに反
した本件輸入行為は,以下のとおり,第1要件,第3要件を充足しない。20
①第1要件又は出所識別機能について
販売地域制限の合意は商品の出所表示機能や品質保証機能にとって
重要なものであるから,商標権者が販売代理店との間で販売地域制限の
合意をしている場合には,その販売地域を越えて販売された商品は,権
利者が当該商標を適法に付して流通に置いたものであるとはいえず,第25
1要件を具備しない。本件では,本件代理店契約には本件商品の販売地
域をシンガポールに限定する旨の合意が存在したにもかかわらず,Mゴ
ルフ社は被告ブライトに本件商品を輸出することによって日本国内に
販売しているのであるから,本件輸入行為は第1要件を具備せず,原告
商標や本件標章の出所識別機能を害する。
②第3要件又は品質保証機能について5
商標権者は,販売地域制限の合意に反して販売された商品について直
接的又は販売代理店を通じた間接的な品質管理を行うことができない
から,上記合意に反する本件輸入行為は,第3要件を具備せず,品質保
証機能を害する。また,販売地域制限の合意がされた地域以外の地域で
商品を流通させる行為は,流通経路を変えるものであり,輸送時間の長10
期化や保存環境の変化の結果,商品の品質を変化させるおそれがあるか
ら,上記合意に反する本件輸入行為は,第3要件を具備せず,原告商標
や本件標章の品質保証機能を害する。
現実の品質の差異又はそのおそれが存在すること
被告ブライトの本件広告行為では,本件商品について「訳あり/パッケ15
ージ汚れ」などと表示され,実際の本件商品の包装にはシールをはがした
ような跡があるのに対し,原告アイインザスカイの広告や販売する2UN
DR商品にはそのような品質に問題があることを疑わせる記載等はない
から,本件商品は,原告アイインザスカイが販売する2UNDR商品と比
較して現実に品質に差異があるか,少なくとも品質に問題があるのではな20
いかとの疑いを需要者に抱かせるものであり,本件輸入行為は,第3要件
を具備せず,原告商標や本件標章の品質保証機能が害するおそれがある。
イ本件販売行為,本件所持行為及び本件広告行為について
上記アのとおり,本件輸入行為が違法とされる以上,本件販売行為,本件
所持行為,本件広告行為についても違法性は阻却されない。25
また,本件広告行為はそれ自体でも原告商標や本件標章の出所識別機能や
品質保証機能を害するものである。すなわち,①本件各サイトには,本件標
章8が各商品の左上に表示されているところ,当該標章は,原告ハリスが有
する原告商標(2UNDRの標準文字)とは異なる表示であり,商標権者の
商標と異なる標章を商品の写真とは別個に表示するものであるから,原告商
標の出所表示機能を害する,②本件各サイトには「訳あり/パッケージ汚れ」5
と記載されているところ,「訳あり」とは,単にパッケージが汚れた中古品で
あることにとどまらず,工場横流し品や廃棄品等といった商標権者の意思に
よらずに流通した商品であることを需要者に想起させる文言であるから,原
告商標や本件標章の品質保証機能を害する。
争点3(過失の有無)について10
(原告らの主張)
商標権を侵害する者については,侵害行為について過失があったものと推定
され,輸入業者にも過失が推定される。
被告らはMゴルフ社に本件商品を流通に置く権限があることを本件輸入行
為の時点で確認していないこと,被告らはMゴルフ社における本件商品の保管15
状態が極めて悪かったことを認識していたこと,被告らは本件商品が正規代理
店で扱われないものであることを知っていたと考えられること,本件商品の輸
入は本件代理店契約の終了直後から始まっていること,被告らは原告ハリスが
被告ブライトに対して商標権侵害の警告書を送付した後に本件商品を値下げ
した上でウェブサイトに「訳あり」などと追記して販売を継続していることな20
どの事情からすれば,本件について被告らの過失が認められることは明らかで
ある。
仮に,本件輸入行為の時点での過失の推定が覆されたとしても,被告らは平
成28年12月22日付で原告ハリスから商標権を侵害する旨の警告を受け
ていたにもかかわらず,それ以降も本件商品の販売や広告掲載等を継続してい25
たから,少なくとも同日以降の販売や広告掲載等については過失がある。
(被告らの主張)
本件代理店契約が解除された事実はないから,被告らに販売代理店契約の有
無の調査に関する義務や過失は発生しない。
仮に,本件代理店契約が解除されていたとしても,本件代理店契約には正規
の契約関係にあることを示す客観的な資料がなく,そのような場合に販売代理5
店への確認以外の方法によって調査をすることは困難であるから,それを行わ
なかったことをもって過失があるとはいえない。
争点4(損害額)について
(原告らの主張)
ア原告ハリスが被告ブライトに対して請求する損害額10
商標法38条1項に基づく損害額
被告ブライトは,平成28年8月頃から現在まで,本件商品を少なくと
も8586個販売した。原告らは被告ブライトの本件各行為がなければ,
同時期,2UNDR商品を同数個販売することができた。また,2UND
R商品1個当たりの原告ハリスの利益は300円を下らない。15
したがって,本件販売行為により原告ハリスの受けた損害は,商標法3
8条1項により257万5758円となる。
商標法38条2項に基づく損害額
被告ブライトは,平成28年8月頃から現在まで,本件商品を少なくと
も8586個販売した。また本件商品1個当たりの被告ブライトの利益は20
1500円を下らない。
したがって,本件各行為により原告ハリスの受けた損害は,商標法38
条2項により1287万8788円と推定されるところ,原告ハリスはそ
の5分の1である257万5758円を請求する。
弁護士費用相当額の損害25
弁護士費用相当額の損害は25万円を下らない。
合計(なお,
原告ハリスは,被告ブライトに対し,282万5758円及びこれに対
する平成30年1月1日から支払済みまで年5パーセントの割合による
遅延損害金の支払を求める。
イ原告ハリスが被告Aに対して請求する損害額5
被告Aは被告ブライトの代表取締役であり,被告ブライトをして本件各行
為を行わせたのであるから,被告ブライトと共同不法行為責任(民法719
条1項前段)を負う。
したがって,原告ハリスは,被告Aに対し,被告ブライトと連帯して28
2万5758円及びこれに対する平成30年1月1日から支払済みまで民10
法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
ウ原告アイインザスカイが被告ブライトに対して請求する損害額
商標法38条1項類推適用に基づく損害額
被告ブライトは,平成28年8月頃から現在まで,本件商品を少なくと
も8586個販売した。原告らは,被告ブライトの本件各行為がなければ,15
同時期,2UNDR商品を同数個販売することができた。また,2UND
R商品1個当たりの原告アイインザスカイの利益は1200円を下らな
い。
したがって,本件各行為により原告アイインザスカイの受けた損害は,
商標法38条1項類推適用により1030万3030円となる。20
商標法38条2項類推適用に基づく損害額
被告ブライトは,平成28年8月頃から現在まで,本件商品を少なくと
も8586個販売した。また,本件商品1個当たりの被告ブライトの利益
は1500円を下らない。
したがって,本件各行為により原告らの受けた損害は,商標法38条225
項により1287万8788円と推定されるところ,原告アイインザスカ
イはその5分の4である1030万3030円を請求する。
弁護士費用相当額の損害
弁護士費用相当額の損害は100万円を下らない。
合計(なお,)
原告アイインザスカイは,被告ブライトに対し,1130万3030円5
及びこれに対する平成30年1月1日から支払済みまで年5パーセント
の割合による遅延損害金の支払を求める。
エ原告アイインザスカイが被告Aに対して請求する損害額
上記のとおり,被告Aは被告ブライトとの共同不法行為責任(民法719
条1項前段)を負う。10
したがって,原告アイインザスカイは,被告Aに対し,被告ブライトと連
帯して1130万3030円及びこれに対する平成30年1月1日から支
払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告らの主張)
否認ないし争う。15
第3当裁判所の判断
1争点1(原告商標と本件標章の類否)について
のとおり,原告商標の指定商品には第25類の男性用下着が含ま
れるところ,本件商品は男性用下着であるから,本件商品は,原告商標の指定
商品と同一であると認められる。20
原告商標と本件標章の類否
ア原告商標は,「2UNDR」の標準文字からなる。これらを文字ごとにみる
と「ニ又はツー」「ユー」「エヌ」「ディー」「アール」との称呼を生じるが,
英語においては略語を作成する際に,原語が容易に推測できる場合に語中の
子音を残し,母音(a,i,u,e,o)を省略することがあること(甲225
6)に照らすと,「UNDR」について「UNDER」の略語であるとして,
「アンダー」との称呼を生じ,原告商標について「ツーアンダー」という称
呼が生じる場合もあるといえる。また,原告商標から直ちには特定の観念は
生じないが,「ツーアンダー」との称呼が生じる場合には,ゴルフで規定打数
より2打少ないとの観念も生じ得る。
イ本件標章1及び2が原告商標と同一ないし類似のものであることは,当事5
者間に争いがない。
ウ本件標章3は,「ツーアンダー」の文字からなるところ,これは原告商標に
おいて生じ得る称呼をカタカナで表記したものであり,称呼が同一であるこ
となどから,原告商標と本件標章3は全体として類似するものであると認め
られる。10
エ本件標章4は,「2undr(ツーアンダー)」の文字からなるところ,こ
れは,原告商標のアルファベットを大文字から小文字に変更した上で,その
生じ得る称呼を括弧書きにしたカタカナ文字で併記したものであり,称呼が
同一であることなどに照らし,原告商標と本件標章4は全体として類似する
ものであると認められる。15
オ本件標章5は,「2UNDR(ツーアンダー)」の文字からなるところ,こ
れは原告標章と同一のアルファベット文字に,その生じ得る称呼を括弧書き
にしたカタカナ文字で併記したものであり,称呼が同一であることなどに照
らし,原告商標と本件標章5は全体として類似するものであると認められる。
カ本件標章6は,別紙本件標章目録記載6のとおりであり,「2」と「UND20
R」の文字を横書きにして,それらの間に縦線を加えたものであるところ,
これは原告商標の「2」と「UNDR」の間にありふれた縦線を加えたもの
にすぎず,ひとまとまりの標章として捉えられ,称呼が同一であることなど
に照らし,原告商標と本件標章6は全体として類似するものであると認めら
れる。25
キ本件標章7は,別紙本件標章目録記載7のとおりであり,全体の左側半分
に「2」の文字を配置し,右側半分に上記「2」の文字の4分の1程度の大
きさの「U」「N」「D」「R」の文字を,「UN」を上段に,「DR」を下段に
配置して,それらの間に縦線を加えたものであるところ,これは,原告商標
の「UNDR」の文字のうち「UN」を上段に,「DR」を下段に配置した上
で,左側半分の「2」と右側半分の「UN」「DR」の間にありふれた縦線を5
加えたものであり,ひとまとまりの標章として捉えられ,称呼が同一である
ことなどに照らし,原告商標と本件標章7は全体として類似するものである
と認められる。
ク本件標章8は,別紙本件標章目録記載8のとおりであり,本件標章7の下
段に黒く塗りつぶされた横長長方形図形内に白色の「PERFORMANC10
EWEAR」の文字が表示されたものを配置したものである。このうち,
「PERFORMANCEWEAR」の部分は「2」「UN」「DR」の文
字に比べて相当に小さい表示であって,また,それらは「性能」,「衣服」な
どの意味を有する一般的な英単語であるから,本件標章8において,「2」
「UN」「DR」の部分が強く支配的な印象を与えるといえる。そして,その15
部分と原告商標は上記キのとおり類似するといえるから,原告商標と本件標
章8は全体として類似するものであると認められる。
ケ本件標章9は,別紙本件標章目録記載9のとおりであり,本件標章7の下
段中央付近に手書きされたような「SwingShift」の文字を配置
したものであるところ,「SwingShift」の部分は,「2」「UN」20
「DR」の文字に比べて極めて小さい表示であるから,本件標章9において,
「2」「UN」「DR」の部分が強く支配的な印象を与えるといえる。そして,
その部分と原告商標は上記キのとおり類似するといえるから,原告商標と本
件標章9は全体として類似するものであると認められる。
以上によれば,本件標章は原告商標と同一又は類似のものであると認められ25
るから,本件各行為は,いずれも指定商品について原告商標と同一又は類似す
る標章を使用等するものであり,原告商標権を侵害するか,侵害するとみなさ
れる(商標法37条1号,2号)。
2争点2(被告らの本件各行為がいわゆる真正商品の並行輸入として商標権侵害
の違法性を欠く場合に当たるか)について
上記1のとおり,被告ブライトの本件各行為は原告商標権を侵害するか,侵5
害するとみなされるものであるところ,被告らは,の被告らの主張
のとおり,いわゆる真正商品の並行輸入の抗弁を主張し,本件各行為はいずれ
も商標権侵害としての違法性を欠く場合に当たると主張する。
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
ア原告ハリスは,2UNDR商品に関し,各国に販売代理店を有している。10
例えば,カナダではランピョン社が,日本では原告アイインザスカイが,東
南アジアではマレーシア法人であるMSTGOLFSDN.BHD.が,
それぞれ2UNDR商品の販売代理店である。(争いがない)
ランピョン社は,平成27年1月頃,上記のMSTGOLFSDN.
BHD.の関連会社であるMゴルフ社との間で本件代理店契約を締結し,少15
なくとも平成28年2月5日時点では,Mゴルフ社は2UNDR商品につい
てのシンガポールにおける販売代理店であった。(,争いがない)
イ原告ハリス及びランピョン社は,ランピョン社において販売代理店に対
して意向表明書(LetterofIntent)を交付して2UN
DR商品の販売等についての代理店契約を締結することがあり,また,原20
告ハリスと販売代理店が正式に代理店契約を締結することもあった。(甲
30の1及び2)
原告ハリス及びランピョン社における2UNDR商品の各国の販売代
理店とのやり取りは,概ね以下のようなものであった。以下のとおり,販
売代理店は2UNDR商品を原告ハリス又はランピョン社から購入する25
ことができることとなっていたが,原告ハリス及びランピョン社において,
販売代理店に販売した2UNDR商品を管理していたことを認めるに足
りる証拠はない。(甲30の1及び2,弁論の全趣旨)
①原告ハリス及びランピョン社の代表者又はランピョン社の国際部に
属するリアンデュークから,各国の販売代理店に対して2UNDR商
品の次期モデルのデザインのイラストをメール(電子メールをいう。以5
下同じ。)で送信する。
②上記と同時又は後日にエクセル表をメールで送り,締切日までに注文
をするように促す。
③販売代理店契約で定められた一定期間の最低注文金額を満たす2U
NDR商品の注文が認められる。10
④各国の販売代理店が注文をすると,各国の販売代理店ごとに出荷前に
配達先の確認依頼をする。その際に先に決済をするため請求書がメール
で送られる。
⑤上記以外に,倉庫の在庫状況のお知らせメールや,年に1,2回倉庫
の在庫を安く提供することもある。15
ランピョン社とMゴルフ社は,平成27年1月頃,本件代理店契約を締
結し,本件代理店契約において,Mゴルフ社は一定期間に最低注文金額を
注文すること,シンガポール国内で販売すること,2UNDR商品等の販
売促進の努力をすることなどが定められた。本件代理店契約において,ラ
ンピョン社が販売した2UNDR商品のMゴルフ社における管理につい20
ての定めや,代理店契約解除後のMゴルフ社における2UNDR商品の販
売や在庫の処分等についての定めがあったことを認めるに足りる証拠は
ない。Mゴルフ社に対する意向表明書自体は,現在,見当たらないものの,
その頃の,ランピョン社と,Mゴルフ社とは別の販売代理店との間の意向
表明書においても,当該代理店は一定の領域で2UNDR商品等を販売で25
きること,ランピョン社がマーケティング資料やパンフレット,販売ツー
ルを提供し,販売代理店が宣伝と販売に最善を尽くすことなどが定められ
ていたが,ランピョン社が販売した2UNDR商品の販売代理店における
管理についての定めや,代理店契約解除後の販売代理店における2UND
R商品の販売や在庫の処分等についての定めはなかった。(甲30の1及
び2)5
Mゴルフ社は,ランピョン社に対し,平成27年2月に1248点,同
年6月に1200点の2UNDR商品を注文し,ランピョン社は,中国の
工場で製造した2UNDR商品をMゴルフ社に販売した。しかし,Mゴル
フ社は,その後,2UNDR商品を注文せず,売上げ等の報告もせず,M
ゴルフ社の代表者に対してメールが送信されてもその返信をしなかった。10
(前提事実)
ランピョン社は,Mゴルフ社が販売代理店として全く活動していないと
判断し,原告ハリス及びランピョン社の代表者は,平成28年5月上旬,
Mゴルフ社に対して本件代理店契約を解除する旨のメールを送信して,本
件代理店契約が解除された。同メールにおいて2UNDR商品の在庫の処15
分等を指示したことを認めるに足りる証拠はない。(甲30の1及び2,
弁論の全趣旨)
ウランピョン社は,上記のとおり,定期的に,日本を含む各国の販売代
理店に対して新商品等を知らせるメールを一斉に送信するなどしていた。こ
れらのメールでは,添付ファイルとして,2UNDR商品のカタログや,特20
定の時点で工場から直送配送することができる2UNDR商品のリスト等
が付されることもあった。(乙23,24(いずれも枝番を含む。),33)
ランピョン社は,平成28年5月6日,各国の販売代理店に対し,同年6
月1日の工場出荷が遅れることなどを知らせるメールを送信し,同メールは
Mゴルフ社にも送信された。(乙24の2,33)25
ランピョン社は,平成28年5月29日,各国の販売代理店に対し,工場
から直送される商品の注文期限などを知らせるメールを送信したが,同メー
ルは,Mゴルフ社に対しては送信されず,その後も,Mゴルフ社に対してラ
ンピョン社から上記の定期的な一斉送信メールが送信されることはなかっ
た。(甲19ないし23の2)
エランピョン社は,令和元年5月3日,Mゴルフ社に対し,本件訴訟に関連5
して,被告ブライトに本件商品の在庫品を売却したことの正当性を説明する
よう求めるメールをした。これに対し,Mゴルフ社は返信をせず,ランピョ
ン社は,同月16日に回答を催促するメールをした。Mゴルフ社は,同日,
ランピョン社に対し,確認をして返信する旨のメールをしたが,その後,M
ゴルフ社がランピョン社又は原告ハリスに連絡をすることはなかった。(甲10
31の1及び2)
原告ハリス及びランピョン社は,平成28年5月より後は,上記のメール
をした令和元年5月3日まで,Mゴルフ社に対して連絡をしたことはなかっ
た。
なお,本件訴訟は,平成30年11月に提起され,被告らは,平成31年15
4月に提出した準備書面で,本件商品がMゴルフ社から購入したものである
として,いわゆる真正商品の並行輸入の抗弁を主張した。(弁論の全趣旨,当
裁判所に顕著な事実)
オ被告ブライトは,ゴルフ用品を中心としたスポーツ用品の卸売りや小売り
販売,インターネット上での通信販売等を行っており,Mゴルフ社との間で20
は30年以上にわたって様々なブランドの商品を輸入するなど,継続的な取
引関係にあった。(乙42)
Mゴルフ社は,平成28年5月23日,被告らに対し,新たに取扱いを開
始したブランドとして2UNDR商品を紹介し,2UNDR商品の春季カタ
ログ(ただし,2015(平成27)年のもの)の電子ファイル,本件商品25
が紹介されているニュース記事,Mゴルフ社が保有する2UNDR商品の在
庫及び価格表をメールで送信した。Mゴルフ社は,被告らに対し,上記のカ
タログが最新のものでないことは述べなかった。(乙15,39,40,42,
48,49,50)
被告ブライトは,Mゴルフ社から,平成28年5月27日に380点,同
年9月28日に38点,同年10月7日に1969点の2UNDR商品であ5
る本件商品を購入し,輸入した(本件輸入行為)。本件商品は,箱型のパッケ
ージで包装されたものであった。
カ被告ブライトは,遅くとも平成28年8月頃から平成29年12月15日
頃までの間,本件各サイト及び実店舗において,箱型のパッケージの包装の
まま,本件商品を販売するとともに(本件販売行為),本件商品に関する広告10
に本件標章を付して電磁的方法により提供した(本件広告行為)。(前提事実

上記期間の本件広告行為の概要は,以下のとおりであった。(甲2,3(い
ずれも枝番を含む。),弁論の全趣旨)
Yahoo!ショッピングの表示の概要15
①タイトルタグに本件標章1,3及び4が用いられている。
②ウェブページ上部に表示される,ウェブサイトのツリー構造や現在表
示されているウェブページの位置を示すタグに,本件標章2,3及び5
が用いられている。
③本件商品を販売するためのウェブページに,その種類に応じて本件標20
章6又は7が付された本件商品の画像が掲載されている。その画像の左
上部にはロゴマークとして本件標章8が表示され,右側には本件商品の
商品名やサイズ,色等とともに本件標章1,3及び4が表示されている。
上記の画像や文章付近に,黄色の四角枠の中に赤字で「訳あり」と記載
されているロゴマークや,【訳あり/パッケージ汚れ】,【高性能アンダ25
ーウェア】という表示がある。
楽天市場の表示の概要
①タイトルタグに本件標章1,3及び4が用いられている。
②商品等を検索ないし表示するために列記されているメンズウェアの
ブランド名の一つとして,本件標章5が表示されている。
③ウェブページの上部に商品等の紹介や特売品の広告を目的とした複5
数のバナーが表示されており,そのうちの一つに,ロゴマークとして本
件標章8が表示され,本件標章6が付された本件商品の画像が表示され,
「高性能アンダーウェア訳あり品大放出!!」などと記載されたバ
ナーがある。
④本件商品を販売するためのウェブページに,その種類に応じて本件標10
章6又は7が付された本件商品の画像が掲載されている。その画像の左
上部にはロゴマークとして本件標章8が表示され,右側には本件商品の
商品名やサイズ,色等とともに本件標章1,3及び4が表示されている。
上記の画像や文章付近に,黄色の四角枠の中に赤字で「訳あり」と記載
されているロゴマークや,【訳あり/パッケージ汚れ】,【高性能アンダ15
ーウェア】という表示がある。
⑤上記④の本件商品の画像が表示された部分の下には,本件標章9が付
された本件商品のパッケージの画像と,黄色の四角枠に赤字で「訳あり」
と表記されたロゴマークと,「パッケージ汚れ。新品未使用ですが…シ
ールを剥がした様な汚れがあります。※汚れ箇所は商品により異なりま20
す。商品には問題はありません。ご理解の上,ご注文ください。」という
記載がある。
キ被告ブライトは,本件商品のうち,「2undr(ツーアンダー)メンズ0
1SWINGSIFTLONGLEG」を,1点当たり2980円
(税込価格。以下同じ。)で販売していたが,その後,遅くとも平成28年125
2月15日頃には当該商品の販売価格を1点当たり2480円に変更し,平
成29年1月頃には当該商品の販売価格を1点当たり1980円に変更し
た。(甲32(枝番を含む。),乙51,52,弁論の全趣旨)
事実認定の補足説明
原告らは,被告らがMゴルフ社から本件商品を購入した当時,本件代理店契
約は解除されていてMゴルフ社は2UNDR商品の販売代理店ではなかった5
と主張するのに対し,被告らはそのような事実はないと主張する。
のとおり,原告ハリス及びランピョン社の代表者は平成28年5
月上旬にMゴルフ社に本件代理店契約を解除する旨のメールを送信した。そし
て同ウのとおり,同月6日を最後に,各国の販売代理店に送信されていた原告
ハリスの商品に関する一斉送信メールがMゴルフ社に送信されなくなってお10
り,その後,令和元年5月3日まで両社の間で連絡が取られた形跡がないこと
に照らせば,本件代理店契約は平成28年5月上旬に解除され,被告ブライト
がMゴルフ社から初めて本件商品を購入した同月27日には,本件代理店契約
は解除されていたと認めるのが相当である(上記。
本件輸入行為の違法性について15
ア商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品につ
き,その登録商標と同一又は類似の商標を付したものを輸入する行為は,許
諾を受けない限り,商標権を侵害する。しかし,そのような商品の輸入であ
っても,①当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾
を受けた者により適法に付されたものであり(以下「第1要件」という。),20
②当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は
法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,
当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって(以下
「第2要件」という。),③我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商
品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者25
が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的
に差異がないと評価される場合(以下「第3要件」という。)には,いわゆる
真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠く(最高
裁平成14年(受)第1100号同15年2月27日第一小法廷判決・民集
57巻2号125頁)。
イ本件商品は,ランピョン社から2UNDR商品の販売代理店であったMゴ5
ルフ社に販売されたものであった。本件代理店契約
において,代理店契約の解除後の販売代理店における販売や在庫の処分等に
ついての定めはなく,また,本件代理店契約の解除後,ランピョン社又は原
告ハリスがMゴルフ社に対して在庫の処分等について指示をしたことはな
かった。他方,各国の販売代理店に対して同じ2UNDR商品のカタログや10
注文のための商品のリストが送付されていたこと(同ウ)から,我が国で販
売される2UNDR商品が他国で販売される2UNDR商品と比べて格別
の品質等を有していたとは認められず,2UNDR商品の販売代理店の販売
地域の制限が,販売政策上の合意を超えて,2UNDR商品の品質の維持や
管理等と関係することをうかがわせる事情は見当たらない。また,本件商品15
は箱型のパッケージに包装された男性用下着であり,通常は流通の過程でパ
ッケージ内の商品自体の品質が劣化するものではなく,また,本件で,流通
の過程で商品の品質を変化させるおそれが存在したことを認めるに足りる
証拠はない
そして20
社と原告ハリスとは実質的には一体であるともいえる。
ウ第1要件について
本件標章が付されていた本件商品は,ランピョン社が代理店契約に基づい
てMゴルフ社に販売したものであった。
本件商品を被告ブライトがMゴルフ社から購入したのは,上記25
おり本件代理店契約の解除後であるが,ランピョン社がMゴルフ社に販売し
た2UNDR商品に対する上記イのとおりのランピョン社の管理内容等に
照らし,このことによって,原告商標の出所表示機能が害されることになる
とはいえない。また,本件代理店契約では,Mゴルフ社の販売地域はシンガ
ポールに限定されていたが,上記イのとおり,そもそも我が国で販売される
2UNDR商品が他国で販売される2UNDR商品と比べて格別の品質等5
を有していたとは認められず,販売地域の制限が本件商品の品質の維持や管
理等と関係していたとも認められないから,Mゴルフ社の販売地域が限定さ
れていたことによって原告商標の出所表示機能が害されることになるとは
いえない。
これらによれば,本件商品に付された本件標章は,外国における商標権者10
である原告ハリスから使用許諾を受けたランピョン社又はランピョン社と
実質的には一体ともいえる原告ハリスによって,適法に付されたものである
ということが相当である。
したがって,本件輸入行為は第1要件を具備するものと認められる。
エ第2要件について15
などの海外における商標
権者と日本における商標権者はいずれも原告ハリスであり,本件標章は原告
商標と同一又は類似のものであるから(上記1),それらは同一の出所を表
示するものであるといえる。
したがって,本件輸入行為は第2要件を具備するものと認められる。20
オ第3要件について
本件標章が付された本件商品は,本件代理店契約に基づきランピョン社に
よってMゴルフ社に販売されたものである。そして,ランピョン社と原告ハ
リスは実質的には一体ともいえた。
本件商品が被告ブライトによりMゴルフ社から購入されたのは,本件代理25
店契約の解除後であるが,ランピョン社がMゴルフ社に販売した2UNDR
商品に対する上記イのとおりのランピョン社の管理内容等に照らし,このこ
とによって,原告商標の品質保証機能が害されることになるとはいえない。
また,本件代理店契約では,Mゴルフ社の販売地域はシンガポールに限定さ
れていたが,上記イのとおり,そもそも我が国で販売される2UNDR商品
が他国で販売される2UNDR商品と比べて格別の品質等を有していたと5
は認められないこと,Mゴルフ社の販売地域の制限が本件商品の品質の維持
や管理等と関係するとも認められないこと,本件商品が運送中に品質が直ち
に劣化するものではない男性用下着であることなどから,そのことによって
原告商標の品質保証機能が害されることになるとはいえない。
これらによれば,我が国の商標権者である原告ハリスは,直接的に又は少10
なくともランピョン社を通じて本件商品の品質管理を行い得る立場にあっ
て,本件商品と2UNDR商品の日本における販売代理店が販売する商品と
は登録商標の保証する品質において実質的に差異がないといえる。
したがって,本件輸入行為は,第3要件を具備するものと認められる。
カ原告らは,被告ブライトが本件商品を購入したのが本件代理店契約の解除15
後であること,本件代理店契約には販売地をシンガポールとする販売地制限
条項があることを挙げて,本件輸入行為が違法性を欠くことにはならない旨
主張するが,上記ウ,オに照らし理由がない。
また,原告らは,被告ブライトの広告に「訳あり/パッケージ汚れ」など
という表示があり,本件商品の包装が汚れており,シールをはがしたような20
跡があり,本件商品は原告アイインザスカイが販売する2UNDR商品に比
して著しく安価であることから,本件輸入行為は原告商標や本件標章の出所
表示機能及び品質保証機能を害すると主張する。しかし,本件商品の需要者
は,本件標章が付されることによる通常期待される品質を前提として,安価
になっているのは上記事情によるものであると認識すると考えられ,上記事25
情によって原告商標の出所表示機能や品質保証機能が害されるとはいえず,
上記主張は採用できない。
さらに,原告らは,Mゴルフ社は本件代理店契約の解除により正規の販売
代理店ではなくなったため,本件商品は欠陥等があっても原告ハリスから保
証を受けられないから,原告商標の出所表示機能や品質保証機能が害される
と主張する。しかし,商標権者から保証を受けられるか否かが並行輸入の場5
面における商標の出所表示機能や品質保証機能に直ちに影響するとはいえ
ないし,本件において,特定の商品について欠陥等の保証をすることについ
て原告ハリスが日本国内で独自の信用を構築していたと認めるに足りる証
拠もない。原告ら主張の事情によって原告商標の出所表示機能や品質保証機
能が害されるとはいえず,原告らの主張は採用できない。10
キ小括
以上によれば,被告ブライトの本件輸入行為は,いわゆる真正商品の並行
輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠く適法なものであると認
められる。
本件販売行為,本件所持行為及び本件広告行為の違法性について15
ア商標が付された商品の輸入行為に実質的違法性がないと認められた場合
において,その輸入行為後に当該商品を販売し,また,その販売のための広
告に当該商標等を付する行為は,それらの行為自体によって商標権の出所表
示機能や品質保証機能を新たに害する事情がないといえるときは,違法性が
阻却されると解するのが相当である。20
前提事実によれば,被告ブライトは,Mゴルフ社から輸入した本件
商品について,商品や包装のパッケージに改変を加えることなく本件販売行
為をした。このような販売の態様に照らせば,本件販売行為は,その行為自
体によって新たに原告商標の出所表示機能や品質保証機能を害するものと
はいえない。25
また,被告ブライトは,
ころ,本件広告行為においては本件商品を販売するために必要であると通常
想定される態様により本件標章が使用されていると認められる。そうすると,
その使用は,新たに原告商標の出所表示機能や品質保証機能を害するものと
はいえない。
したがって,被告ブライトの本件販売行為及び本件広告行為は,いずれも5
商標権侵害としての実質的違法性を欠く適法なものであると認められる。
イ原告らは,本件広告行為において,本件標章8が本件商品の左上に表示さ
れているところ,本件標章8は原告商標と異なる表示であり,原告商標と異
なる標章を本件商品の写真と別個に表示することは,出所表示機能を害する
と主張する。しかし,上記1のとおり,原告商標と本件標章8は類似するも10
のであるから同一の出所を表示するものといえる。そして,本件各サイトで
は,本件標章8は本件商品の画像に近接して表示されていることから,その
使用が本件輸入行為とは別に,新たに原告商標の出所表示機能や品質保証機
能を害するものとはいえない。原告らの上記主張は採用できない。
原告らは,本件各サイトの「訳あり/パッケージ汚れ」という表示は商標15
権者の意思によらずに流通した商品であることを需要者に想起させるもの
であるから,品質保証機能を害するものであると主張する。しかし,「訳あり
/パッケージ汚れ」という表示によって原告商標の品質保証機能が害されな
いことは,上記カで説示のとおりである。原告らの上記主張は採用できな
い。20
ウ被告ブライトの本件販売行為,本件広告行為は適法であると認められ,本
件販売行為や本件広告行為と異なる態様で本件商品の販売及び広告におい
て本件標章が使用されるおそれがあることを認めるに足りる証拠もないか
ら,被告ブライトが本件商品を譲渡や引き渡しのために所持していたとして
も,それは適法なものであるといえる。25
結論
以上によれば,本件各行為は,いずれも商標権侵害としての実質的違法性を
欠き,適法なものであると認められる。
第4結論
よって,原告らの請求は,その余を判断するまでもなくいずれも理由がないこと
から,主文のとおり判決する。5
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官柴田義明
裁判官佐伯良子
裁判官佐藤雅浩15
(別紙)
原告商標権目録
登録番号商標登録第5696029号
出願日平成26年3月13日5
登録日平成26年8月22日
商標2UNDR(標準文字)
商品及び役務の区分の数1
商品及び役務の区分第25類男性用下着,男性用ズボン下,肌着,ボクサーブ
リーフ,ボクサーショーツ,男性用水着,男性用水泳着,男10
性用ボード用ショートパンツ,下着,水泳着,被服,運動用
特殊衣服
(別紙)
商品目録
男性用下着,男性用ズボン下,肌着,ボクサーブリーフ,ボクサーショーツ,男
性用水着,男性用水泳着,男性用ボード用ショートパンツ,下着,水泳着,被服,5
運動用特殊衣服
(別紙)
本件標章目録
1本件標章1
2undr5
2本件標章2
2UNDR
3本件標章310
ツーアンダー
4本件標章4
2undr(ツーアンダー)
5本件標章5
2UNDR(ツーアンダー)
6本件標章6
7本件標章7
8本件標章85
9本件標章9
以上

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