弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人松岡良俊の控訴趣意は記録に編綴されている同弁護人提出の控訴趣意書記
載のとおりであるからこれを引用する。
 弁護人の控訴趣意第一について。
 本件告発は国税犯則取締法第十七条第一項に基いてなされたものであつて通告が
その前提となつていることしかも該通告は同法第十四条第一項に適合してなさるべ
きことは所論のとおりである。弁護人は本件について前示通告があつたか否かが不
明である旨を主張するけれども本件記録中の唐津税務署長大蔵事務官A作成の告発
書中には被告人に対し国税犯則取締法第十四条に基き通告したが履行しないので告
発する旨の記載があるのであるからこれにより該通告が適法に行われた事実を明認
し得るのであつて此の点に関し原審の審理に不尽の廉があつたとは謂われないのは
勿論本件公訴提起を無効として棄却すべきいわれもなく原判決には法令の適用を誤
つた違法も存しない。論旨は採用に値したい。
 弁護人の控訴趣意第二について。
 原判決添附別表1乃至4の犯罪事実が昭和二十三年八月四日から同年十二月五日
までのものであることは右別表に照し明白である。しかして又右犯行当時に効力の
存した昭和二十三年十二月二十一日法律第二六二号による改正前の物品税法第十八
条には物品税の逋脱犯として情状により二つの処断方法を規定し先ず其の第一項に
逋脱し又は逋脱せんとした税金の五倍に相当する罰金に処すべき旨次に其の第二項
に五年以下の懲役若しくは逋脱し又は、逋脱せんとした税金の五倍を超え十倍以下
に相当する罰金に処し又は懲役及罰金を併科することを得べき旨を夫々規定してい
ることは所論のとおりである。弁護人は右法条は第一項の罪と第二項の罪と二個の
犯罪を規定したものであつて本件はその第一項に該当する罪であるからこれが時効
は三年を以て完成する<要旨第一>旨を主張するけれども同法条第一項と第二項とは
単に犯罪の情状により処断刑をことにする旨を明示したに止まり右別個
の犯罪を規定しその処断刑を定めたものではない。従つて裁判所はこれが量刑に当
つては単に犯情に従い右第一、二項のいずれによるべきかを決定すれば足りるので
ある。されば右物品税法第十八条の時効期間は刑事訴訟法第二百五十一条に則りそ
の重い刑に従うべく同法第二百五十条により五年と解するのが相当である。尚所論
の如く本件時効期間が三年であると仮定しても本件記録中の唐津税務署長大蔵事務
官A作成の告発書及び郵便物配達証明書を綜合すれば被告人に対しては国税犯則取
締法第十四条第一項による本件物品税逋脱事件の適法な通告が最初の犯行時より見
ても一年九月以内である昭和二十五年五月三日送達された事実が明白であるから前
示日時において本件の時効は国税犯則取締法第十五条によりこれを中継したものと
認められ本件の公訴が右日時より二年八月以内である昭和二十七年十二月二十六日
なされたことは本記録中の起訴状の唐津簡易裁判所受付印に徴し明認されるからそ
の時効は完成に至らないこと明瞭である。論旨は理由がない。
 弁護人の控訴趣意第三について。
 原判示事実は「被告人は……共謀の上……右別表3、5、7の事実についてはこ
れを紙片に記載して秘匿しながら正規の帳簿には記載せず且つ毎月佐賀県唐津税務
署に提出すべき課税標準額申告書を提出せず……」と<要旨第二>謂うのであつて記
録を精査するに前示別表3、5、7、の分については被告人等は原判示の期間脱税
の目的の下にその製品の移出販売の事実を正規の帳簿に記載せずこれを
二重帳簿的性格を有する紙片にメモしその精算済に係る紙片は順次これを破棄し毎
月佐賀県唐津税務署に提出すべき課税標準額申告書を提出しなかつたこと明瞭であ
る。しからば右被告人の所為が旧物品税法第十八条所定の不正行為に該当すること
勿論である。原判決には法令違反又は事実誤認の違法は存しない。論旨は採用に値
しない。
 弁護人の控訴趣意第四について。
 原判決がその別表1乃至7の逋脱犯を認定し各犯罪事実につき円未満の端数の金
額を含む罰金刑を言渡したこと又円未満の小額通貨は昭和二十八年七月十五日法律
第六十号小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律第三条第一項により同
年十二月三十一日限りその通用を禁止されていることは所論のとおりである。しか
し原判決の量刑は旧物品税法第十八条第一項の規定に基き原判決別表1乃至7の逋
脱税額の五倍に相当する罰金額を算定しているのであつてもとよりこれを違法の措
置と見るべきではないのみならず前記小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関す
る法律第十一条第一項には債務の支払金の端数計算につき五十銭未満を切り捨て五
十銭以上一円未満は一円として計算する旨その第二項には前項の規定は国及び公社
等の収納支払の場合にはこれを適用しない旨を各規定し又昭和二十五年三月三十一
日法律第六十一号(昭和二十八年七月法律第六十号附則第七項により一部改正)国
庫出納金等端数計算法第二条第一項には国及び公団等が一時に収納し又は支払う場
合においてその収入金又は支払金の金額に五十銭未満の端数があるときはその端数
金額を切り捨て五十<要旨第三>銭以上一円未満の端数があるときはその端数金額を
一円として計算する旨を規定しているのであるから一円未満の端数金額
を含む罰金の執行は前記国庫出納金等端数計算法第二条に基き其の五十銭未満の部
分についてはその端数金額を切り捨て五十銭以上一円未満の部分についてはその端
数金額を一円として計算して行われるものと解すべきである。従つて円未満の罰金
といえども完納不能とは云えない。論旨は理由がない。
 弁護人の控訴趣意追記について。
 所論は本件の犯情憫諒すべきものがあり御寛大に願うと謂うのであるが原判決の
刑は旧物品税法第十八条所定刑中最低額であつてこれ以下に減軽することは法の許
容しないところである。論旨は採用しない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十六条に従い、本件控訴を棄却することとし主文の
とおり判決する。 (裁判長判事 下川久市 判事 青木亮忠 判事 鈴木進)

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