弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の主位的請求を棄却する。
2被告は,原告に対し,86万0857円及びこれに対する平
成20年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
3原告のその余の予備的請求を棄却する。
4訴訟費用は,被告の負担とする。
5この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,86万9489円及びこれに対する平成20年8月
21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,原告が,取締役を解任した被告に対し,主位的に不法行為による
損害賠償請求権,予備的に取締役委任契約の終了による預り金返還請求権に
基づき,被告が持ち出した原告の売上金等合計168万3429円のうち8
6万9489円及びこれに対する不法行為後又は催告期間の末日の翌日であ
る平成20年8月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延
損害金の支払を求める事案である。
2争いのない事実等(証拠等を掲げたもののほかは当事者間に争いがない。)
(1)当事者
ア原告は,美容院・理容院等の経営等を目的とする株式会社(特例有限
会社)であり,秋田市aで美容室Z(以下「本件店舗」という)を経営
している。
イ被告は,原告の設立日である平成17年5月23日から平成20年
7月30日まで,原告の代表取締役の立場で本件店舗の営業を担当し
ていた美容師である。
(2)被告は,同日午前,本件店舗で管理していた現金のうち,別紙内訳表
の番号1~12の合計額である167万6857円を持って,本件店舗
を後にした。(被告本人)
(3)原告は,同日午後1時ころ株主総会において被告を原告の取締役から
解任,同月31日付けで被告に対して解任した旨の通知を発送した。被
告は,同年8月1日ころ,上記通知を受け取った。(甲10~12,弁
論の全趣旨。この解任の効力自体については争いがない。)
(4)被告は,原告に対し,同月5日ころ,前記解任手続につき非難すると
ともに,前記(2)の預り金については,自己の役員報酬,経費の立替分
及び原告への貸付金を差し引いた上で,残りを引き続き預かる旨連絡し
た。(甲2)
(5)原告は,被告に対し,同月11日ころ,別紙内訳表の番号1~14の
合計額である168万3429円から,被告の7月分の報酬額21万3
940円及び被告の原告に対する貸付金60万円の合計81万3940
円を差し引いた86万9489円を,同月20日まで原告に支払うよう
請求した。(甲1)
(6)被告は,原告に対し,平成21年6月18日の本件口頭弁論期日にお
いて,原告に対する以下の債権(以下これらを合わせて「被告主張自働
債権」という。)をもって,原告の預り金返還請求権168万3429
円と対当額で相殺する旨の意思表示をした。
ア次の貸付分等の合計107万6492

(ア)平成20年7月分の報酬24万円
(イ)原告に対する貸付金60万円
(ウ)報酬未払分合計20万9920円
(エ)従業員給与未払立替分2万円(平成20年7月分)
(オ)経費立替分6572円
イ原告による正当理由なき取締役解任に伴う損害賠償金288万

3争点
(1)被告が持ち出した金員の額(争点①)
ア原告の主張
別紙内訳表の番号13については,総勘定元帳上の小口現金残高が
5902円であったのに対し,店舗には全く残っていなかったので,
被告が持ち出したものである。
別紙内訳表の番号14については,毎日朝現金で20万円を準備し
ているが,営業終了後の残高を実際使用額と照合した結果670円不
足していたので,被告が持ち出したものである。
領収証がない経費支出につき該当するものもない。
イ被告の主張
被告が持ち出したのは別紙内訳表の番号1~12の合計額である1
67万6857円のみであり,別紙内訳表の番号13,14に対応す
る金員は持ち出していない。
別紙内訳表の番号13,14に対応する金員は,領収証は手元にな
いが,被告が本件店舗で使用するトイレットペーパーなどの雑費の支
払に充てたものと思われる。
(2)不法行為の成否(争点②)
ア原告の主張
被告は,別紙内訳表記載のとおり,正当な理由なく,自己の債権に
充当すると称して原告の現金或いは預金を個人的に領得したのである
から,被告の行為は故意の不法行為に該当し,原告は被告が領得した
のと同額の損害を被った。
仮に,別紙内訳表の各日付欄記載の日の時点での各持ち出しにつき,
被告に故意(自己に領得する意思)までは認められないとしても,平
成20年7月30日の持ち出しの時点では故意が認められる。
解任による損害賠償請求権は,被告の主張する充当行為時点ではま
だ発生しておらず,会社の資金を自己の将来発生するかもしれない会
社に対する損害賠償請求権に充当することは代表取締役の権限外の行
為である。
イ被告の主張
被告は,少なくとも平成20年7月30日の株主総会決議までは,
原告会社の代表取締役の地位にあり,その権限を有していたところ,
同日午前の時点で自ら保管していた原告の現金を,そのまま原告に対
する前記の債権に充当したものであり,法的には,相殺としての評価
ができる。
なお,正当理由なき取締役解任に伴う損害賠償金の発生時期は一般
に解任時に発生すると考えられるが,被告は,原告から取締役の解任
を議題とする株主総会の開催通知を受け取った時点で,多数派株主に
より,解任決議が強行されることが必至であると判断し,間近に発生
する正当な理由なき解任による損害賠償請求権の回収のための防衛策
として,同日一部充当させてもらったものである。
以上のとおり,解任後に,被告が新たに原告の現金や売掛金の回収
分などを持ち出したわけではないので,原告による不法行為構成の請
求は理由がないと考える。
(3)相殺(取締役委任契約の終了による預り金返還請求権に対する抗弁)
ア未払報酬等の自働債権の有無及び数額(争点③)
(ア)被告の主張
a平成20年7月分の報酬24万円
b原告に対する貸付金60万円
c報酬未払分合計20万9920円
平成18年10月~12月,平成19年1月~4月,同年6月,
7月の期間,原告代表者A(以下「原告代表者A」という。)か
らの一方的な指示により,約束されていた報酬が減額された分に
対応するものである。
d従業員給与未払立替分2万円(平成20年7月分)
e経費立替分6572円
別紙内訳表番号13,14の金額に対応するものである。
(イ)原告の認否・反論
a上記(ア)aについては,平成20年7月分の報酬額として,額面
金額21万6000円から所得税2060円を差し引いた21万
3940円の限度で認め,その余は否認する。
b上記(ア)bは認める。
c上記(ア)cは否認する。被告の報酬の減額は,原告の経営状態の
悪化等により,原告の取締役の話合いの結果決まったものであり,
被告もこれを了解していた。その後も減額した報酬につき被告から
異議が出たことはない。また,被告だけが減額されたものでもない。
d上記(ア)dは否認する。
e上記(ア)eは否認する。
原告は,上記の平成20年7月分の報酬額21万3940円と被告
からの借入金60万円の合計81万3940円については,被告が持
ち出した原告の売上金等合計168万3429円から支払を受ける
ことを認め,差引後の86万9489円につき返還を求めるものであ
る。
イ原告による正当理由なき取締役解任に伴う損害賠償金の発生の有無
及び数額(争点④)
(ア)原告の主張
a解任の正当理由の有無
被告を解任したのは以下の理由からであり,正当な理由があ
る。
①新会社設立及びフランチャイズ制度採用の経緯,理念,目
的は,株式会社Y(以下「Y」という。)と新会社がフラン
チャイズ契約を締結してXグループを形成して営業を展開し
ていくことによって,Xブランドを確立し,経営力を強化す
ること等にあり,新会社の設立とXグループへの参加は一体
であって切り離すことはできないものである。被告もその趣
旨に賛同して原告の設立に協力し,フランチャイズ契約を締
結したものである。
また,その資本関係からしても原告は被告個人の会社では
なく(原告はYの子会社である。),被告1人の判断でフラ
ンチャイズ契約を解除したりできる立場にない。
ところが,被告は,独断で,平成20年7月24日,フラ
ンチャイズ契約を解除し,Xグループから離脱しようとした
のであり,原告の状況,立場,株主構成等からして,被告に
は原告の経営に当たり障害となる客観的事由があった。
これが解任の主たる理由である。
②その他に,被告の現金管理等の杜撰さなども原告の取締役
として相応しくないと判断した理由である。
b任期の定めの有無と会社法339条2項の損害賠償請求の要件
仮に正当理由が認められない場合であっても,任期の定めのな
い取締役については,特段の事情がない限り損害は発生しないと
考える。任期の定めがある取締役の場合には,一応任期まで務め
ることができるという地位の補償,それまでの間報酬を得られる
という期待があるので,任期までの報酬が損害となると解される
が,任期のない取締役の場合はそのような保証がないので,特に
解任の不当性が強いといった特段の事情がない限り,原則として
解任による損害は発生しないと解すべきである。
(イ)被告の主張
a解任の正当理由の有無
被告に対しては,解任の具体的理由は示されておらず,原告が
主張するような解任理由は存在しない。
b任期の定めの有無と会社法339条2項の損害賠償請求の要件
特例有限会社では,取締役などの役員の地位につき,相当程度
永続することが想定されているのであり,被告のように任期に制限
が設けられていない取締役の場合,少なくとも以後1年間,取締役
の地位が存続するという期待は法的に保護すべきである。
したがって,損害賠償金の額は,解任当時被告が得ていた役員報
酬(月額24万円)の1年分である288万円を下らない。
第3当裁判所の判断
1前記争いのない事実等に,証拠(甲5,甲7,甲8,甲10,甲14,乙1,
原告代表者A,被告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認め
られる。
(1)被告は,平成17年5月まで,原告代表者Aが代表取締役を務めてい
るYの従業員として,Yが店舗展開していた本件店舗で美容師として働
いていた。
(2)被告は,同月23日,Yらと共同出資の上,原告を設立した。出資者
及び出資割合は,Y150口(1口1万円相当である。以下同じ。),
被告50口,被告の父50口,被告の元夫50口であった。
なお,被告解任時点では,被告の元夫の50口のうち35口をYが,
残りの15口を各5口ずつ,Yが展開するXグループの株式会社W,有
限会社V,株式会社Uが承継していた。
(3)原告とYは,同年7月4日,Yの営業する本件店舗の営業の全部を3
093万9000円で譲渡する旨の営業譲渡契約を締結した。
また,原告とYは,同日,原告がYに毎月純売上の3%をロイヤリテ
ィとして,毎月5万円を事務管理費として,毎月3万円を店名使用料と
して支払うこと等を内容とするフランチャイズ契約を締結した(以下「本
件フランチャイズ契約」という。)。
このころの原告の役員は,代表取締役に被告,取締役に原告代表者A,
B(Yの専務),C(有限会社Vの社長),被告の父,元夫という構成
であり,この構成は,途中で被告の元夫が辞任したほか,平成19年5
月1日,原告代表者Aが原告の代表取締役となり,以後代表取締役が被
告と原告代表者Aの2人になった以外は,被告解任時まで同じであった。
(4)被告は,平成20年4月以降,原告代表者Aから,伝票の記載が不明
確であり,一部に改ざんの疑いもあるとの指摘を受けた上,伝票を改ざ
んして売上げの一部を取得しているのではないかという疑惑を掛けられ
たことに不信感を募らせ,それを契機に本件フランチャイズ契約のロイ
ヤリティの額等の内容に疑問を強く抱くようになった。
(5)同年6月26日ころから,原告代表者Aが原告の売上通帳を保管する
ようになり,被告は,毎日の売上金を夜間金庫に入金し,翌日(休日の
時には翌営業日)それを通帳に入金するようになった。
(6)被告は,同年7月22日,後記のとおり本件フランチャイズ契約を解
除し,Xグループから独立することを念頭に,原告の代表者として自ら
原告の現金を管理する必要があると考え,同日時点での原告の預金を引
き出し,同月18日以降の夜間金庫への保管分と合わせて本件店舗で現
金で管理し始め,それ以降同月29日までの本件店舗の売上分も同様に
取り扱った。
(7)被告は,Yに対し,同月24日,原告の代表取締役として,本件フラン
チャイズ契約の解除と既払金の返還を求める請求文書を送付した。
(8)原告代表者Aは,原告の取締役であるB及びCの同意を得て,同月2
6日,被告解任のための株主総会を招集した。
(9)被告は,同月30日午前,被告主張自働債権に充当する意図で,本件
店舗で管理していた現金のうち別紙内訳表の番号1~12の合計額であ
る167万6857円を持って本件店舗を後にした(以下「本件持ち出
し行為」という。)。
2争点①(被告が持ち出した金員の額)について
被告が別紙内訳表の番号13,14に対応する金員を持ち出したと認める
に足りる的確な証拠は見当たらない。
3争点②(不法行為の成否)について
(1)前記認定事実のとおり,被告は,平成20年7月22日から同月30
日まで,原告の売上げ及び預金を本件店舗にて現金で管理していたもの
であるから,原告が主張するように,別紙内訳表の各日付欄記載の日に
被告が各金員を領得したとは認め難い。
(2)また,被告が同日午後1時の株主総会決議までは,原告の代表取締役
の地位にあり,原告の金員の保管権限を有していたこと(現金を置いた
まま本件店舗を後にするのも問題である。),原告が,被告に対し,事
後的に,原告の売上金等から,被告の主張する金員の一部について支払
を受けることを認めていることなどに照らせば,本件持ち出し行為を不
法行為法上の違法の評価を受ける程の社会的相当性を欠いた行為という
にはいささか疑問が残るのであって,取締役委任契約の終了による預り
金返還請求権の範疇の問題として検討すれば足りるものと考えられる。
(3)したがって,不法行為の成立を認めるのは相当でない。
4争点③(未払報酬等の自働債権の有無及び数額)
(1)被告は,平成20年7月分の報酬として24万円を主張するけれども,
証拠(甲4,甲14,原告代表者A)によれば,被告の同月分の報酬額
は,原告主張のとおり,21万6000円と認めるのが相当である(原
告主張のように所得税分2060円を差し引く根拠は見当たらない。)。
(2)また,被告は,報酬未払分として合計20万9920円を主張するけ
れども,証拠(甲4,甲14,原告代表者A)及び弁論の全趣旨によれ
ば,被告の報酬の減額は,原告の取締役の話合いの結果,被告も了解の
上でなされたものと認められるから,上記報酬未払分の存在は認められ
ない。
(3)さらに,被告は,平成20年7月分の従業員の給与2万円分を立て替
えたと主張するけれども,立替えの事実を認めるに足りる的確な証拠は
見当たらない上,一連の経緯の詳細が未だ明らかではなく,原告に支払
義務があったものかどうか疑問が残ることに照らせば,上記金員につい
て原告の返還義務を認めることはできない。
(4)前記(1)~(3)によれば,相殺に供する自働債権の存在は,争点④で
検討する取締役解任に伴う損害賠償金以外には,平成20年7月分の報
酬額21万6000円と原告への貸付金60万円の合計81万6000
円を超えては認められない。
5争点④(原告による正当理由なき取締役解任に伴う損害賠償金の発生の有
無及び数額)
(1)解任の正当理由の有無
前記争いのない事実等及び前記認定事実に,証拠(甲5~甲8,甲1
4,原告代表者A)及び弁論の全趣旨を総合すると,原告が主張すると
おり,原告の設立,Yから原告への本件店舗の営業譲渡,原告とYとの
フランチャイズ契約締結の経緯,主な目的は,Yが店舗展開する本件店
舗を子会社として独立させた上で,Yを頂点に同様に独立した他の店舗
と合わせて,Xグループを形成して営業を展開していくことにあり(営
業譲渡契約書(甲8)の第10条2項等にもそうしたことがうたわれて
いる。),上記各事項が極めて密接に関連していることが認められる。
また,前記認定事実のとおり,出資300口のうち185口をY,そ
の他15口を原告以外のYのグループ会社が占めているという原告の株
主構成(Yとそのグループ会社で3分の2に及ぶ。)及びYの代表取締
役や専務,グループ会社の社長が原告の取締役になっているという役員
構成に鑑みれば原告にとって,原告とYとのフランチャイズ契約を解除
することは極めて重要な問題であり,被告の一存で決定できるものでな
かったことは明らかである。
それにもかかわらず,被告は,被告の父を除く他の取締役の了解を得
ることなく,独断で,Yに対し,本件フランチャイズ契約を解除し,X
グループから離脱する旨の通知を送付したものであるから,原告におい
て取締役として職務の執行を被告に委ねることができないと判断するこ
ともやむを得ない,客観的・合理的な事情,すなわち被告の解任に関す
る正当事由が存在したと認めるのが相当である。
(2)任期の定めの有無と会社法339条2項の損害賠償請求の要件
ア会社法339条2項は,取締役の解任について株式会社が正当事由
のあることを立証できない場合に,株式会社に対し,解任されなけれ
ば残存任期中に得られたであろう取締役の利益(所得)の喪失の損害
賠償責任を認める特別の法定責任を定めた規定であり,具体的な任期
があることが損害賠償請求権発生の要件と解される。
この点,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下,
同法による改正前の商法を単に「旧商法」という。)257条1項但
書では,「任期ノ定アル場合ニ於テ」とされており,任期の定めがあ
ることが損害賠償請求権発生の要件であることが法文上明らかであっ
たところ,上記会社法339条2項ではこれに対応する文言はない。
しかしながら,これは,旧商法下では,株式会社の取締役について
任期が定められない場合があり得た(旧商法256条参照)ものの,
会社法下では,そもそも取締役等につき具体的な任期がないという場
合は想定されなくなった(会社法332条等参照)ために,敢えて任
期の定めがあるという文言が置かれなかったにすぎないと解される。
したがって,上記会社法339条2項は,具体的な任期があること
を損害賠償請求権発生の当然の前提としていると解するのが相当であ
る。
イ原告は,特例有限会社であり,弁論の全趣旨によれば,取締役の任
期につき定款上の定めがないことが認められる。
この点,廃止前の有限会社法の下では,取締役の任期につき法定の
制限はなく,定款上任期を定めなければ,辞任・解任等がない限り,
取締役であり続けたが,会社法の下でも,特例有限会社の取締役の任
期については,従前どおりの規制が適用される(会社法の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律18条)。
これらによれば,被告について,取締役の具体的な任期があったと
は認められない。
(3)前記(1)及び(2)のとおり,原告による被告の取締役解任には正当理
由があったと認められるし,仮に正当理由がないとしても,被告につい
て取締役の具体的な任期がなかったのであるから,被告が主張する原告
による正当理由なき取締役解任に伴う損害賠償金の発生は認められない。
6相殺の処理
(1)以上によれば,
ア受働債権
原告は,被告に対し,取締役委任契約の終了による預り金返還請求権
として167万6857円の債権を有する。
イ自働債権
他方,被告は,原告に対し,平成20年7月分の報酬額として,21
万6000円,原告への貸付金として60万円の合計81万6000
円の債権を有する。
(2)受働債権である原告の被告に対する債権は,被告解任時,すなわち同
月30日に発生したものであり,その発生の時から弁済期にある。他方
自働債権である被告の原告に対する債権のうち,平成20年7月分の報
酬支払請求権も同日弁済期が到来したものと解され,貸付金返還請求権
は同日以前に期限の定めがないものとして発生したものと解される。
したがって,上記各債権は,同月30日をもって相殺適状となったも
のである。
(3)そうすると,前記第2の2(6)の相殺の意思表示によって,被告の前
記(1)イの債権は全額消滅し,原告の前記(1)アの債権のうち,86万
0857円が残存することとなり,その限度でのみ相殺の効果がある。
7以上の次第であるから,原告の主位的請求である不法行為に基づく損害賠
償請求については理由がないから棄却し,原告の予備的請求である取締役委
任契約の終了による預り金返還請求については,86万0857円及びこれ
に対する催告期間の末日の翌日である平成20年8月21日から支払済みま
で民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある
から認容し,その余を棄却することとし,主文のとおり判決する。
秋田地方裁判所民事第1部
裁判官佐藤久貴

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