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平成28年1月27日判決言渡名古屋高等裁判所
平成27年(行コ)第36号退去強制令書発付処分等取消請求控訴事件
(原審・名古屋地方裁判所平成26年(行ウ)第66号)
主文
1原判決を取り消す。
2名古屋入国管理局長が平成25年12月24日付けで控訴人に対して
した出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく控訴人の異議の申出
には理由がないとの裁決を取り消す。
3名古屋入国管理局主任審査官が平成25年12月24日付けで控訴人
に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。
4訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
主文同旨
第2事案の概要
1本件は,フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)国籍を有する外
国人である控訴人が,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)入国
審査官から,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条4
号ロ(不法残留)に該当する旨の認定を受けた後,名古屋入管特別審理官から,
上記認定に誤りがない旨の判定を受けたため,入管法49条1項に基づき,法
務大臣に対して異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の委任を受けた名
古屋入管局長から,平成25年12月24日付けで控訴人の異議の申出には理
由がないとの裁決(以下「本件裁決」という。)を受け,引き続き,名古屋入
管主任審査官から,同日付けで退去強制令書発付処分(以下「本件処分」とい
う。)を受けたため,本件裁決及び本件処分の各取消しを求めた事案である。
原判決は,控訴人は入管法24条4号ロに該当し,出国命令対象者に該当
しない外国人である退去強制対象者(入管法45条1項)に当たると判断し
た上で,本件裁決に裁量権の範囲の逸脱又は濫用はなく適法であり,これを
前提としてされた本件処分も適法であるとして本件各請求をいずれも棄却し
たため,控訴人が控訴し,原判決を取り消して本件各請求をいずれも認容す
ることを求めた。
2前提事実,争点及び当事者の主張は,原判決「事実及び理由」の第2の2及
び3に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1控訴人が入管法45条1項の退去強制対象者に該当することについては,原
判決「事実及び理由」の第3の1に記載のとおりであるからこれを引用する。
2前提事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は,以下の
とおり付加訂正するほか,原判決10頁10行目冒頭から11頁22行目末
尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。
(1)原判決11頁5行目の「住んで」を,「定住し(なお,平成3年3月の
本邦への入国以来,フィリピンと本邦を行き来していた形跡はなく〔乙1,
2〕,仮放免後,Aと同居する以前に住んでいたアパートには平成10年
頃から1人で居住し,この間,住居を転々としていた形跡もない。)」と,
7行目の「送金した。」を,「両親の存命中はその医療費に充てるため,
両親の死後は墓の購入代金に充てるために送金した。控訴人は,長年にわ
たり日本で生活したことにより,日本語での日常会話に支障はなく,平仮
名と片仮名を読むこともできる。」と各訂正する。
(2)原判決11頁11行目の「原告は,」の次に,「婚姻届に必要な書類を
フィリピンから取り寄せつつあったところ,スーパーマーケットで食料品
を購入して自転車で自宅に帰る途中,警察官から声を掛けられて不法残留
の事実が発覚し,」を付加し,14行目の「乙8」を「乙8,9」と訂正
する。
(3)原判決11頁18行目末尾の次に,「Aは,当審において証人として出
廷し,仮放免後,約1年半にわたり控訴人と幸せな家庭生活を送っている
が,自分も控訴人もフィリピンで生活することは考えられない,今後も日
本における婚姻生活を維持したい旨供述している。」を付加する。
(4)原判決11頁22行目の「してきた。」の次に,「また,控訴人の妹二
人は,日本人男性と婚姻して名古屋市内で暮らしており,控訴人は,妹ら
とも電話で連絡を取り合うなど交流しており,平成25年11月6日に逮
捕された際には,まず妹に連絡し,妹がAに控訴人が逮捕された事実を伝
えた。」を付加し,同行目の「乙9」を「乙9,11」と訂正する。
3本件裁決の適否(裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合〔行政事件
訴訟法30条〕に当たるか)について
(1)前提事実及び上記の認定事実によれば,控訴人は,平成3年3月に満2
5歳で入国して以来,満48歳の本件裁決時まで人生の半分に近い22年
9か月余りの長きにわたり本邦に平穏に定住し,飲食店などに勤務して自
活してきたもので,日本語での日常会話に不自由はなく,交流する親族が
日本にいるなど,その生活は,既に日本社会に深く根付いていたといえる。
加えて,本件退去強制手続が開始される約2年半前から日本人男性である
Aと深く交際し,不法残留の容疑で逮捕される前月には婚姻の約束をし,
婚姻届に必要な書類をフィリピンから取り寄せつつあった間に逮捕された
ものであって,本件裁決の数日前ではあるがAと婚姻し,仮放免後は共同
生活を送っており,当審におけるAの証言態度やその内容に照らし,同人
らの婚姻意思は,本件裁決時において真摯なものであったことが推認され
る。
他方,本件全証拠によっても,控訴人が平成3年3月の入国以降,不法残
留罪(入管法70条1項5号)以外の違法行為を行っていた形跡はない(本
件では,在留期限である同月27日までに入管法70条1項4号の資格外活
動罪に該当する事由が生じたことを認めるに足りず,在留期間経過後の就労
の事実をもっては,在留資格の存在を前提とした同罪の成立は認められない
というべきである。)。
このように満25歳から満48歳まで長年にわたり本邦で平穏に生活し,
既に本邦に生活基盤を有するに至り,日本人男性と婚姻しようとしていた控
訴人に対し,職務質問によってたまたま不法残留の事実が発覚したからとい
って,退去強制手続に踏み切り,口頭審理前に婚姻が成立しているにもかか
わらず,これを重視せず,その生活基盤を根底から奪うことは,不法残留期
間の長さのみを消極的に考慮する余り,控訴人の本邦における生活実態を無
視し,人道的配慮に著しく欠けたものといわざるを得ない。
以上によれば,本件裁決は,基礎となる事実の評価が明白に合理性を欠く
ことにより,その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らか
であるから,裁量権の範囲をこえた場合に当たるというべきであり,違法な
ものというほかない。
(2)被控訴人は,控訴人が不法残留を継続するために就労し,フィリピンの
親族に金銭の送金を続けた事実を消極的に評価すべきとか,控訴人がフィ
リピンに帰国してもそこでの生活に支障はないなどと主張する。
しかし,上述したとおり,在留期間経過後の就労の事実は資格外活動罪に
該当しないのであるから,就労の事実そのものを犯罪視することはできない
し,本邦で生活する糧を得たり,フィリピンにいる両親の医療費や墓の購入
代金に充てたりするために働き,かつフィリピンへ送金すること自体は,人
道上やむを得ない行為といわざるを得ない。また,控訴人は,22年9か月
余りの長きにわたり本邦で生活し,この間,フィリピンへ帰国していた形跡
がなく,既にフィリピンの両親は死亡し,上記送金もその使途からして資産
として残存しているとは認め難いから,フィリピンへの親和性よりも本邦へ
の定着性の方がはるかに強いというべきである。かえって,控訴人の本邦で
の生活が長きにわたることや年齢など上記諸事情を考慮すると,いまさらフ
ィリピンに帰国してもそこでの生活に支障がないとはいいきれない。
以上によれば,被控訴人の上記主張は採用できず,他に,上記(1)の判断
を左右するに足りる事象はない。
(3)以上によれば,本件裁決には裁量権の範囲を超えた違法性があるという
べきであるから,その取消請求は理由がある。
4本件処分の違法性について
本件処分は,名古屋入管局長から本件裁決をした旨の通知を受けた名古屋
入管主任審査官が,入管法49条6項に基づいてしたものであるが,上記3
で説示したとおり,本件裁決に裁量権の範囲を超えた違法性があり,取り消
されるべきである以上,これを前提とする本件処分も違法というほかなく,
その取消請求は理由がある。
5以上によれば,控訴人の本件各請求はいずれも理由があるから認容すべきと
ころ,これらをいずれも棄却した原判決は失当であるからこれを取り消して
主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第4部
裁判長裁判官藤山雅行
裁判官秋武郁代
裁判官長谷川恭弘は,差し支えのため,署名押印することができない。
裁判長裁判官藤山雅行

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