弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件訴えのうち,高槻市事業公開評価会,高槻市営バス営業所売
上金不明事案特別調査員及び高槻市交通部に関する特別改革検討員
に関して公金の支出の差止めを求める部分を却下する。
2被告は,高槻市特別顧問に関して公金を支出してはならない。
3被告は,高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会に関して
公金を支出してはならない。
4被告は,高槻市立障害者福祉センター運営協議会に関して公金を
支出してはならない。
5被告は,高槻市採石等公害防止対策協議会に関して公金を支出し
てはならない。
6原告のその余の請求をいずれも棄却する。
7訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を
被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,Aに対し,395万7240円及びこれに対する平成25年1月2
4日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
2被告は,高槻市事業公開評価会に関して公金を支出してはならない。
3被告は,高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員に関して公金を支出
してはならない。
4被告は,高槻市交通部に関する特別改革検討員に関して公金を支出してはな
らない。
5主文第2項~第5項と同旨。
第2事案の概要
1本件は,原告が,高槻市(以下「市」という。)の設置する別紙「組織等目録」
記載の各組織等(以下「本件各組織等」という。)は地方自治法(以下「法」
という。)138条の4第3項所定の「附属機関」に当たるにもかかわらず,
本件各組織等が法律又は条例に基づくことなく設置されているのは違法であ
り,市長であるAは,故意又は過失により,本件各組織等の委員等に対する謝
礼金の支払に係る支出負担行為及び支出命令を自らし,又は指揮監督上の義務
を怠って市の職員に専決させ,これによって,市が損害を被った旨主張して,
市の執行機関である被告に対し,法242条の2第1項1号に基づき,本件各
組織等のうち上記目録記載ア~エ,コ,サ及びタの各組織等に関する公金の支
出の差止めを求めるとともに,同項4号本文に基づき,市が支出した上記謝
礼金相当額及びこれに対する不法行為の日の後である平成25年1月24日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延
損害金について,Aに対する不法行為に基づく損害賠償請求をするよう求める
住民訴訟である。
2法の定め
(1)附属機関の設置
普通地方公共団体は,法律又は条例の定めるところにより,執行機関の附
属機関として自治紛争処理委員,審査会,審議会,調査会その他の調停,審
査,諮問又は調査のための機関を置くことができる(法138条の4第3項
本文)。
(2)附属機関の職務権限
普通地方公共団体の執行機関の附属機関は,法律若しくはこれに基く政令
又は条例の定めるところにより,その担任する事項について調停,審査,審
議又は調査等を行う機関とする(法202条の3第1項)。
3前提となる事実(顕著な事実,当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁
論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア原告は,市の住民であり,市議会議員である。
イ被告は,市の執行機関(市長)である。
ウAは,遅くとも平成23年5月1日以降,市長の職にあり,弁護士であ
る。
(2)本件各組織等の設置とその根拠規定,報償費の支払等
本件各組織等は,以下の各項記載の要綱,訓令,要領又は規約の定めに基
づき設置されたものであり(なお,被告は,高槻市特別顧問との関係で,「高
槻市特別顧問の依頼に関する要綱」は,第三者への高槻市特別顧問への就任
の依頼について規定したものであり,高槻市特別顧問の設置を定めるもので
はない旨主張するが,上記要綱以外に高槻市特別顧問を置くことについての
要綱等の定めがあることをうかがわせる証拠もなく,就任依頼等を定める上
記要綱が高槻市特別顧問の設置根拠であるというべきである。),法律又は
条例に基づいて設置されたものではない。本件各組織等については,それぞ
れ,委員等に対する謝礼金(高槻市地球温暖化対策実行計画協議会及び高槻
市採石等公害防止対策協議会の委員に対する謝礼金については,一部,費用
弁償を含む。)が,報償費の名目で,以下の各項記載の支出負担行為及び支
出命令を経て,支払われた。
ア高槻市事業公開評価会
(ア)要綱の定め
「高槻市事業公開評価会実施要綱」(平成24年10月3日施行)に
は,要旨,以下のような定めがある。(甲B1)
a要綱は,市の事業に対する評価を多角化し,既存事業の見直しを進
めて効果的な市政運営の推進を図るため,高槻市事業公開評価会(以
下「評価会」ともいう。)に関し,必要な事項を定める。(1条)
b評価会では,市民又は学識経験者から6人以内の定数で選任される
評価者が対象事業について議論等を行って意見を述べ,学識経験者か
ら選任されるコーディネーターが評価者の意見の要旨を整理する。
(2~5条)
c市長は,評価会における評価を精査,検討した上で,施策や予算へ
の反映に向けて取り組む。(6条)
(イ)報償費の支払
a専決権を有する市の職員(以下「専決権者」という。)は,平成24
年7月13日及び同年10月23日,それぞれ,学識経験者から選任
された評価者に対して報償費として1人当たり日額9100円を支
払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同年10月23日頃,上記支出負担行為に基
づき16万3800円の支出命令を専決し,同年11月7日に同額が
支出された。
(乙B5の3,6の1・2)
bAは,同年8月13日,市民から選任された評価者に対して報償費
として1人当たり日額9100円を支払う旨の支出負担行為をした。
そして,専決権者は,同年10月24日頃,上記支出負担行為に基
づき3万6400円の支出命令を専決し,同年11月7日に同額が支
出された。
(乙B5の1,6の3)
c専決権者は,同年6月1日,コーディネーターに対して報償費とし
て日額9100円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同年10月31日頃,上記支出負担行為に基
づき6万3700円の支出命令を専決し,同年11月15日に同額が
支出された。
(乙B5の2,6の4)
イ高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員
(ア)要綱の定め
「高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員の依頼等に関する要
綱」には,要旨,以下のような定めがある。(甲C1)
a市の交通部市営バス営業所で発生した売上金の行方不明事案(以下
「本件売上金不明事案」という。)について市が行う調査に関し,専
門的な指導,助言等を行う者を高槻市営バス営業所売上金不明事案特
別調査員(以下「特別調査員」ともいう。)とし,市長が職員の身分
を有しない者にこれを依頼する。(2条,3条)
b特別調査員を依頼する期間は,本件売上金不明事案の調査が終了す
るまでとする。(4条)
c特別調査員は,指導,助言等を行うための準備行為として,職員等
関係者に対し事情聴取等を行うことができる。(5条,6条)
d特別調査員が指導,助言等を行った場合,市はその所要時間に応じ
た謝礼(2時間以内の場合2万2000円,2時間を超え3時間以内
の場合3万3000円,3時間を超え4時間以内の場合4万4000
円,4時間を超える場合5万5000円)を支給する。(6条)
e特別調査員の庶務は,コンプライアンス室において処理する。(8条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年5月1日頃,同月18日頃及び同月29日頃,
特別調査員に対して報償費として合計124万3000円を支払う旨の
支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同年6月12日頃,同月13日頃及び同年7月
12日頃,上記支出負担行為に基づき合計124万3000円の支出命
令を専決し,同年6月22日及び同年7月31日に合計124万300
0円が支出された。
(乙C4の1~3,5の1~4)
ウ高槻市特別顧問
(ア)要綱の定め
「高槻市特別顧問の依頼に関する要綱」には,要旨,以下のような定
めがある。(甲D1)
a市長は,市政の政策的又は専門的事項に関して意見聴取等を行うた
め,有識者(7名以内)に対し高槻市特別顧問(以下「特別顧問」と
もいう。)として適宜協力を依頼する。(2条,3条)
b特別顧問に対しては,日額1万5000円の謝礼を支給する。(4
条)
c本要綱の実施に関し必要な事項は,総合戦略室において処理する。
(6条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年4月23日,特別顧問に対して報償費として
1人当たり日額1万5000円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同月27日頃,上記支出負担行為に基づき7万
5000円の支出命令を専決し,同年5月15日に同額が支出された。
(乙D4,5)
エ高槻市交通部に関する特別改革検討員
(ア)要綱の定め
「高槻市交通部に関する特別改革検討員の依頼等に関する要綱」には,
要旨,以下のような定めがある。(甲E1)
a要綱は,市が行う高槻市交通部の組織体制等に関する改革(以下「本
件交通部改革」ともいう。)について,専門的見地からの意見聴取等
を行うことに関し,必要な事項を定めるものであり,専門的事項に関
する指導,助言等を行う者を高槻市交通部に関する特別改革検討員
(以下「特別改革検討員」ともいう。)とし,市長が職員の身分を有
しない者にこれを依頼する。(1条~3条)
b特別改革検討員に依頼する期間は,本件交通部改革に関する方策等
が策定されるまでとする。(4条)
c特別改革検討員が指導,助言等を行った場合,市はその所要時間に
応じた謝礼(2時間以内の場合2万2000円,2時間を超え3時間
以内の場合3万3000円,3時間を超え4時間以内の場合4万40
00円,4時間を超える場合5万5000円)を支給する。(6条)
d特別改革検討員に関する庶務は,総合戦略室において処理する。(8
条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年7月11日及び同年9月6日,特別改革検討
員に対して報償費として合計99万円を支払う旨の支出負担行為を専決
した。
そして,専決権者は,同月4日頃,同月20日頃及び同年10月12
日頃,上記支出負担行為に基づき合計99万円の支出命令を専決し,同
年9月14日,同月28日及び同年10月23日に合計99万円が支出
された。(乙E3の1~3,4の1・2)
オ高槻市行財政改革懇話会
(ア)要綱の定め
「高槻市行財政改革懇話会設置要綱」には,要旨,以下のような定め
がある。(甲F1)
a市が取り組むべき行財政改革の方策について幅広く意見を求めるた
め,高槻市行財政改革懇話会(以下「懇話会」ともいう。)を設置する。
(1条)
b懇話会は,市議会議員や学識経験者等から選任される12人以内の
委員をもって組織し,行財政改革大綱の見直しや行財政改革の進捗状
況に関することについて意見を具申する。(2条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年7月12日,懇話会の委員に対して報償費と
して1人当たり日額9100円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同年11月24日頃及び平成24年2月23日
頃,上記支出負担行為に基づき合計15万4700円の支出命令を専決
し,平成23年12月8日及び平成24年3月8日に合計15万470
0円が支出された。
(乙F3の1・2,4)
カ高槻市指定管理者選定委員会
(ア)訓令の定め
「高槻市指定管理者選定委員会規程」には,要旨,以下のような定め
がある。(甲G1)
a市の施設への指定管理者制度の導入等を検討するため,高槻市指定
管理者選定委員会(以下「選定委員会」ともいう。)を設置する。(1
条)
b選定委員会は,指定管理者制度の導入,指定管理者候補者の選定等
に関する事務を所掌する。(2条)
c選定委員会は,副市長その他の市の職員に加え,3人以内の学識経
験者によって組織され,委員長及び副委員長は,副市長2名がこれを
務める。(3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年6月6日及び平成24年5月10日,それぞ
れ,選定委員会の委員のうち対象者に対して報償費として1人当たり日
額9100円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,平成23年9月20日頃,同年11月1日頃,
平成24年5月21日頃及び同年7月23日頃,上記支出負担行為に基
づき合計7万2800円の支出命令を専決し,平成23年9月30日,
同年11月15日,平成24年5月31日及び同年7月31日に合計7
万2800円が支出された。
(乙G7の1~4,8の1・2)
キ高槻市地域情報化推進市民会議
(ア)要領の定め
「高槻市地域情報化推進市民会議設置要領」には,要旨,以下のよう
な定めがある。(甲H1)
a高槻市の地域情報化を適切に推進するため,高槻市地域情報化推進
市民会議(以下「市民会議」ともいう。)を設置する。(1条)
b市民会議は,学識経験者や市民代表者等から市長が選任する7人以
内の委員をもって組織され,地域情報化計画の推進等に関して協議し,
助言を行う。(2条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年11月2日,選定委員会の委員に対して報償
費として1人当たり日額9100円を支払う旨の支出負担行為を専決し
た。
そして,専決権者は,同月8日頃,上記支出負担行為に基づき6万3
700円の支出命令を専決し,同月14日に同額が支出された。ただし,
同月15日に1万8200円が返納された。
(乙H3の1・2,4)
ク高槻市入札等監視委員会
(ア)要綱の定め
「高槻市入札等監視委員会設置要綱」には,要旨,以下のような定め
がある。(甲I1)
a第三者の意見を反映することによって入札及び契約手続の透明性の
確保等を図るため,高槻市入札等監視委員会(以下「監視委員会」と
もいう。)を設置する。(1条)
b監視委員会は,学識経験者等から選任される委員3人によって組織
され,入札及び契約手続の運用状況等について審議を行い,必要に応
じて市長に意見を具申する。(2条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年11月9日,平成24年2月8日,同月28
日,同年4月26日及び同年7月26日,それぞれ,監視委員会の委員
に対して報償費として1人当たり日額9100円を支払う旨の支出負担
行為を専決した。
そして,専決権者は,平成23年11月18日頃,平成24年2月1
0日頃,同年3月2日頃,同年5月11日頃及び同年9月5日頃,上記
支出負担行為に基づき合計13万6500円の支出命令を専決し,平成
23年11月30日,平成24年2月22日,同年3月15日,同年5
月23日及び同年9月14日に合計13万6500円が支出された。
(乙I3,4の各1~4)
ケ高槻市老人ホーム入所判定委員会
(ア)要綱の定め
「高槻市老人ホーム入所判定委員会要綱」には,要旨,以下のような
定めがある。(甲J1)
a福祉事務所長による老人ホームへの入所措置の実施に資するために,
高槻市老人ホーム入所判定員会(以下「判定委員会」ともいう。)を
福祉事務所に設置する。(1条)
b判定委員会は,保健所長,市医師会の長又は長の推薦する内科医,
精神科医等から選任される10人以内の委員をもって組織され,老人
ホームへの入所の要否の判定審査等を行い,福祉事務所長にその審査
結果等を報告する。(2条,3条)
c福祉事務所長は判定委員会を招集する権限を有し,判定委員会の報
告を考慮して入所措置等を決定する。(1条,6条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年3月23日及び同年7月13日,それぞれ,
判定委員会の委員のうち対象者に対して報償費として1人当たり日額9
100円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同年3月28日頃及び同年9月21日頃,上記
支出負担行為に基づき合計5万4600円の支出命令を専決し,同年4
月13日及び同年9月28日に合計5万4600円が支出された。
(乙J4,5の各1・2)
コ高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会
(ア)要綱の定め
「高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営事業実施要綱」には,要旨,
以下のような定めがある。(甲K1)
a市が組織する高齢者虐待防止ネットワークの効率的な運営を図るた
め,高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会(以下「ネットワ
ーク運営委員会」ともいう。)を設置する。(1条,5条)
bネットワーク運営委員会は,医師会,老人クラブ連合会等の団体か
ら選出される15人の委員により組織され,高齢者虐待防止ネットワ
ークの運営及び管理,虐待防止策の検討,地域住民への広報等の事務
を所掌する。(5条,6条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年2月3日,ネットワーク運営委員会の委員の
うち対象者に対して報償費として1人当たり日額9100円を支払う旨
の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同月29日頃,上記支出負担行為に基づき3万
6400円の支出命令を専決し,同年3月15日に同額が支出された。
(乙K4,5)
サ高槻市立障害者福祉センター運営協議会
(ア)要綱の定め
「高槻市立障害者福祉センター運営協議会要綱」には,要旨,以下の
ような定めがある。(甲L1)
a高槻市立障害者福祉センター(以下「福祉センター」という。)の
事業運営の効果的推進を図るため,高槻市立障害者福祉センター運営
協議会(以下「センター運営協議会」という。)を設置する。(1条)
bセンター運営協議会は,学識経験者等から選任される15人以内の
委員をもって組織され,福祉センターの行う事業の運営等について協
議を行う。(2条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年3月29日,センター運営協議会の委員のう
ち対象者に対して報償費として1人当たり日額9100円を支払う旨の
支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同年4月11日頃,上記支出負担行為に基づき
11万8300円の支出命令を専決し,同月27日に同額が支出された。
ただし,同年5月1日に2万7300円が返納された。
(乙L4の1・2,5の1)
シ健康たかつき21推進会議
(ア)要綱の定め
「健康たかつき21推進会議設置要綱」には,要旨,以下のような定
めがある。なお,「健康たかつき21」とは,市が,国の策定した「健康
日本21」等を踏まえ,市民の健康づくりの支援等を目的として策定し
た計画である。(甲M1)
a「健康たかつき21」を推進し,その進捗状況を把握するに当たり,
学識経験者等の意見を求めるため,健康たかつき21推進会議(以下
「推進会議」ともいう。)を設置する。(1条)
b推進会議は,市民,学識経験者等から選任される15人以内の委員
をもって組織され,「健康たかつき21」の進捗状況について評価し,
広範囲にわたる分野から意見を述べる。(2条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年2月2日及び同年8月20日,それぞれ,推
進会議の委員のうち対象者に対して報償費として1人当たり日額910
0円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同年2月21日頃及び同年9月4日頃,上記支
出負担行為に基づき合計22万7500円の支出命令を専決し,同年3
月8日及び同年9月14日に合計22万7500円が支出された。
(乙M6,7の各1・2)
ス高槻市予防接種運営委員会
(ア)要綱の定め
「高槻市予防接種運営委員会要綱」には,要旨,以下のような定めが
ある。(甲N1)
a要綱は,市の予防接種業務を円滑に推進するため,高槻市予防接種
運営委員会(以下「予防接種委員会」ともいう。)の組織等の必要事項
を定めるものとする。(1条)
b予防接種委員会は,医師会等から選出される7人の委員によって組
織され,予防接種の年間実施計画や運営方法等について協議する。(2
条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成24年1月11日,予防接種委員会の委員に対して
報償費として1人当たり日額9100円を支払う旨の支出負担行為を専
決した。
そして,専決権者は,同年2月14日頃,上記支出負担行為に基づき
3万6400円の支出命令を専決し,同月22日に同額が支出された。
(乙N3,4)
セ高槻市予防接種健康被害調査委員会
(ア)要綱の定め
「高槻市予防接種健康被害調査委員会要綱」には,要旨,以下のよう
な定めがある。(甲O1)
a要綱は,市の実施する予防接種による健康被害を適正かつ円滑に処
理するため,高槻市予防接種健康被害調査委員会(以下「健康被害調
査委員会」ともいう。)の組織等の必要事項を定める。(1条)
b健康被害調査委員会は,医師会等から選出される10人の委員によ
って組織され,予防接種により発生した健康被害に関し,医学的な見
地から調査を行う。(2条,3条)
c委員長は,委員会の結果を速やかに高槻市長に報告しなければなら
ない。(9条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年9月20日,健康被害調査委員会の委員のう
ち対象者に対して報償費として1人当たり日額9100円を支払う旨の
支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,同月27日頃,上記支出負担行為に基づき3万
6400円の支出命令を専決し,同年10月7日に同額が支出された。
(乙O4,5)
ソ高槻市地球温暖化対策実行計画協議会
(ア)要綱の定め
「高槻市地球温暖化対策実行計画協議会設置要綱」には,要旨,以下
のような定めがある。(甲P1)
aたかつき地球温暖化対策アクションプラン(以下「アクションプラ
ン」という。)を推進するため,高槻市地球温暖化対策実行計画協議会
(以下「温暖化対策協議会」ともいう。)を設置する。(1条)
b温暖化対策協議会は,公募市民や学識経験者等から選任される14
人以内の委員によって組織され,アクションプランの策定等に関する
協議等を行う。(2条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年12月21日頃及び平成24年8月14日頃,
それぞれ,温暖化対策協議会の委員のうち対象者に対し,報償費として,
大阪府職員である委員には旅費相当額を,それ以外の委員には1人当た
り日額9100円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,平成23年12月26日頃,平成24年2月1
3日頃及び同年9月4日頃,上記支出負担行為に基づき合計21万93
00円の支出命令を専決し,同年1月13日,同年2月22日及び同年
9月14日に合計21万9300円が支出された。
(乙P9の1~3,10の1・2)
タ高槻市採石等公害防止対策協議会
(ア)規約の定め
「高槻市採石等公害防止対策協議会規約」には,要旨,以下のような
定めがある。(甲Q1)
a高槻市採石等公害防止対策協議会(以下「公害防止協議会」ともい
う。)は,高槻市内における採石事業等に伴う公害の防止を図り,よっ
て地域住民の生活環境の保全に寄与することを目的とする。(2条)
b公害防止協議会は,採石事業者や関係地区の住民代表等から選出さ
れる35人以内の委員によって組織され,公害防止に関する協議,調
査等を行う。(3条,4条)
c協議会には,監視部会及び調査部会を置くことができる。(8条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年11月2日及び平成24年7月10日,それ
ぞれ,公害防止協議会の委員のうち対象者に対し,報償費として,大阪
府職員である委員には旅費相当額を,それ以外の委員には1人当たり日
額9100円を支払う旨の支出負担行為を専決した。
そして,専決権者は,平成23年11月18日頃,同月28日頃,平
成24年7月17日頃及び同月24日頃,上記支出負担行為に基づき合
計18万3240円の支出命令を専決し,平成23年11月30日,同
年12月8日,平成24年7月24日及び同年8月8日に合計18万3
240円が支出された。
(乙Q5の1~4,6の1・2)
チ高槻市障害児就学指導委員会
(ア)規則の定め
「高槻市障害児就学指導委員会規則」には,要旨,以下のような定め
がある。(甲R1)
a市内に住所を有する児童等の適正な就学を図るため,高槻市教育委
員会に,高槻市障害児就学指導委員会(以下「就学指導委員会」とも
いう。)を設置する。(1条)
b就学指導委員会は,教職員,市内の教育関係団体の代表者,専門医
等から選出される20人以内の委員によって組織され,市立小中学校
の特別支援校内委員会から提出される資料に基づいて協議し,その意
見を教育委員会に具申する。(2条,3条)
(イ)報償費の支払
専決権者は,平成23年12月8日,平成24年1月11日及び同月
19日,それぞれ,就学指導委員会の委員のうち対象者に対して,報償
費として1人当たり日額7000円を支払う旨の支出負担行為を専決し
た。
そして,専決権者は,平成23年12月8日頃,平成24年1月13
日頃,同年3月5日頃及び同月9日頃,上記支出負担行為に基づき合計
9万1000円の支出命令を専決し,平成23年12月21日,平成2
4年1月23日,同年3月15日及び同月23日に合計9万1000円
が支出された。
(乙R5の1~4,6の1~3)
⑶住民監査請求と本件訴訟の提起
ア原告は,法242条1項に基づき,平成24年9月18日付けで,市の
監査委員に対し,本件各組織等を含む市の組織等について法138条の4
第3項にいう附属機関に該当し,法律又は条例に基づくことなく本件各組
織等を設置したことは違法であり,上記組織等の委員等に対する謝礼金等
を支払ったことも違法である旨主張して,上記組織等に関する公金の支出
を差し止めるとともに,上記報酬等の支出により市が被った損害につきA
に損害賠償請求をするなど,必要な措置を講ずべきことを請求した。(甲A
2,3)
イ市の監査委員は,上記各組織等について,一部は附属機関に当たらず,
附属機関に当たるものについても,その組織等に係る支出により市は損害
を被っていないなどの理由により,原告の監査請求を棄却する旨判断し,
平成24年11月28日付けで,その監査結果を書面により原告に通知し
た。(甲A4)
ウ原告は,平成24年12月14日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)
4争点及びこれに対する当事者の主張
本件の争点は,①本件各組織等が,法138条の4第3項所定の「附属
機関」に該当するか(争点①),②附属機関に該当する組織等に係る公金
の支出についてAに故意又は過失が認められるか等(争点②),③附属機
関に該当する組織等に係る公金の支出により市に損害が生じているか(争
点③)である。
(1)争点①(附属機関該当性)について
(原告の主張)
ア附属機関の意義
法138条の4第3項は,附属機関の設置について法律又は条例に
よるべき旨定めるところ,同項にいう附属機関とは,執行機関の要請に
より,行政執行に関して必要な調停,審査,審議又は調査等を行う組織で,
市の職員以外の者が構成員に含まれるものすべてを指す。
法が,附属機関について「調停,審査,諮問又は調査のための機関」
(138条の4第3項),又は「調停,審査,審議又は調査等を行う機
関」(202条の3第1項)と規定するのみで組織形態や存続期間につ
いて何らの定めを置いていないこと,明文で附属機関とされている自治
紛争処理委員(法138条の4第3項)が事件ごとに任命される独任制
機関であること,柔軟に組織形態や存続期間を決められる方が多様な行
政課題に迅速かつ効果的に対応できること等に照らせば,法は,組織形
態や存続期間にかかわらず,上記調停等を行う組織すべてを附属機関と
しているものと解すべきである。
そして,「審査」とは,特定の事項について判定ないし結論を導き出す
ために当該事項の内容を調べることを,「諮問」とは特定の事項について
意見を求めることを意味する。
イ本件各組織等について
(ア)高槻市事業公開評価会
評価会において評価者から意見が述べられているから,評価会は
「諮問」のための組織であって,附属機関に当たる。
(イ)高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員
特別調査員は,本件売上金不明事案について調査を行っているから,
附属機関に当たる。
(ウ)高槻市特別顧問
特別顧問が行う市政の政策的又は専門的事項に関する助言等は市
政にとって影響の大きいものであるから,特別顧問は「諮問」のため
の組織であって,附属機関に当たる。
(エ)高槻市交通部に関する特別改革検討員
特別改革検討員の行う高槻市営バス特別改革チームに対する助言
等は,市政にとって影響の大きいものであるから,特別改革検討員は,
「諮問」のための組織であって,附属機関に当たる。
(オ)高槻市行財政改革懇話会
懇話会において委員らから意見が述べられているから,懇話会は,
「諮問」のための組織であって,附属機関に当たる。
(カ)高槻市指定管理者選定委員会
選定委員会に学識経験者が参画し,市長に対して意見を建議してい
るから,選定委員会は,「審査」及び「諮問」のための組織であって,
附属機関に当たる。
(キ)高槻市地域情報化推進市民会議
市民会議において委員らから意見が述べられているから,市民会議
は,「諮問」のための組織であって,附属機関に当たる。
(ク)高槻市入札等監視委員会
監視委員会は,市の発注した工事の入札・契約に関する再苦情申立
てについて審議を行い,また,第三者の意見の反映を図るものである
から,監視委員会は,「審査」及び「諮問」のための組織であって,
附属機関に当たる。
(ケ)高槻市老人ホーム入所判定委員会
判定委員会は老人ホームへの入所の要否に係る判定審査等を行う
もので,学識経験者が専門的な立場から意見を述べることも予定され
ているから,判定委員会は,「審査」及び「諮問」のための組織であ
って,附属機関に当たる。
(コ)高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会
ネットワーク運営委員会において委員らから意見が述べられてい
るから,ネットワーク運営委員会は,「諮問」のための組織であって,
附属機関に当たる。
(サ)高槻市立障害者福祉センター運営協議会
センター運営協議会において,委員らの意見交換が行われているか
ら,センター運営協議会は,「諮問」のための組織であって,附属機
関に当たる。
(シ)健康たかつき21推進会議
推進会議は学識経験者や保健・医療関係者等の意見を求める目的で設
置されているから,推進会議は,「諮問」のための組織であって,附
属機関に当たる。
(ス)高槻市予防接種運営委員会
予防接種委員会において,委員らから意見が述べられているから,
予防接種委員会は,「諮問」のための組織であって,附属機関に当た
る。
(セ)高槻市予防接種健康被害調査委員会
健康被害調査委員会において,委員らから医学的な見地からの意見
が述べられているから,健康被害調査委員会は,「諮問」のための組
織であって,附属機関に当たる。
(ソ)高槻市地球温暖化対策実行計画協議会
温暖化対策協議会においてアクションプランの実績報告について
協議がなされ,工場等の視察が行われているから,温暖化対策協議会
は,「諮問」及び「調査」のための組織であって,附属機関に当たる。
(タ)高槻市採石等公害防止対策協議会
公害防止協議会において委員らによる意見交換が行われているか
ら,公害防止協議会は,「諮問」のための機関であって,附属機関に
当たる。
(チ)高槻市障害児就学指導委員会
就学指導委員会において専門医等が参画した上で児童・生徒の適正
な就学についての審議が行われているから,就学指導委員会は,「審
査」及び「諮問」のための機関であって,附属機関に当たる。
(被告の主張)
ア附属機関の意義
附属機関は,委員をもって構成される合議制の組織であり,組織を構成
する複数の委員による合議の上で,組織としての意見等を取りまとめ,執
行機関に対する提言等を行う組織であることを要する。なお,自治紛争処
理委員は,調停案の作成等を3人の合議によって行うものとされている(法
251条2項,251条の2第10項)から,合議制の機関である。
また,住民参加の一場面として臨時的・一時的な組織であれば要綱によ
る設置が許されるべきであるから,附属機関は恒常的な組織に限られる。
そして,附属機関が行う「調停」とは第三者が紛争当事者間の互譲によ
って妥当な解決を図るようにすること,「諮問」とは,政策についての議論
を行ってそれに基づく意見を述べること,「調査」とは一定の範囲の事項に
ついてその真実を調べることを意味する。これらの活動を,市から提示さ
れた案件について行っている実態がなければ,当該組織は,附属機関には
当たらない。
さらに,法が附属機関について法律又は条例による設置を要するとし
た趣旨は,執行機関による濫用的な行政組織の設置を防止し,議会によ
る民主的統制を行政組織の編成に及ぼすことにあるから,上記のような
意味での調停等を行う組織であっても,濫用的設置に当たらないか,議
会による民主的統制を及ぼす必要がない組織は,執行機関の組織編成権
に基づく設置が許され,法律又は条例による設置が必要な附属機関には
当たらない。
イ本件各組織等について
(ア)高槻市事業公開評価会
評価会は,個々の評価者が対象事業について意見を述べ,コーディネ
ーターが各意見の要旨を整理する場であって,評価者の意見をまとめて
評価会としての評価を行うものではないから,合議制の組織ではない。
また,評価会は1回限りで開催されており,恒常的な組織でもない。
さらに,評価会は,評価者の定数や支払われた報償費の日額等に照ら
せば,濫用的に設置されたものということはできないし,市民や学識経
験者等を評価者とすることで民意を反映する実質を有しているから,議
会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,評価会は附属機関に当たらない。
(イ)高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員
特別調査員は,市との間で締結した私法上の準委任契約に基づき,そ
れぞれが市の実施する本件売上金不明事案の調査について指導,助言等
を行うものであって,自らが調査を行うものではないし,合議制の組織
でもない。
また,特別調査員は,本件売上金不明事案の発生に対応して,臨時的
に上記指導,助言等を実施し,その任期も本件売上金不明事案の調査が
終了するまでの一時的なものであるから恒常的な組織でもない。
さらに,特別調査員は,その任期等に照らせば,濫用的に設置された
ものということはできないし,その職務の性質からして,議会による民
主的統制になじむものでもない。
以上の諸事情に照らせば,特別調査員は附属機関に当たらない。
(ウ)高槻市特別顧問
特別顧問は,有識者個人に対し,意見及び助言を求めるべく,市が就
任を依頼し,有識者個人が承諾して就任するものであり,市との間で締
結した私法上の準委任契約に基づき,市政に係る政策的又は専門的事項
について,それぞれが市長に対して意見又は助言を行うものであるから,
合議制の組織ではない。
また,特別顧問が意見又は助言を行ったのは平成24年度の1度だけ
であるから,その活動は一時的なものであって恒常的な組織でもない。
さらに,特別顧問は,その定数や支払われた報償費の日額等に照らせ
ば,濫用的に設置されたものということはできないし,外部の有識者に
意見を求めることで民意を反映させる実質を有しているから,議会によ
る民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,特別顧問は附属機関に当たらない。
(エ)高槻市交通部に関する特別改革検討員
特別改革検討員は,市との間で締結した私法上の準委任契約に基づき,
本件交通部改革に関して,それぞれが指導及び助言等を行うものである
から,合議制の組織ではない。
また,特別改革検討員は,その任期が本件交通部改革に関する方策等
が策定されるまでの一時的なものであるから,恒常的な組織でもない。
さらに,特別改革検討員は,その任期等に照らせば,濫用的に設置さ
れたものということはできないし,その職務の性質からして,議会によ
る民主的統制になじむものでもない。
以上の諸事情に照らせば,特別改革検討員は附属機関に当たらない。
(オ)高槻市行財政改革懇話会
懇話会は,行政改革大綱の見直し等について,委員らからそれぞれの
意見が述べられる場であって,委員らによる合議に基づき,懇話会とし
ての意見をまとめて執行機関に対する提言等を行うものではないから,
合議制の組織ではない。
また,懇話会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に照らせば,
濫用的に設置されたものということはできないし,市議会議員や学識経
験者等を委員とすることで民意を反映する実質を有しているから,議会
による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,懇話会は附属機関に当たらない。
(カ)高槻市指定管理者選定委員会
選定委員会が内部組織を規定する形式である訓令により組織されてい
ることや,委員長及び副委員長には副市長が就くとされていること等か
らすると,選定委員会は,市の内部組織であって,執行機関の要請を受
けて「調停,審査,審議又は調査等」を行う組織ではない。なお,選定
委員会への学識経験者の参画は,内部職員で構成される組織の公正性,
透明性を確保し,また,専門的意見を得るために認められているにすぎ
ず,選定委員会が市の内部組織であることに影響を及ぼすものではない。
また,選定委員会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に照ら
せば,濫用的に設置されたものということはできないし,内部組織であ
るから,議会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,選定委員会は附属機関に当たらない。
(キ)高槻市地域情報化推進市民会議
市民会議は,市の地域情報化推進施策等について,委員らからそれぞ
れの意見が述べられる場であって,委員らによる合議の上,市民会議と
しての意見を取りまとめて,執行機関に対する提言等を行うものではな
いから,合議制の組織ではない。
また,市民会議は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に照らせ
ば,濫用的に設置されたものということはできないし,学識経験者や市
民代表者等を委員とすることで民意を反映する実質を有しているから,
議会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,市民会議は附属機関に当たらない。
(ク)高槻市入札等監視委員会
監視委員会は,入札という特定の行政分野に関して専門家が意見を述
べるための組織にすぎず,執行機関から「諮問」を受ける組織ではない。
また,監査委員会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に照ら
せば,濫用的に設置されたものということはできないし,中立性が認め
られるその職務内容からして,議会による民主的統制になじむものでも
ない。
以上の諸事情に照らせば,監視委員会は附属機関に当たらない。
(ケ)高槻市老人ホーム入所判定委員会
判定委員会は,その招集権者が市の職員である福祉事務所長である
など市の職員が主導的に運営する組織であるから,市の内部組織であ
って,執行機関の要請を受けて「調停,審査,審議又は調査等」を行う
組織ではない。なお,判定委員会への学識経験者の参画は,専門的立
場からの意見を得るために認められているにすぎず,判定委員会が市
の内部組織であることに影響を及ぼすものではない。
また,判定委員会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に照ら
せば,濫用的に設置されたものということはできないし,内部組織であ
るから,議会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,判定委員会は附属機関に当たらない。
(コ)高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会
ネットワーク運営委員会は,市が組織する早期発見・見守りネットワ
ーク,保健医療福祉サービス介入ネットワーク及び関係専門機関介入支
援ネットワークといった3つの高齢者虐待防止ネットワーク間の連絡調
整のために設置された組織であり,市の虐待防止施策等について,委員
らが各人の意見を述べるにとどまり,委員らによる合議の上,委員会と
しての意見をとりまとめて,執行機関に対する提言等を行うものではな
いから,合議制の組織ではない。
また,ネットワーク運営委員会は,委員の定数や支払われた報償費の
日額等に照らせば,濫用的に設置されたものということはできないし,
外部の関係団体等から委員を選任することによって民意を反映する実質
を有しているから,議会による民主的統制を及ぼす必要もない。
なお,要綱上は虐待防止策の検討等もネットワーク委員会の所掌事務
とされているが,同委員会はあくまでもネットワーク間の連絡調整のみ
を担う組織である。
以上の諸事情に照らせば,ネットワーク運営委員会は附属機関に当た
らない。
(サ)高槻市立障害者福祉センター運営協議会
センター運営協議会は,福祉センターの運営等について委員らの意
見交換が行われる場であって,委員らによる合議の上,協議会としての
意見をとりまとめて執行機関に対する提言等を行うものではないから,
合議制の組織ではない。
また,センター運営協議会は,委員の定数や支払われた報償費の日額
等に照らせば,濫用的に設置されたものということはできないし,学識
経験者等を委員とすることで民意を反映する実質を有しているから,議
会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,センター運営協議会は附属機関に当たらな
い。
(シ)健康たかつき21推進会議
推進会議は,「健康たかつき21」について委員らの意見交換が行
われる場であって,委員らによる合議の上,推進会議としての意見を取
りまとめ,執行機関に対する提言等を行うものではないから,合議制の
組織ではない。
また,推進会議は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に照らせ
ば,濫用的に設置されたものということはできないし,一般市民や学識
経験者を委員とすることで民意を反映する実質を有しているから,議会
による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,推進会議は附属機関に当たらない。
(ス)高槻市予防接種運営委員会
予防接種委員会は,市の予防接種運営等について委員らからそれぞ
れの意見が述べられる場であって,委員らによる合議の上,予防接種委
員会としての意見を取りまとめ,執行機関に対する提言等を行うもので
はないから,合議制の組織ではない。
また,予防接種委員会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に
照らせば,濫用的に設置されたものということはできないし,高度の専
門的知識を要する職務の性質からして,議会による民主的統制になじむ
ものでもない。
以上の諸事情に照らせば,予防接種委員会は附属機関に当たらない。
(セ)高槻市予防接種健康被害調査委員会
健康被害調査委員会は,市の健康被害調査等について委員らからそ
れぞれの意見が述べられる場であって,委員らによる合議の上,健康
被害調査委員会としての意見をとりまとめ,執行機関に対する提言等を
行うものではないから,合議制の組織ではない。
また,健康被害調査委員会は,委員の定数や支払われた報償費の日額
等に照らせば,濫用的に設置されたものということはできないし,高度
の専門的知識を要する職務の性質からして,議会による民主的統制にな
じむものでもない。
以上の諸事情に照らせば,健康被害調査委員会は附属機関に当たら
ない。
(ソ)高槻市地球温暖化対策実行計画協議会
温暖化対策協議会の所掌事項は,アクションプランの策定及び見直
しに関する協議やアクションプランの実施に係る連絡調整等であり,
これは「調停,審査,審議又は調査等」に該当しない。
また,温暖化対策協議会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等
に照らせば,濫用的に設置されたものということはできないし,公募市
民や学識経験者を委員とすることで民意を反映する実質を有しているか
ら,議会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上に照らせば,温暖化対策協議会は附属機関に当たらない。
(タ)高槻市採石等公害防止対策協議会
公害防止協議会は,公害防止策等について,地元自治会と採石業者と
が意見交換を行う場であって,委員らによる合議の上,協議会としての
意見を取りまとめ,執行機関に対する提言等を行うものではないから,
合議制の組織ではない。
また,公害防止協議会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に
照らせば,濫用的に設置されたものということはできないし,関係地区
の住民代表等を委員とすることで民意を反映する実質を有しているから,
議会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,公害防止協議会は附属機関に当たらない。
(チ)高槻市障害児就学指導委員会
就学指導委員会は,その委員の大半を市の職員が占めており,市の
内部組織である。なお,就学指導委員会へは専門医や学識経験者も参
画しているが,少数であり,組織の公正性や透明性を確保し,また,
専門的立場からの意見を得るために参画が認められているにすぎず,
その参画が,就学指導委員会が市の内部組織であることに影響を及ぼ
すものではない。
また,就学指導委員会は,委員の定数や支払われた報償費の日額等に
照らせば,濫用的に設置されたものということはできないし,内部組織
であるから,議会による民主的統制を及ぼす必要もない。
以上の諸事情に照らせば,就学指導委員会は附属機関に当たらない。
(2)争点②(Aの故意・過失等)について
(原告の主張)
前記(1)の(原告の主張)記載のとおり,本件各組織等は,附属機関に
当たり,本来条例による設置を要するにもかかわらず,要綱等によって
設置された違法なものであるから,違法な組織の委員等らに対する謝礼
金の支払に係る前記第2の3(2)ア~チの各(イ)の支出負担行為及び支出命
令(以下,これらの財務会計行為を「本件各財務会計行為」と総称する。)
も違法である。
そうであるところ,Aが弁護士であること,市には昭和29年に制定され
た「附属機関に関する条例」が存在すること,市が平成22年に社団法人地
方制度調査会から附属機関に相当する組織の有無等について調査を受けてい
ること等に照らせば,Aは,附属機関の設置が条例による必要があることを
定めた法の規定を十分に理解していたはずであるし,条例によらずに附属機
関に相当する機関を設置することを違法と判断した複数の裁判例も知ってい
たはずである。したがって,Aは,本件各組織等が条例によらずに設置され
ていることの違法性や本件各財務会計行為の違法性を認識していたか又は認
識し得たものであり,自ら違法な財務会計行為を行わない法的義務や専決権
者が違法な財務会計行為をすることを阻止すべき指揮監督上の法的義務を負
っていたにもかかわらず,故意又は過失によって,上記各義務を怠り,本件
各財務会計行為について,自ら行い又は市の職員をして専決させたものであ
るから,不法行為に基づく損害賠償責任を免れない。
(被告の主張)
本件各財務会計行為に基づく各支出は,適法な予算措置に基づいて執行
されたものであり,その予算は高槻市議会の承認を得たものであるから,各
支出やその前提となる本件各財務会計行為に違法性の問題は存在しない。
また,本件各財務会計行為が行われた平成23年ないし平成24年当時,
全国の多くの市において委員会等の附属機関に相当する機関が法律又は
条例によらずに設置されていたこと,法律又は条例によらずに設置され
た附属機関に相当する機関に対する公金の支出について違法と判断した
最高裁判例が存在しないこと,同公金の支出を違法と判断した下級審裁
判例は確立したものとはいえないこと,法律又は条例によらずに附属機
関に相当する機関を設置することを適法とする学説が有力であったこと
等に照らせば,Aは,本件各財務会計行為が行われた当時,条例に基づ
くことなく本件各組織等を設置することの違法性や本件各財務会計行為
の違法性を認識しておらず,また,認識することもできなかったという
べきであるから,Aに故意・過失は認められない。
⑶争点③(市の損害)について
(原告の主張)
前記(2)の(原告の主張)記載のとおり,本件各財務会計行為は違法で
あるから,市は,本件各財務会計行為に基づき報償費の名目で支払われ
た謝礼金相当額(合計395万7240円。前記3(2)キ(イ),サ(イ)の
各返納分を除く。)の損害を被った。
なお,本件各組織等に設置の必要性は認められないし,本件各組織等
の委員等によって述べられた意見等も価値がないものであることに照ら
せば,支出された謝礼金が職務の遂行の正当な対価であるとも評価でき
ない。
(被告の主張)
本件各財務会計行為が行われた当時,本件各組織等を設置する必要性
があった。そして,本件各組織等が適切に担当事務を遂行してその結果
が市の行政執行に反映されていること,本件各組織等の委員等に支出さ
れた報償費が対価として相当なものであることに照らせば,市はいずれ
にしても同額の支出を免れなかったはずであるから,本件各組織等の委
員等への報償費の支出をもって,市に損害が生じたということはできな
い。
第3当裁判所の判断
1本件訴えのうち,別紙「組織等目録」記載のア~エ,コ,サ及びタの各機関
に関する公金支出の差止めを求める部分について
(1)法242条の2第1項1号に基づく訴えを提起するためには,差止めの
対象となる行為が現に存在するか又はその行為がされることが相当の確実さ
をもって予測されることを要するところ(法242条1項括弧書き参照),そ
れが認められない場合には,当該訴えは不適法となる(最高裁平成23年1
0月27日第一小法廷判決・裁判集民事238号105頁参照)。
(2)高槻市事業公開評価会
証拠(乙A3,B7)及び弁論の全趣旨によれば,市は,評価会が行う職
務について,附属機関として条例に基づき設置された高槻市行財政改革推進
委員会の分科会にこれを行わせるものとし,平成25年4月16日をもって
高槻市事業公開評価実施要綱を廃止したことが認められ,このような事実か
らすると,同要綱に基づき設置された評価会が今後開催される見込みはない
ものというべきであるから,評価会に関して今後公金の支出が行われること
が相当の確実さをもって予測されるとはいえない。
したがって,評価会に係る差止めの訴えは不適法である。
(3)高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員
前記第2の3(2)イ(ア)の事実のほか,証拠(甲C2)及び弁論の全趣旨に
よれば,特別調査員の任期は本件売上金不明事案の調査が終了するまでであ
ること,市の本件売上金不明事案の調査が既に終了していることが認められ
る。そうすると,特別調査員は,その任期を終えており,特別調査員に関し
て今後公金の支出が行われることが相当の確実さをもって予測されるとはい
えない。
したがって,特別調査員に係る差止めの訴えは不適法である。
(4)高槻市交通部に関する特別改革検討員
前記第2の3(2)エ(ア)の事実のほか,証拠(乙E1,2)及び弁論の全趣
旨によれば,特別改革検討員の任期は,本件交通改革に関する方策等が策定
されるまでであるところ,その方策等について,市営バス特別改革チームが
特別改革検討員の指導,助言等を得て検討した上,平成24年10月ころ,
報告書を作成して市長に提出し,上記方策等の策定が終了したことが認めら
れる。そうすると,特別改革検討員はその任期を終えており,特別改革検討
員に関して今後公金の支出が行われることが相当の確実さをもって予測され
るとはいえない。
したがって,特別改革検討員に係る差止めの訴えは不適法である。
(5)その他の機関(高槻市特別顧問,高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運
営委員会,高槻市立障害者福祉センター運営協議会,高槻市採石等公害防止
対策協議会)について
本件全証拠によっても,これらの組織等に係る要綱・規約が廃止されたこ
とはうかがわれないこと,これらの組織等が,その要綱・規約に定められる
目的に照らし,それぞれ,市政の政策的又は専門的事項に関する意見を述べ
たり,高齢者虐待の防止,福祉センター事業の推進,採石事業による公害の
防止といった市の重要な施策の遂行に寄与するものであると認められること,
被告が附属機関該当性を否定し,公金の支出も違法でないと主張しているこ
とに照らせば,今後もこれらの機関の委員らに対する公金の支出が行われる
ことが相当程度の確実性をもって予測されるというべきである。
したがって,本件訴えのうち,これらの機関に関する公金の支出の差止め
を求める部分は適法である。
2争点①(附属機関該当性)について
(1)附属機関の意義等
ア法138条の4第3項は,普通地方公共団体が法律又は条例によって執
行機関の附属機関として「調停,審査,諮問又は調査」のための機関を置
くことができる旨を,法202条の3第1項は,附属機関とは条例等の定
めるところによりその担任する事項について「調停,審査,審議又は調査
等」を行う機関である旨をそれぞれ定めている(なお,上記各条項の規定
ぶりからすると,前者は,附属機関の設置根拠について定めたものであり,
附属機関を設置する執行機関の立場から表現したものであるのに対し,後
者は,附属機関の職務権限について定めたものであり,附属機関を主体と
して表現したものであって,前者と後者における対象職務についての文言
の違いも,そのような表現ぶりに起因するものであって,上記各条項が想
定する附属機関の対象職務の内容自体に違いがあるわけではないものと解
される。)。そして,一般的に,「調停」とは,第三者が紛争当事者の間に立
って,当事者の互譲によって紛争の妥当な解決を図ることを,「審査」とは,
特定の事項について判定ないし結論を導き出すために,その内容を検討す
ることを,「諮問」とは,特定の事項について意見や見解を求めることを,
「審議」とは,特定の事項について意見を述べ議論することを(前記のよ
うな法138条の4第3項と法202条の3第1項の関係からすると,後
者にいう「審議」は,前者の「諮問」に対応する表現であり,諮問に応じ
て審議が行われることを想定したものと解される。),「調査」とは,一定の
範囲の事項についてその真実を調べることを,それぞれ意味するものであ
る。上記各条項の規定文言,規定内容によると,附属機関とは,執行機関
の行政執行のため,又は行政執行に伴い,上記のような意味での,調停を
行ったり,審査を行ったり,諮問を受けて審議を行ったり,調査を行った
りすることを職務とする機関であると解される。
イ(ア)ところで,被告は,附属機関は合議制を採用する恒常的な組織でな
ければならない旨主張する。
確かに,普通地方公共団体の執行機関が市民からの多種多様なニーズ
や専門的知見を要する行政上の諸問題に対応する上では,執行機関にお
いて,広く市民に意見を求めたり,外部の有識者から意見を聴取したり,
特定事項についての調査を依頼するために,何らかの組織を編成する必
要が生ずることは否定できず,特に,そのような組織の編成が緊急性を
要する場合には,条例の制定行為を経て,附属機関の設置を図っていて
は,必ずしも迅速な対応ができない場合があり得る。行政対応の遅延,
硬直化を避け,迅速,柔軟な行政遂行を確保する上で,条例によること
なく,外部からの意見聴取を行う組織を設置する余地を認めるという観
点から,被告が主張するような,非合議制の組織や臨時的・一時的に設
置される組織を後記のような附属機関条例主義の適用対象から除外しよ
うとする考え方にも相応の合理性があるものということができる。後記
のとおり,被告の上記主張と同様,附属機関について合議制の機関であ
るとする見解や,臨時的・一時的な組織の附属機関該当性を否定する見
解等も存するところである。
しかしながら,法138条の4第3項は,昭和27年の地方自治法の
一部改正によって新たに設けられたものであるところ,上記改正以前は,
附属機関に相当する組織も,執行機関の行政執行に資するために設置さ
れるものであるとの観点から,その設置権限が執行機関の持つ執行権限
のうちに当然に含まれているものと解され,法令に特別の定めがない限
りは,各執行機関が,組織編成権の行使として,規則その他の規定で任
意に附属機関を設置することができ,条例の根拠を必要としないものと
の理解の下で,多種多様な附属機関が条例等に基づくことなく設置され
ていた(乙A1)。そのような状況の下で,新たに法138条の4第3項
が設けられたという経緯に照らすと,同項は,普通地方公共団体が任意
に附属機関を設ける場合には,必ず条例によらなければならないことを
定めたものであり(以下「附属機関条例主義」という。),その趣旨は,
執行機関による組織の濫用的な設置を防止するとともに,その設置に議
会による民主的統制を及ぼすことにあるものと解される。このような趣
旨からすると,同項や法202条の3第1項に定められる前記アのよう
な職務(調停,審査,諮問を受けての審議,調査)を行う組織は,むし
ろ,合議制であるか否かを問わず,また,恒常的に設置されるか否かを
問わず,附属機関条例主義の適用対象とされているものと解することが
自然であり,現に,法やその関係法令上,附属機関一般について組織の
形態や存続期間等を定める規定は見当たらない。明文で附属機関とされ
ている自治紛争処理委員が,事件ごとに任命され(法251条2項),独
立して職務に当たる機関であることも,上記解釈を裏付け得る(自治紛
争処理委員は,一部の職務〔法251条の2第10項〕を合議により行
うものとされているが,同項は同委員らの合議によるべき職務を限定的
に列挙したものと解されるから,同委員は,基本的には委員各々の判断
と責任において調停等の職務に当たる独任制の機関であるというべきで
ある。)。そして,附属機関の設置について,議会を招集し,条例の制定,
施行を待つ猶予がないほどに緊急性を求められる場合には,法179条
1項の規定により普通地方公共団体の長が専決処分としてその設置を図
る余地もある。
したがって,上記のような法138条の4第3項の制定の経緯,趣旨,
法の規定ぶり等に照らせば,被告の主張するような考え方にも相応の合
理性があるとしても,もはやそれは立法論にわたるものであって,同項
の解釈論としては,合議制を採用していることや組織の恒常性は,附属
機関の要件とされていないものといわざるを得ず,被告の上記主張は,
採用することができない。
(イ)また,被告は,附属機関の設置を条例等によるべきこととした法の
改正趣旨に鑑みて,濫用的設置のおそれがない組織や,民主的統制を及
ぼす必要がない組織については,附属機関に当たらない旨主張する。
しかし,濫用的設置のおそれの有無や民主的統制の必要性の有無の判
断基準は必ずしも明確ではなく,仮にそのような解釈を許せば,執行機
関がその第一次的な判断権に基づいて附属機関に相当する機関を設置
できることになり,結局,濫用的設置を許すことにもなりかねない。し
たがって,被告の主張は,直ちに採用することができない。
ウ以上に照らせば,執行機関の行政執行のため,又は行政執行に伴い,調
停を行ったり,審査を行ったり,諮問を受けて審議を行ったり,調査を行
ったりすることを職務とする機関であれば,いずれも附属機関に該当する
ものと解される。
(2)本件各組織等について
上記(1)で検討した附属機関の意義を踏まえ,本件各組織等について,附属
機関該当性を検討すると,以下のとおり,いずれも附属機関に該当するもの
と認められる。
ア高槻市事業公開評価会
(ア)前記第2の3(2)ア(ア)の事実のほか,証拠(乙B3)及び弁論の全
趣旨によれば,評価会は,市民又は学識経験者から選任される評価者か
ら市の事業について意見を得ることによって,既存事業を見直し,市政
運営を効率化することを目的として設置された機関であって,市が昭和
61年から取り組んでいる行財政改革の一端を担うものとして設置され
た機関であることが認められる。
また,証拠(乙B3,4)及び弁論の全趣旨によれば,市が事前に実
施した事業評価を踏まえ,外部評価による見直しの効果が高いと見込ま
れる10事業が評価会の対象事業として選定されていること,平成24
年10月7日に評価会が開催され,対象事業について評価者らから事業
継続の妥当性や,改善点等に関する意見が述べられ,議論されているこ
と,その結果が「評価者意見一覧」として公表されていることが認めら
れる。
(イ)上記のような評価会の設置目的,活動実態等に照らせば,評価会は,
執行機関が,市政運営の効率化という行政執行のため,市の事業に関す
る第三者の意見を聴取すべく設置していた機関であり,「諮問」を受けて
「審議」を行うことを職務とする機関であるということができるから,
評価会は附属機関に当たるものと認められる。
イ高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員
(ア)前記第2の3(2)イ(ア)の事実のほか,証拠(甲C3)及び弁論の全
趣旨によれば,特別調査員は,専門家から助言等を得ることによって,
本件売上金不明事案に関する市の調査を推進することを目的として設置
された機関であり,その設置に当たり,特別調査員として選任された者
が助言等を行うための準備行為として職員等から事情聴取等を実施する
ことを予定していたことが認められる。
また,証拠(甲C2,3,5,乙C3の1・2)によれば,平成24
年5月から同年6月までの間,特別調査員として選任された弁護士(大
阪地方検察庁特捜部長経験者)2名が,調査手法等について市の調査担
当者らに指導助言したほか,自ら10名を超える交通部関係者や複数の
運賃回収機器メーカー等からのヒアリングを実施したり,交通部営業所
の視察を行ったりなどしていること,その結果が市に報告され,本件売
上金不明事案は内部関係者による犯行であることなどが判明したことが
認められる。
(イ)上記のような特別調査員の設置目的,活動実態等に照らせば,特別
調査員は,執行機関が,本件売上金不明事案の調査という行政執行のた
めに,その調査を専門家の意見,助力を求めるべく設置していた機関で
あり,「調査」を行うことを職務とする機関であるということができる
から,特別調査員は附属機関に当たるものと認められる。
これに対し,被告は,特別調査員は,市が行う調査について助言等を
行うもので,自らが調査に当たるものではないから,「調査」を行うこと
を職務とする附属機関には当たらない旨主張する。しかし,特別調査員
は,調査手法等の指導,助言に止まらず,自らが関係者のヒアリング等
を行って本件売上金不明事案の原因究明に寄与しているのであり,その
ような活動実態に照らせば,その活動は「調査」に当たるものというべ
きであり,被告の上記主張は採用することができない。
また,被告は,市との間で締結された私法上の準委任契約に基づいて
活動するものであるから,特別調査員は機関には当たらない旨主張する
ものとも解される。しかし,市が選任された特別調査員との間で個別に
準委任契約を締結したことを認めるに足りる証拠はないし,あらかじめ
要綱によって特別調査員の報酬額や特別調査員に関する庶務を担当する
部署が定められていること(前記第2の3(2)イ(ア)d,e)等に照らせ
ば,特別調査員が市の機関として設置されていることは否定し難く,被
告の上記主張は,採用することができない。
ウ高槻市特別顧問
(ア)前記第2の3(2)ウ(ア)の事実のほか,証拠(乙D3)及び弁論の全
趣旨によれば,特別顧問は,市の政策課題の解決等のために有識者から
政策的又は専門的事項に関する助言等を得る目的で設置された機関であ
ること,平成24年4月23日,5名の特別顧問が,市の住環境等をテ
ーマとして議論をし,市長及び市の職員に対して助言を行ったことが認
められる。
(イ)上記のような特別顧問の設置目的,活動実態等に照らせば,特別顧
問は,執行機関が政策課題の解決等の行政執行のために有識者に専門的
な意見を求めるべく設置する機関であり,「諮問」を受けて「審議」を
行うことを職務とする機関であるということができるから,特別顧問は
附属機関に当たるものと認められる。
これに対し,被告は,特別顧問は市との間で締結された私法上の準委
任契約に基づいて活動するものであるから,市の機関には当たらない旨
主張するものとも解される。しかし,市が選任された特別顧問との間で
個別に準委任契約を締結したことを認めるに足りる証拠はないし,あら
かじめ要綱によって報酬額等が定められていること(前記第2の3(2)
ウ(ア)b,c)等に照らせば,特別顧問が市の機関として設置されてい
ることは明らかであり,被告の上記主張は,採用することができない。
エ高槻市交通部に関する特別改革検討員
(ア)前記第2の3(2)エ(ア)の事実のほか,証拠(乙E1,2,3の1~
3)及び弁論の全趣旨によれば,特別改革検討員は,外部有識者から専
門的事項に関する意見を聴取し,助言等を得ることで,市が本件売上金
不明事案を受けて取り組んでいる本件交通部改革を推進する目的で設置
された機関であること,弁護士等から選任された特別改革検討員が,平
成24年7月から同年10月までの間,市の職員により構成される「高
槻市営バス特別改革チーム」に対して意見を述べ,助言を行い,その後
同チームによる報告書が市長に提出されていることが認められる。
(イ)上記のような特別改革検討員の設置目的,活動実態等に照らせば,
特別改革検討員は,執行機関が,本件交通部改革という行政執行のため,
外部有識者に専門的事項に関する意見を求めるべく設置していた機関で
あり,「諮問」を受けて「審議」を行うことを職務とする機関であるとい
うことができるから,特別改革検討員は附属機関に当たるものと認めら
れる。
これに対し,被告は,特別改革検討員は市との間で締結した私法上の
準委任契約に基づいて活動するものであるから,市の機関には当たらな
い旨主張するものとも解される。しかし,市が選任された特別改革検討
員との間で個別に準委任契約を締結したことを認めるに足りる証拠はな
いし,あらかじめ要綱によって特別改革検討員の報酬額や特別改革検討
員に関する庶務を担当する部署が定められていること(前記第2の3(2)
エ(ア)c,d)等に照らせば,特別改革検討員が市の機関として設置さ
れていることは明らかであり,被告の上記主張は,採用することができ
ない。
オ高槻市行財政改革懇話会
(ア)前記第2の3(2)オ(ア)の事実のほか,証拠(乙F1,2の各1・2)
及び弁論の全趣旨によれば,懇話会は,市議会議員や学識経験者等から,
市が取り組むべき行財政改革の方策について幅広い意見を得て,効率的
な行財政運営を推進する目的で設置された機関であること,平成23年
11月24日及び平成24年2月23日に懇話会が開催され,市が策定
した行財政改革の計画案に関する意見等が委員から出されていることが
認められる。
(イ)上記のような懇話会の設置目的,活動実態等に照らせば,懇話会は,
執行機関が,行財政改革という行政執行のために委員らから意見を求め
るべく設置する機関であり,「諮問」を受けて「審議」を行うことを職務
とする機関であるということができるから,懇話会は附属機関に当たる
ものと認められる。
カ高槻市指定管理者選定委員会
(ア)前記第2の3(2)カ(ア)の事実のほか,証拠(乙G2の1~3,3,
4の各1・2,5)及び弁論の全趣旨によれば,選定委員会は,指定管
理者制度導入の検討等の目的で設置された機関であること,委員の中に
は,市の職員のほか,学識経験者も含まれていること,平成23年に3
回,平成24年に2回,委員会が開催され,市施設への指定管理者制度
の導入の是非等について議論がなされていること,選定委員会が指定管
理者を導入すべき施設及び適切と判断する指定管理者候補者等について
意見をまとめて市長に報告していることが認められる。
(イ)上記のような選定委員会の設置目的,活動実態等に照らせば,選定
委員会は,執行機関が,指定管理者制度の導入やその遂行等の行政執行
のために学識経験者を含む委員らの意見を求めるべく設置する機関であ
り,「諮問」を受けて「審議」を行うことを職務とする機関であるという
ことができるから,選定委員会は附属機関に当たるものと認められる。
これに対し,被告は,選定委員会が,内部組織を規定する形式である
訓令により組織されていることや,委員長及び副委員長には副市長が就
くとされていることなどからして,内部組織にすぎず,附属機関には当
たらない旨主張する。しかし,訓令(高槻市指定管理者選定委員会規程)
上,市の職員以外に学識経験者も委員となることが予定され,現に学識
経験者が委員に含まれている以上,これを内部組織と評価することはで
きないから,被告の主張は,採用することができない。
キ高槻市地域情報化推進市民会議
(ア)前記第2の3(2)キ(ア)の事実のほか,証拠(乙H1,2,4)及び
弁論の全趣旨によれば,市民会議は,市の情報化を推進するため,学識
経験者等の委員らの協議に基づく助言を得る目的で設置された機関であ
ること,平成23年11月14日に同会議が開催され,証明書の電子申
請等の情報化政策に関して委員らから意見が述べられていることが認め
られる。
(イ)上記のような市民会議の設置目的,活動実態等に照らせば,市民会
議は,執行機関が,市の情報化という行政執行のために専門家等の意見
を求めるべく設置する機関であり,「諮問」を受けて「審議」を行うこと
を職務とする機関であるということができるから,市民会議は附属機関
に当たるものと認められる。
ク高槻市入札等監視委員会
(ア)前記第2の3(2)ク(ア)の事実のほか,証拠(乙I1,2)及び弁論
の全趣旨によれば,監視委員会は,市の入札及び契約手続の透明性確保
等のために,学識経験者等の審議に基づく意見を得る目的で設置された
機関であること,その事務として入札及び契約手続の運用状況等につい
て審議を行い,市長に意見を具申することが予定されていること,平成
22年から平成24年までの間に複数回監視委員会が開催されているこ
と,監視委員会から市長に対して報告書が提出されて入札制度の改善点
等についての提言が行われていることなどが認められる。
(イ)上記のような監視委員会の設置目的,活動実態等に照らせば,監視
委員会は,執行機関が,入札及び契約手続の透明性確保等の行政執行の
ために専門家等の意見を求めるべく設置する機関であり,「諮問」を受け
て「審議」を行うことを職務とする機関であるということができるから,
監視委員会は附属機関に当たるものと認められる。
ケ高槻市老人ホーム入所判定委員会
(ア)前記第2の3(2)ケ(ア)の事実のほか,証拠(乙J1の1~6,2の
1・2,3)及び弁論の全趣旨によれば,判定委員会は,老人医療等の
専門家による審査を,福祉事務所長による老人ホームへの入所措置に係
る判断に役立てる目的で設置された機関であること,内科及び精神科の
医師や学識経験者等が委員として選任されていること,平成24年3月
23日及び同年7月27日に同委員会が開催され,対象者に対する審
査・判定が行われ,これに基づいて福祉事務所長による入所措置がとら
れていることが認められる。
(イ)上記のような判定委員会の設置目的,活動実態等に照らせば,判定
委員会は,執行機関が,老人ホームへの入所措置という行政執行のため
に,対象者について入所措置をとるべきかどうか等について専門家によ
る審査を参考とすべく設置する機関であり,「審査」を行うことを職務と
する機関であるということができるから,判定委員会は附属機関に当た
るものと認められる。
これに対し,被告は,市の職員である福祉事務所長が委員会を招集す
るなど,市の職員が主導的に運営しているから,判定委員会は市の内部
組織である旨主張する。しかし,要綱上,市の職員以外の医師等も委員
となることが予定され,現に医師等が委員に含まれている以上,これを
内部組織と評価することはできないから,被告の上記主張は,採用する
ことができない。
コ高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会
(ア)前記第2の3(2)コ(ア)の事実のほか,証拠(乙K1~3)及び弁論
の全趣旨によれば,ネットワーク運営委員会は,市の高齢者虐待防止施
策の検討等を行う目的で設置されたものであること,医師会や老人クラ
ブ連合会等の団体から選出された者が委員となっていること,平成24
年2月27日に委員会が開催され,市の高齢者虐待防止施策について議
論され,委員らにより問題点の指摘等が行われていることが認められる。
(イ)上記のようなネットワーク運営委員会の設置目的,活動実態等に照
らせば,ネットワーク運営委員会は,執行機関が,高齢者虐待防止施策
の推進という行政執行のために外部団体から選出された委員等の意見を
求めるべく設置する機関であり,「諮問」を受けて「審議」を行うことを
職務とする機関であるということができるから,ネットワーク運営委員
会は附属機関に当たるものと認められる。
これに対し,被告は,ネットワーク運営委員会は市の高齢者虐待防止
ネットワークの運営管理を行うのみで,虐待防止策の検討を行うもので
はない旨主張する。しかし,ネットワーク運営委員会議事録(乙K3)
から,委員らによる施策の検討等が行われていることは明らかであるか
ら,被告の上記主張は,採用することができない。
サ高槻市立障害者福祉センター運営協議会
(ア)前記第2の3(2)サ(ア)の事実のほか,証拠(乙L1,2)及び弁論
の全趣旨によれば,センター運営協議会は,学識経験者等の委員らの意
見を得ることによって,福祉センターが行う事業等の推進・改善を行う
目的で設置された機関であること,平成24年4月27日に協議会が開
催され,福祉センターの施設の管理・運営方法に関して委員から改善点
等の意見が出されていることが認められる。
(イ)上記のようなセンター運営協議会の設置目的,活動実態等に照らせ
ば,センター運営協議会は,執行機関が,福祉センター事業の推進・改
善という行政執行のために学識経験者等の意見を求めるべく設置する機
関であり,「諮問」を受けて「審議」を行うことを職務とする機関である
ということができるから,センター運営協議会は附属機関に当たるもの
と認められる。
シ健康たかつき21推進会議
(ア)前記第2の3(2)シ(ア)の事実のほか,証拠(乙M1~4)及び弁論
の全趣旨によれば,推進会議は,学識経験者等の意見を得ることによっ
て,市民の健康作りを支援するための施策である「健康たかつき21」
を推進する目的で設置されたものであること,平成24年2月21日及
び同年8月28日に会議が開催され,健康たかつき21の事業予定,広
報方法等について議論され,委員らから意見が出されたことが認められ
る。
(イ)上記のような推進会議の設置目的,活動実態等に照らせば,推進会
議は,執行機関が,市の健康施策の推進という行政執行のために専門家
等の意見を求めるべく設置する機関であり,「諮問」を受けて「審議」を
行うことを職務とする機関であるということができるから,推進会議は
附属機関に当たるものと認められる。
ス高槻市予防接種運営委員会
(ア)前記第2の3(2)ス(ア)の事実のほか,証拠(乙N1,2)及び弁論
の全趣旨によれば,予防接種委員会は,医療専門家の意見を得ることで,
市の予防接種業務を円滑に推進することを目的に設置された機関である
こと,医師会等から選出された委員をもって構成されていること,平成
24年2月13日に委員会が開催され,平成24年度の市の予防接種の
実施方法等について議論され,委員らから意見が出されたことが認めら
れる。
(イ)上記のような予防接種委員会の設置目的,活動実態等に照らせば,
予防接種委員会は,執行機関が,予防接種の実施という行政執行のため
に専門家の意見を求めるべく設置する機関であり,「諮問」を受けて「審
議」を行うことを職務とする機関であるということができるから,予防
接種委員会は附属機関に当たるものと認められる。
セ高槻市予防接種健康被害調査委員会
(ア)前記第2の3(2)セ(ア)の事実のほか,証拠(乙O2,3)及び弁論
の全趣旨によれば,健康被害調査委員会は,医療専門家による調査やそ
の調査に基づく意見を得ることで,市の予防接種事業により生じた健康
被害の適正かつ円滑な処理を図ることを目的として設置された機関であ
ること,平成23年9月26日に委員会が開催され,予防接種実施時の
過誤防止方法等に関して議論され,委員らから意見が出されていること
が認められる。
(イ)上記のような健康被害調査委員会の設置目的,活動実態等に照らせ
ば,健康被害調査委員会は,執行機関が,予防接種による健康被害の処
理等の行政執行のために専門家の調査やそれに基づく意見を得るべく設
置する機関であり,「調査」を行うことや「諮問」を受けて「審議」を行
うことを職務とする機関であるということができるから,健康被害調査
委員会は附属機関に当たるものと認められる。
ソ高槻市地球温暖化対策実行計画協議会
(ア)前記第2の3(2)ソ(ア)の事実のほか,証拠(乙P1~8)及び弁論
の全趣旨によれば,温暖化対策協議会は,学識経験者等の意見を得るこ
とによって市の温暖化対策施策(アクションプラン)を推進することを
目的に設置された機関であること,平成23年12月22日,平成24
年2月10日及び同年8月22日に会議が開催され,アクションプラン
の改善点等に関して議論され,委員から意見が出されて,その審議結果
が市長に報告されていることが認められる。
(イ)上記のような温暖化対策協議会の設置目的,活動実態等に照らせば,
温暖化対策協議会は,執行機関が,温暖化対策施策の推進という行政執
行のために専門家等の意見を求めるべく設置する機関であり,「諮問」を
受けて「審議」を行うことを職務とする機関であるということができる
から,温暖化対策協議会は附属機関に当たるものと認められる。
タ高槻市採石等公害防止対策協議会
(ア)前記第2の3(2)タ(ア)の事実のほか,証拠(乙Q1~4)及び弁論
の全趣旨によれば,公害防止協議会は,採石事業者や関係住民等による
協議や調査によって,市内の採石事業による公害の防止を図る目的で設
置された機関であること,平成23年11月17日及び同月25日に公
害防止協議会の調査部会や監視部会が採石現場等の視察を行ったこと,
平成24年7月24日に開催された総会において各事業所の公害防止対
策等の報告が行われ,調査部会等が引き続き採石事業場等の視察等を行
う方針が確認されたことが認められる。
(イ)上記のような公害防止協議会の設置目的,活動実態等に照らせば,
公害防止協議会は,執行機関が,採石事業による公害の防止という行政
執行のために,関係者等を含めて採石事業場における公害防止に関する
協議,調査等をすべく設置する機関であり,「調査」を行うことや「諮問」
を受けて「審議」を行うことを職務とする機関であるということができ
るから,公害防止協議会は附属機関に当たるものと認められる。
チ高槻市障害児就学指導委員会
(ア)前記第2の3(2)チ(ア)の事実のほか,証拠(乙R1の1~12,3,
4の各1~3)及び弁論の全趣旨によれば,就学指導委員会は,教育専
門家等による協議を,市の教育委員会が行う支援学級等への児童等の入
級措置の判断に役立てることを目的として設置された機関であること,
委員の中には,教職員のほか,専門医や学識経験者も含まれていること,
平成23年度及び平成24年度に委員会が複数回(平成23年度は合計
12回)開催されたこと,就学指導委員会から教育委員会に対して児童
等の支援学級への入級等についての答申がされ,教育委員会が就学指導
委員会の答申に基づき支援学級への入級措置等をとっていることが認め
られる。
(イ)上記のような就学指導委員会の設置目的,活動実態等に照らせば,
就学指導委員会は,執行機関が,支援学級への入級措置等の行政執行の
ために,対象児童等について入級措置等をとるべきかどうかの判断の参
考となる審査をさせるべく設置する機関であり,「審査」を行うことや「諮
問」を受けて「審議」を行うことを職務とする機関であるということが
できるから,就学指導委員会は附属機関に当たるものと認められる。
これに対し,被告は,委員の大半が内部職員であり,就学指導委員会
は市の内部組織であって,附属機関には当たらない旨主張する。しかし,
規則上,市の教職員以外にも,専門医,学識経験者等も委員となること
が予定され,現にそれらの者が委員に含まれている以上,これを内部組
織と評価することはできないから,被告の上記主張は,採用することが
できない。
3争点②(故意・過失等)について
(1)前記2のとおり,本件各組織等は,いずれも附属機関に当たるにもかか
わらず,法律又は条例によることなく設置されているものであるから,その
設置は,附属機関条例主義を採用する法138条の4第3項に反して違法で
あり,委員等に対する報償費の支払に係る本件各財務会計行為も,法令上の
根拠を欠き,違法であるというべきである。
なお,地方公共団体において,長の権限に属する財務会計上の行為を,補
助職員が専決により処理した場合には,長は,補助職員が財務会計上の違法
行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によ
りこれを阻止しなかったときに限り賠償責任を負うと解するのが相当である
(最高裁平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁)。
(2)後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
ア社団法人地方制度調査会が附属機関や附属機関に準じる機関の設置状況
等について調査を行ったところ,平成22年4月1日の時点で調査につい
て回答を寄せた144市のうち137市(95.1%)が,法138条の
4第3項に基づき設置された附属機関以外に,要綱等により設置された「附
属機関に準じる機関」を設けていた。(乙A6の1)
イ附属機関の意義について解釈を示したり,具体的な事例について附属機
関該当性の判断を示した最高裁判例や,法律又は条例によらずに設置され
た附属機関に相当する機関に係る支出について,その適法性を判断した最
高裁判例は存在しない。
ただし,下級審の裁判例では,本件各財務会計行為(平成23年7月1
2日から平成24年11月15日までの間に行われた。)がされる以前に
言い渡されたものとして,法律又は条例によらずに附属機関に該当する機
関を設置することは違法であり,その委員等に対して報償費を支出するこ
とも違法である旨判示するとともに,訴訟において問題とされた組織につ
いて附属機関該当性を認めてその設置が違法である旨判示したものが複数
ある(名古屋地方裁判所平成10年10月30日判決,さいたま地方裁判
所平成14年1月30日判決,福岡地方裁判所平成14年9月24日判決,
岡山地方裁判所平成20年10月30日判決,広島高等裁判所岡山支部平
成21年6月4日判決)。また,本件各財務会計行為が行われた後に言い渡
されたものとして,上記下級審裁判例と同旨のもの(大阪高等裁判所平成
25年11月7日判決,その原審である奈良地方裁判所判決)や上記各判
決では示されたことがなかった解釈(濫設置に当たらず,かつ,議会によ
る民主的統制の必要のない機関であれば,その設置は首長の合理的な組織
編成権限に委ねられ,附属機関には当たらないとの解釈)の下に,訴訟で
問題とされた組織について附属機関該当性を否定したものがある(松江地
方裁判所平成25年8月5日判決)。(乙A8,9,11,12)
ウ本件各財務会計行為が行われた当時,法138条の4第3項所定の「附
属機関」の意義の解釈,例えば,①附属機関が合議制であることを要する
か,②附属機関は恒常的なものが予定され,臨時的・一時的に設置される
ものは附属機関には当たらないかなどについては,論者(行政法学者や実
務家等)の間で必ずしも見解の一致をみておらず,ァ附属機関は合議制の
機関であるとする見解,ィ「臨時的・一時的」会議組織であれば,恒常的
な「機関」ではなく,住民参加手続の一場面として条例ではなく要綱に基
づき設置することも許されるとする見解,ゥ条例に基づかずに設置された,
審議会的機能を有する,職員以外の外部の者を構成員とするものは行政機
関ではなく,情報・政策立案への助言委託先とみるべきものであり,これ
を違法の組織とみることはできないとする見解,ェ要綱等によって執行機
関の補助職員以外の外部の者が委員等として加わる委員会,協議会等につ
いては,「機関」とは区別して,行政運営上の意見聴取,情報や政策等に関
して助言を求める等の場として設けられるもので,法138条の4第3項
に違反するものではないとする見解などもあり,住民参加の促進や行政対
応の迅速性,柔軟性確保の観点から,附属機関の範囲を限定的に解しよう
とする見解が有力であった。(甲A13,乙A1,2,7,8,10)
(3)前記(2)アの認定事実によると,平成22年当時,多くの市において,法
138条の4第3項所定の附属機関に相当すると考えられる機関が法律又は
条例によらずに設置されていたものと推認され,本件各財務会計行為が行わ
れた当時も,行政実務上,附属機関に相当する機関を法律又は条例によらず
に設置することが違法であるとの認識は必ずしも一般化されていなかったも
のということができる。
また,前記認定のとおり,附属機関の意義について解釈を示したり,具体
的な事例について附属機関該当性の判断を示した最高裁判例はない。また,
下級審裁判例をみても,本件各財務会計行為がされた以前に,訴訟で問題と
された組織について附属機関該当性を肯定したものが少なからず存在するも
のの,本件各財務会計行為がされた後に,それ以前の下級審裁判例では見ら
れなかった附属機関の意義についての解釈を示して,訴訟で問題とされた機
関の附属機関該当性を否定するものも現れており,このような状況からは,
下級審裁判例のレベルでも,必ずしも,附属機関の意義の解釈やそのあては
めについて確立した判断が形成されていたとまでは断じ難い。
さらに,前記認定のとおり,学説上も,附属機関の意義の解釈について,
見解の一致はみられず,住民参加の促進や行政対応の迅速性,柔軟性確保の
観点から,附属機関の範囲を限定的に解しようとする見解も有力であったの
であり,当裁判所において,そのような解釈を採用しないことは前記2(1)
イ(ア)で説示したとおりであるが,そこでも指摘したように,上記各見解も,
相応の合理性があることは否定できない。
これらの事情に加えて,本件各財務会計行為が,少なくとも外形的には本
件各組織等の委員等の役務の提供に対する対価とみられるものであることを
も併せ考慮すると,Aが弁護士であることをしんしゃくしても,Aにおいて,
本件各財務会計行為が行われた当時,本件各組織等が附属機関に該当するこ
と,さらには,自らや市の職員が各財務会計行為を行うことが違法,であり,
これによって市に損害を与えることになることを認識し又は認識し得たもの
とまでは認められない。
そうすると,Aが,故意又は過失により,本件各組織等に係る支出負
担行為等について,自ら行わない義務又は市の職員が行うことを阻止す
べき指揮監督上の義務に違反したものとまでは認められない。
これに対し,原告は,昭和29年3月2日,「附属機関に関する条例」が
制定され(甲A11),同条例は,平成10年から平成23年までの間に,
毎年のように,合計20回も改正されていること等を指摘し,Aは本件各組
織等が附属機関に該当し,その設置が違法であって,本件各財務会計行
為も違法であることを認識できたはずである旨主張する。しかし,原告
が指摘する事情をもって,直ちに,Aが本件各財務会計行為の当時,本
件各組織等の設置の違法性や本件各財務会計行為の違法性を認識し,又
は認識することができたとまでは認めることができず,他に前記認定を
覆すに足りる証拠,事情はない。したがって,原告の上記主張は,採用
することができない。
4結論
以上によれば,本件訴えのうち,別紙「組織等目録」記載ア,イ,エの各組
織等に関する公金の支出の差止めを求める部分は不適法であり,却下を免れず,
他方,上記目録記載ウ,コ,サ及びタの各組織等に関する公金の支出の差止め
に係る原告の請求は理由がある。また,原告の法242条の2第1項4号本文
に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がな
い。
よって,本件訴えのうち,別紙「組織等目録」記載ア,イ,エの各組織等に
関する公金の支出の差止めを求める部分を却下し,同目録記載ウ,コ,サ及び
タの各組織等に関する公金の支出の差止めに係る原告の請求を認容し,原告の
その余の請求はいずれも棄却することとし,訴訟費用につき行政事件訴訟法7
条,民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官西田隆裕
裁判官斗谷匡志
裁判官狹間巨勝
別紙
組織等目録
ア高槻市事業公開評価会
イ高槻市営バス営業所売上金不明事案特別調査員
ウ高槻市特別顧問
エ高槻市交通部に関する特別改革検討員
オ高槻市行財政改革懇話会
カ高槻市指定管理者選定委員会
キ高槻市地域情報化推進市民会議
ク高槻市入札等監視委員会
ケ高槻市老人ホーム入所判定委員会
コ高槻市高齢者虐待防止ネットワーク運営委員会
サ高槻市立障害者福祉センター運営協議会
シ健康たかつき21推進会議
ス高槻市予防接種運営委員会
セ高槻市予防接種健康被害調査委員会
ソ高槻市地球温暖化対策実行計画協議会
タ高槻市採石等公害防止対策協議会
チ高槻市障害児就学指導委員会

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