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平成八年(ワ)第一六三五号 特許権侵害差止等請求事件
 判 決
原       告中濃産業株式会社
右代表者代表取締役【A】
右訴訟代理人弁護士 伊神喜弘
右補佐人弁理士 【B】
被      告    関西ゴム産業株式会社
右代表者代表取締役    【C】
被       告    【C】
被       告    【D】
被       告    【E】
右被告四名訴訟代理人弁護士  尾川雅清
同              権藤健一
同              田中千博
右被告四名補佐人弁理士 【F】
同              【G】
同              【H】
  主     文
一 被告関西ゴム産業株式会社は、別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載
の各物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
二 被告関西ゴム産業株式会社は、その保管にかかる別紙イ号物件目録及び別紙
ロ号物件目録記載の各物件を破棄せよ。
三 被告関西ゴム産業株式会社は、原告に対し、金六七六万八四八六円及び内金
六四八万二六六九円に対する平成八年二月二七日から、内金二八万五八一七円に対
する平成一一年五月一日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告の被告【C】、同【D】及び同【E】に対する請求、並びに被告関西ゴ
ム産業株式会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
五 訴訟費用は、原告と被告関西ゴム産業株式会社との間においては、原告に生
じた費用と同被告に生じた費用の各四分の三を原告の負担とし、その余を同被告の
負担とし、原告と被告【C】、同【D】及び同【E】との間においては全部原告の
負担とする。
六 この判決は、第三項に限り仮に執行することができる。
 事実及び理由
第一 請求
一 被告関西ゴム産業株式会社は、別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載
の各物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
二 被告関西ゴム産業株式会社は、その保管にかかる別紙イ号物件目録及び別紙
ロ号物件目録記載の各物件並びに同各物件の材料である外装タイヤ及び内装タイヤ
を破棄せよ。
三 被告関西ゴム産業株式会社は、別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機を除去
せよ。
四 被告らは、原告に対し、各自、金六一〇五万円及び内金五〇〇〇万円に対す
る平成八年二月二七日から、内金一一〇五万円に対する平成一一年五月一日から各
支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件は、発明の名称を「複層タイヤ」とする特許発明の特許権者である原告
が、被告関西ゴム産業株式会社並びにその代表取締役及び取締役らであるその余の
被告らに対し、被告関西ゴム産業株式会社の製造、販売する複層タイヤは同発明の
技術的範囲に属すると主張して、その差止め等と損害賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実等
1 原告は、タイヤの修理及び販売、自動車の販売及びリース、レンタル等を
目的とする株式会社である。
 被告関西ゴム産業株式会社(以下「被告会社」という。)は、生成ゴム材
料の販売、中古タイヤの販売、産業廃棄物処分業等を目的とする株式会社であり、
被告【C】(以下「被告【C】」という。)はその代表取締役、被告【D】(以下
「被告【D】」という。)及び被告【E】(以下「被告【E】」という。)はその
取締役である。
2 原告の特許権
 原告は左記特許権(以下「本件特許権」といい、特許請求の範囲1項の発
明を「本件第一発明」、同3項の発明を「本件第三発明」、本件第一発明及び本件
第三発明を合わせて「本件発明」という。)を有している。
(一) 発明の名称 複層タイヤ
(二) 出願日 昭和五九年三月一六日(特開昭五九―五一五八九)
(三) 出願公告日 平成二年八月三〇日(特公平二―三八四〇一)
(四) 登録日 平成三年七月一五日
(五) 特許番号 第一六一〇八三〇号
(六) 特許請求の範囲は、別添特許公報(以下「本件公報」という。)の該
当欄記載のとおりである。
3 本件第一発明及び本件第三発明は、次のとおり分説される。
(一) 本件第一発明
A クラウン部のトレッドパターンを切削して、ショルダー部及びクラウ
ン部の外表面を滑かに仕上げると共にタイヤ内部に装着された気密性を保つための
チューブの圧力に抗する内装タイヤと、
B 一方のサイドウォール部の中央よりビード部寄りで切断し、リムに固
定するビード部を一方のみとした外装タイヤからなり、
C 上記外装タイヤの内部に上記内装タイヤを装着してなることを特徴と
する複層タイヤ。
(二) 本件第三発明
A′ 外表面を滑かに仕上げ、タイヤ内部に装着された気密性を保つため
のチューブの圧力に抗する内装タイヤと、
B′ 一方のビード部またはビード部及びレインフォース部を有せず、リ
ムに固定するビード部を一方のみとした外装タイヤからなり、
C′ 上記外装タイヤの内部に上記内装タイヤを装着してなることを特徴
とする複層タイヤ。
4 本件発明の作用効果は、外装タイヤの内部に内装タイヤを装着することに
よって、チューブの内圧が内装タイヤによって保持され、外装タイヤに受けた外傷
は、内圧の影響を受けて広がることがないから、外装タイヤを摩耗するまで使用で
きることにある。
5 被告会社は、外装タイヤの内部に内装タイヤを装着してなる複層タイヤを
製造、販売している(なお、右複層タイヤの構成については、後記第三、一のとお
り、原被告間に争いがある)。
二 争点
1 被告会社が製造、販売した複層タイヤの性状について
2 被告会社が製造、販売した複層タイヤは、本件発明の技術的範囲に含まれ
るか
3 被告会社が台タイヤを製造、販売した行為は、本件特許権を侵害するとい
えるか
4 代表取締役及び取締役らの責任
5 損害の発生及び額
6 製品及び半製品の破棄並びに複層タイヤ製造機の除去請求について
第三 争点に対する当事者の主張
一 争点1(被告会社が製造、販売した複層タイヤの性状について)
〔原告の主張〕
1 被告会社が製造する複層タイヤは、別紙イ号物件目録記載の複層タイヤ
(以下「イ号物件」という。)又は別紙ロ号物件目録記載の複層タイヤ(以下「ロ
号物件」という。)のどちらかのタイプのものである。
2 右事実は、次の各事実から明らかである。
(一) イ号物件に相当する複層タイヤ(検甲一)は、原告が株式会社佐藤工
務店(以下「佐藤工務店」という。)に依頼し、同工務店から木村タイヤ株式会社
(以下「木村タイヤ」という。)に対し、被告会社の製造した複層タイヤを一本注
文してもらい、平成七年一一月二日に佐藤工務店に納入されたものである。
(二) ロ号物件に相当する複層タイヤ(検甲二)は、原告の補佐人である弁
理士【B】(以下「【B】弁理士」という。)が大東建設株式会社の社長【I】
(以下「【I】社長」という。)に依頼し、【I】社長から木村タイヤを介して被
告会社が製造した複層タイヤを二本注文してもらい、平成八年二月五日ころ【B】
弁理士の下に納入されたもののうちの一本である。
 なお、木村タイヤは、トーヨータイヤ兵庫販売株式会社(以下「トーヨ
ータイヤ兵庫販売」という。)に右複層タイヤに用いる再生タイヤ二本を注文し、
被告会社は、トーヨータイヤ兵庫販売から、平成八年一月二四日発送の右再生タイ
ヤ二本を受領している。
(三) 原告は、平成九年二月一三日、吉田直土木株式会社(以下「吉田直土
木」という。)阪奈作業所より、使用済みの複層タイヤ二六本を引き取ったとこ
ろ、そのうち六本はイ号物件又はロ号物件に該当する複層タイヤであった。
 右六本のタイヤは、西日本タイヤ株式会社(以下「西日本タイヤ」とい
う。)が平成七年一二月二八日及び平成八年一月一二日に、被告会社から合わせて
八本仕入れ、それを吉田直土木に納入したものである。
(四) 【B】弁理士は、平成一〇年五月二〇日、関西リサイクルセンターに
おいて、被告会社が製造したと思われる切削したタイヤを確認した。
(五) 外装タイヤに一ランク下の規格の内装タイヤを装着するためには、内
装タイヤのクラウン部からショルダー部にかけて丸みを持たせる必要があるから、
被告会社が製造する複層タイヤの内装タイヤの外表面も右のような状態になってい
ると考えられる。
〔被告らの主張〕
1(一) 原告の主張1は否認する。
(二)(1) 原告の主張2(一)について
 検甲一の複層タイヤは原告のもとで外装タイヤと内装タイヤが分離さ
れているから、製造、販売当時の形状を示す証拠とはならない。
 また、検甲一が被告会社の製造したものであるということについて
は、「購入する際、関西ゴム産業と指定した。」との原告代表者の主張以外には積
極的証拠がなく、検甲一が被告会社の製造に係るものであることの証明はない。
(2) 原告の主張2(二)について
 被告会社が、平成八年一月二四日ころ、トーヨータイヤ兵庫販売か
ら、再生タイヤ二本を受領したこと、同じころ、木村タイヤに対し、右再生タイヤ
を用いた複層タイヤを二本販売したことは認めるが、右二本のタイヤのうちの一本
がロ号物件に相当する複層タイヤであることは否認する。原告の主張する入手経路
は、通常の流通経路とは異なる上、被告会社が木村タイヤに出荷してから【B】弁
理士のもとに到達するまで一〇日を要し、その間多くの人手を経ているから、検甲
二は、被告会社が製造したタイヤの形状を示す証拠としての信用性は低い。
(3) 原告の主張2(三)について
 被告会社が、西日本タイヤに対し、平成七年一二月二八日及び平成八
年一月一二日に、複層タイヤを合わせて八本販売したことは認めるが、その余の事
実は否認する。
 右各複層タイヤは、内装タイヤの外表面が、切削してあったり、凹状
に陥没したりするもので、被告会社が製造するものとは異なる上、右各内装タイヤ
は三種類の方法で切削されていることからすると、複数の会社により製造されたも
のである。
 また、被告会社が販売してから原告が入手するまで、一年以上経過し
ているから、右各複層タイヤが被告会社が製造したものと同一であることの証明力
はないに等しい。
(4) 原告の主張2(四)について
 関西リサイクルセンター内にあった切削したタイヤが被告会社が製造
したものであるとの原告の主張は、単なる推測にすぎず、何ら根拠はない。
(5) 原告の主張2(五)について
 外装タイヤより一ランク下の規格の内装タイヤであっても、中古のも
のであれば、外表面が滑らかに仕上げられていなくても、装着可能である。
(三) 被告会社は、手元にある中古タイヤを外装タイヤ及び内装タイヤとし
て適宜組み合せて複層タイヤを製造しており、内装タイヤの外表面を切削する必要
はなく、実際、切削していない。
2 被告会社は、別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「C型及
びD型タイヤ販売一覧表」に記載のとおりA型ないしD型タイヤを販売したが、そ
の構成は、次のとおりである。
(一) A型及びB型タイヤ
 A型タイヤの外装タイヤは、ナイロンタイヤ(大きさは、一〇・〇〇―
二〇、九・〇〇―二〇、八・二五―二〇、七・五〇―一六〔注・右一〇・〇〇―二
〇の一〇・〇〇はタイヤ断面幅、二〇はリム径をそれぞれインチで表示したも
の〕)であり、片ビードを切断してある。
 B型の外装タイヤは、ナイロンタイヤ(大きさは、二三・五―二五、二
〇・五―二五、一七・五―二五、一四・〇〇―二四、一三・〇〇―二四の大型のも
の)であり、ORタイヤ又はジャンボタイヤと呼ばれているオフロードタイプのも
のであり、片ビードを切断してある。
 A型及びB型タイヤの内装タイヤは、両ビードを切断せず、その外表面
は、切削しておらず、トレッドパターンの凹凸を有する中古のタイヤである(ただ
し、トーヨージャイアントタイヤ販売株式会社(以下「トーヨージャイアント」と
いう。)に販売したものは、新品の内装タイヤが用いられている。)。
 具体的な構成は、別紙被告主張物件目録(検乙一のタイヤに相当するも
の)に示すとおりである。
(二) C型タイヤ
 外装タイヤは、スチールタイヤ(大きさは、一〇・〇〇R二〇)であ
り、両ビードは切断できないため、切断していない。
 内装タイヤは、両ビードをビード部とサイドウォール部の境界付近で斜
めに切断した中古のタイヤである。
(三) D型タイヤ
 外装タイヤは、ナイロンチューブタイヤで、両ビードを切断している。
 内装タイヤは、ノーパンクタイヤで、両ビードを切断していない新品又
は中古のタイヤである。
〔被告らの主張に対する原告の反論〕
(一) 検乙一は、被告会社が本件訴訟提起後に見本として製造したものであ
って、被告会社が実際に製造、販売したものと同一であるとはいえない。
(二) C型タイヤについて
 ラジアルタイヤのビードは切断できないことはないから、外装タイヤが
ラジアルタイヤであるとの理由から、その両ビードが切断されていないものである
ということはできない。
 内装タイヤの両ビードを切断した場合、外装タイヤと内装タイヤとの境
界にギャップが発生し、すぐにパンクしてしまい使用できない。
(三) D型タイヤについて
 被告会社が株式会社吉本商店に販売した複層タイヤについては、外装タ
イヤの両ビードが切断されたものであることは認めるが、被告らがD型タイヤを販
売したと主張するその余の取引先については、外装タイヤの両ビードが切断された
複層タイヤであることは否認する。
 被告らがD型タイヤのみを販売したと主張する有限会社タイヤショップ
松井の社長【J】(以下「【J】社長」という。)は、原告代理人に対し、被告会
社から購入した複層タイヤの外装タイヤは一方のビード部を切断したものである旨
回答している。
 外装タイヤの両ビードを切断した場合、内装タイヤに固定するのが極め
て困難になるから、被告会社が、そうした複層タイヤを販売することは考えにく
い。
二 争点2(被告会社が製造、販売した複層タイヤは、本件発明の技術的範囲に
含まれるか)
〔原告の主張〕
1 イ号物件の構成α、βは第三発明の構成要件A′を、同γは構成要件B′
を、同δは構成要件C′をそれぞれ充足するから、イ号物件は、本件第三発明の技
術的範囲に属する。
 ロ号物件の構成α、βは第一発明の構成要件Aを、同γは構成要件Bを、
同δは構成要件Cをそれぞれ充足するから、ロ号物件は、本件第一発明の技術的範
囲に属する。
2 被告らがD型タイヤと主張するタイヤについて
 内装タイヤについては、ノーパンクタイヤといっても、大型タイヤの場合
は、チューブに空気の代わりに「発砲ウレタン」を入れるものであり、この場合、
本件特許の「タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する
内装タイヤ」であることは間違いない。
〔被告らの主張〕
1 本件発明における「外表面を滑らかに仕上げ」とは、明細書の記載からす
ると、内装タイヤの外表面をトレッドパターンの凹凸がない状態にまで仕上げるこ
とを意味すると解すべきである。
 本件発明の出願前に公知であった実公昭五八―三二九六六号実用新案公報
(乙一)に記載の技術と本件発明とを比較すると、内装タイヤの外表面にトレッド
パターンを有するか否かの点を除き、すべての構成が共通しているから、内装タイ
ヤの外表面にトレッドパターンを有するものが本件発明の技術的範囲に含まれると
解することはできない。
2 右解釈を前提とすると、別紙被告主張物件目録記載の構成のA型及びB型
タイヤは、内装タイヤの外表面にトレッドパターンの凹凸を有するから、本件第一
発明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件A′を備えていない。
 また、外装タイヤの両ビード部を切断せず、内装タイヤの両ビード部を切
断したC型タイヤ、及び外装タイヤの両ビード部を切断し内装タイヤにノーパンク
タイヤを用いたD型タイヤは、いずれも、本件第一発明ないし本件第三発明の技術
的範囲に属さない。
三 争点3(被告会社が台タイヤを製造、販売した行為は、本件特許権を侵害す
るといえるか)
〔原告の主張〕
 被告会社が製造、販売した台タイヤのうち大きさが八・二五R以上のもの
は、本件発明の技術的範囲に属する複層タイヤの内装タイヤとして出荷されたもの
であるから、右台タイヤの製造、販売行為は、侵害行為を組成した物の譲渡(特許
法一〇二条一項参照)に該当する。
〔被告らの主張〕
 中古タイヤのトレッド部分を取り除き新しいトレッドを張り付けることによ
り再生したタイヤを再生タイヤという(更生タイヤともいう。)が、被告会社は、
タイヤ販売店等から中古タイヤを取得して、再生タイヤ用の台タイヤとして流通業
者や再生タイヤ業者に販売している。
 したがって、被告会社が販売している台タイヤは、複層タイヤとは関係がな
い。
四 争点4(代表取締役及び取締役らの責任)
〔原告の主張〕
1 被告【C】は、被告会社の代表取締役として、その職務の遂行として被告
製品を製造、販売したから、原告に対し、民法七〇九条による損害賠償責任を負
う。
2 被告【D】及び被告【E】は、被告会社の取締役として、会社の違法な営
業行為については未然に防止し、すでに違法行為を行っているときにはこれを直ち
に中止すべき注意義務があるのに、これを怠った重大な過失があるから、原告に対
し、商法二六六条の三第一項による損害賠償責任を負う。
〔被告らの主張〕
 原告の右主張は争う。
五 争点5(損害の発生及び額)
〔原告の主張〕
1 複層タイヤ及び台タイヤの製造、販売に伴う損害
(一) 主位的請求
(1) 被告会社は、平成二年五月一日から平成一一年四月三〇日までの間
に、本件第一発明もしくは本件第三発明を侵害する複層タイヤを少なくとも一七八
九本製造、販売した。
 被告会社の右販売行為がなければ販売することができた複層タイヤの
一本当たりの原告の利益は四万円であるから、特許法一〇二条一項により、原告の
被った損害は、七一五六万円となる。
(2) 台タイヤについて
 被告会社は、平成二年五月一日から平成八年四月三〇日までの間に、
台タイヤ五五四九本を製造、販売したが、そのうち少なくとも一〇分の一の五五四
本は、複層タイヤの内装タイヤ用に製造、販売されたものである。
 被告会社は、平成八年五月一日から平成一一年四月三〇日までの間
に、複層タイヤの内装タイヤ用として、台タイヤ一四本を販売した。
 被告会社の右台タイヤ合計五六八本の製造、販売行為は、本件特許権
を侵害する行為に該当するところ、被告会社の右行為がなければ販売することがで
きた複層タイヤの一本当たりの原告の利益は四万円であるから、原告の被った損害
は、二二七二万円となる。
(二) 予備的請求
 特許法一〇二条三項に基づき、実施料相当損害金を請求する。
2 弁護士費用及び弁理士費用
 本件訴訟に係る弁護士費用及び弁理士費用としては六三〇万円(平成二年
五月一日から平成八年二月二〇日までの損害に対応した右費用五二五万円、平成八
年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの損害に対応した右費用一〇五万円)
が相当である。
3 原告は、被告らに対し、① 平成二年五月一日から平成八年二月二〇日ま
での右1の損害及び右2の弁護士費用及び弁理士費用の内五〇〇〇万円及びこれに
対する訴状送達の日である平成八年二月二七日から支払済みまで年五分の割合によ
る遅延損害金、② 平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの右1の損
害及び右2の弁護士費用及び弁理士費用の内一一〇五万円及びこれに対する不法行
為の後の日である平成一一年五月一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損
害金の各支払を求める。
〔被告らの主張〕
1 原告の右主張は争う。
2 原告には、被告会社が加工又は加工販売した数量の複層タイヤを販売でき
たとはいえない次のような事情がある。
(一) 本件訴訟において陳述書を提出した被告会社の販売先一四社のうち、
西日本タイヤ及びトーヨージャイアントは、原告のことを知っていたものの、自ら
原告から複層タイヤを購入したことはなく、その余の取引先は原告の存在を知らな
かった。
(二) 原告の複層タイヤの売値は、原告の主張によれば七万五〇〇〇円であ
る一方、被告会社の売値は、A型タイヤが二〇〇〇円から一万円、B型タイヤが八
〇〇〇円から七万円、C型タイヤが一万円から一万二〇〇〇円、D型タイヤが五〇
〇〇円から一万円である。
(三) 複層タイヤ自体に対する需要が近年減退しており、複層タイヤに代替
する製品も多々存する。
六 争点6(製品及び半製品の破棄並びに複層タイヤ製造機の除去請求につい
て)
〔原告の主張〕
 原告は、特許法一〇〇条二項に基づき、被告会社に対し、その保管にかかる
別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録記載の各物件並びに同各物件の材料である
外装タイヤ及び内装タイヤの破棄とともに、本件特許権を侵害するイ号及びロ号物
件の複層タイヤを製造する設備である別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機の除去
を求めることができる。
〔被告らの主張〕
 原告の右主張は争う。
第四 争点に対する判断
一 争点1について
 乙八ないし四一、四二の1、2、四三ないし六二及び弁論の全趣旨によれ
ば、被告会社は、別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「C型及びD
型タイヤ販売一覧表」記載のとおり、複層タイヤを販売したことが認められる(な
お、藤田タイヤ工業所に販売したA型タイヤとして、品番の欄に「内装タイヤ」と
記載されているものは、外装タイヤとともに販売したものであるから、金額を合計
する際にその金額を加算してあるが、数量を合計する際にはその数は加算していな
い。)。
 A型ないしD型タイヤの各形状は次のとおりである。
1 A型タイヤについて
(一)A型タイヤは、外装タイヤの一方のビード部を切断し、リムに固定す
るビード部を一方のみとしたものであること、ビード部の右切断位置はサイドウォ
ール部の中央よりビード部寄りであることは、当事者間に争いがない。
(二)(1) 検甲一の複層タイヤの入手経路について、甲五、六、八、一六ない
し一八、検証の結果によれば、次の事実が認められる。
 原告代表者の【K】は、被告会社が本件特許権を侵害する疑いのある
複層タイヤを製造しているとの情報を得たことから、佐藤工務店に対し、佐藤工務
店の名で木村タイヤに対し関西ゴムを指定して複層タイヤを一本注文してもらうよ
うに依頼した。
 佐藤工務店は、右依頼に従って木村タイヤに注文したところ、平成七
年一一月二日、木村タイヤから、複層タイヤが一本納入されたので、同複層タイヤ
を原告方に送付し、それを【B】弁理士の事務所に運び込んで、弁理士【L】に鑑
定を依頼し、同弁理士の立会いのもとで外装タイヤと内装タイヤとを分解して写真
を撮影した後、再度複層タイヤに戻し、原告は、同タイヤを検甲一として当裁判所
に提出した。そして、平成八年一二月一〇日の本件検証手続において、検甲一の外
装タイヤを切断し内装タイヤを分離して、検証が実施された。
(2) なお、被告らは、検甲一の複層タイヤは原告のもとで外装タイヤと内
装タイヤが分離されているから、製造、販売当時の形状を示す証拠とはならない旨
主張するが、右入手経路、分解の経緯が不自然なものということはできず、これら
の過程において、検甲一の内装タイヤが付け替えられたことを疑わせるに足りる事
情はないし、その他、検甲一の複層タイヤが被告会社の製造に係るものであること
を覆すに足りる証拠はない。
(3) そして、甲五、検甲一、検証の結果によれば、検甲一の複層タイヤ
は、外装タイヤは、大きさが一〇・〇〇―二〇で、一方のビード部が切除されたも
のであり、内装タイヤは、大きさが八・二五R二〇で、ショルダー部が削られ、そ
の外表面は、トレッドパターンが摩耗してその溝がかなり浅くなり、少なくとも極
端な凹凸のない状態であることが認められる。
(三)(1) 検甲二の複層タイヤの入手経路について、被告会社が、平成八年一
月二四日ころ、トーヨータイヤ兵庫販売から、再生タイヤ二本を受領したこと、同
じころ、木村タイヤに対し、右再生タイヤを用いた複層タイヤを二本販売したこと
は当事者間に争いがなく、甲九の1ないし3、4及び5の各イ、ロ、一〇の1ない
し3、一一の1ないし3、一三、一六、一八、二六、二七の2、乙一三によれば、
次の事実が認められる。
 【B】弁理士は、平成八年一月二〇日ころ、【I】社長に木村タイヤ
及び被告会社に複層タイヤの購入を依頼し、承諾を得たため、同月二三日、その旨
ファクシミリにて送信した。
 木村タイヤは、【I】社長から右依頼を受け、トーヨータイヤ兵庫販
売に対し、外装タイヤにするための再生タイヤ二本を被告会社に送付することとし
て一本一万円で発注するとともに、被告会社に対し、同再生タイヤを用いた複層タ
イヤ二本を一本五〇〇〇円で発注した。
 被告会社は、同月二四日、トーヨータイヤ兵庫販売から再生タイヤ二
本の送付を受け、それを用いて複層タイヤ二本を製造し、同年二月一日、【I】社
長のもとに運賃着払いで送付した(なお、右複層タイヤ二本の送付の際の送り状
(甲九の4のロ)の出荷主欄に「トーヨータイヤ兵庫販売」と記載されているが、
右記載は、右複層タイヤ二本がトーヨータイヤ兵庫販売から出荷されたことまでを
示すものとはいえないから、右認定を覆すものではない。)。
 【I】社長は、右二本の複層タイヤを【B】弁理士の事務所に送付
し、【B】弁理士が、平成八年二月七日、右タイヤを受け取って駐車場に保管して
いたが、原告は、そのうちの一本を検甲二として当裁判所に提出し、他の一本は、
平成九年二月八日に同事務所において分解し写真撮影をした後、再度組み立てて保
管することとした。そして、平成八年一二月一〇日の本件検証手続において、検甲
二の外装タイヤを切断し内装タイヤを分離して、検証が実施された。
(2) 被告らは、右入手経路は、通常の流通経路とは異なること、【B】弁
理士のもとに到達するまでの期間、多くの人手を経ていること等を理由に、検甲二
の信用性が低い旨主張するが、右入手経路が不自然なものということはできない
し、その他、検甲二の複層タイヤが被告会社の製造に係るものであることを覆すに
足りる証拠はない。
(3) 甲二〇、検甲二、検証の結果によれば、右二本の複層タイヤは、外装
タイヤは、大きさが一〇・〇〇―二〇で、一方のビード部が切除されたものであ
り、内装タイヤは、大きさが九・〇〇―二〇で、ショルダー部とクラウン部が削ら
れ、トレッドパターンが摩耗してその凹凸がほとんどない状態になっていることが
認められる。
(四) 原告が吉田直土木から引きとった複層タイヤについて、被告会社が、
西日本タイヤに対し、平成七年一二月二八日及び平成八年一月一二日に、合わせて
八本販売したことは争いがなく、甲二九の7ないし9、甲三〇ないし三三によれ
ば、西日本タイヤは、吉田直土木に対し、平成八年一月一二日及び同月二二日にそ
れぞれ四本ずつ複層タイヤを販売したこと、原告は、平成九年二月一三日、吉田直
土木から使用済み複層タイヤ二六本を引き取ったところ、そのうちの六本の複層タ
イヤが外装タイヤの一方のビード部が切断されたタイプのものであり、原告代理人
及び補佐人において右六本のタイヤについて実況見分したこと、右六本のうち二本
について内装タイヤを取り出したところ、いずれも両ビード部が切断されていない
タイヤであり、そのうちの一本が、トレッドパターンの凹凸が全く残らない程度に
切削されたものであり、他の一本が、トレッドパターンの凹凸が残ってはいるもの
の極端な凹凸が生じない程度に切削されたものであったことが認められる。
 しかし、右実況見分に係る六本の複層タイヤが被告会社が製造したもの
であるか否かについては、原告代理人作成の催告書(甲二八の1)において、吉田
直土木の阪奈作業所長【M】が、右六本のタイヤは西日本タイヤから購入したと述
べている旨の記載があるものの、その他に右六本のタイヤと被告会社とを結びつけ
る証拠がない。そうすると、右六本のタイヤが被告会社が製造したものである可能
性は否定できないものの、原告代理人作成の右催告書のみからでは、右六本のタイ
ヤが、被告会社が製造したものであることを認めることはできない。
(五) なお、原告は、【B】弁理士が平成一〇年五月二〇日関西リサイクル
センターにおいて被告会社が製造したと思われる切削したタイヤを確認した旨主張
し、【B】弁理士作成の実況見分報告書(甲三四)には、同趣旨の記載があるが、
関西リサイクルセンターにおいて確認したタイヤが被告会社の製造に係るものであ
ることについて、【B】弁理士の推測以外に何ら客観的な根拠がないといわざるを
得ず、右証拠は、被告会社が製造したタイヤの状況を示す証拠としては採用できな
い。
(六) また、被告主張物件目録記載の複層タイヤに相当する検乙一は、弁論
の全趣旨によれば、被告会社が本件訴訟提起後に証拠として提出するために作成し
たものであることが認められ、その他に検乙一が被告会社が製造、販売した複層タ
イヤと同一の形状のものであることを認めるに足りる証拠はないから、検乙一を被
告会社が製造、販売したタイヤの形状を示す証拠としては採用できない。
(七) そうすると、被告会社が販売したA型タイヤは、そのすべての形状を
示す証拠はないものの、右(二)及び(三)記載のとおり、A型タイヤのうちの三本が
検甲一ないし検甲二に相当するタイヤであり、A型タイヤの中に検甲一及び検甲二
とは異なる形状のものが存在することを推認させる反証もないから、A型タイヤは
検甲一ないし検甲二に相当するタイヤであることが推認できるというべきである。
また、右(四)記載の事実についても、被告会社が製造したA型タイヤが検甲一ない
し検甲二に相当するものであることと矛盾するものではなく、その他、右推定を覆
すに足りる証拠はない。
2 B型タイヤについて
(一)B型タイヤは、外装タイヤの一方のビード部を切断し、リムに固定す
るビード部を一方のみとしたものであること、ビード部の右切断位置はサイドウォ
ール部の中央よりビード部寄りであることは、当事者間に争いがない。
(二) 乙四六、六三、七二の1ないし7によれば、B型タイヤは、ORタイ
ヤ又はジャンボタイヤと呼ばれているオフロードタイプの大型タイヤであり、被告
会社がトーヨージャイアントに販売したB型タイヤの内装タイヤが、新品のもので
トレッドの凹凸がそのまま残っていることが認められるが、その余の取引先に販売
したB型タイヤの内装タイヤの形状を直接示す証拠はなく、乙四一、四二の1、六
一、六二及び弁論の全趣旨によれば、トーヨージャイアント以外の取引先に被告会
社が販売したB型タイヤの内装タイヤは、中古のものであること、右取引先のう
ち、四社が、内装タイヤのトレッドパターンは切削してなかった旨述べていること
が認められるにとどまる。
 原告は、B型タイヤの内装タイヤの形状についても、被告会社が製造し
た検甲一及び検甲二の複層タイヤの形状に基づく立証をするのみであるが、右のと
おりその内装タイヤは中古のものであるから、一定程度トレッドパターンが摩耗し
ているとしても、検甲一及び検甲二の複層タイヤとB型タイヤとは、大きさ、形状
が右のとおり異なるものであること、トーヨージャイアントに販売したものにおい
てはトレッドパターンの凹凸が残った新品の内装タイヤを装着していること、トー
ヨージャイアント以外の販売先のうちの四社が、内装タイヤのトレッドパターンの
摩耗の程度については言及していないものの、切削していなかったと述べているこ
とからすると、B型タイヤにまで検甲一及び検甲二の形状と同一であるとの推認が
直ちに働くものとすることはできない。
 また、原告は、外装タイヤに一ランク下の規格の内装タイヤを装着する
には、内装タイヤのクラウン部からショルダー部にかけて丸みを持たせる必要があ
る旨主張し、甲五二、五五の2、3によれば、被告会社が大物タイヤー株式会社
(以下「大物タイヤー」という。)に販売したB型タイヤが、外装タイヤの一ラン
ク下の規格の内装タイヤを装着していることが認められるが(なお、甲五五の4に
よれば、被告会社は二ランク下の内装タイヤを装着した複層タイヤも販売してい
る。)、右事実から直ちに内装タイヤの外表面が検甲一や検甲二と同等の滑らかさ
を有するものと推認することはできない。
 なお、原告代理人作成の報告書(甲五二)及び同陳述書(甲五
四)には、原告代理人が大物タイヤーの社長【N】から「つるつるのタイヤを中に
入れていると思う。」との回答を得たとの事実が記載されている。しかし、【N】
社長作成の陳述書(乙四二の1)には、内装タイヤは外表面は切削してないとの内
容が記載されており、同会社の八幡営業所長【O】の陳述書(乙四二の2)には、
内装タイヤを見たことはなかったが自分の考えで「つるつるのタイヤを中に入れて
いると思う。」と回答したとの内容が記載されており、誰がどのような知見から
「つるつるのタイヤを中に入れていると思う。」と回答したかについて明らかでな
いから、原告代理人作成の右各証拠を採用することはできず、その他、原告が主張
するように、B型タイヤの内装タイヤのトレッドパターンが切削ないし摩耗により
外表面を滑らかに仕上げたものであることを認めるに足りる証拠はない。
3 C型タイヤについて
 C型タイヤが、イ号物件ないしロ号物件に該当するタイヤであることを認
めるに足りる証拠はない。
 かえって、乙七、四四、四八、四九、六〇、六二、七五によれば、C型タ
イヤの外装タイヤは、スチールタイヤ(大きさは、一〇・〇〇R二〇)であり両ビ
ードを切断していないもので、内装タイヤは両ビードを切断した中古のタイヤであ
ること、スチールタイヤには、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びト
レッド部のすべてでスチールコードが使用されているオールスチール構造のもの
と、トレッド部又はトレッド部及びサイド部の上部のみにスチールコードが使用さ
れているST構造ないしスチールブレーカ構造のものとがあり、右外装タイヤに用
いられるものはオールスチール構造のもので、そのビード部は何らかの方法で切断
可能かも知れないが、実際は困難であることが認められる。
 なお、原告は、内装タイヤの両ビードを切断した場合、外装タイヤと内装
タイヤとの境界にギャップが発生し、すぐにパンクしてしまい使用できないと主張
するが、乙三の3ないし5、四四、六四及び六五の各1ないし3並びに弁論の全趣
旨によれば、C型タイヤにおいては、内装タイヤの両ビードの切断位置がビード部
とサイドウォール部の境界付近か否かは明確ではないものの、右切断部は斜めにな
っており、切断部とチューブとの間にフラップが挿入されることが認められるか
ら、右切断部に一定のギャップが生じるとしても、そのギャップが発生することが
不可避なものということはできず、その他、原告の右主張を認めるに足りる証拠は
ない。
4 D型タイヤについて
 D型タイヤが、イ号物件ないしロ号物件に該当するタイヤであることを認
めるに足りる証拠はない。
 かえって、証拠乙八、四〇、四三、四七によれば、D型タイヤの外装タイ
ヤは、ナイロンチューブタイヤで両ビードを切断したもので、内装タイヤはノーパ
ンクタイヤで両ビードを切断していない新品又は中古のタイヤであることが認めら
れる。
 なお、原告は、【J】社長からD型タイヤの外装タイヤは一方のビード部
を切断したものである旨の回答を得ていると主張し、原告代理人作成の報告書(甲
五三)には、右主張に沿う記載があるが、【J】社長自身が作成した陳述書(乙四
三)には、外装タイヤの両ビードを切断したものである旨の記載がある上、右内容
は前記認定の証拠にも合致するものであるから、原告代理人作成の右証拠を直ちに
採用することはできない。
二 争点2について
1 A型タイヤについて
(一)(1)同タイヤは、外装タイヤの一方のサイドウォール部の中央よりビー
ド部寄りで切断し、一方の少なくともビード部を有せず、リムに固定するビード部
を一方のみとしたものであり、本件第一発明の構成要件B及び本件第三発明の構成
要件B′を充足する。
(2) 同タイヤは、内装タイヤは両ビード部を切断せず、タイヤ内部にチュ
ーブを有するものであり、本件第一発明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件
A′の内装タイヤが「タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力
に抗する」との構成を充足する。
(3) 同タイヤは、外装タイヤの内部に内装タイヤを装着した複層タイヤで
あり、本件第一発明の構成要件C及び本件第三発明の構成要件C′を充足する。
(二) 同タイヤのうち、検甲一に相当するタイヤが本件第三発明の構成要件
Aの内装タイヤが「外表面の滑かに仕上げ」たものとの構成を、検甲二に相当する
タイヤが本件第一発明の構成要件A′の内装タイヤが「クラウン部のトレッドパタ
ーンを切削して、ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げ」たものと
の構成をそれぞれ充足するかについて検討する。
(1) 本件公報の発明の詳細な説明中の〔従来技術〕の項には、「実用的な
公知技術として特公昭五七―三四一一二公報を挙げることができる。前記公報に記
載の技術は、第3図及び第4図の要部断面図に示す構造を有するものである。…図
中21はその外側に係合するトレッドパターン22を具備するタイヤカーカスであ
る。23は着脱自在トレッドベルトであり、24は前記トレッドパターン22と係
合する凹凸部を有するトレッドベルト側のトレッドパターンである。」(4欄三四
行ないし5欄一行)、「しかし、この種のタイヤにおいては、着脱自在トレッドベ
ルト23の内側トレッドパターン24とタイヤカーカス21のトレッドパターン2
2との係合によるものであったから、専用のタイヤカーカス21を必要とし、しか
も、使用時にトレッドパターン24及び22相互間の発熱により、特殊な用途に用
いることができても汎用的ではなかった。」(5欄三二行ないし三九行)との記載
がある。
 〔発明の目的〕の項には、「本発明は上記欠点を除去し、特殊なトレ
ッドベルトを使用することなく、市販されているタイヤを切削加工し、これらのタ
イヤを二重にすることによって、タイヤの寿命を延長することを目的とするもので
ある。」(6欄六行ないし一〇行)との記載がある。
 〔発明の概要〕の項には「クラウン部のトレッドパターン
を切削してショルダー部及びクラウン部の表面を滑かに仕上げた内装タイヤ」との
記載がある(6欄一二ないし一四行)。
 〔発明の実施例〕の項には、「前記内装タイヤが市販状態と異なる点
は、第7図に示す様にクラウン部及びショルダー部、必要によりサイドウォール部
の表面を滑かに仕上げた点にある、即ち、ショルダー部からクラウン部に至るトレ
ッド51の凸状部を切削して、そのトレッドパターンを除去し、また、サイドウォ
ール部にデコレーションラインを有するものにあっては、当該デコレーションライ
ンをも切削する。勿論、前記デコレーションラインの程度によっては無視してもよ
い。」(6欄四二行ないし7欄七行)、「クラウン部及びショルダー部及び必要に
より行なうサイドウォール部の切削の深さは、上記外装タイヤ30に内装タイヤ5
0を装着した状態において、外装タイヤ30の形状に影響を与えない程度の切削深
さでよい。」(7欄八ないし一二行)、「外装タイヤ30の内部のカーカスに、ク
ラウン部のトレッドパターンを切削して、ショルダー部及びクラウン部の外表面を
滑かに仕上げた内装タイヤ50の外表面を密接させ装着したものにおいては、外装
タイヤ30の内表面と内装タイヤ50の外表面との間が一体となって変化するか
ら、両者間に摩擦熱が発生し難くなる。」(8欄二一ないし二八行)、
「前記密接とは厳密に言えば、外装タイヤ30のカーカスの内面にも、メーカー毎
に異なる若干の凸状パターンがあり、内装タイヤ50の仕上げにおいても、滑かに
仕上げるとは、加工精度を上げる意味ではなく、極端な凹凸が生じない程度に仕上
げることを意味するものであるから、外装タイヤ30と内装タイヤ50の自己形状
維持力によって結合している状態を意味するものである」(8欄二八ないし三六
行)、「以上の実施例では、市販のタイヤを用いた場合について述べたが、特に内
装タイヤにあっては、その表面の構造を、クラウン部のトレッドパターンを切削し
て、ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げたものであるから、古タ
イヤのクラウン部のトレッドパターンが摩耗したものを使用すると、クラウン部の
トレッドパターンを切削する手間が省けることができ効果的であり、その使用にお
いて、何等新しいタイヤに劣るところがない。」(9欄三三ないし四二行)との記
載がある。
(2) 本件発明の出願前の公知技術として、乙一(実公昭五八―三二九六六
号実用新案公報)記載の技術があるが、同公報によれば、その技術は、実用新案登
録請求の範囲を「ホイール付のタイヤに於いて、チューブの入った内タイヤにそれ
より一回り大きい古い外タイヤを被せ、外タイヤの裏ビード部を切除し、表ビード
部のみをホイールのリムに組込み、チューブ内の空気圧により内タイヤが外タイヤ
の表ビード部をリムに圧着したことを特徴とするダブルタイヤ」とするものであ
り、考案の詳細な説明のうち、実施例の項には、「内タイヤは新品で」との記載が
あり、図面には、内タイヤのトレッドパターンが明記されており、これらの記載内
容から、右内タイヤにはトレッドパターンを有する新品のタイヤを用いるものであ
ることが認められる。
(3) 本件公報の前記各記載によれば、本件第一発明の構成要件A及び本件
第三発明の構成要件A′における「外表面を滑かに仕上げ」とは、外装タイヤの内
表面を内装タイヤの外表面に密着させ、外装タイヤと内装タイヤを自己形状維持力
により結合させ、両者間に摩擦熱が発生し難くするために必要であって、その滑ら
かさは、極端な凹凸が生じない程度であれば足りると解される。
 そして、本件第一発明においては、構成要件Aに「クラウン部のトレ
ッドパターンを切削して」とあるように、右外表面を滑らかに仕上げた状態を、ク
ラウン部のトレッドパターンを切削することによって形成することが要件となる。
 また、本件第三発明の構成要件A′においては、切削することが要件
となっておらず、前記のとおり明細書の実施例において、内装タイヤとして、古タ
イヤのクラウン部のトレッドパターンが摩耗したものを使用することも予定してい
ることからすると、摩耗して外表面に極端な凹凸がない状態になった古タイヤを特
段の加工を施すことなく内装タイヤとして用いることも含まれるものと解される。
(4) なお、内装タイヤの外表面が極端な凹凸がないとはいえない場合、と
りわけ内装タイヤとして新品のタイヤを用いた場合には、本件第一発明の構成要件
A及び本件第三発明の構成要件A′を充足しない。このことは、前記(2)記載のとお
り、複層タイヤにおいて、内装タイヤにトレッドパターンを有する新品のタイヤを
用いる先行技術が存することからも明らかである。
(5) そうすると、A型タイヤのうち、検甲一に相当する複層タイヤ(イ号
物件)は、その外表面が少なくとも極端な凹凸のない状態であるから、本件第一発
明の構成要件Aの内装タイヤが「クラウン部のトレッドパターンを切削して、ショ
ルダー部及びクラウン部の外表面を滑らかに仕上げ」たものとの構成を、検甲二に
相当する複層タイヤ(ロ号物件)は、その外表面のうちショルダー部とクラウン部
が削られ、トレッドパターンが摩耗してその凹凸がほとんどない状態になっている
から、本件第三発明の構成要件A′の内装タイヤが「外表面の滑らかに仕上げ」た
ものとの構成を充足する。
2 B型タイヤについて
 トーヨージャイアントに販売したB型タイヤは、その内装タイヤは新品で
トレッドパターンの凹凸がそのまま残っているものであり、その余の取引先に販売
したB型タイヤの内装タイヤのトレッドパターンの残存の程度は明確ではなく、外
表面を滑らかに仕上げたものであることが認められないのであるから、本件第一発
明の構成要件A及び本件第三発明の構成要件A′に該当するとすることはできな
い。
 よって、B型タイヤに係る原告の請求は理由がない。
3 C型タイヤについて
 C型タイヤは、その外装タイヤの両ビードを切断していないものであるか
ら、本件第一発明の構成要件B及び本件第三発明の構成要件B′を充足せず、本件
第一発明及び本件第三発明の技術的範囲に属しないものである。
 よって、C型タイヤに係る原告の請求は理由がない。
4 D型タイヤについて
 D型タイヤは、その外装タイヤの両ビードを切断したものであるから、本
件第一発明の構成要件B及び本件第三発明の構成要件B′を充足せず、本件第一発
明及び本件第三発明の技術的範囲に属しないものである。
 よって、その余の点について判断するまでもなく、D型タイヤに係る原告
の請求は理由がない。
三 争点3について
1 乙六六ないし七一及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は、中古タイヤの
トレッド部分を取り除いたものを台タイヤとして販売し、販売先は、右台タイヤに
新しいトレッドを張り付けることにより再生タイヤ(更生タイヤともいう。)を製
造し、あるいは、再生タイヤ用の台タイヤとして転売していることが認められる。
2 そうすると、被告会社が製造、販売する台タイヤは、検甲一ないし検甲二
に相当する複層タイヤの内装タイヤとして用いることができるものの、他に再生タ
イヤの台タイヤとしての用途もあるから、台タイヤの製造、販売行為は、本件特許
権の侵害行為ないし間接侵害行為に当たるということはできない。
 よって、被告会社の台タイヤの製造、販売行為が本件特許権を侵害するこ
とを理由とする原告の請求は理由がない。
四 争点4について
1 原告は、被告【C】が、被告会社の代表取締役として、その職務の遂行と
して複層タイヤを製造、販売した旨主張するが、前記のとおり、被告会社がA型タ
イヤ等の製造、販売を行ったことは認められるものの、被告【C】が右行為にどの
程度の関与をしたかについては、これを明らかにする証拠はない。
 したがって、被告会社によるA型タイヤの製造、販売が本件特許権を侵害
していることについて、被告【C】個人に故意、過失があることを基礎付ける事
実、すなわち、被告【C】に対する損害賠償義務を基礎付ける事実を認めることが
できないといわざるを得ないから、原告の被告【C】に対する請求は理由がない。
2 原告は、被告【D】及び被告【E】が、被告会社の取締役として、会社の
違法な営業行為については未然に防止し、すでに違法行為を行っているときにはこ
れを直ちに中止すべき注意義務があるのに、これを怠った重大な過失がある旨主張
するが、本件において、被告【D】及び被告【E】に、取締役の職務を行うにつき
重過失があったこと(商法二六六条の三)を認めるに足りる証拠はないから、原告
の被告【D】及び被告【E】に対する請求は理由がない。
五 争点5について
1 主位的請求(特許法一〇二条一項に基づく請求)について
(一) 乙九ないし三九、五〇ないし五八及び弁論の全趣旨によれば、被告会
社が販売した本件特許権(出願公告から登録までは仮保護の権利)の侵害に当たる
A型タイヤの販売数量は、本件発明が出願公告された日である平成二年八月三〇日
から平成八年二月二〇日までの期間は七六九個(販売額四二四万七六〇〇円)、平
成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は三四個(販売額一八万七
〇〇〇円)である(別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「A型タイ
ヤの平成二年五月一日から同年八月二九日までの販売分」参照)。
 原告は、被告会社の平成八年五月一日以降の複層タイヤの販売行為が本
件特許権を侵害するものであるとし、同日以降の販売額を基礎として損害賠償を請
求するが、本件発明が出願公告された日である平成二年八月三〇日以前の販売額を
基礎として損害賠償を請求する部分については理由がない。
(二) 右販売数量に対し、被告らは、原告の複層タイヤの知名度、原告製品
と被告製品との価格差等を理由に、原告は、被告会社が加工又は加工販売した数量
の複層タイヤを販売できたとはいえないと主張する。
(1) 被告らは、被告会社の販売先一四社のうち、西日本タイヤ及びトーヨ
ージャイアントは、原告の存在を知っていたものの、自ら原告から複層タイヤを購
入したことはなく、その余の取引先は原告の存在を知らなかった旨主張するとこ
ろ、被告会社の販売先作成に係る陳述書(乙八、四〇、四一、四二の1、四四ない
し四六、四八、五九ないし六二)によれば、右主張に沿う事実(ただし、原告の存
在を認識していたか否かについて言及しているのは、右掲記の陳述書を提出した一
二社である。)が認められる。
(2) 甲三五ないし四二によれば、原告は複層タイヤ(鉱山スチールASN
一〇・〇〇―二〇)を七万円ないし七万五〇〇〇円で販売していることが認めら
れ、一方、被告会社の販売する複層タイヤの売値は別紙「A型及びB型タイヤ販売
一覧表」記載のとおり一五〇〇円から一万円であるから両者の間には、七倍から五
〇倍に至る価格差がある。乙四五、四八、五九、六一、六二及び弁論の全趣旨によ
れば、被告会社は、外装タイヤに中古タイヤや再生タイヤを用いることが多く、販
売先が提供した外装タイヤを用いて複層タイヤを製造することもあることが認めら
れるが、右の事情を考慮しても、なお右価格差は著しいものというべきである。
 そして、販売価格差が著しいことに加え、乙四四、四六、四八、六
一、六二によれば、被告会社が複層タイヤを販売した取引先四社が、売値が七万五
〇〇〇円とすれば非常に高いとの意見を述べていること、近年、通常のタイヤの中
にもトレッド部の厚さがより厚い製品が開発され、複層タイヤに代替する製品も存
在することが認められ、複層タイヤは、パンクが起き易い場所等においてパンクの
発生を減らし、外装タイヤを摩耗するまで使用するために用いられるものであり、
いわばコスト軽減のために使用される製品であるから、複層タイヤを用いるか否か
の判断において、右パンクを減らすことのメリットとの比較において、複層タイヤ
に要するコストが重要な要素となると考えられる。
 右のような事情に前記(1)の事実も勘案すると、被告会社が販売したA
型タイヤの数量の七割については、原告において販売することができないとする事
情があると認めるのが相当である。
(3) そうすると、損害の基礎とすべきA型タイヤの販売数量は、平成二年
八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は二三〇個、平成八年二月二一日か
ら平成一一年四月三〇日までの期間は一〇個となる。
(三) 原告の複層タイヤの一本当たりの利益について
(1) 特許法一〇二条一項にいう「利益の額」とは、特許権者等が侵害行為
がなかったらならば、販売できたであろう追加的な売上を得るに当たって、追加的
に必要となると考えられる諸経費を右売上額から控除した額であると解するのが相
当である。
(2) 前記のとおり、原告は複層タイヤ(鉱山スチールASN一〇・〇〇―
二〇)を七万円ないし七万五〇〇〇円で販売し、甲四三ないし五一によれば、その
材料費として、新品の外装タイヤ二万五〇〇〇円ないし二万九〇〇〇円、新品のチ
ューブ一七〇〇円ないし二三〇〇円、新品のフラップ一一〇〇円ないし一六〇〇
円、ホイール一五〇〇円、台タイヤ六五〇円ないし二三〇〇円を要していることが
認められる。
(3) 一方、甲六八の1ないし3、10によれば、原告の帳簿上の粗利益が、
昭和六三年八月が四七万円(販売数一六個)、平成元年八月が八〇万円(販売数三
五個)、平成二年八月が六〇万円(販売数二四個)、平成三年八月が一二万円(販
売数四個)と算出されていることが認められ、右期間における複層タイヤ一台当た
りの平均粗利益は、二万五一八九円(1,990,000/79)となる。
 右帳簿上の粗利益の算出経過は明確ではないものの、売値から前記(2)
記載の材料費を控除すると、三万三三〇〇円ないし四万五〇五〇円となり、甲五六
によれば、複層タイヤの製造に要する労務費は一本当たり約一〇〇〇円であり、そ
の製造には、五万円ないし一〇万円のグラインダーのほか特に高価な機械、工具は
必要がないことが認められ、そうすると、右平均粗利益の額二万五一八九円は、当
該複層タイヤの製造、販売に応じて増減する間接費を控除したものと推認され、原
告の複層タイヤ一本当たりの利益の額は二万五一八九円とするのが相当である。
(四) 以上によれば、原告の損害は、平成二年八月三〇日から平成八年二月
二〇日までの期間は五七九万三四七〇円、平成八年二月二一日から平成一一年四月
三〇日までの期間は二五万一八九〇円となる。
2 予備的請求(特許法一〇二条三項に基づく請求)について
(一) 前記1の(二)記載のとおり、被告会社が販売したA型タイヤのうち、
七割については、原告において販売することができないとする事情があるとして、
その部分に関しては一〇二条一項による請求ができないが、この部分についても、
無許諾の実施品であることに変わりがないから、一〇二条三項の相当な対価額の賠
償請求は認められるものと解される。そして、除かれた七割に当たる販売数量は、
平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は五三九個、平成八年二月
二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は二四個であり、右数量に対応する売
上高を、各期間のA型タイヤの売上高の七割とみなして計算すると、平成二年八月
三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は二九七万三三二〇円(4,247,600×
0.7)、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は一三万〇九〇〇
円(187,000×0.7)となる。
(二) 本件発明の実施に対し受けるべき実施料の率は、本件発明の内容、発
明品の種類、用途等を考慮すると、三パーセントが相当である。
(三) よって、原告が受けるべき損害額は、平成二年八月三〇日から平成八
年二月二〇日までの期間は八万九一九九円(2,973,320×0.03)、平成八年二月二一
日から平成一一年四月三〇日までの期間は三九二七円(130,900×0.03)となる。
3 右1及び2の損害額の合計は、平成二年八月三〇日から平成八年二月二〇
日までの期間は五八八万二六六九円、平成八年二月二一日から平成一一年四月三〇
日までの期間は二五万五八一七円となる。
 各期間に対応した弁護士費用、弁理士費用は、平成二年八月三〇日から平
成八年二月二〇日までの期間は六〇万円、平成八年二月二一日から平成一一年四月
三〇日までの期間は三万円が相当であり、同費用を加算した損害額の合計は、平成
二年八月三〇日から平成八年二月二〇日までの期間は六四八万二六六九円、平成八
年二月二一日から平成一一年四月三〇日までの期間は二八万五八一七円となる。
六 争点6について
 原告は、被告会社に対し、その保管にかかる別紙イ号物件目録及び別紙ロ号
物件目録記載の各物件並びに同各物件の材料である外装タイヤ及び内装タイヤの破
棄を求めるが、内装タイヤは、前記四記載のとおり内装タイヤは再生タイヤの台タ
イヤとして用いることが可能なものであり、外装タイヤもD型タイヤに用いる等、
他の用途が考えられるものであるから、右外装タイヤ及び内装タイヤは特許法一〇
〇条二項にいう「侵害の行為を組成した物」ということはできず、右外装タイヤ及
び内装タイヤの破棄を求める部分は理由がない。
 また、原告は、別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機の除去を求めるが、被
告らが本件特許権を侵害するおそれをなくするためには、原告の請求のうち製造、
販売及び販売のための禁止と、侵害品の廃棄を命ずれば十分であって、イ号物件な
いしロ号物件以外のC型、D型タイヤ等の製造にも用いることができる右複層タイ
ヤ製造機の除去を命ずるまでの必要性は認められないから、右複層タイヤ製造機の
除去を求める部分は理由がない。
七 よって、原告の請求は、主文第一ないし第三項記載の限度で理由があるから
認容し、主文第一、第二項に係る仮執行宣言については相当でないから、これを付
さないこととする。
(口頭弁論終結の日 平成一二年七月二一日)
  大阪地方裁判所第二一民事部
    裁判長裁判官 小松一雄
      裁判官 阿多麻子
    裁判官 前田郁勝
別紙
イ号物件目録
図面
ロ号物件目録
図面
被告主張物件目録図面
機械目録
写真1、写真2写真3、写真4写真5、写真6
写真7、写真8
A型及びB型タイヤ販売一覧表,C型及びD型タイヤ販売一覧表 省略
A型タイヤの平成2年5月1日から同年8月29日までの販売分 省略

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採用情報


弁護士 求人 採用
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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