弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
一 被告が、原告に対し、別紙原告商品目録(一)及び(二)記載の各商品の販売
について、不正競争防止法二条一項一号及び三条一項に基づく差止請求権を有して
いないことを確認する。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担と
する。
       事実及び理由
第一 請求
一 主文第一項と同旨
二 被告は、別紙被告商品目録(一)及び(二)記載の各商品を販売してはならな
い。
第二 事案の概要
一 争いのない事実
1 原告は、味噌醤油等の調味料及びその他の食品の製造販売を業とする株式会で
あり、被告も、味噌醤油等の調味料及びその他の食品の製造販売を業とする株式会
社である。
2 被告は、平成五年八月に別紙被告商品目録(一)記載の商品(以下「被告商品
(一)」という。)の販売を開始し、平成六年八月に別紙被告商品目録(二)記載
の商品(以下「被告商品(二)」という。)の販売を開始した。
3 原告は、平成七年二月、別紙原告商品目録(一)記載の商品(以下「原告商品
(一)」という。)及び別紙原告商品目録(二)記載の商品(以下「原告商品
(二)」という。)の販売を開始した。
二 争点についての当事者の主張
1 争点1(被告が、原告に対し、原告商品(一)及び(二)の販売について、差
止請求権を有するかどうか)について
(一) 被告の主張
(1) 被告は、被告商品(一)及び(二)の販売を開始して以来、広範な地域
(愛知、岐阜、三重、静岡、長野)において、テレビ、新聞等を通じて、広告宣伝
を行ってきた。その結果、被告商品(一)及び(二)の容器のラベル(写真5ない
し8)は、需要者(取引者及び消費者)の間において広く知られるようになった。
(2) 原告商品(一)の容器のラベルは被告商品(一)の容器のラベルと、原告
商品(二)の容器のラベルは被告商品(二)の容器のラベルと、それぞれ次のとお
り類似している。
ア 原告商品(一)の容器のラベルは、クリーム色の地の上に、赤色及び茶色で
「料理つゆ」という商品名を縦に記載しているところ、被告商品(一)の容器のラ
ベルは、地の色にクリーム色を用いるとともに、「献立いろいろつゆ」という商品
名を縦に記載しており、右商品名の部分には赤色及び茶色を用いている。また、右
商品名の部分の書体は、原告商品(一)と被告商品(一)では同じである。
イ 原告商品(二)の容器のラベルは、クリーム色の地の上に、緑色で「料理つ
ゆ」という商品名を縦に記載しているところ、被告商品(二)の容器のラベルは、
地の色にクリーム色を用いるとともに、「献立うすいろつゆ」という商品名を縦に
記載しており、右商品名の部分には緑色を用いている。また、右商品名の部分の書
体は、原告商品(一)と被告商品(一)では同じである。さらに、原告商品(二)
の容器のラベルには、右の「料理つゆ」という商品名の横に「うす色」と記載され
ているが、これらの記載を併せると、被告商品(二)の「献立うすいろつゆ」とい
う商品名の記載と類似しているということができる。
ウ 原告商品(一)及び(二)の容器のラベルには、「らくらく簡単」と記載され
ているところ、被告商品(一)及び(二)の容器のラベルには、「らくらくお料
理」と記載されており、これらの記載は類似している。
エ 原告商品(一)及び(二)の容器のラベルには、ラベルの上段に料理名を具体
的に記載した上、その下段に希釈倍率を二色で表示しているが、被告商品(一)及
び(二)の容器のラベルも、ラベルの上段に料理名を具体的に記載した上、その下
段に希釈倍率を二色で表示している。また、右希釈倍率の部分の書体は、原告商品
(一)及び(二)と被告商品(一)及び(二)では同じである。
オ したがって、原告商品(一)の容器のラベルは被告商品(一)の容器のラベル
と、原告商品(二)の容器のラベルは被告商品(二)の容器のラベルと、それぞれ
色調、記載内容及びレイアウトが類似しているから、全体として類似しているとい
うことができる。
(3) 右(2)のとおり容器のラベルが類似しているから、原告が原告商品
(一)及び(二)を販売する行為は、被告商品(一)及び(二)と混同を生じさせ
る行為であるということができる。そして、この行為によって、被告は、営業上の
利益を害されているから、被告は、原告に対し、不正競争防止法二条一項一号及び
三条一項に基づき、原告商品(一)及び(二)の販売について差止請求権を有す
る。
(二) 原告の主張
(1) 被告商品(一)及び(二)の容器のラベルが需要者(取引者及び消費者)
の間において広く知られるようになった事実はない。
(2) 原告商品(一)の容器のラベルは被告商品(一)の容器のラベルと、原告
商品(二)の容器ラベルは被告商品(二)の容器のラベルと、それぞれ次のとおり
類似していない。
ア 原告商品(一)の容器のラベルは、「料理つゆ」という商品名を、茶色の濃淡
を組み合わせた文字によって、大きく二行の縦書きで記載し、その横に、白抜きの
横書きで「こい色」と記載している。これに対し、被告商品(一)の容器のラベル
は、「献立いろいろつゆ」という商品名を、赤色と茶色で塗り分けた枡の中に白抜
きで一文字ずつ、三行にわたって記載している。
 また、原告商品(二)の容器のラベルは、「料理つゆ」という商品名を、緑色の
濃淡を組み合わせた文字によって、大きく二行の縦書きで記載し、その横に、白抜
きの横書きで「うす色」と記載している。これに対し、被告商品(二)の容器のラ
ベルは、「献立うすいろつゆ」という商品名を、三行にわたって記載しており、
「献立」と「つゆ」は、橙色と緑色で塗り分けた枡の中に白抜きで一文字ずつ記載
し、「うす」は、白色の枡の中に橙色で一文字ずつ記載し、「いろ」は、白色の枡
の中に緑色で一文字ずつ記載している。
 さらに、原告商品(一)及び(二)の容器のラベルには、右商品名の横の上部
に、「サンビシ」の文字と、菱形の原告のマークが付されている。これに対し、被
告商品(一)及び(二)の容器のラベルには、右商品名の横の上部に、「イチビ
キ」の文字と、太い「一」の文字からなる被告のマークが付されている。
 以上のとおり、原告商品(一)の容器のラベルは被告商品(一)の容器のラベル
と、原告商品(二)の容器のラベルは被告商品(二)の容器のラベルと、それぞれ
類似していない。
イ 原告商品(一)及び被告商品(一)と同種の商品である「キッコーマンだしし
ょうゆ(こい色)」の容器のラベルは、クリーム色の地の上に、赤、茶、金の各色
を配したデザインであり、原告商品(二)及び被告商品(二)と同種の商品である
「キッコーマンだししょうゆ(うす色)」の容器のラベルは、クリーム色の地の上
に、赤、金、緑の各色を配したデザインであって、「キッコーマンだししょうゆ
(こい色)」の容器のラベルは原告商品(一)及び被告商品(一)の容器のラベル
と、「キッコーマンだししょうゆ(うす色)」の容器のラベルは原告商品(二)及
び被告商品(二)の容器のラベルと、それぞれ似通った色調である。このように、
しょうゆをベースとしたつゆの容器のラベルの色は、似通ったものにならざるを得
ない。
 また、被告商品(一)及び(二)の容器のラベルにおいて「献立いろいろつゆ」
又は「献立うすいろつゆ」という商品名を記載した部分の書体並びに原告商品
(一)及び(二)において「料理つゆ」という商品名を記載した部分の書体は、あ
りふれた書体である。
 したがって、原告商品(一)の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラベル、
原告商品(二)の容器のラベルと被告商品(二)の容器のラベルが、それぞれその
色調及び書体において類似している点があるとしても、それらの容器のラベルが全
体として類似しているということはできない。
ウ 原告商品(二)の商品名である「料理つゆうす色」と、被告商品(二)の商品
名である「献立うすいろつゆ」が異なっていることは明らかであるし、また、「う
すいろつゆ」という名称は、単純な普通名詞の組み合わせにすぎないから、その名
称を使用する行為が不正競争防止法による差止めの対象となることはない(同法一
一条一項一号)。
エ 被告商品(一)及び(二)の容器のラベルには、商品名の横に「これ一本でら
くらくお料理」と小さな文字で記載されているのに対し、原告商品(一)及び
(二)の容器のラベルには、「らくらく簡単」と、商品名の上に大きく記載されて
いるから、これらの記載は全く異なっている。また、「らくらく」という言葉は、
一般的な形容詞に過ぎない上、他社の製品にも使用されているから、被告商品
(一)及び(二)の容器のラベルのみに見られる特徴的な言葉ということもできな
い。したがって、「らくらく」という同じ言葉が使われていても、原告商品(一)
の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラベル、原告商品(二)の容器のラベル
と被告商品(二)の容器のラベルが、それぞれ全体として類似しているということ
はできない。
(3) よって、被告は、原告に対し、原告商品(一)及び(二)の販売につい
て、不正競争防止法二条一項一号及び三条一項に基づく差止請求権を有しない。
2 争点2(原告は被告に対し、被告商品(一)及び(二)の販売の差止めを求め
ることができるかどうか」について
(一) 原告の主張
(1) 原告が原告商品(一)及び(二)において使用しているペットボトル(写
真1ないし4、以下「原告ボトル」という。)は、原告が三菱樹脂株式会社及びダ
イヤブロー株式会社と共同で開発したもので、平成四年九月に販売を開始した鍋つ
ゆ、すき焼きのたれ等から使用を開始したものである。原告は、原告ボトルを、そ
の上部の原告商品(一)及び(二)においてラベルが貼られているのと同じ位置
に、原告商品(一)及び(二)と同じ大きさのラベルを貼って、使用してきた。そ
して、原告が、右ラベルを貼った原告ボトルを多くの原告製品において使用してき
た結果、被告商品(一)の販売が開始された平成五年八月ころ、又は、遅くとも被
告商品(二)の販売が開始された平成六年八月ころには、原告ボトルの大きさ及び
形状並びに原告ボトルに貼られたラベルの位置及び大きさは、原告の商品を表示す
るものとして、広く知られるようになった。
(2) 被告商品(一)及び(二)のペットボトル(以下「被告ボトル」とい
う。)は、その大きさや形状が、原告ボトルと非常によく似ている上、被告ボトル
に貼られているラベルの位置や大きさは、原告ボトルに貼られているラベルの位置
や大きさと非常によく似ている。したがって、被告が被告商品(一)及び(二)を
販売する行為は、原告の商品と混同を生じさせる行為であるということができ、こ
の行為によって、原告は、営業上の利益を害されている。
(3) よって、原告は、被告に対し、不正競争防止法二条一項一号及び三条一項
に基づき、被告商品(一)及び(二)の販売の差止めを求める。
(二) 被告の主張
(1) 需要者(取引者や消費者)が、ペットボトルの大きさ及び形状並びにペッ
トボトルに貼られたラベルの位置及び大きさによって商品を識別することはない。
 ペットボトルは、液体調味料の容器として広く使用されているが、その大きさ及
び形状並びにペットボトルに貼られたラベルの位置及び大きさは、いずれも類似し
ている。すなわち、液体調味料の容器として使用されているペットボトルの大きさ
は、持ち運びの利便性等から五〇〇ミリリットルから一リットル程度のものが圧倒
的に多い。また、ペットボトルには、「リブ」と呼ばれる凹凸が設けられている
が、「リブ」は、強度を増すという機能上の理由によって設けられているものであ
るから、その太さ、本数、形状は、ペットボトルによってほとんど差異はなく、そ
の結果、ペットボトルの形状には、多様性がない。さらに、ペットボトルに貼られ
たラベルの位置及び大きさは、どの商品であっても極めて類似しており、ペットボ
トルの上部の半分から三分の一程度の位置に貼られているものが多い。これは、見
やすさとボトルの下部は液体調味料を注ぐときに手で持つ部分になることからする
と、当然のことである。
 よって、ペットボトルの大きさ及び形状並びにペットボトルに貼られたラベルの
位置及び大きさが、原告の商品を表示するものとして、広く知られるようになった
ということは、あり得ない。
(2) 被告ボトルの形状は、原告ボトルの形状と、次の各点で相違しているか
ら、被告ボトルの形状は原告ボトルの形状と類似していない。
ア ペットボトルの胴の部分が、原告ボトルでは八面であるのに対し、被告ボトル
では六面である。
イ リブの形状が異なる。また、被告ボトルは、二本の補強リブが設けられている
のに対し、原告ボトルでは、補強リブは設けられていない。
ウ 被告ボトルは準耐熱ボトルであるのに対し、原告ボトルは準耐熱ボトルではな
いから、底面の形状が異なっている。
第三 証拠(省略)
第四 争点についての当裁判所の判断
一 争点1について
1 まず、原告商品(一)の容器のラベルが被告商品(一)の容器のラベルと、原
告商品(二)の容器のラベルが被告商品(二)の容器のラベルと、それぞれ類似し
ているかどうかについて判断する。
(一) 証拠(甲一、二の各五ないし八、甲三の二、検甲一、二の各一)と弁論の
全趣旨によると、(1)原告商品(一)の容器のラベルは、クリーム色の地の上
に、「料理つゆ」という商品名を、右ラベルの他の文字に比べて特に大きい文字で
縦に二文字ずつ二行にわたって赤色及び茶色を用いて記載し、その行間に、赤色の
地に白抜きで「らくらく簡単」と記載し、右商品名の左下の赤色の地の円に白抜き
で、右商品名よりもはるかに小さい文字を用いて、横に「こい色」と記載したもの
であること、(2)被告商品(一)の容器のラベルは、地の色をクリーム色とし、
「献立いろいろつゆ」という商品名を、金色で縁取りをし赤色と茶色で塗り分けた
枡の中に白抜きで一文字ずつ、縦に三行にわたって(最初の行に二文字、次の行に
四文字、最後の行に二文字)、右ラベルの他の文字に比べて大きく右(1)の「料
理つゆ」と同様の書体の文字で記載し、右商品名の右横のクリーム色の地の上に、
右商品名に比べてはるかに小さい黒色の文字で、縦に「これ一本でらくらくお料
理」と記載したものであること、以上の各事実が認められる。
(二) ところで、右(一)認定のとおり、原告商品(一)の容器のラベルは、
「料理つゆ」という商品名が他の文字に比べて特に大きく記載されており、「料
理」と「つゆ」の間に「らくらく簡単」と記載されているから、これらの部分が特
に需要者の注意を引くものということができる。これに対し、被告商品(一)の容
器のラベルは、「献立いろいろつゆ」という商品名が他の文字に比べて大きく記載
されているから、この部分が特に需要者の注意を引くものということができる。そ
して、これらの特に需要者の注意を引く部分を比較した場合、共通の言葉は、一般
的な商品名にすぎない「つゆ」のみである上、右(一)認定のとおり、文字の配列
の仕方や文字の色も異なっている。また、証拠(甲一、二の各五ないし八、甲三の
二、検甲一、二の各一)と弁論の全趣旨によると、右の特に需要者の注意を引く部
分の文字の大きさは、原告商品(一)の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラ
ベルでは、異なっており、原告商品(一)の容器のラベルに記載されている「料理
つゆ」という文字は、被告商品(一)の容器のラベルに記載されている「献立いろ
いろつゆ」という文字に比べて、縦横とも約二倍の大きさであることが認められ
る。したがって、原告商品(一)の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラベル
を比較した場合、右の特に需要者の注意を引く部分が類似しているということはで
きない。
(三) 証拠(甲一、二の各一ないし四、甲三の一、検甲一、二の各二)と弁論の
全趣旨によると、(1)原告商品(二)の容器のラベルは、クリーム色の地の上
に、「料理つゆ」という商品名を、右ラベルの他の文字に比べて特に大きい緑色の
濃淡を組み合わせた文字で、縦に二文字ずつ二行にわたって記載し、その行間に、
緑色の地に白抜きで「らくらく簡単」と記載し、右商品名の左下の緑色の地の円に
白抜きで、右商品名よりもはるかに小さい文字を用いて、横に「うす色」と記載し
たものであること、(2)被告商品(二)の容器のラベルは、地の色をクリーム色
とし、「献立うすいろつゆ」という商品名を、金色で縁取りした枡の中に一文字ず
つ縦に三行にわたって(最初の行の二文字は、橙色と緑色で塗り分けた枡の中に白
抜きで記載し、次の行の四文字のうち上二文字は、白色の枡の中に橙色で記載し、
下二文字は、白色の枡の中に緑色で記載し、最後の行の二文字は、橙色と緑色で塗
り分けた枡の中に白抜きで記載している。)、右ラベルの他の文字に比べて大きく
右(1)の「料理つゆ」と同様の書体の文字で記載し、右商品名の右横のクリーム
色の地の上に、右商品名に比べてはるかに小さい黒色の文字で、縦に「これ一本で
らくらくお料理」と記載したものであること、以上の各事実が認められる。
(四) ところで、右(三)認定のとおり、原告商品(二)の容器のラベルは、
「料理つゆ」という商品名が他の文字に比べて特に大きく記載されており、「料
理」と「つゆ」の間に、「らくらく簡単」と記載されているから、これらの部分が
特に需要者の注意を引くものということができる。これに対し、被告商品(一)の
容器のラベルは、「献立いろいろつゆ」という商品名が他の文字に比べて大きく記
載されているから、この部分が特に需要者の注意を引くものということができる。
そして、これらの特に需要者の注意を引く部分を比較した場合、共通の言葉は、一
般的な商品名にすぎない「つゆ」のみである上、右(三)認定のとおり、文字の配
列の仕方や文字の色も異なっている。特に、被告商品(二)の容器のラベルでは、
右の特に需要者の注意を引く部分に橙色を用いており、この色が見る者の注意を引
くのに対し、原告商品(二)の容器のラベルでは、橙色を全く用いていないから、
色から受ける印象は大きく異なっている。また、証拠(甲一、二の各一ないし四、
甲三の一、検甲一、二の各二)と弁論の全趣旨によると、右の特に需要者の注意を
引く部分の文字の大きさは、原告商品(二)の容器のラベルと被告商品(二)の容
器のラベルでは、異なっており、原告商品(二)の容器のラベルに記載されている
「料理つゆ」という文字は、被告商品(二)の容器のラベルに記載されている「献
立うすいろつゆ」という文字に比べて、縦横とも約二倍の大きさであることが認め
られる。したがって、原告商品(二)の容器のラベルと被告商品(二)の容器のラ
ベルを比較した場合、右の特に需要者の注意を引く部分が類似しているということ
はできない。
 なお、右(三)認定の事実によると、原告商品(二)の容器のラベルには、「う
す色」という文字が記載されており、被告商品(二)の容器のラベルには、「うす
いろ」という文字が記載されていることが認められる。しかしながら、右(三)認
定のとおり、原告商品(二)の容器のラベルでは、商品名の右横の緑色の地の円に
白抜きで、商品名よりもはるかに小さい文字を用いて、横に「うす色」と記載され
ているのに対し、被告商品(二)の容器のラベルでは、商品名中に、白地に橙色又
は緑色を用いて、縦に「うすいろ」と記載されているから、原告商品(二)の容器
のラベルの「うす色」と被告商品(二)の容器のラベルの「うすいろ」は、文字の
位置や記載方法が大きく異なっているということができる。したがって、原告商品
(二)の容器のラベルに「うす色」という文字が記載されており、被告商品(二)
の容器のラベルに「うすいろ」という文字が記載されているからといって、これら
のラベルが類似しているということはできない。
(五) 右(一)及び(三)認定のとおり、原告商品(一)及び(二)の容器のラ
ベルと被告商品(一)及び(二)の容器のラベルには、「らくらく」という文字が
記載されているが、原告商品(一)及び(二)の容器のラベルでは、商品名の間に
「らくらく簡単」と記載されているのに対し、被告商品(一)及び(二)の容器の
ラベルでは、商品名の右横に商品名に比べてはるかに小さい文字で「これ一本でら
くらくお料理」と記載されているから、「らくらく」に付加されている文字や「ら
くらく」の文字の位置が大きく異なっているということができる。また、証拠(甲
一三の八)と弁論の全趣旨によると、「らくらく」という言葉は、原告や被告の商
品以外においても用いられていることが認められる。したがって、原告商品(一)
及び(二)の容器のラベルと被告商品(一)及び(二)の容器のラベルに「らくら
く」という文字が記載されているからといって、原告商品(一)の容器のラベルと
被告商品(一)の容器のラベル、原告商品(二)の容器のラベルと被告商品(二)
の容器のラベルが、それぞれ類似していると認めることはできない。
(六) 証拠(甲一、二の各一ないし八、甲三の一、二、検甲一、二の各一、二)
と弁論の全趣旨によると、(1)原告商品(一)及び(二)の容器のラベルは、容
器の(一)及び(三)認定の商品名が記載されている部分と反対側の部分の上段に
料理名を具体的に記載した上、その下段に、それぞれの料理に右原告商品を使用す
る場合の希釈倍率を記載しており、希釈倍率の記載は、希釈しない場合は、赤い文
字で「そのまま」と記載し、希釈する場合には、希釈倍率を、分母を黒い文字、分
子を赤い文字で記載していること、(2)被告商品(一)及び(二)の容器のラベ
ルは、容器の(一)及び(三)認定の商品名が記載されている部分と反対側の部分
の上段に料理名を具体的に記載した上、その下段に、それぞれの料理に右被告商品
を使用する場合の希釈倍率を記載しており、希釈倍率の記載は、分母を紫の文字
(被告商品(一)の場合)又は茶色の文字(被告商品(二)の場合)、分子を赤い
文字で記載していること、以上の各事実が認められる。
 右事実によると、原告商品(一)の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラベ
ル、原告商品(二)の容器のラベルと被告商品(二)の容器のラベルの、それぞれ
商品名が記載されている部分と反対側の部分を比較した場合、その記載に似ている
点があるということができる。しかしながら、需要者が通常注目するのは、商品名
が記載されている部分であると考えられ、商品が陳列される場合にも、商品名が見
えるように陳列されるのが普通であると考えられるから、需要者がその反対側の部
分に注目することは少ないものと考えられる。また、証拠(甲一、二の各一ないし
八、甲三の一、二、検甲一、二の各一、二)と弁論の全趣旨によると、被告商品
(一)及び(二)の容器のラベルでは、料理名を列記しているのみであるのに対
し、原告商品(一)及び(二)の容器のラベルでは、「煮もの」、「汁もの」とい
った見出しを付けている上、両者の間で具体的な料理名が同じものはほとんどない
ことが認められる。さらに、証拠(甲一三の四)によると、原告や被告の商品以外
にも、上段に料理名を具体的に記載した上、その下段に希釈倍率を記載したラベル
を使用している商品があるものと認められる。したがって、右認定のとおり、商品
名が記載されている部分と反対の部分に似ている部分があったとしても、原告商品
(一)の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラベル、原告商品(二)の容器の
ラベルと被告商品(二)の容器のラベルが、それぞれ、全体として類似していると
認めることはできない。
(七) 以上述べたところに、容器のラベルが似ていることが原因で、原告商品
(一)と被告商品(一)、原告商品(二)と被告商品(二)がそれぞれ誤認混同さ
れた具体的な事例があった旨の主張立証がないことを総合すると、原告商品(一)
の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラベル、原告商品(二)の容器のラベル
と被告商品(二)の容器のラベルが、それぞれ全体として類似していると認めるこ
とはできない。
 なお、原告商品(一)の容器のラベルの特に需要者の注意を引く部分は、右
(一)(二)認定のとおり、クリーム色、赤色、茶色が用いられているのに対し、
被告商品(一)の容器のラベルの特に需要者の注意を引く部分も、右(一)(二)
認定のとおり、クリーム色、赤色、茶色が用いられている。また、原告商品(二)
の容器のラベルの特に需要者の注意を引く部分は、右(三)(四)認定のとおり、
クリーム色、緑色が用いられているのに対し、被告商品(二)の容器のラベルの特
に需要者の注意を引く部分も、右(三)(四)認定のとおり、クリーム色、緑色が
用いられている。さらに、原告商品(一)の容器のラベルと被告商品(一)の容器
のラベル、原告商品(二)の容器のラベルと被告商品(二)の容器のラベルを、そ
れぞれ比較すると、右(一)ないし(五)認定のとおり、書体が似ている部分があ
ったり、「つゆ」、「らくらく」、「料理」という同じ文字が用いられている上、
右(六)認定のとおり、料理名と希釈倍率の記載には似ている部分がある。これら
のことからすると、原告商品(一)の容器のラベルと被告商品(一)の容器のラベ
ル、原告商品(二)の容器のラベルと被告商品(二)の容器のラベルは、それぞれ
ラベルから受ける全体的な印象が似ていることは否定できず、それが偶然に生じた
とは考え難い。したがって、原告商品(一)の容器のラベルは、被告商品(一)の
容器のラベルから生じるよい印象を、原告商品(二)の容器のラベルは、被告商品
(二)の容器のラベルから生じるよい印象を、それぞれ利用しているということが
できるが、その当否は別として、これらのラベルが全体として類似しており出所そ
のものの混同を生じるということができないことは、前示のとおりである。
2 よって、被告が、原告に対し、原告商品(一)及び(二)の販売について、不
正競争防止法二条一項一号及び三条一項に基づく差止請求権を有するものと認める
ことはできない。
二 争点2について
1 まず、原告ボトルの大きさ及び形状並びに原告ボトルに貼られたラベルの位置
及び大きさが、原告の商品を表示するものとして、広く知られるようになったかど
うかについて判断する。
(一) 証拠(甲一、二の各一ないし八、甲三の一、二、甲四の一ないし一八、甲
五の一ないし一二、甲六の一ないし三、甲七、八、乙一、二の各一ないし四、乙三
ないし五、一〇)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(1) 液体調味料の容器として使用されているペットボトルの大きさは、五〇〇
ミリリットルから一リットル程度のものが多い。
(2) 液体調味料の容器として使用されているぺットボトルは、最上部がそれよ
り下の部分に比べて細くなっており、細くなっている部分でふたが閉まるようにな
っている。また、上部の半分から三分の一程度の位置でくびれているものが多い。
(3) ペットボトルには、強度を増すために、「リブ」と呼ばれる凹凸が設けら
れている。「リブ」は、横のものと縦のものがあるが、液体調味料の容器として使
用されているペットボトルでは、右(2)のくびれの上部に商品名等を記載したラ
ベルが貼られることが多いため、ラベルを貼りやすいように、右(2)のくびれの
上部には、横のリブが設けられることが多い。そして、ラベルが貼られるため、右
(2)のくびれの上部のリブは、液体調味料を入れて販売される際には、見えない
ことが多い。
 液体調味料の容器として使用されているペットボトルの右(2)のくびれの下部
には、横のリブ又は縦のリブが設けられている。縦のリブを設ける場合には、下部
に六本程度の縦の窪みを設けることが多い。
(4) 液体調味料の容器として使用されているペットボトルでは、商品名等を記
載したラベルは、右(2)のくびれの上から、
右(2)の最上部の細くなっている部分の下までの間に、ほぼ一杯に貼られること
が多い。
(二) 証拠(甲一の一ないし八、甲七、八)と弁論の全趣旨によると、次の事実
が認められる。
(1) 原告ボトルの大きさは、六〇〇ミリリットルである。
(2) 原告ボトルのボトルは、最上部でそれより下の部分よりやや細くなり、細
くなった部分にふたが設けられている。また、半分より少し上の位置でくびれてい
る。
(3) 原告ボトルの右(2)のくびれの上部には、横のリブが設けられている
が、その上に商品名等を記載したラベルが貼られるため、販売される際には、見え
ない。右くびれの下部は、八面で、それぞれの面に縦の窪みが設けられている。
(4) 原告ボトルの商品名等を記載したラベルは、右(2)のくびれの上から、
右(2)の最上部の細くなっている部分の下までの間に、ほぼ一杯に貼られてい
る。
(三) 右(一)及び(二)認定の事実からすると、原告ボトルは、液体調味料の
容器として使用されるペットボトルとして、ありふれたものであることが認められ
る。そして、このことに、需要者(取引者や消費者)が商品を識別する場合、商品
名やラベルのデザインで商品を識別することが多く、ペットボトルの大きさ及び形
状並びにペットボトルに貼られたラベルの位置及び大きさで商品を識別することは
稀であると考えられることを総合すると、原告が、原告ボトルを平成四年九月から
使用していたとしても、平成五年八月ころ、又は、遅くとも平成六年八月ころに
は、原告ボトルの大きさ及び形状並びに原告ボトルに貼られたラベルの位置及び大
きさが、原告の商品を表示するものとして、広く知られるようになっていたとは認
められない。
2 よって、原告が、被告に対し、不正競争防止法二条一項一号及び三条一項に基
づき、被告商品(一)及び(二)の販売の差止めを求めることができるとはいえな
い。
第五 総括
 以上の次第で、本件請求のうち、被告が、原告に対し、原告商品(一)及び
(二)の販売について不正競争防止法二条一項一号及び三条一項に基づく差止請求
権を有していないことの確認を求める請求は理由があるので、右の限度で認容し、
その余の請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟
法八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 岡久幸治 森義之 鈴木和典)
原告商品目録(一)
<31625-001>
原告商品目録(二)
<31625-002>
被告商品目録(一)
<31625-003>
被告商品目録(二)
<31625-004>

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