弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役2年6月に処する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,環境大臣の許可を受けず,かつ,法定の除外事由がないのに,平成1
8年10月中旬ころから同月26日ころまでの間,
()第1保安林及び特別地域に指定された阿寒国立公園内の北海道川上郡以下省略
所在の森林において,A等をして,B株式会社所有の同社代表取締役C管理に
係る木竹であるアカダモ等11種合計217本(時価合計約318万9456
円相当)を伐採させて窃取し,もって特別地域内において木竹を伐採するとと
もに,保安林の区域内において森林の産物を窃取し,
第2特別地域に指定された阿寒国立公園内の同郡(以下省略)所在の森林におい
て,前記A等をして,国所有の財務省管理に係る木竹であるマツ等12種合計
462本(時価合計約1111万1054円相当)を伐採させて窃取し,もっ
て特別地域内において木竹を伐採するとともに,森林においてその産物を窃取

たものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
罰条
第1の行為のうち
特別地域内における木竹伐採の点自然公園法70条1号,13条3項2号
保安林区域内の森林窃盗の点森林法198条,197条
第2の行為のうち
特別地域内における木竹伐採の点自然公園法70条1号,13条3項2号
森林窃盗の点森林法197条
科刑上一罪の処理
第1につき刑法54条1項前段,10条(重い森林法違反の罪の刑で処断)
第2につき刑法54条1項前段,10条(重い森林法違反の罪の刑で処断)
刑種の選択
第1,第2につき,それぞれ懲役刑
併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(重い第1の罪の刑に法定
の加重)
(量刑の理由)
本件は,被告人が,自然公園法上の特別地域かつ森林法上の保安林に指定された
民有林及び特別地域に指定された国有林の各木竹を伐採して森林の産物を窃取した
という自然公園法違反及び森林法違反の事案である。
被告人は,事業経営の失敗等によって事業資金や生活費等に窮したため,いわば
金の成る木として本件各森林に着目し,木竹を売却して不正に金員を取得したもの
であるが,その短絡的で自分勝手な動機に酌量の余地はない。被告人は,伐採に係
る適合通知書を不正に町から取得し,一見適法な伐採を装うなど,犯行態様は狡猾
で悪質である。本件各犯行によって時価合計約1430万円もの木竹が伐採されて
いるが,屈斜路湖畔の原生林生い茂る森林が,約3万3322平方メートルもの広
範囲にわたって伐採され無惨な姿をさらし,被告人の親族らが森林の再生に協力す
る意向を示しているとはいえ,その回復には相当の努力と年数が必要であることか
らすれば,その被害結果は真に重大なものがあると言わざるを得ない。民有林所有
者の処罰感情は強く,また地域住民に与えた衝撃と憂慮は計り知れない。このよう
な大規模な自然環境の破壊が,行政機関の監督の間隙を突いて,いともたやすく長
年にわたって行い得たのは驚きを禁じ得ないが,そうであるからといって,犯情の
悪質さが減じられるわけではない。
そうすると,被告人の刑事責任は重大であると言わざるを得ず,被告人が最終的
には本件各犯行を認めて反省していること,被告人や親族らが,今後可能な限り森
林の回復に努めることを約束し,関係機関に造林計画書を提出するなどしているこ
と,民有林所有者に対する被害弁償に充てる金員として,●円(金額省略)が供託
されていること,被告人には,道路交通法違反に係る罰金前科1犯のほか前科がな
いこと,被告人が67歳であり,胃静脈瘤,糖尿病等の持病を有することなどの被
告人に有利な事情を斟酌しても,執行を猶予する事案とはいえないが,なお,以上
の諸事情を考慮し,主文掲記の刑に処するのが相当であると判断した。
(求刑懲役3年6月)
平成20年1月22日
釧路地方裁判所刑事部
裁判官本村曉宏

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