弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役2年に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,事務用品等の販売業などを営む合資会社甲商店の有限責任社員であ
り,その実質的経営者であったものであるが
第1 平成14年3月下旬ころ,兵庫県A市Ba丁目b番c号所在の分離前共同被
告人C方において,平成12年4月1日から同14年3月31日までの間,D局E
部F課G係主任としてE部が所管するE部の物品等の取得に関し,取得する物品等
の種類,内容,概算予算額及び発注金額等の決定並びに受注業者の選定等同部の予
算の配賦に関する職務に従事していたCに対し,上記E部が取得する物品等につい
て,平成12年4月ころから同14年3月ころにかけての間,多数回にわたり,甲
商店に発注することを前提としてE部が取得する物品等の種類,内容及び発注金額
等を決定し,同社を受注業者に選定して受注させたことなどに対する謝礼並びに今
後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨で,オーディオボード等11点(価格合
計48万8880円),IHクッキングヒーター等18品目91点(価格合計23
4万円),浴槽及び浴室工事等一式(価格合計153万4160円)並びに壁クロ
ス張替等内装工事等一式(価格合計140万円)を供与し,もってCの職務に関
し,賄賂を供与した
第2 第1記載の職務に従事していたCと共謀の上,国庫金を詐取しようと企て,
真実は甲商店がH所ほか6カ所のOAフロア工事をD局から受注して施工した事実
がないにもかかわらず,同社が同工事を受注して施工した旨の工事完成届及び同社
のD局長宛の工事代金請求書等をD局会計係へ提出し,同会計係員をして,上記工
事代金の正当な受取人が甲商店である旨の虚偽の記載がなされた国庫金振込明細票
等を作成させた上,別表請求年月日欄記載のとおり,同12年7月21日ころから
同14年4月17日ころまでの間前後7回にわたり,同表請求場所欄記載の神戸市
I区J町d番地所在のK銀行L代理店である株式会社M銀行N営業部及び同区Ne
丁目f番g号所在のK銀行P代理店であるM銀行Q支店において,上記N営業部及
びQ支店の各K銀行担当職員に対し,上記会計係員をして,国庫金振込請求書及び
国庫金振込明細票等を提出させて甲商店名義の当座預金口座への国庫金振込を請求
し,上記N営業部のK銀行L代理店担当役席であるR並びに上記Q支店のK銀行P
代理店担当役席であるS及び代務役席であるTをして,あたかも甲商店が上記工事
代金の正当な受取人であるかのように誤信させ,よって同表振込年月日欄記載の同
12年7月25日ころから同14年4月19日ころまでの間,前後7回にわたり,
同表振込先欄記載の神戸市U区V町h丁目i番地のj所在M銀行W支店に開設され
た甲商店名義の当座預金口座へ同表振込金額欄記載の合計4813万9424円の
国庫金を振込送金させ,もって人を欺いて財物を交付させた
  ものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は,包括して刑法198条(平成15年法律第138号
(仲裁法)附則14条により同法による改正前の刑法197条1項前段)に,判示
第2(別表番号1ないし7)の各所為はいずれも刑法60条,246条1項にそれ
ぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法
45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も
重い判示第2の別表番号2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲
役2年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中20日をその刑に算入するこ
ととする。
(量刑の理由)
 本件は,甲商店の実質的経営者であった被告人が,D局G係主任であったCと共
謀の上,D局の裏金作りに協力して前後7回にわたり国庫金を詐取した詐欺及びD
局の物品等の購入の業者選定等に便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼と今
後も同様に便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下にCに家具等を供与した贈賄
の事案である。
 まず,詐欺について見ると,被告人は,同局で裏金作りを担当していたCから本
件架空取引を持ちかけられるや,架空取引により生じる利益を得ようとして,安易
に本件各犯行を敢行したものであり,犯行に至る経緯及び動機に酌量の余地はな
い。また,本件各犯行は,被告人が他の業者から入手した見積書などに虚偽の内容
を記入してCに渡し,Cが競争入札等の正規の手続を踏んで甲商店が落札したかの
ように仮装するなどした上,被告人が工事代金請求書等を提出して工事代金等を甲
商店の口座に振り込ませ,被告人がその4割を取得するとともに,その残りをCに
渡していたものである。犯行態様は大胆かつ巧妙で,常習的なものでもある上,被
告人の本件における役割は不可欠かつ重要であり,その取得利益の割合もかなり大
きいものであったといわざるを得ない。しかも,このような架空請求により詐取し
た金額は4800万円余とかなりの多額に達しており,国庫に多大な損害を与えた
のみならず,被告人が得た利得額も相当に大きい。次に,贈賄について見ると,被
告人は,裏金作りに協力することで得ていた不当な利益を守るため,Cの歓心を買
おうとして本件犯行に及んだもので,動機及び経緯に酌むべき事情は何ら見当たら
ない。また,公務の公正が現実に害されている上,供与された物品等の合計額も多
額に上る。さらに,本件一連の犯行が,D局裏金事件として社会の耳目を集め,国
民の労働行政,ひいては公務一般に対する信頼を失墜させたという社会的影響も甚
大である。以上の諸事情に加え,公金の違法な支出に対する国民の目がこれまで以
上に厳しくなっていることや,一般予防の観点をも併せ考慮すると,被告人の刑事
責任はかなり重いといわざるを得ない。
 そうすると,他方で,本件裏金作りを主導したのはCを始めとするD局側であっ
たこと,被害額がここまで拡大した遠因としては,裏金捻出を行うG係が実質的な
決裁や審査を何ら受けることなく支出行為を行い得る態勢であったことが挙げら
れ,このようなずさんな公金の管理体制が本件を誘引,助長した側面があること自
体は否定できないこと,被告人が雇主の協力を得て被害弁償の一部として1000
万円を支払っていること,甲商店が倒産し,被告人も破産するなど,既に一定の社
会的制裁を受けているといえないでもないこと,被告人には昭和59年の罰金前科
以外に前科がないこと,捜査段階から一貫して本件各犯行を認め,反省の情を示し
ていること,扶養すべき妻と3人の子がいること,妻及び雇主が公判廷で今後の被
告人の監督を誓約していることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる
が,これらの事情を十分に考慮しても,主文の程度の実刑は到底免れないところで
ある。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成17年6月23日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官  的場 純男
   裁判官西野 吾一
   裁判官三重野真人

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