弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
被告が原告に対して昭和四一年一二月二六日付でした懲戒戒告処分を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文同旨
第二 請求の原因
一 原告は大蔵事務官として、昭和四一年一〇月当時は足立税務署徴収課に勤務
し、かつ、全国税労働組合(以下全国税という。)足立分会(以下、単に分会とも
いう。)に所属する組合員であり、その副分会長の地位にあつた。
二 被告は、原告の任命権者である。
三 被告は原告に対し、昭和四一年一二月二六日付をもつて、国家公務員法八二条
各号に該当するとして同条による懲戒戒告処分(以下、本件処分という。)をし、
その頃同法八九条所定の処分説明書を交付した。
四 しかしながら、本件処分は違法であるから、その取消を求める。
第三 請求原因事実に対する認否
請求の原因一から三までの事実は、認める。
第四 本件処分の適法性に関する被告の主張
一 本件処分の理由
原告は、昭和四一年一〇月一四日及び一五日、足立税務署総務課長、総務課長補
佐、総務係長らが同署長の命を受けて同署庁舎一階にある全国税足立分会の使用に
かかる掲示板(以下、本件組合掲示板という。)に掲示されていた「ストライキ宣
言」等掲示紙(以下、本件掲示紙という。)を撤去しようとしたところ、次の行為
を行つた。
1 昭和四一年一〇月一四日
(1) 同日午後二時三八分ころ、同総務課長らが本件掲示紙を撤去していた際、
他の職員とともに本件組合掲示板前にかけつけ、暴言を吐きながら同課長らの胸を
肘で押すなどして遂に同課長らの撤去行為を不能ならしめ、その間、再三にわたり
同課長らが伝達した署長の職場復帰命令に従わず、同三時五分ころまでの間ほしい
ままに職場を放棄し、かつ、同課長らの右職務の遂行を妨げた。
(2) 同日午後四時五〇分ころ、同総務課長らが再び本件掲示紙の撤去に着手す
るや、直ちに他の職員とともに本件組合掲示板前にかけつけ、同課長らを背中で押
すなどして暴行を加え、さらに撤去した掲示紙を手に持つていた同総務課長補佐の
背後から、暴言を浴せながら同掲示紙を奪取し、同掲示紙を丸めて同課長補佐の左
手首を打つなどの行為を継続し、その間同署徴収課長が伝達した同署長の職場復帰
命令に従わず、五時までの間ほしいままに職務を放棄し、かつ、同総務課長らの右
職務の遂行を妨げた。
2 同月一五日午前九時四〇分ころ、同総務課長らが再び掲示されていた本件掲示
紙の撤去を開始するや、直ちに他の職員とともに本件組合掲示板前にかけつけて、
暴言を吐きながら同総務課長補佐の背中を押すなどして、その撤去行為を妨害し、
その間同署所得税第一課長らが伝達した同署長の職場復帰命令に従わず、同一〇時
ころまでの間ほしいままに職務を放棄し、かつ、同総務課長らの右職務の遂行を妨
げた。
原告の叙上の行為は、国公法九八条一項、九九条、一〇一条二項前段にそれぞれ違
反し、同法八二条各号に該当する。
二 本件掲示紙撤去行為の正当性とその根拠
1 掲示板使用についての制約
(一) 本件組合掲示板は、昭和三六年七月足立税務署庁舎が新築された際に当局
が設置して分会に使用を許したものであつて、国有財産法三条にいう行政財産に属
し、管理主体たる同署長の有する庁舎管理権が及ぶものであるから、職場の秩序を
乱すような使用が認められるものではなく、右のような使用がある場合には、秩序
維持の権能に基き管理主体が違法状態を排除できるものである。本件組合掲示板に
分会が掲示物を掲示し得ることの法律的性格は、同法一八条三項の規定に基いて掲
示板の管理主体である同署長が分会に対してその使用を許したことによるものとい
うべく、組合の活動が憲法ないし法律によつて認められているからといつて、当然
に行政財産を使用し得るものではない。したがつて、分会は同法一八条一項の規定
にかんがみ、本件組合掲示板につき本来の使用権を有するものではなく、あくまで
も正常な組合活動にのみ使用することを条件としてその使用を認められていたにす
ぎないものである。
よつて、本件組合掲示板の管理者は、分会にその使用又は利用を許した場合におい
ても、利用者がその利用において掲示板の維持保全の目的に背反し、あるいは公務
秩序を乱す行為を行う場合又はその恐れのある場合は、庁舎管理規則の有無にかか
わらず、庁舎管理権を行使してこれを排除する措置ないし命令をとりうるものとい
わなければならない。而して、この命令を受けた職員等は、当然これに拘束される
こととなる。特に同署においては、前記新庁舎の掲示板使用を認めるにあたり、同
署長が分会に対し、旧庁舎時代には分会が掲示板以外の庁舎施設にビラ、ポスター
を貼り、あるいは掲示板に違法と目されるビラを掲示したことがあつたので、今後
かかることがないよう注意するとともに、組合掲示板には正当な組合活動と認めら
れるもののみを掲示し、公序良俗に反する違法不当なものは掲示しないこと、もし
分会がこのような違法不当なものを掲示した場合は、分会に撤去を要求し、分会が
応じないときは当局において撤去する旨を申し渡している。
なお、原告は、本件組合掲示板は物品管理法二条にいう物品であつて行政財産では
ないと主張するが、本件組合掲示板は前記のとおり庁舎新築工事の際庁舎そのもの
の一部として設置されたものであつて、その形態、大きさ、構造及び設置方法から
みて、原告が主張するように釘で備えつけられたものではないし、またその形状を
損うことなくこれを取りはずし移動して使用できるものではないから、右にいう物
品すなわち動産には該らない。仮に物品に該るとしても、同法三〇条により私権の
設定は認められていないし、物品を貸し付ける場合は「物品の無償貸付け及び譲与
等に関する法律」(昭和二二年法律第二二九号)に基く「大蔵省所管に属する物品
の無償貸付及び譲与に関する省令」(昭和三七年大蔵省令第八号)によることとな
つており、本件組合掲示板は同法令に定める貸付けができる場合に該当せず、かつ
現実にも貸付けの措置はとつていなかつたから、結論においては差異を生ずること
はない。
(二) 憲法二八条の保障する労働基本権は、極めて重要な権利ではあるが、絶対
無制限のものではない。すなわち、同法一三条は基本的人権について公共の福祉、
国民全体の共同利益のための制限をやむを得ないものとしており、また同法一五条
二項の規定からは、公務員がその地位の特殊性の故に基本権の制限を受けるという
解釈が導かれる。そして国公法はこれを受けて、九六条一項、九八条二項の各規定
により国家公務員の労働基本権を制限しているのである。
原告らは税務職員として租税収入の確保を図ることがその職務の内容であつて、そ
の職務は国家財政上の見地から極めて公共性の強いものであるから、原告らの有す
る労働基本権が制約を受けることは当然のことといわなければならない。
2 本件掲示紙、掲示行為の違法不当性
(一) 本件掲示紙は、総評及び公務員共闘会議(以下、公務員共闘という。
)が経済的要求のみならず「アメリカのベトナム侵略反対」等の政治的要求をも合
せ貫徹することを目的に、昭和四一年一〇月二一日公務員を含めて統一ストライキ
を行うことを宣言し、あるいは統一ストライキへの参加を呼びかけることをその内
容としており、ストライキを禁止された国家公務員に対し政治的目的を含んだスト
ライキをあおり、そそのかすものであることは、その文言からして極めて明白であ
る。すなわち、本件掲示紙及びその内容は、次のとおりであつた。
(イ) 「ストライキ宣言」これは、総評及び公務員共闘連名の昭和四一年一〇月
一二日付のもので、その末尾に「われわれは一六〇万公務員労働者の統一と団結を
かため、総評に結集するベトナム反戦、最賃制確立、炭労首切り合理化阻止の全労
働者とともに敢然としてたたかい、要求実現をめざし、『一〇・二一』統一ストラ
イキを全力をあげてたたかい抜くことを宣言する。」と記載されており、その大き
さは新聞紙二頁(縦五四・五センチメートル、横八一・三センチメートル)をひと
まわり拡大した程度のものであつた。
(ロ) 「秋闘四大要求獲得のため統一ストライキで闘おう」(以下、「秋闘四大
要求獲得」と略する。)これは、総評発行のポスターであり、右の標題のほか、四
大要求の内容として(1)公務員労働者の大幅賃上げを闘いとろう!(2)全国一
律最低賃金制を闘いとろう!(3)アメリカのベトナム侵略にスト抗議しよう!
(3)石炭合理化に反対し、炭鉱労働者と住民の生活権を守ろう!と記載されてお
り、その大きさは新聞紙一頁(縦五四・五センチメーとル、横四〇・六センチメー
トル)程度のものであつた。
(ハ) 「全国一律の最低賃金制をストライキで闘いとろう」(以下、「最低賃金
制」と略する。)これに総評発行のステツカーであり、右文言が記載されていて、
その大きさは新聞紙一頁の四分の一(縦四〇・六センチメートル、横一三・六セン
チメートル)を若干小さくした程度のものであつた。
されば、税務の職場内においてかかる文書を掲示した本件掲示行為が国公法九八条
二項後段の規定に違反するものであることは論をまたない。
なお、付言すれば、この統一ストライキは、公務員共闘さん下の職員団体による一
時間の勤務時間内職場集会の開催を含み、また、当時分会が日刊態勢のもとに組合
機関紙を発行する等極めて活発な組合活動を行い、かつ、統一行動に参加を呼びか
ける文書を配布していた事実等から判断すると、本件掲示は、当時分会員をして右
勤務時間内職場集会等を実行させ、職務の停廃を招来させる危険性を多分に有した
ものであるが、税務職員は前記のように国家の財政収入中の租税収入確保をその職
務とし、国家の存立ひいては国民の生活、福祉に密接な関係を有する極めて公共性
の強い職務であつて、その職務の停廃は全く許されないものである。
(二) 本件掲示物の内容は、前記のとおりストライキをあおり、そそのかすもの
であり、その掲示場所は庁舎内でしかも納税者等の通行人の多い一階の廊下であつ
て、部内の職員はもちろんのこと部外者の目にも容易に触れる所であつた。よつ
て、仮に分会にストライキ実行の意思がなかつたとしても、これをそのまま放置す
るならば、被告がストライキを容認しているかの如き誤解を招くおそれがあるとと
もに、職場秩序維持の見地からも極めて不当なものであることはもとより、部外者
からも税務行政の信用を失う結果となる事情が存したものであり、国有財産法及び
国公法に照らして違法不当たるを免れないものであつた。
3 本件掲示紙撤去の正当性
本件掲示行為は前記2において述べたとおり違法不当にわたるものであり、本件組
合掲示板は足立税務署長の有する庁舎管理権が及び、また被告は本件組合掲示板を
分会に便宜供与するに際し、庁舎管理上支障があると認められた場合又は掲示物の
内容が違法不当なものであると認められた場合には、被告の指示により掲示板の使
用をとりやめ又は掲示物を撤去する旨を指示し、そのうえで分会に使用させていた
ものであるから、被告は再三にわたつて本件掲示は違法である旨を説明したうえ本
件掲示紙の撤去を庁舎管理権に基いて分会に求めたのであるが、これは当然の措置
であり、また、分会がこれに応じなかつたことからやむを得ず本件掲示紙を撤去し
たものであつて、これは管理者としての当然の職務行為であり、なんら違法ではな
い。すなわち、本件撤去は、まさにその目的及び手段において正当であつたという
ことができる。
なお、掲示紙は、その再度の掲示によつて重ねて作出される違法状態を未然に防止
するため、「一〇・二一」統一行動日が経過するまで被告において保管し、同月二
二日分会長Aに返還した。
三 本件職場復帰命令の正当性
被告が本件紛争時、原告を含む分会員に対し職場復帰命令(職務命令)を発した
が、本件職務命令は、足立税務署長の命を受けた副署長、総務課長、所得税第一課
長及び原告の上司が発出したものであり、形式上適法であるのみならず、その内容
もなんら法令に違反するものではなかつた。仮に右職務命令に瑕疵があつたとして
も、その瑕疵は客観的に明白であるとは到底いなえいから、原告らは右職務命令に
拘束され、これに服従すべき義務があつたものである。
第五 被告の主張に対する認否
一 本件処分の理由とされた事実のうち、昭和四一年一〇月一四日午後二時四〇分
すぎに原告らが本件組合掲示板前にかけつけて抗議を行つたこと、同日午後四時五
〇分すぎに原告らが右掲示板前で抗議を行い、総務課長補佐から掲示紙を取り返し
たこと、同月一五日午前九時四〇分ころ右掲示板前にかけつけ抗議を行つたことは
いずれも認めるが、その余は否認する。
二 本件掲示紙撤去行為の正当性とその根拠についての事実主張のうち、本件組合
掲示板使用に際し足立税務署長が被告主張のような注意や申渡しがあつたことは否
認する。
三 掲示板使用の制約についての被告の主張に対して
労働組合が使用者から組合事務所や掲示板等の物的設備の貸与を受けているからと
いつて、その使用方法・態様についてまで使用者の干渉、介入を許す根拠たりうる
ものではない。庁舎管理権なるものを認めるとしても、それは所有権に基く物の管
理、保管の権能を意味する以上のものではなく、物的設備に対する管理の権限と責
任が労働組合の右設備の利用方法に対する介入権限まで含むものではないことは当
然である。まして、本件の場合は労働基本権にかかわる労働組合の掲示板なのであ
つて、かりに庁舎管理権が及ぶとしてもそれは極端に制約を受くべきものである。
本件組合掲示板は国有財産法三条にいう行政財産ではなく、物品管理法二条にいう
物品であり、同法二九条に基き、国有財産法一八条三項の「その用途又は目的を妨
げない限度」という制約を受けることなく貸し付けできるものである。そして、分
会の本件掲示板の占有使用は、被告の何らの制限を受けることなく掲示板に組合の
掲示物を掲示することを目的とする掲示板使用契約に基くもので、右は私法上の使
用権を設定する一種の無名契約関係である。
四 本件掲示紙、
掲示行為の違法不当性についての被告の主張に対して
1 原告の所属する全国税は総評に加盟しているが、総評は民間、官公労等多数の
労働組合が加盟する協議機関であつて、加盟組合ないし組合員に対しては「要請」
することはあつても指令権はない。指令、指示権は、いうまでもなく各単組に属す
るものである。本件では、たしかに総評は一〇・二一についてストライキ宣言を発
している。しかし、これは文字通り「宣言」であつて、統一行動の趣旨とたたかう
意思を国民に向けて表示したものであり、これを読む者もかかる趣旨のものとして
理解することはいうまでもない。その記載文言が直ちに加盟組合の意思を拘束し、
あるいは右宣言が加盟組合の意思そのものであるとみるのは、幼稚、こつけいであ
るかあるいはよほど悪意に満ちたものである。総評がストライキ宣言を発しても、
加盟組合ことに争議行為についての制約を法的に受けている官公労は、公務員共
闘、国家公務員共闘会議(以下、国公共闘という。)など他の加盟上部組織とも協
議して、独自に統一行動の規模、内容を協議し、その協議に立つて各単組独自に意
思決定機関の討議を経、各単組において指令、指示として下部にながすのである。
この指令、指示のみが下部、組合員を拘束する。
本件一〇・二一については、国公共闘では「時間内外の職場大会」と決定している
が、国公共闘もまた文字どおり共闘組織であつて、指令、指示権をもたない。そし
て、全国税は「早朝ビラまき」と「昼休み集会」の二つで一〇・二一統一行動に参
加することをつとに最高決議機関たる大会で決定しているのであるが、その内容は
勤務時間内にくいこむものではなく、その意図も全くなかつたものであつて、スト
ライキの態様を構成するものでないことはいうまでもなく、国公法上の争議行為禁
止の規定に牴触するものではない。全国税は右のことを機関紙等で周知させている
のであつて、当局もこれを熟知しているものである。
2 本件各掲示紙は、全国税が情報伝達活動、教宣活動の一環として、労働運動全
般の状況を組合員に周知させ、連帯の意思を明らかにするために、協議機関として
加盟している総評等の文書を掲示したものであつて、ストライキをあおり、そその
かすものではない。
労働組合は労働者の自由意思に基く団結体として、上部からの文書を自らの掲示板
に掲示して情報を伝達し、団結の強化に資するのであり、掲示板は組合の上部から
下部あるいは組合員相互間の意思、情報伝達の媒介体として、団結の維持確保等組
合活動に重要不可欠な役割を果たすものである。かかる団結の媒介体としての組合
掲示板への自主的掲示行為に対して、当局が一方的に掲示物の内容の適法違法を判
断し、もつて掲示行為の適法違法を決するとすることは、組合運営に対する支配介
入であり、その団結体は自主的団結体というに値しないであろう。そうとすれば、
本件掲示文書の内容が違法だから当局が勝手に撤去するのも適法であるとする被告
の主張は、当局による監視、検閲を是認することになり、憲法で認められた団結権
を否認するものというほかはない。
原告ら分会員は、本件ストライキ宣言等の掲示によつてストライキをあおり、そそ
のかし、そのうえで一〇・二一にはこれを実行しようとする意思を有していたもの
ではない。したがつて、原告ら分会員が当局の実力撤去に対し抗議し強く抵抗した
のは、ストライキ実行を妨害から守るなどというものではないことはもちろんであ
り、もつぱら、本来自主的管理にのみ服し当局の干渉の許されるべきでない団結権
の象徴ともいうべき掲示板に対する当局の干渉があつたからにほかならないのであ
る。
五 本件掲示紙撤去の正当性についての被告の主張に対して
組合掲示板の自由使用は、職場における労働者の労働基本権行使の象徴ともいうべ
きものであつて、本件組合掲示板につき分会が私法上の使用権を有するか否かにか
かわらず、いつたん使用者たる当局が分会に本件組合掲示板を占有、使用させた以
上、それを分会がいかなる方法によりいかなる内容の掲示物を掲示するかは組合自
治の問題である。すなわち、掲示板の使用、占有は、いつたん分会にその権限が発
生した時から団結権の行使であり、使用者による支配介入は団結権保障の法的効果
として本質的に禁止されているのである。かりに使用者が便宜供与の範囲を逸脱す
るものが掲示されていると判断したとしても、使用者はせいぜい裁判所を通じてそ
の掲示物を排除できるにとどまり、実力による一方的撤去ができるとする合理的根
拠は全くない。つまり、当局が一方的に撤去できるためには、違法な内容の物の掲
示によつて惹き起こされる事態が国民生活に重大な支障をもたらすものであるこ
と、その事態が切迫し、その危険が明白かつ現存すること、実力撤去以外にこれを
避けることができないと客観的に認められること等の要件をみたさなければならな
いのに、本件においてはこれらの要件にあたる事情はなんら存しないのである。
第六 抗弁
一 処分権濫用
原告ら分会員には、被告の主張するような非違行為があつたものではない。かりに
原告らの行為のうちに被告の主張するような事実があつたとしても、それは当局が
原告らの正当な組合活動を弾圧する口実とするため挑発し、かつ分会員に対して暴
力を振い、実力をもつて組合掲示物を奪い取ろうとした行為に端を発するものであ
つて、その経過に鑑みれば、これを理由になされた本件処分は明らかに処分権の濫
用といわなければならない。
二 不当労働行為
本件は、当時活動が活発化してきた分会に対して、当局が処分を意図して挑発をか
け、組合並びに原告ら組合活動家の弾圧を計画した悪質極まる不当労働行為に出た
処分である。すなわち、(1)当局側は、昭和四〇年頃から庁舎管理権とか便宜供
与の条件などという口実をもうけ、組合掲示板に対し不当、不法な介入を始めてき
たもので、それ以前には全く注意や警告もなく、まして実力撤去などもなかつた。
(2)当局側は、全国税が統一行動として具体的に計画し呼びかけをしていたの
が、前述のように「時間外早朝ビラまき」と「昼休み集会」であつたことを十二分
に承知していたにもかかわらず、本件掲示物をわざわざ事をかまえるというやり方
で三回にわたつて実力撤去行為に出たものである。(3)分会は、当局側の度重な
る差別、弾圧にもとづく組合潰し政策により、昭和三四年以降大幅な組合員減少が
続いたが、本件事件の数年前から全国的に組合建直しの活動が活発化し、ことに足
立分会においては組合員が極めて原則的に活動を続け、活発化していた。(4)昭
和四一年は、当局側による全国税に対する攻撃が全国的にかけられ、組合活動家に
対する処分が集中した。以上の事情からみると、原告に対する本件処分は、当局の
不当労働行為意思に出たものであることは明らかである。
第七 抗弁事実に対する認否
抗弁事実は、否認する。
第八 証拠関係(省略)
○ 理由
一 請求の原因一から三までの事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、本件処分の適法性に関する被告の主張について判断する。
1 本件処分の理由に関する主張について
昭和四一年一〇月一四日及び一五日に、足立税務署総務課長、総務課長補佐、総務
係長らが同署長の命を受けて、同署庁舎一階にある全国税足立分会の使用にかかる
本件組合掲示板に掲示されていた「ストライキ宣言」等の本件掲示紙を撤去しよう
としたことは、原告の明らかに争わないところであり、一四日午後二時四〇分す
ぎ、同日午後四時五〇分すぎ及び一五日午前九時四〇分ころの三回にわたり、原告
ら分会員が本件組合掲示板前にかけつけ、当局側の右撤去行為に対して抗議を行つ
たことは、原告の認めるところである。
そして、いずれも成立に争いのない甲第四号証の二、第五号証の一から三まで、乙
第六号証の一から三まで、第二六号証、第三〇号証、証人B、同C、同Dの各証言
並びに原告本人尋問の結果によれば、次の事実が認められ、右認定に反する甲第四
号証の一、二、第一一号証の記載、証人D、同Eの各証言並びに原告本人尋問の結
果は信用しない。
(1) 一四日午後二時三五分に当局側が本件掲示紙の撤去に着手するや、その直
後原告ら八名の分会員が一せいに本件組合掲示板前に押しかけてきて、「何をする
んだ」「組合の財産をかつぱらうのか」「泥棒」などと怒鳴りながら、体あたりを
くらわせたり、肘で突いたり、足蹴りにして撤去行為を妨害し、二時四五分ころに
はA分会長もこれに加わつた。この妨害行為では、F分会員と並んで原告の行動が
最も激しかつた。午後二時四〇分ころに総務課長が「直ちに職場に帰つて仕事をせ
よ。」と職場復帰命令を出し、分会員らの上司である徴収課長や所得税第一課長ら
も職場復帰命令を出したが、分会員らはこれに従わず、午後二時五〇分及び午後三
時には署長の職場復帰命令が総務課長によつて分会員らに告知されたが、原告らは
これにも従わず、当局側が午後三時五分に現場を引揚げるまでの間、勝手に職務を
放棄した。なお、右妨害行為のため、当局側は「ストライキ宣言」の掲示紙は撤去
することができなかつた。
(2) 同日午後四時五〇分ころ、当局側が本件組合掲示板に貼つてあつた「スト
ライキ宣言」の掲示紙の撤去に着手するや、前同分会員が一せいに押しかけ、同様
の罵声を発し、体あたりをしたり、背を突ついたりして撤去行為を妨害し、特に原
告は、撤去した「ストライキ宣言」を丸めて持ち上げていた総務課長補佐の背後か
ら飛びかかつてこれを奪い、とり返そうとする課長補佐の手首を右掲示紙を丸めて
打つなど激しく行動した。その間、分会員らは、署長の職場復帰命令がC副署長に
よつて告知されたにも拘らずこれに従わないで、同五時までの間勝手に職務を放棄
した。
(3) 一五日に再び「ストライキ宣言」「秋闘四大要求獲得」の掲示紙が本件組
合掲示板に貼り出されていたので、午前九時三五分ころから当局側が撤去に着手し
たところ、原告はA分会長ら分会員七名と本件組合掲示板前にかけつけ、前同様の
暴言を吐きながら体当りしたり、背中を押すなどして撤去行為を妨害し、午前九時
四〇分ころに分会員の上司である徴収課長、管理課長、所得税第一課長らが出した
職場復帰命令に従わず、午前一〇時ころまでの間勝手に職務を放棄したが、この際
にも原告の行動が特に激しかつた。なお、掲示紙はいずれも撤去され、当局におい
てこれを保管し、統一行動日経過後分会に返還された。
2 本件掲示紙撤去行為の正当性に関する主張について
(一) 掲示板使用に関する制約について
本件組合掲示板が昭和三六年七月足立税務署庁舎が新築された際に、当局が設置し
て分会に使用を許したものであることは原告の明らかに争わないところであり、前
掲乙第六号証の一、二、成立に争いのない乙第二三号証の一、二、第二四号証によ
れば、右掲示板は緑色の布地を張つたベニヤ板に木枠をめぐらした縦九一センチメ
ートル、横一九〇センチメートルのもので、同庁舎一階正面ホールから食堂に通ず
る廊下のコンクリート壁面に凹みをつくつてはめ込み接着させてあるものであるこ
とが認められるから、庁舎の一部として国有財産法二条にいう国有財産であり(原
告は、本件組合掲示板は物品管理法二条にいう物品であると主張するが、誤りであ
る。また、原告の主張するような掲示板使用契約の締結を認める証拠は何もな
い)、国有財産法三条にいう行政財産に属し、分会が本件組合掲示板の使用を許さ
れたのは同法一八条三項の規定にもとづくものと認むべきである。したがつて、本
件組合掲示板の使用は、管理主体たる同署長の有する庁舎管理権に服するものであ
る。
しかして、同条項にいう「その用途又は目的を妨げない限度において」は、行政財
産の使用又は収益を許可するにあたつての要件であるとともに、右要件に反する使
用又は収益がされた場合には許可を取消すことができるものとして、許可を受けた
者の使用又は収益の方法、態様に対する制約でもあると解されるから、分会の本件
組合掲示板使用については、庁舎設置の目的達成に障害とならない方法、態様にお
いてされることを要するものである。反面、庁舎管理権の面からみれば、庁舎を国
の事務の円滑な運営の用に供し、庁舎設置の目的を達成するために、使用又は収益
を許可した行政財産についても、その使用又は収益の方法、態様についての管理を
怠らず、右目的に反する事態が現出したときは、積極的に管理権を行使して庁舎に
おいて営まれる国の事務の正常な運営に支障なからしめることが、管理主体の国に
対する義務であるといわなければならない。そして、行政財産の使用又は収益の方
法、態様が庁舎設置目的に反することによつて国の事務の運営に支障を生ずること
は、直ちに公共の利益の侵害に結びつく性質のものであるから、管理主体が右侵害
状態を可及的速やかに自ら排除することは、その方法、程度が適切かつ公正を欠く
ものでない限り、庁舎管理規程の有無に拘らず、また使用又は収益の許可に際して
その旨を告知していたかどうかを問わず、国に対する管理義務の履践として、当然
に許容される庁舎管理権の行使と解すべきである。
もとより、組合掲示板は労働組合の指令、意思、情報等の伝達の媒介体として、団
結の維持確保等組合活動に重要不可欠の役割を果すものであることは原告主張のと
おりであるが、行政財産を組合掲示板として使用する根拠が前記条項の規定にもと
づく許可にあるとするならば、庁舎設置の公共性に照らし、前記のような制約を免
れ、また庁舎管理権の行使を排斥しうるものではないし、その意味では右組合掲示
板の使用方法、態様について庁舎管理権が及ぶことは、公共の利益からする団結権
に対する制限と認めなければならない。
(二) 本件掲示紙、掲示行為の違法不当性について
(1) 本件掲示紙が「ストライキ宣言」「秋闘四大要求獲得のため統一ストライ
キで闘おう!」「全国一律の最低賃金制をストライキで闘いとろう」という標題も
しくは標語を掲げた各紙で、その記載文言、大きさが被告主張のとおりであること
は、原告の明らかに争わないところである。そうすると、「ストライキ宣言」につ
いては、総評及び公務員共闘が連名で「われわれは一六〇万公務員労働者の統一と
団結をかため・・・・・・・・・『一〇・二一』統一ストライキを全力をあげてた
たかい抜くことを宣言する。」としている点において、「秋闘四大要求獲得」につ
いては、総評名で「統一ストライキで闘おう」としている点において、また「最低
賃金制」については、総評名で「ストライキで闘いとろう」としている点におい
て、いずれも国家公務員が禁止されているストライキをそそのかし、若しくはあお
つている内容のものであり、他方、「ストライキ宣言」については、「総評に結集
するベトナム反戦・・・・・・・・・の全労働者とともに敢然としてたたかい、要
求実現をめざし・・・・・・・・・統一ストライキを全力をあげてたたかい抜く」
としている点において、「秋闘四大要求獲得」については、四大要求の一として
「アメリカのベトナム侵略にスト抗議しよう!」を掲げている点において、いずれ
も政治的目的を有する文書である。
したがつて、これらの文書を本件組合掲示板に掲示することは、国家公務員に対し
ストライキをそそのかし、若しくはあおることになつて国公法九八条二項後段の規
定に違反し、また政治的目的を有する文書を庁舎に掲示することになつて同法一〇
二条一項、人事院規則一四-七の五項五号、六項一二号の各規定に違反するもので
ある。
(2) 原告は右に関し、まず、総評は労働組合の協議機関であり、公務員共闘は
文字どおり共闘組織であつて、いずれも加盟組合や組合員に対し指令、指示権をも
たないから、本件掲示紙はいずれもストライキをそそのかし若しくはあおるものと
理解さるべきではないと弁明するが、文書の記載内容がストライキをそそのかし若
しくはあおるものであるかどうかを判断するにあたつては、その客観的、合理的な
解釈により決すべきであつて、右のような指令、指示権がないとの一事で消極に解
すべきでないことはいうまでもない。また原告は、全国税は「早朝ビラまき」と
「昼休み集会」の二つで一〇・二一統一行動に参加することを決定していて、その
内容は勤務時間内にくいこむものではなくその意図もなかつたものであり、当局も
このことを熟知していたと弁明するが、このような事情も文書の意味内容の解釈に
あたつては問題にならない。さらに原告は、本件各掲示紙は、全国税が情報伝達活
動、教宣活動の一環として労働運動全般の状況を組合員に周知させ、連帯の意図を
明らかにするために掲示したものであつて、ストライキをあおり若しくはそそのか
す意図はなかつたと弁明するが、文書の内容が前判示のとおりである限り、単なる
情報伝達や教宣の活動の一環にすぎないとは認めがたい。よつて、原告の弁明は、
いずれも肯認できるものではない。
(3) そして、争議行為をそそのかし若しくはあおる内容の文書又は政治的目的
を有する文書を庁舎内の組合掲示板に掲示することは国公法に違反すること(1)
に判示のとおりであるが、かかる掲示を当局において放置するときは、国家公務員
に禁止された争議行為を当局が許容ないし黙認するかの如き状況となり、組合員を
して争議行為を実行せしめ、庁舎において遂行される国の事務の円滑な運営に支障
を生ずる虞があり、また公務員の政治的中立性に対する国民の信頼を失わしめる虞
があつて、これらはいずれも庁舎設置の目的に反する事態といわなければならな
い。
したがつて、本件各掲示紙を本件組合掲示板に掲示することは違法であつて、庁舎
管理権による規制の対象となりうべきものである。
(三) 本件掲示紙撤去の正当性について
(1) 本件掲示行為が前判示のとおり違法であり、庁舎管理権による規制の対象
となりうべきものであるところ、前掲甲第四号証の二、第五号証の一から三まで、
乙第六号証の一から三まで、第二六号証、第三〇号証、いずれも成立に争いのない
甲第一号証、乙第一号証、第五号証、第七号証、第九号証、第三一号証、第三四号
証から第四一号証まで、証人G、同B、同Cの各証言によれば、当局側が自力撤去
に踏み切つた経緯並びにこれに関連する事情として、次の事実が認められる。
(イ) 一〇・二一ストライキの一環として公務員共闘が予定している半日休暇闘
争、時間内職場大会の計画に対しては、昭和四一年九月三〇日に総理府総務長官の
警告談話が発表され、足立税務署においても総務課長がA分会長を呼び、右談話を
中心にして分会が国公法に違反する行動に出ないよう厳重に注意した。しかし、国
公共闘はその機関紙国公労新聞一〇月七日号で「一〇・二一大統一行動に全員参加
しよう」との見出しのもとに参加を呼びかける記事を載せ、日程として「一〇・二
一」総評全労働者統一ストライキ、国公各単組は時間内外の職場大会と記載した。
一方、全国税はその機関紙九月二五日号で「一〇・二一統一ストライキには、全組
合員が、組合旗をたてて、早朝ビラまき昼休み集会の統一行動で参加します。地域
集会にも全組合員が参加します」と記していたが、分会はその機関紙一〇月一一日
号で「一〇・二一統一ストを支援し、成功させよう」との見出しで、「総評、中立
労連を主体にした全国の労働者が大統一ストライキに立ち上がる。私達全国税も国
公共闘に結集し、・・・・・・・・・早朝ビラまき、職場集会、リボン戦術などで
この大統一行動に参加します」とするほか「一〇月二一日の大統一ス
ト・・・・・・・・・世界ではじめてのゼネストとなるばかりでなく・・・」とか
「一〇・二一統一ストを支援し、統一行動に参加しよう」との意見や呼びかけを表
明し、これら機関紙を当時は毎日発行して全職員に配布し、一〇月一〇日頃からは
ひんぱんに執行委員会を開いて活発な組合活動を続けていた。
(ロ) 当局側は、一〇月一四日昼ころに本件掲示紙を発見したので、その撤去を
求めるべく総務課長がA分会長を呼んだが、出張中で不在であつた。そこで総務課
長は、副分会長である原告を呼んだが応じなかつたので、署長命令をもつて原告に
対し総務課長席に来るよう命じたところ、原告は「そんな命令を聞く耳は持たな
い。」といつて受けつけなかつた。やむなく総務課長補佐が原告席に出向き、署長
命令として午後二時三〇分までに本件掲示紙を撤去することを命じ、分会が撤去し
ない場合には当局側において撤去する旨を伝達したが、原告はこれに対しても「聞
かん。何も聞かん。」と答え、午後二時三〇分を過ぎても撤去しなかつた。また、
午後三時半にA分会長を総務課長の席に呼び、午後四時までに本件掲示紙を撤去す
ることを命じたが、分会側はこの時も相手にせず、所定の時刻を過ぎても撤去しな
かつた。
(ハ) 当局側の本件掲示紙の撤去行為は、署長命令に基いて行われ、「ストライ
キ宣言」は総務課長補佐が、「秋闘四大要求獲得」は総務課長が、「最低賃金制」
は総務係長が、それぞれ撤去方を担当し、撤去行為は器具を用いず、手で掲示紙の
周囲に止められていた画鋲をはずす方法で行われた。そして、撤去行為中に分会員
らが「なぜ撤去するのか」と質したのに対し、総務課長らは「公務員法に違反する
虞があるからだ。」とその理由を説明した。また、一四日に一旦撤去された「秋闘
四大要求獲得」は一五日に再び掲示されていたが、一五日には掲示紙はいずれも当
局側によつて撤去され、当局においてこれを保管し、統一行動日経過後分会に返還
された。
(ニ) なお、足立税務署において掲示が問題にされた事例としては、本件の以前
及び以後に次のような事件がみられる。昭和三五年一一月の衆議院議員選挙の際、
分会が特定候補支持のポスターを貼つたので、国公法、人事院規則、公職選挙法に
違反するということで、署長が分会長を呼んで警告し、分会側が撤去した。昭和三
六年春闘に関連し半日ストライキを実行するとのビラが貼られ、国公法に違反する
ということで署長が分会に対し撤去を命じたが、分会が応じなかつたので総務課長
らが撤去した。昭和四〇年一〇月二二日総評、公務員共闘のストライキ宣言が掲示
され、国公法に違反するということで署長が分会に対し撤去を命じたが、応じなか
つたので総務課長と総務課長補佐が撤去した。昭和四二年から昭和四九年までは、
昭和四五年及び四六年を除き、毎年右と同じ事態が繰り返された。昭和四二年四月
東京都知事選挙の際、分会が全国税東京地連の機関紙を掲示したところ、その一部
が公選法に違反するということで署長が分会に対し撤去を命じ、分会も撤去を認め
た。
(2) 右認定の事実によれば、一〇月に入つてから公務員共闘や国公共闘による
闘争態勢は緊迫し、これを受けて足立税務署においても一〇・二一統一ストライキ
に際して違法な争議行為が敢行される危険性も否定できず、しかもその危険性は本
件掲示紙の掲示によつて一層助長され、さらにその撤去を分会が全く肯んぜず任意
撤去の見込みがなくなつた段階に至つて、公務の正常な運営を保持するため当局が
自力撤去をもつて違法状態の排除に踏み切らざるをえなかつた緊急性が存したもの
といえるし、自力撤去に着手するまでの手続や撤去の方法、程度において適切かつ
公正を欠くものではないと認められるから、当局側の本件掲示紙撤去行為は正当で
あつたというべきである。
3 本件職場復帰命令の正当性に関する主張について
当局側の本件掲示紙撤去行為が、庁舎管理権の行使としての適法な署長命令に基く
総務課長らの職務行為であり、原告ら分会員の冒頭判示の行為は右職務行為を妨害
するものとして、その間原告ら分会員は勝手に職務を放棄しているものと認めるほ
かないから、署長が原告ら分会員に対して職場復帰命令を発出したのは適法であ
り、原告ら分会員はこれに服従すべき義務があつたものである。
4 叙上判示のところからして、本件処分の適法性に関する被告の主張は理由があ
る。すなわち、本件処分の理由とされた原告の行為は、国公法九八条一項、九九
条、一〇一条一項前段の各規定に違反し、同法八二条各号の規定に該当する。そし
て、その態様、程度に照らし、被告が懲戒処分として戒告処分を選択したことは相
当と認められる。
三 原告は、本件処分は処分権を濫用したものであり、また不当労働行為によるも
のであると抗弁するが、いずれもこれを認めるに足りる証拠はない。
四 そうすると、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴
訟費用の負担につき民訴法八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 西山俊彦 原島克巳 仲宗根一郎)

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