弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2社会保険庁長官が平成18年6月16日付けで控訴人に対してした年金加入
期間確認処分のうち,控訴人の国民年金保険料の納付済期間が昭和50年4月
から平成元年3月までの168月であることを確認する部分を取り消す。
3厚生労働大臣は,控訴人に対し,控訴人の国民年金保険料の納付済期間が昭
和39年3月1日から平成元年4月1日までの301月であることを確認せ
よ。
第2事案の概要
1控訴人は,社会保険庁長官から,控訴人の国民年金保険料の納付済期間が昭
和50年4月から平成元年3月までの168月であることなどを確認する処分(本
件確認処分)を受けたが,納付済期間は昭和39年3月1日から平成元年4月1日
であると主張し,本件確認処分中控訴人の国民年金保険料の納付済期間を確認する
部分の取消しを求めるとともに,控訴人の国民年金保険料の納付済期間が昭和39
年3月1日から平成元年4月1日までの301月(本件期間)であることを確認す
る処分の義務付けを求めた。
原審は,控訴人の請求のうち,本件確認処分の取消しを求める部分を棄却し,納
付済期間が本件期間であることを確認する処分の義務付けを求める部分を却下し
た。
2関係する法令,前提事実並びに争点及び争点に対する当事者の主張は,原判
決「事実及び理由」中「第2事案の概要」の2ないし4に記載のとおりである。
控訴理由も,控訴人の原審主張に基づき,原判決の認定判断を誤りとするものであ
る。
なお,原判決後の日本年金機構法の施行に伴い,本件確認処分と同種の処分は社
会保険庁長官に代わって厚生労働大臣が所管することとなった。
第3判断
1当裁判所も,本件確認処分の取消しを求める請求は理由がなく棄却すべきで
あり,納付済期間が本件期間であることを確認する処分の義務付けを求める請求は
不適法で却下すべきと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」中「第3争
点に対する判断」に記載のとおりである。
2年金記録の管理等については不備があり,国民年金の保険料納付記録の訂正
回復措置が執られたものがあるが,そのことは保険料納付記録の消極的証明力を一
般的に減殺させるということはいえても,記録のない個別の納付の事実を裏付ける
ものではないし,正確さを欠く記録は一部に過ぎず,被保険者保険料の納付の事実
を立証することが,不可能又は著しく困難ではないことに鑑みれば,保険料の納付
という事実について被保険者に立証責任を負わせることが正義の観念に反するとは
いえない。
控訴人の主張は,母であるAが控訴人に代わって保険料の納付をしていたという
ものであるが,本件期間中に控訴人が転居しているのであるから,それぞれの自治
体で相応の手続や記録がなされているはずであるところ,転居先の複数の自治体の
全てにおいて控訴人の被保険者名簿その他の保険料納付の事実をうかがわせる資料
は何ら残っていないこと,Aが集金の際に控訴人の分も支払っていたとすれば,大
阪府豊中市と香川県小豆郡α町のいずれもが住民ではない控訴人の保険料を徴収す
るという制度上予定されていない行為を行っていたことになるし,郵便局で送金し
ていたとすると,Aは納付書や領収書をどのように入手していたのか,控訴人が京
都市β区から兵庫県西宮市,同県宝塚市へと転居したことに対してどのように対応
したのか不明であること,Aは,控訴人の兄であり,A方で自営業を営んでいたB
に対しては,婚姻を契機に年金保険料を自分で支払うよう伝え,国民年金手帳も引
き渡しておきながら(甲31,証人C),経済的に独立していた控訴人については,
婚姻や転居にかかわらず本人に代わって保険料を支払い続け,控訴人が自分で年金
保険料を支払うようになっても国民年金手帳の引渡をしていないことなど不自然な
点がある。
控訴人は,基礎年金番号に統合されていない年金記録が5000万件余り存在し
ていることを筆頭に年金記録の管理に多数の不備があることや,年金記録を管理し
ていた職員の不正行為も多数に及んでいることを強調するが,そのような記録管理
の不備,不正行為,統合できない年金記録の存在が直ちに本件で不備や不正があっ
たことを裏付けるものではないし,例えば,本件に関係しては,住民ではない者の
保険料を徴収することが豊中市やα町で慣行として行われていたとか,転居先の複
数の自治体の全てにおいて被保険者名簿その他の控訴人の保険料納付の事実をうか
がわせる資料が何ら残っていないということが相応の頻度で起こりうると認めるに
足りる証拠はない。控訴人の主張は,個別の事例の差異を無視して,年金記録の管
理の不備や多数の不正行為が存在しているという一般論を本件に当てはめようとす
るものであって,採用することはできない。
控訴人の主張を裏付けるものとして,控訴人及びCの供述や控訴人が昭和51年
ころに交付を受けた国民年金手帳及び保険料の納付書に昭和39年3月1日に国民
年金の被保険者資格を取得したと記載されているという事実があるが,この点に関
する控訴人らの供述内容は,他人であるAの納付に関連する一場面や一資料を目撃
したというものに過ぎず,納付の経緯や具体的状況は明らかでなく,納付の方法に
ついても供述に食い違いがある上,前記のような不自然な点については合理的な説
明をしていない。昭和39年3月1日に国民年金の被保険者資格を取得したとの記
載についても,それに対応する他の自治体における被保険者名簿その他の資料の存
在は認められず,かかる記載だけが記録として残されている点は不自然としかいい
ようがない。
3以上検討したところによれば,本件では,控訴人名義で年金保険料が納付さ
れたにもかかわらず,管理の不備により記録が滅失ないしは欠如しているというよ
りも,控訴人名義での年金保険料は納付されておらず,それゆえ納付にかかる記録
や資料が残存していないと認めるのが自然であり,かつ,合理的である。
4結論
よって,控訴人の請求のうち,本件確認処分の取消しを求める部分は理由がない
として棄却し,納付済期間が本件期間であることを確認する処分の義務付けを求め
る部分は不適法として却下した原審の判断は相当であって,本件控訴は理由がない
から,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官塩月秀平
裁判官久保田浩史
裁判官平井健一郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛