弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六年に処する。
     原審の未決勾留日数中六〇日を右本刑に算入する。
     原審で国選弁護人に支給した訴訟費用は被告人及び原審相被告人Aの連
帯負担とし、当審の訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 検察官の控訴趣意について、
 被告人の生年月日が昭和○年△月××日であり、原判決が昭和二八年九月二八日
宣告されたことは所論のとおりである。ところで、年令計算ニ関スル法律による
と、年令は出生の日からこれを起算する旨規定し、同法律により準用される民法第
一四三条では週、月または年の始から期間を起算しないときは、その期間の最後の
<要旨第一>週、月または年においてその起算日に応当する日の前日をもつて満了す
ることになつているから、少年法第二条第一項にいわゆる成年であるか
どうかを定めるについても、正確な出生時刻とは関係なく出生の日から起算して二
〇年後の応当日の前日をもつて満二十歳に達したものと解すべきである。
 したがつて、本件において被告人の年令は、昭和八年九月二八日から起算し二〇
年後における応当日前日の昭和二八年九月二七日の経過により満二〇歳に達したわ
けであり、原判決宣告のあつた同月二八日には被告人はすでに成年に達していたも
のであるから、これに対し原判決が少年法第五二条を適用し不定期刑を宣告したの
は違法である。もつとも、原審審理の経過によれば、原審は、一たん判決宣告期日
を昭和二八年九月二五日と指定しながら職権で九月二八日に変更したものであり、
判決書も同月二五日附をもつて作成されており、同<要旨第二>日には被告人は二〇
歳に満たない少年であつたことが明らかであるけれども、そもそも少年法第五二条
を適用するがための被告人が少年であるかどうかの定まる時期は、口頭
弁論終結のときもしくは裁判書作成のときではなく判決宣告のときと解すべきであ
るから、右原審審理の経過は原判決の瑕疵を救うに足りない。
 よつて刑事訴訟法第三九七条第三八〇条第四〇〇条但書に従い原判決を破棄しさ
らに裁判をする。 原判決が証拠により確定した被告人の所為は、刑法第二四〇条
後段第二四三条に該当するから所定刑中無期懲役刑を選択し同法第四三条本文第六
六条第六七条第六八条第二号第三号を各適用し未遂減軽及び酌量減軽をした刑期範
囲内で被告人を懲役六年に処し、同法第二一条刑事訴訟法第一八一条第一八二条を
それぞれ適用し主文第二項以下のとおり判決をする。
 (裁判長判事 荻野益三郎 判事 熊野啓五郎 判事 梶田幸治)

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