弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 被告人等四名の弁護人石坂繁の控訴趣意は、記録に編綴されている同弁護人提出
の控訴趣意書に記載の通りであるから、これを引用し、右に対し当裁判所は次の様
に判断する。
 右控訴趣意第一点の一の1及び第三点の1について。
 原裁判所の押収にかかる証第一号の「申合セ証」と題する書面には「今般協議ニ
ヨリA、B、C、D氏トハ冠婚葬祭屋根普根替税金ノ集金等一切ノ交際ヲ遠慮ナス
事其ノ理由ハ云々」と所論弁疏に符合するような記載があるけれども原判決拳示の
各証拠就中証人C同A同E同F(第一回第二回)同Gの各供述に徴すれば、右記載
の趣旨は原判示の通り「爾今右四名等と冠婚葬祭等一切の交際を絶ち仲間外しにす
る意味の誓約を為し」たものと解するのが相当である。而して、本来、右四名に対
し交際を為すかどうかが被告人等及びその他の部落民等各個人の自由に任されてい
ることは所論の通りであるけれども、原判示の様に被告人等が右四名を除き被告人
等を含むa大字bのc部落十八世帯を糾合し全部落結束して右四名に対し上叙冠婚
葬祭等一切の交際を断ち仲間外しにすることは、右四名の自由及び名誉を殿損する
害悪に該当し斯る交際断絶の申合せを為すことはもはや被告人等の自由権の範囲を
逸脱し許容されない所と言わねばならない。従つて、右と反対の見解に立却し右申
合せを以て何等害悪になる様な内容を包含しないものと為し、延いて原判決の事実
誤認或は理由不備を主張する右論旨は、これを採用することができない。
 同第一点の一の2及び第三点の2、3について。
 <要旨第一>原判決が本件害悪の告知に関し説示する所は、やや明確を欠く嫌があ
るけれども、本件被絶交者四名の内先ずCに対する告知に関しては、同
人の面前で本件絶交の誓約及びその書面の作成が為されたことを明示しているか
ら、判文自体に照らし疑義を生ずる余地はなく又その余の三名(DBA)に対する
告知に関して、原判決が挙示している「被告人等の公判廷における集会並びに同集
会における申合せ及び右申合せの文書作成等の事実に対する自供」その他の各証拠
を綜合すれば、前記「十八世帯を糾合し」て為された申合せは前記c部落の供出米
補正割当に関し昭和二十六年一月十九日同部落全世帯の代表者が集会した公開の席
上で為され而も右D及びBの各家族も右集会に出席「尚Aも当初列席していたが申
合せ証作成前に退席帰宅)していたことが明らかであるところ斯る全部落民集会の
公開の席上で共同絶交の申合せが行われたときはそのこと自体部落居住者一般に右
申合せを周知させる状態に置いたものと解すろことができるのみならず、本件にお
いては現に其の後Dは前記CからBは右集会に出席した長男から何れも右申合せの
内容を聞知し又Aも右申合せの内容を聞知して本件告訴を為すに至つたものである
ことを看取することができるから、結局原判決の事実摘示とその証拠説明とを彼此
照合して考察すれば、原判決には所論告知の認定及び判示方において瑕疵はないも
のと言うべく、従つてこの点に関し原判決の事実誤認或は理由不備を主張する右論
旨も亦採用することができない。
 同第二点について。
 勿論、前述の様な部落民共同の絶交も、社会通念に照らしかかる絶交を受けても
止むを得ないと認められる様な非行が被絶交者の側に存するときは、その違法性を
喪失し犯罪を構成しないこと所論の通りであると言わ<要旨第二>ねばならない。そ
こで、本件絶交の原由となつた事情について検討して見るのに原判決挙示の証人C
A同E同F(第二回)同Gの各供述(尚右挙示にかかる以外の証人H
同Iの各供述、JKの検察官に対する各供述調書の供述記載を参照しても同旨)に
徴すれば、昭和二十五年度産米の供出補正割当に際し被絶交者の一人Dが村当局に
対し前記c部落のため不利益な言辞を洩らしたこと而して右はDと加入農業協同組
合を同じくする爾余の被絶交者三名との話合に基き為されたものである(因みにa
居村内にL農協とM農協の二者があり、右c部落中本件被絶交者四名のみが後者に
加入し他はすべて前者に加入していたこと参照)と言うことが右絶交の理由となつ
ているものと認められろところ、右被絶交者四名の間にかかる話合が為されたこと
を窺知するに足る何等の事蹟も見出し難く、又右Dにおいて洩らしたとされている
前記部落のためいわゆる不利益な言辞の内容も、前記c部落は供出補正割当左四割
九厘貰えば完納できるとか(原判決挙示の証人C同A同E被告人Nの原審公判廷に
おける各供述、尚右挙示以外のJ及びKの検察官に対する各供述記載も同旨)或は
くず米でもよいねら第一次補正を受けただけで完納でをるとか(原判決挙示の証人
Fの供述)と言う類のものであつて、単に同部落に対すろ供出米補正割当について
の意見を述べているに止まりそれ自身何等非道義的なものを包含していないのみな
らず原審証人O(本件当時の村長)の供述によれば、当時右Dが同証人方に来り
「自分の部落の割当は楽でない」旨洩らしたことはあるけれども、「自分の部落は
四割補正を貰えば十分である」と言う様なことを言つたことはなく、尚同証人が被
告人Nを呼んで供出割当について事情を聞いた際も右の様なDの話は全然していな
いと言うのであり(尚原審証人Dの供述も固より同旨)、本件絶交の主唱者たる被
告人Nにおいて右Dが村当局に対し供出米補正割当に関し右部落のため不利益な話
をした旨他に吹聴していることの外、右の様な不利益な言辞を弄した事実を認める
に足る何等の根拠も記録上見出すことができない。更に、前掲証第一号の「申合セ
証」に絶交の理由として挙げられている「倉庫、道路ニ反対云々」と言う点につい
ても、先ずCにおいて同部落の農業倉庫建築及び道路開設に全面的に協力したこと
は原判決挙示の各証拠その他記録全部を精査しても争う余地のない明白な所である
から、右の一事に照らしても右「倉庫道路ニ反対云々」の件が右Cを含めた四名に
対する本件絶交の真の原因とは認められないのみなちず、右倉庫及び道路の建設に
協力しなかつたとされる爾余の三名についても、原審証人B同Aの各供述によれば
(イ)Bは当初前記農業倉庫の建築に協力していたがその工事進行中些細なことか
ら部落民と感情の疎隔を来して脱退し、そのため延いて右倉庫建築と関連する道路
普請にも感情的に協力的できなかつたと言うのであり、又右証人A同F(第二回)
の各供述によれば(ロ)Aは当時七十歳余の老齢であつたため協力できなかつたこ
とが窺われ、尚又原審証人D(特に第二回)の供述によれば(ハ)Dは右倉庫建築
当時家庭内の人手も不足し資金関係も窮していたため之に協力できず道路普請もそ
の三四年前に同人等が同部落本道の改修を為した際部落民の協力を得られなかつた
ことに関する憤懣の情から協力しなかつたことが窺われるから、右三名の非協力に
ついては夫々斟酌すべき事情が存在したものと言うべく、之等を以て一方的に同人
等の非行と断じ部落民共同の絶交に値する事由と認めることもできない。然らば、
結局、本件絶交に関し、社会通念上該絶交を正当視すべき被絶交者側の非行その他
の事由は存在しなかつたものと言うべく、従つて原判決がこれを刑法第二百二十二
条第一項の脅迫罪を構成する違法なものと認定したのはまことに相当であるから、
この点に関し原判決の事実誤認を主張する右論旨も亦採用することができない。
 以上説示する通り本件控訴趣意はすべてその理由がないから、刑事訴訟法第三百
九十六条に則り本件控訴を棄却することとして主文の様に判決する。
 (裁判長裁判官 谷本寛 裁判官 藤井亮 裁判官 吉田信孝)

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