弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2別紙当事者目録記載の控訴人番号1ないし9の各控訴人,A(同番号10の
の各控訴人の被相続人)及び同番号11ないし13の各控訴人に対し,被1,2
控訴人が昭和52年2月19日付けでした別紙懲戒処分一覧表1記載の各懲戒
処分をいずれも取り消す。
3別紙当事者目録記載の控訴人番号2,3,6,8,9の各控訴人及びA(同
番号10のの各控訴人の被相続人)に対し,被控訴人が昭和52年9月11,2
2日付けでした別紙懲戒処分一覧表2記載の各懲戒処分並びに同番号11,1
2,15ないし17,21ないし24,26,31,36ないし41,43,
45ないし50,52ないし55,60,61,67ないし83,85の各控
訴人に対し,被控訴人が同日付けでした別紙懲戒処分一覧表3記載の各懲戒処
分をいずれも取り消す。
4別紙当事者目録記載の控訴人番号19ないし20,51,62及びB(同番
号18のの各控訴人の被承継人)の各控訴人及びに対し,被控訴人が昭和1,2
52年9月20日付けでした別紙懲戒処分一覧表3記載の各懲戒処分をいずれ
も取り消す。
5別紙当事者目録記載の控訴人番号1,4,5,7の各控訴人及びC(同番号
14のの各控訴人の被相続人)に対し,被控訴人が昭和52年11月181,3
,,日付けでした別紙懲戒処分一覧表2記載の各懲戒処分並びに同番号1325
27ないし30,32ないし35,42,44,56ないし59,63ないし
66,84の各控訴人に対し,被控訴人が同日付けでした別紙懲戒処分一覧表
3記載の各懲戒処分をいずれも取り消す。
6訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1被控訴人は,北海道立学校又は北海道内各市町村立学校の教職員であった控
訴人ら(別紙当事者目録記載の控訴人番号10の及び同番号14のの1,21,3
各控訴人についてはその被相続人,同番号18のの各控訴人についてはそ1,2
の被承継人)に対し,昭和50年12月から昭和52年4月にかけて実施され
た争議行為に関与したことを処分事由として,地方公務員法(以下「地公法」
という)37条1項に基づいて懲戒処分を行った。本件は,控訴人らが,地。
公法37条1項は,憲法28条並びに結社の自由及び団結権の保護に関する条
約(昭和40年6月28日条約第7号,以下「ILO87号条約」という)。
及び憲法98条2項に違反する無効な規定であり,また,仮に無効でないとし
ても,控訴人らが受けた懲戒処分は懲戒権の濫用に当たるから無効であるなど
と主張して被控訴人に対し上記各懲戒処分の取消しを求めた事案である以,,(
下,控訴人らの表記については,もっぱら別紙当事者目録記載の控訴人番号を
用いることとするが,特に断らない限り,同番号10のの各控訴人及び同1,2
番号14のの各控訴人については,それぞれその被相続人であるA(以下1,3
「被処分者A」という)及びC(以下「被処分者C」という,同番号18。。)
の1,2の各控訴人については,その被承継人であるB(以下「被処分者B」と
いう)を便宜上それぞれ「控訴人番号10の控訴人「控訴人番号14の控。」,
」「」,,訴人及び控訴人番号18の控訴人と表記し被処分者全員を指す場合に
この者らを含めて「控訴人ら」と表記することとする。。)
原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却したので,控訴人らは控訴の趣旨記
載の裁判を求めて本件控訴に及んだ。
ただし,被処分者A及び同Cは本訴提起時に既に死亡していたため,各3名
ずつの相続人が原告として本訴を提起し,敗訴判決に対して控訴したが,原審
原告番号10の3のD及び同14の2のEの2名は,その後控訴を取り下げてい
る。
また,被処分者Bは,当審における弁論終結前に死亡したため,2名の相続
人が本件訴訟を承継した。
2前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり訂正,削除,
加入するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「1
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認定することのできる事実「2争点」及び「3争点及びこれ)」,
に対する当事者双方の主張の概要」に記載のとおりであるから,これを引用す
る。なお,原判決書に記載のある各別紙は,本判決書添付の対応する各別紙と
読み替える。
()原判決書3頁5行目の「10の1ないし3」を「10の1,2」と,61
行目の「14の1ないし3」を「14の1,3」とそれぞれ改め,7行目の
「。」「,,相続人であるを相続人であり控訴人番号18のの各控訴人は1,2
被処分者B(平成20年4月8日死亡)の相続人である」と改める。。
()原判決書3頁13行目の「代表者である」を削除する。2
()原判決書4頁18行目の「専従役員として」を削除する。3,
()原判決書4頁19行目の「支部内市町村」の次に「及び政令指定都市の4
区」を加入する。
()原判決書5頁7行目から21行目までを次のとおり訂正する。5
「学校の施設,設備,組織編成等については,学校教育法,同法施行規則,
地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という,。)
同法33条1項等に規定される教育委員会規則及び地方公共団体の条例等に
,(,。)より定められているところ文部省当時の名称以下も同様に表記する
は,学校教育法施行規則並びに都道府県及び市町村の学校管理に関する教育
委員会規則(以下「学校管理規則」という)を改正するなどして,既に置。
かれていた校長及び教頭のほかに,教諭の中に「主任」という名称の役職者
を設け,これを法令その他において確立した制度として定めるための措置を
行おうとした以下主任制度化といいそのように定められた制度を主(「」,「
任制」あるいは「主任制度」という。しかし,日教組及び北教組はその。)
導入に強く反対していた(甲10,弁論の全趣旨」。)
()原判決書6頁25行目から26行目にかけての「処分阻止等」を目的6「
として」を「処分阻止並びに定期昇給延伸措置の復元及び実損回復を目的と
して」と改める。
()原判決書9頁6行目から7行目にかけての「10の1ないし3及び同17
4の1ないし3を10の12及び14の13と改め9行目の肯」「,,」,「
。」「,,,定すべきであるの次にまた被処分者Bは当審係属中に死亡したが
同様の理由により,同人の当事者適格を基礎づける法律上の利益が相続によ
って承継され,当事者適格も相続人に承継されると解すべきであるから,相
続人たる控訴人番号18のの各控訴人において本件訴訟を承継すべきで1,2
ある(最高裁判所昭和49年12月10日第3小法廷判決・民集28巻10
号1868頁参照」を加える。)。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び8
これに対する当事者双方の主張の概要」の「争点()(地公法37条1項が2
憲法28条に違反するか否か)について」の「原告らの主張」の全部を()
次のとおり改める。
「控訴人らの主張)(
,地公法37条1項は地方公務員の争議行為を全面一律に禁止しているが
以下のとおり,同条項は憲法28条に違反し,無効である。
ア憲法が基本的人権を保障している意義
憲法は,11条で基本的人権が侵すことのできない永久の権利である
こと,13条で国民は個人として尊重されること及びその権利は公共の
福祉に反しない限り国政上最大の尊重を必要とすること,97条で憲法
が保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の成果であって,
侵すことのできない永久の権利として信託されたものであること,98
条1項で憲法は国の最高法規であることを定めている。
すなわち,基本的人権は人が人であることによって当然に有する固有
の権利であって,国はそれを最大限尊重する必要があり,基本的人権を
侵害する法律は無効であり,また,そのように法律を解釈することは許
されない。
イ労働基本権の意義
憲法28条は,労働者の基本的人権として,団結権,団体交渉権及び
()。,団体行動権争議権を含むを保障している資本主義社会においては
労働者は自らの労働力を使用者に提供し賃金を得て生活を営まざるを得
ず,労働力の売買を労使の自由に任せたのでは労働者は使用者に対して
決定的に不利益な立場に立つ。したがって,労働者に団結権,団体交渉
権及び争議権を含む団体行動権を保障することによって,労働者が使用
者と実質的に対等平等の立場を確保し,経済的社会的な地位の向上を図
ることが労働者の個人の尊厳を尊重する所以である。また,団結権,団
体交渉権及び団体行動権の保障なくして労働者が使用者と実質的に対等
平等の立場に立つことは不可能である。
このことは労働者が長い自由獲得の努力を通じて得た認識・経験に基
づくものであり,労働基本権はまさにその成果として労働者が人間らし
く生きることに必要不可欠な権利として保障されるものである。
ウ公務員にも労働基本権の保障が及ぶ。
公務員も労働力を提供して賃金を得て生活を営んでおり,政府あるい
は地方公共団体当局との間に労使関係が存在することにおいて民間企業
の労働者と本質的に異なるところはない。したがって,憲法28条の労
働基本権の保障は公務員労働者にも及ぶ。
この点に関して,憲法15条2項が公務員の全体の奉仕者性を定めて
いることを根拠に憲法28条による労働基本権の保障が公務員に対して
も及ぶことが否定ないし制限されると解することはできない。憲法15
条2項の公務員の全体の奉仕者性は公務員が天皇の使用人ではなく,国
民全体の利益に仕える者であって,一党一派,一利益集団に奉仕するも
のであってはならないとの公務員の基本的性格を示した規定である。
エ「公共の福祉」による制約
個人の尊厳を最高とする日本国憲法においては,個人に優先する「全
体」の利益ないし価値は存在し得ない。個々の人権に対抗する価値を認
められるのは他人の人権のみである。この人権相互間に生じる矛盾・衝
突の調整を図るための実質的公平の原理が「公共の福祉」である。この
「公共の福祉」の原理は人権に内在する制約であり,基本的人権の保障
の立場からその制約は必要最小限度に止められなければならない。
労働者が争議権を行使した場合,他人の人権,すなわち,国民の生活
上の利益と矛盾・衝突することが考えられる。公務員の場合も同じであ
る。公務員の争議行為による国民生活上の障害といっても,公務員の職
務が多種多様であり,その争議行為の態様も千差万別であるから,重大
なものもあれば比較的軽微なものまで種々である。公務員に対しても労
働基本権の保障は及び,その制約は必要最小限度に止められるべきであ
るから,争議権を尊重する必要と争議行為によって失われる国民生活上
の利益を回復する必要とを比較衡量して,後者が前者を上回る場合に,
国民生活上の利益を回復するために必要な範囲・限度で争議権の制約が
許容されると考えるべきである。特に,教職員の場合,旧労組法及び旧
労調法の制定経過に鑑みても,また国際労働機関(以下「ILO」とい
う)の諸見解に照らしても,その争議権が制約される根拠に乏しいし,。
一律全面禁止は憲法に違反する。
オ公務員法の争議行為全面一律禁止規定は憲法との適合性をぬきに定め
られたものである。
日本国憲法の制定により公務員にも争議権が保障されることになり,
実際に争議行為が実施されていた。これが全面一律に禁止されることに
なったのは,昭和23年7月のマッカーサー書簡に基づく政令201号
によってであった。日本政府は,占領軍が対日政策を変更して公務員の
争議行為を禁止することにしたことを,憲法による争議権の保障との関
,。,係を考慮することなく超憲法的命令と受けとめたのであったそして
政令201号の規定は,占領軍の絶対的な権威のもとに,同年11月に
,,国家公務員法に昭和25年12月に地公法に取り込まれることになり
今日に至っている。
カ代償措置について
(ア)また,争議権の制限が必要やむを得ない場合であっても,争議権
を制限すれば労働者が使用者に対して実質的に対等な立場を確保する
ことが不可能又は著しく困難になるから,争議権の制限が憲法28条
に違反しないためには,争議権の行使が国民の生活上の利益を重大に
侵害する場合にその矛盾衝突を調整するために必要な場合であること
に加えて,適切な代償措置を講じることが必要である。
(イ)代償措置の要件としては,憲法28条の趣旨に適合するために,
以下の3つの要件を備えていることが必要というべきである。
①公平な第三者機関が設置されていること。
具体的には,機関の構成員の選任手続が公正であること及び構成
員の権限が労使から独立していることが必要である。
②労働者の要求が反映できること。
労働者が労働条件につき一方的に決定されることは個人の尊厳の
理念に反するから,労働者の意見,要求が反映されるしくみが不可
欠である。
③労働条件に関する第三者機関の決定が迅速かつ完全に実施される
こと。
第三者機関による決定が使用者によって迅速,完全に実施されな
いのでは,代償措置としての意味がないからである。
(ウ)最高裁4・25判決及び5・21判決が代償措置として挙げるの
は,①法定の身分保障,②法定の勤務条件の享有,③人事院・人事委
員会の給与勧告制度,④勤務条件に関する措置要求制度,⑤不利益処
分不服審査請求制度であるが,以下のとおり,いずれも代償措置の要
件を満たしていない。
よって,地公法37条1項の規定は,適切な代償措置が存在しない
という面においても,違憲というべきである。
①法定の身分保障については,分限及び懲戒の事由が法律又は条例
で定められ,それ以外の事由による分限及び懲戒が許されないとい
うことであるが,これは民間企業であれば就業規則により定められ
ることを法律又は条例で定めているというのみであり,何ら代償措
置の要件を満たしていない。民間労働者の場合は,就業規則に分限
・懲戒規定が存在してもなお争議権は保障されている。
②法定の勤務条件については,給与,勤務時間,休日休暇等が法律
又は条例で定められているということに過ぎず,労働者の要求が反
映されるものではないし,また,勤務条件が公務員労働者にとって
不利益に変更されることがないというものでもなく,代償措置とは
到底いえない。
③人事院・人事委員会の給与勧告制度については,使用者である政
府ないし地方公共団体当局の判断により実施するか否かが決められ
るものであり,実際に昭和57年には全く実施されず,一部不実施
もたびたびあった。また,同制度は労働者の意見,要求が反映され
,,,る仕組みになっておらずかえって労働者にとって不利益であり
政府ないし地方公共団体の意向に従うような勧告がなされることも
ある。加えて,人事院・人事委員会の給与勧告制度は全ての公務員
に適用されるわけではない。そもそも公平委員会には給与勧告権限
が認められていない。
④措置要求及び審査請求については,民間労働者の場合であれば労
働委員会又は裁判所に申立てをすることができるのであって,何ら
代償措置の要件を満たしていない。
キまとめ
以上によれば,地方公務員の争議行為を全面一律に禁止する地公法3
7条1項は,公務員にも労働基本権を保障した憲法28条に違反し,無
効である」。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び9
」「(,これに対する当事者双方の主張の概要の争点()地公法37条1項が3
ILO87号条約3条,10条,8条に違反し,ひいては憲法98条2項に
違反するか否か)について」の「原告らの主張」の全部を次のとおり改()
める。
「控訴人らの主張)(
ILO87号条約中には,争議権を保障する旨の明文の規定は存在しな
い。しかしながら,争議権は同条約に内在する権利として,同条約により
保障されていると解釈すべきである。具体的には「労働者の利益を増進,
し,かつ擁護することを目的とする労働者団体(同条約10条)が「プ」
ログラム(計画)を策定する権利(3条)の中に争議権も含まれると解」
釈すべきである。そのことは,同条約の締結後,ILOの議決機関である
労働総会が争議権に何度も言及しており,また同条約の適用監視機関であ
る結社の自由委員会及び条約勧告適用専門家委員会(以下「専門家委員会」
という。)は,争議権は同条約3条1項及び10条に内在する当然の権利で
あるとILO87号条約を解釈していることに明らかである。
ILOにおいて,専門家委員会や結社の自由委員会の見解は,広い意味
での国際的法源と評価されており,とりわけ専門家委員会の見解は,国際
司法裁判所によって覆されない限り有効かつ一般的に承認されている。よ
って,各国政府は,国際司法裁判所で異なる判断が示されない限り,専門
家委員会の見解に従う義務を負っていると考えるべきである。
仮に,専門家委員会や結社の自由委員会の見解が法源とは認められず,
法的に日本の裁判所を拘束するものではないとしても,それだけで専門家
委員会や結社の自由委員会のILO87号条約の解釈を無視することは法
律家の合理的解釈態度とは言えない。日本の裁判所がILO87号条約を
解釈適用しようとする際,ILO87号条約の適用監視機関として権限を
もってILO87号条約を解釈・適用してきた専門家委員会や結社の自由
委員会の見解を尊重すべきは理の当然である。
さらに,結社の自由委員会は,平成14年以降,329次報告,331
次報告ならびに340次報告において,地公法37条1項がILO87号
条約に違反しており,同条約に適合するように改正すべき旨を明示して勧
告しており,それらの報告はILO理事会において承認されている」。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び10
これに対する当事者双方の主張の概要」の「()争点()(本件各懲戒処分44
が懲戒権の濫用に当たるか否か)について」の「原告らの主張」の「イ()
主任制度及びそれに関する交渉過程の問題点について」の全部を次のとお
り改める。
「イ主任制度及びそれに関する交渉過程の問題点について
本件各争議行為の中には,主任制度化反対等を目的とし,あるいは主任
制度化に関する交渉過程を原因ないし動機として実施されたものもあると
ころ,以下の理由により,主任制度化に関する事情を懲戒権濫用の判断に
関して考慮要素とすべきである。
(ア)そもそも,主任制度化・主任手当は,各学校に校長の監督を受け教
育活動に関して連絡調整・指導助言に当たる各種の主任を置き,その主
任に手当を支給することを法制化するもので,国家による教職員の管理
統制政策の重要な一環であり,文部省−都道府県教育委員会−市町村教
育委員会−校長−教頭−主任−一般教員・職員という縦の管理体制を確
立し,国家による教育の支配を学校の教職員の末端まで徹底させること
。,,を目的とするものであるそれは昭和46年の中央教育審議会答申で
国の教育政策に従順な教師づくりをめざし,学校内に校長を助け校務を
分担するため教頭のほかにあらたに主任を管理上,指導上の職制として
確立し,主任にも特別の手当を支給することを提言していることに基づ
くものである。
このような主任制度化・主任手当は,以下に述べるとおり民主的な学
校教育に反し,教職員の勤務条件にも悪影響を及ぼし,教職員団体の団
結権を弱めるものである。そして,実際に,主任制度化が行われた後,
種々の弊害が指摘されている。
(イ)戦後の民主的改革により,教育は子どもの権利として認められ,子
どもは一人ひとりがその個性を尊重され,その持っている能力を全面的
に成長・発達・開花させられることが学習権として保障されることにな
った。学校はその保障の場であり,教員は教育の専門家として一人ひと
りの子どもと直接に人間的なふれあいをもって,目の前の子どもの発達
に応じて適切な教育活動を行うことが求められる。そのためには教員に
は自らの教育活動に関して自主性・創造性が必要不可欠である。また,
学校では教員が集団的に教育活動を行っているから,その教員相互の関
係でも自主性,創造性が保障されなければならない。各学校の運営計画
や校務分掌も教員集団が自主的,民主的に決めることが必要である。教
育内容及び教育方法について国が上意下達の方法で画一的に行うのでは
子どもの学習権の保障にもとる。これが,教育の本質に基づく条理であ
り,改正前の教育基本法10条が教育の直接責任,教育への不当支配の
排除及び教育行政の限界を定めている根拠である。
主任制度化は,前述のとおり,各学校における管理組織を確立し,校
長の監督を受けて主任が教育活動について連絡調整・指導助言を行い,
。,個々の教員の教育内容・教育方法を国家的に統制するものであるまた
主任制度化は,主任手当の支給と相まって,教員間に職制上の序列を確
立・固定化するものでもある。その結果,学校教育に本質的に不可欠な
学校の自治,教員の自主性・創造性が失われ,教員相互の自主的な協力
関係も破壊される。ひいては,子どもの学習権を大きく損なうことにな
る。
(ウ)主任制度化・主任手当は教職員組合との団体交渉事項である。主任
制度化は,従前存在しなかった中間管理職としての主任を新たに制度化
するものであるから,命課される主任たる教員にとっては「連絡調整・
指導助言」の職務が新たに加わることになるし,その職務の内容と権限
とが具体的に明確にされることが必要である。また,主任に命課されな
い教職員にとっても,主任からの「連絡調整・指導助言」によって従来
の教育活動の方法が変更を余儀なくされる。さらに学校内の教職員の教
育活動に関する協力関係が重大な変更を余儀なくされ,職場環境が激変
する。主任の命課と主任手当の支給とによって学校内での教職員の序列
が固定される。主任は中間管理職と位置づけられ,教員の中には教頭,
校長へ昇進するためのステップと考える者も出てくるから,事実上教職
員組合からの脱退ないし非組合員化が促進される。
したがって,主任制度化,主任手当の問題は団体交渉事項であり,こ
の点に関しては,昭和46年12月15日付けの北教組と被控訴人との
協定書,昭和51年1月29日の北教組とF教育長との事前交渉での①
主任制度化の通達を発する場合には北教組と十分交渉を行い一方的には
発しないこと,②学校管理規則の改正は北教組との交渉で行なうことの
確認及び同年5月8日の第5回交渉での学校管理規則の改正は交渉で行
なうとの再度の確認がなされ,主任制度化に関する事項は交渉事項であ
る旨確認されているのであるから,被控訴人は北教組と誠実に交渉すべ
き義務があった。
(エ)教員団体は,国際的にも,教育政策及び学校組織などについて当局
と協議し関与する権利が認められている。すなわち,ILO・ユネスコ
の「教員の地位に関する勧告(1966年)は「教員団体は,教育」,
の進歩に大いに寄与することができ,したがって,教育政策の決定に関
与させられるべき勢力として認められるものとする(9項)とし「教。」
員がその責任を果たすことができるように,当局は,教育政策,学校組
織,教育活動の新たな発展等の問題について教員団体と協議するために
承認された手段を設け,かつ,定期的に利用するものとする(75。」
項)と確認している。2000年のILO・ユネスコ合同専門家委員会
の報告書でも教員団体は教育の政策立案者に対して構成員である教員の
広範な経験を提供できるのであるから,教員団体との協議は社会的共同
者にとって価値があり,ますます発展する傾向にあることが確認されて
いる。
この教員団体の協議・関与権が憲法28条の労働基本権と異なるもの
であるとしても,教育行政当局がこの協議・関与権を無視して学校組織
に関する新たな政策を実施し,教員団体がそれを原因・動機として争議
行為を行った場合には,この事情は争議行為の原因・動機に関する重要
な事情として懲戒権濫用の判断において考慮される必要がある」。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び11
これに対する当事者双方の主張の概要」の「()争点()(本件各懲戒処44
分が懲戒権の濫用に当たるか否かについての原告らの主張のウ)」「()」「
本件争議行為による影響が軽微であること」のうち,原判決書27頁1
9行目冒頭から28頁4行目の「軽微なものというべきである」までを,。
次のとおり改める。
「ウ本件争議行為による影響が軽微であること
前記アのとおり,懲戒処分は,被処分者の具体的行為について検討した
上で,処分の是非及び程度について判断すべきであるから,争議行為を企
画に関与した組合役員と単に争議行為に参加したに過ぎない一般組合員と
では争議行為の影響に関する責任の程度は自ずから異なる。組合役員の責
任でも空知9市町村の地域のみで行われた争議行為の影響は同地域の学校
への影響に限られる。一般参加者の責任は自らが勤務する学校の授業への
影響に限られるべきであり,全道的な影響を考慮すべきではない。
本件争議行為の影響として,以下の諸事情を考慮すべきである。①一般
参加者である控訴人らは,北教組の方針に従って単純参加したにすぎず,
授業への影響もほとんどないか,与えたとしても軽微である」。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び12
これに対する当事者双方の主張の概要」の「()争点()(本件各懲戒処44
分が懲戒権の濫用に当たるか否かについての原告らの主張のカ)」「()」「
第1の懲戒処分の対象となった争議行為の動機・目的の正当性」の全部
を次のとおり改める。
「カ第1の懲戒処分の対象となった争議行為の原因・動機の相当性
これらの争議行為の目的は,①主任制度化反対,主任手当制度化反対,
特に,昭和51年5月19日及び同年11月20日の両争議行為は,被控
訴人による一方的主任制度化交渉打切りに抗議し交渉再開を求めたもの,
②大幅賃上げ等を要求する昭和51年の春闘,③一方的賃金合理化反対で
あり,いずれも争議行為にいたる原因・動機において相当なものであっ
た」。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び13
これに対する当事者双方の主張の概要」の「()争点()(本件各懲戒処分44
が懲戒権の濫用に当たるか否か)について」の「原告らの主張」の「キ()
第2の懲戒処分の対象となった争議行為の動機・目的の正当性」のうち,
「①定期昇給延伸措置の実損回復(原判決書31頁18行目)を「①定」
期昇給延伸措置の復元と実損回復」と改める。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び14
これに対する当事者双方の主張の概要」の「()争点()(本件各懲戒処分44
が懲戒権の濫用に当たるか否か)について」の「原告らの主張」の「ク()
本件各争議行為に至る具体的な経緯等」の「(ア)昭和50年12月5日
(別紙争議行為一覧表1の番号1,以下,クの項目においては「番号1」,
などと表記する)及び昭和51年2月20日(番号3)の各争議行為につ。
いて」から「(カ)支部・支会単位の争議行為について(原判決書38頁」
20行目末尾)までの全部を次のとおり改める。
「(ア)昭和50年12月5日(別紙争議行為一覧表1の番号1,以下,クの
項目においては「番号1」などと表記する)及び昭和51年2月20,。
日(番号3)の各争議行為について
被控訴人は,昭和50年11月25日,北教組に対し,道立学校及び道
費負担の市町村立学校の教職員の給与につき,初任給2号俸上積み措置の
廃止,特別昇給停止,定期昇給12か月延伸,運用昇給短縮措置の廃止等
(,「」。)。を提案した以下同提案を昭和50年11月の被控訴人提案という
同提案は,教職員の給与等につき大きな不利益をもたらす内容であるこ
とはもちろん,本来,同年9月18日の北海道人事委員会の勧告を受け,
道当局は給与引き上げのための給与改定条例案を第3回定例道議会に提案
すべきところ,同年10月14日,副知事が道議会への提案を一旦見送ら
せてほしいと述べて,同条例案の提案を遅らせていた。それにもかかわら
ず,道当局は,同年11月25日の第4回定例道議会に提案する給与引き
上げのための条例案についての交渉の席上で,突然,人事委員会勧告と矛
盾する給与引き下げとなる定期昇給12か月延伸などの既得権剥奪提案を
行い,その理由を抽象的に「道財政の悪化」とだけ述べて,具体的理由の
説明をしなかった。道当局は,給与引き上げのための給与改定条例案の道
議会への提案を引き延ばしたうえに,本来,別個のかつ,道当局として給
与引き下げという慎重に考慮して時間をかけて交渉すべき案件を時間的余
裕のないまま第4回定例道議会に提案しようとした。道当局は,同年12
月2日及び4日の交渉で,既得権剥奪提案について「道財政の悪化」とい
う抽象的説明を繰り返すだけで,具体的理由を説明しないまま交渉を打ち
切った。このため,地公四者共闘は12・5ストを実施せざるを得なかっ
た。その後,道当局は,同年12月7日の交渉で,既得権剥奪提案を全面
的に撤回した。それにもかかわらず,道当局は,翌昭和51年1月29日
に既得権剥奪提案を再度提案した。しかし,道当局は,前年の提案と同様
の回答をして前進はなかった。地公四者共闘は,同年2月13日にストを
配置して再提案に反対し,副知事交渉を行ったところ,副知事は,同月1
9日をめどに検討する時間がほしいと回答したので同月13日のストは同
月20日に延期された。同月19日の交渉でも副知事は「道財政の悪化」
と抽象的な理由を述べただけで,定期昇給12か月延伸を含めた既得権剥
奪提案の具体的説明を行わないで,給与引き下げという勤務条件不利益変
更にあたって使用者に課せられている説明責任を果たさなかった。それゆ
え,地公四者共闘は2・20ストを実施せざるを得なかったのである。1
2・5スト及び2・20ストは,給与引き下げを伴う勤務条件の不利益変
更について具体的説明をしないで説明責任を果たさない道当局の態度に起
因したもので,両ストの実施は必然的であった。説明責任を果たさない道
当局の態度と12・5スト及び2・20ストの実施に至る経過は,両スト
の原因・動機として本件懲戒処分についての懲戒権濫用判断にあたって,
考慮されるべき最大の要因である。
(イ)昭和50年12月10日の争議行為(番号2)について
昭和50年12月6日,自民党文教部会から,主任の制度化と手当の支
給を盛り込んだ給与改善案が発表され,文部大臣が態度を変えて主任制度
化を実施する意思を表すと解される大臣見解を発表した。日教組は,同月
10日の争議行為を背景にして,文部省に対して主任制度化構想を断念す
ることを求め同月9日に文部大臣との交渉が開催されることとなったが,
文部大臣は自民党文教部会に拘束されて交渉に臨むことができなかった。
そこで,日教組は主任制度化に反対し文部省との交渉を要求して全国統一
ストライキを実施した。北教組は,日教組の全国統一ストライキの一環と
して,同月10日の争議行為を実施した。主任制度化に関する問題点は前
記のとおりであり,主任制度化に反対し日教組と文部省との交渉を求める
12・10全国統一ストライキの一環として北教組が実施した本件12・
10ストの原因・動機には相当性が認められる。
(ウ)昭和51年3月9日の争議行為(番号4)について
同争議行為の目的は,主任手当の制度化に反対し,日教組と人事院との
交渉を求めることであった。すなわち,昭和50年12月に文部省令を改
正し主任を制度化した文部省は,主任手当制度化を具体的に進めることに
着手し,まず人事院に主任手当を制度化することを勧告するよう文書で要
望した。文部省の要望を受けた人事院が主任手当を勧告に盛り込むことが
予測されたため,主任手当制度化に反対し,人事院に日教組と誠実に交渉
することを求めて日教組は,昭和51年3月9日に全国統一ストライキを
実施した。北教組は,日教組の全国統一ストライキの一環として,同日の
争議行為を実施した。
前記(イ)と同様,主任手当制度化に反対し人事院に誠実な交渉を求める
日教組の3・9全国統一ストライキの一環として北教組が実施した本件3
・9ストには原因・動機の相当性が認められる。
(エ)昭和51年5月19日の争議行為(番号7)について
被控訴人は,昭和51年4月12日,北教組に対して主任制度化に関す
る交渉を申し入れたところ,北教組はこれに応じた。ところが,北教組が
被控訴人との間で従前取り交わしていた協定書の内容や主任制度化に関す
る事前交渉における確認に基づき,北教組が主任制度化は団体交渉事項で
ある旨の再確認を求めたところ,被控訴人のF教育長は,交渉の決着がな
くても被控訴人の判断により決めるなどとして,当初から交渉打切りを示
唆するような態度を示し,その後,同年5月8日にいたって学校管理規則
を改正し主任を制度化するについては交渉で行うことを再確認し,主任の
地位や性格,主任適格者の基準,教務主任の職務内容について質疑を行っ
たものの,同教育長は,絶えず交渉打切りを話題に持ち出し,同月18日
午後の交渉において,必要な質疑応答が多数残っていたのに,一方的に交
渉打切りを宣言した。北教組は,この一方的交渉打切りに抗議し主任制度
化交渉の再開を求めて同月19日の争議行為を実施した。
被控訴人が提案した11の主任等のうち教務主任の職務内容の質疑がは
じまったばかりで他の主任等の職務内容等に関する質疑が全くない時点で
の被控訴人の一方的な交渉打切りであること,交渉を打切った同年5月1
8日の交渉において,F教育長自ら後日回答する旨答弁したことが数点あ
ったこと,道議会全会派の交渉継続の要望を無視した打切りであったこと
等の経緯から,F教育長の交渉打切りが不当であり,一方的交渉打切りに
抗議し主任制度化交渉の再開を求めて実施した本件5・19ストライキの
原因・動機が相当であることは明らかである。上記争議行為の後,翌同月
20日には,北教組と被控訴人の予備交渉担当者の間で交渉再開について
実質的合意が成立し,同月25日には,北教組と同教育長との間で交渉再
開が確認されている。また,同年7月1日に開始され同年11月13日に
再度打切られた主任制度化再開交渉においても,被控訴人の準備不足,答
弁の矛盾・混乱等が目立った。これらの事後の経緯からしても,同年5月
18日の交渉打切りの不当性と一方的交渉打切りに抗議し交渉再開を求め
る上記争議行為の原因・動機の相当性は明らかである。
(オ)昭和51年11月20日の争議行為(番号8)について
前記(エ)で述べた交渉再開の確認の後,北教組は,被控訴人の振興課長
との間で,昭和51年7月1日から同年9月10日にかけて課長交渉を行
った。ところが,同課長の説明は重要事項について二転三転し,あるいは
疑問点が解明されないままであって,同課長から,今後は振興部長との問
で交渉してほしいとの申入れがあったため,課長交渉を継続する事項と部
長交渉において問題とする事項を分けて交渉を行うこととした。しかし,
その後課長交渉は行われず,同月13日から同年10月30日まで部長交
渉が行われた。
課長交渉及び部長交渉における交渉内容については,①主任等の性格に
ついて,主任は上司か,主任は職務命令を発し得るか,主任が職に当たる
か否か等の問題につき,交渉中に回答が二転三転したり,F教育長が同年
5月時点で回答した内容との食い違いがあり,②教務主任について,職務
の範囲が膨大であり実務上不可能であること,生徒指導主事等の他の主任
と職務が競合するとも解されること,③特に,3学級4定員等の小規模校
に画一的に制度化主任を配置した場合に現実の学校運営に支障を来すので
はないか,④寮務主任と舎監との職内容の異同,⑤障害児学校における学
部主事と他の主任との関係等の疑問点につき,十分な回答がなされず,⑥
各主任の任務に関する学校管理規則の規定の仕方について,文言の違いや
同一文言の意味の違い等の疑問があり,⑦各学校で自主的に定めている主
任との関係,人事異動への影響等の疑問点があるなど,解決すべき疑問点
が多数残っていたにもかかわらず,振興部長は,同月22日ころから教育
長交渉を要求し,同年11月12日には,予備交渉をF教育長と直接行っ
てほしいなどと述べ,同教育長は,主任手当については交渉事項にはでき
ないとした上,翌同月13日に2点の問題点につき回答して交渉を打ち切
りたいとの態度を示した。そこで,北教組は,振興部長との間で主任手当
について交渉することを確認した上,①主任等の命課基準と命課方法,②
PTAは教諭の本務か否か,③校長は教育内容,方法に命令が出せるか,
④主任等は上司である旨の従来の見解と上下関係にはない旨の交渉におけ
る教育長見解との矛盾を通達や指導上どう整理するのかの4点について
は,教育長交渉で扱うべきであると主張した。
ところが,F教育長は,同月13日,主任制度について円満実施の保障
,,があれば交渉に応じるがそうでなければ交渉を打ち切るとの態度を示し
北教組が反対すると,一方的に交渉を打ち切った。北教組は,不当な交渉
打切りに抗議し,主任制度化交渉の再開を求めて同月20日の争議行為を
実施した。以上の経緯から,同月13日のF教育長の再度の交渉打切りが
不当であり,これに抗議し主任制度化交渉の再開を求める上記争議行為の
原因・動機が相当であることは明らかである。
(カ)支部・支会単位の争議行為について
支部・支会単位の争議行為が行われた各市町村の教育委員会は,いずれ
も,北教組の各支会との間で,学校管理規則改正を各支会との交渉によっ
て行い,一方的に行うことはしない旨確認するなどしていたにもかかわら
ず,被控訴人が昭和51年11月30日に市町村学校管理規則を改正する
よう指導した後,各支会と交渉を尽くすことなく,密かに教育委員会を開
催して学校管理規則改正を行った。この改正は,専ら上からの行政指導に
基づくもので,子どもの学習権の保障ないし教育の地方自治の原則はなお
ざりにされた。よって,上記各争議行為は,いずれも,各市町村教育委員
会の背信的行為に起因するものであるし,子どもの学習権の保障を擁護す
るものであり,しかも,いったん改正された同規則は,いずれもその後撤
回されるに至っていることに照らすと,上記各争議行為に参加したことを
根拠に懲戒処分をすることは許されないというべきである。
①奈井江支会(控訴人番号63について)
奈井江町教育委員会のG教育長は,奈井江支会に対し,従前の交渉に
おいて,学校管理規則改正は交渉によって行い,一方的には行わない,
主任制にかかわる道教委通達の作動は一時凍結する旨確認しており,昭
和51年11月に被控訴人と北教組の交渉が打ち切られた際には,同月
26日に交渉再開の要望書を提出していた。ところが,同教育長は,支
会との交渉も行わないまま同月30日に同規則を改正し,翌日の同年1
2月1日に同支会にその旨連絡したため,同支会は,教育委員会の背信
的かつ反教育的やり方に抗議し,規則改正の白紙撤回を求めて同月2日
午後3時以降ストライキを実施した。しかし,教育委員会はこれに対し
て誠実な態度をとらなかったので,ストライキは同月3日も継続せざる
を得ないことになった。同月4日になって,教育委員会が改正規則の凍
結及び凍結解除の際には支会と交渉することを確約したので紛争は一応
の決着をみた。
②北支会(控訴人番号59について)
北村教育委員会のH教育長は,北支会との間で,昭和51年11月1
1日から主任制度化に関する学校管理規則改正について交渉し,同年1
2月2日,同規則改正については,誠意をもって交渉し,一方的に実施
しない旨を文書で確認した。それにもかかわらず同教育長は,支会との
協議や交渉を行うことなく,同月15日に同規則を改正し,その後支会
に通知した。そのため,北支会は,規則改正に抗議し,午後3時以降の
ストライキを実施した。教育委員会は翌日未明までに規則改正の白紙撤
回を決めた。
③月形支会(控訴人番号62について)
月形町教育委員会のI教育長は,昭和51年5月,月形支会との交渉
において,現段階では主任制については白紙である旨回答し,その後も
学校管理規則改正について同支会と十分に話し合うとしており,同年1
2月1日の交渉においては,当日は同規則改正のための教育委員会を開
催しないとしていた。ところが,同教育長は,同日の交渉直後,教育委
員会を開催して同規則を改正し,それを同支会に知らせないまま,同月
15日に公布した。そのため,同支会は,教育委員会の背信的行為に抗
議し,規則改正の白紙撤回を求め,同日午後3時以降ストライキを実施
した。さらに,これに対する教育委員会の対応が遅延し,規則改正の撤
回を決めたのが同月16日午後になったため,支会は同月16日午前半
日もストライキを実施せざるを得なかった。
④栗沢支会(控訴人番号61について)
栗沢町教育委員会のJ教育長は,栗沢支会との間で,昭和51年12
月13日,主任制度化に関わる学校管理規則改正については誠意を持っ
,。,て交渉し一方的には実施しない旨確認していたそれにもかかわらず
同教育長は,南空知管内の教育長の申し合わせに基づいて規則改正を強
行した。同教育長は,支会から確認違反について厳重抗議と規則改正の
白紙撤回を求められても翌同月16日午前中までには決断ができなかっ
た。それで,同支会は,同月16日午前半日のストライキを実施せざる
を得なかった。
⑤由仁支会(控訴人番号60について)
由仁町教育委員会のK教育長は,由仁支会との間で,昭和51年12
月2日,主任制度化に関する学校管理規則について交渉し,一方的に同
規則改正を実施することはない旨を文書で確認した。しかしながら,同
教育長は,同月15日,抜き打ち的に同規則改正を行ったため,同支会
,,。は教育委員会の確認違反に厳重抗議し規則改正の白紙撤回を求めた
しかし,教育委員会がこれに応じないので,翌同月16日始業時から3
時間のストライキを実施せざるを得なかった。そのため,同教育長は,
同規則改正を白紙撤回する旨を文書で確認した。
⑥芦別支会(控訴人番号64について)
芦別市教育委員会のL教育長は,芦別支会との間で,昭和51年5月
25日,主任制度化の学校管理規則改正については支会と十分誠意を持
って話し合い,一方的に実施しない旨を文書で確認し,同年12月10
日にも,同旨の内容を再度確認していた。しかしながら,同教育長は,
中空知9市町村教育長会議の申し合わせにより冬休み中に学校管理規則
改正を強行しようとしていたので,同支会は同月23日に冬休み中に一
方的に規則改正をしないように求めた。これに対し同教育長は,明確な
回答を避け,規則改正を強行するかも知れないとの態度を示した。それ
で,同支会は同月24日午後からストライキを行った。同日夕刻に教育
委員会は,冬休み中に規則改正はしないとの回答をした。
⑦滝川支会(控訴人番号65について)
滝川市教育委員会のM教育長は,滝川支会との間で,昭和51年11
月末,一方的な学校管理規則改正をしない旨を文書で確認し,同年12
月16日にも同様の確認をしながら,同月25日に同規則を改正しよう
とし,同支会がストライキを構えたため改正を取りやめた。その後,同
教育長は,昭和52年1月25日の支会との交渉において規則改正につ
いての話し合いを継続すると回答しておきながら,同月27日開催の教
育委員会において規則改正を突然議題にのせ,同委員会の議決を得て,
これの公布を同年2月1日まで控えていた。ところが,支会は同年1月
31日に規則改正の議決を知り,直ちに教育長に確認を求めた。同教育
長は,最初は,議決していない,交渉は継続すると答えたが,その後,
,。議決したともしないとも言えない発表する時期でないと回答を変えた
支会は,同教育長の背信的態度に抗議し,改正規則の白紙撤回を求め,
教育委員会が応じない場合には2月1日午後3時からストライキを実施
すると通告した。教育委員会は,同月2日夕方に至ってようやく規則改
正の白紙撤回を教育委員会で再議すると回答したため,その間の同月1
日午後3時以降及び同月2日午後半日のストライキを実施せざるを得な
いことになった。
⑧深川支会(控訴人番号66について)
深川市教育委員会のN教育長は,深川支会との間で,昭和51年12
月上旬から交渉を行い,学校管理規則改正については十分話し合う旨確
認しており,同月25日に同規則を改正しようとした際には同支会から
抗議を受け,一方的には改正しない旨を再度確認していた。それにもか
かわらず,同教育長は,昭和52年1月31日に同規則を改正し,その
後に支会に通知をした。支会は,教育委員会の背信的態度に抗議し,改
正規則の白紙撤回を求めた。しかし,教育委員会はこれに応じず,交渉
が長引き同年2月2日午後3時以降ストライキを実施せざるを得なかっ
た。教育委員会は,同月3日になってようやく改正規則の施行期日を白
紙とし,施行の際には支会と話合いを行うと回答した」。
()原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点及び15
これに対する当事者双方の主張の概要」の「()争点()(本件各懲戒処分44
が懲戒権の濫用に当たるか否か)について」の「原告らの主張」の「ク()
本件各争議行為に至る具体的な経緯等」の「(ク)昭和51年4月20日
(番号5,同月27日(番号6)及び昭和52年4月15日の争議行為に)
ついて」を次のとおり全部改める。
「(ク)昭和51年4月20日(番号5,同月27日(番号6)及び昭和5)
2年4月15日の争議行為について
76春闘において,北教組が加盟する日教組などで組織した公務員共闘
は,当時の狂乱物価といわれる状況の中で生活苦にあえぐ教職員など公務
員労働者の切実な賃金引上げ要求にもとづいて,公務員賃金の20パーセ
ント,3万円以上引き上げの要求を決定し,昭和51年3月中旬から政府
と人事院に対して,交渉・協議を行った。しかし,政府当局は,4・20
スト実施以前に公務員共闘に対して具体的回答を全く示さず,いたずらに
時間を経過させて4・20ストを回避する努力をしなかった。4・20ス
トの後に,政府(総理府総務長官)は公務員給与に関しては官民格差を解
消する立場で例年どおり勧告を行うとの人事院回答を受けて「組合が民,
間や三公社五現業と同程度の給与改定を期待することは理解できる。国家
公務員について給与改定が行われた場合においては,地方公務員について
もこれに準じて配慮するように自治大臣に良く話しておく」と回答した。
かりに,この政府回答が4・20スト実施前に行われていれば,4・20
ストは実施されなかった。4・20ストは,公務員共闘の賃金要求に対す
る政府の不誠実な対応に起因したものである。
4・27ストは,76春闘の賃金についての予算措置の要求と同年4月
に強行実施された定期昇給12か月延伸阻止を要求したものであるとこ
ろ,北海道当局は地方財政危機や自治省通達を理由にして地公四者共闘に
対して4・27ストを回避するための努力をしなかった。
したがって,地公四者共闘による4・27ストの実施は,北海道当局の
不誠実な対応に起因したものである。76春闘における公務員共闘の賃金
要求に対する政府の不誠実な態度及び地公四者共闘の76春闘の賃金につ
いての北海道段階の予算措置の要求と同年4月に強行実施された定期昇給
12か月延伸阻止要求に対する北海道当局の不誠実な態度は,両ストの原
因・動機に関わる重要な事実である。
4・20ストに至る公務員共闘に対する政府の不誠実な態度ならびに4
・27ストに至る地公四者共闘に対する北海道当局の不誠実な態度は,い
ずれも労使関係における誠実交渉義務に反するもので,両ストに対する各
懲戒処分についての懲戒権濫用判断にあたって,考慮されるべき最大の要
因である。
また,昭和52年の春闘当時も,賃金が消費者物価の上昇に追いつかな
いため,マイナスとなり,週休二日制が定着しないなど,公務員の長時間
労働と生活苦が続いていた。公務員共闘は,当時の労働者の生活実態と組
合員の要求とを踏まえて昭和52年度の賃金引き上げ要求を春闘共闘の統
一要求として,引き上げ額2万6000円,引き上げ率16パーセントと
決定した。
公務員共闘は,77春闘の賃金引き上げその他の要求に対する総理府の
回答を求めていたところ,総理府は昭和52年3月31日に①給与改定は
人勧を待って努力する。②早期支給については最大限努力する。③現段階
ではこれ以上回答できない,と回答しただけで,同年4月15日当時はあ
くまで公務員賃金抑制の姿勢を崩さずに,具体的な回答を示さないままで
あった。
また,政府は,公労協に対して,同年4月15日までに公共企業体等職
員の賃金引き上げについて回答を示さずにいたずらに時間を経過させてい
た。このような政府の不誠実な対応と春闘情勢全体を考慮して,公労協お
よび公務員共闘は,政府の回答を引き出すため春闘共闘の統一ストに合わ
せて同月15日を第1波スト,同月20日から第2波ストをそれぞれ実施
,,,,,することに決定し同月15日には日教組・北教組は自治労全水道
都市交などとともに本件4・15ストを実施した。また,政府は,同年4
月15日には公労協の国労,全逓,全電通,全専売に対して賃金引上げ回
答を示さずいたずらに時間を経過させた。政府は,公労協が同月20日に
ストを配置する中で,同日のスト実施直前になって,賃金引き上げを内容
とする公労委調停を成立させた。同日,政府は,公務員共闘に対し公務員
の給与について民間および公労協と3公社5現業と同程度の人事院勧告に
基づく改定を期待する旨の回答を行った。そして,人事院も,同日,公務
員共闘に対し,77春闘の民間相場を反映した公務員の給与改定に努力す
るとの回答を示した。
以上の経過から明らかなように,政府が同年4月15日のスト実施前に
上記のような賃金引き上げ回答を行っていれば,4・15ストは実施され
なかったのである。4・15ストは,政府が同月15日までに春闘共闘会
議に対して賃金引き上げ回答を出さない不誠実な態度に起因したものであ
る。政府の不誠実な交渉態度は,労使関係における誠実交渉義務に反する
ものであり,4・15ストに対する懲戒処分についての懲戒権濫用判断に
あたって,考慮されるべき最大の要因である」。
第3当裁判所の判断
1争点()(原告らの行為が地公法37条1項,29条1項所定の懲戒事由に1
該当するか否か)について。
当裁判所も,控訴人番号1ないし10の控訴人らは,北教組の本部中央執行
委員等の立場で,別紙懲戒処分一覧表1及び2の「関与した争議行為」欄記載
の争議行為を指導等しており,同人らには地公法37条1項後段に該当する事
由が認められ,控訴人番号11ないし13の控訴人らは,同じく本部中央執行
委員として,別紙懲戒処分一覧表1の「関与した争議行為」欄記載の争議行為
を指導等したほか,別紙懲戒処分一覧表3の「関与した争議行為」欄記載の争
議行為に一般組合員として参加しており,同人らには地公法37条1項後段・
前段に該当する事由が認められ,控訴人番号15ないし85の控訴人らは,北
教組の一般組合員として,別紙懲戒処分一覧表3の「関与した争議行為」欄記
載の争議行為に参加し,同人らには地公法37条1項前段に該当する事由が認
,,「」められ被処分者Cについては別紙懲戒処分一覧表2の関与した争議行為
欄記載の争議行為につき,これを実施することを決定する北教組大会の議長を
務めるとともに,この決定に基づいて北教組室蘭市支部支部長として同支部所
属の組合員を指導して同争議行為に参加させており,同人には地公法37条1
項後段の事由が認められ,本件各争議行為における控訴人らの上記各行為は,
,。地公法37条1項29条1号所定の懲戒事由に該当することとなると考える
その理由は,原判決書48頁12行目から66頁21行目までに記載のとおり
であるから,これを引用する。
2争点()(地公法37条1項が憲法28条に違反するか否か)について2
地方公務員も,勤労者として,自己の労務を提供することにより生活のため
の資金を得ている点で私企業の労働者と変わるところはなく,労働者の経済的
地位の向上を目的とする憲法28条の労働基本権の保障は地方公務員にも及ぶ
が,その地位の特殊性や職務の公共性からして,その労働基本権に関しては,
私企業の労働者と異なる必要やむを得ない程度の制限を受けると解される。
地公法は,一部の職種を除き,地方公務員に対して,職員団体を組織する権
利を認めて団結権を保障し(地公法52条,職員団体に対し,勤務条件に関)
して,地方公共団体当局と協約を結ぶことは認めていないが,交渉を行うこと
は認め,限定的ながらも団体交渉権も保障するが(同法55条1項,2項,)
同盟罷業等を行う争議権は全面的に否定している(同法37条1項。上記労)
働基本権の制限は,地方公務員の地位の特殊性や職務の公共性からして,やむ
を得ない程度の制限ということができ,特に争議権については,その行使によ
って公務が停廃し住民等の共同利益が害され又は害されるおそれがあることか
らも,その一律制限はやむを得ない制限と認められる。また,財政民主主義に
基づき地方公務員の勤務条件は住民の意思を反映する条例で定めるとされてい
る(同法24条6項)ことからして,団体交渉により勤務条件を定めその裏付
けとして争議権を与えるという私企業の労働者への労働基本権保障の前提は,
地方公務員にはそのまま当てはまらないことからも,上記程度の制限は是認さ
れると解される。
かかる制限を加える代償措置として,地公法は,以下に述べる制度をはじめ
として,地方公務員の勤務条件の適正を確保するため,種々の制度を設けてい
る。すなわち,地公法は,職員の勤務条件を社会一般の情勢に適応させる措置
を講ずべき義務を地方公共団体に課している(同法14条1項。そして,そ)
の制度的保障として,一定規模以上の地方公共団体には人事委員会を置くこと
とし(同法7条,人事委員会は,勤務条件に関する研究を行い,その成果を)
(),,地方公共団体の長等へ提出することとされ同法8条特に給与に関しては
給料表の相当性につき報告又は勧告をする権限が認められている(同法26
条。そして,職員は,勤務条件に関し,人事委員会又は一定規模以下の地方)
公共団体に置かれる公平委員会(同法7条)に対し,地方公共団体当局により
適当な措置が執られるべきことを要求することが認められており(同法46
条,人事委員会又は公平委員会は,審査の結果,地方公共団体の機関に対し)
必要な勧告をすることが義務付けられている(同法47条。なお,公平委員)
会には,人事委員会に認められているような独自の給与に関する勧告権限はな
いが,実際上近隣地方公共団体の人事委員会勧告に準拠した給与決定が行われ
ると認められ,これと著しく反する給与決定がなされた場合には,措置要求に
基づく勧告がなされると考えられる。
以上のような代償措置が機能する限り,地方公共団体職員の勤務条件の適正
さは相当程度担保されているということができ,地方公務員に対する前記労働
。,,基本権制限は憲法28条に違反しないと解されるなお本件全証拠によるも
本件各争議行為が行われた当時,控訴人らの勤務条件に関し,人事委員会又は
公平委員会による勧告等の前記各権限が機能していなかったとは認められな
い。
最高裁判所(大法廷)は,昭和51年5月21日,地公法37条1項が合憲
であることを判示する上記と同旨の判決をし(刑集30巻5号1178頁,)
これと前後して,非現業国家公務員の争議行為を一律禁止した当時の国家公務
員法98条5項が合憲であることを判示し(昭和48年4月25日・刑集27
巻4号547頁,現業国家公務員の争議行為を一律全面禁止した当時の公共)
企業体等労働関係法17条1項が合憲であることも判示した(昭和52年5月
4日・刑集31巻3号182頁。その後も最高裁判所は,繰り返し同旨の判)
決をしており(その一例として,最高裁判所平成12年12月15日第2小法
廷判決・平成12年(行ツ)第186号,公務員の争議行為を一律禁止する法)
,。律が合憲であることは最高裁判所の確立した判例となって現在に至っている
以上によれば,地公法37条1項が憲法28条に違反するとの控訴人らの主
張は採用できない。
3争点()(地公法37条1項が,ILO87号条約3条,10条,8条に違3
反し,ひいては憲法98条2項に違反するか否か)について。
控訴人らは,ILO87号条約が公務員を含む労働者の争議権を保障して
おり,地公法37条1項はこれに違反する旨主張する。
しかしながら,ILO87号条約は,その標題からも明らかなように,結
社の自由及び団結権の保護を目的とした条約であって,同条約中には争議権
を保障する旨の明文の規定が存在しないことは控訴人らも認めるところであ
る。同条約3条1項,10条により争議権が保障されている旨控訴人らは主
張するが,その文言自体からその趣旨は読みとれない。控訴人らは,ILO
の専門家委員会や結社の自由委員会が,争議権は同条約3条1項及び10条
に内在する権利であると解釈しており,同解釈は法源性を有する旨主張する
が,それが批准された条約と同等に国内法規としての効力を有するものとは
認められない(最高裁判所昭和44年4月2日大法廷判決・刑集23巻5号
305頁,同平成12年3月17日第2小法廷判決・平成7年(行ツ)第13
2号各参照。)
よって,地公法37条1項がILO87号条約及び憲法98条2項に違反
するとの控訴人らの主張には理由がない。
4争点()(本件各懲戒処分が懲戒権の濫用に当たるか否か)について4
()本争点に関して,当裁判所が前提とする事実は,本件各争議行為に至る1
経緯及びその結果につき前記認定した事実(原判決書48頁12行目から
65頁8行目まで)に加え,原判決書「事実及び理由」欄の「第3争点
に対する当裁判所の判断」の「4争点()(本件各懲戒処分が懲戒権の濫4
用に当たるか否か)について」の「()(原判決書72頁3行目から791」
頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これらを引用する。なお,原
判決書に記載のある各別紙は,本判決書添付の対応する各別紙と読み替え
る。
()懲戒権濫用該当判断の基準2
当裁判所も,地方公務員に対する懲戒処分は懲戒権者の裁量に委ねられ
ており,当該処分が社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権を付与した目
的を逸脱し,これを濫用したと認められる限り違法であると考えるが,そ
の理由とするところは,原判決書80頁5行目の次に行を改めて次のとお
り加入するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第3争点に対する当
裁判所の判断」の「4争点()(本件各懲戒処分が懲戒権の濫用に当たる4
か否か)について」の「()」の「ア(原判決書79頁5行目から80頁2」
16行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。
「控訴人らは,労働基本権の制約違反に伴う不利益処分は必要最小限度に
止められるべきであり,本件各争議行為を理由とする懲戒処分については
懲戒権者の裁量に委ねられるべきではない旨主張する。
しかしながら,前述したように,争議行為の一律禁止を定めた地公法3
7条1項は憲法28条に違反するものではないから,地方公共団体の職
員が争議行為を行った場合には,他の地公法違反行為の場合と同様当然
に懲戒処分(同法29条1項1号)の対象となるのであり,争議行為を
行ったことが認定された以上,これに対する懲戒処分の選択のみが他の
地公法違反と異なる司法審査基準に服するとの控訴人らの主張は採用で
きない」。
()第1の懲戒処分について3
ア争議行為の原因,動機等について
()(ア)昭和50年12月5日の争議行為別紙争議行為一覧表1の番号1
上記争議行為実施の原因につき,控訴人らは,被控訴人が「道財政,
の悪化」を理由に,賃金に関する控訴人らの既得権を剥奪する昭和50
年11月の被控訴人提案を北教組に対して行い,その必要性について具
体的説明をせず,十分に交渉せずに交渉を打ち切り議会に提案しようと
したので,これを阻止するために争議行為を実施せざるを得なかった旨
主張する。
,,,ところで昭和50年11月の被控訴人の提案は①特別昇給の停止
②普通昇給期間の12か月延伸,③運用昇給短縮措置の廃止,④初任給
2号俸上積み措置の廃止等を内容とするものである。
職員の給与は,条例に基づいて支給されなければならず,昇給の基準
(,に関する事項は条例により定めるものとされている地公法24条6項
25条1項,同条3項2号。北海道の条例によれば,12月を下らな)
い期間良好な成績で勤務した職員は1号俸上位の号俸に昇給させること
ができる(いわゆる普通昇給)とされているが,職員がその要件を満た
したからといって,普通昇給させるかどうかは,当然のことながら予算
上の制約に服し,また,財政状況にかんがみ上記期間を延伸させること
もできると解され,職員が上記一定期間経過後に当然に普通昇給を要求
できる権利を認められているわけではない(その意味で普通昇給を定期
昇給と呼ぶのは正確でない。なお,最高裁判所昭和55年7月10日第
1小法廷判決・裁判集民事130号193頁参照。)
特別昇給は,勤務成績が特に良好である職員につき普通昇給の基準を
超えて昇給させる制度であり,通常の成績の全職員に対して,一定期間
ごとに特別昇給を受けることを権利として保障しているものではない。
被控訴人と北教組との間で,特別昇給は給与改善の一環として行うもの
であり,北教組との交渉を通じて客観的基準に従って行う旨確認がされ
(甲2,これまで全職員のうち15%の者が毎年順番に特別昇給を受)
けてきていたが(甲22,かかる運用は上記特別昇給の趣旨に反する)
違法な運用であったというべきである。
運用昇給短縮措置とは,前記認定のとおり,等級の違いによる給与の
格差を是正するために昇給期間を短縮する措置であり,それまで被控訴
,,人と北教組との間の確認に従って運用されてきていたがかかる運用も
普通昇給としては,条例で定める昇給期間に反し違法であるし,特別昇
給としても,勤務成績の判定なしに昇給させることとなり違法な運用で
あったというべきである。
初任給は,当該職員の学歴や前歴の経験年数等に応じて,条例等の基
準に基づき客観的に決定されるべきものであって,これによって定まっ
た初任給を一律2号俸上積みする措置は,上記条例等に違反する違法な
措置であったというべきである。
以上によれば,控訴人らが既得権剥奪と主張する被控訴人による前記
①,③及び④の提案は,いずれも勤務条件条例決定の原則(地公法24
条6項)に違反する運用を廃止する提案であるから,その阻止を目的と
する争議行為については,その余の点について判断するまでもなく,原
因・動機において斟酌すべき事情は認められないというほかない。
これに対し,前記②の普通昇給期間の延伸については,これまで一定
期間経過毎に機械的に行われてきた普通昇給を,個々の職員の勤務成績
の有無にかかわらず一律12か月延伸するものであり,職員に事実上大
きな経済的不利益をもたらす措置であるから,職員団体である北教組が
被控訴人に対し説明を求めることができ,被控訴人はこれに応じて交渉
すべき義務がある(地公法55条1項。そして,実際に,被控訴人さ)
らには北海道副知事と北教組との間で最低5,6回にわたって交渉が持
たれ,被控訴人側は,道税の減収が見込まれ,いろいろやりくりをして
も相当額の予算不足が生じるので,教職員を含む北海道職員の協力を得
たい旨説明している(甲22。他方,北教組は,前記認定のとおり,)
昭和50年11月28日開催の全道戦術会議において,既得権剥奪阻止
を闘争方針として決定し,同年12月5日の第1波午前半日,同月8日
の第2波午前半日のストライキを予め決めて被控訴人側との交渉に臨ん
でいる。かかる状況のもと,被控訴人側は,第1波のストライキの前日
である同月4日深夜まで交渉したが,普通昇給の12か月延伸阻止を譲
。らない北教組とこれ以上交渉の余地はないとして交渉を打ち切っている
以上の交渉経緯に加えて,前記のとおり,職員には定期の普通昇給を求
める権利がないことも併せ考慮するならば,被控訴人の上記交渉態度及
び交渉の打切りを誠実交渉義務違反とまで評価することはできないとい
うべきである。
なお,普通昇給期間の12か月延伸により,職員が相当程度の経済的
損失を受けることは前記認定のとおりであるが,これによって,直ちに
個々の職員の生活が著しく困難になるとか,同一地域の他の労働者に比
較してその給与水準が著しく低くなるとまでは認められない。
以上によれば,控訴人らの上記争議行為が普通昇給期間延伸阻止の目
的で行われた点に関しても,その原因・動機に斟酌すべき事情があると
はいえない。
(イ)昭和50年12月10日の争議行為(別紙争議行為一覧表1の番号
2)
前記認定したところによれば,上記争議行為は,当時文部省が導入し
ようとしていた主任制度に対し,上部団体である日教組とともにこれに
強く反対する北教組が,その導入阻止を目的として全国統一行動として
行った争議行為と認めることができる。
ところで,主任制度とは,前記認定したところによれば,法令によっ
て,教諭の中に「主任」という名称の役職者を設ける制度であって,そ
の導入は,地方公務員に関しては,地方公共団体の教育委員会が,学校
の管理運営の基本的事項として,学校管理規則を改正して行うべきこと
である(地教行法33条1項。職員団体が地方公共団体当局との団体)
交渉の対象となし得るのは,労働者の経済的地位の向上を目的とする労
働基本権の性質からも職員の給与等勤務条件に関する事項に限られ地,(
公法55条1項,地方公共団体の管理運営事項をその対象とすること)
はできない(同条3項。主任制度の導入は,地方公共団体の機関であ)
る学校の組織に関する事項であり,各地の教育委員会がその判断と責任
に基づいて決定すべき管理運営事項ということができ,本来団体交渉の
対象となるべき事項ではなく,当然のことながら争議行為によってその
可否が決せられるべき事項でもない。管理運営事項の処理に伴い職員の
勤務条件が影響を受ける場合(主任手当の増減等)に,その勤務条件に
関する事項に限り交渉の対象とはなり得るのみである。
控訴人らは,主任に命課される教員につき「連絡調整・指導助言」の
職務が新たに加わること,命課されない教員も主任からの「連絡調整・
指導助言」によって教育活動の方法が変更を余儀なくされることから,
主任制度化は団体交渉事項である旨主張するが,それによって,当然に
個々の職員の給与や勤務時間等(地公法55条1項)が影響を受ける関
,。,,係にはなく上記控訴人らの主張には理由がない控訴人らはさらに
主任が中間管理職と位置づけられ,事実上その非組合員化が促進される
から,主任制度化は団体交渉事項となる旨主張するが,かかる事態が発
生するのかどうか自体不確実であるのみならず,仮にかかる事態が発生
したとしても,それは主任制度化に必然的に随伴する事態ではなく,そ
れ故に主任制度の導入自体が団体交渉事項となることとはならない。ま
た,控訴人らは,ILO・ユネスコの勧告や報告に基づき,教員団体た
る北教組には学校組織等につき当局と協議する権利が認められるべきで
ある旨主張するが,かかる主張が国内法上の根拠を有するものでないこ
とは明らかである。
以上によれば,上記争議行為は,本来団体交渉の対象となり得ない管
理運営事項につき,本来の決定主体である教育委員会の意思決定に影響
を及ぼすことを目的とするものであるから,その原因・動機において斟
酌すべき点があるとはいえない。
()(ウ)昭和51年2月20日の争議行為別紙争議行為一覧表1の番号3
上記争議行為実施の原因につき,控訴人らは,被控訴人が,前記(ア)
の争議行為の後いったん道議会への提案が見送られた昭和50年11月
の被控訴人提案を再度提案し,今回も前回同様その必要性について具体
的に説明することなくその説明責任を果たさなかったから,争議行為を
実施せざるを得なかった旨主張する。
しかしながら,昭和50年11月の被控訴人提案のうち前記①,③及
び④の阻止を目的とする争議行為については,原因・動機において斟酌
すべき事情は認められないことは,前記(ア)で述べたとおりである。
,,②の普通昇給期間延伸阻止目的に関しては前記(ア)で述べたとおり
団体交渉の対象とはなり得るところ,前記認定したところによれば,被
控訴人側は,北教組と数度にわたり交渉を行い,他の提案については一
部修正提案を行いながら,普通昇給期間延伸に限っては一切譲歩をしな
かった。他方,北教組も,前記認定のとおり,被控訴人から再提案がな
された昭和50年1月29日の直後である同年2月3,4日に開催され
た定期大会において,既得権剥奪阻止を闘争方針として決定した後,同
月13日のストライキを予定した上で被控訴人側との交渉に臨み,その
後被控訴人側の申入れに従いストライキ予定日を同月20日に延期した
後,同月19日に被控訴人側が普通昇給期間延伸以外の項目について一
部修正提案をしてきたにもかかわらず「本質的に何ら提案内容は変わ,
りはない(甲22)として,これを拒否して上記争議行為に及んでい」
る。そして,北教組は,その後も,同月25日に再度ストライキを予定
した上で,被控訴人の提案を「完全撤回(甲22)させることを目的」
として,被控訴人側との交渉に臨んでいる。
以上によれば,普通昇給期間の延伸について一切譲歩をしなかった被
控訴人の交渉態度が頑なに過ぎる面もないとはいえないが,他方,北教
組も,昭和50年11月の被控訴人提案の完全撤回がなされなければス
トライキを行うとの既定方針のもとで交渉に臨んでおり,職員には普通
昇給を求める権利がないことも併せ考慮するならば,被控訴人側に誠実
交渉義務違反があったとまで評価することはできない。なお,昇給延伸
,,,が個々の職員の生活に重大な影響を与えるまでのものではなくまた
,他の労働者に比較して給与水準を著しく劣位に置くものでもないことは
前記(ア)で述べたとおりである。
以上によれば,控訴人らの上記争議行為が普通昇給期間延伸阻止の目
的で行われた点に関しても,その原因・動機に斟酌すべき事情があると
はいえない。
(エ)昭和51年3月9日の争議行為(別紙争議行為一覧表1の番号4)
前記認定したところによれば,上記争議行為の目的は,そもそも主任
制度化に反対し,主任制度化を前提に主任手当を支給することを内容と
する人事院勧告を阻止することを目的とするものであると認められる。
そうすると,上記争議行為は,勤務条件たる手当の当否を要求対象とす
るものではなく,管理運営事項たる主任制度化の阻止自体を要求対象と
するものであって,前記(イ)で検討したとおり,その原因・動機におい
て斟酌すべき点があるとはいえない。
()(オ)昭和51年4月20日の争議行為別紙争議行為一覧表1の番号5
()及び昭和51年4月27日の争議行為別紙争議行為一覧表1の番号6
前記認定したところによれば,上記各争議行為は,いわゆる春闘の全
国統一行動の一環として賃金上昇等を求めるともに主任制度化の導入を
阻止することを目的としてなされたと認められる。
主任制度化は管理運営事項であって,その導入阻止を目的とする争議
行為が,その原因・動機において斟酌すべきものとはいえないことは,
前記(イ)で述べたとおりである。
次に春闘の一環としての賃金上昇等の目的に関しては,前記認定した
ところ及び弁論の全趣旨によれば,当時はいわゆるオイルショックによ
り諸物価が上昇し,控訴人らを含む教職員は実質賃金の目減りにより相
当厳しい生活状況にはあったが,その状況は,公務員のみならず私企業
の労働者を含む国民の多くにおいて同様であったと認められる。その中
でも,昭和45年度以降は,人事院勧告及び人事委員会勧告どおりの給
与の引上げがなされており(弁論の全趣旨,上記争議行為が行われた)
昭和50年度も,最終的には,人事院は6.94パーセント(1万10
14円。なお,組合側の要求額は20パーセント,3万円以上の引上げ
であった)の給与引上げを勧告して勧告どおり実施され,北海道人事。
委員会も上記人事院勧告に準じた勧告をして同じく実施されている。以
上によれば,大幅な賃金引上げ目的は,当時の職員らの厳しい生活状況
を前提としても,本来違法な争議行為を正当化するまでの事情とはなり
得ないというべきである。
なお,控訴人らは,昭和51年4月27日の争議行為は,北海道当局
に対し,同年4月から実施された普通昇給期間の12か月延伸阻止と上
記春闘と同様の賃金引上げを要求したが,当局がこれに応じなかったた
め実施したと主張する。上記争議行為が上記経緯で行われたかどうか不
明であるが仮に上記経緯で行われたものであったとしても①前記(ア),,
で述べたとおり,職員には普通昇給の定期実施を求める権利はなく,い
ったん実施された上記延伸措置への反対は,本来違法な争議行為を正当
化するまでの目的とは認められず,また,②賃金引上げの目的も,4月
20日の争議行為に関して述べたとおり,違法な争議行為を正当化する
までの事情とは認められない。
また,控訴人らは,政府当局及び北海道当局が,組合側の前記賃金引
上げ要求に対して誠実に対応しなかったことから,上記各争議行為に出
ざるを得なかった旨主張する。しかしながら,証拠(甲141)によれ
ば,日教組が政府当局に基本賃金の3万円引上げを含む春闘要求書を提
出したのは昭和51年3月18日であり,その後も交渉自体は続けられ
,「。」,ており賃金は人勧を見守ると回答されていることなどからしても
同年4月20日に違法な争議行為に出たことが,誠実交渉義務違反によ
り正当化されることとはならないというべきである。控訴人らは,同年
4月27日の争議行為についても,北海道当局の誠実交渉義務違反を主
張するが,要求に対してストライキを回避するための努力をしなかった
,,というのみでその具体的交渉経緯につき何ら主張・立証をしておらず
違法な争議行為を正当化するまでの誠実交渉義務違反が北海道当局にあ
ったとも認められない。
()(カ)昭和51年5月19日の争議行為別紙争議行為一覧表1の番号7
前記認定したところによれば,上記争議行為は,主任制度化阻止を目
的として行われたものであるが,主任制度の導入自体は,前記(イ)で述
べたとおり,管理運営事項であって団体交渉の対象となり得ない事項で
あるから,上記目的で行われた違法な争議行為がその目的によって正当
化されることとはならない。
なお,前記認定したところによれば,被控訴人は,昭和46年に,北
教組との間で,主任制度化に当たり必要となる学校管理規則の改正につ
いては組合との交渉で行う旨の協定書(甲54)を取り交わしている。
しかしながら,管理運営事項は,私企業における「経営権事項」のよう
に使用者が任意に応ずる限り団体交渉の対象としてよい任意的団交事項
ではなく,その性質上,団体交渉の対象となし得ない違法団交事項であ
る。これらの事項は,地方公共団体当局が,法令の定めに従って自らの
権限と責任において判断し処理すべき事項であって,職員団体と共同決
定したり取引の用に供されてはならないことから,団体交渉の対象から
外されている。もっとも,その趣旨は,当局がこれによって拘束を受け
るような合意を目指す交渉を排除する趣旨であって,当局がかかる事項
につき任意に職員団体と意見を交換し,その成果を同事項の適切・円滑
な処理に役立てることは妨げられない。
前記認定したところによれば,被控訴人は,上記協定書(甲54)の
とおり協定を締結したほか,F教育長は,主任制度化が北教組との間で
懸案事項となった後,主任制度化については慎重に判断する旨述べてお
きながら,北教組が提示する事項についての議論が尽くされないうちに
交渉を打ち切ったことが認められる。しかしながら,前記認定したとこ
ろによれば,北教組は,当初から,争議行為を行ってでも主任制度化自
,体に強く反対する立場で被控訴人との協議に臨んでいた事実が認められ
,そもそも主任制度化が職員団体との交渉の対象となしえない事項であり
教育委員会がその権限と責任により導入すべき事項であることをも考慮
するならば,F教育長が昭和51年5月18日に交渉を打ち切ったこと
から,直ちに同月19日の争議行為に斟酌すべき事情があるということ
はできない。
(キ)昭和51年11月20日の争議行為(別紙争議行為一覧表1の番号
8)
前記認定したところによれば,上記争議行為は,上記(カ)の争議行為
の後,市町村立学校管理規則を中心に交渉を行うことで,被控訴人と北
教組との間で主任制度化に関する交渉が再開されたが,交渉が尽くされ
ないうちに,F教育長が再び交渉を打ち切ったことが認められる。
しかしながら,(カ)と同様,そもそも主任制度化は管理運営事項であ
るから交渉の対象となし得ないこと,被控訴人が北教組とその導入につ
き意見を交換していたとしても被控訴人がそれによって交渉を義務付け
られることはないこと,そして,前記認定したところによれば,この時
点においても,北教組の交渉に臨む態度が,主任制度化自体を拒否する
姿勢で貫かれていたことからすれば,上記争議行為の原因・動機におい
て,本来違法な争議行為を正当化する事情は認められないというべきで
ある。
イ争議行為の態様,結果,影響等については,原判決書「事実及び理由」
欄の「第3争点に対する当裁判所の判断」の「4争点()(本件各懲戒4
)」「」「」「」処分が懲戒権の濫用に当たるか否かについての()のイの(イ)2
(原判決書85頁13行目から86頁2行目まで)記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
ウ当裁判所も,第1の懲戒処分が裁量権を濫用しているとはいえないと考
えるが,その理由は,原判決書86頁17行目から87頁1行目までを次
のとおり訂正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第3争点に対
する当裁判所の判断」の「4争点()(本件各懲戒処分が懲戒権の濫用に4
当たるか否か)について」の「()」の「イ」の「(ウ)」記載のとおりであ2
るから,これを引用する。
「以上述べたとおり,①争議行為の原因又は動機において,違法な争議行
為を正当化し懲戒権濫用との評価をもたらすまでの斟酌すべき事情は認め
られないこと,②争議行為の影響,結果も決して軽微なものとはいえない
こと,③処分内容も,各控訴人らの役割に応じたものであり,処分者間及
び過去の処分例との均衡上も不相当なものとはいえないことにかんがみる
ならば,第1の懲戒処分が社会観念上著しく妥当性を欠き裁量権を濫用し
ているということはできない」。
()第2の懲戒処分について4
ア争議行為の原因,動機等について
(ア)支部・支会単位の争議行為について(別紙争議行為一覧表2)
前記認定したところによれば,上記支部・支会単位の争議行為は,い
ずれも,主任制度化を巡る各市町村教育委員会と北教組支部・支会との
交渉において,各教育長が学校管理規則改正は一方的に行わないと約束
,,していながらその約束の後短期間でこれに反して同改正を行ったため
その白紙撤回を求めてなされたものと認められる。
上記市町村教育委員会の中には,改正しないと約束をしたその日のう
ちに改正を行ったところもあり,争議行為に出た心情に理解できない点
がないわけではない。しかしながら,前述のとおり,そもそも主任制度
化は管理運営事項であるから交渉の対象となし得ないこと,各市町村教
育委員会が各対応する支部・支会に対し,一方的導入はしないと約束し
ていたとしても,被控訴人がそれによって交渉を義務付けられることは
ないこと,この時点においても,北教組の交渉に臨む態度は主任制度化
自体を拒否する姿勢で貫かれており,支部・支会の交渉に臨む姿勢も同
様のものであったと推認されることからすれば,上記争議行為の原因・
,。動機が本来違法な争議行為を正当化するまでの事情とは認められない
(イ)昭和52年2月17日の争議行為について(別紙争議行為一覧表3
上段)
前記認定したところによれば,上記争議行為は,①前記()ア(ア)及び3
(ウ)の経過を経て実施された普通昇給期間12か月延伸措置の中止・復
元するとともにこれにより既に被った実損害を回復すること,及び②前
記()ア(カ)の昭和51年5月19日の争議行為に対する懲戒処分阻止を3
目的とするものと認められる。
上記①については,前記()ア(オ)で述べたとおり,職員には普通昇給3
の定期実施を求める権利はなく,いったん実施された上記延伸措置への
,。反対は本来違法な争議行為を正当化するまでの目的とは認められない
上記②については,前記認定したところによれば,当時被控訴人が上
記懲戒処分の準備を進めていたことは認められるが,前記()ア(カ)で述3
べたとおり,主任制度化阻止を目的とする昭和51年5月19日の争議
,,行為についてはその動機・原因において斟酌すべき事情は認められず
これに基づく懲戒処分が懲戒権濫用に該当するとはいえなかったのであ
るから,その処分阻止を目的とする争議行為について,その原因・動機
に斟酌すべき点があるともいえない。
(ウ)昭和52年4月15日の争議行為について(別紙争議行為一覧表3
下段)
前記認定したところによれば,上記争議行為は,いわゆる春闘の全国
。統一行動の一環として賃金上昇等を求める目的で行われたと認められる
前記認定したところによれば,上記争議行為当時も,消費者物価の高
騰により実質賃金がマイナスに転じる状況にあり,多くの職員の生活が
厳しい状況に置かれていたとは認められる。しかし,これは公務員のみ
ならず,多くの国民が味わっていた苦境であり,その中でも,人事院勧
告に基づき,公務員の給与は,3万円以上という労働者の要求額には及
ばないものの,昭和50年には1万5177円,昭和51年には1万1
041円,昭和52年には1万2005円と,引き上げられていたと認
められる。
以上によれば,上記争議行為における大幅な賃金引上げ目的は,当時
の職員らの厳しい生活状況を前提としても,前記()ア(オ)同様,本来違3
。法な争議行為を正当化するまでの事情とはなり得ないというべきである
なお,控訴人らは,政府当局が,組合側の賃上要求に対して具体的な
回答を示さないなど誠実に対応しなかったことから,上記争議行為に出
ざるを得なかった旨主張する。
しかしながら,証拠(甲143)によれば,公務員共闘が昭和52年
3月1日に政府当局に要求書を提出した後,政府当局との交渉が重ねら
れ,当局側からは,人事院勧告を待って努力する等の回答がなされ,人
事院からも,民間動向,生活実態を反映した勧告を行う旨の態度表明が
,,あったことが認められ同年4月15日に違法な争議行為に出たことが
誠実交渉義務違反により正当化されることとはならないというべきであ
る。
イ争議行為の態様,結果,影響等については,原判決書「事実及び理由」
欄の「第3争点に対する当裁判所の判断」の「4争点()(本件各懲戒4
)」「」「」「」処分が懲戒権の濫用に当たるか否かについての()のウの(イ)2
(),原判決書88頁5行目から89頁7行目まで記載のとおりであるから
これを引用する。
,,ウ当裁判所も第2の懲戒処分が懲戒権の濫用には当たらないと考えるが
その理由は,次のとおり加入,削除,訂正するほか,原判決書「事実及び
理由」欄の「第3争点に対する当裁判所の判断」の「4争点()(本件4
各懲戒処分が懲戒権の濫用に当たるか否か)について」の「()」の「ウ」2
の「(ウ)(原判決書89頁8行目から91頁8行目まで)記載のとおり」
であるから,これを引用する。
(ア)原判決書89頁12行目の「参加者の規模においては」の前に次の
とおり加入する。
「争議行為の実施時間と授業時間が重なっていない部分についても,授業
以外の勤務がなされないことによる学校運営への影響が存在することは優
に推認することができ,授業自体への影響がなかったことを過大に評価す
るのは相当でなく」,
(イ)原判決書89頁21行目の「(ア)b,c」を削除する。
(ウ)原判決書90頁9行目の「前記(ウ)のとおり」から12行目の「昭,
和52年の」までを次のとおり改める。
「証拠(甲99の別表)によれば,昭和41年,42年及び44年には幹
部以外の一般参加者も処分の対象となっているが,昭和47年以降昭和
51年までは一般参加者に対しては処分はなされていないことが認めら
れ,かかる従前の処分例からすれば,本件のような広範な処分の相当性
が一応問題となり得るが,前記のとおり,別紙争議行為一覧表2及び3
の」
(エ)原判決書90頁22行目から91頁5行目までを削除し,90頁2
1行目の次に行を改めて次のとおり加入する。
「控訴人らは,最も軽い戒告の処分を受けた場合でも,運用により,普通
昇給の要件である「良好な成績で勤務したとき」に当たらないとされて,
「定期昇給延伸」の取扱いを受けるから,実質的には過酷な処分というべ
きである旨主張する。
しかしながら,前記()ア(ア)で述べたとおり,職員には一定期間経過3
後普通昇給を受ける権利があるわけではなく,普通昇給期間延伸は懲戒処
分である戒告処分そのものによる不利益ではないから,懲戒処分の相当性
を判断する上でこれを考慮するのは相当でない。なお,違法な争議行為に
参加したことにより戒告処分を受けたことは「良好な成績で勤務した」,
という普通昇給の要件と相容れない行為であるから,これにより普通昇給
期間を延伸すること自体にも問題はない」。
5なお,控訴理由にかんがみ,必要な限度で付言する。
,(),()控訴人らは昭和52年の争議行為別紙争議行為一覧表3に関して1
被控訴人が市町村教育委員会に対して処分内申するよう指導したにもかかわ
らず,処分内申に応じなかったり,処分内申はしたが寛大な処分を求めると
の意見を付した市町村があり,昭和52年争議行為に対する懲戒処分はこれ
らを無視した点で相当でない旨主張する。
市町村立学校の教職員につき,地教行法38条及び39条は,懲戒処分に
関し,まず所属学校長が市町村教育委員会に対して意見の申し出を行い,次
いで市町村教育委員会が都道府県教育委員会に処分内申を行って,都道府県
教育委員会は処分内申を待って懲戒処分についての判断を行う旨定めてい
る。そして,前記認定のとおり,複数の市町村教育委員会が,被控訴人への
処分内申に当たり,寛大な処分や酌量等を求める意見を付しており,また,
処分内申をしなかった市があったことも事実である。
制度上処分内申がない以上処分をなし得ないことは明らかであるが,処分
内申があれば,前述のとおり,被控訴人としてはその責任においてその裁量
判断により懲戒処分の可否及び処分内容を決し得るのであり,市町村教育委
員会が内申に付した意見を参考にはし得るが,これに制度上拘束されること
はないと解される。そして,前記認定の市町村教育委員会の意見は,いずれ
も,被控訴人が考慮の上で第2の懲戒処分を行ったと認められ,また,前述
のとおり,その判断が懲戒権を濫用したとは認められない。よって,この点
に関する控訴人らの主張には理由がない。
()また,控訴人らは,昭和52年の争議行為は地公四者共闘の統一ストラ2
イキであるが,他の組合で懲戒処分を受けたのは幹部職員のみであり,一
般参加者を含む全員処分を受けたのは北教組だけであって,著しく不均衡
である旨主張する。
しかしながら,懲戒処分は,前述のとおり,懲戒権者がその権限と責任
に基づき,その裁量により独自に判断して決すべき問題であり,その裁量
判断自体に濫用等の瑕疵がない以上,同一の対象行為に対する異なる懲戒
権者の判断と異なることのみから,懲戒権を濫用したものとはならないこ
とは明らかである。
第4結論
以上によれば,被控訴人が控訴人らに対してなした本件各懲戒処分はいずれ
も適法であるから,控訴人らの請求にはいずれも理由がない。よって,本件控
訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
札幌高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官末永進
裁判官古閑裕二
裁判官住友隆行
(別紙)
懲戒処分一覧表1
控訴関与した処分の修正裁決
被処分者名職名学校名北教組の役職名
人争議行為程度内容
番号(省略)
1教諭岩見沢市立東光中学校本部中央執行委員1∼8停職6月
2教諭広島町立東部小学校本部中央執行委員1∼8停職6月
3教諭北海道立高等盲学校本部中央執行委員1∼8停職6月
4教諭砂川市立石山中学校本部中央執行委員1∼8停職6月
5教諭旭川市立北鎮小学校本部中央執行委員1∼8停職6月
函館市支部書記次長1∼7
6教諭函館市立光成中学校停職2月停職1月
本部中央執行委員8
室蘭市支部副支部長1∼7
7教諭室蘭市立中島小学校停職2月停職1月
本部中央執行委員8
8養護教諭余市町立大川小学校本部中央執行委員8停職1月
9事務職員広尾町立広尾中学校本部中央執行委員8停職1月
10の教諭遠別町立遠別中学校本部中央執行委員8停職1月
1,2
11教諭函館市立潮見中学校本部中央執行委員1∼7停職6月
12教諭新冠町立新冠中学校本部中央執行委員1∼6停職5月
13養護教諭日高町立日高中学校本部中央執行委員1∼7停職6月
なお「関与した争議行為」欄の番号は,別紙争議行為一覧表1の番号を指す。,
(別紙)
懲戒処分一覧表2
控訴関与した争議行為処分の
人被処分者名職名学校名北教組の役職名
番号(省略)52.2.1752.4.15程度
1教諭岩見沢市立東光中学校本部中央執行委員○○停職2月
2教諭広島町立東部小学校本部中央執行委員○○停職2月
3教諭北海道立高等盲学校本部中央執行委員○○停職2月
4教諭砂川市立石山中学校本部中央執行委員○○停職2月
5教諭旭川市立北鎮小学校本部中央執行委員○○停職2月
6教諭函館市立光成中学校本部中央執行委員○○停職2月
7教諭室蘭市立中島小学校本部中央執行委員○○停職2月
8養護教諭余市町立大川小学校本部中央執行委員○○停職2月
9事務職員広尾町立広尾中学校本部中央執行委員○○停職2月
10の教諭遠別町立遠別中学校本部中央執行委員○○停職2月
1,2
14の教諭室蘭市立武揚小学校室蘭市支部支部長○減給2月
1,3
(別紙)
懲戒処分一覧表3
関与した争議行為
控訴処分の
人被処分者名職名学校名52.2.1752.4.15その他
番号程度
(省略)欠勤時間欠勤時間欠勤時間
11教諭函館市立潮見中学校15:00∼16:35戒告
16:55∼17:00
12教諭新冠町立新冠中学校15:25∼16:20戒告
13養護教諭静内町立田原小学校15:05∼16:20戒告
15事務職員東利尻町立鬼脇中学校15:35∼16:208:20∼10:15戒告
16教諭伊達市立伊達中ひまわり分校15:36∼17:108:20∼10:20戒告
17実習助手北海道立白樺養護学校15:15∼16:458:45∼10:05戒告
18の教諭小樽市立高島小学校15:00∼16:358:35∼10:32戒告
1,2
19教諭小樽市立潮見台小学校15:00∼16:508:50∼10:43戒告
20教諭小樽市立塩谷小学校15:00∼16:458:30∼10:30戒告
21教諭鹿追町立鹿追中学校15:00∼16:158:25∼10:15戒告
17:00∼17:10
22教諭礼文町立元地小学校15:08∼16:008:00∼10:00戒告
23教諭下川町立一の橋中学校15:05∼16:258:30∼10:30戒告
17:10∼17:15
24養護教諭函館市立本通中学校15:00∼16:008:15∼10:15戒告
16:45∼16:50
25教諭穂別町立福山中学校15:00∼16:10戒告
虻田町立虻田中学校8:00∼9:55
26教諭函館市立新川小学校15:00∼16:058:20∼10:20戒告
16:50∼17:00
27事務職員室蘭市立東明中学校15:25∼16:008:20∼10:10戒告
16:45∼16:50
28教諭室蘭市立北辰中学校15:00∼16:158:20∼10:20戒告
17:00∼17:05
29事務職員室蘭市立白鳥台小学校15:15∼15:508:10∼10:00戒告
16:35∼16:45
30教諭帯広市立緑丘小学校15:00∼16:008:10∼10:10戒告
16:45∼16:50
31教諭浦幌町立直別小学校15:15∼16:357:50∼9:50戒告
32教諭帯広市立清川小学校15:10∼16:018:20∼10:15戒告
16:46∼16:51
33教諭釧路市立共栄小学校15:30∼16:308:30∼10:30戒告
34教諭釧路市立共栄中学校15:10∼16:308:40∼10:40戒告
35教諭釧路市立愛国小学校15:10∼16:208:40∼10:40戒告
17:05∼17:15
36事務職員網走市立中央小学校15:00∼16:10戒告
広島町立緑陽小学校8:25∼10:20
37養護教諭千歳市立日の出小学校8:20∼10:20戒告
関与した争議行為
控訴処分の
人被処分者名職名学校名52.2.1752.4.15その他
番号程度
(省略)欠勤時間欠勤時間欠勤時間
38教諭恵庭市立島松小学校15:00∼16:158:15∼10:13戒告
39教諭積丹町立神岬小学校15:00∼15:50戒告
16:35∼17:15
共和町立梨野舞納小学校8:00∼10:00
40教諭仁木町立然別小学校15:05∼16:008:00∼9:55戒告
41事務職員仁木町立仁木小学校15:00∼16:008:15∼10:10戒告
16:45∼17:00
42事務職員士別市立多寄小学校15:00∼16:208:20∼10:18戒告
43教諭中川町立佐久小学校15:15∼16:058:15∼10:15戒告
16:50∼17:00
44教諭名寄市立名寄東中学校15:00∼16:208:20∼10:20戒告
16:55∼17:05
45教諭歌登町立本幌別中学校15:00∼16:009:30∼10:30戒告
16:45∼17:15
46教諭天塩町立泉源小学校15:00∼15:508:10∼10:05戒告
16:35∼16:55
47教諭苫前町立三渓中学校15:00∼16:55戒告
小平町立達布中学校8:15∼10:15
48事務職員天塩町立天塩中学校15:05∼15:358:20∼10:15戒告
16:20∼17:05
49事務職員松前町立松前小学校15:10∼15:308:15∼10:00戒告
16:15∼16:55
50教諭鹿部村立鹿部中学校15:10∼15:408:30∼10:30戒告
15:55∼17:10
51教諭小樽市立量徳小学校15:00∼16:408:40∼10:25戒告
52教諭乙部町立明和小学校15:05∼16:208:20∼10:20戒告
53事務職員大成町立久遠小学校15:20∼16:008:10∼10:05戒告
16:45∼16:55
54事務職員北檜山町立若松小学校15:05∼16:20戒告
16:35∼16:45
55養護教諭苫前町立苫前中学校15:05∼16:008:00∼10:00戒告
56教諭岩見沢市立日の出小学校15:00∼16:158:15∼10:15戒告
57教諭帯広市立啓西小学校15:00∼16:008:10∼10:10戒告
16:45∼16:50
58教諭栗山町立栗山小学校15:00∼16:108:10∼10:10戒告
59教諭北村立砂浜小学校15:00∼15:558:00∼10:00○51.12.15戒告
16:40∼16:4515:00∼16:45
60教諭由仁町立由仁小学校15:00∼16:307:40∼9:40○51.12.16戒告
17:15∼17:208:30∼10:50
61教諭栗沢町立万字中学校15:00∼16:108:10∼10:10○51.12.16戒告
8:10∼12:10
関与した争議行為
控訴処分の
人被処分者名職名学校名52.2.1752.4.15その他
番号程度
(省略)欠勤時間欠勤時間欠勤時間
62事務職員月形町立札比内小学校15:00∼16:208:20∼10:20○51.12.15戒告
15:00∼16:20
○51.12.16
8:20∼12:00
63教諭奈井江町立奈井江中学校15:00∼16:158:15∼10:15○51.12.2戒告
15:00∼16:15
○51.12.3
15:00∼16:15
64教諭芦別市立芦別中学校15:00∼16:208:20∼10:20○51.12.24戒告
12:00∼16:20
65教諭滝川市立江陵中学校15:05∼16:15○52.2.2戒告
12:05∼16:15
66事務職員深川市立深川中学校15:10∼16:208:20∼10:20○52.2.2戒告
15:15∼16:20
67事務職員早来町立早来小学校15:05∼16:158:15∼10:15戒告
68教諭伊達市立伊達西小学校8:10∼9:45戒告
69教諭苫小牧市立錦岡小学校8:15∼10:05戒告
70教諭新冠町立新冠小学校8:15∼10:15戒告
71教諭浦河町立浦河第一中学校15:00∼16:208:20∼10:20戒告
72教諭えりも町立歌別小学校15:00∼16:05戒告
門別町立厚賀小学校8:00∼10:00
73教諭陸別町立陸別中学校8:40∼10:30戒告
74事務職員広尾町立広尾中学校15:00∼16:208:20∼10:20戒告
75教諭音更町立音更中学校15:05∼16:208:30∼10:30戒告
17:05∼17:15
76教諭様似町立様似小学校15:00∼16:10戒告
厚岸町立厚岸小学校8:15∼10:10
77事務職員更別村立更別小学校15:00∼16:10戒告
16:55∼17:05
音更町立柳町小学校8:20∼10:12
78事務職員羅臼町立春松小学校15:15∼16:008:00∼9:50戒告
79教諭標茶町立弥栄中学校15:00∼15:458:05∼10:05戒告
80教諭根室市立花咲小学校15:00∼16:108:15∼10:10戒告
16:55∼17:00
81事務職員根室市立光洋中学校15:00∼16:058:20∼10:20戒告
82教諭根室市立光洋中学校15:00∼16:058:20∼10:20戒告
83教諭上湧別町立上湧別中学校15:05∼16:108:20∼10:18戒告
84教諭網走市立卯原内中学校15:00∼16:208:20∼10:20戒告
85教諭丸瀬布町立丸瀬布中学校15:06∼16:309:30∼10:30戒告
(別紙)
争議行為一覧表1
参加者数
争議行為争議目的(態様)
小中学校高等学校特殊学校計
教職員給与の既得権剥奪阻止等
5012522,16327429822,7351昭和年月日
(午前半日)
主任制度化・手当支給反対、差別賃金導
50121022,08227234922,7032昭和年月日入阻止等
(午後半日)
人件費合理化案粉砕
5122021,91521936022,4943昭和年月日
(午前半日)
主任手当を含む人事院勧告阻止
513922,14415035522,6494昭和年月日
(午後3時以降2時間)
主任制度粉砕・手当支給阻止、賃金大幅
5142021,61125429822,1635昭和年月日引上げ等
(午後3時以降2時間)
主任制度粉砕等
5142721,29823826421,8006昭和年月日
(午後3時以降2時間)
主任制度粉砕等
5151921,36220427521,8417昭和年月日
(全一日)
主任制実施反対
51112021,87216829322,3338昭和年月日
(午前半日)
(別紙)
争議行為一覧表2
支部・支会名争議行為争議目的(態様)参加者数
南空知支部昭和年月日主任制実施反対人511216
由仁支会(早朝3時間)71
南空知支部主任制実施反対
栗沢支会同上(午前半日)75
昭和年月日主任制実施反対511215
南空知支部(午後3時以降)41
月形支会
昭和年月日主任制実施反対511216
(午前半日)43
中空知支部昭和年月日主任制実施反対511224
芦別支会(午後半日)243
昭和年月日主任制実施反対5221
中空知支部(午後3時以降)236
滝川支会
昭和年月日主任制実施反対5222
(午後半日)239
北空知支部主任制実施反対
深川支会同上(午後3時以降)225
南空知支部主任制実施反対
北支会昭和年月日(午後3時以降)46511215
昭和年月日主任制実施反対51122
中空知支部(午後3時以降)58
奈井江支会
昭和年月日主任制実施反対51123
(午後3時以降)59
(別紙)
争議行為一覧表3
参加者数
争議行為争議目的(態様)
小中学校高等学校特殊学校計
処分阻止等
5221720,11615821120,485昭和年月日
(午後3時以降2時間)
大幅賃金引上げ、差別賃金導入粉砕
5241522,12719827422,599昭和年月日(早朝2時間)
(別紙)
処分内容一覧表
年度闘争月日要求内容戦術突入者数・突入率処分内容
免職名1
停職月・月名13185
人勧完全実施午後半日休暇名()減給名'6610.2110,94835.4%198
戒告名2,353
計名2,737
停職月名33
減給月名6178人勧完全実施早朝1時間休暇名()'6710.2616,22152.9%戒告名3,885
計名4,066
免職名3
停職月・月名3613人勧完全実施早朝1時間休暇名()'6810.819,16464.5%減給月名655
計名71
人勧完全実施早朝時間分名()戒告名'6911.1313020,22168.3%17,152
円以上賃上げ早朝時間名()処分なし'725.1920,000121,30376.2%
停職月名31
円以上賃上げ午前半日名()停職月名'734.2720,00023,11682.1%113
計名14
円以上賃上げ全1日名()4.1130,00024,49285.95%
停職月名39
減給月名389
円以上賃上げ早朝2時間名()戒告名'744.1330,00024,72786.98%39
計名137
教頭法制化反対早朝1時間名()5.2323,95386.95%
賃金既得権剥奪阻止午前半日名()12.525,93087.03%
'75
主任制度化阻止
午後半日名()12.1026,40689.16%
(全国)
賃金既得権阻止・合
午前半日名()2.2025,61386.24%
理化反対
停職(月∼月)16
主任制度化阻止午後3時開始名()名3.926,45589.10%14
減給(月∼月)16
名171
大幅賃上げ戒告名5
午後3時開始名()計名4.2026,12488.76%191
主任制度化阻止
'76
大幅賃上げ
午後3時開始名()4.2725,12885.27%
主任制度化阻止
主任制粉砕・交渉再
全1日名()5.1925,35987.80%

主任制交渉再開午前半日名()11.2025,51785.82%
年度闘争月日要求内容戦術突入者数・突入率処分内容
二波のストライキと主昇給延伸復元・実損
任地域スト合わせて2.1725,74988.27%午後3時開始名()
回復,処分阻止停職月名211
減給月・月12
名178
大幅賃上げ早朝2時間名()戒告名'774.1526,61486.84%22,916
計名23,105
主任手当制度化阻止
午後3時開始名()11.2425,91287.17%
(全国)
六波のストライキと,賃金既得権剥奪阻止
主任制度凍結解除阻止2.2225,36183.92%早朝2時間名()
地域ストを合わせて合理化反対
停職月名313
主任手当人事委勧告減給月名1186
午前半日名()戒告名3.1023,98783.41%349
阻止計名548
大幅賃上げ午後3時開始名()'784.2525,60087.02%
主任手当条例阻止交
午前半日名()6.2724,19284.47%
渉打ち切り抗議
勤勉手当条例反対
午前半日名()12.625,78183.53%
期末手当削減反対
賃金引上げ減給月名68
定年制導入阻止早朝1時間名()戒告名'804.1626,34484.85%140
退職手当法改悪阻止計名148
人勧完全実施
定年制法案・退職手早朝1時間名()6.425,89384.53%
当法案阻止
人勧完全実施停職月名19
定年制法案・退職手午後3時開始名()戒告名'8111.2526,49881.50%150
当法案阻止計名159
人勧完全実施
退職手当条例改悪阻早朝1時間名()12.426,04282.10%

退職手当条例改悪反
早朝1時間名()2.1725,50979.62%
対賃金合理化阻止
'82
人勧完全実施午前2時間名()12.1626,89683.42%
減給月名612
人勧完全実施午前2時間名()戒告名2.2525,80681.03%32
計名44
'83
人勧完全実施午前2時間名()10.725,53182.41%
減給月名312
人勧完全実施午後3時開始名()戒告名'8410.2626,75986.12%26
計名38

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激動の時代に
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