弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人大園時喜の上告理由第一点について。
 罹災都市借地借家臨時処理法は、昭二一年九月一五日から施行されたものであり、
本件の土地賃借の申出は、その施行前たる同年三月頃になされたことは原審の確定
するところであるから、右申出を以て法二条の優先賃借の申出と解することはでき
ない。昭二一年三月当時施行されていた戦時罹災土地物件令四条によれば、「建物
ノ滅失シタル当時其ノ建物ニ居住シタル者ハ前条第一項ノ停止期間中本建築物ノ所
有以外ノ目的ノ為当該建物ノ敷地ヲ使用スルコトヲ得、前項ノ場合ニ於テハ当該建
物ニ居住シタル者が使用ヲ始メタル時新ニ其ノ土地ニ付賃貸借アリタルモノト看做
ス」と規定され、右賃借権は臨時処理法二九条によつて同法施行の日から二箇年間
なお存続するものとされたのである。すなわち上告人は特に賃借の申出をなすまで
もなく昭二三年九月一四日までは本件土地を使用しえたのであり、前記処理法二条
の保護を受けるためには、その旨の賃借申出を改めてなさなければならなかつたの
である。しかるに、上告人の主張する処理法施行後間もなく賃借申出をしたとの事
実は、原審において主張されなかつたのであるから、原審が処理法二条の適用を認
めなかつたのは当然であつて、原判決には所論の違法はない。
 同第二点について。
 信託法一一条違反の主張は、原審においてなされなかつたところである。憲法二
二条違反の主張は、憲法違反に名を籍り独自の見解を披・するものにすぎないので
採用できない。
 同第三点について。
 原判決挙示の証拠によれば、論旨が甲の部分において引用する原判示事実を認定
しえなくはない。殊に上告人がaに疎開していたことについては、第一、二審証人
Dの証言によつてうかがえるのであるから、所論は原審が適法にした事実認定の非
難というべきである。また、地代を支払つたという事実から、普通の借地権が設定
されたということのできないことはいうまでもない。乙八号証以下は、上告理由書
に添付されたもので、原審には提出されていない。所論一、丙及び二以下は、原審
において主張しなかつた事実に基いて原判決を非難するものである。要するに、所
論はすべて原審が適法にした証拠の取捨、事実の認定を非難し、本件が一時使用の
借地権でないとの前提のもとに原判決に法令違反があることを主張するにほかなら
ないので採用できない。
 同第四点について。
 所論の理由ないことは、前論旨について説明したところによつて明らかである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己

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