弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人萩原由太郎上告趣意第一点について。
 原判決挙示の証拠に徴すれば原判決判示事実、就中被告人の強盗共謀並びに屋内
侵入の事実は十分に之を認むることができるのであつて、即ち原審は第一審におけ
る共犯者並に被害者の各供述を綜合して判示認定事実殊に前示被告人の強盗共謀及
び屋内侵入の事実を認定しているのである。所論は被告人に有利の如き部分の供述
のみを挙げ、以つて独自の主張を試みんとするものであつて、畢竟原審の専権に属
する証拠の取捨判断を攻撃するに帰するものある。又所論後段の原審(第二審)第
一回公判調書中における、被告人の自白(記録二二〇丁表以下)の点は、原審が証
拠に採つていないのであるから、長期拘禁後の自白云々の論旨は何等理由のないも
のである。論旨は何れも採用することができない。
 同第二点について。
 然し同一審級の同一公判期日における共同被告人に対しては、刑訴応急措置法第
一一条第二項の規定により常に被告人相互に訊問の機会は与えられているのである
から、右条件の下にある共同被告人の公判調書には同法第一二条第一項の適用はな
いのである。又所論の被告人が屋内侵入又は強盗共謀の事実を否定しただけの陳述
では、刑訴応急措置法第一一条第二項の他の共同被告人に対する訊問権及び同第一
二条第一項の証人喚問の請求権を行使したものとは云うことはできない。但し論旨
は理由がない。
 同第三点について。
 本点(一)の所論については、第一点において説明したとおり、被告人は他の共
犯者と共謀の上屋内に侵入したものと認定せらるゝ以上は、仮令被告人自身は暴力
行為を実行しなかつたとしても、本件強盗の共同正犯たるの責を免かるゝことはで
きないのである。論旨は理由がない。
 次に本点(二)の所論については、検事の本件起訴状には明らかに住居侵入の事
実についても記載されてあり、たゞ所論指摘のとおりその罪名及び該当法条の記載
はないが、旧刑訴法下においては右は適法なる検事の公訴提起の方式であるから、
所論住居侵入の点も亦審判の対象となること勿論のことである。次に控訴審は所謂
覆審であつて第一審の続審ではないから、本件第一審裁判所が右住居侵入の点につ
いて審判を遂げなかつたとしても、控訴審である原審が公訴事実の全般に亘つて審
判したことは素より当然の措置である。而して其場合所論旧刑訴第四〇三条は、そ
の明かの如く、審判の範囲に関するものではなくて刑に関するものである。即ち控
訴審においては第一審の判決の刑よりも重い刑を言渡すことはできないと云う規定
であるから、本件第一審の懲役五年の刑よりも原審は之より軽い四年の懲役刑を被
告人に言渡しているのであるから、却つて一審よりも軽い刑であり、毫も所論法条
に反するものではないのである。論旨は理由がない。
 次に本点(三)の所論については、先ず酌量減軽を為すや否やは原審裁判所の自
由裁量に属する事項であり、次に共犯者である共同被告人間の量刑の問題について
は、這は各犯人各個に属する犯状その他諸般の情状に依り各別に定めらるゝもので
あつて、従つて所論の如く犯罪実行行為の程度等のみに依り彼此量刑を比較し、以
つてその非を鳴らす如きは断じてその当を得た見解ではないのである。而して一件
記録を通閲するも原審には以上酌量減軽をしなかつたことに関し所論の如き専恣又
は懈怠若くは審理不尽等は勿論、実験則違背の証跡も之を認むることはできないの
である。論旨は理由がない。
 同第四点について。
 所論刑訴応急措置法第一三条第二項の規定が、憲法第九七条に違反するものでは
ないことは、既に所論引用の当裁判所大法廷の判例とするところであり、その後も
引続き当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一二二一号、昭和
二四年三月二三日大法廷判決参照)。而して未だ右判例変更の要あるを見ないので
ある。次に所論刑訴施行法第二条の規定も亦憲法違反でないことは、又当裁判所の
判例とするところである(昭和二三年(れ)第一五七七号、昭和二四年五月一八日
大法廷判決)。論旨は何れも理由がない。
 被告人Aの上告趣意について。
 趣意を要約すれば「自分は米を盗みに行くのを知り乍ら、一審相被告人B等と共
に被害者宅の表に立つていたゞけである。従つて窃盗未遂に問われるのは止むを得
ないとしても、強盗未遂の責任を問われるのは心外である」と云うのである。然し
この点は既に弁護人の上告趣意第一点において説明したとおりであるから理由のな
いものである。のみならず以上申立は結局原審裁判所の事実認定を非難することに
帰着するものであつて、かゝる理由は刑訴応急措置法第一三条第二項の規定に依り、
上告理由とは為し得ないものであるから、以上何れにしても被告人の申立は理由が
ないのである。
 以上の理由に依り、本件上告は何れもその理由がないから、刑訴施行法第二条及
び旧刑訴第四四六条に従い、主文のとおり判決する。
 此判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二四年五月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
 裁判官藤田八郎は出張中につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    霜   山   精   一

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