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平成22年(ワ)第24479号特許権侵害差止等請求事件
判決
名古屋市〈以下略〉
原告フルタ電機株式会社
同訴訟代理人弁護士小南明也
静岡県〈以下略〉
被告株式会社親和製作所
同訴訟代理人弁護士松本直樹
主文
1被告は,別紙物件目録1ないし5記載の各製品を製造し,販売し,又は販
売の申出をしてはならない。
2被告は,別紙物件目録1ないし5記載の各製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対して,1580万2992円及びこれに対する平成22
年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用は,これを20分し,その1を被告の,その余を原告の各負担と
する。
6この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1主文第1項及び第2項に同旨
2被告は,原告に対して,3億9000万円及びうち2000万円に対する平
成22年6月8日から,うち3億7000万円に対する平成23年11月16
日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」
とする発明についての特許権(特許第3966527号)を有する原告が,被
告の製造・販売等している別紙物件目録1及び2記載の各製品が上記発明の技
術的範囲に属し,また,別紙物件目録3ないし5記載の各製品が,上記別紙物
件目録1及び2記載の各製品の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)
に当たり(主位的主張),あるいはそれら自体が上記発明の技術的範囲に属す
る(予備的主張)と主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基
づき,上記各製品の製造・販売等の差止め及び廃棄を請求するとともに,特許
権侵害の不法行為に基づく損害賠償金の一部として,3億9000万円及びう
ち2000万円に対する不法行為の後の日(警告書送達日の翌日)である平成
22年6月8日から,うち3億7000万円に対する不法行為の後の日(平成
23年11月9日付け訴え変更申立書送達日の翌日)である平成23年11月
16日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払
を求める事案である。
2争いのない事実等〈証拠略〉
(1)当事者
ア原告
原告は,海苔製造加工に必要な機械の製造販売業者であり,その他各種
農業用及び各種水産用機械器具並びに各種風水力機械の製造・販売及び施
工等を目的とする株式会社である。
イ被告
被告は,別紙物件目録1及び2記載の「原藻異物除去洗浄機」又は「原
藻異物除去洗浄システム」などを製造・販売している株式会社である。
(2)原告の有する特許権
ア原告は,次の内容の特許権を有する。
登録番号特許第3966527号
発明の名称生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止
装置
出願日平成10年6月12日
公開日平成11年12月21日
登録日平成19年6月8日
イ原告は,平成22年1月18日,上記特許に関し訂正審判請求(訂正2
010-390006)をし,同年2月25日,訂正審決がされ,同審決
は同年3月9日確定した。訂正後の特許請求の範囲,明細書及び図面の内
容は,同訂正審判に係る別紙特許審決中の特許訂正明細書写し〈略〉記載
のとおりである(以下,上記訂正後の特許権を「本件特許権」といい,本
件特許権に係る特許を「本件特許」という。また,上記特許訂正明細書及
び図面を「本件明細書等」という。)。
(3)本件特許における特許請求の範囲
本件特許の特許請求の範囲における請求項の数は5であるが,そのうち,
請求項3及び4の記載はそれぞれ次のとおりである(以下,請求項3及び4
記載の特許発明をそれぞれ「本件発明3」及び「本件発明4」といい,これ
らを総称して「本件発明」という。)。
ア本件発明3
生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転
とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそ
れぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生
海苔異物分離除去装置において,
前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/
又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置
における生海苔の共回り防止装置。
イ本件発明4
生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転
とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそ
れぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生
海苔異物分離除去装置において,
前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を選別ケーシン
グと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離
除去装置における生海苔の共回り防止装置。
(4)本件発明の構成要件
ア本件発明3の構成要件
本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞ
れの記号に従い「構成要件A1」などという。)。

1生海苔排出口を有する選別ケーシング,
2(及び)回転板,
3この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,
4(並びに)異物排出口
5をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽
を有する生海苔異物分離除去装置において,
B前記防止手段を,
1突起・板体の突起物とし,
2この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構
成とした
生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
イ本件発明4の構成要件
本件発明4を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞ
れの記号に従って「構成要件B’1」などという。)。
A1ないしA5上記アに同じ
B’前記防止手段を,
1突起・板体の突起物とし,
2この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに
設ける構成とした
生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置
(5)被告の製品等
ア被告装置
被告は,別紙物件目録1記載の型名「CF-36B」,「CFW-37
S」,「CFWT-37」,「CFT-38」,「CFT-38B」,「C
W-63」,「CW-63S」,「CW-64」,「CW-64S」及び
「CW-96」で示される「原藻異物除去洗浄機」又は「原藻異物除去洗
浄システム」(以下,これらの装置を「被告装置1」と総称する。)を製
造・販売している。なお,被告装置1は,別紙物件目録4記載の回転板を
構成部品としている。
被告は,別紙物件目録2記載の型名「CFW-36」,「CFW-37」
及び「CF-36」で示される「原藻異物除去洗浄機」を製造・販売して
いる。これらの製品の回転板には,販売開始当初は,別紙物件目録5記載
のプレート板が取り付けられていなかったが,その後,同プレート板を取
り付けた別紙物件目録3記載の回転板に仕様変更された(以下,仕様変更
後の回転板を構成部品とする上記各型名の装置を「被告装置2」と総称し,
被告装置1及び被告装置2を併せて,「被告装置」という。)。
イ被告装置に用いる回転板及びプレート板
被告は,別紙物件目録3及び4記載の各回転板(以下,これらの2種類
の回転板を併せて「本件回転板」という。)を製造し,被告装置のユーザ
ーに,消耗部品として販売している。
本件回転板には,別紙物件目録5記載のプレート板(以下「本件プレー
ト板」という。ただし,別紙物件説明書では,単に「板」ないし「板4」
と表記する場合がある。)が取り付けられている。本件プレート板は,本
件回転板にネジで取り付けるものであり,容易に着脱できるようになって
いる。
被告は,本件プレート板を製造し,被告装置のユーザーに,消耗部品と
して販売している。
ウ型名「CFW-36」の基本的構成
被告装置2のうち,型名「CFW-36」の基本的な構成は,別紙物件
説明書記載のとおりである。
被告装置においては,型名によって,使用する回転板及びケーシングの
枚数が異なり,また,それに関連して他の構成も異なるが,本件発明との
対比に際して必要な基本的構成及び作用効果は型名「CFW-36」のそ
れと実質的に同じである。
エ被告装置の構成
別紙物件説明書の記載に基づき被告装置の構成を分説すると,以下のと
おりである(以下,それぞれの記号に従って「構成α1」などという。)
α
1排出口5を有し,環状固定板2aを含むケーシング2
2環状板3aを含む回転板3(本件回転板)
3板4(本件プレート板)
4異物排出口6
5をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される筒状混合液タン
クA(その底部を構成する底板Bを含む。)を有する生海苔異物分離
除去装置
β本件プレート板につき,
1その形状は厚さ約1ミリメートル,縦約18ミリメートル,横約2
0ミリメートルの「板状」であり,本件回転板の上面外周縁に取り付
けられた環状板3aの表面よりも出っ張るような状態を呈している。
2本件回転板の表面外周端に設けられている。
また,本件回転板を上から見た時に,その一部(爪部)が,本件回
転板の外周から突出し,隙間Cを超えるように設けられている。
オ構成要件充足性
被告装置の構成α1,α2,α4及びα5は,それぞれ本件発明3及び
4の構成要件A1,A2,A4及びA5に該当する。
(6)原告による本件発明の実施
原告は,被告装置の競合品であり,本件発明の実施品である製品(商品名
「セパクリーン」)を製造・販売している。
(7)原告による訴え提起と請求の拡張
原告は,平成22年6月30日に本件訴訟を提起し,その際被告に対し,
損害賠償の一部請求として,内金2000万円及びその遅延損害金の支払を
求めたが,その後,原告は,平成23年11月9日付け訴えの変更申立書に
より,損害賠償の一部請求の額を内金3億9000万円及びその遅延損害金
に拡張した。同訴え変更申立書は,同月15日,被告に送達された。
(8)被告による消滅時効の援用
被告は,平成24年1月11日の本件弁論準備手続期日において,原告の
請求のうち2000万円を超える部分につき,民法724条所定の消滅時効
を援用する旨の意思表示をした。
3争点
(1)被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か
ア構成要件A3の充足性
イ構成要件Bの充足性
ウ構成要件B’の充足性
(2)本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為が本件特許権に対
する間接侵害(特許法101条1号)に当たるか否か
(3)被告の過失の有無
(4)原告の損害額
(5)消滅時効の成否(時効の中断の有無)
第3争点に関する当事者の主張
1争点(1)ア(構成要件A3の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)「共回り」の意義
ア構成要件A3は,「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防
止する防止手段」である。
イ本件明細書等の段落【0002】,【0003】及び【0004】の記
載のとおり,被告装置のような回転板とクリアランスを利用する生海苔異
物除去装置においては,回転板の高速回転によってタンク内の生海苔混合
液を攪拌し渦を発生させることで生海苔と異物の分離を図ろうとするが,
「生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸
い込まれない現象」や,「生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回
転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象」が発生する場
合があり,この現象は,「究極的には,クリアランスの目詰まり(クリア
ランスの閉塞)が発生する状況等」を惹起する。
本件明細書等では,これらの状況を指して「共回り」としており,この
「共回り」が発生すると,回転板の停止,作業停止等が生じ得るとしてい
る。
このように,本件明細書等は,「共回り」について,ⅰ「生海苔及び異
物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現
象」又はⅱ「生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに
回転し,クリアランスに吸い込まれない現象」が生じ,究極的には,ⅲ「ク
リアランスの目詰まりが発生する状況」,ⅳ「クリアランスの閉塞が発生
する状況」等をもって「共回りとする」と明確に定義付けている。
なお,上記ⅰの現象とⅱの現象はいずれも「クリアランスに吸い込まれ
ない現象」であるが,上記ⅱの現象は,「クリアランスに喰込んだ状態」
で回転板とともに回ると限定する一方,上記ⅰの現象ではそのような限定
要件がないから,「クリアランスに喰込んだ状態」以外の状態を広く包含
していることは明らかである。
ウ特許法施行規則24条,様式第29〔備考〕8が,「用語は,その有す
る普通の意味で使用し,かつ,明細書全体を通じて統一して使用する。た
だし,特定の意味で使用しようとする場合において,その意味を定義して
使用するときは,この限りでない。」と規定しているが,本件明細書等は,
「共回り」を上記のとおり明確に定義しており,また,この用語は,本件
明細書等全体を通じて統一的に使用されている。
(2)「共回りを防止する防止手段」の意義
「共回り」の意義は上記(1)のとおりであるから,本件発明における「生
海苔の共回りを防止する防止手段」とは,回転板の高速回転によってタン
ク内の生海苔混合液を攪拌し渦を発生させてクリアランスを通過させよう
とする場合に,「生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),ク
リアランスに吸い込まれない現象」や,「生海苔等が,クリアランスに喰
込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象」
の発生,ひいては「クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発
生する状況」を防止する手段のことである。そして,当該防止手段を取り
付けたものが共回り防止装置である。
このように,「共回りを防止する防止手段」とは,生海苔が回転してク
リアランスに吸い込まれない状態を防止する手段を原因から動的に捉えた
呼称であって,回転板とクリアランスを用いる生海苔異物分離除去装置に
おいては,結局,クリアランスに「生海苔異物」が詰まることを防止する
手段と実質的に同義と考えて差し支えない。
(3)「共回りを防止する防止手段」の該当性
ア被告装置及び本件回転板に備わる本件プレート板は,「共回りを防止す
る防止手段」である。
すなわち,本件プレート板は,本件回転板の回転移動に伴って回転移動
を行う。この回転移動によって,①その一部が隙間Cの開口に挟まって隙
間Cを通過できない生海苔(=正常でない生海苔)や異物を爪部で切るこ
とができ,また,②正常でない生海苔や異物の隙間Cへの喰い込みを遮断
し,生海苔の動きを矯正することができる。これらの作用によって,隙間
Cの目詰まり(閉塞)を発生させる状況(さらには,異物や正常な生海苔
が集積して目詰まりを拡大させる状態)を回避することができ,隙間Cは
目詰まりすることなく,生海苔は隙間Cを介してケーシング2に流れ込み,
排出口5を介して次工程へ送られる。
そして,構成要件A3の「共回りを防止する防止手段」の意義は,上記
(2)のとおりであるから,被告装置の構成α3(本件プレート板)は,本件
発明3及び4の構成要件A3に該当することが明らかである。
イ原告は,被告装置における本件プレート板が「共回りを防止する防止手
段」であることを確認するため,CFW-36に対して本件プレート板を
取り付けた状態と取り外した状態で,目詰まり発生に差が生ずるかどうか
の実験を行ったが,この実験から,本件プレート板を取り付けた状態で運
転した場合には,クリアランスに目詰まりが発生しにくい結果が得られる
ことを確認した。
また,被告自身も,これまで被告装置のパンフレットや原被告間の過去
の訴訟において,本件プレート板が目詰まりを防止するものであると明示
してきたのであるから,本件プレート板に,隙間の目詰まり防止効果があ
ることは否定できないはずである。
(4)被告の主張に対する反論
ア被告は,「共回り」を,「生海苔が回転板に貼りついて回っている場合
のこと」と主張しているが,本件明細書等には,被告が主張するような記
載はない。あえて,被告が主張する意義に近い記載を探すならば,「生海
苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し」という部
分であるが,この記載も,「生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で
回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,」と
して,「クリアランスに吸い込まれない現象」の一つを記載しているにす
ぎないのであり,被告が主張するような場合(生海苔が回転板に貼りつい
て回るような場合)も存在し得るであろうが,そのような場合に限定され
るとの記載はどこにもない。
したがって,生海苔が「回転板に貼りついて回っている場合」に限定さ
れるとの被告の主張は,本件明細書等の記載を全く無視するものであって,
特許法70条2項に違反するものである。
仮に,被告が主張するように,生海苔が「回転板に貼りついて回ってい
る場合のこと」をもって「共回り」とするのであれば,被告主張のように,
回転板に固定した板状部材は,その「貼りついた生海苔」に対して働きよ
うがないから,そのような理屈に基づけば,本件発明3及び4は実施不可
能であり,また,本件明細書等に記載されていない発明をクレーム化した
ということにもなりかねない。このことからしても,被告の解釈が誤って
いることが明らかである。
イまた,被告の主張する「共回り」の解釈は,当業者あるいは一般の機械
用語で用いられている「共回り」の語義に忠実ではない。例えば,本件発
明の属する生海苔の製造関連技術分野において同業者である「渡邊機開工
業株式会社」の特許出願に係る公開特許公報(特開2003-93027
号公報)においては,「共回り」との用語が,攪拌羽根の回転とともに混
合液が回転することを意味するものとして用いられているものであるが,
決して,被告の主張するような意味で用いられてはいない。
そして,生海苔製造分野とは分野が異なるが,混合液を上記公報同様に
羽根などの回転体で回転させ,攪拌する技術分野(遠心分離,異物除去な
ど)において,液体が回転体と共に回転し,回転状態が維持される状態を
指して「共回り」との用語を用いている文献等は,多数存在する。
ウしかも,異物分離除去作業において生海苔混合液を用いる際には,海か
ら採取した生海苔をそのまま用いるのではなく,一旦荒切り作業によって
細かく切断した後に,それを海水に混ぜて海苔混合液にし,異物除去装置
に供するのであり,荒切り後の生海苔の長さは1ないし3cm程度で極め
て小さく切断されていることから,濃度を濃くした海苔混合液であっても,
溶液中の生海苔は流動性を保ち,回転板の回転と共に周方向の回転流を形
成し,渦を描くと同時にポンプの吸引によって生海苔混合液がクリアラン
スを通過していくのであって,そもそも生海苔が回転板に貼りつくなどと
いうことは通常は想定できない。
〔被告の主張〕
(1)「共回り」の意義
ア構成要件A3の「共回り」とは,生海苔が回転板とともに回ることを意
味する。そして,単に回るというのではなくて,「共」に回るというので
あるから,回転板に貼りついて回っている(つまり同じ速さで回っている)
場合のことを指すことは明らかである。なぜなら,回転板に貼りついた状
態で同じ速さで回るのではなく,ある程度遅れるという回り方をしている
場合は,「共回り」という言葉の意味に合致しないからである。
クレームの用語は,特許法70条2項に従い,明細書の説明に従って解
釈されるべきだが,本件明細書等の段落【0003】に記載されていると
おり,「生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアラン
スに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態
で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象」が,ここ
でいう「共回り」であり,特に「回転板とともに回転」を指している。
このように,本件発明は,生海苔が「回転板とともに回り」,それで詰
まる状況を「共回り」とし,これを特に対処の対象としている。回転板式
の生海苔異物除去装置の問題点(限界)として,回転側と固定側のいずれ
かに海苔が付着して空回りしてしまう状況があることは事実であり,その
うちの回転側への付着を共回りとして対処しようというのは,合理性のあ
る話である。本件特許は,先行技術との関係で,その中でも構造を限定す
るクレームである。
イ回転板式の生海苔異物除去装置においては,回転板円周部の僅かな隙間
を,生海苔がうまく通過していき,異物はこの隙間を通過できないことか
ら除去されるが,生海苔も,柔軟性に欠けている場合など,その状態によ
っては通過しにくいことがある。この際には,回転板側か固定側のいずれ
かの側に貼りついた状態になるのが普通である。こうなった場合に,貼り
ついた側の反対側にプレート板などを取り付けるなどすることは,詰まり
を解消するのに有効である。このうち,回転板側に生海苔などが付いた状
態が本件明細書等のいう「共回り」であって,これに対処することが本件
発明の内容であり,このことがクレームに明記されているのである。
同じように生海苔が貼りつく場合でも,固定側に貼りつくこともあり得
るが,これは「共回り」ではない。また,隙間を通過できない物が,どち
らにも貼りついていないままに回転板に遅れて回転する状態もあり得るが,
それは大きさが隙間を通過しない物であって,廃棄するべき異物であり,
やはり「共回り」とは関係がない。
このほか,回転板が回っている以上,水流が回っているのは当たり前で
ある。また,全くの正常状態でも,生海苔は瞬時に通過するわけではない
ので,タンク中に貯まって回っているものである。さらに,通過できない
物があって,それが固定側に止まっている場合であっても,回転板の回転
が続く以上はタンク中には回転流は生じるものである。それらを指して「共
回り」というのは全く失当である。
ウ本件明細書等では,「究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアラ
ンスの閉塞)が発生する状況等である」とされているが,これは共回りの
究極的な結果として起こることを説明しているものである。これが起こり
さえすれば,あるいはこれが起こっていることのすべてが,「共回り」と
いうわけではない。これは,上記の明細書の記載でも明白であるし,また
「共回り」との言葉自体からも明らかである。
なお,原告は,共回り防止について,訴状で,「ひいては」として,結
局のところ「『クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生す
る状況』を防止する手段のことである。」としているが,失当である。原
告自身,その前の部分では,「生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回
転し),クリアランスに吸い込まれない現象」や,「生海苔等が,クリア
ランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込ま
れない現象」に言及している。その上で,クレーム中の規定として「共回
り」と明記されているのである。回転板とともに回る共回りこそが本件発
明の対象となっていることは明らかである。
(2)「共回りを防止する防止手段」の意義
ア本件発明における「共回りの防止」は,生海苔や異物などが回転板とと
もに回転することを止めることを意味している。
上記(1)のとおり,「共回り」とは,特に,「回転板とともに回転」する
ことを指しているから,これを防止することが「共回りの防止」である。
イこの点に関する原告の主張は,共回り防止ができれば目詰まりを防止で
きることは認めるが,目詰まりが防止されさえすれば共回り防止に該当す
る,という論旨になっている点で誤りである。本件明細書等では,「共回
り防止」は,正に「共回り」に対してのものと説明されているにもかかわ
らず,原告は,それを抽象化して,「詰まることを防止する手段と実質的
に同義」とし,詰まり防止の働きがありさえすれば要件を充足するという
ものであるから,全く間違っている。
本件明細書等の記載や審査結果における説明の中には,必ずしも共回り
の対処になっていないものも含まれているが,特許権の技術的範囲として
は,クレームに基づいて,共回りに対処するものだけが対象となる。
(3)「共回りを防止する防止手段」の該当性
ア被告装置の本件プレート板は,「共回りを防止する防止手段」ではない。
すなわち,本件プレート板は,回転板の回転移動に伴って回転移動を行う
ものであり,その回転移動により,不通過の生海苔や異物を切ることなど
で目詰まりを回避するなどの働きを有するという点では正しいが,本件プ
レート板は本件回転板に付いていて共に回転するのであるから,固定側に
貼りついた海苔などの対処しかできず,「共回り」している海苔などには,
働きようがない。したがって,「共回りを防止する」とはいえない。
イ原告は,回転板に貼りついているわけではなくても,それに遅れながら
も回転している物に対して,本件プレート板の働きがあることを想定して
いるかのようにも見える。しかし,こうしたものは,仮に存在したとして
も,回転板と一緒に回っているわけではないから「共回り」ではなく,さ
らに,こうしたものに対して本件プレート板が働くことはない。すなわち,
生海苔は極めて薄いので,回転板円周部の極めて狭い隙間を通過し得るが,
通過しないという場合には,ほぼ必ず,回転板側か固定側のどちらかに貼
りついた状態になる。中間的な速さで回転するということは,実際には起
こらない。まして,そうしたものに対して,回転板に取り付けた本件プレ
ート板が働くということもあり得ない。
したがって,本件プレート板が実際に働くのは,固定側に貼りついた状
態の生海苔に対してだけである。そうした物に本件プレート板が当たるこ
とによって,絡みを解いたり,切ったり,またとにかく固定側に貼りつい
た状態を解くことになり,生海苔が通過していくのである。本件プレート
板の働きはそれだけであり,このように固定側に貼りついた物に対してだ
け働くのであるから,「共回り防止」になるわけではない。
ウ仮に「共回り」の意義を,回転板に貼りついているわけではないが全く
一緒に回っていることを指すと解するとしても,こうした一緒に回転する
ことに対して,被告装置における本件プレート板が,それを防止する働き
をするわけがない。
すなわち,被告装置では,回転板はかなり高速で回転するので,混合液
の全体がそれと同期して回転するということにはならず,遅れて回転する
状態になる。そして,混合液中の生海苔が回転板等に貼りつかないとした
ら,それは離れている状態であるから,何ら問題のある状況ではない。少
なくとも通過できるものであれば,展開して隙間を通過していくのであっ
て,特に対処の必要はない。また,離れているのなら,例えプレート板を
回転板に付けても,それで何か作用があるわけもない。
生海苔以外の物でしかも比重が塩水に近い物は,水流と共に回転するこ
とで回転板の回転よりも遅く回転する状態になることはあり得るが,こう
した物に対しては,本件プレート板は働きようがない。
(4)原告の主張に対する反論
ア原告は,本件明細書等の段落【0003】の記載を挙げて縷々主張する
が,同段落には,「生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し)」
又は「生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し」
のいずれかが元となり,それで「クリアランスに吸い込まれない現象」さ
らには「究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が
発生する状況等」だと記載されているのであるから,これに従っても,「回
転板とともに回り」又は「回転板とともに回転し」が前提である。海苔が
回転板と「ともに」ということは,要するに貼りついた状態である。確か
に,ここには,「貼りついて」とは記載されていないものの,「回転板と
ともに」と明記されている。遅れて回転する状態は,「ともに」ではない
というべきである。
また,原告は,僅かに回っているだけでも「共回り」であると主張する
が,「共回り」は回転板と「共」に回ることを指しており,しかもそこに
特に意義があるとされる発明なのであり,僅かに動いている場合などがこ
れに該当するわけがない。
イ原告が指摘する甲22の「生海苔の洗浄熟成機」の発明の特許公開公報
では,「共回り」が,生海苔が一体となって回転羽根と一緒に回ることを
指しているのであるから,ここでの「共回り」の用語は,表面に貼りつい
てしまうというものとは違うが,「同期して一緒に回っていること」とい
う,むしろ被告の主張に沿った意味で使われているというべきである。
ウ原告は,生海苔が回転板に貼りつく状態は起こらないと主張するが,不
適切なメンテナンスにより回転板の軸心がずれているような場合には,生
じ得る。そして,被告装置では,通過性の非常に悪い,すなわち詰まりや
すい海苔の場合や,異物と絡んだ海苔は,固定側に貼りついた状態になる。
これに対しては本件プレート板が有効な働きをするが,これは勿論,固定
側に止まっている海苔に対しての働きであるから,「共回り」の防止とい
う本件クレームの要件に合致しない。
エ本件特許の請求項1及び2では,固定側,すなわち,「選別ケーシング
の円周端面」(請求項1)ないし「生海苔混合液槽の内底面」(請求項2)
にその「突起物」を設けるとしている。固定側に設けることを本来として
いるのである。本件で主張されているのは請求項3及び4であり,これら
では「回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に」(請求項3)ないし
「選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに」(請求項4)と
なっていて,固定側に付するべきことが明らかでないが,これらも本来的
な意味としては,両側に付ける又は固定側に付けることを意味していると
解釈するべきものである。
本件明細書等の段落【0031】及び【0032】では,請求項3及び
4について,「従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防
止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有す
る。」としており,あたかも請求項1の従属項であるかのごとく説明され
ている。本件訴訟で主張されている請求項3や4が,請求項1の従属項で
あれば,本件で侵害が成立しないのは自明である。にもかかわらず原告は,
請求項3の規定が「回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に」と不分明
なところがあること等を利用して,不当な侵害主張を試みている。そもそ
も請求項1についても,先願との関係で構造的な限定をしたものである。
すなわち,固定側に凹みを作る(それで隙間の幅が僅かに広い部分を作る)
という被告側の先願があり,それとの区別をつけたという出願経過がある
(当初の請求項1及び2について,この趣旨の拒絶理由通知があったので,
実質的に,当初の請求項3以下を残す補正をした(形の上では当初の請求
項3以下の要件を加える補正)。)。この状況からいっても,請求項3及び
4についてだけ抽象的な解釈を主張することはおよそ失当である。
また,請求項3では,「この突起物を回転板及び/又は選別ケーシング
の円周面に設ける構成」としており,なにゆえに「及び/又は」と不明確な
記載をするのか,本件明細書の説明からは全くはっきりしない。そして原
告は,この「及び/又は」のうちの「又は」に当たるとして,回転板に付け
られただけの本件プレート板をもって侵害と主張している。
しかし,本件明細書等の【図6】の実施例が,この請求項3に該当する
べきものと仮定するなら,次のいずれかということであろう。一つは,「及
び」として,突起物を回転板側と固定側の両方に付けている,という構造
である。もう一つは,「又は」として,突起物を回転板側にだけ付けてい
るが,固定側に刻み目などを付することで,両者を組み合わせて共回り防
止の働きを得ている,という構造である。この場合,共回りしたものは固
定側の刻み目などで捉えられて固定され,そこへ回転板に取り付けた板片
が回ってきて異物部分又は肥大部分を切る,という働きをすることになる。
クレーム文言だけからは後者の可能性もあるが,本件明細書等には(また
クレームにも),固定側の刻み目などが明記されておらず,しかも上記の
とおり従属項であるかのような説明と矛盾しており,適切とは考えにくい。
こうした解釈をするべきというなら,審査時の理解を考えてみても,むし
ろ無効とされるべきである。
2争点(1)ウ(構成要件Bの充足性)について
〔原告の主張〕
(1)構成要件B1について
被告装置の構成β1,すなわち,「(本件プレート板につき,)その形状
は厚さ約1ミリメートル,縦約18ミリメートル,横約20ミリメートルの
『板状』であり,本件回転板の上面外周縁に取り付けられた環状板3aの表
面よりも出っ張るような状態を呈している。」は,本件発明3の構成要件B
1を充足する。
(2)構成要件B2について
被告装置は,「突起物」に該当する本件プレート板を「本件回転板の表面
外周端」に設けているから,「回転板の円周面に設ける構成」に相当し,被
告装置の構成β2は,本件発明3の構成要件B2を充足する。
(3)「生海苔の共回り防止装置」について
ア主位的主張
「生海苔の共回り防止装置」(構成要件B)は,「生海苔の共回りを防
止する防止手段」と同義ではない。つまり,「装置」とは一般的には「あ
る一定の機能を持った機構のひとまとまりのこと」であり,その物単体で
ある程度定まった用途を持つ比較的規模の大きな構造を指す場合に用いら
れる用語であり,また,「共回りを防止する防止手段」だけでは,生海苔
の共回りを防止できず,それを含むシステム(装置の体系)が存在しなけ
れば,本件発明の意図する作用効果を奏しない。したがって,「生海苔の
共回り防止装置」とは,生海苔異物除去装置において,「共回り」及びそ
の防止に関連する部品(選別ケーシング,回転板,共回りを防止する防止
手段等)のシステムを指すものであり,本件明細書等の段落【0003】,
【0019】ないし【0026】の記載及び図面,図面の説明のとおり,
「生海苔の共回り防止装置」は,生海苔混合液槽,生海苔排出口を有する
選別ケーシング,回転板,(選別ケーシングと回転板とで形成される)ク
リアランス,(回転板を回転する)駆動装置及び共回りを防止する防止手
段で構成されるものである。
そして,被告装置は,少なくとも構成α1,α2,α3などからなる生
海苔の異物分離除去装置であること(構成α5)は争いがなく,構成α3
(本件プレート板)が「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)に
該当し,また,被告装置は,「共回り」及びその防止に関連する上記各部
品(構成α1,α2,α3など)を備えていることは明らかであるから,
被告装置は「生海苔の共回り防止装置」である。
一方,本件発明は,「生海苔の共回り防止装置」に関する発明であり,
本件回転板や本件プレート板は,それだけでは「共回り防止装置」に該当
しないが,「本件発明の技術的範囲に属する物(被告装置)の生産にのみ
用いる物」に当たる。
イ予備的主張
仮に,構成要件Bの「生海苔の共回り防止装置」に関し,「生海苔の共
回り防止装置」と「生海苔の共回りを防止する防止手段」とが同義である
と解釈した場合は,「共回りを防止する防止手段」であり,かつ「共回り
防止装置」である本件プレート板が,本件発明の技術的範囲に属すること
になる。
また,本件回転板は,本件プレート板を必須構成要素とするものであり,
被告装置は,さらにこれを含むものであるから,本件回転板及び被告装置
は,いずれも本件発明の技術的範囲に属するものを含むことになる。
よって,被告が被告装置,本件回転板及び本件プレート板を製造・販売
し,販売の申出をする行為は,いずれも本件特許権を侵害する。
(4)被告の主張に対する反論
被告は,構成要件Bについて,構成βの本件プレート板が共回りを防止す
るものではないことを根拠として,「前記防止手段」と「生海苔の共回り防
止装置」の部分の該当性を否認しているが,本件プレート板が共回りを防止
する防止手段であることは,前記1〔原告の主張〕のとおりであるから,被
告の主張は失当である。
〔被告の主張〕
(1)構成要件Bの充足性について
構成要件Bの充足性については争う。構成βの本件プレート板は共回りを
防止するものではない。すなわち,本件プレート板は,構成要件Bの末尾の
「・・・生海苔の共回り防止装置」に当たらず,また,構成要件Bはそもそ
も「前記防止手段」について規定した要件であるが,この防止手段は「この
回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」のことであ
り(構成要件A3),本件プレート板はこれに当たらない。
(2)「生海苔の共回り防止装置」に関する原告の主張について
原告は,主位的主張として,被告装置全体を本件特許の対象である「共回
り防止装置」と主張し,本件回転板及び本件プレート板について間接侵害を
主張するところ,そもそも本件プレート板は,「共回りを防止する防止手段」
ではないから,侵害の主張自体が失当であるが,それを措くとしても,本件
発明の「共回り防止装置」に当たるのは,被告装置の中の本件プレート板だ
けである。すなわち,被告装置は,生海苔異物除去機であって,従前から被
告が製造し販売している製品なのであり,本件特許は,既に存在していた生
海苔異物除去機に付加して働くべきものとして,「共回り防止装置」をクレ
ームしているのであるから,被告装置に対して後に付加されている本件プレ
ート板こそが,これに当たる。このことは,共回り防止の「装置」と言おう
が「手段」と言おうが変わらないというべきである。
また,原告は,予備的主張として,本件回転板が,「共回りを防止する防
止手段」かつ「共回り防止装置」である本件プレート板を必須構成要素とす
るから,本件発明の技術的範囲に属するものを含むと主張するが,仮に侵害
主張が認められるとしても,本件プレート板の製造等が直接侵害に当たるの
であって,本件回転板や被告装置を含めて侵害品ということにはならない。
本件回転板や被告装置は従来からのものであり,クレームの文言からも,本
件プレート板が付いた本件回転板や被告装置が対象物とは解されない。
3争点(1)ウ(構成要件B’の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)被告装置の構成β1,すなわち,「(本件プレート板につき,)その形状
は厚さ約1ミリメートル,縦約18ミリメートル,横約20ミリメートルの
『板状』であり,本件回転板の上面外周縁に取り付けられた環状板3aの表
面よりも出っ張るような状態を呈している。」は,本件発明4の構成要件B’
1に該当する。
(2)被告装置では,「突起物」に該当する本件プレート板を「その一部(爪部)
が,本件回転板の外周から突出して隙間Cを超えるように設けられている」
(構成β2)から,「クリアランス」に当たる隙間Cの開口部を覆っている
点で,「クリアランスに設ける構成」に相当し,被告装置の構成β2は,本
件発明4の構成要件B’2にも該当する。
(3)「生海苔の共回り防止装置」について
「生海苔の共回り防止装置」の意義及び被告装置,本件回転板及び本件プ
レート板との関係についての原告の主張は,前記2〔原告の主張〕(3)と同様
である。
(4)被告の主張に対する反論
ア被告は,構成要件B’について,構成βの本件プレート板が共回りを防
止するものではないことを根拠として,「前記防止手段」と「生海苔の共
回り防止装置」の部分の該当性を否認しているが,本件プレート板が「共
回りを防止する防止手段」であることは,前記1〔原告の主張〕のとおり
であるから,被告の主張は失当である。
イ被告は,構成要件B’2該当性につき,「本件回転板の外周から突出し,
隙間Cを超えるように設けられている」ことは「クリアランスに設ける」
には該当しないと主張する。
しかし,構成要件B’2は,「クリアランスに設ける」としており,「ク
リアランス『内部』に設ける」とはしていない。そして,本件明細書等の
【図7】においても,防止手段6は,クリアランス内部から一部突出させ
た状態で付されている。また,本件明細書等の段落【0011】,【00
20】及び【0032】の記載によれば,防止手段は,生海苔の動きを矯
正し,効率的にクリアランスへ導く作用を行うことから,クリアランス内
部に完全に収まってしまうとそのような作用を発揮しにくく,できる限り
それを行いやすい場所に設置すべきことが明らかであり,「クリアランス
に設ける」ことは,生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスへ導く
作用を行う場所を特定するという技術的意義を有するのである。
したがって,「クリアランスに設ける」とは,「クリアランス『内部』
に設ける」という意味ではなく,クリアランス開口部を超える(覆う)よ
うに設けられている場合も含む概念である。
そして,別紙物件説明書の図7のとおり,被告装置において本件プレー
ト板は,隙間C(クリアランス)の近傍に位置し,その一部(爪部)は,
本件回転板の外周から突出して隙間Cを超えるように設けられ,その開口
部を覆っている。特に,本件プレート板がクリアランスを覆っている部分
は,本件明細書等の【図7】で,防止手段6がクリアランス内部から一部
突出している部分と同じ場所に位置し,この位置に存在することにより,
生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスへ導く作用を行っているの
である。
以上のとおり,本件プレート板が,実施例図とほぼ同じ位置に存在する
にもかかわらず,単に,その取り付け方が異なることをもって構成要件充
足性を否定することはできない。
〔被告の主張〕
(1)構成要件B’の充足性について
構成要件B’の充足性については争う。構成βの本件プレート板は共回り
を防止するものではない。すなわち,本件プレート板は,構成要件B’の末
尾の「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」に当たら
ず,また,構成要件B’はそもそも「前記防止手段」について規定した要件
であるが,この防止手段は「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回り
を防止する防止手段」(構成要件A3)のことであり,本件プレート板はこ
れに当たらない。
また,構造的にも,特に構成要件B’2の「クリアランスに設ける構成と
した」に該当しない。すなわち,被告装置における本件プレート板は,クリ
アランスの中ではなくて,その上に位置しているにすぎない。この点以外に
ついては,原告の主張する構造と特に相違するわけではない。
(2)原告の主張に対する反論
原告は,構成要件B’2の「クリアランスに設ける構成とした」との点に
ついて,「クリアランス『内部』に設ける」ものではないと主張しているが,
失当である。本件明細書等の【図7】でも,防止手段は,「クリアランス内
部から一部を突出させた状態」というよりは,基本的には内部にあるもので
あり,原告の主張の根拠にはならない。本件明細書等の【図8】がその要部
の拡大正面図とされているが,これを見ても,ほとんどクリアランス内に収
まっている。一方,被告装置における本件プレート板は,全く内部に入って
いないものである。その働きとしても,原告の主張する「効率的にクリアラ
ンスへ導く作用」などとは異なることは明らかである。
4争点(2)(本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為が本件特許
権に対する間接侵害(特許法101条1号)に当たるか否か)について
〔原告の主張〕
前記2〔原告の主張〕(3)ア記載のとおり,本件発明における「生海苔の共回
り防止装置」とは,生海苔混合液槽,生海苔排出口を有する選別ケーシング,
回転板,(選別ケーシングと回転板とで形成される)クリアランス,(回転板
を回転する)駆動装置及び共回りを防止する防止手段で構成されるものである。
したがって,本件回転板や本件プレート板は,それだけでは「共回り防止装置」
に該当しないが,「本件発明の技術的範囲に属する物(被告装置)の生産にの
み用いる物」に当たる。
よって,被告が本件回転板及び本件プレート板を製造・販売し,販売の申出
をする行為は,いずれも特許法101条1号の間接侵害に該当する。
〔被告の主張〕
否認ないし争う。仮に侵害が認められるとしても,前記2〔被告の主張〕(2)
記載のとおり,本件発明の「共回り防止装置」に当たるのは本件プレート板で
あるから,本件プレート板のみが侵害品になるのであって,本件回転板は侵害
品にはならない。
5争点(3)(被告の過失の有無)について
〔原告の主張〕
特許法103条により,被告の過失は推定される。
被告は,自らを基準にして注意義務違反がないことを主張しているにすぎず,
特に反論の必要性を認めない。
〔被告の主張〕
原告は,消滅時効に対する反論として,本件特許の訂正に関連して,訂正以
前には権利行使ができなかったと主張するところ,この主張を前提とするなら
ば,むしろ被告が無過失とされるべきである。
また,被告は,被告装置が原告の特許権を侵害するものではないと考えてい
るところ,その判断は妥当といえ,それを侵害だと言われるのは全く理解でき
ないことである。
したがって,そもそも被告は無過失であり,賠償責任を負わない。
6争点(4)(原告の損害額)について
〔原告の主張〕
(1)被告は,原告の知る限り,平成13年初め頃から現在に至るまで被告装置
等の製造・販売を継続している。そして,本件特許権の設定登録日は平成1
9年6月8日であるから,その日以降現在に至るまでに被告が被告装置等を
製造・販売した行為は,本件特許権を侵害する。
よって,原告は,被告に対して,特許法102条2項に基づく損害額の賠
償を求める。
(2)被告装置の販売利益
ア主位的主張
(ア)売上高
被告装置の型名ごとの定価は,以下のとおりであるところ,その定価
の平均は約400万円であるが,被告の販売店に対する卸売価格はその
約70パーセントと推定されるから,平均仕切価格は,少なく見積もっ
て250万円と推定される。
型名定価
CF-36B1,942,500円
CFW-37S3,255,000円(洗浄槽なし2,835,000円)
CFWT-376,510,000円
CFT-384,830,000円(本体のみ4,462,500円)
CFT-38B4,462,500円(本体のみ4,147,500円)
CW-633,570,000円(不明)
CW-63S3,570,000円
CW-644,725,000円
CW-64S4,305,000円
CW-965,250,000円
CFW-36なし(販売中止)
CFW-373,255,000円
CF-362,310,000円
また,被告装置の年間販売台数は50台程度と推定されるから,平成
19年6月8日以降,現在までの5年間の被告装置の売上高は,次のと
おり,6億2500万円と推定される。
250万円/台×50台×5年=6億2500万円
(イ)利益額・利益率
被告装置の利益率は,40パーセントである。
また,被告は,被告装置の粗利益からさらに控除されるべき変動費に
ついて,別紙1及び2〈略〉のとおり主張するところ,被告主張の各費
目の金額については争わないが,被告主張の各費目が変動費に当たるこ
と及び各費目中の変動費の按分割合は否認ないし争う。
被告は,被告装置のメンテナンスによって,メンテナンス費用,出張
料及び交換作業料を徴収しているところ,メンテナンスはサービスであ
るから,基本的に製造原価がかからず,その経費のほとんどが人件費,
旅費交通費,通信費,賃借料,交際接待費,会議費などであり,これら
は販売のための経費と区別し得ない。そして,被告のメンテナンス関連
の売上げは,被告が主張する変動費を十分に上回っていることが明らか
であるから,被告装置の販売についての変動費は,これらのメンテナン
ス料の売上げによって十分に回収されているのであり,それらの変動費
を控除する必要はない。仮に,百歩譲っていくらかの控除すべき部分が
あるとしても,せいぜい粗利益の10%を超えることはない。
(ウ)販売利益の額
上記(ア)及び(イ)によれば,被告装置の販売利益の額は,次のとおり,
2億5000万円である。
6億5000万円×40%=2億5000万円
イ予備的主張1
(ア)売上高
被告は,被告装置の売上実績等について,別紙売上等一覧表〈略〉の
表1及び表3のとおり主張するところ,表1の被告装置の販売台数及び
表3の被告装置の仕切価格をもとに,被告装置の売上高を計算すると,
5億0566万4204円となる。
(イ)利益額・利益率
上記ア(イ)と同じである。
(ウ)販売利益の額
上記(ア)及び(イ)によれば,被告装置の販売利益の額は,次のとおり,
2億0226万5681円である。
5億0566万4204円×40%=2億0226万5681円
ウ予備的主張2
被告は,被告装置の売上実績等について,別紙売上等一覧表の表1及び
表3のとおり主張するところ,被告装置のうち,少なくとも型名「CF-
36」,「CFW-37」,「CFW-37S」,「CFWT-37」,
「CFT-38」,「CFT-38B」,「CW-64S」及び「CW-
96」については,利益を計上しているというのであるから,これらの利
益を計上している被告装置(8機種)の販売により,被告は,次のとおり,
少なくとも7816万3700円の利益を得た。
型名台数仕切価格利益率利益額
CF-3621,430,000円37%1,058,200円
CFW-37111,946,609円26%5,567,300円
CFW-37S791,595,676円21%26,472,200円
CFWT-37143,428,071円14%6,719,000円
CFT-38242,492,980円17%10,171,300円
CFT-38B182,473,171円18%8,013,000円
CW-64S232,457,870円22%12,436,800円
CW-96402,759,250円7%7,725,900円
計78,163,700円
仮に,被告が主張するとおり,被告装置のうち,上記8機種以外の型名
の利益が赤字であったとしても,特許法102条2項は,「その者がその
侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,特許権者又
は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。」と規定するのであって,
その者が損失を受けている場合に,その利益額計算に際して,その損失を
控除すべきとは規定していないのであるから,同項による利益の計算にお
いては,その余の被告装置の赤字を考慮すべきではない。
なお,変動費に関する主張は,上記ア(イ)記載のとおりである。
(3)本件回転板の販売利益
ア主位的主張
(ア)売上高
本件回転板の定価の平均は約10万円であるが,被告の販売店に対す
る卸売価格はその約70パーセントと推定されるから,平均卸売単価は,
少なく見積もって7万円程度と推定される。
生産現場で稼働している被告装置は1500台と推定されるところ,
その1500台に対する補充部品として,平成19年6月8日以降,現
在までの5年間に,被告装置1台につき,少なくとも2年に1枚の割合
で本件回転板を供給したものと推定されるから,同5年間の本件回転板
の販売数量は,3750枚と推定される。
よって,本件回転板の売上高は,次のとおり,2億6250万円と推
定される。
7万円×1500台×1/2枚×5年=2億6250万円
(イ)利益額・利益率
本件回転板の利益率は約40パーセントである。
また,変動費に関する主張は,上記(2)ア(イ)と同様である。
(ウ)販売利益の額
上記(ア)及び(イ)によれば,本件回転板の販売利益の額は,次のとおり,
1億0500万円である。
2億6250万円×40%=1億0500万円
イ予備的主張★
被告は,本件回転板の売上実績等について,別紙売上等一覧表の表2及
び別紙1の表1のとおり主張するところ,原告は,その販売数量,販売単
価,粗利益率及び粗利益額を援用する。したがって,その粗利益の額は,
アルミ製回転板につき537万6000円,ステンレス製回転板につき1
044万9600円であり,その合計が1582万5600円となること
は争わない。
変動費に関する主張については,上記ア(イ)記載のとおりである。
(4)本件プレート板の販売利益
ア主位的主張
(ア)売上高
本件プレート板の定価は1枚525円であるが,被告の販売店に対す
る卸売価格は約380円と推定される。
また,本件プレート板は,消耗品であり,本件回転板以上に消耗が激
しいと推定されるので,生産現場で稼働している被告装置1500台に
対する補充部品として,平成19年6月8日以降,現在までの5年間に,
被告装置1台につき,少なくとも1年に2枚の割合で本件プレート板を
供給したものと推定されるから,同5年間の本件プレート板の販売数量
は,1万5000枚と推定できる。
よって,本件プレート板の売上高は,次のとおり,570万円と推定
される。
380円×1500台×2枚×5年=570万円
(イ)利益額・利益率
本件プレート板の利益率は,約50パーセントである。
また,変動費に関する主張は,上記(2)ア(イ)と同様である。
(ウ)販売利益の額
上記(ア)及び(イ)によれば,本件プレート板の販売利益の額は,次のと
おり,285万円である。
570万円×50%=285万円
イ予備的主張
被告は,本件プレート板の売上実績等について,別紙売上等一覧表の表
2及び別紙1の表1のとおり主張するところ,原告は,その販売数量,販
売単価,粗利益率及び粗利益額を援用する。したがって,その粗利益の額
が,12万6175円となることは争わない。
変動費に関する主張については,上記ア(イ)記載のとおりである。
(5)寄与度
ア侵害品について
本件発明は「生海苔の共回り防止装置」に関するものであるところ,被
告装置において,本件プレート板が「共回りを防止する防止手段」に相当
するが,「生海苔の共回り防止装置」は,生海苔混合液槽,生海苔排出口
を有する選別ケーシング,回転板,(選別ケーシングと回転板とで形成さ
れる)クリアランス,(回転板を回転する)駆動装置及び共回りを防止す
る防止手段で構成されるものであるから,被告装置の全体が本件特許の侵
害品に当たる。
イ本件プレート板の有用性及び販売への寄与について
被告装置は,本件発明に係る本件プレート板がなければ,生海苔異物分
離除去装置として十分に作動させることができない。
被告も,その準備書面で「役に立つ場合があることを全否定するわけで
はない」などと本件プレート板の効用を認めざるを得ず,実際,被告装置
は,本件プレート板を「目づまり防止付」と表示して販売されてきており,
現段階の被告の技術水準では,本件プレート板を付けない装置を用いて生
海苔異物除去作業を海苔生産者に行わせた場合に,これまでと同等以上の
目詰まり防止効果を奏させることはできない。すなわち,本件発明の実施
を可能とする本件プレート板は,まさに生海苔異物除去装置において真に
解決すべき課題を達成し得るがゆえに,海苔生産者の誰もが必要とするも
のである。
被告は,本件プレート板を用いる時期が限られており,あたかもそれ以
外の期間は取り外して使っているかのように主張するが,誤りである。つ
まり,本件プレート板を付けることで「共回り」という海苔生産者にとっ
て危険な状況が防止され,目詰まりがせず,海苔生産システム全体がスト
ップするという大損害を防止することも可能である。一方,本件プレート
板を付けても,特に,問題は生じない。したがって,生産者のほとんどは,
リスクを出来る限り小さくするために,本件プレート板を取り外さないで
生海苔異物除去装置を稼働させるのである。
また,被告装置では,本件プレート板を付けないものは,すぐに目詰ま
りが生じ海苔生産現場において種々の問題点が発生したため,平成12年
から15年頃以降,本件プレート板を取り付けることで,被告装置が大過
なく売れるようになったのであり,本件プレート板が,被告装置の全体の
利益に貢献していたことが明らかである。
以上のような情況からすれば,生海苔異物除去装置は,本件発明の「共
回り防止装置」なしでは実質的に機能しない装置であって,共回り防止措
置を講じない生海苔異物除去装置では,製品として販売できない(海苔生
産者は見向きもしない)ということである。
ウ本件発明の寄与度
したがって,被告装置及び本件回転板の販売及びその利益に対する本件
発明の寄与度は,いずれも100パーセントである。
(6)特許法102条2項による損害額
上記(2)ないし(5)によれば,被告が侵害行為により受けた利益の額は,被
告装置につき2億5000万円,本件回転板につき1億0500万円,本件
プレート板につき285万円となり,これらの合計額は,3億5785万円
となる。
(7)弁護士費用
本件事案の内容及び性質,被告による訴訟追行の状況等に鑑みれば,本件
訴訟提起等に要する弁護士費用のうち,本件特許権侵害行為と相当因果関係
にある損害額は,上記3億5785万円の約10パーセントに相当する35
78万円(1万円未満切捨て)を下らない。
(8)損害額及び請求額
よって,原告が蒙った損害額は,上記(6)及び(7)の合計額である3億93
63万円を下らない。
したがって,原告は,被告に対して,上記3億9363万円の内金として
3億9000万円,及びうち2000万円に対する警告書送達日(平成22
年6月7日)の翌日以降,うち3億7000万円に対する平成23年11月
9日付け訴え変更申立書の送達の日の翌日以降,各支払済みまで年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める。
〔被告の主張〕
(1)被告装置の販売利益
ア販売台数及び売上高
平成19年6月8日以降の被告装置の型名ごとの販売台数は,別紙売上
等一覧表の表1記載のとおりであり,型名ごとの平均仕切価格は,同表3
記載のとおりである。
被告装置の売上高は,別紙1の表2の「異物除去機売上」欄記載のとお
り,計4億6844万8347円である。
イ粗利益の額及び率
原告の主張する利益率は,否認する。
被告装置の売上高から原価を差し引いた粗利益額は,別紙1の表2の「粗
利」欄記載のとおりである(合計額は7067万5455円)。
なお,被告装置の型名ごとの原価,平均仕切価格,粗利益額及び粗利益
率は,別紙売上等一覧表の表3記載のとおりである。
ウ変動費
原告の主張は争う。
被告装置の変動費は,別紙1及び2の被告による変動費計算書1及び2
記載のとおり,販売管理費(運搬費,広告宣伝費,賃借料,旅費,通信費,
交際接待費,会議費,販売促進費),時間外人件費及び手形割引料である。
被告の55期ないし59期の間の変動費の合計額は,別紙1の表2の「変
動費合計」欄記載のとおり,計4140万5270円であり,この額は,
異物除去機の売上高の8.84パーセントに相当する。
なお,上記55期ないし59期の各年度の変動費の詳細は,別紙1及び
2記載のとおりであるが,これらは,上記各費目のうち,製品運送費につ
いては,異物除去機(被告装置)の売上比率(別紙2の「うち異物除去機
製品」「(事業部内比率)」欄)と異物除去機関係以外(これは全て製品
とする。)の製品の売上比率(別紙2の「(異物除去機関係以外比率)」
欄)を基準に按分し(その按分割合は,別紙2の「うち異物除去機製品」
「(事業部内比率)」及び「(異物除去機関係以外比率)」の右欄に記載),
その他の費目については,いずれも自社品事業部の売上高に占める異物除
去機(被告装置)の売上高の割合(別紙2の「うち異物除去機製品」「(事
業部内比率)」欄)で按分して,各費目について控除すべき変動費の額(別
紙2の「控除額」欄)を算出したものである。
エ販売利益の額
原告主張の額は,否認する。
(2)本件回転板の販売利益
ア販売数量
平成19年6月8日以降の本件回転板の販売数量は,別紙売上等一覧表
の表2の「選別プレート新品」欄及び別紙1の表1の「合計数量」欄記載
のとおり,アルミ製のものが192枚,ステンレス製のものが311枚で
ある(計503枚)。
イ販売単価
本件回転板の販売単価は,別紙1の表1の「出荷単価」欄記載のとおり,
アルミ製のものが7万円,ステンレス製のものが8万4000円である。
ウ粗利益率及び粗利益額
本件回転板の粗利益率は,別紙1の表1の「粗利益率」欄記載のとおり,
40パーセントである。
したがって,本件回転板の販売による粗利益額は,同表1の「粗利益金
額」欄記載のとおり,アルミ製のものが計537万6000円となり,ス
テンレス製のものが計1044万9600円となる(合計1582万56
00円)。
192枚×70,000円×40%=5,376,000円
311枚×84,000円×40%=10,499,600円
エ変動費
本件回転板の売上げに対する原価以外の変動費の比率は,被告装置と同
様に,8.84パーセントである。
オ販売利益の額
原告の主張する額は,否認する。
(3)本件プレート板
ア販売数量
平成19年6月8日以降の本件プレート板の販売数量は,別紙売上等一
覧表の表2の「プレート板」欄及び別紙1の表1の「合計数量」欄記載の
とおり,721枚である。
イ販売単価
本件プレート板の販売単価は,別紙1の表1の「出荷単価」欄記載のと
おり,350円である。
ウ粗利益率及び粗利益額
本件プレート板の粗利益率は,別紙1の表1の「粗利益率」欄記載のと
おり,50パーセントである。
したがって,本件プレート板の販売による粗利益額は,同表1の「粗利
益金額」欄記載のとおり,計12万6175円となる。
721枚×350円×50%=126,175円
エ変動費
本件プレート板の売上げに対する原価以外の変動費の比率は,被告装置
と同様に,8.84パーセントである。
オ販売利益の額
原告の主張する額は,否認する。
(4)寄与度
ア侵害品について
本件特許の対象物は「共回り防止装置」であるところ,これに当てはま
るのは,本件プレート板である。原告は,本件プレート板は「防止手段」
で,これとクレーム対象である「防止装置」とは違うというが,失当であ
る。本件プレート板が「防止手段」に当たるのはよいとして,だからとい
って,異物除去機全体が「防止装置」となるわけがない。
原告は,被告装置自体の利益を賠償金額算定の根拠として主張するが,
たとえ侵害があると仮定しても,侵害品となるのは,本件プレート板であ
るから,これを計算の対象とすべきである。被告装置自体は,本件特許の
出願よりも前から売っているものであるから,被告装置自体の販売が「侵
害の行為」(特許法102条2項)になるわけではないし,被告装置全体
が侵害品ではないのであって,原告のような計算は失当である。
イ本件プレート板の有用性及び販売への寄与について
仮に原告の侵害主張を認めるとしても,本件特許の対象物が本件プレー
ト板であるというだけではなく,本件プレート板は,現に,除去機自体に
とって限定的な働きを持つだけのものである。
すなわち,生海苔の異物除去装置としての能率を確保するためには,通
過するべき生海苔は,十分に通過するということを達成することこそが重
要な点であるが,この課題に対して,回転板の円周部の僅かな隙間を利用
するという構成を採用し,能率のよい装置を達成したのは,被告の発明で
ある。これによって,実用的な異物除去機が初めてできたのである。
したがって,被告の発明によって,通過するべき生海苔は十分に通過し
たということであり,そこに本件プレート板の必要性等は基本的には存在
しないということである。
このように,通常は,本件プレート板などなくても,回転板の円周部と
固定側との間の横滑りの動きにより,良品海苔は隙間を通過していくが,
海苔の一部に,通過できない分厚い箇所があるなどの場合には,本件プレ
ート板が有効に働く。「ハタキ」と呼ばれる,シーズン末期に海苔を根こ
そぎに採取した場合,海苔の根及びそれに近い部分が厚いために,そのま
までは隙間を通過しないものがあり,これに対処する目的で回転板上に本
件プレート板を取り付けるのである。回転板上面の本件プレート板によっ
て,通過できない部分を切断し,通過できる良品海苔の部分を通過させる
という働き方をさせるわけである。ハタキ以外でも,分厚い部分がある海
苔などの場合には,本件プレート板が有効である可能性はあるが,実際に
は,ハタキの際以外は,回転板の上面に取り付ける本件プレート板が必要
となる事態は,普通はない。このため,典型的なユーザー(海苔生産者)
の場合,ハタキの時期だけに本件プレート板を取り付けている。
このように回転板の上面に付ける本件プレート板は,ハタキの処理のた
めのものであり,その経済的意義はかなり限られている上,ハタキは,そ
もそも海苔としては品質の劣るものであり,価格も安く,異物除去機を通
しても高級品に変わるわけではない。また,そういうものであるから,異
物処理機を通すことが必須ではなく,むしろそのまま製品にすることも考
えられるのであるが,異物除去機を一応は通すという使い方が多くなり,
その際に本件プレート板を使うという状況になっている。したがって,仮
に本件プレート板を使わないとしても,それが大きな問題になるわけでは
なく,そういうときには異物除去機を使わないように対処すればよいだけ
の話である。こういう意味でも,本件プレート板の意義は限られている。
一方,本件プレート板を取り付けると,仮に,甲殻類の殻などの異物が
混入していた場合,それを本件プレート板が粉砕する可能性があり,そう
なると,かえって粉砕物を良品海苔に混ぜてしまうことになるが,これは,
製品海苔に白い斑点状の異物が混じる事になったりして,非常に品質を低
下させる。このため,必要がない限り,品質のためにはむしろ本件プレー
ト板を付けないことが望ましい。このような副作用もあるため,通常時は
本件プレート板を取り付けずに異物除去機を使用し,ハタキの場合に限っ
て,本件プレート板を取り付けるのが普通である。そのため,本件プレー
ト板はネジで回転板に付けるもので,簡単に付けたり外したりできるよう
になっている。
以上のように本件プレート板を付ける期間はごく限られており,異物除
去機にとって決して重要なものではないため,ユーザーが異物除去機を買
う際にも,本件プレート板があるから被告装置が選択されるわけでは決し
てない。
ウ本件発明の寄与度
本件プレート板の利用期間やその際の海苔の経済価値の低さを考えれば,
被告装置及び本件回転板の売上げに対する本件発明の寄与度が10パーセ
ントを超えることはない。
(5)損害賠償額の算定についての被告の主張
ア被告装置について
原告は,被告装置と競合する生海苔異物除去機を製造・販売しているも
のの,競合品の中ではシェアは低い。近年においては,渡邊機開工業のシ
ェアが圧倒的であるから,被告が販売できなかった分は,基本的に渡邊機
開工業が販売することになるとみるのが相当である。シェアにこれだけ開
きがあると,原告の販売先は,特に深いつながりがあるところに限られ,
被告が販売できなかった場合に,選択肢としては,むしろ渡邊機開工業を
選ぶのが当然と思われる。
したがって,被告が本件プレート板を付けたことによる原告の逸失利益
はないものと考えられ,仮に逸失利益を想定したとしても,それは被告に
よる販売利益の数十分の1にとどまるはずである。よって,この状況は,
特許法102条2項の推定が覆されているというに十分である。
イ本件回転板及び本件プレート板について
原告は,本件回転板及び本件プレート板の販売についても,特許法10
2条2項の適用を主張しているが,原告は,これらの競合品を販売してお
らず,被告が本件回転板及び本件プレート板を販売しなくても,それによ
り原告が販売できたわけではないのであるから,被告の利益額を根拠とし
た原告の損害を想定することはできないのであって,同条項の適用の前提
を欠いている。
ウその他
本件特許には,極めて近い先行技術が存在しており,その点でも,本件
特許に意義があるとは思われない。先行技術に基づく無効を詳論はしない
が,こうした状況は,損害額の判断において考慮される必要がある。
また,被告は,「共回り防止」のクレーム要件に合致しないことでの非
侵害を専ら主張してきており,また,それ以外にも,請求項3によれば,
突起物等は「円周面」に付けるとされているが,被告装置における本件プ
レート板は,回転板の上面に付けるのであって,側面の円周面ではないか
ら,本件プレート板はこの要件に合致していないともいえる。
これらの事情は,賠償額の算定において,斟酌されるべきである。
さらに,仮に,被告に過失が認められるとしても,その過失は小さいか
ら,特許法102条4項後段の趣旨により,賠償額は軽減されるべきであ
る。
(6)弁護士費用について
弁護士費用相当額の損害は争う。
7争点(5)(消滅時効の成否(時効の中断の有無))について
〔被告の主張〕
(1)消滅時効の成立
原告の請求のうち,訴え変更前の請求金額(2000万円)を超える部分
について,民法724条所定の3年の消滅時効を援用する。
すなわち,原告が請求金額を拡張した平成23年11月9日付け訴え変更
申立書は,同月15日に被告に送達されたところ,それから3年をさかのぼ
る平成20年11月15日以前の被告装置の販売による損害賠償請求権は,
消滅時効が完成している。消滅時効の対象となる平成19年6月8日から平
成20年11月14日までの間の被告装置の販売台数は,型名「CF-36」
が1台,「CFW-37」が5台,「CFW-37S」が43台,「CFW
T-37」が11台,「CFT-38」が17台,「CFT-38B」が2
台で,計79台である。
原告は,消滅時効に対する反論として,本件特許の訂正に関連して,訂正
以前には権利行使ができなかったと主張するところ,この主張を前提とする
なら,むしろ,被告には過失がなく,賠償責任を負わないことになる。
(2)時効の中断の主張に対する反論
本件訴訟の提起による時効の中断があるにしても,その効果があるのは,
訴訟物になっている請求金額の範囲のみである。原告は,訴状において,「内
金として金2000万円」及び遅延損害金を請求していたのであるから,時
効の中断効が認められるのは,この金額についてのみである。
〔原告の主張〕
(1)消滅時効の成否について
消滅時効の起算点は,「被害者・・・が損害及び加害者を知った時」(民
法724条)である。
原告は,平成22年1月頃,被告装置が本件特許権に抵触するのではない
かとの疑いを有し,専門的観点から判断を行ったが,その段階では,本件明
細書等の記載に明瞭でない記載等があり,特許侵害との判断をなし得ない状
態であった。そこで,原告は,同月18日に,本件特許の訂正審判(訂正2
010-390006)を請求し,同年2月25日に訂正を認める旨の審決
がされたことを受けて,被告に対して,同年6月3日付け警告書(送達日は
同月7日)で,被告装置の製造・販売等の中止と,損害賠償額算定のための
販売数量等の開示などを要求した。
このように,原告が,損害の事実,すなわち,被告装置が本件特許権を侵
害するとの事実を知ったのは平成22年2月末頃(早くとも訂正審判を請求
した同年1月頃)であるから,消滅時効の起算点は,早くとも同年1月頃で
ある。そうすると,原告は,同年6月30日に訴訟提起し,さらに,平成2
3年11月9日付けで訴えを変更しているから,そもそも民法724条の時
効は成立しない。
(2)時効の中断
仮に,消滅時効の起算点が被告主張のとおりであったとしても,被告の援
用対象である本件の損害賠償請求権の時効は中断している。
すなわち,原告は,訴状において,「損害賠償として,少なく見積もって
4000万円は下らない」とし,「現段階では」と留保した上で「内金20
00万円」を請求していたのであり,一部請求であることを明示するだけで
なく,訴訟提起時から残部についても権利行使の意思を表明していたことは
明らかである。そればかりか,上記「4000万円」を上限とするのではな
く,仮定的に「少なく見積もって」と主張している。すなわち,当該期間に
相当する分の損害賠償額の上限が「4000万円」という趣旨ではなく,後
に損害論の手続に入った段階では不足する部分は拡張して請求するという趣
旨を明示していることは明らかである。そして,現に,損害論の手続に入っ
た段階で速やかに訴え変更申立書を提出して請求額を拡張したものである。
このように,原告は本件訴訟の提起・係属によって,その残部についても
これを行使する意思を継続的に表示していることから「裁判上の催告」(民
法153条)が成立する。そして,その後の訴え変更申立書による請求拡張
によって裁判上の請求(同法147条1号,149条)が成立しているから,
その残部についても消滅時効は中断するというべきである。
第4当裁判所の判断
1本件発明の意義
(1)本件明細書等の記載
本件明細書等(別紙特許審決公報〈略〉参照)には,次の記載がある。
【発明の属する技術分野】
・「本発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去
する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関す
る。」(段落【0001】)
【従来の技術】
・「この異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置としては,特開平
8-140637号の生海苔の異物分離除去装置がある。その構成は,
筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅
かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適
宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに
異物排出口を設けたことにある。この発明は,比重差と遠心力を利用し
て効率よく異物を分離除去できること,回転板が常時回転するので目詰
まりが少ないこと,又は仮りに目詰まりしても,当該目詰まりの解消を
簡易に行えること,等の特徴があると開示されている。」(段落【00
02】)
【発明が解決しようとする課題】
・「前記生海苔の異物分離除去装置,又は回転板とクリアランスを利用す
る生海苔異物分離除去装置においては,この回転板を高速回転すること
から,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアラン
スに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状
態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,
究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生す
る状況等である。この状況を共回りとする。この共回りが発生すると,
回転板の停止,又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率
低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の如く,最悪の
状況となることも考えられる。」(段落【0003】)
・「前記共回りの発生のメカニズムは,本発明者の経験則では,1.生海
苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが不均
等のとき,2.生海苔が束状,捩じれ,絡み付き等の異常な状態で,生
海苔が展開した状態でない,所謂,生海苔の動きが正常でないとき,3.
生海苔が異物を取り込んでいる状態,生海苔に異物が付着する等の状態
であって,生海苔の厚みが不均等であるとき,等の生海苔の状態と考え
られる。(段落【0004】)
【課題を解決するための手段】
・「請求項1の発明は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰
まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能
率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)を図
ることにある。またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置
することを意図する。」(段落【0005】)
・「請求項3の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防止
手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段
落【0009】)
・「請求項3は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,こ
の回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並び
に異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔
混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,
突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシン
グの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔
の共回り防止装置である。」(段落【0010】)
・「請求項4の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防止
手段を,クリアランスへの容易な設置を図ることを意図する。」(段落
【0011】)
・「請求項4は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,こ
の回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並び
に異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔
混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,
突起・板体の突起物とし,この突起物を選別ケーシングと回転板で形成
されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離除去装置におけ
る生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0012】)
【発明の実施の形態】
・「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が
導入される。この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに
回転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成さ
れる異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このクリ
アランスを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海
水は,選別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質タ
ンクに導かれる。」(段落【0019】)
・「このクリアランスに導かれる際に,生海苔の共回りが発生しても,本
発明では,防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前記
防止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的に
クリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(段落【0020】)
・「以上のような操作により,生海苔の分離が,極めて効率的にかつトラ
ブルもなく行われることと,当該回転板,又は当該装置の停止等は未然
に防止できる特徴がある。」(段落【0021】)
【実施例】
・「・・・。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33
a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のク
リアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起
物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に
傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ
所設ける。」(段落【0026】)
【発明の効果】
・「請求項1の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転
板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並
びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海
苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突
起・板体の突起物とし,突起物を,選別ケーシングの円周端面に設ける
生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従っ
て,この請求項1は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰
まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能
率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図
れること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置でき
ること等の特徴がある。」(段落【0029】)
・「請求項3の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転
板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並
びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海
苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突
起・板体の突起物とし,突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円
周面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置
である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止手
段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有する。」
(段落【0031】)
・「請求項4の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転
板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並
びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海
苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突
起・板体の突起物とし,突起物を選別ケーシングと回転板で形成される
クリアランスに設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り
防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこ
の防止手段を,クリアランスへの容易な設置が図れること等の特徴を有
する。」(段落【0032】)
(2)上記各記載によれば,本件発明は,混合液タンクの環状枠板部と回転板と
の間に設けられたわずかなクリアランスを利用して,生海苔・海水混合液(生
海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置において,従
来,生海苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが
不均等なとき,生海苔が束状,ねじれ,絡みつき等の異常な状態で,生海苔
が展開した状態でないとき,又は,生海苔が異物を取り込んでいる状態,生
海苔に異物が付着する等の状態であって,生海苔の厚みが不均等であるとき
などに,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は
作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いてしまうこ
とがあったため,共回りを防止する手段を簡易かつ確実に適切な場所に設置
し,クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐことによって,
効率的・連続的な異物分離を図ろうとした発明であって,その防止手段とし
て,突起・板体の突起物を,回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設
ける構成としたり(本件発明3),クリアランスに設ける構成としたりした
(本件発明4)ものと,認めることができる。
2争点(1)ア(構成要件A3の充足性)について
(1)本件発明における「共回り」の意義
ア本件発明には,「共回り」に関し,「回転板とともに回る生海苔の共回
りを防止する防止手段」(構成要件A3)との記載があるところ,本件明
細書等の段落【0003】には,さらに,「・・・生海苔及び異物が,回
転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は
生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリ
アランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰
まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等である。この状況を共回り
とする。」との記載があり,ここで,「共回り」の用語が定義されている。
したがって,本件発明の記載及び本件明細書等の記載によれば,本件発
明における「共回り」とは,生海苔等が,回転板とともに回転し,クリア
ランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰い込ん
だ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象のこ
とであって,究極的にクリアランスの目詰まり(閉塞)が発生している状
況をいうものと認められる。
そして,このような定義に基づけば,クリアランスの目詰まり(閉塞)
が発生している状況において,「生海苔等が,クリアランスに喰い込んだ
状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象」はも
ちろん,単に「生海苔等が,回転板とともに回転し,クリアランスに吸い
込まれない現象」も「共回り」に当たるとされているのであるから,クリ
アランスに喰い込んだ生海苔等が回転板に接触しつつ,回転板と一緒に回
転して,クリアランスに吸い込まれない場合だけではなく,クリアランス
に目詰まり(閉塞)が発生した状況において,分離除去装置の槽内の混合
液中の生海苔等が,その槽内で,回転板の回転に伴って回転しているだけ
で,クリアランスに吸い込まれていかない場合もまた,本件発明における
「共回り」に含まれるものと解される。
なお,証拠(略)によれば,生海苔又はそれ以外の混合液を羽根などの
回転体で回転させ,撹拌する技術分野(遠心分離,異物除去など)におい
て,「共回り」との用語が,混合液等が回転体の回転に伴って容器の中で
回転し,撹拌や分離の効果を奏しないような状態を指すものとして用いら
れていると認められることに照らしても,本件発明における「共回り」の
用語を,上記のように,生海苔等が回転板の回転に伴って,槽内で回転し
ているだけで,クリアランスに吸い込まれていかず,分離除去の効果が得
られないような場合を含むものと解するのが相当である。
イこの点に関し,被告は,「共回り」とは,生海苔等が回転板とともに回
ることを意味し,それは回転板に貼りついて回っている状態を指すと主張
する。
確かに,本件明細書等の段落【0003】は,「生海苔等が,クリアラ
ンスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれ
ない現象」を「共回り」の一つの状態として記載しているから,生海苔等
がクリアランスに喰い込み,その際,回転板に貼りついて,回転板と同じ
速度で回っているような場合も「共回り」に含まれ得る。
しかし,上記のとおり,「共回り」が,そのように「生海苔等が,クリ
アランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転」している場合だけでなく,
広く,生海苔等が回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない
場合を含むものとして定義されている以上,これを,被告が主張するよう
に,生海苔等が回転板に貼りついている場合に限定して解釈するのは相当
ではない。
また,被告は,「とも(共)」の語を用いた「回転板とともに回る」と
の文言を重視するようであるが,「とも(共)」とは,一般的に,「いっ
しょ。同時。同一。」の意味であるから(広辞苑第六版),生海苔が「回
転板とともに回る」との文言が,生海苔が回転板に貼りついていることの
みを意味するとはいえないし,両者が同速度で回る場合に限定されている
とも解し得ない。
むしろ,本件明細書等の段落【0019】には,「本発明の生海苔混合
液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が導入される。この導入さ
れた生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに回転しつつ,順次吸込用ポ
ンプにより回転板と選別ケーシングで形成される異物分離機構のクリアラ
ンスに導かれる。」との記載があるところ,同記載中にも「回転板ととも
に回転し」との文言が用いられているが,ここで「回転板とともに回転し」
ている生海苔が,「回転板に貼りついて回転板と同速度で回転している」
生海苔を指すものでないことは,明らかである。
このように,本件明細書等の記載によっても,「回転板とともに回転」
するとの文言が,回転板に貼りついて回転板と同速度で回転するとの限定
的な意味で用いられてはいないと認められるから,これに反する被告の主
張は採用することができない。
ウまた,被告は,回転板が回っている以上,水流が回っているのは当たり
前であって,全くの正常な状態であっても生海苔は瞬時に通過するわけで
はなくタンク中に貯まって回っているものであるが,それらを指して「共
回り」というのは失当であると主張する。
しかし,上記アのとおり,本件発明における「共回り」は,生海苔等が
回転板とともに回転してクリアランスに吸い込まれない現象をいうのであ
って,単に,混合液中の生海苔が槽内で回転しているという正常な状態を
指しているわけではないことは明らかであるから,被告の上記主張は採用
することができない。
さらに,被告は,クリアランスの目詰まり(閉塞)が起こりさえすれば,
あるいはこれが起こっていることの全てが「共回り」というわけではない
とも主張する。
しかし,上記アにおける「共回り」の解釈は,クリアランスに目詰まり
(閉塞)が起こりさえすれば,その全てが「共回り」に当たるというもの
ではなく,「共回り」に該当する現象の存在を前提としているのであるか
ら,被告の上記主張は採用することができない。
(2)本件発明における「共回りを防止する防止手段」の意義
ア本件発明における「共回り」の意義が,上記(1)ア記載のとおりである以
上,「共回りを防止する防止手段」とは,クリアランスの目詰まりを防止
ないし解消するための手段であって,生海苔等が,クリアランスに喰い込
んだ状態又はそれ以外の状態で,回転板とともに回転し,クリアランスに
吸い込まれない現象,すなわち「共回り」の発生を防ぐための手段をいう
ものと解される。
イこの点に関して被告は,「共回りを防止する」とは,生海苔や異物が回
転板とともに回転することを止めることを意味していると主張するところ,
かかる被告の主張は,「共回り」が,生海苔等が回転板に貼りついて,回
転板と同速度で回転することを意味するとの解釈を前提に,生海苔等がそ
のように回転板に貼りつくのを防止したり,あるいは回転板に貼りついた
生海苔等を除去したりする手段が「共回りを防止する防止手段」に当たる
という趣旨と解される。
しかし,「共回り」の意義を上記のように限定する被告の主張を採用す
ることができないことは,前記(1)のとおりであるから,それを前提とした
被告の「共回りを防止する防止手段」に関する主張も採用することはでき
ない。
また,被告は,「共回り」を防止するものが共回りの防止であって,目
詰まりの防止の働きさえすれば「共回りを防止する」に該当するという原
告の主張は誤っているとも主張する。
しかし,前記(1)アのとおり,クリアランスに目詰まり(閉塞)が発生し,
分離除去装置の槽内において生海苔等が回転板の回転に伴って回転してい
るだけでクリアランスに吸い込まれていかない現象が「共回り」に含まれ
る以上,そのような場合に,クリアランスの目詰まりを防止又は解消する
ことによって,実際に生海苔等がクリアランスに吸い込まれない現象を防
ぐことができるのであれば,そのことをもって「共回りを防止する」とい
うことには何ら支障がないというべきである。
加えて,前記1(2)のとおり,本件発明の意義が,厚みの不均等な生海苔
等によって,クリアランスの目詰まりが発生する状況が発生し,回転板の
停止又は作業の停止を招き,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いて
しまうという課題に対して,共回りを防止する防止手段を設けることによ
り,効率的・連続的な異物分離を図ろうとした点にあることに照らしても,
目詰まりを防止・解消して共回りを防止することのできる手段は,まさに
「共回りを防止する防止手段」に当たるということができる。
(3)「共回りを防止する防止手段」の該当性
ア被告装置の本件プレート板は,前記第2,2(5)エ(被告装置の構成β)
のとおり,その形状が厚さ約1ミリメートル,縦約18ミリメートル,横
約20ミリメートルの「板状」であり,本件回転板の上面外周縁に取り付
けられた環状板3aの表面よりも出っ張るような状態を呈しており,本件
回転板を上から見たときに,その一部が,本件回転板の外周から突出し,
隙間Cを超えるように設けられているものである。
そして,証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,被告装置において,ク
リアランスから生海苔混合液が吸引されないとき,混合液中の生海苔は,
クリアランスに吸い込まれず,槽内で,本件回転板の回転に伴って,周方
向の回転を維持した状態を続けること,被告装置の稼働中には,生海苔等
が本件回転板と選別ケーシングとの間のクリアランスに目詰まりを起こす
ことがあること,被告装置に取り付けられた本件プレート板には,そのク
リアランスに生海苔等が目詰まりすることを防止する働きがあることが,
それぞれ認められる。
そうすると,本件プレート板は,本件発明における「共回りを防止する
防止手段」に該当するということができる。
イこの点に関し,被告は,本件プレート板が,その回転移動により,不通
過の生海苔や異物を切ることなどで目詰まりを回避するなどの働きを有す
ることを認めつつも,本件プレート板は本件回転板に付いているため,固
定側に貼りついた生海苔等の対処しかできず,「共回り」をしている生海
苔等には働きようがないと主張する。
しかし,「共回り」が,生海苔等が回転板に貼りついて,回転板と同速
度で回転している状態を指すとの被告の主張が採用できないことは前記
(1)のとおりであるから,上記のような「共回り」に関する独自の解釈に基
づいて,本件プレート板が「共回りを防止する防止手段」に当たらないと
する被告の主張は,その前提において誤りであって採用することができな
い。
また,被告は,仮に生海苔等が回転板に貼りつかずに,回転板と一緒に
回転しているような場合を「共回り」に含むとしても,混合液中の生海苔
が回転板等に貼りつかないとすれば,それは問題のある状況ではないし,
また,回転板等から離れている以上,本件プレート板がそれに対して作用
することはないとも主張する。
しかし,本件プレート板が,混合液中で回転している生海苔等に直接作
用することがないとしても,クリアランスに目詰まりが発生し,槽内にお
いて生海苔等が回転板に伴って回転するだけでクリアランスに吸い込まれ
ない現象(「共回り」の一種)が発生している場合に,本件プレート板が
クリアランスの目詰まりを解消することでこのような共回りを防止するこ
とができるのであれば,それをもって,本件プレート板は「共回りを防止
する防止手段」に当たるということができるから,被告の上記主張は採用
することができない。
ウこの他,被告は,本件特許の請求項1及び2では,固定側,すなわち「選
別ケーシングの円周端面」(請求項1)ないし「生海苔混合液槽の内底面」
(請求項2)に,突起物(共回りを防止する防止手段)を設けることとさ
れていること,本件明細書等の段落【0031】及び【0032】で,本
件特許の請求項3及び4が,あたかも請求項1の従属項のように説明され
ていること,請求項3及び4では,突起物が,「回転板及び/又は選別ケ
ーシングの円周面に」(請求項3)ないし「選別ケーシングと回転板で形
成されるクリアランスに」(請求項4)と,不明確な記載になっているこ
となどを挙げて,本件発明3及び4においても,本来的には,「共回りを
防止する防止手段」を固定側と回転板の両側に付けるか,又は固定側に付
けることを意味していると解釈すべきであると主張する。
しかし,被告が指摘する段落【0031】及び【0032】には,請求
項3の発明(本件発明3)及び請求項4の発明(本件発明4)が,請求項
1と同じ目的を達成できるものであることが記載されているだけで,請求
項1の従属項であることをうかがわせる記載は存在しないし,そもそも本
件特許の特許請求の範囲の記載の文言からすれば,請求項3及び請求項4
が請求項1の従属項でないことは明らかである。
また,請求項3の「突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面
に設ける構成」(構成要件B2),請求項4の「突起物を選別ケーシング
と回転板で形成されるクリアランスに設ける構成」(構成要件B’2)と
の記載が不明確であるとはいえない。
したがって,本件発明3及び4においても,本来的には「共回りを防止
する防止手段」を固定側と回転板の両側に付けるか,又は固定側に付ける
ことを意味していると解釈すべきであるとの被告の上記主張は,特許請求
の範囲の記載に基づかない主張にすぎず,到底採用することはできない。
(4)小括
以上によれば,本件プレート板は,本件発明における「共回りを防止する
防止手段」に当たるから,本件プレート板を構成部品とする被告装置は,構
成要件A3を充足する。
3争点(1)イ(構成要件Bの充足性)について
(1)本件プレート板が,本件発明における「共回りを防止する防止手段」に該
当することは,上記2のとおりである。そして,前記第2,2(5)エ(被告装
置の構成β)のとおり,本件プレート板は,その形状が,厚さ約1ミリメー
トル,縦約18ミリメートル,横約20ミリメートルの「板状」であり,本
件回転板の表面外周端に取り付けられていて,本件回転板の上面外周縁に取
り付けられた環状板3aの表面よりも出っ張るような状態を呈していること
が認められるから,本件プレート板を取り付けた被告装置は,「前記防止手
段を」「突起・板体の突起物とし」て,「回転板・・・の円周面に設ける構
成とした」ものであるということができる。
なお,被告は損害額の算定に当たり参酌されるべき事情として,請求項3
の構成要件B2によれば,突起物等は「円周面」に付けるとされているが,
被告装置における本件プレート板は,本件回転板の上面に付けるのであって,
側面の円周面に付けるものではないから,被告装置における本件プレート板
は上記要件に合致していないと主張する。
しかし,弁論の全趣旨によれば,被告装置における本件プレート板は,本
件回転板の上面外周縁に設けられた環状板3aの上面端部に,ネジで固定さ
れており,その先端が本件回転板の外周縁から突出して設けられていること
が認められるところ,本件プレート板のうち本件回転板の外周縁から突出し
た部分(爪部)は,構成要件B1の「板体の突起物」に該当すると解され,
その爪部は,本件回転板に固定されてそれと一体となっている本件プレート
板の基部(本件プレート板から爪部を除いた部分)に接合しているのである
から,本件プレート板が本件回転板に取り付けられている構成は,本件回転
板の円周面及びその円周面に沿う本件プレート板の基部の断面からなる,「回
転板」の「円周面」に,本件プレート板の爪部である「突起物」が設けられ
ている構成(構成要件B2)ということができる。
(2)被告は,構成要件Bの充足性に関し,そもそも,本件プレート板が「共回
り防止」の手段や装置に当たらないから,構成要件Bを充足しないと主張す
る。
しかし,本件プレート板が「共回りを防止する防止手段」に当たることは,
前記2で認定したとおりであるから,被告の主張は,その前提を欠き,採用
することができない。
(3)また,被告は,仮に本件プレート板が「共回りを防止する防止手段」に当
たるとしても,本件特許は,既に存在していた生海苔除去装置に付加して働
くべきものとして「共回り防止装置」をクレームしているのであるから,被
告装置に後に付加された本件プレート板のみが「共回り防止装置」に当たる
と主張する。
しかし,本件発明は,「共回り防止装置」に関する発明であって,その特
許請求の範囲の記載においては,「共回りを防止する防止手段」の語を「共
回り防止装置」の語とは別に用いており,「共回りを防止する防止手段」が
「突起・板体の突起物」のみを指す(構成要件B1)のに対して,「共回り
防止装置」は,上記「共回りを防止する防止手段」を含み,さらに「この突
起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とし」(構成
要件B2),又は「この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリ
アランスに設ける構成とした」(構成要件B’2)「装置」を意味すること
は文言上明らかである。
そして,本件発明における「共回り防止」においては,単に突起物だけで
その目的が達成されるわけではなく,むしろ,回転板や選別ケーシング及び
それらによって形成されるクリアランスとの関係で,当該突起物の設置箇所
や設置態様が重要になることに鑑みれば,生海苔異物分離除去装置である被
告装置においては,回転板や選別ケーシング(それらによって形成されるク
リアランスを含む。)及び突起物(共回りを防止する防止手段)全体の構成
及び配置が,本件発明における「共回り防止装置」に該当すると解するのが
相当である。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
4争点(1)ウ(構成要件B’の充足性)について
(1)構成要件B’2は,「この突起物を選別ケーシングと回転板で形成される
クリアランスに設ける構成とした」というものであるところ,被告装置にお
いては,前記第2,2(5)エ記載の被告構成β2のとおり,「突起物」に該当
する本件プレート板は,「その一部(爪部)が,本件回転板の外周から突出
して隙間Cを超えるように設けられている」ものの,その一部又は全部がク
リアランスの中に存するものではないから,それが「クリアランスに設け」
られているとはいえない。
(2)この点に関して原告は,構成要件B’2は「クリアランスに設ける」と規
定しており,「クリアランス『内部』に設ける」とは規定しておらず,本件
明細書等の【図7】においても,防止手段6がクリアランス内部から一部突
出させた状態で付されているのであるから,「クリアランスに設ける」とは,
「クリアランス『内部』に設ける」という意味ではなく,クリアランス開口
部を超える(覆う)ように設ける場合も含む概念であるとして,本件プレー
ト板が隙間Cの開口部を覆っている点で,「クリアランスに設ける構成」に
該当すると主張する。
しかし,構成要件B’2は,クリアランスが「選別ケーシングと回転板で
形成される」と規定しているのであるから,クリアランスとは,選別ケーシ
ングと回転板に挟まれた部分をいうものと解され,したがって,その文言上,
突起物が,選別ケーシングと回転板との隙間C(クリアランス)の部分では
なく,隙間Cの外で,その隙間Cを覆うように設けられている場合にまで,
「クリアランスに設ける構成」に当たるということはできない。
確かに,本件明細書等の【図7】の実施例においては,防止手段6が,ク
リアランスの内部から一部突出した状態で付されていることが認められるが,
その防止手段6の大部分は,クリアランス内部に存在し,段落【0026】
には,「図7の例は,・・・このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の
突起物の防止手段6を設ける」と記載されているのであるから,【図7】は,
防止手段を「クリアランスの内部に設ける」ことの例として記載されている
ものと解される。したがって,これらの記載が,本件発明4の防止手段を,
クリアランス内部には全く入れることなく,クリアランスの上部を覆うよう
に設ける構成までも開示しているものとはいえない。
また,原告は,本件明細書等の段落【0011】,【0020】及び【0
032】を挙げて,防止手段を「クリアランスに設ける」ことは,生海苔の
動きを矯正し,効率的にクリアランスへ導く作用を行う場所を特定するとい
う技術的意義を有するが,防止手段がクリアランス内部に完全に収まってし
まうと,むしろ,生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスへ導くとい
う作用を発揮しにくくなるなどと主張する。
しかし,原告が指摘する各段落の記載によっても,防止手段をクリアラン
ス内部に入れることなく,クリアランスの上部を覆うように設ける構成が開
示されているとは認められず,また,仮に,防止手段をクリアランスの内部
に設けることによって,本件発明4の作用効果が発揮しにくくなることがあ
るとしても,それを理由に,特許請求の範囲の文言を拡大して解釈すること
が許されることにはならない。
そして,以上のほかに,クリアランスの開口部を超える(覆う)ように突
起物を設けた構成が「突起物を・・・クリアランスに設ける構成」に含まれ
ると解すべき根拠は,本件明細書等の記載の中に見いだすことができない。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
(3)以上によれば,被告装置の構成β2は,構成要件B’2を充足するとは認
められない。
5被告装置に関するまとめ
前記2及び3によれば,被告装置は,本件発明3の各構成要件を充足するか
ら,本件発明3の技術的範囲に属するものと認められるが,前記4のとおり,
被告装置は,本件発明4の構成要件B’2を充足しないから,本件発明4の技
術的範囲に属するものとは認められない。
したがって,被告装置を製造・販売等する行為は,本件発明3に係る原告の
特許権を侵害することになる。
この点に関し,被告は,生海苔異物分離除去装置は,従前から被告が製造・
販売している製品であるから,侵害品となるのは,生海苔異物分離除去装置で
ある被告装置に付加された本件プレート板のみであると主張する。
しかし,被告装置が本件特許権を侵害するか否かは,被告装置が本件特許の
請求項に記載された構成を有するか否かによって決せられるのであるから,上
記のとおり,被告装置の構成が本件発明3の各構成要件を充足する以上,仮に,
被告装置の構成の中で,本件発明3の作用効果を果たす部分がその一部である
としても,被告装置が本件発明3に係る原告の特許権を侵害する物に当たると
いう事実が否定されるものではないから,被告の上記主張は採用することがで
きない。
6争点(2)(本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為が本件特許
権の間接侵害(特許法101条1号)に当たるか否か)について
(1)前記3(3)のとおり,本件発明3に係る「共回り防止装置」は,突起・板体
の突起物(共回りを防止する防止手段)のほかに,回転板及び選別ケーシン
グ(それらによって形成されるクリアランスを含む。)によって構成される
ものであるから,本件回転板及び本件プレート板は,それ自体では「共回り
防止装置」に当たらず,本件発明3の構成要件を充足しない。
しかし,前記2(3)のとおり,本件プレート板は,本件発明3の「共回りを
防止する防止手段」に該当するから,「共回り防止装置」の専用部品と認め
られる。また,前記3(3)のとおり,本件発明において,回転板は「共回り防
止装置」の必須の構成部品であると認められるところ,被告装置においても,
クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐためには,本件回転
板が本件プレート板とともにその必須の構成部品であると認められるから,
本件回転板において,本件発明を実施しない機能のみを使用し続けながら,
当該発明を実施する機能は全く使用しないという使用形態が,当該製品の経
済的,商業的又は実用的な使用形態と認めることはできない。
そうすると,本件回転板及び本件プレート板はいずれも,本件発明3の技
術的範囲に属する被告装置の生産にのみ用いられる物であると認めるのが相
当である。
したがって,本件回転板及び本件プレート板を製造・販売等する行為は,
原告の本件発明3に係る特許権を侵害するものとみなされる(特許法101
条1号)。
(2)この点に関し,被告は,仮に侵害が認められるとしても,「共回り防止装
置」に当たるのは本件プレート板であるから,本件回転板は侵害品に当たら
ないと主張し,本件回転板及び本件プレート板について間接侵害が成立する
ことを争うが,「共回り防止装置」に当たるのが本件プレート板であるとの
被告の主張が採用できないことは,前記3(3)のとおりである。
7争点(3)(被告の過失の有無)について
特許法103条により,被告には過失が推定される。
これに対し,被告は,原告が,被告の消滅時効の援用に対する反論として,
本件特許の訂正審決を受けるまでは,特許権侵害との判断をなし得ず,権利行
使ができなかったと主張することを捉えて,かかる原告の主張を前提とするな
らば,むしろ,被告が無過失とされるべきであると主張する。
しかし,証拠(略)によれば,原告が言及する訂正審判請求(訂正2010
-390006)において,訂正がされた箇所は,本件特許の特許請求の範囲
の請求項5及び本件明細書等の段落【0014】及び【0033】並びに【図
7】及び【図8】の単純な誤記や明瞭でない記載に関するもののみであると認
められるから,これらの訂正がなされなければ,本件発明3に係る構成要件該
当性の判断ができなかったとはいえない。
また,被告は,被告装置が原告の特許権を侵害するものではないと考えてお
り,侵害と判断されることは全く理解できないことであるとして,過失がない
と主張するが,そのような事情は,被告の無過失を基礎付けるに足りるものと
はいえない。
したがって,過失がないとの被告の上記主張は採用することができない。
8争点(4)(原告の損害額)について
(1)被告装置の販売利益
ア主位的主張について
原告は,平成19年6月8日以降の被告装置の売上高について,主位的
に,被告装置の平均仕切価格を250万円,年間販売台数を50台程度と
推定した上,5年間の売上高を6億2500万円と主張し,さらに,この
売上げに対する利益率を40パーセントとして,被告の利益額が2億50
00万円であると主張する。
しかし,平均仕切価格,年間販売台数及び利益率についての原告の上記
主張は,いずれも推測にすぎず,それらの事実を認めるに足りる証拠はな
い。よって,原告の主位的主張は採用することができない。
イ予備的主張1について
原告は,予備的主張1として,被告装置の売上高を5億0566万42
04円,その売上高に対する利益率を40パーセントとして,被告の利益
額が2億0226万5681円であると主張する。
しかし,原告が主張する上記利益率も単なる推測にすぎず,これを認め
るに足りる証拠はない。よって,これを前提とする原告の予備的主張1も
採用することができない。
ウ予備的主張2について
原告は,予備的主張2として,被告の主張に係る別紙売上等一覧表の表
1及び表3記載の被告装置の型名ごとの平成19年6月8日以降の販売台
数,仕切価格及び粗利益額(粗利益率)を援用した上,被告装置のうち型
名「CF-36」,「CFW-37」,「CFW-37S」,「CFWT
-37」,「CFT-38」,「CFT-38B」,「CW-64S」及
び「CW-96」の8機種に限定して,その製造・販売に基づく損害を主
張する。
そこで,これら8機種の販売台数,仕切価格(販売価格)及び粗利益額
(仕切価格から原価を差し引いた額)については,別紙売上等一覧表の表
1及び表3のとおりであることにつき当事者間に争いのないことになる。
そうすると,その内容は,それぞれ次のとおりと認められる。
型名台数仕切価格粗利益額
CF-3621,430,000円524,859円
CFW-37111,946,609円510,231円
CFW-37S791,595,676円339,252円
CFWT-37143,428,071円472,159円
CFT-38242,492,980円417,043円
CFT-38B182,473,171円436,477円
CW-64S232,457,870円531,240円
CW-96402,759,250円187,535円
エ変動費について
(ア)特許法102条2項の侵害者が受ける「利益」とは,売上高から,侵
害品の製造又は販売に直接必要であって,その数量の増減に応じて変動
する経費を控除したものと解するのが相当である。
本件において,被告は,粗利益額(売上高から原価を差し引いたもの)
からさらに控除されるべき変動費として,別紙1及び2記載の販売管理
費(運搬費,広告宣伝費,賃借料,旅費,通信費,交際接待費,会議費,
販売促進費),時間外人件費及び手形割引料の各経費を主張するのに対
し,原告は,別紙1及び2記載の各費目の金額については争わないが,
これらの各費目が控除されるべき変動費に当たること及び各費目中の変
動費の按分割合については争うとする。
(イ)そこで検討するに,被告は,「原藻異物除去洗浄機」又は「原藻異物
除去洗浄システム」などを製造・販売している会社であるところ(前記
第2,2(1)イ),証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,被告には,自
社品事業部,第一事業部及び第二事業部の各事業部があり,それらの事
業部は個別に損益計算を行っていること,被告は,自社品事業部におい
て被告装置(生海苔異物分離除去装置)を製造・販売していること,平
成18年10月ないし平成23年9月(55期ないし59期)の各年度
における,被告の自社品事業部の売上げは,約2億0726万円から約
3億7357万円であったこと,各年度において,自社品事業部の売上
高の中で生海苔異物分離除去装置の売上高が占める割合は,およそ16
パーセントないし62パーセントであったこと,被告は,同装置の製造・
販売のほかにも,同装置に関連する整備点検やメンテナンス部品の販売
等の事業を行っており,これらの生海苔異物分離除去装置関連の事業は,
被告の自社品事業部の主力事業であったこと,がそれぞれ認められる。
このような被告の自社品事業部の事業規模,その中での生海苔異物分
離除去装置関連事業の位置づけ及び同装置の売上高の割合などを考慮す
ると,被告が主張する各費目のうち,時間外人件費,運搬費,広告宣伝
費,賃借料(レンタカー費用と倉庫費用に限る。),旅費及び通信費(携
帯電話代に限る。)については,その相応の割合が被告装置の製造又は
販売に直接必要となる経費であったと認めるのが相当である。
このほか,被告は,交際接待費,会議費及び販売促進費の各販売管理
費も変動費として控除すべきと主張するが,弁論の全趣旨によれば,交
際接待費は主に歳暮,中元及び協賛金に,会議費は主に顧客との食事に,
販売促進費は主に販促グッズや手土産に,それぞれ充てられたものと認
められるから,これらを被告装置の製造販売に直接に必要な経費であっ
たと認めることは相当でない。また,被告は,手形割引料も変動費とし
て控除すべきと主張するが,手形割引料は営業外費用であって,営業活
動との繋がりは希薄であるから,これを変動費として控除することも相
当でない。
(ウ)そして,平成18年10月ないし平成23年9月(55期ないし59
期)の各年度について,被告の自社品事業部における時間外人件費,運
搬費,広告宣伝費,賃借料,旅費及び通信費の各費目の金額が,別紙1
及び2記載の金額であることは,上記(ア)のとおり,当事者間に争いがな
い。そこで,それらのうち,被告装置の製造又は販売に直接必要となる
経費の割合を検討するに,それは以下のとおりである。
まず,運搬費に関しては,そのうち製品運送費の部分を,被告装置の
売上比率と異物除去機関係以外の製品の売上比率を基準に按分して,被
告装置の運送費に当たる按分額を算出し,一方,運搬費から製品運送費
を除いた残部については,自社品事業部の売上高に占める被告装置の売
上高の比率を乗じて按分額を算出するのが相当である。
また,その他の広告宣伝費,賃借料(レンタカー費用と倉庫費用),
旅費,通信費(携帯電話代)及び時間外人件費に関しても,それぞれ,
自社品事業部の売上高に占める被告装置の売上高の比率を乗じて按分額
を算出するのが相当である。
そこで,上記の各金額を粗利益額から控除すべき変動費とすると,各
年度の各変動費の額は,それぞれ別紙変動費一覧表〈略〉記載のとおり
となる。
そうすると,別紙変動費一覧表のとおり,55期から59期までを通
じた被告装置の売上高に占める,原価以外の変動費合計額の割合は,8.
4パーセントとなるから,被告装置の販売によって被告が受けた利益の
額を算出するに当たっては,その販売価格から,原価のほかに,販売価
格の8.4パーセントに当たる変動費を控除することが相当である。
(エ)この点に関し,原告は,各費目のうち変動費に当たる額を算出するに
当たり,被告の自社品事業部の売上高に占める被告装置の売上高の割合
を基準とする按分割合を争うと主張する。
しかし,原告は,上記按分割合に代わる合理的な按分方法を何ら主張
していないのであって,上記の被告の自社品事業部における被告装置の
売上高の割合やその関連事業の位置づけを考慮すれば,上記のような売
上高を基準とした按分によって,各費目の中での被告装置の製造・販売
に要した額を算出することは不合理とはいえない。
また,原告は,変動費の控除に関して,被告が被告装置のメンテナン
スによって売上げを得ており,その売上高は,被告装置に係る変動費の
額を上回っているから,変動費を控除する必要はないと主張する。
しかし,仮に被告が製品のメンテナンスによって売上げを得ていたと
しても,それは,メンテナンスというサービスの対価であって,被告装
置の製造・販売そのものの対価ではなく,また,通常のメンテナンスを
行うこと自体は特許発明の「実施」に該当するものではないから,仮に
被告がメンテナンスによる売上げを得ており,それが上記変動費の額を
上回っていたとしても,それを理由に製造・販売に要する変動費を控除
する必要がないとはいえない。
よって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。
オ型名ごとの販売利益の額
上記ウ記載の被告装置の型名ごとの仕切価格(販売価格)に,上記エで
認定した原価以外の変動費の割合を乗じて,型名ごとの変動費額(販売価
格の8.4パーセント)を計算した上,同変動費額を粗利益額から控除し
て,型名ごとの1台当たりの販売利益の額を計算すると,次のとおりとな
る。
型名仕切価格粗利益額変動費額利益額
CF-361,430,000円524,859円120,120円404,739円
CFW-371,946,609円510,231円163,515円346,716円
CFW-37S1,595,676円339,252円134,036円205,216円
CFWT-373,428,071円472,159円287,957円184,202円
CFT-382,492,980円417,043円209,410円207,633円
CFT-38B2,473,171円436,477円207,746円228,731円
CW-64S2,457,870円531,240円206,461円324,779円
CW-962,759,250円187,535円231,777円-44,242円
カ被告装置の販売利益の額
上記オの8機種の被告装置のうち型名「CW-96」については,利益
額がマイナスになるところ,原告の予備的主張2(前記第3,6〔原告の
主張〕(2)ウ)は,利益額がマイナスになる製品については請求から除外す
る趣旨と解されることから,同機種を除いた7機種について,型名ごとの
1台当たりの利益額に,上記ウ記載の販売台数を乗じて,被告装置の販売
利益の額を計算すると,その合計額は,次のとおり,3998万4513
円となる。
型名1台当たりの利益額台数利益額計
CF-36404,739円2809,478円
CFW-37346,716円113,813,876円
CFW-37S205,216円7916,212,064円
CFWT-37184,202円142,578,828円
CFT-38207,633円244,983,192円
CFT-38B228,731円184,117,158円
CW-64S324,779円237,469,917円
(合計39,984,513円)
(2)本件回転板の販売利益
ア主位的主張について
原告は,本件回転板の卸売価格を7万円,販売数量を3750枚と推定
して,平成19年6月8日以降の5年間の本件回転板の売上高は2億62
50万円であると主張する。
しかし,卸売単価及び販売数量についての原告の上記主張は,いずれも
単なる推測にすぎず,それらの事実を認めるに足りる証拠はない。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
イ予備的主張について
被告は,本件回転板の売上実績等に関して,別紙売上等一覧表の表2及
び別紙1の表1のとおり,アルミ製回転板とステンレス製回転板とに区別
して,それぞれ販売数量,販売価格,粗利益率及び粗利益額を主張してい
るところ,原告は,予備的主張として,これらの被告の主張を援用するの
で,少なくともこの限りでは,当事者間に争いがないことになる。
そうすると,本件回転板の売上高は,次のとおり,別紙1の表1の「合
計数量」欄記載の販売数量に同「出荷単価」欄記載の販売価格を乗じて,
アルミ製回転板につき1344万円,ステンレス製回転板につき2612
万4000円,合計で3956万4000円と認められる。
192枚×70,000円=13,440,000円
311枚×84,000円=26,124,000円
そして,本件回転板の粗利益率は,別紙1の表1の「粗利益率」欄記載
のとおり40パーセントであるから,上記売上高のうち粗利益の額は,次
のとおり,アルミ製回転板につき537万6000円,ステンレス製回転
板につき1044万9600円,合計で1582万5600円となる。
13,440,000円×40%=5,376,000円
26,124,000円×40%=10,449,600円
ウ変動費について
本件回転板の販売利益の算定において,粗利益額からさらに控除すべき
変動費の額については,被告装置に係る原価以外の変動費の割合がその販
売価格の8.4パーセントであることを前提として,前記(1)エ(イ)及び(ウ)
の各事情に弁論の全趣旨を総合すれば,本件回転板の販売価格の8.4パ
ーセントを上回ることはないと認められる。
エ販売利益の額
上記イの粗利益額から上記ウの変動費を控除すると,本件回転板の販売
利益の額は,次のとおり,アルミ製回転板につき424万7040円,ス
テンレス製回転板につき825万5184円,合計で1250万2224
円となる。
5,376,000円-(13,440,000円×8.4%)=4,247,040円
10,449,600円-(26,124,000円×8.4%)=8,255,184円
(3)本件プレート板の販売利益
ア主位的主張について
原告は,本件プレート板の卸売価格を380円,販売数量を1万500
0枚と推定して,平成19年6月8日以降の5年間の売上高は2億625
0万円であると主張する。
しかし,卸売価格及び販売数量についての原告の上記主張は,いずれも
単なる推測にすぎず,それらの事実を認めるに足りる証拠はない。
よって,原告の上記主張は採用することができない。
イ予備的主張について
被告は,本件プレート板の売上実績等に関して,別紙売上等一覧表の表
2及び別紙1の表1のとおり,販売数量,販売価格,粗利益率及び粗利益
額を主張するところ,原告は,予備的主張として,これらの被告の主張を
援用するので,少なくともこの限りでは,当事者間に争いがないことにな
る。
そうすると,本件プレート板の売上高は,次のとおり,別紙1の表1の
「合計数量」欄記載の販売数量721枚に同「出荷単価」欄記載の販売価
格350円を乗じて,25万2350円と認められる。
721枚×350円=252,350円
そして,本件プレート板の粗利益率は,別紙1の表1の「粗利益率」欄
記載のとおり50パーセントであるから,上記売上高のうち粗利益の額は,
次のとおり,12万6175円となる。
252,350円×50%=126,175円
ウ変動費について
本件プレート板の販売利益の算定において,粗利益額からさらに控除す
べき変動費の額については,被告装置に係る原価以外の変動費の割合が販
売価格の8.4パーセントであることを前提として,前記(1)エ(イ)及び(ウ)
の各事情に弁論の全趣旨を総合すれば,本件プレート板の販売価格の8.
4パーセントを上回ることはないと認められる。
エ販売利益の額
上記イの粗利益額から上記ウの変動費を控除すると,本件プレート板の
販売利益の額は,次のとおり,10万4978円となる。
126,175円-(252,350円×8.4%)=104,978円
(4)寄与度
ア前記1(2)のとおり,本件発明は,混合液タンクの環状枠板部と回転板と
の間に設けられたわずかなクリアランスを利用して,生海苔混合液から異
物を分離除去する生海苔異物分離除去装置において,クリアランスに目詰
まりが発生して,異物分離作業の能率低下等を招いてしまうことがあった
ことから,回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に(本件発明3),
又は,上記クリアランスに(本件発明4),突起物を設けることにより,
クリアランスの目詰まりをなくして,効率的・連続的な異物分離を図ろう
とした発明であると認められるから,クリアランスを利用する生海苔異物
分離除去装置自体は,本件発明以前から公知の技術であって,本件発明の
技術的意義は,その既成の装置に,クリアランスの目詰まり防止用の突起
物を付した点にあるといえる。
イ本件プレート板は,前記第2,2(5)イ及びエのとおり,厚さ約1ミリメ
ートル,縦約18ミリメートル,横約20ミリメートルの板状のものであ
り,回転板の表面外周端に,ネジで取り付けられ,容易に着脱可能となっ
ている。また,弁論の全趣旨によれば,本件プレート板は,定価が500
円であり,実際の販売価格は350円程度にすぎない。
一方,前記(1)ウ及び(2)イのとおり,被告装置(8機種)は,その販売
価格が最低でも143万円,最高では342万円を超えるものであり,ま
た,本件回転板についても,その販売価格は7万円ないし8万4000円
である。
ウ前記2(3)アのとおり,被告装置に取り付けられた本件プレート板は,実
際に,回転板と選別ケーシングとの間のクリアランスに生海苔や異物が目
詰まりすることを防止する働きがあることが認められる。また,前記第2,
2(5)ア及びイのとおり,被告自身も,被告装置1については,発売当初は
本件プレート板を付していなかったが,その後本件プレート板を付ける仕
様に変更し,被告装置2については,発売当初から本件プレート板を取り
付ける構成とした。そして,別紙売上等一覧表の表1ないし表3によれば,
平成19年6月8日から現在までに,本件プレート板を構成部品とする被
告装置は,少なくとも223台が販売され,その売上高は50億円を超え,
本件プレート板を構成部品とする本件回転板も,消耗部品として,少なく
とも503枚が販売され,その売上高は3956万円以上であり,さらに,
本件プレート板自体も,少なくとも721枚が販売され,その売上高は2
5万円に上ることが認められる。
エもっとも,上記アのとおり,本件プレート板を付けない生海苔異物分離
除去装置は既知の装置であり,生海苔異物を分離除去する機能自体は,従
来の生海苔異物分離除去装置に備わるものであった。そして,証拠(略)
によれば,本件プレート板を取り付けない装置であっても,生海苔異物の
分離除去の機能を果たすこと,本件プレート板は,常時取り付けたままに
している生海苔生産者もいるが,必ずしも常時用いなければならないとい
うわけではなく,例年5ないし6か月間の海苔生産シーズンのうち,海苔
が良質で柔らかいときはその必要性が低いが,海苔が厚く,硬くなる「ハ
タキ」と呼ばれる時期(計2週間ないし1か月程度)には,その必要性が
高まることが,それぞれ認められる。
オ上記アないしエの諸事情を総合すると,被告装置全体における本件発明
3の寄与度は,20パーセントと認めるのが相当であり,また,本件回転
板における本件発明3の寄与度は,50パーセントと認めるのが相当であ
る。本件プレート板は,本件発明の技術的意義を果たす「共回りを防止す
る防止手段」そのものであるから,その寄与度は100パーセントと認め
られる。
カこの点に関し,原告は,本件プレート板の有用性を強調し,生海苔異物
分離除去装置には,本件発明の「共回り防止装置」がなければ実質的に機
能せず,製品として販売できないなどとして,被告装置及び本件回転板に
おける本件発明の寄与度を100パーセントと主張する。
確かに,本件発明の「共回り防止装置」が有用であることは上記ウのと
おりであり,これが被告装置の販売に一定程度寄与していることが認めら
れるものの,他方で,本件発明の出願日以前にも,本件発明に係る「共回
り防止装置」を有しない生海苔異物分離除去装置が販売されていたことは
明らかであり,また,現在市場で流通している生海苔異物分離除去装置の
全てに本件発明が実施されていると認めるに足りる証拠はない。そのほか
上記アないしエの諸事情も考慮すれば,本件発明の寄与度が100パーセ
ントであるとの原告の主張は採用することができない。
一方,被告は,本件プレート板の有用性の低さを強調して,被告装置及
び本件回転板における本件発明の寄与度が10パーセントを超えないと主
張するが,被告自身も本件プレート板に一定の有用性があることは否定し
ておらず,上記アないしエの各事情に照らすと,寄与度が10パーセント
を超えないという被告の主張は採用することができない。
(5)特許法102条2項の被告が受けた利益の額
ア被告装置
被告装置に係る侵害行為により被告が受けた利益の額は,前記(1)カの被
告装置の販売利益の額3998万4513円に,前記(4)オで認定した寄与
度20パーセントを乗じて,799万6902円となる。
イ本件回転板
本件回転板に係る侵害行為により被告が受けた利益の額は,前記(2)エの
本件回転板の販売利益の額1250万2224円に,前記(4)オで認定した
寄与度50パーセントを乗じて,625万1112円となる。
ウ本件プレート板
本件プレート板に係る侵害行為により被告が受けた利益の額は,前記(3)
エの本件プレート板の販売利益の額と同額であり(寄与度100パーセン
ト),10万4978円となる。
エ合計
上記アないしウによれば,特許法102条2項の被告が受けた利益の額
(原告の損害額と推定される額)は,計1435万2992円となる。
(6)被告の主張について
ア被告装置についての特許法102条2項による推定の可否
被告は,特許法102条2項による損害額の推定について,生海苔異物
分離除去機の市場における原告のシェアが低いことを根拠として,同条項
による推定が覆されていると主張する。
しかしながら,同条項は原告の損害額の推定規定であるから,これを覆
滅するためには,実際の原告の逸失利益の額が上記推定額より低額である
ことを立証しなければならないが,被告は単に原告のシェアが低いと主張
するのみで,原告の逸失利益の額について何ら具体的に主張立証していな
い。また,生海苔異物分離除去装置の市場において,原告及び被告以外の
他の業者が製造販売する競合品の特徴,性能及び価格等,競合品が本件発
明又はその代替となる技術を実施しているか否か,原告のシェアが低く,
他の業者のシェアが高い理由並びに原告の製造販売の能力など,原告の現
実の逸失利益の額が上記推定額よりも低額であることを基礎付けるべき具
体的な事情は,何ら明らかにされていない。
そうすると,被告が主張する事情だけでは,同法102条2項の推定の
全部又は一部を覆滅するに足りるものとは認められないから,被告の上記
主張は採用することができない。
イ本件回転板及び本件プレート板についての特許法102条2項の適用の
可否
被告は,原告が本件回転板及び本件プレート板の競合品を販売していな
いことを理由に,本件回転板及び本件プレート板については,特許法10
2条2項を適用することができないと主張する。
この点,前記6記載のとおり,被告が本件回転板及び本件プレート板を
製造・販売等する行為は,本件発明3に係る特許権に対する間接侵害(同
法101条1号)を構成するところ,間接侵害に当たる行為は,特許権侵
害とみなされるのであるから(同条柱書),これが同法102条2項の「侵
害」に該当することを否定すべき理由はなく,また,侵害行為による損害
額の立証が困難であることは,直接侵害の場合も間接侵害の場合も同様で
あることを考慮すれば,間接侵害にも,同法102条2項の適用があると
解するのが相当である。
そして,仮に原告が本件回転板及び本件プレート板そのものの競合品を
販売していない場合であっても,前記第2,2(6)記載のとおり,原告は,
被告装置の競合品であって,本件発明の実施品である製品を製造・販売し
ているのであるから,被告装置の生産にのみ用いられる本件回転板及び本
件プレート板を製造販売する行為が,本件特許を実施している原告の利益
を害することは明らかである。特に,本件では,本件回転板及び本件プレ
ート板は,被告装置の単なる一部品というにとどまらず,いずれも本件発
明に係る「共回り防止装置」を直接構成するものであるから,原告が製造・
販売する製品は,本件発明の実施に当たる部分に,本件回転板及び本件プ
レート板と同等の構成を備えているはずであり,したがって,実質的には,
原告の製品は,本件回転板及び本件プレート板と競合しているといえる。
そうすると,本件回転板及び本件プレート板について,特許法102条
2項の推定規定の適用が排除されると解すべきではなく,同条項の適用を
認めるのが相当である。
ウその他
(ア)被告は,本件特許には,極めて近い先行技術が存在しており,その点
でも,本件特許に意義があるとは認められないから,この点を,損害額
の算定において考慮すべきと主張する。
しかし,本件における損害額の算定においては,本件発明の意義及び
その技術の有用性の程度を踏まえ,その他の諸般の事情をも考慮して,
前記(4)のとおり,被告装置,本件回転板及び本件プレート板における本
件発明の寄与度を認定して,損害額算定の基礎としているのであるから,
被告の上記主張について,これを殊更別途考慮して,さらに損害額を減
額調整することが必要であるとは認められない。
(イ)また,被告は,被告装置が本件発明の構成要件に合致しないとして非
侵害を専ら主張してきており,また,それ以外にも,請求項3の,突起
物を「円周面」に付ける構成にも合致しないと主張し,それらの事情が,
賠償額の算定において斟酌されるべきと主張する。
しかし,被告装置が本件発明3の各構成要件を充足することは,前記
2,3及び5のとおりであるから,被告の主張はその前提を欠き,採用
することができない。
(ウ)さらに,被告は,仮に被告に過失が認められるとしても,その過失は
小さいから,特許法102条4項後段の趣旨により,賠償額が軽減され
るべきであると主張する。
しかし,前記(1)ないし(5)で認定した被告装置,本件回転板及び本件
プレート板の売上高及び販売利益の額,本件発明の寄与度並びに推定さ
れた原告の損害額などに照らせば,本件において,あえて同条項後段を
適用して,損害賠償額を減額するのが相当であるとは解されない。
(7)弁護士費用
本件事案の内容,事案の難易,訴訟の経緯及び認容額等の諸般の事情を考
慮すると,被告の不法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は,
145万円を相当と認める。
(8)損害賠償額の合計
以上によれば,被告が原告に対して賠償すべき損害の額は,合計1580
万2992円となる。
(なお,このように,認容額が2000万円を下回ることから,被告の消滅
時効の主張については,判断を要しない。)
9結論
以上のとおり,原告の請求は,被告装置,本件回転板及び本件プレート板の
製造・販売等の差止め及び廃棄,並びに1580万2992円及びこれに対す
る不法行為の後の日である平成22年6月8日から支払済みまで年5分の割合
による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
なお,主文第2項については,仮執行宣言を付すのが相当でないから,これを
付さないこととする。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官東海林保
裁判官田中孝一
裁判官足立拓人
物件目録1
下記の型名の「原藻異物除去洗浄機」又は「原藻異物除去洗浄システム」

型名「CF-36B」
型名「CFW-37S」
型名「CFWT-37」
型名「CFT-38」
型名「CFT-38B」
型名「CW-63」
型名「CW-63S」
型名「CW-64」
型名「CW-64S」
型名「CW-96」
物件目録2
下記の型名の「原藻異物除去洗浄機」
ただし,その回転板の構成が,物件目録3で示されるもの

型名「CFW-36」
型名「CFW-37」
型名「CF-36」
物件目録3
型名が「CFW-36」,「CFW-37」又は「CF-36」である「原
藻異物除去洗浄機」又は「原藻異物除去洗浄システム」において用いるための
ものであって,下記説明及び図面に示す「回転板」

第1図面の説明
1図1環状板を付した回転板の側面断面図
2図2環状板の平面図
3図3プレート板の平面図
第2回転板の構成
1回転板本体①は真円状であり,その上面外周縁には環状板(プレートリ
ング)②が,皿ネジ③で固定できるように形成されている。
なお,図1-(1)は「CFW-36」の,図1-(2)は「CFW-37」
及び「CF-36」の回転板であり,環状板の周縁断面形状などの細部に
相違があるが,基本的形状は同じである。
2環状板(プレートリング)②には,回転板本体①に固定するための皿ネ
ジ③を通すための貫通孔が12個開けられている。
また,プレート板を取り付けることができるように,2個のビス穴⑥,
⑦が開けられている。
3プレート板は,略長方形状であり,穴が2箇所開けられ,ネジによって
環状板(プレートリング)②の上面端部に取り付けることができる。
図面
【図1-(1)】
【図1-(2)】
【図2】【図3】
物件目録4
型名が「CF-36B」,「CFW-37S」,「CFWT-37」,「C
FT-38」,「CFT-38B」,「CW-63」,「CW-63S」,「C
W-64」,「CW-64S」又は「CW-96」である「原藻異物除去洗浄
機」又は「原藻異物除去洗浄システム」に用いるための「回転板」
物件目録5
型名が「CF-36」,「CF-36B」,「CFW-36」,「CFW-
37」,「CFW-37S」,「CFWT-37」,「CFT-38」,「C
FT-38B」,「CW-63」,「CW-63S」,「CW-64」,「C
W-64S」又は「CW-96」である「原藻異物除去洗浄機」又は「原藻異
物除去洗浄システム」に用いるための「プレート板」
物件説明書
第1図面の説明
図1正面図
図2右側面図(一部断面)
図3平面図
図4回転板,ケーシング等の位置関係を示す断面図
図5図4の状態から回転板を取り外した状態を示す断面図
図6回転板,環状固定板等の斜視図
図7図6のX-X′線断面拡大図
第2符号の説明
A…筒状混合液タンク
B…底板
C…隙間
1…原料供給管
11…原料入口
12…原料投入ポンプ
2…ケーシング
2a…環状固定板
3…回転板
3a…環状板
31…回転軸
32…回転軸モーター
4…板(プレート板)
5…排出口
51…吸引ポンプ
6…異物排出口
61…異物排出管
62…コック
第3原藻異物除去洗浄機の構成
1原藻異物除去洗浄機は,キャスター,フレイム(下台),フレイム上部
に設置された筒状混合液タンクA,制御盤などから構成される(図1~3
参照)。
2筒状混合液タンクAには,原料入口11から原料投入ポンプ12を介し
て原料供給管1から原料となる生海苔混合液(生海苔と海水とを適宜濃度
に調合したもの)が供給され,同混合液を貯留する。
3筒状混合液タンクAの底部を形成する底板Bには穴(「CFW-36」
では2個)があけられている。ケーシング2は上部部材と椀型の下部部材
に分けられ,両部材で挟むようにして底板Bに取り付けられている(図7
参照)。
底板B,及びケーシング2の穴の中心部には,回転軸31が垂直方向に
貫通して設置されている。
4環状固定板2aはケーシング2上部部材の内周側に延出してビス止めさ
れており,回転板3の外周縁との間で隙間Cを形成する。
5回転板3は,回転軸31に固定されている。この回転板3は真円状であ
り,その上面外周縁には環状板3aがビス止めされている(図6,7参照)。
回転板3と環状固定板2aは,隙間Cを介して配置されている。この隙
間Cは,海水とともに生海苔を通過させるが,(生海苔よりも大きい)異
物の通過を遮断する部分である。
6板4は,厚さ約1mmの長方形状(縦18mm,横約20mm)であり,
2個のネジで環状板3aの上面端部に隙間Cを超えるように突設固定され
ている(以下,その突出部分を「爪部」という。)(図6,7参照)。
7生海苔の排出口5は,ケーシング2の底面に設置されている(図4,5
参照)。
ケーシング2に溜まった生海苔混合液は,この排出口5を介して吸引ポ
ンプ51によって吸引排出され,次工程に送られる。
8異物排出口6は,筒状混合液タンクAの底部を形成する底板Bの一部に
あけられた開口であり,異物(及び隙間を通過できない生海苔)は,この
異物排出口6を介して異物排出管61から排出される。この異物排出管6
1はコック62によって開閉可能である。
【図1】【図2】
【図3】
【図4】【図5】
【図6】
【図7】
以上

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