弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成29年3月10日宣告
平成28年(わ)第196号
主文
被告人両名をそれぞれ懲役9年に処する。
被告人両名に対し,未決勾留日数中各180日を,それぞれその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人両名は,広島県呉市a町b番c号所在の被告人両名方において,長男である
A(平成27年6月8日生。以下「被害者」という。)と同居し,かつ,その親権
者として,被害者の生存に必要な保護を与えるべき責任を負うものであるが,平成
28年2月20日過ぎ頃には,被害者が衰弱してやせ細り,その栄養状態が悪化し
ていたのを認めたのであるから,十分な食事を与えるとともに,適切な医療措置を
受けさせるなどの生存に必要な保護を与えるべき責任があったにもかかわらず,共
謀の上,その頃から同年3月2日頃までの間,被害者に十分な食事を与えず,かつ,
適切な医療措置を受けさせることもなく放置し,もって被害者の生存に必要な保護
をせず,よって,その頃,同所において,被害者を呼吸・循環不全により死亡させ
たものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人両名の判示所為はいずれも刑法60条,219条(218条)に該当する
ので,同法10条により同法218条所定の刑と同法205条所定の刑とを比較し,
重い傷害致死罪の刑により処断することとし,その所定刑期の範囲内で被告人両名
をそれぞれ懲役9年に処し,被告人両名に対し同法21条を適用して未決勾留日数
中各180日をそれぞれその刑に算入し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし
書を適用して被告人両名に負担させないこととする。
(量刑の理由)
1被告人ら夫婦は,生後わずか約8か月の乳児である被害者が衰弱してやせ細っ
ていたにもかかわらず,到底十分とはいえない量の粉ミルク等を与えただけで,
医療機関を受診させることも一切せずに放置した結果,被害者を栄養不良に起因
する呼吸・循環不全により死亡させるという取り返しのつかない事態を招いたも
のである。死亡した被害者の体重が,同じ月齢にある乳児の平均体重の約半分し
かなかったことからみても,被告人ら夫婦は,親として当然に果たすべき責任を
放棄していたものといわざるを得ない。
2本件犯行の経緯等をみても,被告人ら夫婦は,平成27年12月末に犯行現場
となった2階建ての借家に転居して以来,被害者を1階和室の片隅に寝かせ,自
分たちは主に2階で生活する中で,平成28年1月下旬頃から被害者に与える粉
ミルクの量を減らし始めて,その栄養状態を悪化させるに至っている。同年2月
以降も,生活保護費を受給するなどした際に十分な量の粉ミルクを買うことは簡
単にできたはずであり,適切な医療措置を受けさせることを含めて,被害者の生
存に必要な保護を与えることに困難があったとの事情はうかがわれない。この点,
被告人Bの弁護人は,被告人Bが患っていた統合失調感情障害や軽度の知的障害
の影響を指摘するが,これらの障害が本件に影響を及ぼすものでなかったことは,
C医師がその旨証言しているほか,被告人Bが生活保護の申請手続等を自分でこ
なしていることなどからみても明らかである。また,被告人Dの弁護人は,被告
人Dが誰にも相談できないまま焦燥し,追い詰められていった旨主張するが,そ
もそも,被告人Dが被害者のために事態を打開しようと真剣に考え,周囲に相談
するなどして主体的に行動しようとした形跡はうかがわれない。被告人らは,ま
た,被害者の医療費が無料になることを知らなかったために医者に診せることが
できなかったともいうが,生活保護費を受給するようになってから自分たちが通
う歯科医の診療代を払わずに済んでいたのに,子供の医療費が無料になるとは思
っていなかったということ自体そもそも不自然であるし,子供の医療費について
調べようともしておらず,医者に診せる気が本当にあったかも疑わしい。むしろ,
被告人ら夫婦の生活ぶりは,受給した生活保護費をレンタカー代や自分たちの趣
味,嗜好等に気兼ねなく使うなどしていた一方で,被害者を極めて不衛生な環境
に置くなど,被害者のことを後回しにして自分たちのことを優先していた面が強
く,被害者の生存に必要な保護を与えなかったのは,愛情を持って子供を育て,
その健康を気遣い,命を守ろうとする親としての自覚や責任感の乏しさに由来す
るものと考えざるを得ない。犯行の経緯等にも酌むべきものは乏しく,被告人ら
はいずれも厳しい非難を免れない。
3そこで,刑の公平性の見地から,同種事案の量刑傾向を踏まえて,以上のよう
な本件の犯情をみると,本件は,同種事案の中でも重い部類に属する事案である
といえる。その他の事情をみても,被告人らはそれぞれ反省の言葉を述べてはい
るものの,自分たちが犯した罪の重さと真剣に向き合い,内省を深めているとは
認められない。被告人Dについては,前科前歴がなく,実母や友人が社会復帰後
の支援を申し出ていることなどの事情も認められるが,これらも被告人Bとの間
で責任の重さを違えるほどの事情とは認められない。その他,被告人らの成育環
境等に不遇な面があったことなどを併せ考慮しても,被告人らに対しては,それ
ぞれの責任の重さに見合った刑として,いずれも主文のとおりの刑を科するのが
相当であると判断した。
(求刑被告人両名とも懲役10年)
平成29年3月15日
広島地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官小川賢司
裁判官髙森宣裕
裁判官下村有朋

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛