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平成15年(ワ)第2355号 特許権侵害差止等請求事件
(口頭弁論終結の日 平成15年7月17日)
             判       決
       原      告      ジー・オー・ピー株式会社
       訴訟代理人弁護士      小 林 幸 夫
       補佐人弁理士      久 保   司
       被      告      アルインコ株式会社
       訴訟代理人弁護士      中 務 嗣治郎
       同             岩 城 本 臣
       同             森   真 二
       同             村 野 譲 二
       同             加 藤 幸 江
       同             安 保 智 勇
       同             浅 井 隆 彦
       同             中 光   弘
       同             中 務 正 裕
       同             中 務 尚 子
       同             村 上   創
       同             小 林 章 博
       同             錦 野 裕 宗
       同             鈴 木 秋 夫
       同             小 林 幹 雄
       同             三 浦 章 生
       同             近 藤 恭 子
       同             藤 井 康 弘
       補佐人弁理士        藤 川 忠 司
             主       文
      1 原告の請求をいずれも棄却する。
      2 訴訟費用は原告の負担とする。
             事実及び理由
第1 原告の請求
 1 被告は,別紙目録記載の製品を製造し,販売し,又は販売のために展示して
はならない。
 2 被告は,その占有する前項記載の製品及び半製品を廃棄し,同製品の製造に
用いる設備を除去せよ。
 3 被告は,原告に対し,480万円及びこれに対する平成15年2月18日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   原告は,アルミニウム製可搬式作業台の発明に係る特許権の共有者である。
原告は,被告が製造・販売する別紙目録記載の作業台は,上記特許権に係る明細書
の特許請求の範囲の請求項2記載の発明の技術的範囲に属すると主張して,同特許
権に基づき,被告に対し,上記作業台の製造・販売の差止等及び損害賠償を求めて
いる。
 1 争いのない事実
  (1) 原告は,下記の特許権を訴外株式会社住軽日軽エンジニアリングと共有し
ている(以下,この特許権を「本件特許権」といい,同特許権に係る特許公報〔甲
1。本判決末尾添付〕を「本件公報」という。)。なお,原告の共有持分は3分の
2である。
      特許番号  第2989166号
      発明の名称 アルミニウム製可搬式作業台
      出願日   平成9年(1997)9月26日
      審査請求日 平成10年(1998)7月28日
      公開日   平成11年(1999)4月13日
      登録日   平成11年(1999)10月8日
  (2) 本件特許権に係る明細書(以下「本件明細書」という。)における,特許
請求の範囲請求項2の記載は,以下のとおりである(以下,この請求項2記載に係
る発明を「本件特許発明」という。)。
    「手掛け部材が天板の4つの隅角部または4つの隅角部から延びる主脚の
縦部材に,該主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取付けられていることを特徴と
するアルミニウム製可搬式作業台。」
  (3) 本件特許発明を構成要件に分説すると,下記AないしDのとおりである
(以下,分説した各構成要件を,その記号に従い「構成要件A」などという。)。
   A アルミニウム製可搬式作業台であること,
   B 当該作業台に手掛け部材が取り付けられていること,
   C 当該手掛け部材が,天板の4つの隅角部または4つの隅角部から延びる
主脚の縦部材に設けられていること,
   D 当該手掛け部材が,主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付けられ
ていること,
  (4) 被告は,別紙目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を製造・販売
している。
  (5) 被告製品の具体的構成を,本件特許発明の構成要件に即して分説すると,
下記のとおりである(以下,下記の各構成を,その記号に従い「被告製品構成a」
などという。)。
   a アルミニウム製可搬式作業台であること,
   b 当該作業台に手掛け部材が取り付けられており,同部材の上端部には,
連結部材を介して手摺り材が連結されていること,
   c 当該手掛け部材が,天板の4つの隅角部から延びる主脚の縦部材に設け
られていること,
   d 当該手掛け部材が,主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付けられ
ていること,
   e 天板に手摺り材が2つ着脱自在に設けられていること,
  (6) 上記(3),(5)から明らかなとおり,被告製品構成aは構成要件Aと,被告
製品構成dは構成要件Dと,それぞれ同一である。また,被告製品構成cは構成要
件Cを充足する。
    したがって,被告製品は,構成要件A,C及びDをいずれも充足する。
 2 争点
  (1) 被告製品が本件特許発明の構成要件をすべて充足し,同発明の技術的範囲
に属するものと認められるか(争点1)。
  (2) 本件特許権に無効事由の存在することが明らかであり,同特許権に基づく
原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして許されないか(争点2)。
  (3) 原告の損害額(争点3)。
第3 争点に関する当事者の主張
 1 争点1(構成要件の充足性)について
  (原告の主張)
   被告製品が構成要件A,C及びDを充足することに争いはないところ(第
2,1(6)),同製品においては,手掛け部材の上端部に,連結部材を介して手摺り
材が連結される(被告製品構成b)ことによって,2つの手摺り材が天板に着脱自
在に設けられている(同e)。
   しかしながら,上記の点は,構成要件A~Dをすべて充足した上で付加され
た構成にすぎず,このような構成が付加されたからといって,構成要件の充足性が
左右されるものではない。すなわち,当該作業台に手掛け部材が取り付けられてい
る以上,被告製品は構成要件Bを充足するのであり,手掛け部材の上端部に連結部
材を介してさらに手摺り材が連結されるからといって,同製品が構成要件Bを充足
しなくなるというものではない。また,被告製品が構成要件A~Dをすべて充足す
る以上,天板に手摺り材が2つ着脱自在に設けられた構成(被告製品構成e)が付
加されたからといって,同製品が本件特許発明の技術的範囲に属しなくなるという
ものでもない。
   上記のとおり,被告製品は本件特許発明の構成要件をすべて充足しており,
その技術的範囲に属している。
  (被告の主張)
   被告製品は,「当該作業台に手掛け部材が取り付けられており,同部材の上
端部には,連結部材を介して手摺り材が連結されていること」(被告製品構成
b),及び,「天板に手摺り材が2つ着脱自在に設けられていること」(同e)の
2点において,本件明細書の特許請求の範囲請求項2に記載された構成と異なって
おり,本件特許発明の構成要件を充足しない。
   すなわち,被告製品の手摺り材は,建設現場で業務に従事する者が,作業
中,作業台の天板から転落することを防止するための必須の構成要素であるとこ
ろ,この手摺り材を天板に取り付けるためには,連結部材を介して,手摺り材の両
側部を手掛け部材に連結しなければならない。したがって,被告製品における手掛
け部材は,手掛け作用のみならず,手摺り材を天板に取り付けるための取付部材の
作用をも果たすものである。その一方で,手摺り材が手掛け部材に連結されること
によって,手摺り材は手掛け部材を補強する作用を果たすのであって,このよう
に,手掛け部材と手摺り材は,相互にその作用を補完し合う関係にある。
   以上のとおり,手摺り材が設けられている構成,及び,手掛け部材が手摺り
材と連結部材で連結されている構成は,いずれも被告製品の極めて重要な要素であ
り,このような構成(被告製品構成b,e)を備えている点において,同製品は本
件特許発明の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属しない。
 2 争点2(無効事由の存否)について
  (被告の主張)
   以下に述べるとおり,本件特許権には,特許法29条1項違反及び同条2項
違反の無効事由の存することが明白であるから,同特許権に基づく原告の請求は,
権利の濫用に当たるものとして許されない。
  (1) 特許法29条1項違反
  ア 本件特許発明は,社団法人仮設工業会が定めた「アルミニウム合金製可搬
式作業台の認定基準」の内容をそのまま表したものにすぎず,そもそも発明といえ
るものではない。
    すなわち,上記仮設工業会は,構造基準,使用基準等の設定を通じて,仮
設構造物等に関わる労働災害の防止及びその工事施工の円滑化に寄与することを目
的とする公益法人(業界団体)であるところ,労働安全衛生規則に従い,建設現場
における安全確保のため,平成9年4月1日から,アルミニウム合金製可搬式作業
台の構造を,「天板面から上に60センチメートル以上の突出した『手がかり棒
等』を設けたものであること」などと定めた認定基準を施行した。この認定基準が
業界誌(乙4)に発表された同年5月1日以後,アルミニウム合金製可搬式作業台
に手掛かり棒を付設することは,法の要求する基準として業界の常識となってお
り,その当然の結果として,天板の4隅に手掛け部材を付設した作業台が広く製造
されている。そのことは,原告自身が,その製造・販売するアルミニウム製可搬式
作業台のカタログ(甲5,6)に「仮設工業会認定品」と明記している事実や,訴
外ホリーエンジニアリング株式会社(乙9)及び同株式会社ピカコーポレーション
(乙10)が,天板の4隅に手掛かり棒を付設し,これを主脚の縦部材に沿って折
り畳み可能に取り付けた構成を有する,本件特許発明をほぼそのまま実施したと認
められる製品を製造・販売している事実に照らしても,明らかである。
    上記から分かるとおり,本件特許発明は,社団法人仮設工業会の認定基準
を内容とするものにすぎず,「創作」ないし「発明」と呼べるような思想的契機は
存しない。したがって,「自然法則を利用した技術的思想の創作」(特許法2条1
項)といえるものではなく,そもそも「発明」に該当しない(同法29条1項柱書
違反)。
    仮に「発明」に該当するものであるとしても,出願前の平成9年5月1日
に頒布された刊行物(上記乙4)に記載された発明と同一の発明であるから,新規
性を有しない(同法29条1項3号違反)。
  イ なお,原告は,上記認定基準には,① 手掛かり棒をどこに設けるか,②
 どのような形状・構成とするか,が開示されていないから,同基準によって本件
特許発明の新規性が失われるものではないと反論する(後記(原告の主張)(1))。
    しかしながら,可搬式作業台に安全に昇降するための手掛かり棒を取り付
ける場合,天板の隅角部を取り付け場所に選択することは当然の着想であるから
(隅角部以外に取り付けることは,逆に不自然である。),上記①の点をもって
「発明」と評価することなどあり得ない。また,上記②の点についても,持ち運び
を前提とする可搬式作業台に手掛かり棒を付設する以上,これを折り畳み可能とす
ることは当然の着想であり,かつ,主脚の縦部材に沿って取り付けることも公知公
用の技術である(乙8の3,乙8の4)から,結局,この点も新規性の根拠とはな
り得ない。
    したがって,原告の上記反論には理由がない。
  (2) 特許法29条2項違反
    仮に本件特許発明が「発明」(特許法2条1項)に該当するとしても,下
記のとおり,本件特許発明には,進歩性欠如の無効事由が存する。
  ア 本件特許発明の構成要件A~Dのうち,同Aは「アルミニウム製可搬式作
業台であること」というものにすぎず,進歩性の根拠にはなり得ない。
    したがって,構成要件B~Dに関する進歩性の有無を検討すべきところ,
前項(1)で述べたところから明らかなとおり,構成要件B(当該作業台に手掛け部材
が取り付けられていること)は,出願前の刊行物である乙4に開示されている。
  イ また,構成要件D(当該手掛け部材が,上記主脚の縦部材に沿って折り畳
み可能に取り付けられていること)については,いずれも出願前の刊行物である乙
11(実願昭58-107263号(実開昭60-15600号)のマイクロフィ
ルム),乙8の3(公開特許公報・平9-189185号),乙8の4(公開特許
公報・平6-336888)及び乙8の5(実願昭60-171695号(実開昭
62-79098号)のマイクロフィルム)に開示されている。
    すなわち,① 乙11(実願昭58-107263号(実開昭60-15
600号)のマイクロフィルム)には,膝あて金具1と支え金具2が,天板の4つ
の隅角部から延びる主脚8の縦部材に沿って,折り畳み可能に取り付けた構成が開
示されているが(第2図),同公報の第3図から明らかなように,上記膝あて金具
1と支え金具2は,組み立てた時に一体となって手摺りとして機能するものである
から,本件特許発明の「手掛け部材」に相当する。したがって,乙11には,手掛
け部材が主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付けた構成が開示されているこ
とになる。② 乙8の3(特開平9-189185号公報)における,「折りたた
み式の捕まり棒を取り付けて」(特許請求の範囲),「手で捕まえて作業が出来る
様にした安全確保の為の折りたたみ式の装置」(段落【0001】)との各記載に
照らせば,同公報における「一部が湾曲した安全棒」は,上記「手掛け部材」に相
当するものである。したがって,同公報の【図3】は,手掛け部材に相当する安全
棒が,主脚の縦部材に相当する脚立本体に沿って折り畳み可能に取り付けた構成を
開示するものというべきである。③ 乙8の4(特開平6-336888号公報)
の【図3】には,足当部材50を,天板40の隅角部から延びる主脚30に,立設
位置から主脚を軸に180度回転するように取り付けた作業台が開示されている
が,この足当部材は,天板上の作業者の安全確保及び作業性の向上という作用効果
を奏するから,本件特許発明の「手掛け部材」に相当するものである。それととも
に,この足当部材は,上記のように180度回転することによって,主脚に沿って
折り畳み可能に構成されたものということができる。したがって,以上を総合すれ
ば,上記【図3】には,天板40の隅角部から延びる主脚30に,手掛け部材に相
当する足当部材50を,立設位置から主脚30に沿って折り畳み可能に取り付けた
作業台が開示されていることになる。④ 乙8の5(実願昭60-171695号
(実開昭62-79098号)のマイクロフィルム)における,「支柱は,脚立本
体の両側梯子脚体を連結する枢軸を中心に起伏回動自在となるように枢止され」
(実用新案登録請求の範囲)との記載や,「上記支柱2は,枢軸7を中心に回動す
る起伏動自在となり,伏倒時に一方梯子脚体3に沿う状態が保持できるよう」,
「脚立を梯子として使用する場合や格納や輸送時には,支柱2を引上げて下端をホ
ルダー9から引抜き,次に枢軸7を中心に支柱2を回動伏倒させ」(いずれも考案
の詳細な説明〔実施例〕)との各記載に照らせば,上記支柱2は,脚立本体1の梯
子脚体3に折り畳み可能に取り付けられたものであることが明らかである。そし
て,支柱2は本件特許発明の「手掛け部材」に,脚立本体1は同「主脚」に,梯子
脚体3は「主脚の縦部材」にそれぞれ相当するものであるから,同公報の第5図に
は,手掛け部材(支柱2)が,主脚(脚立本体1)の縦部材(梯子脚体3)に沿っ
て折り畳み可能に取り付けられた構成が開示されているというべきである。
    以上のとおり,手掛け部材が主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付
けられた構成(構成要件D)は,公知文献である乙11,乙8の3,乙8の4及び
乙8の5のすべてに開示されている。
  ウ さらに,構成要件C(手掛け部材が,天板の4つの隅角部または4つの隅
角部から延びる主脚の縦部材に取り付けられていること)については,手掛け部材
を主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付ける(構成要件D)以上,天板の隅
角部または隅角部から延びる主脚の縦部材に沿って取り付けることは当然であり,
構成要件Dが公知である以上,構成要件Cも必然的に公知ということができる。
    念のため指摘しておくと,甲14(実願昭50-011487号(実開昭
51-95541号)のマイクロフィルム)の実用新案登録請求の範囲には,「鞘
パイプ4内に中パイプ16を出入自在に嵌挿し」,あるいは「脚立1の鞘パイプ4
から中パイプ16を引出して」と記載されているところ,これらの記載に照らして
同公報の第3図を観察すれば,そこには,手掛け部材に相当する中パイプ16が,
天板に相当する展開足場板17の4つの隅角部から延びる主脚6の縦部材に立設位
置に取り付けられた構成,すなわち,手掛け部材が,天板の4つの隅角部から延び
る主脚の縦部材に取り付けられた構成が開示されているものと認められる。したが
って,構成要件Cが公知であることは明らかである。
  エ 以上のとおり,本件特許発明の構成要件Bは乙4に,構成要件Dは乙1
1,乙8の3,乙8の4及び乙8の5に,構成要件Cは甲14にそれぞれ開示され
ており,同発明は,その出願時(平成9年9月26日)において,これら刊行物に
記載された発明(同法29条1項3号)に基づいて容易に発明することができたも
のであるから,進歩性欠如(特許法29条2項違反)の無効事由の存することが明
らかである。
  (原告の主張)
  (1) 特許法29条1項違反の主張に対する反論
    被告が引用する社団法人仮設工業会の認定基準(乙4)は,建設現場にお
ける安全確保のため,アルミニウム合金製可搬式作業台につき,「天板面から上に
60センチメートル以上の突出した『手がかり棒等』を設けたものであること」
と,一般的な基準を定めたものにすぎない。したがって,このような基準を満たす
ものであるならば,手掛かり棒のみならず手摺または手摺枠を付設してもよいので
あり,認定基準に従うことが当然に手掛かり棒を付設することにはならない。
    仮に手掛かり棒を付設する構成を採用したとしても,上記認定基準は,①
 手掛かり棒をどこに設けるか,② どのような形状・構成とするかについて,何
ら具体的に開示していない。したがって,例えば,手掛かり棒を着脱式にしたり,
スライドさせたりする構成を採用することも可能である。しかるところ,本件特許
発明は,考えられる選択肢の中から,手掛かり棒を折り畳み可能に取り付けるとい
う具体的な構成を採用したのである。
    さらに,本件公報の段落【0011】に,「手掛け部材6は,作業者が作
業台となる天板3に昇降する場合,天板上に載って作業を行う場合に,手掛けとな
り,安全性および作業性を向上させるためのもので」と記載されていることから分
かるとおり,本件特許発明における手掛け部材は,天板に昇降する場合のみなら
ず,天板上に載って作業を行う場合の安全性確保にも資するものであるところ,天
板上で作業する場合の安全性確保という作用効果を奏する点は,上記認定基準には
明記されていない。したがって,本件特許発明は,同認定基準には開示されていな
い独自の作用効果を奏するものということができる。
    以上のとおり,本件特許発明は,社団法人仮設工業会の認定基準の内容に
工夫を加え,そのことによって独自の作用効果を奏するに至ったものである。した
がって,そもそも同発明が特許法2条1項の「発明」に当たらないとか,新規性が
ない(同法29条1項)などという被告の主張には,理由がない。
  (2) 特許法29条2項違反の主張に対する反論
    本件特許発明は,① アルミニウム製可搬式作業台であること(構成要件
A),② 当該作業台に手掛け部材が取り付けられていること(同B),③ 当該
手掛け部材が,天板の4つの隅角部または4つの隅角部から延びる主脚の縦部材に
設けられていること(同C),④ 当該手掛け部材が,主脚の縦部材に沿って折り
畳み可能に取り付けられていること(同D)を構成要素とするものであるが,前記
社団法人仮設工業会の認定基準(乙4)の存在に照らし,構成要件Aが公知技術で
あることは認める。
    その一方で,本件特許発明における手掛かり棒は,前記のとおり,天板に
昇降する場合のみならず,天板上に載って作業を行う場合の安全性確保にも資する
点で,上記認定基準における手掛かり棒等と全く同一のものではないから,構成要
件B(当該作業台に手掛け部材が取り付けられていること)が公知であるとはいえ
ない。
    構成要件C及びDについては,従来技術になかった新規な構成であり,進
歩性も有するものであるが,被告は,構成要件C及びDについて,乙11,乙8の
3,乙8の4,乙8の5及び甲14との関係で進歩性が欠如すると主張するので,
被告が引用するこれらの公知技術に対し,以下,個別に反論する。
  ア 乙11(実願昭58-107263号(実開昭60-15600号)のマ
イクロフィルム)記載に係る考案は,本件特許発明のような可搬式作業台(構成要
件A)に関するものではなく,脚立に関するものであるから,作業に十分な面積を
有する天板に相当する構成が存在しない。また,乙11には,支え金具2と膝当て
金具1を手摺として使用することが記載されているが,この膝当て金具1は,文字
どおり作業者の膝に当てて支えとして用いるものであり,その役割や脚立最上段か
らの高さ(ちなみに,前記認定基準における手掛かり棒等は,天板面から60cm
以上突出したものであることが要求されている。)に照らし,本件特許発明の手掛
かり棒に相当するものではない。さらに,この支え金具2と膝当て金具1は,昇降
時の安全確保のため常設されている手掛かり棒と異なり,天板上での作業時に限っ
て組み立てるものである上に,そもそも,天板の4つの隅角部または4つの隅角部
から延びる主脚の縦部材に,該主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付けられ
ている(構成要件C及びD)ものではない。
    以上のとおり,乙11は,本件特許発明の構成要件A~Dのいずれについ
ても,これらの構成を具体的に開示ないし示唆するものではない。
  イ 乙8の3(特開平9-189185号公報)記載に係る発明も,乙11の
考案と同様,脚立に関するものであるから(構成要件A),作業に十分な面積を有
する天板に相当する構成が存在しない。また,乙8の3における安全棒は1本であ
り,本件特許発明の手掛かり棒のように4本付設されていないから,天板の4つの
隅角部または4つの隅角部から延びる主脚の縦部材に取り付けられた(構成要件
C)ものではない。加えて,本件特許発明の手掛かり棒が,折り畳んだ状態でも主
脚の縦部材に沿っているのに対し,上記安全棒は,公開特許公報(乙8の3)の
【図3】が示すとおり,折り畳んだ状態では,棒が屈曲している分だけ同部材から
離れているから,主脚の縦部材に沿って取り付けられている(構成要件D)とはい
えない。
    以上のとおり,乙8の3は,本件特許発明の構成要件A~Dのいずれにつ
いても,これらの構成を具体的に開示ないし示唆するものではない。
  ウ 乙8の4(特開平6-336888号公報)記載に係る発明は,四脚ハシ
ゴの安全装置に関するものであり(構成要件A),作業に十分な面積を有する天板
に相当する構成が存在しない。また,同発明における足当部材50は,板状に形成
した部材を足に当てて足の位置を固定し,作業時における作業者のバランスを安定
させるためのものであって,本件特許発明の手掛かり棒のように,天板上に載って
作業を行う場合のみならず,天板に昇降する場合にも手を掛けることができ,もっ
て作業時及び昇降時の両方における安全性向上に資するものではない(したがっ
て,天板面から60cm以上突出したものでもない。)。よって,上記足当部材
は,「手掛け部材」(構成要件B)に相当するものではない。
    以上のとおり,乙8の4においては,手掛け部材が,天板の隅角部または
隅角部から延びる主脚の縦部材に,該主脚の縦部材に沿って部材を折り畳み可能に
取り付けられた構成(構成要件B~D)を見出すことはできない。
  エ 乙8の5(実願昭60-171695号(実開昭62-79098号)の
マイクロフィルム)記載に係る考案は,脚立本体の側部に最上部踏桟よりも上方に
起立する支柱を取り付けた脚立に関するものであり,第1図を一見すれば明らかな
とおり,脚立本体の側部に支柱を1本取り付けたものにすぎない。
    よって,本件特許発明の進歩性を否定する根拠となるものではない。
  オ 甲14(実願昭50-011487(実開昭51-95541号)のマイ
クロフィルム)の第3図には,中パイプ16が,天板(展開足場板17)の4つの
隅角部から延びる主脚6の縦部材の延長として立設された状態が図示されているも
のと認められるが,同公報には,上記中パイプが本件特許発明における「手掛け部
材」として用いられることを開示する記載もなければ,示唆する記載もない。ま
た,上記中パイプが,どのようにして,天板の4つの隅角部から延びる主脚の縦部
材の延長として立設された状態になるのかは,同公報の記載からは一切不明である
とともに,この中パイプが,上記第3図の状態からどのように鞘パイプに収納され
るのかも,一切不明である。
    したがって,甲14に,手掛け部材が,天板の4つの隅角部から延びる主
脚の縦部材に,該主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付けられている構成
(構成要件B~D)が,開示されているということはできない。
  カ 以上のとおりであるから,被告が引用する公知技術(乙11,乙8の3,
乙8の4,乙8の5及び甲14)を組み合わせても,本件特許発明と同一の構成に
想到することは,当業者にとって容易になし得たことではない。
    よって,これら公知技術との関係で,本件特許発明が進歩性を欠如する旨
の被告の前記主張は,理由がない。
 3 争点3(原告の損害額)について
  (原告の主張)
   被告は,遅くとも平成14年12月から被告製品を製造・販売しているとこ
ろ,同月から本訴提起(平成15年2月5日)までの約2か月間に,同製品を平均
単価4万円で,少なくとも600台販売した。そして,原告の利益率から推測し
て,被告の利益率は30%と考えられるから,被告は,下記の計算式のとおり,7
20万円の利益を得たものと認められる。
      4(万円/台)×600台×30%=720(万円)
   原告は,本件特許権の持分3分の2の共有権者であるから,上記720万円
の3分の2に当たる480万円を原告の損害として主張し,特許法102条2項に
基づいて被告に請求する。
  (被告の主張)
   原告の上記主張は,争う。
第4 当裁判所の判断
 1 争点1(構成要件の充足性)に対する判断
  (1) 被告製品構成b及びeについて
    被告製品が構成要件A,C及びDを充足することについては,当事者間に
争いがない(第2,1(6))。
    また,被告製品は,アルミニウム製可搬式作業台に手掛け部材が取り付け
られた上,同部材の上端部に,連結部材を介してさらに手摺り材が連結されている
(被告製品構成b)ものであるが,手掛け部材の上端部に手摺り材を連結した点
は,作業台に手掛け部材が取り付けられた上で,さらに作業効率や安全性を高める
ために付加された構成であるから,このような構成が付加されたからといって,そ
の前提となる手掛け部材を取り付けた構成の技術的意義が失われるものではない。
すなわち,被告製品は,手掛け部材が奏する作用効果を奏した上で,さらに手摺り
材を設けたことによる作用効果を奏するものにすぎない。そうすると,手摺り材が
連結されている点は,構成要件Bの充足性に影響するものではなく,当該作業台に
手掛け部材が取り付けられている以上,同製品は構成要件Bを充足するというべき
である。
    さらに,被告製品においては,手掛け部材に手摺り材が連結されることに
伴い,2つの手摺り材が天板に着脱自在に設けられている(被告製品構成e)。し
かしながら,上述したとおり,手摺り材を付加した構成それ自体が,構成要件の充
足性を左右するものではないから,手摺り材を手掛け部材に連結した結果,2つの
手摺り材が天板に着脱自在に設けられるに至ったとしても,この点も,本件特許発
明の構成要件をすべて充足した上で付加された構成にすぎず,構成要件の充足性を
左右するものではない。
    以上のとおり,被告製品は本件特許発明の構成要件A~Dをすべて充足
し,本件特許発明の技術的範囲に属するものである。
  (2) 被告の主張について
    この点に関し,被告は,被告製品における手掛け部材と手摺り材は,相互
にその作用を補完し合う関係にあり,手摺り材が手掛け部材と連結部材で連結され
ている構成(被告製品構成b,e)は,被告製品の極めて重要な要素であるから,
このような構成を備えている点において,同製品は本件特許発明の構成要件を充足
しないと主張する。
    しかしながら,このような構成が付加されているからといって,本件特許
発明の構成要件の充足性の判断が左右されるものでないことは上述のとおりであ
る。本件明細書を精査しても,被告が主張するように,被告製品構成b,eが付加
されることによって,このような構成を備えた製品が本件特許発明の技術的範囲に
属しなくなるものと解すべき具体的な根拠は見出せない。
    よって,被告の上記主張を採用することはできない。
 2 争点2(無効事由の存否)に対する判断
  (1) 乙4号証について
  ア 本件特許発明の出願前の平成9年5月1日に頒布された刊行物(特許法2
9条1項3号)である乙4号証は,社団法人仮設工業会(平成14年3月現在,仮
設機材メーカー,リースレンタル会社,建設会社等合計370社以上の会員から構
成されている公益法人であり,建築工事用の仮設機材等に関する安全確保のため,
その構造基準・使用基準を定めたり,これらの機材が厚生労働省の規格に適合して
いるか検査を実施したりしている。)発行に係る「仮設機材 マンスリー」と題す
る情報誌の第152号である。
    そこには,「アルミニウム合金製可搬式作業台の認定基準の制定につい
て」と題する記事が掲載されており,その冒頭には,平成9年3月27日に開催さ
れた上記仮設工業会理事会の承認を経て,同会のアルミニウム合金製可搬式作業台
の認定基準が定められ,同年4月1日から施行されることになった旨が記載されて
いる。そして,「1、認定基準制定の理由」と題する項には,建築現場で従来用い
られてきた「脚立足場」や「うま足場」には,しっかりした作業床の確保という点
で問題があり,近年は脚輪付きの「移動式室内足場」を使用する例も増えてきた
が,さらに作業性及び安全性を高める見地から,新たに開発された「アルミニウム
合金製可搬式作業台」に関する認定基準を制定した旨が記載されている。また,
「2、可搬式作業台の必要性能等について」と題する項には,① 可搬式作業台に
必要とされる性能とその性能を試験する方法(「(1) 可搬式作業台に必要な性能等
と性能試験の方法について」),及び,② 基準を満たすために必要な可搬式作業
台の構造等(「(2) 構造等について」)が記載されており,上記②においては,可
搬式作業台の使用時の最大の高さを2m未満と定めた旨の記載に続き,「また,使
用高さが1.5mを超えるものについては,安全に昇降できる『手がかり棒』等の
備え付けを必要としたこと。(根拠:労働安全衛生規則第526条の規定により高
さが1.5mを超える箇所での作業に,安全に昇降するための設備が必要とされて
いる。)」と記載されている。
    上記から明らかなとおり,これらの各記載は「アルミニウム合金製可搬式
作業台」に関するものであり,かつ,使用時の高さが1.5mを超える作業台につ
いては,安全に昇降するための「手がかり棒」を備え付けることが明記されている
から,乙4には,本件特許発明の構成要件のうち,「アルミニウム製可搬式作業台
であること」(構成要件A)及び「当該作業台に手掛け部材が取り付けられている
こと」(同B)の各構成が開示されていることが,明らかというべきである。
  イ ところで,原告は,構成要件Aが乙4に開示されていることを認める一方
で,本件特許発明の「手掛け部材」は,天板に昇降する場合のみならず,天板上に
載って作業を行う場合の安全性確保にも資するものであるから,上記認定基準にお
ける手掛かり棒等と全く同一のものではなく,したがって,構成要件Bが開示され
ているとはいえないと主張する(第3,2(原告の主張)(2))。
    しかしながら,乙4は,前記のとおり,安全なアルミニウム合金製可搬式
作業台であると認定するための一応の基準を示したものにすぎず,特定の可搬式作
業台の具体的構成や作用効果を逐一記載したものではないから,そこに「手がかり
棒」が安全に昇降するための部材である旨の記載しかないからといって,直ちに,
この「手がかり棒」が天板上での作業の安全性確保と関係ないものということはで
きない。また,そもそも,本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各
記載に照らし,天板に昇降する場合のみならず,天板上に載って作業を行う場合の
安全性確保にも資するかどうかによって,「手掛け部材」に該当するかどうかが左
右されるとは認められないから,原告の上記主張は,構成要件該当性に直接関係し
ない作用効果の有無を問題にするものにすぎず,その限りにおいて失当というほか
ない。したがって,同主張を採用することはできない。
  (2) 乙8の3号証について
  ア 本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である乙8の3号証は,脚立の
最上段の安全棒の発明に係る公開特許公報(特開平9-189185号)である。
    乙8の3の特許請求の範囲には,「脚立の最上段に上がったときに身体の
バランスをとりやすい様に,折りたたみ式の捕まり棒を取り付けて安全に作業が出
来る様にした装置である。」と記載されており,発明の詳細な説明及び図面には,
一部が湾曲した安全棒を固定用金具を用いて脚立本体の脚に取り付け,脚立を閉じ
た状態においては,安全棒を脚に沿って下向きに固定し,脚立を開いて使用する状
態においては,安全棒を固定用金具を軸にほぼ180度回転させ,上向きに固定す
るように構成した脚立が開示されているものと認められる(段落【0005】,
【0006】,【図1】~【図3】)。
    そうすると,乙8の3には,本件特許発明の「手掛け部材」に相当する
「捕まり棒」(安全棒)が,脚立の脚に沿って折り畳み可能に取り付けられた構成
が開示されており,したがって,本件特許発明の構成要件D(当該手掛け部材が,
主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付けられていること)が開示されている
というべきである。
  イ 原告は,① 乙8の3記載に係る発明は,脚立に関するものであるから,
作業に十分な面積を有する天板に相当する構成を有しない(構成要件A),② 乙
8の3における安全棒は1本であり,本件特許発明における手掛かり棒のように4
本付設されていないから,天板の4つの隅角部または4つの隅角部から延びる主脚
の縦部材に取り付けられた(構成要件C)ものではない,③ 本件特許発明におけ
る手掛かり棒が,折り畳んだ状態でも主脚の縦部材に沿っている(構成要件D)の
に対し,乙8の3の安全棒は,公開特許公報の図3が示すとおり,折り畳んだ状態
では,主脚の縦部材に沿うことなく,屈曲する分だけ同部材から離れている,など
と主張する(第3,2(原告の主張)(2)イ)。
    しかしながら,上記①の点は構成要件Aに,上記②の点は構成要件Cにそ
れぞれ関するものであり,いずれも,構成要件Dの開示の有無とは直接の関係はな
い。また,上記③の点に関する原告の主張も,乙8の3の実施例に示された安全棒
が僅かに湾曲していることに伴う些細な相違点を指摘するものにすぎず(ちなみ
に,上記「捕まり棒」の形状には,特許請求の範囲の記載上何らの限定もな
い。),手掛け部材に相当する部材が,折り畳み可能に取り付けられたものかどう
か(すなわち構成要件Dの充足性)を検討するにあたって,意味のある議論とは考
えられない。
    以上のとおりであるから,原告主張に係る点は,いずれも,乙8の3に構
成要件Dの構成が開示されているとの前記認定を妨げるものではない。原告の上記
主張は,採用することができない。
  (3) 乙8の4号証について
  ア 本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である乙8の4号証(なお,甲
13号証も同一の書証である。)は,四脚ハシゴの安全装置の発明に係る公開特許
公報(特開平6-336888号)である。
    乙8の4における特許請求の範囲の記載は,「足を掛ける階段となる複数
の横棒と,この横棒の両側に固定する各一対の脚杆と,この各一対の脚杆の中間に
位置し水平状に成る足載置部材と,この水平状の足載置部材と直交する側に移動し
位置する足当部材とから構成され,前記横棒は順次一定間隔を有して各脚杆の長手
方向に沿い固定され,かつこの各脚杆は中間の位置において四脚状に曲折可能に支
軸により枢着すると共に,足を支える足当部材を板状に形成し,かつ移動可能にし
この足当部材を足に当てることにより,足の位置を固定し身体を安定させ保護する
ことを特徴とする四脚ハシゴの安全装置。」というものである。この記載と,発明
の詳細な説明及び図面(とりわけ,段落【0009】以下並びに【図1】及び【図
3】)を併せ読めば,乙8の4には,脚立に近い四脚のハシゴにおいて,水平状の
足載置部材を「天板」に相当するものとして構成した上,足に当てて身体を安定さ
せるための足当部材を,足載置部材の1つの隅角部から延びる上記脚杆(「主脚」
に相当する。)に沿ってスライドさせることにより移動可能に構成したもの(上記
【図1】),あるいは,上記脚杆を軸に180度回転させることにより移動可能に
構成したもの(同【図3】)が開示されているものと認められる。
    ところで,上記足当部材は,直接に接触する作業者の部位が足(下肢)で
ある点で,本件特許発明の「手掛け部材」とは異なるものであるが,脚立や可搬式
作業台といった仮設の作業台を用いて作業する際に,作業者の身体に接してこれを
安定させ,安全性を確保するための部材である点で,上記「手掛け部材」と同様の
作用効果を奏するものということができる。そうすると,乙8の4には,手掛け部
材と同様の作用効果を奏する足当部材を,天板に相当する足載置部材の1つの隅角
部から延びる脚杆に沿って,折り畳み可能(移動可能)に取り付けた構成が開示さ
れていることになり,手掛け部材が4本備わっている点を除いては,本件特許発明
の構成要件Cの構成要素がすべて開示されているというべきである。
  イ 原告は,① 乙8の4記載に係る発明は,四脚ハシゴに関するものである
から,作業に十分な面積を有する天板に相当する構成を有しない(構成要件A),
② 同発明における足当部材50は,板状に形成した部材を足に当てて足の位置を
固定し,作業時における作業者のバランスを安定させるためのものであって,本件
特許発明の手掛かり棒のように,天板上に載って作業を行う場合のみならず,天板
に昇降する場合にも手を掛けることができ,もって作業時及び昇降時の両方におけ
る安全性向上に資するものではないから,「手掛け部材」(構成要件B)に相当し
ない,などと主張する。(第3,2(原告の主張)(2)ウ)。
    しかしながら,上記①の点は,構成要件Aに関するものであり,構成要件
C(及びその一部)の開示の有無と直接の関係はない。上記②の点についても,
「手掛け部材」を原告が主張するように限定的に解すべき根拠のないことは,前判
示((1)イ)のとおりである。また,そもそも,乙8の4に開示されていると認定さ
れるのは,手掛け部材と同様の作用効果を奏する足当部材が,天板に相当する足載
置部材の1つの隅角部から延びる脚杆に沿って,折り畳み可能(移動可能)に取り
付けられた構成にすぎないのであり(上記ア),したがって,仮に原告が主張する
ように上記足当部材が手掛け部材に相当しないとしても,そのことが,上記のよう
に認定することと矛盾するものではない。
    以上のとおりであるから,原告の上記主張は,いずれも,乙8の4に,手
掛け部材が4本備わっている点を除き,本件特許発明の構成要件Cの構成要素のす
べてが開示されていると認定することを妨げるものではない。原告の主張は,採用
することができない。
  (4) 無効事由の存在(進歩性欠如)
    上記(1)~(3)によれば,本件特許発明の構成要件のうち,① 乙4には,
構成要件A(アルミニウム製可搬式作業台であること)及び構成要件B(当該作業
台に手掛け部材が取り付けられていること)が,② 乙8の3には,構成要件D
(当該手掛け部材が,主脚の縦部材に沿って折り畳み可能に取り付けられているこ
と)が,そして,③ 乙8の4には,手掛け部材が4本備わっている点を除く,構
成要件Cのすべての構成要素(手掛け部材と同様の作用効果を奏する部材が,天板
の隅角部から延びる主脚の縦部材に取り付けられていること)が,それぞれ開示さ
れているものと認められる。
    そうすると,これらの公知技術を通じて唯一開示されていないのは,構成
要件Cの構成要素のうち,手掛け部材が1本ではなく4本備わっている点というこ
とになるが,手掛け部材の本数を増やせばそれだけ安全性が増すのは自明である上
に,同部材の設置場所として,天板の隅角部ないし隅角部から延びる主脚の縦部材
を選択するのは自然なことであるから,天板の4つの隅角部または4つの隅角部か
ら延びる主脚の縦部材のすべてに手掛け部材を設けることは,当業者にとって,容
易に想到可能というべきである(そのことは,本件公報段落【0012】に,「手
掛け部材6は,図1に示すように,天板3の4つの隅角部または天板3の4つの隅
角部から延びる主脚4の縦部材に全て設けるのが望ましいが,作業台の使用状況に
応じて,設置本数を変えることもできる。」と記載されていることや,出願前の公
知文献である乙11(実願昭58-107263号(実開昭60-15600号)
のマイクロフィルム)に,4本の主脚のそれぞれに,棒状に延びる支え金具及び膝
当て金具を固定した構成の脚立が開示されていることに照らしても,明らかという
べきである。)。
    そして,証拠(前記乙4及び甲14。実願昭50-011487号(実開
昭51-95541号)のマイクロフィルム)によれば,本件で問題となっている
可搬式作業台は,建築現場で従前用いられていた脚立式の足場の問題点(安全性や
作業性が不十分であること)を改善するために開発された,いわば脚立の延長線上
にある技術であること,技術的な観点からすれば,脚立と作業台の相違は,天板に
相当する最上段の面積の相対的な大小による相違にすぎないことが認められるか
ら,当業者にとって,脚立に関する発明を開示する乙8の3及び乙8の4と,アル
ミニウム合金製可搬式作業台の認定基準を示す乙4とを組み合わせることに何らの
妨げもなく,むしろ,当然のことということができる。
    以上を総合すれば,本件特許発明は,その出願時において,当業者が公知
文献である乙4,乙8の3及び乙8の4を組み合わせることにより,容易に発明で
きたものであり,進歩性欠如の無効事由(特許法29条2項違反)の存することが
明らかというべきである。
 3 結論
   前項2で判示したとおり,本件特許権には無効事由の存することが明らかで
あるから,同特許権に基づく原告の請求は,権利の濫用に当たるものとして,許さ
れない(最高裁平成10年(オ)第364号同12年4月11日第三小法廷判決・民
集54巻4号1368頁参照)。
   したがって,原告の請求は,いずれも理由がない。
   よって,主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第46部
        裁判長裁判官   三  村  量  一
           裁判官   青  木  孝  之
           裁判官   吉  川     泉
  (別紙)           物件目録
      商品名(シリーズ名)「マイティベースCSR-180WF」
     と称するアルミニウム製可搬式作業台

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