弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告代理人A、Bの抗告理由は別紙記載のとおりである。
 一件記録によれば、次の事実を認めることができる。
 債権者東京信用保証協会、債務者兼物件所有者富士プレス工業株式会社間の東京
地方裁判所昭和四二年(ケ)第六六七号建物任意競売事件について、同裁判所は昭
和四二年六月一九日別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という)につき本件競
売手続開始決定をなした。これに基づき昭和四三年二月二三日に実施された競売に
おいて、抗告人は、競買申出価格金四一六万円をもつて最高価競買申出人となり、
同日現金四一万六千円の保証を立て、次いで同年二月二七日本件建物の競落許可決
定を受けたところ、同決定は同年六月一八日(同決定に対する債務者富士プレス工
業株式会社のなした即時抗告棄却決定の確定日)に確定した。そこで、競売裁判所
は昭和四三年七月一〇日競落人である抗告人に対し同月二四日を代金支払期日と定
めて競落代金の支払を命じたのであるが、抗告人が右期日までに代金を支払わなか
つたので、同裁判所は同年八月一七日本件建物の再競売を命じた。再競売命令後の
最初の競売期日は同年九月二七日と定められたが、抗告人は右再競売期日の三日前
までにも競落代金の支払をなさなかつた。右再競売期日に実施された競売には競買
申出人がなく、次いで指定された同年一一月一五日、昭和四四年一月一七日の各新
競売期日にも同様競買申出人がなく、各競売は中止された。他方、本件外司物産株
式会社は、東京地方裁判所昭和四三年(ワ)第三四〇三号建物収去土地明渡請求事
件の執行力ある判決正本に基づいて、昭和四三年九月一六日本件建物のうち東京都
大田区a町b番地c地上に存する部分の収去命令(債権者司物産株式会社、債務者
富士プレス工業株式会社間の東京地方裁判所昭和四三年(モ)第一七、七二二号事
件)を得たうえ、同年一二月二〇日ごろ第三者に委任して本件建物全部を収去した
結果、本件建物は滅失した。そこで、競売裁判所は、昭和四四年二月二一日に指定
していた競売期日を職権により変更し、同年六月一一日本件建物が前記競落許可決
定の確定後に収去され現存しないので再競売の続行不可能との理由で再競売手続を
取消す旨の決定をした。
 以上の事実によれば、抗告人は、前記競落許可決定の確定により競売裁判所の定
めた代金支払期日までに代金(競買代金と競買保証金との差額)を支払い、本件建
物の所有権を取得する地位を有していたのに、右代金を支払わなかつたため、再競
売命令を受け、その後定められた再競売期日の三日前までに法定の金員を支払うこ
となく再競売が実施されたのであるから、競落許可決定により発生した代金支払義
務は免れたのであるが、同時に、先の競売において最高価競買人として既に納付し
た競買保証金については、右代金不払に対する制裁としてその返還を求めることが
できなくなつたものといわねばならない(競売法三二条、民訴法六八八条。再競売
が実施された以上、再競売期日に競買申出人がなく、再競落に至らなかつたこと
は、右のように解すること<要旨>の妨げとなるものではない。)。そして、その後
再競売が続行された間において本件建物は本件外司物産株式会社によつて収
支されて滅失したのであるから、右滅失の後においでは、最早再競売を行ら余地は
なくなつたのであるが、この場合、競売裁判所は競落人(抗告人)の納付した競買
保証金から競売の費用を控除し、残額があれば代金交付期日を指定し、抵当権者等
に交付すべきものと解するを相当とする。けだし、競買保証金は、一面において、
競落代金の支払義務を履行しない競落人に対する執行法上の制裁たる性質を有する
から、一旦右の制裁事由が発生し競買保証金の返還請求ができなくなつた以上、そ
の後に競売の目的物件が滅失したからといつて、競売裁判所が競落人に競買保証金
を返還するいわれはないのみならず、他面、競買保証金は競買代金に算入されるも
のであることに徴し、これを競売代金交付手続に則つて処理するのが妥当であるか
らである。
 抗告人が本件において取消を求める本件競売手続開始決定は、叙上のような抗告
人の競落に至るまでの一連の手続及び再競売手続の前提をなしており、かつ、今後
抗告人の納付した競買保証金を引当に行なわれるべき代金交付手続の基礎たるもの
であつて、再競売手続の続行過程において既に本件建物が滅失したことによつて取
消されるべきものではない。以上と異なる抗告人の所論は、当裁判所の採用しない
ところである。
 その他、記録を精査しても、本件競売開始決定を取消すべき事由を見出すことは
できない。
 してみれば、抗告人の本件異議申立を棄却した原決定は相当であるから、本件抗
告は理由がない。よつて、本件抗告を棄却することとし、抗告費用は抗告人の負担
として、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 岡部行男 裁判官 川上泉 裁判官 大石忠生)

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