弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を免訴する。
         理    由
 職権をもつて調査すると、本件公訴事実は、次のとおりである。
 被告人は大阪市a区b町c番地で物品税課税物件である化粧品の製造をしていた
ものであるが、その従業員A、B、C等は被告人の業務に関して
一、昭和二二年一月中に被告人が製造した化粧品マニキユア、ポマード、クリーム、
香油等一、〇五七打を前記製造場から税込価格一三〇、五五五円六〇銭で他に移出
販売したのに、所轄南税務署に対しては税込価格三三、九五六円一〇銭で移出販売
した旨過少に記載した物品税課税標準申告書を提出し、よつて右差額に対する物品
税額四八、二九九円七〇銭を翌月末日までに納付しないで逋脱し
二、昭和二二年二月中に被告人が製造した化粧品マニキユア、ポマード、クリーム、
香油等一、五二三打を税込価格二一三、四〇七円で前記製造場から他に移出販売し
たのに、所轄南税務署に対しては同月中に二八八打を税込緬格二二、〇三二円で移
出販売した旨過少に記載した物品税課税標準申告書を提出し、よつて右差額に対す
る物品税額九五、六八七円五〇銭を翌月末日までに納付しないで逋脱し
三、昭和二二年三月中に被告人が製造した化粧品、マニキユア、ポマード、クリー
ム、香油等二、五二二打を税込価格三二七、三三〇円で前記製造場から他に移出販
売したのに、所轄南税務署に対しては同月中に三五七打を税込価格二八、六七〇円
四〇銭で移出販売した旨過少に記載した物品税課税標準申告書を提出し、よつて右
差額に対する物品税額一四九、三二九円八〇銭を翌月末日までに納付しないで逋脱
したものである。
 してみると、右各罪についての公訴時効は、昭和二四年法律第二八六号による改
正前の物品税法一〇条所定の納期である各翌月末の経過をもつて進行を開始したの
であるが、記録によると、右各違反事実について、昭和二二年七月一六日被告人あ
てに通告処分がなされ、これによつて公訴時効が中断され、その後約四年を経過し
た昭和二六年七月二三日本件につき公訴提起のあつたことが明らかである。
 ところで、右物品税法二二条のいわゆる両罰規定における事業主としての法人ま
たは人に対する公訴時効は、その法人または人に対する法定刑である罰金刑につき
刑訴法二五〇条五号により定められた三年の期間を経過することによつて完成する
ものと解すべきことは当裁判所大法廷判決(昭和二九年(あ)第一三〇三号同三五
年一二月二一日宣告、刑集一四巻一四号二一六二頁)の趣旨に照らして明らかであ
るから、本件においては、前記通告処分があつたのち、右三年の期間の経過により、
公訴提起前に公訴時効が完成していたものといわなければならない。
 してみれば、被告人に対しては免訴の言渡をすべきであつたにかかわらず、これ
を看過して刑の言渡をした原判決は違法であつて、これを破棄しなければ著しく正
義に反するから、弁護人の上告趣意につき判断を与えるまでもなく、刑訴法四一一
条一号により原判決を破棄し、同法四一三条、四一四条、四〇四条、三三七条四号
により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 高橋正八公判出席
  昭和四二年七月一四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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