弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人江村高行同渡辺卓郎の上告趣意第一点について。
 論旨引用の札幌高等裁判所の判決の趣旨とするところは、この判決に対する検事
上告を棄却した当裁判所第三小法廷判決(昭和二五年(あ)第一八五一号同二六年
二月六日宣告)が説示するように「窃盗と賍物牙保とは常に公訴事実の同一性がな
いとか或は犯罪の日時場所が隔つている場合には公訴事実の同一性がないとか判断
したのではなく、基本的事実関係が同一でないから、公訴事実の同一性がないと判
断したに止まる」のである。ところで、本件において、原判決は起訴状記載の窃盗
の訴因と予備的に追加された賍物牙保の訴因とはその基本たる事実が同一であると
認め、所論のような程度の相異は未だ公訴事実の同一性を失わしめるに至らないと
判断しているのであつて、両者が基本的事実関係を異にするものであると認めなが
ら、公訴事実の同一性を認めた訳でないことは、判文上極めて明らかである。従つ
て、原判決は何ら論旨引用の判例と相反する判断をしたものではないから、論旨は
理由がない。
 同第二点について、
 論旨引用の判例は、別段、日時場所が違えば基本的事実関係が異るとするもので
はなく、本件における原判決も日時場所の相異を無制限に認める趣旨ではない。た
ゞ本件程度の相違ならば、本件において予備的に追加された賍物牙保の訴因は、起
訴状起載の窃盗の訴因と基本的事実関係を同じくすると認めて差支えなく、未だ公
訴事実の同一性を失わしめるものではないとした趣旨にすぎないものと解すべきで
あるから、何ら引用の判例に相反する判断をしたものではない。従つて、判例違反
の主張は理由がなく、その余は単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に
あたらない。
 同第三点は、単なる量刑不当の主張であるから、適法な上告理由にあたらない。
 なお、記録を調べても、刑訴四一一条を適用すべきものとは、認められない。(
二つの訴因の間に、基本的事実関係の同一性が認められるかどうかは、各具体的場
合に於ける個別的判断によるべきものである。そして、本件においては起訴状記載
の訴因及び罰条は「被告人は昭和二五年一〇月一四日頃、静岡県長岡温泉Aホテル
に於て宿泊中のBの所有にかかる紺色背広上下一着、身分証明書及び定期券一枚在
中の豚皮定期入れ一個を窃取したものである」「刑法二三五条」というのであつて、
第一審第八回公判廷において予備的に追加された訴因及び罰条は「被告人は賍物た
るの情を知りながら、一〇月一九日頃東京都内において自称Bから紺色背広上下一
着の処分方を依頼され、同日同都豊島区池袋a丁目b番地Y方に於て金四千円を借
受け、その担保として右背広一着を質入れし、以つて賍物の牙保をなしたものであ
る」「刑法二五六条二項」というのである。そして、右予備的訴因において被告人
が牙保したという背広一着が、起訴状記載の訴因において被告人が窃取したという
B所有の背広一着と同一物件を指すものであることは、本件審理の経過に徴し、極
めて明らかである。従つて、右二訴因はともにBの窃取された同人所有の背広一着
に関するものであつて、たゞこれに関する被告人の所為が窃盗であるか、それとも
事後における賍物牙保であるかという点に差異があるにすぎない。そして、両者は
罪質上密接な関係があるばかりでなく、本件においては事柄の性質上両者間に犯罪
の日時場所等について相異の生ずべきことは免れないけれども、その日時の先後及
び場所の地理的関係とその双方の近接性に鑑みれば、一方の犯罪が認められるとき
は他方の犯罪の成立を認め得ない関係にあると認めざるを得ないから、かような場
合には両訴因は基本的事実関係を同じくするものと解するを相当とすべく、従つて
公訴事実の同一性の範囲内に属するものといわなければならない。本件の如き場合
において、公訴事実の同一性なしとするにおいては、一方につき既に確定判決があ
つても、その既判力は他に及ばないと解せざるを得ないから、被告人の法的地位の
安定性は、そのため却つて脅されるに至ることなきを保し難い。以上の次第である
から、本件における前記訴因及び罰条の予備的追加には所論の如き違法はなく、し
かも該手続によつて賍物牙保の点も審判の対象として明確にされていたのであつて、
被告人がこの点につき防禦権を行使するのに実質的な不利益を蒙つたような事実は
記録上何ら認められない。)
 よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和二九年五月一四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
 裁判官藤田八郎は出張につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    霜   山   精   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛