弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人懸樋正雄上告趣意第一点について。
 しかし、未決勾留は、その名の示すごとく未だ有罪、無罪の決定しない者に対し
審理の必要上為される刑事訴訟手続上の自由の拘束であつて、もとより刑罰の執行
ではない。従つて、その目的も、拘束の場所も、その処遇も、その効果も刑罰の執
行と異なるものである。たゞ自由拘束の一点において自由刑の執行と類似するとこ
ろあるが故に刑法二一条は、裁判所に対し諸般の事情を参酌してその勾留日数の全
部又は一部を本刑に算入することを許容するに過ぎない。そして、その法理は新憲
法下においても毫も変更を認めることはできない。もとより無用、不当の未決勾留
を許すべきでないこと勿論であるが、さりとて、訴訟の審理上必要な未決勾留日数
を常に本刑に通算すべき法律上及び実際上の理由も存しない。それ故所論は採るこ
とができない。
 同第二点について。
 しかし、刑の執行猶予を為すと否とは、刑を言渡す裁判所が諸般の事情を考慮し
て決すべき任意事項であつて、法律上必然これを為さねばならぬ法則の存しないこ
と、従つて旧刑訴三六〇条二項所定の事由ともならないことは、刑法二五条の明文
上明白で、一点の疑も容れない。それ故所論は採ることができない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 長部謹吾関与
  昭和二四年一〇月一三日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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