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裁判例


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○ 主文
一、原判決を取り消す。
二、被控訴人が昭和三六年八月三一日控訴人に対し、六一東陸自旅二第五二三六号
をもつてした一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請はこれを却下するとの処分
を取り消す。
三、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴代理人は主文と同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は次のとおり附加する
ほか、原判決事実摘示と同じであるからこれを引用する(但し、引用部分中「およ
び」とあるのを「及び」と、「もしくは」とあるのを「若しくは」と、「たゞし」
とあるのを「但し」と、「取消し」とあるのを、「取消」と、「手続き」とあるの
を「手続」と、「予じめ」とあるのを「予め」と、「訴え」とあるのを「訴」と、
「引受け」とあるのを「引受」と、「且つ」とあるのを「かつ」とそれぞれ改め、
原判決二枚目――記録四三丁――表七行目に「道路運送法」とある前に「旧」を加
え、同裏一行目に「〇~五」とあるのを「〇・五」と改め、同裏五行目に「第」と
あるのを削り、同裏七行目「たる」とあるのを「である」と改め、次の丁の表二行
目に「同法六条」とあるのを「道路運送法六条一項」と改め、原判決四枚目――記
録四五丁――裏五行目に「ね」
とあるのを「なけれ」と改め、次の丁の表一行目に「免許」とある前に「被」を加
え、同裏一一行目に「たら」とあるのを「であら」と改め、原判決八枚目--記録
四九丁―-表二行目に「容れ」とある次に「られ」を加え、同裏七行目に「限定
さ」とある次に「れ」を加え、次の丁の裏八行目にに「領」とあるのを「預」と改
め、原判決一一枚目――記録五二丁―-表二行目及び五行目に「巾」とあるのを
「幅」と、同「補装」とあるのを「舗装」と各改め、同表八行目に「または」とあ
るのを「又は」と改め、原判決一三枚目―-記録五四丁―-表八行目に「たる」と
あるのを「であること」と改め、次の丁の表一行目に「なす」とあるのを「する」
と改め、同表一一行目に「かかる」とあるのを「このような」と改め、原判決一九
枚目―-記録六〇丁―-表八行目に「巾」とあるのを「幅」と改め、原判決二二枚
目――記録六三丁――裏一行目に「たる」とあるのを「として」と改め、同裏五行
目に「かかる」とあるのを「おける」と改め、次の行に「余り」とあるのを「余
裕」と改め、原判決二四枚目――記録六五丁――裏一〇行目に「満たない」とある
のを、「足りない」と改め、次の丁の表九行目に「ね」とあるのを「なけれ」と改
め、同裏八行目の「也」とあるのを削り、原判決二六枚目―-記録六七丁――表七
行目に「られ」とあるのを削り、同裏三行目に「の」とあるのを「は」と改め、原
判決二七枚目--記録六八丁--表八行目に「巾」とあるのを「幅」と改め、同裏
四行目の末尾に「なお同社の申請書添付の定款には公証人の認証がなされていなか
つた。」を加え、同裏八行目に「もので」とあるのを「のに」と改め、同行に「と
なつた」とあるのを「が与えられた」と改め、原判決二八枚目――記録六九丁――
表一〇行目に「五」とあるのを「六」と改め、同表一一行目に「モルタル塗り」と
あるのを「防火構造」と改め、同裏五行目及び同裏九行目に「たる」とあるのを
「である」と改め、原判決三〇枚目--記録七一丁-―表五行目及び同裏一行目に
いずれも「敏」とあるのを「繁」と改め、同表六及び七行目にいずれも「たる」と
あるのを「である」と改め、同表八行目に「な」とあるのを削り、同裏六行目に
「さ」とあるのを「め」と改め、次の丁の裏一及び六行目にいずれも「た」とある
のを削り、同裏六行目「なす」とあるのを「する」と改め、原判決三二枚目―-記
録七三丁――裏二行目に「宣明」とあるのを「闡明」と改め、同裏一〇行目に「が
ごとき」とあるのを「の」と改め、次の丁の表二行目に「がごとき」とあるのを削
り、次の行に「ら」とある次に「れ]を加え、原判決三五枚目―-記録七六丁--
表六行目に「政」とあるのを「制」と改め、同裏四行目に「許可す」とある次に
「る」を加え、同六行目に「すぐれて」とあるのを削り、原判決三七枚目――記録
七八丁--表一〇行目に「申請」とあるのを削り、原判決三八枚目――記録七九丁
-―表二行目に「する」とあるのを「す」と改め、原判決三九枚目――記録八〇丁
-―表八行目に「了」とある次に「知」を加え、同裏九、一〇行目に「定立」とあ
るのを「設定」と改め、次の丁の表八行目に「た」とあるのを削り、同行に「ぬ」
とあるのを「ない」と改め、次の行に「なす」とあるのを「する」と改め、同行及
び同裏二行目にいずれも「定立」とあるのを「設定」と改め、同裏六行目に「当
た」とあるのを「当」と改め、同裏九行目に「(イ)」とあるのを削り、同行に
「出資者」とある以下次の丁表一行目に「とする。」とあるまでを同丁表一一行目
に「よつて」とある次に移し、同行に「行なう。」とあるのを削り、原判決四一枚
目――記録八二丁-―表二行目の「(ロ)」とあるのを「(ハ)」と改め、同行か
ら同表四行目までを同表一一行目の次に移し、同表五行目に「(ハ)」とあるのを
「(イ)」と改め、同表八行目に「評価」とある次に「することとし、その評価」
を加え、同行に「よつて」とある次に「優劣を」を加え、同表九行目に「(ニ)」
とあるのを「(ロ)」と改め、同表一一行目に「各預貯」とある以下を行を改め、
その前に「(ニ)」を加え、同裏七行目及び九行目に一「なす」とあるのを「与え
る」と改め、原判決四二枚目――記録八三丁――表一行目に「整備上」とあるのを
「整備場」と改め、同表二、七及び一〇行目並びに同裏一行目にいずれも「なす」
とあるのを「与える」と改め、同表一一行目に「点権場」とあるのを「点検場」と
改め、次の丁の裏九行目に「ね」とあるのを「なけれ」と改め、原判決四四枚目-
―記録八五丁――表三、四行目に「競願する事案」とあるのを「競合する申請人」
と改め、同表五、六行目を「優劣を数量的に表示して判定しなければならないとい
う必要性に基づくものである。」と改め、同表九行目に「建」とあるのを「健」と
改め、同裏二行目に「な」とあるのを削り、原判決四五枚目――記録八六丁――表
四行目に「ら」とある次に「の」を加え、同表九行目に「た」とあるのを「であ」
と改め、同裏一一行目に「出資者定額」とあるのを「出資予定額」と改め、次の丁
の裏六行目に「なす」とあるのを「する」と改め、原判決四八枚目-―記録八九丁
――表一行目に「期間」とあるのを「時間」と改め、同裏一一行目に「整備場を」
とあるのを「整備場と」と改め、四九枚目――記録九〇丁――表一〇行目に「必
要」とあるのを削り、原判決五一枚目――記録九二丁――表二行目に「具体」とあ
る次に「的」を加え、原判決五三枚目――記録九四丁――裏三行目に「国際交通の
場合と同様」とあるのを削り、同裏九行目に「道路、」とあるのを「道路の」と改
め、原判決五五枚目-―記録九六丁--表二行目に「その点」とあるのを「との
点」と改める。)。
一、被控訴代理人は次のとおり述べた。
(一) 被控訴人が原審において主張した具体的審査基準は、所定の手続を経て内
部的規定として設定され、かつ、書面に記載された。しかし、これは東京陸運局内
部における諒承事項であつて、作成名義人を明示した公文書として保存すべき性質
のものではなかつた。
また、被控訴人は本件申請等のための聴問に先立ち、聴問担当の各班の係長以上の
職員に対し、前記具体的審査基準を示し、その内容の解説をしたが、これを書面に
して各担当官に配布することまではしなかつた。
(二) 被控訴人主張の一覧表には、控訴人に対する各種目の評点及びその合計点
が記載されていたが、その点数は現在不明である。また、申請が認可されたものの
最下位の評点がいくらであつたかも現在明らかでない。
(三) 本件具体的審査基準においては、評価採点の大綱が示されたのみであつ
て、評価方法の細部にわたる事項は定められていない。
評価採点の方法、経過については、申請人全部に関する聴問及び現地調査の完了
後、これを審査する段階において、その衡に当つた東京陸運局自動車部旅客第二課
長、同課長補佐及び同課係長らが検討、協議のうえ、評価採点したものであるとい
うほかはない。
二、控訴代理人は、「被控訴人の前記主張事実は全部否認する。仮に、被控訴人が
その主張する趣旨の具体的審査基準を内部的に設定し、かつ、評価採点の大綱を本
件申請における審査手続を担当した職員に対し、予め示したとしても、その評価基
準は粗漏に過ぎ、特に、いわゆる車庫前面道路基準、仮眠所基準及び整備点検場基
準に関する評点については、被控訴人の主張自体評価の数量化につき徹底しないも
のがあつて曖昧であるばかりでなく、これらの点につき公正妥当な評点が行われた
ことを証すべき資料もない。」と述べた。
三、証拠として、控訴代理人は、当審証人A及びBの各証言を援用し、後記乙号各
証のうち第一一号証の成立は知らないが、その余はいずれも成立を認めると述べ、
被控訴代理人は、乙第二、三号証の各一ないし三、第四、五号証第六ないし第一〇
号証の各一、二及び第一一号証を提出し、当審証人Cの証言を援用した。
○ 理由
一、先ず、被控訴人の本案前の主張につき考えるに、この点に関する当裁判所の判
断は、原判決理由第一項(原判決六一枚目ー記録一〇二丁ー表三行目から裏七行目
まで)の記載と同じであるからこれを引用する(但し、同丁裏二行目に「たる」と
あるのを「である」と改め、同裏三行目に「設立中」とある前及び次の行に「右申
請」とある前にいずれも「控訴人主張の日時に」を加え、同裏六行目に「し」とあ
るのを削る。)。
二、次に控訴人の主張する本件処分の違法理由につき判断する。
最高裁判所は、同庁昭和四〇年(行ツ)第一〇一号事件につき昭和四六年一〇月二
八日言い渡した判決において「おもうに道路運送法においては、個人タクシー事業
の免許申請の許否を決する手続について、同法一二二条の二の聴問の規定のほか、
とくに、審査、判定の手続、方法等に関する明文規定は存しない。しかし、同法に
よる個人タクシー事業の免許の許否は個人の職業選択の自由にかかわりを有するも
のであり、このことと同法六条及び前記一二二条の二の規定等とを併せ考えれば、
本件におけるように、多数の者のうちから少数特定の者を、具体的個別的事実関係
に基づき選択して免許の許否を決しようとする行政庁としては、事実の認定につき
行政庁の独断を疑うことが客観的にもつともと認められるような不公正な手続をと
つてはならないものと解せられる。すなわち、右六条は抽象的な免許基準を定めて
いるにすぎないのであるから、内部的にせよ、さらに、その趣旨を具体化した審査
基準を設定し、これを公正かつ合理的に適用すべく、とくに、右基準の内容が微
妙、高度の認定を要するものである等の場合には、右基準を適用するうえで必要と
される事項について、申請人に対し、その主張と証拠の提出の機会を与えなければ
ならないというべきである。免許の申請人はこのような公正な手続によつて免許の
許否につき判定を受くべき法的利益を有するものと解すべく、これに反する審査手
続によつて免許の申請の却下処分がされたときは、右利益を侵害するものとして、
右処分の違法事由となるものというべきである。」と判示しており、当裁判所もこ
の判示を正当とするものであつて、しかもこの理は、申請人が個人であると法人で
あるとまた本件のように設立中の法人のために発起人が申請人となつた場合である
とにより、結論を異にすべきものではない。なぜなら、道路運送法が、自動車運送
事業の免許申請(同法五条)及びこれに関する聴問(同法一二二条の二)手続の規
定において、申請人が個人であるか法人であるかにつき別途に取扱うことなく、一
括して同一の規制に服させているばかりでなく、法人又は設立中の法人のために発
起人が申請人である場合も、窮極においては、法人制度に依拠して事業を行おうと
する個人の職業選択の自由が制肘を受けるのであつて実質的には個人として申請す
る場合と同日に論ぜられるべきものであるからである。
そこで、本件処分につき前記のような手続上の違法事由があつたか否かにつき検討
する。
(一) 請求原因一、二項の事実については当事者間に争いがなく、原審証人D及
びEの各証言によれば、昭和三六年度中東京陸運局に対し、一般乗用旅客自動車運
送事業の新規免許を求めた申請の件数は、法人タくシー四百数十件(一万輛余)、
個人タクシー約四、〇〇〇件であつたことが認められる。
(二) 成立に争いのない甲第一号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第一号
証、成立に争いのない第一〇号証の一、二、当審証人Cの証言により真正に成立し
たと認める第一一号証、右証言前掲各証人、原審証人F、G、H及びI(第一回)
の各証言、原審における控訴人本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、
本件審査手続を開始するに当り、被控訴人は昭和三六年一月七日付けで原判決添付
別紙一の基本的方針を公示し、東京陸運局の自動車部旅客第二課の職員を中心とし
て多数の競願者の中から限定された免許申請者を迅速かつ公平に選び出すため、ハ
イヤー・タクシー事業に関する行政における知識・経験に基づき、道路運送法六条
一項各号に関する具体的審査基準(同条項三号、五号については、被控訴人主張の
四つの具体的審査基準すなわち原判決四〇枚目ー記録八一丁ー裏八行目から四二枚
目ー記録八三丁ー裏一行目まで記載のもの。)及び約五〇項目にわたる調査事項を
作成決定し、かつ、これを記載した書面を作成保管し、実施方法として、聴問担当
官は、右調査事項に拠つて調査し、現地調査の報告と併せて前記審査基準に基づい
ておおよその評価をし、その点数等の一覧表を作成し、被控訴人による最終的評価
及び申請の許否の決定に委ねるべきものとしたこと、被控訴人は、昭和三六年五月
一三日原判決添付別紙二の記載のある葉書を、同月三〇日に行われた聴問の前に各
免許申請者に郵送したこと、聴問の実施については、法人タクシー関係の聴問担当
官として、係長級以上の職員一名と、一般職員一名の組み合せによる六班を編成し
て当らせたが、これら担当者らは、事前にタクシー事業の免許につき豊富な知識と
経験を有する課長補佐の指導のもとに、討論・受講等を内容とする研修を施され
(但し、聴問実施の中途から応援に加わつた者については、研修の方法によること
なく、数日間見習いとして傍聴し、又は実施方法の概略の説明を聞いて聴問に加わ
る場合もあつた。)、聴問事項・順序等をよく理解して聴問に当り、調査の結果
(現地調査の結果も含む。)について前記審査基準に従つて一応の評価を施し、そ
の結果を一覧表にまとめて被控訴人による判定に供したこと、被控訴人は数多の補
助職員の協力のもとにこれら資料を整理し、前記審査基準に基づいて評価し、申請
者の優劣を判定し、評点の多い者から順次申請を許可したこと、そして、本件申請
に関しては、原判決事実摘示第三の三の2(一)(原判決四三枚目ー記録八四丁ー
表二行目から原判決五〇枚目ー記録九一丁ー表六行目まで)の記載のとおりの調査
及び評価をし、これに基づいて本件申請を却下することとしたこと、被控訴人は聴
問手続に当り、前記具体的審査基準の内容は原判決添付別紙一、二記載の事項以上
の詳細が部外に漏れることは審査手続の公正を保障するに害ありとの見解のもと
に、前記具体的審査基準を「秘」扱いにし、聴問担当官らに対して聴問及び現地調
査の実施に当つては、前記調査項目につき申請者の返答を聞くに止め、聴問の際釈
明してその申請者に有利な主張立証を促がすということは厳に戒めるという方針で
臨むことを命じたこと、従つて、本件申請に関する聴問においても聴問担当官ら
は、前記調査項目につき申請者らに質問して返答を記録するに止め、現地調査につ
いても、その前に控訴人に通知せず、従つて、その立会もなく実施し、調査担当者
が実見したことのみを記録したに過ぎず、控訴人からその主張を聞き、立証を尽く
させる方法を採らず、また、以上のほか控訴人に対し、本件申請につき主張・立証
の機会を与えることはしなかつたこと、これがため、本件申請中資金計画に関する
調査においても、控訴人が原判決添付別紙二の記載事項中、持参書類(3)、
(6)項の趣旨を誤解して、弥栄化学株式会社については、その出資能力の裏付け
として同社名義の預貯金通帳、預金証書、有価証券等及び納税証明書を聴問の際提
示すベきところを、同社の試算表及び決算書を持参して提示したのに対し、聴問担
当官らはその誤解を解いて、適確な資料を提示するよう促すことをしなかつたこ
と、控訴人の右設立中の会社に対する発起人としての出資予定額は一、〇〇〇万円
であつたから、控訴人が同人名義の四、〇〇〇万円以上の預金額に達する預金通帳
を持参し、右通帳の一、〇〇〇万円を超える部分は控訴人の出資能力の裏付け資料
としては用をなさない一方において、弥栄自動車株式会社の他の出資者の中には、
出資予定額に対し、その裏付け資料が十分でなく、そのままでは資金計画の判定上
不利な評価を受ける虞があつたのに聴問担当官らは、控訴人の不明を正して控訴人
名義の前記預金通帳等を他の出資者の出資能力の裏付け資料として活用しうるかど
うかにつき尋ねてやらなかつたこと、車庫前面道路の幅員につき現地調査の結果側
溝部分を除くと、六メートルにやや足りなくなり、減点事由となるが、若しこの不
備が当時指摘されれば、控訴人としては、側溝にコンクリート製の蓋を施し、ほぼ
六メートル道路としての効用を全うしうるようにする用意があつたが、このような
弁疎の機会が与えられなかつたこと、仮眠所施設の不備の点についても、同建物は
控訴人が専門の設計士に依頼して特に運転者の安眠の確保を配慮し、相当な費用を
かけて設計・施工したものであり、次のような長所を有し、自信のあるものであつ
たのに、その趣旨を係官に十分説明する機会が与えられなかつたこと、すなわち、
右仮眠所は鉄筋コンクリート二階建の建物の一階を車庫兼整備際検場及び事務所と
し、二階を仮眠所としたものであるが、堅固な建物(二階の床コンクリート・フラ
ブの厚さ一二センチメートル。他はこれに準ずる。)であるうえ、窓枠にはアル
ミ・サツシを用い、窓ガラスの厚さも三ミリメートルのものとして気密性及び騒音
の遮断に特に留意してあり、それゆえ、仮眠等が二階にあつても木造建物である場
合に比べ、騒音・震動等の影響をはるかに少いと推測しうるものであること(但
し、鉄筋コンクリート造りの中小建策物は、建物の内部で発生した金属音等の鋭い
音を構造体を介して別室に伝え易い一面があるので、この点に鑑み控訴人は、整備
点検等において行う作業は、日常の簡単な点検と、騒音を発生しない小修理に限定
し、荀も、仮眠の妨げとなるような修理は近隣の自動車修理工場と特約し、そこで
行なわさせる方針を定めていた。)、また、整備点検場と有蓋車庫とが兼用にされ
ている点についても、控訴人としては無蓋車庫部分約二〇〇坪のうちの一部に屋根
を蔽つて有蓋車庫とする計画も立てていたのであり、被控訴人からの示唆があれ
ば、控訴人としてはこれに応じて改善する意思と能力とをもつていたこと、
以上の事実を認定することができ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。
(三) 前認定の事実関係によれば、被控訴人は本件申請に対する許否を決するに
当り、前記のとおり具体的審査基準を設定して審査したことは認められるが、本件
申請の却下理由となつた前記資金基準、車庫前面道路基準、仮眠所基準及び整備点
検場は免許の許否を決するにつき重要であり右基準に合致するか否かを決定するに
は微妙、高度の事実認定を要するものであるというべきであるから、申請の却下処
分をする場合は特に、右基準の適用上必要とされる事項について聴問、現地調査そ
の他適切な方法によつて、申請人に対しその主張と証拠の提出の機会を与えなけれ
ばならないというべきところ、本件申請の審査においては聴問及び現地調査が形式
に流れて委曲を尽くさず、その本来の目的を果していないと認められ、若し、右審
査手続において申請人に弁疎の機会が与えられ主張・立証が尽くされその結果が斟
酌されたとすれば、本件処分とは異つた判断がなされる可能性がなかつたとはいえ
ないから本件審査手続はこの点において瑕疵があり、このような手続を経てされた
本件処分は、その余の点を判断するまでもなく、違法であり、取消を免れないとい
うべきである。
三、以上の次第で被控訴人が控訴人の請求を却下した本件処分は、公正な手続によ
つて判定を受けるべき控訴人の法的利益を侵害したという点において違法として取
り消すべきであるから、控訴人の本件請求は正当として認容すベく、これと趣を異
にする原判決は取消を免れない。
よつて民訴法九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 吉岡 進 兼子徹夫 榎本恭博)
(原裁判等の表示)
○ 主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者双方の申立
原告
「被告が、昭和三六年八月三一日、原告に対し、六一東陸自旅二第五二三六号をも
つてした一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請はこれを却下するとの処分を取
り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求める。
被告
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求める。
第二 原告の主張
(請求の原因)
一 東京都区内における一般乗用自動車運送事業の免許につき、被告は道路運送法
一〇三条二項に基づき昭和三五年七月四日付で東京陸運局自動車運送協議会に諮問
したところ、同協議会は同年一二月二四日今後おおむね一年間に二、〇〇〇輛程度
の車輌増強を行う(この場合において、一人一車制の個人タクシーを免許するとき
は、その供給輸送力を考慮し一輛を〇~五両に換算する)ことが必要と認められる
旨の答申をし、該増強措置を実施するにあたつて要望事項を付したため、被告は、
昭和三六年一月七日右答申に基づき同事業の供給輸送力の増強に関する基本的方針
を算定し、これを同法施行規則第六三条一項の規定により別紙一のとおり公示し
た。
二 原告は、設立中の会社たる弥栄自動車株式会社の設立発起人代表であるが、昭
和三六年二月六日、右発起人代表として、被告に対し、一般乗用旅客自動車運送事
業の新規免許を求める申請(以下「本件申請」という。)をしたところ、被告は調
査を開始し、同年五月三〇日聴聞を実施したうえで同年八月三一日付六一東陸自旅
二第五二三六号をもつて本件申請は同法六条三号および五号に該当しないとしてこ
れを却下した(以下この処分を「本件処分」という。)しかし、原告は本件処分に
不服であつたので同年一〇月三〇日運輸大臣に訴願したが、その後三か月を過ぎた
現在まで裁決はなされていない。
三 本件処分は以下に述べるように違法であるから、その取消しを求める。
1 違法理由の一
本件処分は、事実の認定につき独断を疑われることのない公正な手続により判定を
受けるべき原告の法的利益を害したという点で違法である。
(一) 原告のほかに一般乗用旅客自動車運送事業の免許の申請をしたものはたく
さんいたが、これらの申請書全部が免許を受けられるのではなく、免許を受け得る
者の数は限られていた。
ところで、道路運送法は、一般乗用旅客自動車運送事業免許の申請についての許否
を決するための手続きに関し、一定の場合に聴聞することを要求しているほかには
なんらの規定も設けていないのであるが、一般乗用旅客自動車運送事業の免許は実
質的には憲法に定める職業選択の自由を規制するものであるから、申請についての
許否を決する手続きは公正であると同時に、申請者が多数ある場合にはすべての申
請者に対して一律平等に適用されるものでなければならず、
また免許事務を所管し、その処理に当たる者は、恣意的な取扱いをしたとの疑いを
もたれないようにすべきは当然である。すなわち、免許事務を所管、管理する被告
としては公正な手続きによつて認定した誤りのない事実に基づき、各申請が同法六
条一項各号所定の免許基準に適合するか否かを判断し、その基準に適合する場合に
はこれを免許し、そうでない場合にはその申請を却下するという方法により、各申
請の許否を決すべき法的義務を負うものであり、他方、免許申請者は事実の認定に
ついて恣意的な取扱いをしたとの疑いをもたれないような公正な手続きに基づいて
許否の判定を受けるということについての法的な利益を保障されているものといわ
ねばならない。
そうだとすると、多数の免許申請がある場合、ある免許申請が、「免許すべき車輛
数」の枠のなかに組み入れられるだけの適合性を具備するかどうかを決定するにつ
いては、申請事案の各個について優劣の評価をつけ、もつてその優位の者から順次
免許を与えてゆき、かようにしてその免許者の数が予定の制限量の限度に達すれ
ば、それ以外の申請分についてはこれを却下するという仕方で実施されることにな
らざるを得ないのであるが、問題は、多数競合する免許申請の間における優劣を評
価するについての方法いかんと評価の対象となるべき事項の範囲いかんとにあり、
この点に関しては、当該申請事案が免許基準の一つひとつにどの程度適合するかが
合理的かつ公平な評価方法により審査されるべきものと考えられるが、同法の定め
る免許基準はきわめて概括的かつ抽象的であるから、合理的かつ公平な審査をする
ためにはより具体的な免許基準ないし評価基準(以下これを「具体的審査基準」と
いう。)を定めておく必要があるし、また、その具体的審査基準の内容そのもの
も、合理的かつ公平なものでなければならないことはもちろんである。さらに具体
的審査基準を設定するということの実質的な意味は、その内容を申請者その他の利
害関係人に知らせることによつて申請者に弁疎と証拠提出の機会を与えるとともに
聴聞にあたる係官にも予じめこれを知らせておくことによつて、これを聴聞、審査
もしくは評価の具体的な取扱指針あるいは取扱準則たらしめ、もつて審査手続きの
公正と公平とを期するにあるのであるから、
申請についての許否を決する者は申請を審査する前に予じめ定めた具体的審査基準
を申請者その他の利害関係人に知らせなければならないのである。
(二) ところが、本件申請が審査される前に、右に述べたような具体的審査基準
が設定されていたということはきわめて疑わしく、原告は具体的審査基準について
予じめ知らされていなかつたため、右具体的審査基準の適合性に関する事実につい
ての弁疎とそれを裏付けるに足る証拠とを提出する機会を与えられず、また、聴聞
にあたる係官の全員に予じめ右具体的審査基準が知らされているというわけではな
かつたのであるから、具体的審査基準設定の意味はほとんど無いにひとしく、この
ことは審査手続きの公正を疑わしめるに足るものといわざるを得ない。
ことに具体的審査基準は微妙でありかつ高度の批判力を必要とする点を含んでいる
から、その内容を予じめ申請人に知らせ、これについての弁疎と証拠とを提出する
機会を与えるのでなければ事実認定の過程における独断を避けることは難しい。
なお、別紙一に示す公示の内容はいずれも抽象的であり、具体的審査基準というに
は足りないから、この公示をもつて具体的審査基準の告知と同視することはできな
い。
2 違法理由の二
(一) 仮に右主張が容れないとしても、本件処分はその基準となつた具体的審査
基準が著しく合理性を欠くものであり、また、その事実認定に重大な誤認と恣意的
な判断を含んでいるから違法である。
(1) 被告は本件申請が審査される前に、具体的審査基準として、(1)資金基
準(2)車庫前面道路基準(3)仮眠所基準(4)整備点検場基準の四つが設定さ
れており、本件申請についてもその基準により審査判断したというのであるが、仮
にそのような基準が設定されていたとしても、それだけで競合する多数の申請者の
優劣の順位を決定するということは、著るしく不合理かつ不公正であるといわざる
を得ない。けだし、競合する多数申請者の優劣の順位の決定は、各申請者の施設、
組織、資本構成の全域にわたる諸要素を公正に認定し、評価し、比較することによ
つてはじめて可能なのであり、認定、評価の範囲が被告主張のような四つの具体的
審査基準に限定さるべき合理的な根拠はないからである。
(1) 資金基準について
申請者の提出する定期預金通帳に基づく、いわゆる挙証度の評点方法は不合理であ
る。この点についての問題は、預金の時期いかんと、預金の期間(六か月定期と三
か月定期といつた期間)のいかんとによつて当該預金についての見せ金性の度合を
機械的に測定し、それに従つて当該預金通帳による挙証度を算出するということの
合理性いかんであるが、たとえば株式の払込みにおける払込金が見せ金であるかど
うかは、当該払込金が株式引受人による他からの借入金をもつてまかなわれたもの
であるか否かの点と、その払込金が会社の設立後、間もなく引き出され、その貸主
に返還せられたか否かの点とが決め手となつて当該払込金の見せ金性の有無が判定
されるのが正しい。しかるに、被告は、当該定期預金が他からの借入れによるもの
であるかどうかも確かめることなく、しかも払込後の事情経過などのことは全然顧
慮することなく、かえつて払込みのなされるはるか以前の時期において、すでに見
せ金性の度合もしくはその可能性の度合を、単に当該定期領金の預入時期と預金の
期間の長短とに基づいて測定しようとし、その測定の方法として、当該定期預金の
預入れの時期が聴聞の日に近くなるにつれて見せ金性の度合が濃厚になり、したが
つて、それだけいわゆる挙証度は低下するものとし、また、預金の期間について
は、その長期のものほど見せ金性の度合が薄くなり、したがつて、それだけ挙証度
は高くなるものとして取り扱うものであるが、このような具体的審査基準に合理性
は全くない。
また、出資者の出資予定額につき、その充実見込度合を判断するにあたり、その判
断資料を貯金通帳、預金証書、有価証券の提示という方法に限定し、借入金、保険
証書等を除外した点も合理的な根拠がない。
(2) 車庫前面道路基準について
被告は車庫前面道路の幅員が六メートル以上の場合には0点以上満点未満の評点を
つけるといい、車庫前面道路の有効幅員の最低基準を四メートルとしたその理由に
ついて建築基準法四三条二項および東京都建築安全条例二七条を挙げて説明してい
るが右条例二七条でさえ実情に応じて幅員四メートルの条件を緩和しているのであ
るから、常に必ず四メートルでなければならないものではない。また、たとえば、
原告の場合は、後記のように、本来は区画整理に基づく六メートル巾員の舗装道路
として設計せられたものであつたのを、両側に二〇センチメートル宛の側溝を設け
ることになつたために道路の巾員が五メートル六〇センチメートルの補装道路とな
つているのであるが、このような場合の評価はどういうことになるのか、さらにま
た、その際、右の側溝に石またはコンクリートの蓋を施し、それだけ道路の効用を
拡張することができる場合にこれをどう評価するのか、とくにその評点はどうなる
のか等々の事項について右具体的審査基準はなんら明らかにしていないのは不合理
である。
(3) 仮眠所基準について
被告は、仮眠所施設が整備場の上にあるような施設計画には低い評点を付すること
になつているというのであるが、そのような具体的審査基準もまたきわめて形式的
機械的であつて、合理的根拠を欠くものといわざるを得ない。たとえば、原告の場
合は、後記のように、当該仮眠所施設が耐震、耐火、かつ防音機能の十分備わつた
鉄筋コンクリート造りの堅牢無比な建物の二階に設置されているのであるが、この
ような状況の存否について右具体的審査基準はなんら考慮をしておらず、仮眠所が
整備場の階上に位置するというだけの理由で一率に低い評価点を与えることにする
というのは、まことに不合理かつ非常識である。
(4) 整備点検場基準について
被告は、整備点検場の施設が車庫と兼用の場合は低い評価点をつけるとのことであ
るが、このような考え方は、物の機能、効用の面を全く無視するもので不合理とい
わなければならない。そもそも、車庫の施設については無蓋のものであつても規定
の収容能力をもつ施設でありさえすれば車庫施設としては必要かつ十分であつて、
そこに低評価の要因たるべきものはなんら存在しないはずである。しかも整備点検
場は、常に整備点検のための車輌で一ぱいになつているわけのものではなく、また
整備点検の作業はほとんど例外なくごく短い時間内に仕上つてしまうのが常であつ
て、一日の大半は作業のないままの点検場としてとどまることが予想せられるので
あるから、その整備点検作業の行なわれない間の点検場はそのまま有蓋車庫として
の機能ないしは効用を兼ねもつことになるはずである。そのような機能的兼用が予
想せられる以上、とりわけ他に十分な無蓋車庫がある場合には、整備点検場と有蓋
車庫との兼用は決して相互の固有の機能効用を妨げることにはならない道理であ
り、したがつて、この兼用のゆえに低い評価をする具体的審査基準は不合理たるを
まぬがれない。
(2) 被告が本件処分をなすについてした事実認定は重大な誤認と恣意的な判断
を含んでいる。
(1) 資金計画について
被告は本件申請書の内容に示されている事業開始に要する資金総額二、〇〇〇万円
が充実されることの証明が十分ではなかつたので預金の時期、呈示証書の種類、証
書の名義が自己名義か否か等について審査をした結果、合計一、二二四万円程度し
か充実の見込みがなく、資金計画が十分でないと判断して低い評価をしたというの
であるが、かかる判断は著しく妥当を欠くものである。なるほど、原告の出資予定
額は一、〇〇〇万円であるが、被告も自陳するように、原告についてはその第一銀
行等の定期預金および富士銀行の当座預金合計四、三〇〇万円が聴聞の際に呈示さ
れているのであつて、その呈示したゆえんは、原告が呈示額の限度において必要な
資金を調達しうることを明らかにしたものである。したがつて、被告のいうよう
に、出資予定額のみが充実見込額であると判断すべきものではない。ことに原告は
発起人代表であつて、商法一九二条の規定により会社の設立に際して発行する株式
について発起人としての引受けおよび払込担保責任を負うべきものとされているこ
とにかんがみれば、この場合、発起人代表たる原告の右資力を資金充実見込額の算
定にあたつて評価しないのは失当である。
また、被告はJほか六名の出資予定額一、〇〇〇万円に対し、充実見込額は計二二
四万円であるというが、それはつぎのとおり誤りである。すなわち、(イ)Jの分
については、富士銀行王子支店八〇万円、三菱銀行王子支店七〇万円の各定期預金
証書を、(ロ)Kの分については、富士銀行王子支店五〇万円、三菱銀行王子支店
一〇〇万円の各定期預金証書を、(ハ)Lの分については、富士銀行駕籠町支店五
〇万円、三菱銀行王子支店五五万円の各定期預金証書を、(ニ)Iの分について
は、富士銀行王子支店二〇万円、三菱銀行王子支店二〇万円の各定期預金証書を、
(ホ)Mの分については、富士銀行王子支店二〇万円、三菱銀行王子支店一〇万円
の各定期預金証書を、(ヘ)Nの分については、富士銀行王子支店三〇万円の定期
預金証書を、それぞれ聴聞の際に呈示したところ、被告は、右各定期預金の評価に
あたり、申請の二ケ月以前に預金した六カ月定期の評価割合を一〇〇パーセント、
申請の二カ月以内に預金した六カ月定期の評価割合を八〇パーセント、聴聞の三カ
月以内に預金した六カ月定期の評価割合を四〇パーセント、三カ月定期の評価割合
はすべて一〇パーセントとしたのであるが、しかし、一般には、定期預金の場合、
満期の早く到来するものほど回転率も利用度もより高くなるのが常識であり、した
がつて、それだけ事業資本の充実見込みへの期待もしくは可能性が強まるべきもの
である。したがつて、事業資本の充実に対する関係においては、六カ月定期よりも
三カ月定期の方がより高く評価せられなければならない筋合であるにかかわらず、
被告はこれと全く逆な評価をし、三カ月定期については僅かに一〇パーセントとい
うきわめて低い評価をつけているのは一般の常識と経験法則を無視するものがあ
り、同じ六カ月定期について、その預入れの時期によつて顕著な評価の差をもう
け、預入れの時期が株式の払込時期に近くなればなるほど当該定期預金に対する評
価を低くすることとしているのも合理的根拠を欠くものである。
さらに、原告は弥栄化学の分につき、聴聞の際に昭和三五年八月三一日現在の決算
書(同社第一九期のもの)を示して資金充実見込額がその出資予定額をはるかに超
過していることを明らかにしたのにかかわらず、被告はその際これを証明すべき有
価証券等の提出がなかつたからとして挙証度を0と評価したのである。しかし、原
告は右決算書によつて同社の昭和三五年度決算期の利益金(一五、七三三、三七〇
円)とその経理上の根拠を説明し、かつ貸借対照表における資産の部に表示されて
いた定期預金(五、〇〇〇万円)、当座預金(一、一九七万九、三三二円)に関す
る各預金通帳および有価証券(一四八万四〇〇円)、手持受取手形(五、八九八万
四、三六一円)等を添付して提出すべき旨を担当の係官に申し出たところ担当の係
官は「それにはおよばない、決算報告書だけでよろしい。」旨確言したので、かね
てから株式会社の決算報告書が会社資産の現状を報告するものであり、法規の厳格
な規制のもとに、株主総会の承認決議を経るものである以上、内容の虚構は許され
ないと信じていた原告は、聴聞の席上各預金通帳等の証明書類を係官に提出する手
続きを見合わせたからといつて、そのことが当該決算報告書の信憑力もしくは挙証
度に影響するようなことはないと考え、担当係官の意見に従い、あえて右証明書類
の添付を割愛し、決算報告書を提出するだけにとどめたのである。いうまでもな
く、株式会社の決算報告書は、当該決算額における会社資産の具体的内容を報告公
表するものであるが、それが株主総会の承認決議を経たものである限りその報告内
容には相当に高い信憑力があるものである。そして原告の提出した右決算報告書に
よれば、弥栄化学の昭和三五年度決算期における利益金は、一、五七三万三、三七
〇円に達しており、その他会社資産として多額の定期預金、当座預金、有価証券、
手持受取手形のほか、土地や建物等の不動産を保有していることが一目瞭然となつ
ている。しかるに、被告は、右のように、これによつては同社の資産を評価するこ
とができないとし、同社による充実見込額は0であると評価したが、これは非常識
かつ不合理な評価であるといわなければならない。
(2) 車庫前面道路について
被告は、原告の本件申請によれば、右両側溝部分には蓋もなく該部分には車輛が乗
ることができないから、蓋のない両側溝計四〇センチメートルを減ずれば、五メー
トル六〇センチメートルにすぎず、六メートルの最低基準巾員に達しないから、低
い評価をしたというのであるが、果して五メートル六〇センチメートルでは右に述
べた実質上の必要をみたすことができないかどうか。もちろん、車庫前面道路は車
の出入りすることによつて交通障碍が生ずるような状態であつてはならないが、具
体的評価基準にいう六メートルは、そのための一応の基準にすぎないものとみるべ
く、ただ単に形式的機械的に右基準をあてはめて評価すべきではない。すなわち、
右の評価は、当該車庫前面道路が、車庫前面道路として必要な点をみたしているか
どうかを、実質的に判断すべきである。ところで、本件において、車庫前面道路
は、もともと区画整理計画に基づき設置された六メートル道路であり、その両端に
側溝が付されたため幅員五メートル六〇センチメートルとなつたものである。そし
て、一端一メートルとらなければ歩行者の安全確保が困難であるというのは過大で
あつて、一端六〇センチメートル位あれば足りるとみるべきである。
ことに車庫前面道路は車庫に出入りする自動車のほとんどが徐行する場所であるか
ら道路幅員は五メートル六〇センチメートルあれば交通保安上も支障はない。仮に
形式的に六メートルの幅員が必要であるとしても、蓋のない側溝であるために四〇
センチメートル不足しているのであるから、蓋のない両側溝がいかなるものか、つ
まり蓋をつけることが容易であるかどうか、蓋をつければ完全に使用できるかどう
かを当然考慮すべきところ、本件の場合は、蓋をつけることがきわめて容易であ
り、その結果車がその部分に乗つてもなんら支障となるような状況ではないから、
本件申請における車庫前面道路は具体的審査基準によれば満点となるべきものであ
り、側溝の使用可能性を無視した被告の評価は単なる言いがかりにすぎない。
(3) 仮眠所について、
被告は本件申請のように運転者の仮眠所が自動車整備場の階上にあるものは、審査
の際低い評価をしたとし、その理由を挙げている。しかしながら、運転者が帰庫し
て仮眠する時間内に自動車の整備場が雑音をたてることはない。なぜなら、この整
備場で行なう整備は、たとえばタイヤの取替えとか小修理とかでごく短時間に容易
にできるものに予め限定されているから、朝の出庫前の車両点検時間に充分できる
ものである。また、車両の休む時間、すなわち、午前二時から同七時ないし八時に
かけての運転者の仮眠中に整備が行なわれることもない。このことは、原告が昭和
三六年一月一五日東京車両整備株式会社との間に専属の整備に関する契約を締結
し、ここで短時間に容易にできない車両の整備の一切をなさしめるようにしている
ことからみて明らかである。なお、これらのことは、聴聞の際にも原告から契約書
により十分に係官に説明した。そのうえ、仮眠所、整備場等の主要施設はすべて鉄
筋コンクリートで作られているから仮に整備場において多少の騒音が生じても、よ
くこれを防ぎうるのであつて、仮眠の妨害となるようなことはないのである。した
がつて原告の場合は満点の評価がなされるべきであつたのに、被告は低い評価を
し、しかもその具体的な評点を示さないのである。
(4) 整備点検場について
被告は自動車整備場と有蓋車庫とが兼用になつていることも評価が低くなる要素と
なつているとし、タクシー会社における自動車車庫(有蓋)と整備場はその機能を
十分に発揮するためにはそれぞれ別個に設備される方がよいというのであるが、し
かし、整備場と有蓋車庫とが兼用になつていても有蓋車庫たるの機能を発揮するの
になんらの支障もないはずであり、別個設置の場合に比して機能的にはなんら優劣
はない。すなわち、原告の場合は広い無蓋車庫を有しており、右無蓋車庫は本件申
請にかかる自動車全部を収容してもなお十分余りがあるうえ、整備場も七九・三三
八平方メートル(二四坪)あるから、少なくとも四台は収容することができるし、
また、前記のとおり、整備場においてはタイヤの取替えや、その他のごく短時間で
できる小修理程度のことしか行なわないのであるから、たまたま雨天の場合におけ
る点検にあたり、整備場を有蓋車庫として使用するという意味においては兼用とい
えるが、これによつて被告のいうような弊害があるとはいえないのである。
(二) さらに、本件申請と競合して申請し免許を受けた者の中には、被告のいう
具体的免許基準の適合性において、原告のそれより、綜合的に見て遥かに劣るつぎ
のような事例がある専ら、本件処分は、不公平であり、違法である。
(1) 関東交通興業株式会社(以下「関東交通」という)について
同社の免許申請は、会社の本店および営業所所在地を東京都杉並区<地名略>(地
目は畑で七畝〇四歩)とする計画を内容とするものである。すなわち同社は、その
事務所、仮眠所、車庫等の主要施設を同所に設置することとして、それらの建築に
関する具体的計画を示したうえ免許申請したものであるが、被告は、右免許申請が
道路運送法六条一項各号の基準に適合するものとして昭和三六年八月末ごろ同社に
免許を与えた。
しかし、右計画の内容によれば、右営業所(主要施設)は、農地(これを宅地に転
換するには手続上幾多の困難が予想せられる。)のうえに設置することとなつてい
るばかりでなく、同所の車庫前面道路幅員は四メートルにも満たないものであるか
ら、これを被告のいう具体的免許基準への適合性という観点からみればきわめて低
い評価しか与ええないものといわざるを得ない。しかるに、被告は、営業所を農地
のうえに設置することとしてなした同社の右申請事案と、営業所を宅地のうえに設
置することとして申請した事案とを、同様に取り扱つたもので、原告については、
上述のように事後に修正することを考慮しなかつたのと対比すれば、原告に対する
取扱いと右関東交通に対する取扱いとは明らかに公平を欠くものであるといわねば
ならない。
因みに、同社の免許申請の際の計画はその後全然実現されるところとならず、同社
は申請にかかる農地とは別個の土地である杉並区<地名略>に主要施設を建築し、
ここを営業場所として営業開始要件の確認を受けることとなつた。
また、前記杉並区<地名略>を本店所在地とし、「関東交通興業株式会社」なる商
号を有する会社は昭和三六年一〇月三日設立せられたもの(代表取締役O)の外同
年一一月九日設立せられたもの(代表取締役P)の存在することが登記簿上明らか
であるが、前者は資本の額がわずか六〇〇万円也にすぎず、しかも同年一二月一二
日にはその商号を「関東不動産株式会社」と変更すると共にその営業目的を不動産
の売買およびあつ旋その他に変更し、ついで昭和三七年五月二五日には商号を「株
式会社日本ベンダー」と変更し、ことに右営業開始要件の確認に先だつ同年一二月
一二日にはその商号と目的とを変更して不動産売買業の会社にかわつてしまつてい
る。
もつとも、被告は後者(昭和三六年一一月九日付設立の会社)に対し免許を与えら
れたものと考えているかも知れないが、もしそうだとすれば、同会社代表取締役P
は当時すでに別会社で一般乗用旅客運送事業を経営していたのであるから、同人の
主宰経営する新規法人としては免許を受けることができないはずであるにかかわら
ず、被告は同会社に免許を与えたものであつて、その不当は明白であり、そのよう
な不適格会社を原告より優位に評価することの不合理、非常識もはなはだしい。
(2) 株式会社ツーリングタクシー(以下「ツーリングタクシー」という。)に
ついて
同社は、免許申請において会社の本店の所在地および営業場所を豊島区<地名略>
とする計画を内容としていたのに、その計画を実現せず免許後にいたり営業場所を
豊島区<地名略>の一に変更した。ところが被告は右の点を看過して営業開始要件
を確認したのである。とくに留意すべきは、同社の免許申請における主要施設の設
置場所は豊島区<地名略>の住宅地域に所在することになつていたのであるが、そ
こには幅員四メートル以上の車庫前面道路は実在していなかつた点である。
この点につき、被告は事業施設の用に供する土地のうち前面道路に沿つてこれに接
着する部分を巾二メートルにわたつて私道とする旨をツーリングタクシーが主張立
証したので車庫前面道路の点では失点としなかつたというが、原告の場合には車庫
前面道路の側溝に蓋をつけることにより、実用六メートルとなることを考慮しなか
つたのに、ツーリングタクシーの場合について右のような取扱いをするのは不公平
であり恣意的であるといわざるを得ない。
(3) 轟交通、山友交通、北辰交通、根の上交通について
これらの会社の場合、いずれも車庫前面の有効幅員が六メートルに満たないもので
免許となつた。すなわち、轟交通のそれは五メートル六〇、山友交通のそれは五メ
ートル四〇であるが、北辰交通のそれは、狭い所で四メートル五〇、広い所で五メ
ートル七〇、根の上交通株式会社のそれは五メートル六〇である。
(4) 新日本交通、楽々タクシー、ライオン交通、曙自動車、東京楽天地、根の
上交通(前記)について
これらの会社の場合、いずれも原告と同様に、運転者のための仮眠施設が自動車整
備場兼有蓋車庫の上に位置するにかかわらず免許となつた。しかも、原告の場合は
その建物が本格的な鉄筋コンクリート造りであるから階下の騒音や振動を十分に防
止することができるのに反し、これら五会社のそれは構造等において木造かモルタ
ル塗りかであり、原告のそれより遙かに軽量粗雑の建築材によるものであるから、
騒音や振動を十分に防止することはできないものと推察せられる。
(被告の本案前の主張に対する原告の主張)
被告は、本件処分は設立中の会社たる弥栄自動車株式会社に対してなされた処分で
あるから、原告にはその取消しを求める法律上の利益を有しないと主張するが、設
立中の会社の執行機関である発起人代表たる者はその資格において、かつ自らの名
義をもつて免許の申請をし、それが却下された場合にその取消しを求める法律上の
利益を有することはいうまでもない。したがつて、本訴は、適法である。
第三 被告の主張
(本案前の主張)
本件訴えは、つぎの理由により不適法であるから却下されるべきである。
すなわち、本件処分は原告Qに対してなされた処分ではなく、設立中の会社たる弥
栄自動車株式会社に対してなされたものである。本件申請は、設立中の会社たる弥
栄自動車株式会社がなしたものであつて、被告はこの申請を審査した結果、同社に
対し、本件処分を行なつたものである。してみれば、原告Q個人は本件処分によつ
てなんらの影響を受けるものではなく、この取消しを求める法律上の利益を有しな
い。しかるに本訴は右Qが提起しているものであるから不適法として却下されるべ
きものである。
(本案の答弁および主張)
一 請求原因第一項の事実を認める。
二 同第二項の事実を認さる。
三 同第三項の主張を争う。
1 原告主張の違法理由の一に対して
(一) 原告は、タクシー事業の免許は実質的には憲法に定める職業選択の自由を
規制するものにほかならず、本件申請の際は多くの申請者のうちから限られた少数
の者を選択してこれに免許を与える場合であつたのであるから、その審査手続きは
公正であると同時にすべての申請者に対して一律平等に適用されるべきであり、免
許申請者には、行政庁において恣意的な取扱いをしたとの疑いをもたれないような
手続きに基づいて許否の判定を受くべき法的利益が憲法一四条により保障されてい
るとし、この見地から本件審査に関しては、まず、審査手続きの開始前に具体的審
査基準が定められるべく、また、その内容そのものについては合理的かつ公平なも
のでなければならず、さらにそれは審査より前にその内容を申請者その他の利害関
係人および聴聞に当たる係官に予じめ知らせておかなければならないと主張し、右
のような手続きをとることなくしてなされた本件処分は公正な手続きによつて判定
を受くべき原告の法的利益を害した違法の処分であると主張する。
なるほど、行政庁が処分を行なうに当たつてなす事実の認定、法律の適用等の実体
的な判断が公正であるべきはもちろん、その手続きについても公正が要請されるこ
とは当然であつて、そのために法は各種の行政処分の目的、性質、内容等に照らし
て、それぞれに相応する手続きを定めているのである。このように処分の手続きに
ついて法の定めがある場合は、これを履践しなければならないことはもちろんであ
るが、手続きについて法に別段の定めがない場合は、どのような手続きによるか
は、原則として行政庁の合理的な裁量によるものというべきである。
(1) ところで、本件審査に関しては具体的審査基準を定めてそれを申請者その
他の利害関係人に知らせ、これについての弁疎と証拠を提出する機会を与えなかつ
たから本件処分は違法であるというのであるが、右のような具体的手続きの保障が
原告主張のようにただちに憲法一四条に由来するものであるとはとうてい考えられ
ない。すなわち憲法一四条は法の下の平等の大原則を宣明しているのであるから、
右原則は立法、行政その他の上で最大の尊重を必要とすることはいうまでもないと
ころであるが、右原則の上に立ちつつ、各個の場合に如何なる手続きによるかは当
該行政行為の目的、性質、その他の一切の具体的事情を斟酌して合目的的に決すべ
き事柄であり、右原則がただちに原告主張のような具体的手続きとなつてあらわ
れ、これが法的拘束力をもつとするがごときははなはだ飛躍した論理であるという
べきである。要は、本件処分の目的、性質、その他に照らし、被告が採つた本件審
査における手続きが誤りであり、ひいては法の下の平等を害するがごときものであ
つたかどうかによつて違法性の有無が決せらるべきである。
(イ) そこでまず、本件処分の性質を明らかにすることとする。
一般乗用旅客自動車運送事業が、いわゆる公共的事業に属するものであり、古物営
業、質屋営業等のような警察的規制を目的とする警察許可事業でないとみるべきこ
とについてはおそらく異論のないところであろう。
一般乗用旅客自動車運送事業は、警察許可事業がいわゆる警察障害の予防ないし排
除を目的として一般的に禁止され、その障害がないと認められるときに許可される
のとは異なり、免許制をとつているが、その理由は、その事業が提供する役務に対
する需要者である国民の福祉を積極的に増進することを目的として(1)役務の内
容の適切性(2)役務の対価の妥当性(3)需要者に対する役務提供の義務性
(4)役務提供の継続性(5)役務提供の継続性の前提となる事業経営の安定性を
確保しようとするにある。したがつて、その事業に対する規制の面においても、事
業計画を定めさせ、運賃を認可制にし、運送の引受けを義務付け、事業の休廃止に
許可を必要とする等積極的に事業の運営内容のいちいちについて強い監督規制が加
えられており、また事業の経営の安定性を確保するための需給関係を考慮して免許
を与える者の数を限定するなどの保護が加えられているが、その結果、免許を受け
た者の地位が一種の権利として認められ、その地位に基づく利益の侵害の排除が保
障されるべきものとされてきているのも警察許可事業との大きな性格の違いである
といえる。
一方、警察許可事業といわれるものは、自由に放任して事業を経営させると、公共
の秩序に障害を与えるおそれがあるため一般的に禁止するものであつて、事業の経
営に対する規制も警察障害を予防排除するという見地から必要最少限度に資格設備
等の監督をなしうるにとどまり、料金を認可し事業計画を定めさせるなど積極的に
事業の経営内容に立ち入ることなく、許可を受けるべきものの数にも制限がない等
その事業の経営に特別の保護も加えず、また、事業の廃止による役務提供の杜絶に
対しても国はなんらの関心をもたず、さらに許可による地位に基づいて現に有する
利益もまつくた利権として認められべるきものでなく、単なる反射的利益であるに
すぎない点も免許事業と異なるところである。
以上のように一般乗用旅客自動車運送事業の免許政と警察許可事業の許可制との法
的性質にはきわめて多くの相違する点があるが、このような法的性質の違いは免許
ないし許可の申請をいれるかどうかの基準の内容、性質にもあらわれるのである。
すなわち、警察許可については警察的障害の予防排除のためにとつている一般的禁
止措置を個別的な場合になお継続する必要があるかどうかという点から審査がなさ
れ、行政庁としては障害が明確に認められない限り個人の権利自由を回復しなけれ
ばならない義務がある。したがつて許可すかどうかの基準も明確かつ画一的であり
基準の適用にあたつての行政庁の裁量はすぐれて覊束的であることが要求されるの
である。
ところが、免許の方は公共の福祉を増進するために特定の適格者を選ぶべきことと
されるため、その一般的禁止は特定の場合にのみ解除されるにとどまり審査におい
ては個人の権利自由の回復という側面はむしろ副次的であつて、もつぱら申請が個
別的事情に即して公共の福祉の増進にとり有効かつ必要であるか否かを探求すると
いう公益的な判断を中心としてなされる。このように免許するかどうかは公益的裁
量に基づくものであるから、免許基準は抽象的多義的であることが不可避であり、
そのためかえつて個別的事情における処分の合目的性を担保することができるので
ある。
さて、道路運送法六条一項は、免許基準としてつぎのような五つの項目をかかげ、
一般自動車運送事業の免許をしようとするときはこれらの基準に適合するかどうか
を審査してこれをしなければならないと規定している。
(1) 当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること。
(2) 当該事業の開始によつて当該路線又は事業区域に係る供給輸送力が輸送需
要量に対し不均衡とならないものであること。
(3) 当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること。
(4) 当該事業を自ら適格に遂行するに足る能力を有するものであること。
(5) その他当該事業の開始が公益上必要であり、且つ、適切なものであるこ
と。
右五つの基準はいずれも抽象的なものなのであるが、このことは上記免許の法的性
質に由来するのである。免許申請が五つの基準に適合したからといつて必ず免許し
なければならないとしていない点もまたそうである。
(ロ) つぎに、審査の目的から考えてみる。
申請が免許になるためには、さきに述べたように申請計画が当該事業の遂行上適切
なものであること(道路運送法六条一項三号)および事業者が当該事業を適確に遂
行するに足る能力を有するものであること(同条同項四号)が要求されるから、当
然審査の焦点も計画の適切性ということと事業遂行能力の有無におかれることにな
るが本件の場合、多数申請者の大部分は、もし増車台数の枠さえなければ、一応右
の基準に適合するものとみて免許してもよい適格者なのであるから、勢い本件審査
の重点は、多数の適格者のなかから、少数特定者を選定するための適性の優劣の判
定におかれるということである。ところで計画および能力の適性の有無、優劣を判
断するためには、まずどういう事項を基準にしてその有無、優劣を判定するのか、
そういつた判断の基準とするべき具体的な事項のいくつかを設定して、各人につき
その事項を調査しなければならない。また、右の調査の結果判明した各事項がどう
いう状態にあれば優良とみるのか、あるいは不良とみるのか、といつた評価基準と
でもいうべきものすなわち具体的審査基準が必要となる。そして本件申請の審査に
当たつても後に述べるように、具体的審査基準が用いられているのである。右具体
的審査基準は右にいう調査事項のどのような状態に対してどのように評価するかの
基準であつて、いわば判定の基準とすべき調査事項に評価基準を結びつけたもので
ある。
個々の免許申請者の計画および能力は各人について調査した基準事項を右の評価基
準に照らして評価した結果、その適切性の有無優劣が定まるのであるが、免許台数
には一定の枠があるのであるから、評価の結果各申請者全部がその計画および能力
において優良なものであつたとしても、右の全部について免許を与えるわけにはい
かないわけである。そこで申請者の成績の間に開きをつけるため、合理的かつ公平
な評価方法によつて申請事案のいちいちについて評価をつけたうえ優位のものから
順次免許台数の枠に満つるまで免許を与えてゆくという方式によつて免許許否の審
査と判断をせざるを得ず、被免許者の数が制限数に達すればそれ以下のものは却下
するという仕方で免許行政を行なわざるをえないのである。
(2) つぎに、具体的審査基準が審査開始前に確立されているべきであること、
および係官がこれを了して聴聞にあたるべきである点についてであるが、審査基準
のうち適性の有無優劣を判断するための基準とすべき事項すなわち調査事項を特定
して各人につきその調査をすること、これは審査が恣意にわたることを防止するた
めに必要なことであり、可能なことでもある。そこで被告としてもこのことを留意
のうえ審査に先立つて右判定の基準とすべき事項を後述のとおりに特定して、これ
に基づき係官をして調査をさせた次第であるが、聴聞によつて調査すべき基準事項
については、右のように審査前に確立することが必要であるとしても、右調査の結
果をどのように評価するのか評価基準まで果して審査開始前に定立して、しかもこ
れを係官に知らせておく必要があるかどうか、またその方が妥当なのかどうかはは
なはだ疑問である。むしろ、調査結果の概況をみたうえで、適切な評価基準を設け
ることの方が、より妥当な場合もあると考えられる。要するに、公正な判断を確保
するための公正手続きという観点からすれば、調査の結果に基づいて優劣を評価判
定する際に公正妥当な評価基準が確立されておれば十分であり、係官がそのような
評価基準まで了知して調査に当たらねばならぬ必要はなく、調査対象に属する事項
の調査が終つて評価をなす直前にこれを定立すれば足りると考えられる。
(二) 被告は、本件申請ほか多数の事案を審査するにあたつては、事前につぎの
ような合理的な具体的審査基準を定立し、それらの審査を行ない、その結果に基づ
いて本件処分をした。
これについて各申請者を別異に取り扱い、法の下の平等を害するような措置をとつ
た事実はないし、また審査を担当した係官は右の具体的審査基準を了知のうえ審査
に当たつたことはいうまでもない。
(1) 資金基準
(イ) 出資者ごとの挙証度(貨幣単価をもつて表示する。)を算出し、この累計
を各出資者の出資予定額の総計によつて除したものをもつて、評点の根拠とする。
(ロ) 各出資者ごとの挙証度の累計を出資予定額の総計によつて除したものが三
〇%に満たない場合は、当該申請はこれを却下することとする。
(ハ) 資金計画については、聴聞の日に提出される預貯金通帳、預金証書、有価
証券等および納税証明書(以下「預貯金通帳等」という。)によつてこれを評価の
結果によつて定めるものとする。
(ニ) 評価方法はつぎによる。すなわち、各出資者の出資予定額につき、それぞ
れ提出したところの預貯金通帳等を評価することによつて行なう。各預貯金通帳等
の評価割合については別に定めることとする。
(2) 車庫前面道路基準
(イ) 車庫前面道路の幅員が四メートルに満たない立地条件にある申請は、これ
を却下する。
(ロ) 右幅員が六メートル以上ある場合は、満点の評点をなすものとする。
(ハ) 右、幅員が六メートル未満四メートル以上の品合には、〇点以上満点未満
の評点をなすものとする。
(3) 仮眠所基準
仮眠所施設が整備上の上に位するような施設計画については低い評点をなすことと
する。
(4) 整備点検場基準
(イ) 整備点検場の施設計画のない申請は、これを却下するものとする。
(ロ) 整備点検場の面積が別に定める基準以上のものである計画については、満
点の評点をなすものとする。
(ハ) 右面積が右基準以下のものについては、〇点以上満点未満の評価をなすも
のとする。
(ニ) 整備点権場の施設が車庫と兼用の場合は低い評点をなすこととする。
2 原告主張の違法理由の二に対して
(一) 被告は前記具体的審査基準によつて、本件申請につき審査を行なつてつぎ
のような評価をし、これらの評価を総合の結果、本件処分をしたのであるから、本
件処分は適法である。
(1) 本件申請は資金計画が十分とはいえない。
資金計画は、聴聞のときを基準時として評価されるのであるが、その評価は、右資
金計画に記載されている各出資者の出資予定額を各別に評価することによつてなさ
れるのである。しかして、出資予定額に対する評価は、その実現の担保の意味あい
で、聴聞の日に被告に対し提示された預貯金通帳等を評価することによつてなされ
る。その評価の結果は申請者が聴聞時において各人別の出資予定額の実現を被告に
対しどの程度立証できたかという立証の度合で示されるものであり、免許事務の実
務の上では前記のとおり挙証度と呼称されている。
ところで、右にいう評価という観念は、会計学的な意味のそれではなくて、あくま
でも免許申請審査のための評点を示ものとしてとらえられねばならない。したがつ
て、挙証度の数値も、評点を示しているにすぎず、その額に会計学的な意味がある
わけのものではない。しかして、免許申請の審査にあえてこのような評点制度を設
けたのは、すでに述べたように、免許が許されるのは競願する事案の一部に限られ
ているところから、あえて優劣をつけざるをえないという要請によるのである。
右の評価割合いについての基準の一部は、別表三「評価割合いの理由」のとおりで
あり、つぎのとおり合理的なものである。すなわち、企業の建全な維持という観点
からすれば、いわゆる「見せ金」は極力排除されなければならないから、被告とし
ては、この点に主眼をおいて提出預金通帳等の評価をなした次第である。したがつ
て、申請よりかなり以前に預金した六か月定期が、申請直前に預金した六か月定期
より優れ、また、後者が聴聞直前に預金した六か月定期より優れたものと判断した
ことは、合理的であるといわなければならない。また、見せ金を定期預金の形にす
る場合には、六か月定期よりも流動性の高い三か月定期を選ぶのが通常であるか
ら、三か月定期を六か月定期により劣るものとして評価したのは、これまた合理的
である。
ところで、原告は聴聞の際自らの第一銀行、三菱銀行および富士銀行等の定期預金
計二、八〇〇万円と富士銀行の当座預金一、五〇〇万円合計四、三〇〇万円を呈示
したほか、発起人Jら定期預金合計五〇五万円を呈示したが、本件申請にかかる申
請書の申請の内容をなす事業開始に要する資金総額二、〇〇〇万円が充実されるこ
との証明が十分ではなかつた。すなわち、設立中の会社たる弥栄自動車株式会社の
出資者およびその出資予定額は、つぎの表中(イ)および(ロ)に示すとおりであ
つたが、被告において、右預金の時期、呈示証書の種類、証書の名義が自己名義が
他人名義かなどについて審査した結果、つぎの表中(ハ)に示す金額の程度でしか
充実の見込みがないと判断して低い評価をした。
なお、(1)のRは、合計四、三〇〇万円相当額を呈示したが、出資予定額が一、
〇〇〇万円である以上、充実見込額も最高額一、〇〇〇万円とみるほかはなく、
(8)の弥栄化学の挙証度が〇とされたのは、聴聞の日に預金通帳等の提示がなさ
れなかつたためである。
(イ) 出資者氏名   (ロ)出資者定額   (ハ)充実見込額
(1) R    一、〇〇〇万円      一、〇〇〇万円
(2) J      一五〇万円       七一万円
(3) K      一五〇万円       五〇万円
(4) L      一〇〇万円       七九万円
(5) I       四〇万円        四万円
(6) M       三〇万円       一七万円
(7) N       三〇万円        三万円
(8) 弥栄化学      五〇〇万円         〇
計      二、〇〇〇万円    一、二二四万円
すなわち、出資予定額に対する充実見込額の比率は六一パーセントである。
(2) 本件申請は立地条件である、車庫前面道路の有効幅員が基準幅員たる六メ
ートルに満たない。
自動車車庫前面道路の最低幅員を四メートルとすることにしたのは、建築基準法四
三条二項に建築物の敷地と道路との関係について、地方公共団体が条例で必要制限
をなすことができると規定されており、これを受けた東京都建築安全条例二七条の
規定によれば、幅員四メートル未満の道路に面して自動車の出入口を有する敷地に
自動車車庫を建築してはならないと定められていることによるのであつて、もとよ
り合理的である。また、道路幅員六メートルというのは、交通安全の実際に適合す
る。すなわち、ハイヤー、タクシーに多く用いられる車輌は、おおむね一・六メー
トルから一・七メートルの車幅を有するが、このような車輌がすれ違う場合、相互
の車輛間隔は少なくとも〇・八メートルを保たなければならないから、この合計
は、四メートルないし四・二メートルということになる、さらに、自動車専用道路
でない限り、道路の両端には歩行者のあることを常に予想しなければならず、歩行
者の安全確保の見地からは、少なくとも一端につき一メートルをとらなければなら
ないからである。
本件申請では、右道路総幅員(両側の側溝部分の幅員を含む。)は六メートルに達
していたが、右両側溝部分には蓋もなく、その部分には車輌が乗ることができない
から、右両側溝部分四〇センチメートルを減ずると右道路の有効幅員は五メートル
六〇センチメートルにすぎないので、低い評価をすることにしたのである。
(3) 本件申請は仮眠所についても十分ではない。
本件申請のように運転者の仮眠所が自動車整備場の階上にあるものは、審査の際低
い評価をした。すなわち、長期間にわたるタクシー運転の激務に疲れて帰庫する運
転者が限られた短時間内に睡眠をとるように設けられた仮眠施設が騒音のはげしい
自動車整備場兼有蓋車庫の真上にあるようでは、運転者の睡眠を妨害する恐れが十
分にあるといわなければならない。けだし人の輸送を直接目的とするタクシー業に
おいては、安全輸送の見地から、故障による修理、故障または事故が予想される場
合の事前措置など、多種多様な整備点検がきわめて厳重に要求されるから、これら
の整備点検は時間のいかんを問わず行なわなければならない性質のものであるが、
朝方より深夜の二時ごろまでは、車輛の稼働する時間であり、この間に右の整備点
検を行なえば、運転者は乗務できないため歩合率の強い給与面に影響するばかりか
会社はそれだけ収入減となることはもちろん、当該事業区域内における供給輸送力
の減退をみることは必至といわねばならず、勢い、自動車の整備点検は車輛の稼働
しない時間である午前二時から同七時ないし八時にかけての運転者の仮眠中に行な
われることとなるからである。
(4) 本件申請は整備点検場が十分ではない。
本件申請では自動車整備場を有蓋車庫とが兼用になつていることも、低く評価する
要素となつた。けだし、タクシー会社における自動車車庫(有蓋)と整備場がそれ
ぞれの機能を十分に発揮するためには、各々別個に独立して設備された方が優れて
いることは明らかであるから、両者を兼用するものとした設備計画が両者を別個独
立した設備計画に比して低い評価しか与えられないのは当然である。また、有蓋車
庫は、法の要求する事業用自動車の仕業点検(道路運送車両法四七条)、定期点検
(同法四八条)の確実な実施のために必要不可欠なものである。すなわち、雨天、
炎天あるいは強風のもとでは、無蓋車庫でこれが実施を図ることはほとんど不可能
となるのに対して、有蓋車庫の中では充分できるしまた、雨水あるいは強烈な照り
つけまたは冷気から車両を防護するといつた点、清掃の利便といつた点でも、無蓋
車庫にない特長を備えている。したがつて、免許申請の審査にあたり、右のように
必要を認められる有蓋車庫があるかないか、あるいはそれが車庫専用かそれとも他
の施設と兼用になつているかといつたことによつて、優劣がつけられることは、む
しろ当然のことである。
原告は、原告の申請計画にある無蓋車庫だけで申請車両二〇台の収容をまかなうの
に充分な広さがあると主張しているが、無蓋車庫がどのように広大であつても有蓋
車庫を備えるのでなければ、計画としては充分でないことは右に述べたとおりであ
る。
(二) 原告は、本件申請と競合して申請し免許を受けた者の中には具体免許基準
の適合性において原告より劣る事例があるとして、本件処分は基準の適用が不公平
であり、違法であると主張するが、失当である。
(1) 関東交通について
同社の免許申請が会社の本店および営業所所在地を杉並区<地名略>および<地名
略>とする計画を内容としたもので、したがつて、同社の事務所、仮眠所、車庫等
の主要施設は当然同所に設置するものとしてその建築に関する具体的計画を示して
申請したこと、被告が道路運送法六条一項各号の基準に適合するものとして、昭和
三六年八月末ごろ右申請に免許を与えたこと、同社の主要施設が免許後右土地上に
建築されず、現在は杉並区<地名略>にあること、同社が免許を受けた後に右場所
を営業場所として営業開始要件の確認を受けたこと、前記杉並区<地名略>を本店
所在地とし関東交通興業株式会社なる商号を有する会社は昭和三六年一〇月三日設
立されたもの(代表取締役O)のほかに同年一一月九日設立せられたもの(代表取
締役P)の存在することが登記上明らかであること、および右昭和三六年一〇月三
日設立の会社は資本の額が金六〇〇万円であり、同年一二月一二日にはその商号を
関東不動産株式会社と変更すると共にその目的営業を不動産の売買および斡旋その
他に変更し、ついで昭和三七年五月二五日に商号を株式会社日本ベンダーと変更し
ていることはいずれも認めるが、その余の事実を否認する。すなわち、右申請にか
かる土地は当時地目は農地であつたけれども、現況が農地であるとは断定できない
状態であつた。のみならず、農地上の施設計画であつても、その計画実現の段階
で、宅地化される見込みが十分な場合には、審査上失点とはなしえないのであつ
て、同社の場合、聴聞の日に宅地化の見込みが十分である旨の管轄農業委員会の文
書が提出されたので、被告としては、右申請にかかる土地を宅地の場合と同様に取
り扱うことにしたのである。また、申請地の車庫前面道路の幅員は免許当時には六
メートルあつたが、たまたま同社が免許を受けた後になつて前記土地の所有者の都
合によつて使用することができなくなり、やむなく運輸開始前に事業計画変更の承
認願いを被告に提出するにいたつたので、被告においてこれが承認をしたのであつ
て、決して同社において免許申請当初から転地を企図していたものではないし、ま
た、被告としても右転地のことを知りながら免許を与えたものではない。
(2) ツーリングタクシーについて
同社が免許申請において会社の本店および営業場所を豊島区<地名略>とする計画
を内容としていたのに、その計画を実現せず、免許後にいたり営業場所を豊島区<
地名略>の一に変更したことおよび同社の免許申請における施設設置場所は豊島区
<地名略>の住宅区域に所在することになつていたが、そこには、幅員四メートル
以上の車庫前面道路が実在していなかつたことは認めるが、その余の事実を否認す
る。すなわち、同社の場合も国際交通の場合と同様、免許後に運輸開始前に事業計
画変更の承認願いの提出があつたのでやむなく承認を与えたものである。また車庫
前面道路については、同社が事業施設の用に供する土地のうち、前面道路に沿つて
これに接着する部分を幅二メートルにわたつて私道とする旨同社が主張立証したの
で車庫前面道路、幅員の点では失点の扱いはしなかつたのである。さらに、同社の
定款については、昭和三六年二月八日東京法務局所属公証人Sがこれを認証してい
た。
(3) 轟交通、山友交通、北辰交通、根の上交通、新日本交通、楽々タクシー、
ライオン交通、曙自動車、
東京楽天地について
轟交通および山友交通のそれぞれの車庫前面道路の有効幅員が免許申請時において
六メートルに充たないものであつたことは認めるが、北辰交通および根の上交通に
ついてはこれを否認する。新日本交通、楽々タクシーおよびライオン交通の場合、
それぞれ申請時において仮眠施設が自動車整備場の上にあつたことは認める。しか
し、そのいずれにおいても、仮眠施設の全部が自動車整備場の上にのつているわけ
ではない。すなわち、新日本交通およびライオン交通の場合は、仮眠施設(倉庫、
浴室、便所等)の階上にあり、整備場の一部には仮眠施設の一部がのつているにす
ぎない。楽々タクシーの場合は、整備場全体の上に仮眠施設がのつてはいるが、そ
れは仮眠施設の全体ではなく、その約半分の部分は別棟の事務所の階上に計画され
ているのである。原告の場合はこの楽々タクシーの場合に似ているが、仮眠施設の
半分以上が整備場全体の上にのつており、残余の部分は同じ棟の事務所の階上に位
置している。これら会社の右施設が粗雑の建築材によるものであるその点は否認
し、騒音や振動を防止することはできないとの主張については争う。すなわち、こ
れら会社における仮眠施設と整備場との上下関係が、原告の場合と全く同じである
と仮定すれば、原告の仮眠施設が受けるであろう騒音や振動はこれら会社の場合で
も避けられないであろうことは否定できないが、少なくもそれ以上の騒音や振動を
これら会社の仮眠施設が受けることはないのである。楽々タクシーについては、自
動車整備場が有蓋車庫と兼用になつていることは認めるが、新日本交通、曙自動
車、ライオン交通、東京楽天地については、右の事実を否認する。
なお、原告主張の会社について、申請の優位性を表示すれば、つぎのとおりであつ
て、これを通覧して分かるように、車庫前面道路の点、仮眠施設の点、整備場有蓋
車庫兼用の点について原告と原告主張の他の数社とを総合的に比較した場合、原告
より劣るものは一社も存在しないのである。
第四 証拠関係(省略)理由
一、本案前の判断
道路運送法にいう自動車運送事業の免許のごとき場合には、設立中の会社の発起人
は、その名において設立中の会社のために事業免許の申請をすることができると解
するを相当とする。同法施行規則四条二項一二号も右のことを前提とするものであ
ると解せられる。
けだし、会社がその事業を営むために設立される場合にあつては、もし設立の後に
なつて免許を受けることができないときは、会社は設立の目的を失い解散するほか
はなく、かくしては解散にいたるまでに生ずる会社経費も無視できないというべき
であるから、設立中の段階において上記のような方法により免許申請をし、事業活
動の法的可能性を確めたうえで、会社を設立することが社会経済上合理的であると
考えられるからである。ところで原告が設立中の会社たる弥栄自動車株式会社の発
起人代表であること原告が右発起人代表として、設立中の同社のために本件申請を
したこと、被告が右申請を却下する旨の本件処分をなしたことはいずれも当事者間
に争いがない。したがつて、原告は、本訴において本件処分の取消しを求めるにつ
き適格を有する。
二、本案の判断
1 本件処分の経緯について
東京都区内における一般乗用自動車運送事業の免許につき、被告が道路運送法一〇
三条二項に基づき昭和三五年七月四日付で東京陸運局自動車運送協議会に諮問し、
同協議会が同年一二月二四日今後おおむね一年間に二、〇〇〇輛程度の車輛増強を
行う(この場合において、一人一車制の個人タクシーを免許するときは、その供給
輸送力を考慮し一両を〇・五に換算する)ことが必要と認められる旨の答申をし、
その措置を実施するにあたつての要望事項を付したため、被告が昭和三六年一月七
日右答申に基づき同事業の供給輸送力の増強に関する基本的方針を策定し、これを
同法施行規則六三条一項の規定により別紙一のとおり公示したこと、この基本的方
針によれば、既存事業者(一人一車制個人タクシーを除く。)に対しては一、二〇
〇両程度について事業計画変更(増車)の認可を行ない、新規免許の申請者に対し
ては残余の両数について免許を行う予定であつたこと、前記原告の本件申請につき
被告が調査を開始し、同年五月三〇日聴聞を実施のうえ、同年八月三一日付六一東
隆自旅に第五二三六号をもつて、本件申請は同法六条三号および五号に該当しない
としてこれを却下したこと、原告が本件処分に不服であつたので同年一〇月三日運
輸大臣に許願したが、その後三か月を過ぎた現在まで裁決がなされていないことは
いずれも当事者間に争いがない。そして、証人Dおよび同Eの各証言によれば、右
増強措置に際して申請のあつた件数は、原告と同様の新規免許にかかるものは法人
タクシー四百数十社約一〇、〇〇〇輛余り、個人タクシー約四、〇〇〇人であつた
ことが要められ、右認定を左右すべき証拠はない。
2 違法理由の一について
道路運送法の採用する免許制が憲法二二条の保障する国民の職業選択の自由に対す
る制約であることはいうまでもない(最高裁昭和三八年一二月四日判決参照)。し
たがつて、同法六条一項各号は一般自動車運送事業の免許をする場合の基準を定め
てはいるが、右各号の定める免許基準はきわめて抽象的、多雑的であるので、事案
の処理にあたり多くの補助職員を指揮して免許申請の審査を行う行政庁としては、
多数の免許申請についてそのいずれが右の免許基準に適合するかどうかを適正かつ
公平に判断するため、審査手続の開始前に、内部でこれをできるだけ具体化した審
査基準(具体的審査基準)を設ける必要があり、このことは法の要請するところで
あるというべきであり、また、審査手続について同法は聴聞に関する規定(同法一
二二条の二、同法施行規則六三条の三を設けるだけであつて、上記の具体的審査基
準の告知、公表についてはなんら規定するところはないが、右の具体的審査基準は
法の委任に基づくものではなく行政庁が内部的に設ける判断基準にすぎないもので
あるにかかわらず、実際上は法規同然のものとして適用されて免許の許否がなされ
ること、および免許の許否が国民の職業選択の自由にかかわるから、具体的審査基
準に関し国民に弁解ならびに証拠提出の機会が十分に保障されるべきであることに
かんがみ、聴聞を行う場合はもちろんのこと、そうでない場合においても、予じめ
これを免許申請者に告知し、又は一般に公表すべきものと解するを相当とする。
ところで、原告は、本件審査に関しては、審査手続の開始前に具体的審査基準を定
めてこれを申請者その他の利害関係人に知らせなかつたと主張するので、この点を
検討する。
成立に争いのない甲第一号証、原本の存在および成立に争いのない乙第一号証に証
人F、G、H、I(第一回)ならびに前顕証人D、Eの各証言を綜合すると、本件
審査手続前である昭和三六年一月七日付で前記のとおり別紙一の基本的方針の公示
をしたこと、そして、被告が、右の基本的方針に則り、短期間に多数の免許申請事
案を合理的かつ公平に審査処理するため、内部で、いわゆるハイヤー、タクシー事
業に関する行政に長年たづさわつた経験のある職員を中心にして、従来の経験と知
識をもととして討論を重ねたうえ、道路運送法六条一項各号の基準に関し、具体的
審査基準(同条項三号、五号に関しては被告主張の四つの具体的審査基準)ならび
に約五〇項目にのぼる調査事項を作成決定したこと、被告が新規免許申請について
現地調査と聴聞を行うことを決めたこと、本件申請後間もなく右調査事項に基づい
て現地調査が行なわれたこと、被告が右具体的審査基準に基づき聴聞を行なうにあ
たり昭和三六年五月一三日別紙二のある葉書を同月三〇日行われた聴聞の前に各免
許申請者に送つたこと、聴聞の実施については、法人タクシー関係の聴聞担当係官
としては、係長級以上の職員一名と一般職員一名を一班として六班を編成して聴聞
に当らしめたが、担当係官は事前にタクシー事業の免許について豊富な知識と経験
を有する課長補佐を指導者として討議し、講義を受ける等の研修を受け(ただし、
聴聞が実施されはじめてから途中応援に加わつた一部の者の中には「以前に免許行
政にたづさわつた経験を有することもあつたため特別の研修は受けず、ただ数日見
習いをし同僚から説明をきいただけの課長補佐級の職員もあつた)、一定の聴聞事
項および聴聞の順序について十分理解したうえ、聴聞事項の印刷してある調査用紙
によつて聴聞を行なつたこと、そして各調査結果について予じめ設けられた評価基
準に従い評点を付し、一覧表に作成したうえ被告の制定に供したことがそれぞれ認
められ、右認定を左右すべき証拠はない。
右認定の事実によれば、被告は本件申請についての審査手続開始前に道路運送法六
条一項各号に関し具体的審査基準(同条項三号、五号に関しては被告主張の四つの
具体的審査基準)を定立し、これに基づき本件申請その他多数の新規免許申請事案
を聴聞のうえ審査を行なつたことおよび別紙一のとおり基本的方針を公示し、か
つ、別紙二の通知をしたことが明らかであるが、右の公示又は通知をもつては具体
的審査基準を免許申請者である原告に告知し、又は一般に公表したとはいえず、他
にこれを認めるに足りる証拠がない。したがつて本件処分には手続上の瑕疵がある
というべきである。しかしながら、本件におけるように、審査(手続)の結果に基
づいて処分がなされる場合において、その手続の公正が要請されるのは、処分の内
容の適法性、正当性を担保するためであるから、処分の内容が適法、正当である場
合には、手続上の瑕疵は、処分の取消事由とはならないものと解するを相当とす
る。それゆえ、本件処分に右のような手続上の瑕疵があつても、本件処分の内容が
適法、正当である以上、これを取り消すのは相当でないといわなければならない。
よつて、つぎに本件処分の内容の適否について判断する。
3 違法理由の二について
道路運送法は、自動車運送事業が公共の福祉にかかわるものであることにかんが
み、これを企業者の任意に任せず、自動車運送事業を経営しようとする者は運輸大
臣の免許(権限委任に関する同法一二二条、同法施行令四条により、一般乗用旅客
自動車運送事業については陸運局長の免許)を受けるべきものとし(同法四条)、
いわゆる免許制を採用しているが、他の営業免許と異なり、一般自動車運送事業に
ついてはもとより、一般乗用旅客運送事業についても、運輸約款、運賃事業の譲渡
を認可制とし、運輸の開始、運送の引受けを義務付け、事業の休廃止を許可制と
し、運輸大臣に事業改善命令、運送命令等の権限を与えるなど積極的に事業の運営
内容に積極的に監督規制を加え、法的に保障しているから、かような免許は免許を
受けた者に対し、包括的権利義務を設定する形成的行政処分であり、いわゆる特許
の性質を有するものと解せられるが、しかし、前記のように免許の許否が国民の職
業選択の自由にかかわること、ならびに同法が抽象的ではあるが免許基準を定めて
これを審査しなければならないとしていることにかんがみ、同法六条一項各号の免
許基準に適合するかどうかの判断は、いわゆる自由裁量ではなく、法規裁量に属す
ると解するを相当とする。したがつて、右各号の免許基準に関し設定された具体的
審査基準が、法の趣旨に沿わない不合理または不公平なものであるときは、かかる
具体的審査基準を適用して行われた処分は違法な処分といわねばならず、また、具
体的審査基準は合理的であつても、これを適用してなされる処分の基礎となつた事
実認定に重大な誤認と恣意的判断を含んでいるときは、その処分は違法であるとい
うべきである。なお、同法六条一項は、被告において免許をしようとするときは同
項一号から五号までに掲げる一定の基準に適合するかどうかを審査して、これをし
なければならないと規定するのみで、免許権者が審査の結果なすべき措置について
特に定めるところがないが、同条項の趣旨とするところは、申請事案が審査の結
果、同項各号のいずれかの免許基準に適合しないときは、免許しない建前であると
解するのが相当である。
(一) ところで、原告は本件審査手続きの開始前に具体的審査基準が仮に設定さ
れていたとしても被告の主張する四つの具体的審査基準だけで競合する多数の申請
者の優劣の順位を決定するのは合理的根拠を欠くと主張するが、前記具体的審査基
準の作成決定の経緯に徴し、右主張は失当というべきところ、原告は、さらに右四
つの具体的審査基準は不合理であると主張するので、この点を検討する。
(1) 資金基準((イ)出資者ごとの挙証度(貨幣単位をもつて表示する。)を
算出し、この累計を各出資者の出資予定額の総計によつて除したものをもつて評点
の根拠とする。(ロ)各出資者ごとの挙証度の累計を出資予定額の総計によつて除
したものが三〇%に満たない場合には、当該申請はこれを却下することとする。
(ハ)資金計画については、聴聞の日提出される預貯金通帳、預金証書、有価証券
等および納税証明書(以下預貯金通帳等という。)によつてこれを評価することと
し、その評価の結果によつて定めるものとする。(ニ)評価方法はつぎによる。す
なわち、各出資者の出資予定額につき、それぞれ提出したところの預貯金通帳等を
評価することによつて行なう。各預貯金通帳等の評価割合については別にこれを定
めることとする。
評価割合は別表三の評価割合の理由のとおりである。)について、原告は、定期預
金の時期、期間のいかんによつて当該預金についての見せ金性の度合を機械的に測
定し、その挙証度を算出し、当該預金が他からの借入れによるものであるかどう
か、また払込後の事情などについて考慮していないのは不合理であると主張し、こ
の主張には傾聴すべきものを含んでいるが、被告主張のように見せ金を定期預金の
形にする場合には、六か月定期よりも流動性の高い三か月定期を選ぶのが通常であ
るとも考えられるのであるから、このことをもつて直ちに右評価方法を不合理とい
うのは相当でなく、また、原告は出資者の出資予定額の充実見込度合の判断資料を
預貯金通帳、預金通帳、預金証書、有価証券の提示に限定し、借入金、保険証書等
を除外したのは合理的根拠がないと主張するが、タクシー事業が一般国民に交通手
段を提供するものとして公益性が強いため特に健全で安定した経営を持続すること
が要請されているというべきであるから、被告が資金基準の作成決定にあたり預貯
金通帳等現実的で確実性のある自己資金に限つて資金と認めたのは合理的根拠があ
るということができる。
(2) 車庫前面道路基準((イ)車庫前面道路の幅員が四メートルに満たない立
地条件にある申請は、これを却下する(ロ)右幅員が六メートル以上ある場合は、
満点の評点をなすものとする。(ハ)右幅員が六メートル未満四メートル以上の場
合には〇点以上満点未満の評点をなすものとする。)について、原告は、一律的に
幅員四メートル未満のものは却下するとしているのは、あまりにも形式的であり、
また、幅員に関する評価も不合理であると主張するが、道路交通の安全、円滑を図
る見地から建築基準法四三条二項、東京都建築安全条例二七条は、幅員四メートル
未満の道路に面して自動車の出入口を有する敷地に自動車車庫を建築してはならな
いと定められているのであるから、車庫前面道路基準四メートル未満をもつて却下
基準としたこと自体は、その基準の適用が形式的、硬直的であつてはならないこと
は格別として、合理的根拠があるというべき、また、幅員に関する評価は、これを
適用するにあたつての免許権者の合理的裁量に属すると解するを相当とする。
(3) 仮眠所基準(仮眠所が整備場の上に位するような施設計画については低い
評点をなすものとする。)について、原告は仮眠所が整備場の上に位するからとい
つて低い評点を付するのは形式的機械的であつて不合理であると主張するが、労務
管理の適正を確保するため、仮眠の施設が整備されていることが必要であり、かか
る施設が騒音を発する整備場の上に位していない方がよいことは事理の当然である
から、仮眠所が整備場の上に位するときは低い評点を付することにした右基準自体
は不合理でないというべきである。
(4) 整備点検場基準((イ)整備点検場の施設計画のない申請は、これを却下
するものとする。(ロ)整備点検場の面積が別に定める基準以上のものである計画
については、満点の評点をなすものとする。(ハ)右面積が右基準以下のものにつ
いては、〇点以上満点未満の評価をなすものとする。(ニ)整備点検場の施設が車
庫と兼用の場合は低い評点をなすものとする。)について、原告は、整備点検場の
施設が車庫と兼用の場合に低い評点を付するのは、物の機能、効用の面を無視する
もので不合理であると主張するが、有蓋車庫は事業用自動車の仕業点検(道路運送
車両法四七条)、定期点検(同法四八条)の確実な実施のため必要不可欠のもので
あり、かような有蓋車庫と整備場はそれぞれその機能を十分発揮するためには、別
個に設備される方がよいことはいうまでないから、整備点検場の施設が車庫と兼用
の場合に低い評点を付するも不合理ではないというべきである。
(二) つぎに、原告は、上記具体的審査基準の適用にあたり本件処分はその事実
認定に重大な誤認と恣意的な判断を含んでいると主張するので、この点を検討す
る。
(1) 資金基準の適用について、原告は聴聞の際に呈示した原告の定期預金等の
合計が四、三〇〇万円であつたと主張するが、本件申請書に原告の出資予定額が
一、〇〇〇万円である旨記載されていたことは原告の自認するところであるから、
たとえ原告が聴聞の際に呈示した定期預金等の合計が四、三〇〇万円であつたとし
ても、原告の出資予定額が本件申請書記載の一、〇〇〇万円を超えてなされるもの
とみるわけにはいかない。また、原告は発起人代表であつて商法一九二条による引
受けおよび払込担保責任を負う旨主張するが、たとえそうであるとしても、聴聞の
時点または本件処分の時点においては、上記のとおり原告の出資予定額一、〇〇〇
万円であつたのであるから、その充実見込額を一、〇〇〇万円と判断したのは当然
であり、このことをもつて被告の重大な誤認あるいは恣意的な判断というは当たら
ない。さらに原告はJほか六名の出資予定額一、〇〇〇万円についても定期預金に
ついてその満期の早く到来するものほど資金の回転率も利用度も高くなることは明
らかである旨主張するが、しかしそうだからといつて必ずしもそれだけ事業資本の
充実見込みへの期待もしくは可能性が強いとは限らないし、逆に満期の遅く到来す
るものが満期の早く到来するものに比して、充実見込みへの期待もしくは可能性が
弱いともいえない。けだし、定期預金にあつては、前記のとおり、その満期の早く
到来するものほど見せ金性が強くまた、その期間が長く、満期が遅く到来するもの
ほどその預金者に資金の余力があるとみることができるばかりでなく、これをその
銀行に担保に供して資金の貸付けを受ける場合にもその担保価値が高く、したがつ
て資金充実の見込みへの期待もしくは可能性も強いとみることができるからであ
る。したがつて、この点について被告の認定を一概に恣意的であると断ずること妥
当でない。さらにまた、原告は被告が弥栄化学の評価額を〇と評価したことをもつ
て不合理、非常識であると主張するが、右会社の昭和三五年度決算書の資産内容の
記載が原告主張のとおりであるとしても、成立に争いのない甲第四号証と前顕乙第
一号証とによれば右決算書は聴聞の行なわれた昭和三六年五月三〇日の九か月前
(したがつて、たとえば六か月定期預金はすでに満期となつている。)である昭和
三五年八月三一日現在における同社の静的な財産状態を示すにすぎず、聴聞の時点
における原告の資金計画の充実度を判断するには直接役立ちえないものと考えられ
るし、また前示のとおり各出資者の裏付けとなる預貯金通帳、預金証書、有価証券
等については聴聞通知書に当日持参なきときは挙証なきものとして処理される場合
がある旨が記載され原告に通知されたにかかわらず、聴聞の日に同社分についてこ
れらの書類の呈示がなかつたのであるからこれらのことを総合して考えると被告の
右評価をもつて不合理、非常識というのは当たらないというべきである。
(2) 車庫前面道路基準の適用について、原告は、本件申請にかかる車庫前面道
路は側溝に蓋をすることが容易であり、かつ、蓋をすれば六メートルの道路として
効用を発揮できるものであつたから、被告主張の前記基準によれば満点となるべき
である旨主張するが、本件申請にかかる車庫前面道路が蓋のない側溝があるため四
〇センチメートル不足し、五メートル六〇センチメートルしかなかつたことは原告
の自認するところであるから、右の側溝に蓋をすることが容易であり、かつ蓋をす
れば六メートルの道路として効用を発揮できるとしても、蓋をしなければ六メート
ルに達しない道路と蓋をしなくても初めから六メートルに達している道路との間に
評点の上で差異があるのは、けだし当然のことというべく、したがつて被告が本件
申請にかかる車庫前面道路に満点を与えなかつたからといつて、右評価が不合理で
あるというに当たらない。
(3) 仮眠所基準の適用について、原告は、整備場で行う自動車の整備はタイヤ
の取替え小修理など短時間に容易にできるものに予じめ限定されているから、朝の
出庫前すなわち午前二時から七時ないし八時ごろまでに十分にでき、運転者の仮眠
中に行われることはない、このことは聴聞の際に担当官に提示した東京整備株式会
社との間の契約書によつても明らかである旨主張するが、人の輸送を直接目的とす
るタクシー業においては、故障による修理、故障または事故が予想される事前措置
など多種多様な整備点検がきわめて厳重に要求され、また、これらの整備点検は時
間のいかんを問わず行われなければならない性質のものというべきであり、また常
務管理の重要性は前示のとおりであるからたとえ右原告主張の事実を認めるとして
も、仮眠所基準を適用するにあたつて、これを厳格に解し、本件申請におけるよう
に仮眠所が整備場の階上にある場合とそうでない場合とで評価を異にし、被告が前
者の場合を低く評価したからといつて、このことをもつて右評価が不合理であると
することはできないというべきである。
(4) 整備点検場の適用について、原告は、本件申請にかかる整備点検場が有蓋
車庫と兼用になつてはいるが、原告の場合は他に広い無蓋車庫を有しており、これ
に本件申請にかかる自動車全部を収容しても、余りがあるうえ、整備場も広く、少
なくも収容できるから、整備点検としてなんら弊害はないと主張するが、無蓋車庫
が、どのように広大であつても、有蓋車庫を備えるのでなければ、計画として十分
でないというべきである。けだし、前記のとおり法は事業用自動車の仕業点検、定
期点検の確実な実施を要求しているが、雨天、炎天あるいは強風のもとでは、無蓋
車庫でこれを実施を図ることはほとんど不可能であるのに対して、有蓋車庫はこれ
が可能であり、また、雨水あるいは強烈な照りつけまたは冷気から車輛を防護する
等の利点があることはいうまでもないから、有蓋車庫があるか否かあるいはそれが
車庫専用かそれとも他の施設と兼用になつているか否かによつて優劣がつけられる
のは当然のことというべきである。したがつて被告が原告の場合は整備点検場が有
蓋車庫と兼用になつているとして、これを低く評価したからといつて右評価が不合
理であるというは当らない。
(三) さらに、原告は、本件申請は免許を受けた関東交通等の場合に比し具体的
審査基準の適合性が高いから、本件処分は不公平であると主張する。
しかし、本件申請について多数の競合する申請事案があつたにかかわらず、免許を
受けうる者はきわめて僅かであつたことは前記のとおりであるから、かような多数
の免許申請者の中から少数の特定の者を選定するには、免許権者としては、予じめ
確立した具体的審査基準の適合性を判断し、その評点の総計をもつて優劣の順位を
決めるほかはないというべきところ、前顕証人E、Dの各証言を総合すると、関東
交通の場合は、申請にかかる土地は当時地目農地であつたが、聴聞の日に宅地化の
見込みが十分である旨の農業委員会の文書が提出されていたので、宅地同様に取り
扱つたこと、および車庫前面道路の幅員は免許後事業計画変更のため現況のように
なつたが、免許申請当時には六メートルであつたことが認められ、また、ツーリン
グタクシーの場合は、同社の定款については昭和三六年二月八日東京法務局所属公
証人Sの要証があつたこと、車庫前面道路の幅員は免許申請当時四メートルに満た
ないものであつたが、聴聞の日にこれを接着する部分を幅二メートルにわたつて私
道とする旨の証拠が提出されていたので、被告が失点の取り扱いをしなかつたこと
が認められ、その他の数社の場合もそれぞれ被告主張の事実(第三、三、2(二)
(3))が認められ、いずれも他にこれを左右するに足る証拠はない。以上認定の
事実によると、本件申請がこれらの会社の場合に比し具体的審査基準の適合性にお
いて優位にあつたものとも断じがたく、したがつて、原告の右主張も採用すること
ができない。
三 結論
以上の次第で、本件処分の取消しを求める原告の本訴請求は理由がないので、これ
を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとお
り判決する。
別紙一
公示
東京都区内における一般乗用旅客自動車運送事業の供給輸送力の増強について
東京都区内における一般乗用旅客自動車運送事業の適正供給輸送力については、昭
和三五年七月四日付け東陸諮第五号により東京陸運局自動車運送協議会に諮問して
いたところ、同年一二月二四日付け東自協答第五号により別紙写のとおり答申があ
つたので、これを尊重し、同事案の供給輸送力の増強に関する基本的方針を左記の
とおり策定したので、道路運送法施行規則第六三条第一項の規定により公示する。
昭和三六年一月七日
東京陸運局長   T

一 今後概ね一カ年間において二、〇〇〇両程度の増強を行う。この場合におい
て、一人一車制の個人タクシーを免許するときは、その供給輸送力を考慮し一両を
〇、五両に換算する。
二 増車申請の既存事業者および新規免許の申請者に対する増強車両数の配分につ
いては、諸般の事情を慎重に検討した結果、次のとおりとし、各別に審査を急ぎ審
査の完了したものより速かに処分をして、増強輸送力の早期実現を期する。
(1) 既存事業者(一人一車制個人タクシーを除く。)に対しては一、二〇〇両
程度について、事業計画変更(増車)の認可を行う。
(2) 新規免許の申請者に対しては残余の両数について免許を行う。
三 本措置に伴う申請に対しては、道路運送法第六条第一項に規定する免許基準に
適合するかどうかについて厳正公平な審査を行うことはもとよりであるがこの場
合、特に次の事項を重視するものとする。
(1) 事業計画変更(増車)認可申請について
イ 車両の管理および道路交通の円滑化に資するため、車庫の立地および収容能力
が適切なこと。
ロ 労務管理の適正を確保するため、運転者の休憩、睡眠又は仮眠の施設が整備さ
れていること。
ハ 事業の適正な運営を確保するとともに交通の安全と円滑に資するため、道路運
送法および道路交通法等交通関係法令の遵守が適切に行われていること。
二 輪送の安全をはかるため、交通事故の防止体制が確立され、その実効が期され
ていること。
ホ 事業計画の遂行および労務管理の適正をはかるため、運転者の確保の見とおし
が確実であること。
ヘ 供給輸送力の比較的稀薄と認められる地域又は国鉄および私鉄の駅における輸
送力の増強に資するよう適切な計画であること。
(2) 新規免許の申請(一人一車制個人タクシーを除く。)について
イ 事業の適正な運営を期するため発起人若しくは役員又はこれに準ずる者の結束
力が強固であり、かつ、事業遂行の主体性および自主性が明確であること。
ロ 事業の健全な経営を確保するため、資金計画が健全であり、かつ、資金調達の
見とおしが確実であること。
ハ (1)のイ、ロ、ホおよびへの事項
なお、新規に事業を開始する場合の規模としては、健全な経営を期待し得るものと
して二〇両程度が適切と考える。
(3) 一人一車制個人タクシー経営免許申請について
イ 一人一車制個人タクシーという特殊な事業形態を認めるに至つた経緯およびそ
の趣旨にかんがみ、概ね四〇才から五五才程度までの年齢であり、概ね一〇年以上
の運転経歴を有し、かつ、道路運送法および道路交通法等交通関係法令の違反行為
により過去三年にわたり行政処分又は司法処分を受けていないこと。
ロ (1)のイおよびへ並びに(2)のロの事項
四 本措置に伴う申請については、申請者の行う挙証に基き、これを審査するが、
さらに必要と認めるときは、道路運送法第五条第四項の規定に基き、必要な書類の
提出を求めることがある。
五 本措置に伴う申請書は、昭和三六年二月一一日(土曜日)午後零時三〇分まで
に東京都陸運事務所(東京都品川区<地名略>)において受理されるよう提出する
こと。既に受理された、又は今後受理される申請書の追加申請書の提出について
も、同様とする。
別紙二

1.実施日時 昭和36年5月30日 13時
2.実施場所 東京陸運局会議室新宿区<地名略>
3.出席者 発起人代表及びその他の発起人
道路運送法第5条第4項にもとづき当日持参願う書類は次のとおりです。
なお、御持参ないものについては挙証がないものとして処理される場合があります
から、ご注意下さい。
(1) 各発起人の居住証明書
(2) 各発起人の在職証明書
(3) 既存法人の申請人は最近の試算表および決算書
(4) 営業所、車庫等の建物又は土地を所有するときは登記簿謄本借入又は譲受
の場合は契約書(印鑑証明添付)および所有者の登記簿謄本
(5) 都市計画法上および建築基準法関係法令令により車庫の建設が支障ない証
拠書類
(6) 各出資者の裏付けとなる預貯金通帳、預金証書、有価証券等および納税証
明書
なお、申請人においてその他申請内容および証明のため必要とお考えの挙証書類も
御持参下さい。
昭和36年5月13日
東京陸運局長
別紙三

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