弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を札幌高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理
由にあたらない。しかし、職権をもつて調査すると、原判決は以下説示する理由に
より破棄を免れないものと認められる。
 すなわち、原判決は、被告人に後方安全確認義務違反の過失があるとする本件公
訴事実はその証明が十分でないという理由で無罪の言渡をした第一審判決を、事実
誤認であるとして破棄し、みずから「被告人は自動車運転者であるところ、昭和四
三年七月三〇日午後五時三〇分ころ、大型貨物自動車を運転し、国道三九号線を、
旭川市a町b丁目方向から同市c方面にむけ、時速約四〇キロメートルで直進中、
同市a町d丁目所在のΤ字型交差点の手前約三五メートル付近で自車左側を併進中
のA(当時一八年)運転の自転車を追い抜いたうえ、同交差点を左折進行しようと
したものであるが、同所付近は下り勾配となつているばかりでなく同交差点にいた
るまでの間は他に交差点もないので、そのまま同交差点において左折するにおいて
は、左折時に前記A運転の自転車との衝突等不測の事態を惹起する危険が予測され
るのであるから、かかる場合、自動車運転業務に従事する者としては、追従車の進
行状況についての確認を厳にし、その通過をまつてから左折する等事故の発生を未
然に防止すべき業務上の注意義務があるにもかかわらず、漫然、これを怠り、途中
時速を約二〇キロメートルに減じて進行した後、交差点手前約六メートル付近で、
右Aの自転車に一瞥をあたえただけで、すでに自車直後付近にまで近接している同
車の進行状況に対する注視を全く欠いたまま、自車の方が先行して左折できるもの
と軽信し、そのまま同交差点を時速約一〇キロメートルで左折しようとした過失に
より、同交差点上において同車の動静に全く気付かないまま左後車輪で同人の頭部
を轢過させるにいたり、よつて右同人をして脳挫滅により即死せしめたものである。」
との業務上過失致死の事実を認定判示し、被告人に対し有罪の言渡をした。そして、
原判決は、第一審判決が認定した事実のうち、
 1、被告車は、本件交差点手前側端から少くとも約六〇メートル手前の地点で自
転車を追い抜き、約二九メートル手前の地点で左折の合図をし、十分に速度を減じ、
約六メートル手前の付近で左後方サイドミラーで自転車が後方にいることを確認し
てから、ハンドルを左に切つたと認められること
 2、被告車の前方には、その進行を妨げるような先行車がなく、左折合図をする
までは、とくに減速もしていないこと
 3、被告車は、本件交差点を左折するにあたつて、きわめて低速でしかも大廻り
しているのに、被害者が転倒した地点は、被告車の左側後部寄りであつたこと
 4、被告車がAを左側後輪で轢過した際には、ほとんど左折を終える状況にあつ
たことの認定に誤りがあるとは認めがたいが、被告車の左折開始時「Aの運転する
自転車は被告人自動車の最後部から少なくとも二〇メートル以上後方にあつた」と
の認定は事実誤認であり、被告車が左折を開始した当時におけるAの自転車の位置
は、被告車とほぼ併進の状態であつたか、ないしは、これにきわめて近距離で追従
していたものと認めるのが相当である、とし、このような事実関係を前提として、
本件における被告人の後方安全確認義務懈怠の過失の有無につき、「被告人には、
後方の安全確認の注意義務を十分尽くさなかつたとの過失があつたといわざるを得
ない。すなわち、被告人が左折開始直前に、バツクミラーで左後方を確認した際、
自転車は、これとほぼ併進の状態であるか、ないしはこれにきわめて近距離で接着
して追従していたものであり、しかも、同所が約三度の下り勾配で、右自転車も相
当の速度で、加速進行していたのであるから、そのまま同交差点を低速で左折する
においては、右自転車との衝突等不測の事態を惹起する危険が容易に予測し得たも
のである。したがつて、かかる場合、自動車運転業務に従事する者としては、追従
車の進行状況についての確認を厳にし、その通過をまつてから左折する等、事故の
発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるといわなければならない。しかる
に、被告人は、これを怠り、漫然とバツクミラーで被害自転車を一瞥したに過ぎな
いため、同車の近接状態に気づかず、先に左折できるものと軽信して低速のまま左
折を開始した過失により本件事故を惹起したものと認められる。」
との判断を示しているのである。
 しかしながら、交差点で左折しようとする車両の運転者は、その時の道路および
交通の状態その他の具体的状況に応じた適切な左折準備態勢に入つたのちは、特別
な事情がないかぎり、後進車があつても、その運転者が交通法規を守り追突等の事
故を回避するよう適切な行動に出ることを信頼して運転すれば足り、それ以上に、
あえて法規に違反し自車の左方を強引に突破しようとする車両のありうることまで
も予想した上での周到な後方安全確認をなすべき注意義務はないものと解するのが
相当であり、後進車が足踏自転車であつてもこれを例外とすべき理由はない。
 これを本件についてみると、原判決が判示した前記事実関係によれば、被告人は
法に従い左折の合図をして左折を開始したもので、当時の道路および交通の状態等
具体的な状況に応じた適切な左折準備態勢に入つていたことがうかがわれるのであ
る。そうであるとすれば、被告人に過失があるとするためには本件当時とつた措置
よりもより周到な後方安全確認をなすべき注意義務を被告人に課するに足りる特別
な事情の存在が前提となるものであるところ、原判決がその説示をすることなく、
単に前摘示のような判示をしただけで、ただちに被告人に後方安全確認義務懈怠の
過失を認めたのは、法令の解釈適用を誤り、ひいて審理を尽くさなかつた違法があ
り、原判決を破棄しなければいちじるしく正義に反するものと認める。
(なお、被告車がAの自転車を追い抜いた地点につき、原判決が一方では「交差点
手前側端から少くとも約六〇メートル手前の地点」とする一審判決の認定を是認し
ながら、罪となるべき事実の摘示中に「交差点の手前約三五メートル付近」と判示
しているのは、理由のくい違いであり、また、原判決判示の罪となるべき事実によ
れば、Aは自転車で被告車の直後付近にまで近接したのち交差点において被告車の
左後車輪で頭部を轢過されたことになるが、これだけでは「近接」と「頭部轢過」
との因果関係が明らかでないから、刑訴法三三五条にいわゆる罪となるべき事実の
判示として不十分であるといわなければならない。)
 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決を破棄し、同法四一三条本文に従い、
本件を原審である札幌高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
 検察官山根正 公判出席
  昭和四六年六月二五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄

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