弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人の上告趣意第一点について。
 所論は、公職選挙法二五二条一、二項の規定によれば、同条項所定の罪につき刑
に処せられ、その執行猶予の言渡しを受けた者は、その裁判が確定した日から刑の
執行を受けることがなくなるまでの間、すなわち右刑の執行猶予期間中、同法によ
る両議院の議員並びに地方公共団体の長、その議会の議員についての選挙権及び被
選挙権を有しないこととされているが、これらの権利は国民の基本的人権に属する
もので憲法によるに非れば剥奪するを得ないものであること、また、地方公共団体
の選挙に関しては、国会議員の選挙の場合と異なり、憲法のなかに、その選挙権及
び被選挙権についての定めを法律に委任する旨の規定の存しないことからすると、
右規定は、憲法一一条、一五条三項に違反するというべきであり、これを適用した
原判決も違憲であると主張する。
 しかしながら、同法二五二条一、二項所定の選挙犯罪は、いずれも選挙の公正を
害する犯罪であつて、かかる犯罪の処刑者は、すなわち現に選挙の公正を害したも
のとして、選挙に関与せしめるに不適当なものとみとめるべきであるから、これを
一定の期間、公職の選挙に関与することから排除するのは相当であること、また、
憲法四四条が、国会議員及びその選挙人の資格を法律で定めるとしているのも、法
律で定めなくてはならないということであり、かような規定がないからといつて、
法律をもつてしても制限できないということにはならないし、国会議員についてさ
え法律で選挙資格を定めうるのであるから、地方公共団体の議員選挙についても同
様であるべきは当然であるとすること、当裁判所大法廷判決(昭和二九年(あ)第
四三九号、同三〇年二月九日言渡、刑集九巻二号二一七頁、昭和二四年(れ)第一
九〇九号、同二五年四月二六日言渡、刑集四巻四号七〇七頁各参照)の趣旨とする
ところであるから、所論違憲の主張は採るを得ない。
 同第二点について。
 所論は、違憲をいうところがあるけれども、該当法条を具体的に指摘していない
から不適法であり、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出ないものであ
つて、上告適法の理由とならない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三九年三月一三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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