弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人Aを懲役11年に,被告人Bを懲役13年に,被告人Cを懲役5年に,
被告人Dを懲役6年6月に処する。
未決勾留日数中,被告人A,同B及び同Cに対しては各430日を,被告人
Dに対しては410日を,それぞれその刑に算入する。
被告人A及び被告人Bから押収してある出刃包丁1丁(平成15年押第13
6号の1)を,被告人Bから押収してあるチャック付きポリ袋入り覚せい剤白色結晶
粉末1袋(同押号の3)を,被告人Dから押収してあるチャック付きビニール袋入り
覚せい剤白色結晶粉末1袋(同押号の2)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
第1 被告人Bは,
 1 法定の除外事由がないのに,Eと共謀の上,平成15年3月14日ころ,神戸
市F1区F2a丁目b番c号所在のホテル「F」d号室において,覚せい剤であるフェ
ニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する結晶粉末約0.05グラムを水に溶か
して,被告人Bにおいて,前記Eの身体に注射し,もって覚せい剤を使用した。
 2 第1の1記載の日時場所において,前記E(昭和61年6月16日生,当時1
6歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,自己の一時的性欲を満
たす目的で性交し,もって,青少年に対し,みだらな性行為をした。
第2 被告人4名は,いずれもG組組員あるいは同組関係者であるが,被告人Aが先
にHらから暴行を受けて負傷したことに激高し,同人にその報復をしようと企て,同
組関係者である分離前の共同被告人Iと共謀の上,
 1 平成15年4月5日午前4時ころ,神戸市J1区J2町e丁目f番g号先歩道上
において,前記Hに同行していたK(当時26歳)に対し,こもごも,手拳あるいは
所携のガラス製のビン等で同人の身体を多数回殴打するなどの暴行を加えた上,被
告人Aにおいて,所携の出刃包丁(刃体の長さ約15.3センチメートル。平成15
年押第136号の1)で前記Kの左前胸部を1回刺突し,よって,同人に全治約10
日間を要する左前胸部刺創の傷害を負わせた。
 1 第2の1記載の日時場所において,被告人A及び同Bにおいては,前記Hが死亡
するに至るかもしれないことを認識しながらそれもやむを得ない旨の殺意をもっ
て,同人(当時21歳)に対し,被告人Bにおいて「いてまえ。」などと怒号しなが
ら,前記Hの襟首をつかみ,被告人C,同D及び前記Iにおいて,こもごも所携の木製
の棒及びガラス製のビン等で前記Hの身体を多数回殴打するなどし,被告人Aにおい
て,所携の前記出刃包丁で前記Hの左腰背下部を1回刺突し,引き続き,同所から約
39.5メートル離れたL1区L2町h丁目i番j号先歩道上において,被告人B,同
D及び前記Iにおいて,多数回にわたり,前記Hの身体を前記ガラス製のビンで殴打
し,足蹴にするなどの暴行を加え,よって,同日午前5時37分ころ,同市M1区
M2町k丁目l番m号所在のM
病院において,前記Hを左腎臓刺創により失血死させたが,被告人C,同D及び前記
Iにおいては,傷害の犯意を有するに止まっていた。
第3 被告人A及び同Bは,共謀の上,業務その他正当な理由による場合でないの
に,第2の1記載の日時場所において,前記出刃包丁1丁を携帯した。
第4 被告人Dは,
 1 法定の除外事由がないのに,平成15年4月17日ころ,神戸市N1区N2
n丁目o番p号Nのq号の同被告人方において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノ
プロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって,覚せい剤
を使用した。
 2 みだりに,同月18日午前5時55分ころ,静岡県O1市O2r番地のs甲高
速道路Oパーキングエリアに駐車中の普通乗用自動車内において,覚せい剤である
フェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する白色結晶粉末約0.1651グラ
ム(同押号の2はその鑑定残量)を所持した。
第5 被告人Bは,
 1 法定の除外事由がないのに,平成15年4月30日ころ,東京都P1区P2
町t丁目u番v号所在のホテル「P」w号室において,覚せい剤であるフェニルメチル
アミノプロパンの塩類を含有する結晶粉末約0.07グラムを水に溶かして自己の
身体に注射し,もって,覚せい剤を使用した。
 2 みだりに,同年5月1日午前5時30分ころ,前記ホテル「P」w号室におい
て,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する結晶粉末約
0.607グラム(同押号の3はその鑑定残量)を所持した。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
【以下の説明においては,これまでに記載した略称表記等を用いるほか,①神戸
市K1区K2町e丁目f番g号先歩道上を「第1現場」,②神戸市M1区M2町h丁目
i番j号先歩道上を「第2現場」,③神戸市Q1区Q2町x丁目y番z号所在のQ3ビル
を「Qビル」,④判示第2の1及び第2の2の犯行を「本件犯行」と表記し,また
⑤被告人を単に名字で表記することもある。】。
第1 争点
 判示第2の1及び第2の2の各事実について,被告人A及び同Bの各弁護人
は,各被告人には被害者Hに対する殺意及び殺人の共謀がなく,被害者Kに対する傷
害の共謀も存しないと主張し,また同C及び同Dの各弁護人は,各被告人には被告人
Aとの間に被害者両名に対する傷害の共謀が存しないと主張し,被告人4名は当公判
廷においてこれに沿う供述をするが,当裁判所は,本件犯行時において,被告人4
名はK及びHに対し暴行を加える旨意思を相通じており,加えて,被告人A及び同Bに
おいては,被告人AにおいてHを本件包丁で刺突するかも知れず,刺突すれば同人を
死亡させるに至るかも知れないが,それもやむを得ない旨意思を相通じていたもの
と認定したので,その理由について,以下説明する。
第2 前提事実
1 前掲関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告人らの関係等
ア 被告人A
 被告人Aは,平成9年ころから,G組の組員となり,主に組長の運転手兼
秘書を務め,本件犯行当時はG組事務所の隣室において,被告人Cと同居していた。
イ 被告人B
 被告人Bは,平成6年ころ,G組の構成員になったものであるが,覚せい
剤取締法違反の罪等で平成11年に有罪判決を受けたため,同組を破門になったも
のの,出所後も同組事務所に出入りしており,実質的には同組員と同様の活動を行
っていた。
ウ 被告人C
 被告人Cは,平成14年9月ころ,G組組員となり,前記のとおり被告人
Aと組事務所の隣室で同居していた。
エ 被告人D
 被告人Dはトラック運転手として稼働していたものであるが,平成15年
初めころ,知人の紹介により,被告人Bの舎弟となり,同人の運転手を務め,同人と
行動を共にしていた。
オ なお,分離前の共同被告人Iは,G組組員Rの舎弟として,G組に出入り
していた者であるが,Iを含む被告人らは,互いに面識を有するG組の組員又は関係
者であった。
(2) 本件犯行に先立つ被告人Aと被害者らとの諍い
 被告人Aは,平成15年4月5日午前3時ころ,飲酒の上,さらに飲酒しよ
うとQビルに入った際,同ビル1階出入り口付近において,同ビル4階のスナック
「Q4」で飲酒後帰ろうとしていたHとの間で口論となった。なお,同所付近に
は,Hの連れであるK,S1,S2,S3と(以上のH,K,S1,S2及びS3を「被
害者ら」ということがある。),Q4の従業員であるT1,同従業員のT2及びQ
4の店主であるT3らがいた。
 Hと被告人Aの口論はつかみ合いの喧嘩に発展し,同被告人は,Hから頭突き
されたり被害者らから殴打されるなどの暴行を受けた。その後,Hと同被告人は,2
人で「話し合い」をすることになったが,Hが同被告人に対し優位に立って謝罪を求
め,これを同被告人が拒絶する状態が続いた。この間,Hは同被告人に対し,「俺は
Hというんや。」などと自己の名前を数回名乗った。また,この間,Qビル1階にあ
るスナック「Q5」の店主であるT4やT3が,Hらの暴行等を制止しようとして
Hらに声を掛けるなどしていたが,諍いが収まることはなかった。被告人Aは主にHか
ら暴行を受けて右足関節外踝骨折等の傷害を負い,そのため足を引きずるようにし
ていたところ,Hはこれを嘲るような発言をするなどしたが,被告人Aが頑なに謝罪
を拒否し続けたため,「こんな奴と,なんぼ話しても一緒や。」などと言い放って
被告人AをQビル1階に放置して立ち去り,U駅方面に向かった。
 一方,被告人Aは,顔見知りのT3に介抱されてQ4に行き,そこでおしぼ
りで血を拭いたり,水を飲んだりして休息をとっていた。
(3) 被告人らの連絡状況等
ア T4は,G組に所属しておりQ5の客でもあった被告人Cに何度か電話
し,「Aが袋叩きに遭っている。助けに来て欲しい。」などと伝え,さらに被告人
Cに対し,「(相手は)若い子で全部で5,6人,どうも堅気ではなさそう。」など
と伝えた。
イ 被告人Cは,同Bに電話し,同Aが暴力団関係者から暴行を加えられている
様子でその救援が必要である旨を伝え,同Bから「わかった。すぐ行く。」旨の返答
を受けるや,組事務所からタクシーでQビルに向かった。
ウ 被告人Bは,同Cからの前記連絡を受けた際,V(当時の内縁の妻。その
後被告人Bと婚姻。)宅にいたが,被告人Dに電話で事情を話して迎えにくるように
命じ,さらにIにも加勢を依頼して了承を得た。そして,被告人Bは,Vに対し包丁を
出すように言ったが,同女がこれを拒んだため,自ら同女宅にあった出刃包丁(刃
体の長さ約15.3センチメートルの先端が鋭利な出刃包丁。以下「本件包丁」と
いう。甲9。平成15年押第136号の1)を探し出してこれを持ち出し,被告人
Dが運転する自動車(車種W)でQビル付近に向かった。なお,被告人Dは,同車内
で,同Bが本件包丁を持って目の前にちらつかせるなどしていたため,危険を感じ,
同Bからいったん本件包丁を預かって同車のサイドブレーキ付近に置いた。
 Iは自動車(車種X)を運転してQビル付近に向かった。
(4) 本件犯行前の状況
ア 第1現場での状況等
 被告人DとともにQビル付近に向かった同Bは,第1現場付近の歩道上に
被害者らがいるのを発見し,車を停め本件包丁を持って同Dとともに降車し,左手に
持った本件包丁を被害者らに示しながら近づき,同人らに対し,「うちの若い衆と
喧嘩しとったのは,お前らか。」などと詰問したが,被害者らは,いずれもこれを
否定したため,そのままQビルに向かった。
イ Qビルでの状況等
 被告人Bは,Qビルの前で同Cと合流し,T4から同Aがいると聞いてQ4
に向かい,同所で,同Aに対し「どこのもんにやられたんや。」などと問いただす
と,同Aは「どこのもんか知らんけど,名前はHいうとったわ。」などと答えて,自
分に暴行を加えた人物が「H」という名前であることを伝え,被告人Bは「タクシー
乗り場の方に若いのが何人かいたけど,そいつら違うんか。」「行くぞ。」などと
言って,Q4を出た。被告人Aは,その際,同Bが本件包丁を持っていることに気づ
き,Qビル1階あるいは4階で,同被告人に「その包丁貸して下さい。」等と述
べ,同Bは,「これでケジメとったらんかい。」などと言いながら本件包丁を同Aに
渡した。
(5) 本件犯行状況
ア 第1現場での犯行状況等
 被告人Bは他の被告人らを引き連れて第1現場に向かった。その際,被害
者らと喧嘩になった場合に備え,被告人Cは第1現場付近に落ちていた木製の棒を,
同Dはガラス製の瓶2本をそれぞれ拾って手に持ち,同Aは本件包丁を持って,やや
遅れて,同B,同D及び同Cの後ろを歩いていた。またIも第1現場付近で被告人Bらに
合流した。
 被告人Bらは,第1現場付近で被害者らと対峙し,被害者らに向かって,
「どいつがHや。」などと怒鳴りつけたところ,Hが「俺がHや。」と名乗って一歩前
に出,また,やや遅れて到着した同AがHを指さして「そいつがHや。」と怒鳴った。
そして,被告人Bにおいて,「お前がHか。こら,事務所に連れて行くぞ。」などと
怒鳴りつけたが,Hらがこれに従わず反抗する気勢を示すと,被告人Bは,「いわし
てしまえ。」などと怒号し,被告人らはHらにいっせいに襲いかかり,被告人らと
Hらとの間で乱闘が始まった。
 被告人Aは,この乱闘が始まった直後ころ,Kを発見して同人に近づき,
本件包丁で同人の左胸部を1回刺した。そして,被告人Aは,Kを刺した後,直近正
面にHの姿を認めるや,同人の方向に1歩踏み出し,同人の腹部を狙って本件包丁を
まっすぐ突き刺したが,同人が体をひねったため,本件包丁は同人の左腰背下部に
刺さった(以下「本件刺突行為」ということがある。)。
イ 第2現場での犯行状況等
 Hは,本件包丁が左腰背下部に突き刺さったままの状態で第1現場から第
2現場に向け逃げ出したが,同Bは「逃がすな,追いかけ。」などと怒鳴り,同B,
同D及びIはHを追いかけ,第2現場において,倒れ込んでいるHに対し,同Dにおいて
ガラス瓶でその頭部などを殴打し,同B及びIにおいて足蹴にするなどの暴行を加え
た。
(6) 被害者H及びKの負傷状況等
ア Hの受傷の部位,程度,死因等
 Hの死因となった創傷は,左腰背下部の,刺切創口の長さ約5.6センチ
メートル,刃側を下にして同被害者の左下やや後ろから右上やや前あるいは左下後
から右上前の方向に刺入されて左腎臓背面を浅く貫通し,多量の出血を引き起こし
た深さ約10ないし12センチメートルの刺切創である。その刺創管は①後腹壁を
貫通し,左腎臓背面を外側から腎門部の方向に貫き,第2及び3腰椎の高さで左腸
腰筋表面を切損して終わるもの②左腎臓を途中まで①の切断面と同一面を切断面で
切損した後,さらにやや頭側に向かい,左腎臓背面を切損,第1・2腰椎の高さで
左腸腰筋を切損して終わるもの③後腹壁貫通後,左横隔膜を貫き,左胸腔内に達し
た後,第11胸椎椎体左側面を弁状に切損して終わっているものの少なくとも3通
り認められるが,本件包丁が刺入された後に被害者の体位が変化したか,あるい
は,本件包丁が体内に刺入されたままで動かされたことにより生じたものであり,
刺突行為が1回であったことは疑いない。
   イ Kの受傷の部位,程度
 Kの負った傷害は,刺創口の長さ約2.2センチメートル,深さ約5セン
チメートルの左前胸部刺創である。
(7) 犯行後の状況
 本件犯行後,被告人A,同B,同C及び同DはXに,IはWにそれぞれ乗車して
逃走し,V宅で合流したが,V宅において,被告人Bは,同被告人が捨てた包丁を同
Aが拾って使ったことにして欲しいなどと,包丁を同Aが同Bから受け取ったものでは
ないとする旨の口裏合わせを提案した。
   以上の事実が認められる。
2 本件包丁の授受の際のやりとりに関する事実認定についての補足
 Qビルにおいて,被告人Aが同Bに本件包丁を貸して欲しいと頼み,同被告人
がこれを了承して手渡したことは両被告人も一致して認めるところであって証拠上
も明らかであるが,その際に被告人Bが同Aに対し「これでケジメとったらんか
い。」(以下「ケジメ発言」ということがある。)と発言したか否かについては,
被告人A及び同Bらは当公判廷においてこれを強く否認するので,「ケジメ発言」を
認定した理由について補足する。
  (1) 各被告人の供述の概要
    本件包丁の授受について,被告人Aは捜査段階においては「Qビルの1階に
おいて,被告人Bが本件包丁を持っていたことに気づき,同人に対し『その包丁貸し
て下さい。』と言ったところ,同被告人から『おう,もっていけ。これでケジメと
ったらんかい。』などと言われて本件包丁を手渡された。」旨(乙5),被告人Dも
捜査段階では「Qビルの1階において被告人Aが同Bに対し『辛抱たまらんから,そ
の包丁,俺に貸して下さい。』と言って本件包丁を貸してくれるように頼み,同被
告人が『ほんまに行くんか。』と念を押すと『はい,我慢できません。』などと答
えたため,同Bが『おう,持っとけ。これでケジメとったらんかい。』などと言って
本件包丁を手交した。」旨(乙30)各供述する。また被告人Bは,「Qビルの4階
において同Aから『包丁を貸してくれ』と言われたので,黙って本件包丁を同被告人
に手渡した。被告人Aは興奮している自分が被害者らを刺さないようにそう言ったの
だと思った。」旨供述し,その際同被告人に「ケジメ取ったれ。」等とは言ってい
ない旨強調するほか,Q4へは被告人Dと行ったとか,自分がそのような発言をして
いないことは被告人Aや同Dに聞いてもらえればよい等として,本件包丁を受け渡し
た現場に被告人Dがいた旨の供述をしている〔乙13(10ないし12頁)〕。
    これらに対し,公判廷においては,被告人Aは,大要,「Qビルの4階にお
いて,被告人Bに対し『その包丁を貸してくれ。』と頼んだところ,同被告人は『お
う。』と一言だけ言って本件包丁を渡してくれた。」旨,同Dは,これらケジメ発言
を聞いていない旨各供述するほか,被告人Bは,捜査段階と同趣旨の供述をしてい
る。
  (2) 被告人A及び同Dの捜査段階での供述の信用性
    被告人A及び同Dの各弁護人は,前記各被告人の捜査段階の供述は捜査官の
押しつけや誘導によりなされた事実に反する供述であると主張し,被告人A及び同
Dも公判廷で同趣旨の供述をする。
    しかし,被告人Aの前記捜査段階の供述中,Qビルでの諍いの経緯,本件包
丁を渡されたときのやりとり及びHに対する殺意等に関する部分は,問答形式を用い
て録取された,公判廷における被告人Aの弁解とも大要一致する弁解聴取調書であ
り,被告人Dの前記供述調書もHに対する殺意に関する部分は問答形式で作成された
弁解聴取調書というべき内容のものである上,本件包丁の手交や前記ケジメ発言に
関する供述部分は,Qビルにおいて被告人Aと同Bとの間で交わされたものであるか
ら,同Dを除くと目撃者もなく,その具体的な内容については,各被告人の自発的な
供述のないまま捜査官において誘導することはそもそも困難であると認められるの
であり,各供述調書の供述内容をみても,細かいやりとりについては若干の食い違
いがあるものの,被告人Aの方から本件包丁を貸してくれと頼んだこと及びケジメ発
言があったことについては両者の供述は一致しており相互にその信用性を補完して
いるのであって,ケジメ発言を含め,被告人Aと同Dの各供述調書の信用性は全体と
して高いと評価することができる。
    これに対し,被告人Aは,当公判廷において,ケジメ発言については,捜査
官から被告人Bがそのように言ったんだと押しつけられた旨,捜査官が勝手に記載し
たように述べた直後,被告人Bがそう言っていると聞かされてそうかもしれないと思
ったのかと問われるやこれを直ちに肯定するなど(被告人Aの第17回公判期日にお
ける供述。調書40頁),場当たり的な供述である上,前記のような供述調書の記
載内容とも符合しないし,被告人Dは,前記捜査段階の供述調書は同Aの検察官調書
の記載に合わせたものである旨供述するところ(被告人D第20回公判期日における
供述。調書15頁),両者の供述は完全には一致していないのであって,ケジメ発
言があった場面でのやりとりについてはむしろ被告人Dの検察官調書の方が詳細であ
るから,同被告人の述べるような取調べ経緯は想定し難いのであって,前記被告人
両名の各公判供述は信用することはできない。
  (3) 小括
    以上みたように,ケジメ発言があったとする被告人A及び同Dの捜査段階の
供述の信用性は十分であり,本件包丁の授受の際に被告人Bから同Aに対して前記発
言があったことはこれを優に認めることができる。
第3 検討
1 傷害の共謀の有無及びその発生時期について
(1) 前記第2の1で認定した被告人らの連絡状況,本件犯行に至る経緯,木製
の棒,ガラス製の瓶や本件包丁などの凶器の準備状況,被告人Bの怒号を合図に被告
人らがHに対して暴行を加えた犯行状況及び犯行後の事情等を総合すると,遅くとも
被告人らが凶器を持ってHらと対峙し被告人Bが「いわしてしまえ。」と怒号した時
点においては,被告人ら5人(Iを含む。)は,黙示に仲間とともに凶器等を用い
て,被害者らに暴行を加える旨意思を相通じていたものであり,以後はこの共謀に
基づき第1現場及び第2現場でそれぞれ判示第2の1及び第2の2の犯行に及んだ
ものと認めるに十分である。
 そうすると,Hは,被告人らの前記共謀に基づく暴行行為により死亡するに
至り(判示第2の2),Kもそれにより判示第2の1の傷害を負ったものであるか
ら,被告人ら4名につき少なくとも被害者Hに対し傷害致死の限度で,また被害者
Kに対し傷害の共同正犯が成立することは明らかである。
(2) 被告人B,同D及び同Cは公判廷において同Aが第1現場に来ていることを認
識していなかったと供述し,同被告人らの各弁護人は,被告人Aの存在を認識してい
なかった他の被告人らは,被告人Aの本件刺突行為につき責任を負わない旨主張す
る。
ア しかし,前記第2の1認定のとおり,本件犯行の直前に被告人AがHを指
さして「あいつがHや。」と発言し,これを他の被告人らは聞いているのであって,
被告人B,同C及び同Dは被告人Aの存在を認識していたと認められるから,弁護人の
主張は理由がない。
 また,前記各弁護人は,被告人らは「H」なる人物を認識していなかった
とも主張するが,前記第2認定事実によれば,Hは被告人Bらと対峙し同人から問い
かけられるや「俺がHや。」などと答えているのであるから,同人をHと認識した上
で,被告人らは同人に暴行を加えたものと認められる。
イ なお,被告人D,同Cの弁護人は,各被告人が被告人Aにおいて本件包丁を
所持していることを知らず,同被告人の本件刺突行為によってHが死亡することを予
見できなかったから,被告人D,同CはHの死亡について責任を負わない旨主張する
が,結果的加重犯における共謀と責任の範囲を独自の見解によって限局するものと
いうほかはなく,加えて,被告人Dについては,前記認定のとおり,本件包丁の受け
渡しを目撃していると認められるのであるから,いずれにせよ,採用の限りでな
い。
2 被告人A及び同Bの殺意及び共謀について
(1) 被告人Aについて
ア 被告人Aは,駆けつけた同Bが本件包丁を持っているのを認めるや,同人
に頼んでこれを受け取ったこと,その際,被告人Bから「これでケジメとったらんか
い。」などと報復のために本件包丁を使うことを煽る発言を受けたこと,本件包丁
は刃体の長さ約15.3センチメートルの鋭利な刃物であって,人体を殺傷するに
十分な能力を有しており,もとより被告人Aはそのことを十分に認識していたこと,
被告人らが被害者らに対し報復を加えようとすれば被害者らが抵抗して乱闘状態に
至り,本件包丁を持参してそのような乱闘に加われば相手方を殺傷するに至る可能
性が高いことを予想しながら,被告人Aはあえて本件包丁を受け取り第1現場での乱
闘に臨んだこと,Kに対し判示第2の1の犯行に及んだ後,Hの姿を目にするや判示
第2の2の犯行に及んだこと,被告人AはHと相対した状態で同人の腹部を狙って本
件包丁をまっすぐ突き出したものであり,かかる行為は非常に危険であってそれに
よりHが死亡する可能性が十分にあることを同被告人は認識していたと認められるこ
と,創傷の深さと刃体の長さを比較検討すると,被告人Aは相当な力を込めてHを刺
突したと推認できること,被告人AにおいてHの生命に対する格別の配慮をした形跡
は認められないことなどの前認定の事情,加えて,被告人Aの検察官調書中に
は,「Bから本件包丁を受け取った際,この包丁を使ってケジメをつけなくてはなら
ない,この包丁でHを刺して,もしHが死ぬことになっても仕方がないという気持ち
になった」(乙5。18,19頁),「(刺突した際の心情は)とにかく突き刺
し,喧嘩の悔しさを晴らしてやろうという気持ちで,Hが死んでもかまわないという
程度の気持ちにまでなっていたと言われても仕方がないが,絶対に殺してやろうと
いうほどの強い気持ちがあったわけではない。」(乙5。30頁)旨の供述部分が
あるところ,未必的殺意を認め,あるいはHの生命に対する格別の配慮をせずに犯行
に及んだことを自認している限度において,その供述の信用性は十分であることを
総合勘案すると,被告人Aにおいて,本件包丁を受け取った段階でHに対する殺意
(未必的殺意)を有していたものと認めるに十分である。
 そして,被告人Aは,Hらから暴行を受け右足関節外踝骨折等の傷害を負
った上,同人から屈辱的な言葉を浴びせかけられ,Hに憤懣の情を抱いていたのであ
るが,同Bらが駆けつけてきて,暴力団員としての面子が潰されたことが所属する暴
力団組員らにも知れ渡ったとして,断固たる報復を企図した旨の判示の事情は,被
告人AのHに対する殺意(未必的殺意)発生の動機として十分首肯しうるものであ
る。
イ 同被告人の弁護人は,①同被告人の報復の対象はHのみではなく,被害者
ら全員であった,②同被告人がHないし被害者らに反感や報復の意図を有したことが
直ちに殺意に結びつくことはない,③被告人BがQ4にやってくるまでの被告人Aの
言動や同被告人が直ちに仲間を集めようとしていないことからしても,被告人Aには
Hに対する殺意はなかったとし,被告人Aも公判廷においてその旨弁解する。
 しかしながら,前記認定の経過からすれば,同被告人の報復の主たる対
象人物がHにあったことは疑いのないところであるし,Q4内での被告人Aの言動等
に照らすと同被告人がHに対して殺意を抱いていたとは到底考えがたい旨の同弁護人
主張は,被告人Bが本件包丁を持ってQ4にやってくるまでの間に限って言えば理由
がないとはいえないし,また,同弁護人主張の事情は被告人AがHに対し確定的殺意
を有していたと認めるについて疑問を投げかける事情ではあるものの,被告人Aがあ
えて被告人Bから本件包丁を受け取り,被告人Bからケジメ発言を聞いた段階で,Hに
対する未必の殺意を抱いたと認定するについての妨げとなるものではない。
 また,被告人Aの弁護人は,同被告人は被害者らの攻撃から身を守るため
に本件包丁を受け取ったと主張し,被告人Aも当公判廷でこれにそう供述をするが,
被告人Aは被害者らの攻撃を防ぐため本件包丁を示したり,本件包丁で被害者らを威
嚇したりするなど全くしておらず,自ら被害者らに向かっていき,被害者両名に対
しそれぞれいきなり刺突行為に及んでいる事実からすると,到底これを採用するこ
とはできない。
 さらに,被告人Aの弁護人は,本件包丁がHの身体に深く刺さったのはHが
本件包丁に気づかず近づいたためである可能性があること,同被告人がHを刺した後
放心状態になって同人にさらなる攻撃を加えていないこと,本件犯行後の逃走中の
同被告人の様子やその後の同被告人の所属する暴力団関係者に対する言動からも,
被告人Aには殺意がなかったことが窺われるとする。しかし,同被告人がHの腹部を
狙って刺突し,その際,Kに対するように手加減をすることがなかったことは同被告
人も自認するところであって,同被告人は,Hには大けがをさせようと思っていたな
どと弁解するが,大けがをさせるつもりで包丁を人体の枢要部に突き刺した結果
が,大けがに止まるか,死亡するに至るかは,必ずしも同被告人の制御できる事柄
ではないのであり,この弁解はむしろ同被告人がHに対し強い力で刺突行為に及び,
その生命の安全に対する特段の配慮をしなかったことを裏付ける資料となるとすら
いいうるのである。
ウ 一方,検察官は,被告人AにはHに対する確定的殺意があったと主張する
が,被告人AのHに対する刺突行為が,容易にこれを反復継続できる状態であったの
に1回だけに止まっていること,本件刺突行為はHに対する一時の激情を爆発させた
ものであり同人の死を殊更意欲したものとまでは認められないこと,被告人Aは本件
刺突行為の後には放心状態となるなどしてHに対する攻撃に加わっていないこと等の
前記認定の諸事情にかんがみると,被告人AのHに対する殺意は未必的殺意に止まる
ものと認められる。
(2) 被告人Bについて
ア 被告人Bは,同Cから同Aの救援が必要である旨告げられると直ちに被告人
DやIに加勢を依頼した上,自ら本件包丁を探し出してこれを携行して救援に向かっ
ているところ,もとより本件包丁が殺傷力の高い凶器であることは十分に認識して
いたこと,被告人Aについてみたのと同様,被害者らに対し被告人らが攻撃的態度に
出れば激しい乱闘状態に至ることは十分に予想され,そのような場面において包丁
を使用すれば,相手方を殺傷する事態に至ることは予想できたのであるが,被告人
Bは,そのような状況下であえて本件包丁を持ち出し,Qビルにおいて被告人Aから
本件包丁を貸すよう頼まれるや,直ちにこれを了承し,「これでケジメとったらん
かい。」などと被告人Aが報復のため本件包丁を使うことを煽る発言をした上,本件
包丁を同被告人に手渡
していること,被告人Bが第1現場で被害者らと対峙した際,同被告人は被害者らが
いったん自分たちは被告人Aと喧嘩した者ではないと嘘を言った者らであると認識し
ていたのであり,これは被告人B自身にとって被害者らに対する立腹を強める事情で
あったこと,被告人Aが本件包丁を所持しているのを認識しつつ「いわしてしま
え。」などと怒号してその他の被告人らに攻撃を指示したこと,さらに一連の本件
犯行において,被告人Bが,終始,Iを含む他の被告人らに指揮命令するなど主導的
立場にあったこと,被告人Bは,同Aが本件刺突行為に及んだ後,逃亡するHを追いか
け,同人が倒れ込んで無抵抗の状態になっているのにもかかわらず,第2現場にお
いて執ようにHに対し暴行を加え,また他の被告人に対し暴行を加えるよう指示して
おり,Hに対する強い攻撃の意図が窺われること,本件犯行後自己が本件包丁を被告
人Aに渡した事実を秘匿する口裏合わせを図ったことなどの前認定の諸事情にかんが
みると,被告人Bは,Qビルにおいて本件包丁を同Aに手交した時点において,同人
が本件包丁を用いてHに対して断固とした攻撃行為に出る可能性が高いことを認識し
ていたし,そこから生じるかも知れないHの死亡の結果をも未必的に容認していたと
認められるのであり,本件犯行時においては,被告人Aとの間でその旨意思を相通じ
ていたと認めるに十分である。
イ 被告人Bは,捜査段階から一貫して,Hを殺害するつもりはなかった,同
Aが本件包丁を貸してくれと頼んだ際,同人は自分が本件包丁を使って相手を死傷さ
せないようにしてくれていると理解したなどと弁解し,被告人Bの弁護人も,被告人
Bが唯一の凶器である本件包丁を足を骨折して満足に歩けない被告人Aに渡してしま
ったこと自体から,被告人Bに殺意がなかったことは明らかであると主張する。
 しかし,その際,被告人Aが同Bの興奮を収めようとする言動をした形跡
は全くないし,被告人Aは同Bの前記弁解をはっきりと否定する供述をしているとこ
ろでもあり〔乙5(17頁)〕,また,被告人Bのみがその弁解のように誤解したも
のとも認められない。そして,被告人Bは,Q4において同Aの負傷状況を見ている
ものの,その程度の詳細や同被告人の運動能力を確かめるような発言を特にしない
まま,同所を出る際,被告人Aに「行くぞ。」と同行を促す発言をし,本件包丁を渡
す際にこれを使用するように煽るケジメ発言までしているのであるから,被告人Bに
おいて同Aが第1現場に来ないと考えていたなどとは到底考えられず,被告人Bにお
いて本件包丁をHらに対する報復に使用することを認容して被告人Aに手交し,同Aが
本件包丁で被害者らに攻撃を加えることやその結果を予想していたと認めるに十分
であるから,これらの弁解は到底信用できるものではない。
 また,被告人Bは,当公判廷において,本件包丁をV宅から持ち出した理
由につき,Vに対し男らしいところを見せたかったなどとも弁解するが,そもそも
Vは包丁を持ち出すことに強く反対していたのであるから,かかる弁解は不自然,不
合理であって,採用の限りではない。
ウ 次に,被告人Bの弁護人は,同被告人は第1現場で「さろてしまえ。」
「事務所に連れて行け。」などと発言しているのであって,同被告人は,Hらを組事
務所に拉致し脅迫して賠償金名目で金員を喝取するつもりであったから,殺意や殺
害の共謀があったとは考えられないと主張する。
 しかし,事務所に拉致することと,被害者らが被告人らの拉致行為に対
し抵抗した場合など,その出方次第によってはこれを攻撃することも辞さないとす
ることは十分に両立しうる関係にあること,実際に被告人らは被害者らの拉致を行
おうとした形跡はないことなどの事情にかんがみると,前記発言をもって殺意や殺
人の共謀に疑いが生じるとする弁護人の主張は理由がない。
(3) 以上の事情を総合すると,被告人BがQビルにおいて同Aに本件包丁を渡し
た時点で,被告人Aと同Bとは,Hについては,同人を被告人Aにおいて本件包丁で攻
撃すれば死亡させるに至るかもしれないが,それでも構わない旨の未必の殺意を包
含する内容の黙示の共謀を遂げ,被告人Aは,その共謀に基づいて,前認定のとおり
未必の殺意をもって本件刺突行為に及んだものと認められる。
3 なお,被告人A,同Bの各弁護人は,被害者両名に対する故意が,Kに対しては
傷害の故意,Hに対しては殺人の故意と分けられることが不合理であるというが,前
記犯行に至る経過にかんがみれば,不合理とはいえない。
4 総括
 以上のとおり,判示第2の2の犯行につき,被告人B及び被告人Aは,いずれ
も殺人の共同正犯の刑責を,被告人C及びDはいずれも傷害致死の限度で共同正犯の
刑責を負うものであり,さらに,判示第2の1の犯行につき,被告人ら4名に,傷
害罪の共同正犯の成立をそれぞれ認めることができる。
(累犯前科)
 被告人Bは,平成11年7月14日Y裁判所で傷害及び覚せい剤取締法違反の各罪
により懲役2年8月に処せられ,平成14年2月1日その刑の執行を受け終わった
ものであって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙16)によって認め
る。
(法令の適用)
1 被告人A
 罰   条 判示第2の1の所為
       刑法60条,平成16年法律第156号による改正前の刑法2
04条(刑法6条,10条による。)
       判示第2の2の所為 
        刑法60条,前記改正前の刑法199条(刑法6条,10条に
よる。なお,その有期懲役刑の長期は,刑法6条,10条により前記改正前の刑法
12条1項による。)       
       判示第3の所為 
        刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条
 刑種の選択 判示第2の2の罪について有期懲役刑を,判示第2の1及び第3
の各罪についていずれも懲役刑をそれぞれ選択
 併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第2の2の
罪の刑に前記改正前の刑法14条の制限内で法定の加重)
 宣 告 刑 懲役11年
 未決勾留 刑法21条(430日をその刑に算入)
没   収 押収してある出刃包丁1本(平成15年押第136号の1)につ
き,刑法19条1項2号,2項本文(判示第2の2の犯行の用に供した物で犯人以
外の者に属しない。)
 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(同被告人に負担させない。)
2 被告人B
 罰   条 判示第1の1の所為
        刑法60条,覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条
       判示第1の2の所為
        青少年愛護条例(昭和38年兵庫県条例第17号)30条1項
2号,21条1項
       判示第2の1の所為
       刑法60条,前記改正前の刑法204条(刑法6条,10条に
よる。)
       判示第2の2の所為 
        刑法60条,前記改正前の刑法199条(刑法6条,10条に
よる。なお,その有期懲役刑の長期は,刑法6条,10条により前記改正前の刑法
12条1項による。)       
       判示第3の所為 
        刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条
       判示第5の1の所為
        覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条
       判示第5の2の所為
        同法41条の2第1項
 刑種の選択 判示第1の2,第2の1及び第3の各罪についていずれも懲役刑
を,判示第2の2の罪について有期懲役刑をそれぞれ選択
 再犯加重 刑法56条1項,57条(ただし,判示第2の2の罪の刑について
は前記改正前の刑法14条の制限に従う。)
 併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判
示2の2の罪の刑に前記改正前の刑法14条の制限内で法定の加重)
 宣 告 刑 懲役13年
 未決勾留 刑法21条(430日をその刑に算入)
 没   収 押収してある出刃包丁1本(平成15年押第136号の1)につ
き,同法19条1項2号,2項本文(判示第2の2の犯行の用に供した物で犯人以
外の者に属しない。)
       押収してあるチャック付きポリ袋入り覚せい剤白色結晶粉末1袋
(同押号の3)につき,覚せい剤取締法41条の8第1項本文(判示第5の2の罪
に係る覚せい剤で犯人の所有するものである。)
 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(同被告人に負担させない。)
3 被告人C
 罰   条 判示第2の1の所為
       刑法60条,前記改正前の刑法204条(刑法6条,10条に
よる。)
       判示第2の2の所為 
        刑法60条,前記改正前の刑法205条(刑法6条,10条に
よる。なお,その有期懲役刑の長期は,刑法6条,10条により前記改正前の刑法
12条1項による。)       
 刑種の選択 判示第2の1の罪について懲役刑を選択
 併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示2の2の罪の刑
に前記改正前の刑法14条の制限内で法定の加重)
 宣 告 刑 懲役5年
 未決勾留 刑法21条(430日をその刑に算入)
 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(同被告人に負担させない。)
4 被告人D
罰   条 判示第2の1の所為
       刑法60条,前記改正前の刑法204条(刑法6条,10条に
よる。)
       判示第2の2の所為 
        刑法60条,前記改正前の刑法205条(刑法6条,10条に
よる。なお,その有期懲役刑の長期は,刑法6条,10条により前記改正前の刑法
12条1項による。)  
      判示第4の1の所為
        覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条
       判示第4の2の所為
        同法41条の2第1項
 刑種の選択 判示第2の1の罪について懲役刑を選択
 併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示2の2の罪
の刑に前記改正前の刑法14条の制限内で法定の加重)
 宣 告 刑 懲役6年6月
 未決勾留 刑法21条(410日をその刑に算入)
 没   収 押収してあるチャック付きビニール袋入り覚せい剤白色結晶粉末
1袋(同押号の2)につき,覚せい剤取締法41条の8第1項本文(判示第4の2
の罪に係る覚せい剤で犯人の所有するものである。)
訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(同被告人に負担させない。)
(量刑の理由)
1 事案の概要
  本件は,暴力団G組組員あるいは同組関係者である被告人ら4名が,同組関係
者である分離前の共同被告人Iと共謀の上,被害者らに対し暴行を加え,被告人Aに
おいて,所携の出刃包丁で,被害者K及び同Hを各1回刺突し,Kに傷害を負わせ(判
示第2の1。各傷害),Hを死亡させた事案(判示第2の2。被告人A及び同Bにつき
各殺人,被告人C及び同Dにつき各傷害致死),その際,被告人A及び同Bが共謀の上
前記包丁を携帯した銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案(判示第3),被告人Bが,
16歳の児童と共謀の上同児童に覚せい剤を注射した覚せい剤取締法違反の事案
(判示第1の1)及び同児童が18歳未満であることを知りながらこれと性交した
青少年愛護条例違反の事案(判示第1の2),覚せい剤を自己使用し(判示第5の
1),その残量である覚せい剤を所持した(判示第5の2)各覚せい剤取締法違反
の事案並びに被告人Dが覚せい剤を自己使用し(判示第4の1),その残量である覚
せい剤を所持した(判示第4の2)各覚せい剤取締法違反の事案である。
2 被告人4名共通の情状
  被告人4名の量刑の中核となる判示第2の1及び第2の2の各犯行(以下「本
件犯行」ともいう。)についてみると,犯行に至る経緯は前認定のとおりであり,
被告人らは被告人Aが被害者らから袋叩きにあっていると連絡を受けるや,直ちにそ
の救援,報復等のためにQビルに赴き,その後被害者らを探し出して本件犯行を敢
行したもので,犯行動機は,暴力団関係者特有の反社会的で短絡的かつ身勝手なも
ので,酌量の余地はない。
 犯行態様についてみると,被告人Aにおいて被害者K及び同Hを連続して出刃包丁
で各1回刺突した上,同所から逃げ出し無抵抗の状態になった被害者Hを追撃して,
被害者らの連れの女性が止めて欲しいと泣いて懇願していたにもかかわらず,これ
を被害者Hから引き離した上,被告人B及び同Dらにおいて,なおも同被害者に対し,
執ように足蹴にしたり,ガラス製の瓶などの凶器でその頭部や顔面等を殴打してい
るのであって,本件犯行は無軌道で放埒かつ無慈悲な犯行である。
 被害者Hは,妻と未だ幼い子供2人を残し,突如,21歳の若さでその生命を無
残にも奪われたものであって,同人の受けた心身の苦痛,その無念の情は察するに
余りある。そして,このような経過で夫を失った妻等遺族の悲しみは深く,その憤
りは峻烈で,被害者の妻は公判廷における意見陳述において「一生この人達を許す
ことはできません。」などと述べて,被告人らの厳重処罰を望んでいる。また,本
件犯行により左前胸部に刺創を負ったKが被った恐怖心等の心身の被害も大きく,そ
の被害感情にも厳しいものがある。
 さらに,繁華街における公道で,暴力団関係者が集団で熾烈な暴行に及び,被
害者を死亡させるなどした本件犯行が社会に与えた衝撃や不安感には大きいものが
ある。
 被告人らは,犯行後,本件包丁の授受について口裏合わせをするなどしてお
り,公判廷においても,傷害や殺人の共謀を否認するなど,不自然,不合理な弁解
に終始しており,被告人らには真摯に本件犯行を省みる姿勢が希薄である。
 他方で,被害者らが被告人Aに暴行を加えたことが本件各犯行の遠因となってい
るところ,その意味で被害者らに落ち度がないとはいえないし,また本件犯行は計
画的なものとまではいえず,Hに対する殺意は未必的殺意に止まり,強固な殺意があ
ったものとは認められない。
 なお,本件の遠因となったQビルにおける諍いの際,被害者らは通報を受け複
数回にわたり現場に臨場した警察官に「喧嘩は終わった。」などと言ってこれを追
い返しているほか,被害者らは連れの女性の忠告を聞かずあえて本件現場から離れ
なかった経過も窺われるところ,こういった被害者らの軽率かつ不適切な振る舞い
がなければ,本件被害は避けられた可能性がある。しかしながら,警察官を追い返
したのはH以外の者である上,報復のため被害者の生命を奪ってよいという道理があ
ろうはずがなく,これら被害者らの行動を考慮しても,その後,被害者らを追跡
し,あえて未必の殺意や傷害の故意をもって報復行動に及んだ被告人らの責任が大
きく軽減されることはないというべきである。
3 個別の情状
 (1) 被告人A
   同被告人は,被告人Bに自ら積極的に頼んで同人から本件包丁を受け取り,判
示第2の1及び第2の2の犯行に及んだものであって,本件包丁による傷害,殺人
の実行犯人として,本件犯行で中心的役割を果たした。また,そもそも本件の発端
となったQビルにおける諍いは,被告人Aが被害者らに対し文句を言うなどしたため
に起こったものであり,他の共犯者,とりわけ被告人C,同DやIを巻き込んでH死亡
等の責任を共犯者らに負わせることとなった点を含め犯情は悪く,被告人Aが平成6
年に傷害罪による懲役10月(3年間執行猶予)の前科1犯を有するものであり,
暴力団員として長年活動しているものであることを併せ考慮すると,同被告人の刑
事責任は重大である。
   他方で,前認定のとおり,Hらの暴行により被告人A自身も右足関節外踝骨折
等の傷害を負ったこと,実母を通じてHの治療費を負担したこと,当公判廷において
は被告人Bを庇う言動が目立つものの,被告人なりに本件を反省し,Hの冥福を祈っ
ていることなど同被告人のために酌むべき事情も認められる。
 (2) 被告人B
   同被告人は,判示第2の1,第2の2の犯行において,本件包丁を用意し,
被告人Aにこれを手渡してHらへの攻撃を煽った者であり,本件がHの死亡という重大
な結果を招くことになった転機はここにあるのであって,被告人Bは直接本件包丁で
Hを刺したわけではないけれども,第1現場においても被害者らに対する攻撃を指示
したほか,逃げるHを追いかけ第2現場でも執ように暴行を加えまたこれを指示する
など,終始,主導的な役割を果たしたのであるから,同被告人の責任が重大なこと
は明らかである。また,犯行後,被告人Aにその責任をなすりつける口裏合わせを提
案するなど,犯行後の行状も良くない。そして,被告人Bは,捜査段階から公判段階
を通じ,その場しのぎというほかない弁解を繰り返して恥じる様子がなく,本件犯
行についての反省の弁も,いかにも表面的で空疎なものといわざるを得ず,遺憾な
がら自己の責任を真摯に見つめようとする態度はほとんどみられない。
   判示第5の1及び第5の2の各犯行についてみるに,同被告人は,その供述
によれば逃亡生活の憂さを張らすために覚せい剤を使用,所持したものであって,
犯情は極めて悪いというほかはなく,同被告人は前記累犯前科を含め同種前科3犯
を有しており覚せい剤使用歴は長く,覚せい剤への依存性,親和性も認められる。
   続いて判示第1の1,第1の2の各犯行についてみると,覚せい剤の害悪を
16歳の児童にまで拡散させ,同児童と性交までしているのであって,自分の快楽
のためには児童に対する悪影響を一顧だにしない同被告人の規範意識の乏しさには
憂慮すべきものがある。
  以上によれば,被告人Bの刑事責任は極めて重大である。
  他方,その帰りを待つ妻がいること,被告人なりの反省の情など同被告人の
ために酌むべき事情も認められる。
 (3) 被告人C
   同被告人は,同Aが暴行を受けていることの連絡を最初に受けた者であり,被
告人Aの救援に向かうため被告人Bに連絡し,第1現場では木製の棒で被害者らに暴
行を加えているのであって,その果たした役割は軽視し難い。
   他方で,同被告人は,Qビルに向かう途中に110番通報しており,結局他
の被告人に追随して本件犯行に及んだものであること,本件包丁が乱闘現場に持ち
込まれていることに気付いていないこと,同被告人が持っていた木製の棒も乱闘の
途中で被告人Bに奪われ,その後は凶器を手にしていないこと,被害者Hに対しては
殺意がなく,被告人A及び同Bに比してその刑責は格段に低いと評価すべきこと,当
公判廷において,暴力団とは絶縁して帰りを待つ妻子と暮らしたいと述べて,反省
の情を示していること,前科前歴がないことなど,同被告人のために酌むべき事情
も認められる。
 (4) 被告人D
   同被告人は,兄貴分である被告人Bから同Aの救援を頼まれるやこれを直ちに
了承し,ガラス製の瓶2本で被害者らに暴行を加え,第2現場においても執ように
Hに暴行を加えるなど,被告人Bの指示に従って積極的に犯行に加担していたもの
で,その果たした役割は軽視し難い。
   判示第4の1及び第4の2の各犯行についてみると,被告人Dは平成10年
に覚せい剤取締法違反の罪で懲役1年4月(3年執行猶予)に処せられた前科を有
しながら,その供述によれば,平成15年1月ころから,格別の理由なく,再び覚
せい剤の使用を始めるうち,前記各犯行に及んだもので,犯情は芳しくない。
   加えて,前記の前科のほか,平成12年に傷害の罰金前科を有することをも
併せ考慮すると,同被告人の刑事責任は相当に重いというべきである。
   他方で,被告人Dは被告人Bから誘われるままこれに追随して本件に加担し
たもので,被害者Hに対しては殺意がなく,被告人A及び同Bに比してその刑責は低い
と評価すべきこと,被告人なりの反省の情を示していることなど,同被告人のため
に酌むべき事情も認められる。
4 そこで,各被告人について,これら諸般の事情を総合勘案して,それぞれ主文
のとおり量刑した。
  よって,主文のとおり判決する。
   平成17年3月30日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官杉 森 研二
   裁判官  橋 本 一
   裁判官  三重野 真人

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