弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成12年(行ケ)第88号 商標登録取消決定取消請求事件(平成14年3月1
8日口頭弁論終結)
          判           決
       原      告   上野衣料株式会社
       訴訟代理人弁護士   田 倉   整
       同          伊 藤 昌 毅
       同    弁理士   田 村 公 總
       同          山 内 淳 三
       被      告   特許庁長官 及 川 耕 造
       指定代理人      山 田 忠 司
       同          宮 川 久 成
       被告補助参加人    ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテ
ッド パートナーシップ
       訴訟代理人弁護士   松 尾   眞
       同          兼 松 由理子
       同          上 村 真一郎
       同          岩 波   修
       同          西 山 哲 宏
       同    弁理士   曾 我 道 照
       同          黒 岩 徹 夫
       同          岡 田   稔
          主           文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   特許庁が平成9年異議第90413号事件について平成12年1月26日に
した決定を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
   主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   原告は、「PoloClubMembers」の欧文字を横書きしてなり、指定商品を商標
法施行令別表の区分による第25類「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、
寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽、和服、エプロン、えり巻き、靴下、ゲートル、
毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、足袋カバー、手袋、布製幼児用おし
め、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー、耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャ
ップ、ヘルメット、帽子、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴
類(『靴合わせくぎ、靴くぎ、靴の引き手、靴びょう、靴保護金具』を除く。)、
げた、草履類、運動用特殊衣類、運動用特殊靴(『乗馬靴』を除く。)、乗馬靴」
とする商標登録第4025827号商標(平成7年3月22日登録出願、平成9年
7月11日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。
   被告補助参加人(以下単に「補助参加人」という。)は、平成9年11月1
7日、本件商標の商標登録につき登録異議の申立てをした。
   特許庁は、同登録異議事件を平成9年異議第90413号事件として審理し
た上、平成12年1月26日、「登録第4025827号商標の登録を取り消
す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年2月16
日、原告に送達された。
 2 本件決定の理由
   本件決定は、別添決定謄本写し記載のとおり、「Polo」の商標はファッショ
ン関連の商品についてラルフ・ローレンのデザインに係るものとして取引者、需要
者間に広く認識されて強い自他商品の識別力及び顧客吸引力を有するに至っている
ところ、本件商標をその指定商品について使用した場合には、これに接する取引
者、需要者は、本件商標中の「Polo」の文字(引用標章)に注目して、ラルフ・ロ
ーレンに係る「Polo」の商標を連想し、その商品がラルフ・ローレン又は同人と組
織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように出所に
ついて混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法4条1項15号に違反
して登録されたものであり、同法43条の3第2項の規定により、その登録を取り
消すべきものとした。
第3 原告主張の本件決定取消事由
 本件決定は、ラルフ・ローレンに係る「Polo」商標の著名性の認定を誤る
(取消事由1)とともに、本件商標をその指定商品に使用した場合の商品の出所混
同のおそれについての判断を誤った(取消事由2)ものであるから、違法として取
り消されるべきである。
 1 取消事由1(「Polo」商標の著名性の認定の誤り)
 (1) 本件決定は、「『Polo』の商標は、被服や眼鏡などのファッション関連の
商品についてラルフ・ローレンのデザインに係るものとして、取引者、需要者間に
広く認識されて強い自他商品の識別機能及び顧客吸引力を有するに至っている」
(決定謄本8頁25行目~28行目)と認定するが、誤りである。
 (2) まず、本件決定の上記認定の根拠とされている証拠(審判甲第3、第6~
第8号証・本訴甲第4、第7~第9号証)は、いずれも補助参加人に取材し、その
取材内容に沿って掲載された新聞記事ないし雑誌記事であるから、それ自体客観性
を欠くものであるし、その発行時期も昭和53年から昭和63年までの間のもので
あるから、現在においても「Polo」商標が著名であることを基礎付けるものとはい
えない。
 (3) また、「Polo」、「POLO」又は「ポロ」の言葉は、それ自体としては、以
下のとおり、一般的に用いられている用語にすぎず、商標としての出所識別力には
乏しいというべきである。
   ア 「POLO」の文字からなる商標は、指定商品を平成3年政令第299号に
よる改正前の商標法施行令別表の区分による第43類(以下「旧第43類」などと
表記する。)「砂糖、菓子、その他本類に属する商品」とする商標登録第5090
40号商標(昭和32年10月18日設定登録、現商標権者・ソシエテデプロデ
ュイネッスルエスアー)〔甲第1041号証の1、2〕、指定商品を旧第12類
「自動車、自動車の部品および附属品(自動車のタイヤ、チューブを除く)」とす
る商標登録第600030号の2商標(昭和37年10月29日設定登録、現商標
権者・フォルクスワーゲンアクチエンゲゼルシャフト)〔甲1040号証の1、
2〕のように、ラルフ・ローレンに係る「Polo」商標が我が国において使用される
ようになったという昭和52年以前から、様々な分野で商標登録がされ、現実に使
用されていた。
   イ 衣料品の分野において、「Polo」、「POLO」又は「ポロ」の言葉は、
「ポロシャツ」を示す普通名称として広く使用されているものにすぎず、このこと
は、多くの衣料品のカタログ(甲第26号証等)の記載からも明らかである。
   ウ また、「Polo」、「POLO」又は「ポロ」の言葉は、我が国でもよく知ら
れているポロ競技を示す一般的な用語にすぎない。
 (4) さらに、原告は、別紙「ポロクラブ関連商標」1~5記載の商標(以下
「ポロクラブ関連商標」といい、個別には、その番号に対応して「ポロクラブ関連
商標1」などと表記する。)の商標権を有しているところ、その登録出願当初から
当該商標を背広等に使用し今日に至っている。加えて、ポロ・ビーシーエス株式会
社は、「POLO」の文字からなり、指定商品を旧第17類「被服(運動用特殊被服を
除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」とす
る商標登録第2721189号商標(昭和56年4月6日登録出願、平成9年5月
2日設定登録)〔甲第1024、第1025号証〕を有し、13社に及ぶライセン
シーによる多種の商品が大量に販売されている。
    これに対し、補助参加人の使用する「Polo」商標は、実際には「Poloby
RalphLauren」、「POLObyRALPHLAUREN」等であって、その略称として
の「Polo」がラルフ・ローレンないし補助参加人に係る出所標識として著名になっ
ているとはいえない。
 2 取消事由2(商品の出所混同のおそれの判断の誤り)
 (1) 本件決定は、「本件商標は・・・世界的に著名なデザイナーであるラル
フ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品等のファッションに関連する商
品に使用している『Polo』の商標の文字を構成の先頭部に有しているものであり、
また、本件商標の指定商品は、ファッションに関連する商品であって、特にデザイ
ンが重要視される商品であるから、本件商標をその指定商品について使用した場合
には、これに接する取引者、需要者は、本件商標中の『Polo』の文字に注目して、
前記周知になっているラルフ・ローレンに係る『Polo(ポロ)』の商標をこれより
連想し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有
する者の業務に係る商品であるかのように出所について混同を生じるおそれがある
ものといわざるをえない」(決定謄本9頁14行目~24行目)と判断するが、誤
りである。
 (2) 以下に述べるとおり、ポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」、「ポロク
ラブ」は、我が国の代表的な著名ブランドと認識されており、その著名性はラル
フ・ローレンの「Polo」商標をしのぐものである。
   ア ポロクラブ関連商標を付した商品の売上は、平成元年100億円、平成
2年150億円、平成3年220億円、平成4年280億円と推移し、その間の累
積売上高は750億円に達し、その売上規模は有力デザイナーズブランドと肩を並
べるものとされていた。さらに、原告は、その前後を通じて、「PoloClub」、「ポ
ロクラブ」について、テレビ、新聞、看板、イベント等各種の媒体を用いて宣伝を
行っており、その累計の広告宣伝費は18億円を超えており、現在、ポロクラブ関
連商標を付した商品の合計売上高は、年間300億円程度、累計の売上高は300
0億円を超える。
   イ このような宣伝広告及び販売実績を通じて、ポロクラブ関連商標に係
る「PoloClub」、「ポロクラブ」の知名率等は、各種の調査において極めて高い数
字が示されている。
     すなわち、平成6年11月1日ボイス情報株式会社発行の「’95ライ
センスブランド&キャラクター名鑑」(甲第802号証)では、「ポロクラブ」の
総合知名率ランキングを17位(78.6%)としており、平成8年6月24日同
社発行の「’96ブランド&キャラクター調査」(甲第863号証)では、「ポロ
クラブ」の売上高ランキングを23位(280億円)、総合知名率ランキングを1
6位(80.6%)としており、平成8年10月28日株式会社矢野経済研究所発
行の「1996年版ライセンスブランド全調査」(甲第862号証)では、「ポロ
クラブ」の売上高ランキングを19位(176.5億円)としており、平成10年
4月30日ボイス情報株式会社発行の「’98ブランド&キャラクター調査」(甲
第1022号証)では、「ポロクラブ」の知名率ランキングを10位(69.8
%)としている。
   ウ また、特許庁は、平成4~5年ころ、「RODEOPOLOCLUB/ロデオポロク
ラブ」等の商標登録出願に対して、ポロクラブ関連商標の周知性を根拠とする拒絶
査定を行っており、その理由として、「本願商標を構成する『POLOCLUB』の文字
は、東京都千代田区<以下略>に所在する『上野衣料株式会社』が商品『被服』に
使用してこの種業界で周知になっている商標と認められる」などと記載している
(甲第1033~第1036号証)。
   エ 以上の事実関係からして、ポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」、
「ポロクラブ」は、遅くとも平成4年ないし平成5年3月ころまでには著名性を確
立し、その著名性が現在に至るまで継続していることは明らかである。
 (3) 本件商標「PoloClubMembers」は、ポロクラブ関連商標に係る「Polo
Club」の末尾に「会員」を意味する「Members」を加えたものであり、指定商品はポ
ロクラブ関連商標と同一であるから、本件商標に接した取引者、需要者は、上記の
とおり著名なポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」を直ちに想起して、そのファ
ミリーブランドであると認識するのが一般である。著名な「PoloClub」の存在にも
かかわらず、本件決定の判断するように、取引者、需要者が本件商標中の「Polo」
の部分のみに着目してラルフ・ローレンに係る「Polo」の商標を想起するなどとい
うことはあり得ない。このことは、著名商標が併存する場合に相互に商品の出所混
同のおそれが生じないとする東京高裁平成3年10月24日判決(判例時報142
8号131頁)及びこれを維持した最高裁平成4年7月17日第二小法廷判決にも
示されているとおりである。
 (4) さらに、ポロクラブ関連商標1は昭和46年に登録出願され、昭和49年
に設定登録されているところ、これは、ラルフ・ローレンに係る「Polo」商標が我
が国で使用されるようになったという昭和52年ころに先行する。このような先行
商標と同一又は類似する商標と、これに後れて使用されるようになった商標との関
係での商標法4条1項15号の適用に際しては、商標法の先願主義との整合性か
ら、先行する商標の優位性が認められてしかるべきであり、具体的には、同号該当
性の判断においては、後れて使用されるようになった商標の著名性を厳格に認定
し、混同可能性についても狭義の混同可能性に限定するなど、厳格な解釈が行われ
るべきである。
    なお、ポロ・ビーシーエス株式会社が、「POLO」の文字からなり、指定商
品を被服等とする商標登録第2721189号商標を有していることは前述のとお
りであるところ、補助参加人は、ポロ・ビーシーエス株式会社の前主である公冠販
売株式会社から同商標の使用許諾を受けている。これは、補助参加人が、「POLO」
の商標が補助参加人に帰属するものでないことを自認していたことを示すものであ
る。
第4 被告及び補助参加人の反論
   本件決定の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
 1 取消事由1(「Polo」商標の著名性の認定の誤り)について
 (1) アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年
(昭和42年)に幅広ネクタイをデザインして注目され、1970年(昭和45
年)と1973年(昭和48年)には服飾業界で最も名誉とされる「コティ賞」を受
賞し、さらに1974年(昭和49年)、映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優
ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから同国を代表するデザ
イナーとしての地位を確立した。このころから、ラルフ・ローレンの名前は我が国
の服飾業界においても広く知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品に
は、別紙記載のとおりの、横長四角形中に記載された「Polo」の欧文字ととも
に「byRalphLauren」又は「byRALPHLAUREN」の欧文字及び馬に乗ったポロ競技の
プレーヤーの図形からなる各商標(以下「ラルフ・ローレンに係るポロ商標」とい
う。)が使用され、これらは「ポロ」、「Polo」又は「POLO」の略称で呼ばれるよう
になった。
    すなわち、ラルフ・ローレンに係るポロ商標は、我が国において、遅くと
も、本件商標の登録出願(平成7年3月22日)前までには、ラルフ・ローレンの
デザインに係る被服等を表示するものとして、「ポロ」、「Polo」又は「POLO」の略
称で、取引者、需要者の間に広く認識されるに至り、その認識の度合いは現在にお
いても継続しているものであり、これと同旨をいう本件決定の認定に誤りはない。
 (2) 原告は、「POLO」の文字からなる商標は、様々な分野で商標登録がされ、
現実に使用されていた旨主張するが、それらの商標がファッション関連商品におい
て周知又は著名となっている事実はない。また、原告は、「Polo」、「POLO」又は
「ポロ」の言葉は、衣料品の分野においては「ポロシャツ」を示す普通名称であ
り、一般的にも我が国でもよく知られているポロ競技を示す用語である旨主張する
が、本件商標の指定商品中、ポロシャツ以外のものについて
は、「Polo」、「POLO」又は「ポロ」がポロシャツを認識させることはあり得ない
し、また、ポロ競技は我が国では愛好者の極めて少ないなじみの薄いスポーツにす
ぎず、「Polo」、「POLO」又は「ポロ」がポロ競技を示す一般的な用語であるとは
いえない。
 2 取消事由2(商品の出所混同のおそれの判断の誤り)について
 (1) ラルフ・ローレンに係るポロ商標が同人のデザインに係る被服等を表示す
るものとして、「ポロ」、「Polo」又は「POLO」の略称で、取引者、需要者の間に広
く認識されるに至っていたことは上記のとおりであり、「Polo」の文字が含まれる
本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接した取引者、需要者
が「Polo」の文字部分(引用標章)に着目し、ラルフ・ローレンに係るポロ商標を
連想、想起し、商品の出所を混同するおそれが生ずることは明らかである。
    現に、株式会社博報堂による平成11年5月の「『ポロ』ブランド調査」
(乙第21号証)によれば、ラルフ・ローレンに係るポロ商標とは無関係
の「Polo」の文字を含む商標を、多くの者が、ラルフ・ローレンに係るポロ商標と
の兄弟ブランド、ファミリーブランドであると誤認している結果が示されているほ
か、本件と同様に「Polo」の文字を含む様々な商標に関して、ラルフ・ローレンに
係るポロ商標の著名性を認定した上で、商品の出所混同のおそれを肯定する裁判例
が多数に上っている。
 (2) 原告は、ポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」の著名性について主張す
るが、以下に述べるとおり、本件商標についての商品の出所混同のおそれを否定す
る根拠となるものではない。
   ア まず、本件商標の構成は「PoloClub」ではなく、「PoloClub
Members」であるところ、本件商標それ自体が周知又は著名であるとはいえないばか
りでなく、「PoloClub」自体に関しても、その著名性の立証があるとはいえない。
すなわち、原告がその著名性を立証するために提出した証拠の大部分
は、「POLOCLUB」又は「PoloClub」の文字とポロプレーヤー図形との結合商標であ
るポロクラブ関連商標4及び5、特に同5を使用したものである。そして、この商
標中のポロプレーヤー図形は、著名なラルフ・ローレンに係るポロ商標中のポロプ
レーヤー図形と構成の軌を一にするものである上、ポロクラブ関連商標5が使用さ
れるようになったのは、ラルフ・ローレンに係るポロ商標が同人に係るものとして
著名性を有するに至った以後のことであるから、その使用は、ポロクラブ関連商標
がラルフ・ローレンと何らかの関連性があるとの印象を強めることはあっても、原
告独自の商標としての著名性を基礎付けるものとはいえない。
     なお、本件補助参加人を原告、本件原告を被告とし、ポロクラブ関連商
標1~4につき商標法53条1項に基づく商標登録取消しの成否が争われた4件の
審決取消請求事件(当庁平成10年(行ケ)第108号、第111~第113号)
において、東京高裁平成11年12月21日判決は、ポロクラブ関連商標1~4と
類似する同5の使用は、著名なラルフ・ローレンに係るポロプレーヤー図形の商標
を連想させ、商品の出所について混同を生じさせるものであるとの判断を示し、こ
れらの判決は、いずれも平成13年11月13日上告不受理決定により確定した。
   イ 原告は、ポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」、「ポロクラブ」の知
名率等をその著名性の根拠として主張するが、「PoloClub」、「ポロクラブ」が、
取引者、需要者において、ラルフ・ローレンに係るポロ商標とは全く関係がないブ
ランドとして認識されているという独自の著名性を立証しない限り、本件決定の判
断の誤りを導くことはできないというべきところ、原告の上記主張に係る立証
は、「PoloClub」、「ポロクラブ」とラルフ・ローレンに係るポロ商標とが全く関
係のない、すなわち出所混同を生ずるおそれのないブランドとして知られていたこ
とまでを示すものとはいえない。
   ウ 原告は、著名商標の併存の場合には商品の出所混同のおそれは生じない
旨主張するが、著名商標が併存する場合であっても、両商標間で、一方の著名性が
他方を上回っているときや、その著名性の確立時期が前後するときには、両者の間
で商品の出所混同のおそれは生じ得るというべきである。そうすると、仮に、ポロ
クラブ関連商標の著名性が認められるとしても、本件は、まさに上記のような出所
混同のおそれの生ずる場合に該当する事例である。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(「Polo」商標の著名性の認定の誤り)について
 (1) 昭和53年7月20日株式会社講談社発行の「男の一流品大図鑑」(甲第7
号証)には、ラルフ・ローレンに係るポロ商標を掲げた「ラルフローレン」ブラン
ドの紹介として、「一九七四年の映画『華麗なるギャツビー』・・・で主演したロ
バート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのが、ポロ社の創業者であり、
アメリカのファッションデザイン界の旗手ラルフ・ローレンである」、「三〇歳に
なるかならぬかで一流デザイナーの仲間いりをはたし、わずか一〇年で、ポロ・ブ
ランドを、しかもファッションデザイン後進国アメリカのブランドを、世界に通用
させた」との記載が、昭和58年9月28日サンケイマーケティング発行の「舶来ブ
ランド事典『’84ザ・ブランド』」(乙第1号証)には、ラルフ・ローレンに係る
ポロ商標を掲げた「ポロ」ブランドの紹介として、「今や名実ともにニューヨーク
のトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレンの商標。ニュートラ
ディショナル・デザイナーの第一人者として高い評価を受け、世界中にファンが多
い」、「マークの由来 ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化し
て使っている。彼のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマ
ークとして使用しているもの」との記載が、昭和55年4月15日株式会社洋品界
発行の「月刊『アパレルファッション店』別冊1980年版『海外ファッション・ブ
ランド総覧』」(乙第2号証)には、「ポロ・バイ・ラルフローレン」について、
「若々しさと格調が微妙な調和を見せるメンズ・ウェア『ポロ』ブランドの創立
者。栄誉あるファッション賞“コティ賞”をはじめ彼の得た賞は数知れず、その実
力をレディス・ウェアにも発揮。新しい伝統をテーマに一貫しておとなの感覚が目
立つ。アメリカ・ファッション界の颯爽とした担い手」との紹介のほか、「〈販
路〉西武百貨店、全国展開〈導入企業〉西武百貨店〈発売開始〉五十一年(注、紳
士靴につき「五十二年」)」等の記載があることが認められる。
    そして、これと同趣旨の記載は、昭和54年から昭和60年までの間に発
行された雑誌である、①昭和54年5月20日株式会社講談社発行の「世界の一流品
大図鑑’79年版」(乙第7号証)、②昭和55年11月15日株式会社講談社第2
刷発行の「世界の一流品大図鑑’80年版」(乙第8号証)、③昭和55年12月婦
人画報社発行の「MENS’CLUB1980年12月号」(乙第9号証)、④昭和
57年1月10日株式会社アパレルファッション発行の「月刊アパレルファッション
2月号別冊海外ファッション・ブランド総覧」(乙第3号証)、⑤昭和59年9月2
5日ボイス情報株式会社発行の「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(乙第
4号証)及び⑥昭和60年5月25日株式会社講談社発行の「流行ブランド図鑑」
(乙第10号証)等にも認められるところである。
 (2) また、平成6年11月1日ボイス情報株式会社発行の「’95ライセンスブ
ランド&キャラクター名鑑」(甲第17号証)によれば、「ポロ・ラルフローレン」の
需要者における総合知名度が、昭和61年54.2%、昭和63年63.6%、平
成2年67.8%、平成3年79.8%、平成6年81.8%(ランキング13
位)と、平成6年の総合所有率が47.2%(ランキング2位)とされていること
が、平成8年6月24日同社発行の「ライセンスブランド&キャラクター名鑑別冊’
96ブランド&キャラクター調査」(甲第18号証)によれば、平成8年において
も、「ポロ・ラルフローレン」の需要者における総合知名度は81.6%(ランキン
グ15位)、総合所有率62.2%(ランキング1位)とされていることが認めら
れる。
 (3) さらに、ラルフ・ローレンに係るポロ商標を模倣したいわゆる偽物ブラン
ド商品に関して、平成元年5月19日付け朝日新聞夕刊(甲第12号証)には、「昨
年二月ごろから、米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の・・・『Polo』の商標
と、乗馬の人がポロ競技をしているマークをつけたポロシャツ・・・を売っていた
疑い」との記事が、平成4年9月23日付け読売新聞東京版朝刊(乙第13号証)に
は、「今年は五月に、アメリカの人気ブランド『ポロ』(本社・ニューヨーク)のロ
ゴ『ポロ・バイ・ラルフ・ローレン』に酷似したマークのTシャツを販売していた
大阪の業者が・・・」との記事が、平成5年10月13日付け読売新聞大阪版朝刊
(乙第14号証)には、「ポロ球技のマークで知られる米国のファッションブラン
ド『POLO(ポロ)』の製品に見せかけた眼鏡枠を販売・・・」との記事が、平成11
年6月8日付け朝日新聞夕刊(乙第15号証)には、「米国ブランド『ポロ』などの
マークが入った偽物セーターやポロシャツ約三万六千枚を販売目的で所持し、商標
権を侵害した」との記事が掲載されていることが認められる。
 (4) 以上の認定事実を総合すれば、ラルフ・ローレンに係るポロ商標は、アメ
リカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザイン
に係るファッション関連商品に付されるものとして、我が国においては、昭和51
~52年ころから使用されるようになったこと、そのブランドは、我が国の取引
者、需要者の間で、「PolobyRALPHLAUREN(ポロ・バイ・ラルフローレン)」、
あるいは単に「Polo(ポロ)」の略称で、ポロプレーヤー図形とともに、広く知ら
れるようになり、遅くとも昭和50年代後半までには、強い自他商品識別力及び顧
客吸引力を発揮する著名な商標となり、その著名性は、本件商標の商標登録出願時
(平成7年3月22日)以後、登録査定時(平成9年4月10日、甲第45号証)
を経て、その後に至るまで継続していたことが認められる。
 (5) 原告は、「Polo」商標の著名性を否定する根拠として、「POLO」の文字か
らなる商標が、様々な分野で商標登録がされ、現実に使用されていたこ
と、「Polo」、「POLO」又は「ポロ」の言葉は、衣料品の分野においてはポロシャ
ツを示す普通名称として、また、一般的にもポロ競技を示す用語として用いられて
いることを主張する。確かに、「Polo」、「POLO」又は「ポロ」の言葉が、スポー
ツ競技の一つであるポロ競技を示す普通名詞であることは、当裁判所に顕著であ
り、ラルフ・ローレンに係るポロ商標中に用いられている「Polo」の文字も、ポロ
競技に由来するものであることは、文字部分とともに使用されているポロプレーヤ
ー図形や前掲乙第1号証の記載から明らかであるから、このような本来的に普通名
詞に由来する「Polo」の文字の性格からして、その有する商品の出所表示機能があ
る程度減殺されていることは否めない。しかし、このことを考慮に入れても、上
記(1)~(3)の認定事実からすれば、なおラルフ・ローレンに係るポロ商標が単
に「Polo(ポロ)」とも略称されるものとして、取引者、需要者の間で広く認識さ
れていたことを優に認定することができるというべきであるし、さらに、ラルフ・
ローレンに係るポロ商標中に用いられているポロプレーヤー図形が、それ自体とし
ても、ラルフ・ローレンに係る出所識別標識として取引者、需要者に広く認識され
ていたことも明らかである。そうすると、ラルフ・ローレンに係るポロ商標につい
ては、「Polo(ポロ)」の略称及びポロプレーヤー図形をそれぞれ単独に見ても、
著名性を認められるばかりでなく、「Polo」の文字部分とポロプレーヤーの図形部
分とが結合することによって、更に強い自他商品識別力と顧客吸引力を発揮する著
名性を有するものと認めることができる。
    また、原告は、原告がポロクラブ関連商標を有し、使用していること及び
ポロ・ビーシーエス株式会社が被服等を指定商品とする「POLO」の登録商標を有
し、その商品が販売されていることを主張するが、まず、ポロクラブ関連商標の存
在及びその使用が、「Polo」商標の著名性の成立及び継続を何ら阻害するものでな
いことは、下記2の認定判断から明らかであるし、また、ポロ・ビーシーエス株式
会社の「POLO」商標については、甲第29、第30号証の各1~3、甲第31号
証、検甲第1号証の1~3等によっても、「Polo」商標の著名性の成立及び継続を
阻害するような周知、著名性を有するものであることを認めるに足りない。
 (6) 以上によれば、「Polo」商標の著名性を認めた本件決定の認定に誤りはな
く、原告の取消事由1の主張は理由がない。
 2 取消事由2(商品の出所混同のおそれの判断の誤り)について
 (1) 原告は、本件商標に係る商品の出所混同のおそれを否定する根拠として、
ポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」、「ポロクラブ」の著名性を主張するとこ
ろ、この点に関して、以下の事実が認められる。
   ア 平成5年4月株式会社矢野経済研究所発行の「マンスリーブランド マ
ーケット レポート1993年5月号」(甲第641号証)には、連載企画「有力
ブランド分析」の「ポロクラブ(PoloClub)」の紹介として、「ポロクラブは19
71年に上野衣料でスタートを切った同社のオリジナルブランドであるが・・・1
989年2月には、(株)ポロクラブジャパンが設立され、上野衣料より専用使用
権を引き、ライセンス展開も活発化し始めたのである。現在は、ライセンシーも1
3社で構成され、小売ベースで280億円の販売高を誇っている。ポロクラブは、
アメリカントラッドを一貫して追求した商品と言え、価格もミディアムベターの設
定となっている。・・・『ポロクラブ』と言う言葉の響きにトラディショナルな感
覚をストレートに消費者に訴えられることができたことが、同ブランドの成功の要
因と言えるのではないだろうか」、「ポロクラブは、広告活動を活発に行っている
のも大きな特徴である。ブランド広告と商品広告の大きく2つの広告をそれぞれの
媒体の中で上手く使い分けているのである。年間を通じて広告を出しているもの
は、新聞では、日経流通新聞、繊研新聞、メンズデイリーで、単発で日本経済新聞
といった状況である。雑誌は、メンズクラブ、ファインボーイ、ナンバー、レイ、
GQに年間を通じて広告を出している」、「市場の低迷にもかかわらず、現在も順
調に伸びているブランドと言える。小売ベースで280億円という売上規模は、ラ
イセンスブランドの中にあっても、有力デザイナーズブランドと肩を並べる規模で
ある」との記載のほか、「『ポロ・クラブ』ブランドの年商推移(小売ベース)」
として、平成元年100億円、平成2年150億円、平成3年220億円、平成4
年280億円との数字を示すグラフが、「店舗展開状況」(平成5年3月現在)と
して、「〈百貨店〉伊勢丹、丸井、他〈専門店〉三峰、銀座山形屋、ダイム、他
〈量販店〉ニチイ、ダイエー、忠実屋、イトーヨーカ堂、東武ストア、西友、他」
との表が掲載されていることが認められる。また、平成3年9月6日日之出出版株
式会社発行の「グラン・マガザン」(甲第566号証)には、「イギリスの伝統的
なスポーツ“ポロ”をイメージしたワンポイントマークが象徴的な『ポロクラ
ブ』。トラディショナルファッションの中ではメンズを中心に人気の高いブランド
ですね。この『ポロクラブ』にこの秋、レディスが誕生します」と記載されている
こと、平成5年3月日本経済新聞社発行の「’92ファッション・ブランドアンケ
ート」(甲第14号証の1)には、平成4年8月に日本経済新聞に掲載したアンケ
ート企画に応募のあった葉書を集計した結果、メンズカジュアル部門で、「『Polo
Club』が知名率(69.3%)、一流評価率(20.7%)、所有率(29.2
%)、購買意向率(11.4%)全てにおいてトップ」とされて、日経流通新聞及
び日経金融新聞の同様のアンケート結果並びに翌年及び翌々年の同様のアンケート
結果(甲第14号証の2、3、甲第15、第16号証の各1~3)においてもおお
むねこれと同様の結果が示されていること、平成10年ボイス情報株式会社発行の
「ライセンスブランド&キャラクター名鑑別冊’98ブランド&キャラクター調査」
(甲第19号証、なお、甲第17、第18、第802、第863、第1022号証
も同旨)には、「ポロ・クラブ」の総合知名率が、平成6年78.6%(「ポロ・
バイ・ラルフ・ローレン」81.8%)、平成8年80.6%(同81.6%)、
平成10年69.8%(同56.7%)、「ポロ・クラブ」の総合所有率が、平成
6年20.6%(「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」47.2%)、平成8年3
1.4%(同62.2%)、平成10年25.7%(同31.4%)と推移してい
ることが示されていること、平成10年AIPPI・JAPAN発行の「日本有名商標集」
(甲第24号証)には、ポロクラブ関連商標2、4及び5が掲載されていることが
認められ、甲第53号証の写真及び弁論の全趣旨によれば、平成5年4月ころ、ポ
ロクラブ関連商標5を付したいわゆる偽物商品が販売されていた事実が確認された
ことが認められる。
イ また、原告又はポロクラブ関連商標の専用使用権者である株式会社ポロ
クラブジャパンは、平成元年以降、本件決定当時に至るまで、ポロクラブ関連商標
に係るブランド及び同商標を付した商品の宣伝広告を活発に行っており、株式会社
婦人画報社発行の「メンズ・クラブ」(甲第36、第37、第516~第521、
第553~第558、第613~第620、第692~第703、第768~第7
79、第833~第844、第901~第912、第982~第993、第106
2~第1064号証)及び「婦人画報」(甲第34、第35、第857~第86
0、第924~第928、第1006~第1014、第1065~第1067号
証)、日之出出版株式会社発行の「ファインボーイズ」(甲第522~第524、
第559~第561、第621~第629、第704~第713、第780~第7
88号証)及び「グラン・マガザン」(甲第565~第568、第636~第64
0号証)、株式会社主婦の友社発行の「レイ」(甲第562~第564、第630
~第635、第714~第720、第789~第795、第845~第850、第
913~第917、第994~第999号証)及び「わたしの赤ちゃん」(甲第8
61、第929~第931、第1015~第1017号証)、株式会社文藝春秋発
行の「ナンバー」(甲第38~第40、第721~第724、第796~第80
1、第851~第855、第918~第923、第1000~第1005、第10
58~第1061号証)、中央公論社発行の「ジーキュージャパン」(甲第725
~第729号証)、日本経済新聞社発行の日本経済新聞、日経流通新聞及び日経金
融新聞(甲第526~第530、第572~第583、第647~第656、第7
32~第744、第803~第816、第865~第882、第933~第95
2、第1047、第1048号証)、繊研新聞社発行の繊研新聞(甲第41~甲第
43、第531~第540、第584~第600、第658~第674、第746
~第761、第817~第826、第884~第899、第969~第981、第
1050~第1057号証)、株式会社繊維経済新聞社発行の「メンズデイリー」
(甲第541~第552、第601~第612、第677~第691、第762~
第767、第827~第832、第1049号証)、朝日新聞社発行の「アサヒイ
ブニングニュース」(甲第953~第968号証)等に継続して広告を掲載するな
どしているほか、甲第501~第511号証の証明書及び甲第512~第514号
証の写真によれば、その間、ポロクラブ関連商標に係るブランドについて、活発な
テレビコマーシャル放送や駅ホーム等への広告看板の設置等を行っていたことが認
められる。
 (2) 以上の認定事実だけを見る限り、ポロクラブ関連商標に係る「Polo
Club」、「ポロクラブ」の周知性又は著名性を認定できるかのごとくであるが、被
告及び補助参加人は、ポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」、「ポロクラブ」
が、取引者、需要者において、ラルフ・ローレンに係るポロ商標とは全く関係がな
いブランドとして認識されているという独自の著名性を有するとはいえない旨主張
するので、以下、この観点から更に検討する。
   ア まず、ラルフ・ローレンに係るポロ商標の「Polo」及びポロプレーヤー
図形の著名性の獲得時期との先後関係を見るに、上記(1)の認定事実によれば、ポロ
クラブ関連商標を付した商品は、平成元年に株式会社ポロクラブジャパン等を通じ
てライセンス展開をするようになって以降、その活発な宣伝広告活動等を通じて、
急激に販売実績を拡大し、平成4~5年ころには、売上高を見る限り、有力デザイ
ナーズブランドに並ぶとされる規模に達したことが認められるが、昭和63年以前
において、ポロクラブ関連商標又はこれを付した商品について、販売実績、宣伝広
告の状況、取引者、需要者における認識の度合い等を具体的に示す的確な証拠はな
い。
     そうすると、ポロクラブ関連商標は、その少なくとも一部は、商標登録
出願日及び設定登録日において、ラルフ・ローレンに係るポロ商標の我が国での使
用開始時期(昭和51~52年)及び「Polo」商標の著名性の獲得時期(遅くとも
昭和50年代後半)に先行するものの、現実に活発な宣伝広告を行い、販売実績を
拡大したのは、これに後れる平成元年以降であるということになる。そして、ポロ
クラブ関連商標中、「PoloClub」又は「POLOCLUB」の文字とポロプレーヤーの図形
とを結合した商標であるポロクラブ関連商標4及び5に関しては、その設定登録日
はもとより、商標登録出願日(上記関連商標4につき昭和62年10月27日、同
5につき平成2年10月8日)においても、「Polo」商標の著名性の獲得時期に後
れるものである。
   イ また、原告又は株式会社ポロクラブジャパンが、ポロクラブ関連商標又
はこれを付した商品の宣伝広告を活発に行っていたことは、上記(1)イのとおりであ
るが、その広告等の内容を逐一見ると、その大部分において使用されているの
は、「PoloClub」の文字とポロプレーヤー図形とを結合したポロクラブ関連商標5
であることが認められ、文字商標のみが使用されている広告は、ポロクラブ関連商
標2に係る前掲甲第678、第679、第682~第685、第687、第76
1、第817号証など、ごくわずかでしかない。また、雑誌や業界新聞等に取り上
げられた「ポロクラブ」に関する記事中で、同ブランドの代表的な商標として掲げ
られているのは、いずれもポロクラブ関連商標5であることが認められ(前掲甲第
14~第16号証の各1~3、甲第526、第527、第680、第686、第6
88、第762、第802、第869~872号証等)、ポロクラブ関連商標中、
そのブランドを代表する定番というべき商標がポロクラブ関連商標5であると目さ
れていたことは明らかである。
     そして、上記のとおり大部分の広告等で使用され、代表的な商標と目さ
れていたポロクラブ関連商標5中に用いられているポロプレーヤーの図形と、ラル
フ・ローレンに係るポロ商標中に用いられているポロプレーヤーの図形とを比較す
ると、マレットを振り上げたポロプレーヤーを、疾走する馬とともに正面側やや斜
め方向から描いたものとして基本的な構成態様が共通しており、人馬の向き、ポロ
プレーヤーの姿勢、マレットの角度等においてわずかな差異は認められるものの、
上記各図形を全体として見た場合に、両者は酷似しているというほかない。さら
に、ポロクラブ関連商標5を、文字部分を含めて全体として見ても、中央に大きく
上記ポロプレーヤー図形が最も目立つ態様で表示され、その左右に配されてい
る「Polo」と「Club」のうち、「Polo」の部分は、ラルフ・ローレンに係る著名
な「Polo」と同一である。他方、ラルフ・ローレンに係るポロ商標におい
て、「Polo(ポロ)」の文字部分とポロプレーヤーの図形部分とが結合することに
よって強力な自他商品識別力と顧客吸引力を発揮する著名性を有することは前示の
とおりであるところ、ポロクラブ関連商標5は、「Polo」の文字とポロプレーヤー
図形とを結合するという特徴においても、ラルフ・ローレンに係るポロ商標と酷似
しているというべきである。
     加えて、ラルフ・ローレンに係るポロ商標のブランドも、ポロクラブ関
連商標に係るブランドも、単にファッション関連商品を取り扱うという点で共通す
るにとどまらず、いずれもメンズを主力として、いわゆるトラディショナルファッ
ションを志向するものであって、そのような商品性をアピールするために、英国上
流階級のスポーツであるポロ競技のイメージを前面に押し出しているという営業戦
略においても軌を一にすることは、上記の認定事実から明らかである。
   ウ 次に、原告又は株式会社ポロクラブジャパンによる上記の各広告等にお
いて、ポロクラブ関連商標に係る商品の出所である原告又はその使用権者を示す記
載は、全くないか、あっても、ごく小さな文字で「POLOCLUBJAPANCO.,LTD.」な
どと付記されている程度のものが多数である。なお、「○○ジャパン」というライ
センシーの名称は、一般に海外ブランドを我が国でライセンス展開する場合に、い
わゆる国内マスターライセンシーに多用されるものである(甲第569、第862
号証等)上、「JAPAN」は地名を、「CO.,LTD.」は法人の種別を表示するものであっ
て、商品識別力を有しない記述的部分であるから、上記の表示についても、ラル
フ・ローレンに係る「Polo」ブランドとは異なる国内ブランドであることを積極的
に示すものとはいい難い。また、平成12年以降の広告等の中には、「ポロクラブ
は、上野衣料株式会社の登録商標です」との記載が見られる(甲第34~第44、
第1047~第1067号証等)ものの、それ以前の広告等にこのような記載はな
く、せいぜい取引者を読者とすると考えられる繊研新聞等において、「この商標は
ポロクラブ製品のトレードマークです」という表示がされているものが若干存在す
る(甲第745、第749、第750、第823~826、第889、第898号
証等)程度である上、それとても、ポロクラブ関連商標を本格的にライセンス展開
するようになった当初のものではなく、平成6年以降に見られるにすぎない。
   エ さらに、「PoloClub」、「ポロクラブ」の高い知名率が示されたという
前記(1)アの各種の調査についても、その前提として調査対象者に示されたのは、ポ
ロクラブ関連商標5であることがうかがわれること(前掲甲第14~第16号証の
各1~3、甲第802号証参照)からすると、その図形部分と酷似する著名なラル
フ・ローレンに係るポロプレーヤー図形との誤認混同が疑われるものであって、ラ
ルフ・ローレンに係るポロ商標とは別個のブランドとして、「PoloClub」、「ポロ
クラブ」が一般需要者に認識されていたと即断することはできないものというべき
である。
     この点について、被告及び補助参加人の援用する「『ポロ』ブランド調
査」(乙第21号証)を見ると、同調査は、補助参加人の依頼により株式会社博報
堂が平成11年4月に首都圏の10~40歳代の「ファッションに興味・関心のあ
る」男女計280名を対象に実施した調査の結果であるところ、これによれば、ポ
ロクラブ関連商標5について、「見たことがある」者が75.0%、「見たことが
あるような気がする」者が19.6%、以上合計94.6%との結果が得られたに
もかかわらず、これと「ポロ・ラルフローレン」ブランド(ラルフ・ローレンに係
るポロ商標の図形部分を提示)との関連性について、「兄弟ブランド・ファミリー
ブランドだと思う」者が68.2%に達し、両者が無関係であることを以前から知
っていた者は23.6%にとどまること、両者の商品を購入したことがある者(サ
ンプル数82)に限って見ても、両者が無関係であることを初めて知った者が8
6.6%を占めることが示されている。また、両者が関連のないブランドであるこ
とを明かした上での印象の変化は、「ポロ・ラルフローレン」の印象が変わった者
が18.2%、「ポロ・クラブ」の印象が変わった者が23.9%という結果が示
されており、その印象の変化の内容(自由回答)については、前者については一
流、高級ブランドというイメージが強くなったなどの肯定的な内容が多いのに対
し、後者については「ポロ・ラルフローレン」の真似をしているなどの否定的な内
容が多いことが認められる。なお、株式会社博報堂が、マーケティング調査等の経
験豊富な我が国を代表する広告代理店の一つであることは当裁判所に顕著であり、
同号証の記載内容に照らして、特に誘導的な質問等が行われたことをうかがわせる
事情も見当たらない。また、上記調査の時点は、本件商標の登録査定時より2年後
であるが、この間に調査対象事項に関する格別の事情の変更があったことをうかが
わせるに足りる証拠はない。
 (3) 上記(1)、(2)の認定判断を総合すると、まず、ラルフ・ローレンに係るポ
ロ商標及びそのブランドが、我が国においては、昭和51~52年ころから使用さ
れるようになり、「PolobyRALPHLAUREN(ポロ・バイ・ラルフローレン)」、あ
るいは単に「Polo(ポロ)」の略称で、ポロプレーヤー図形とともに、取引者、需
要者の間で広く知られるようになり、遅くとも昭和50年代後半までには強い自他
商品識別力及び顧客吸引力を発揮する著名な商標となったこと、その後、原告又は
その専用使用権者である株式会社ポロクラブジャパンにおいて、ポロクラブ関連商
標、とりわけ「PoloClub」の文字とポロプレーヤーの図形の結合商標であって、ラ
ルフ・ローレンに係るポロ商標と図形部分の酷似するポロクラブ関連商標5を使用
して、平成元年以降、活発な宣伝広告を行う中で、その販売実績を急速に拡大した
こと、その間、原告又は株式会社ポロクラブジャパンは、主としてトラディショナ
ルファッションを志向して、ポロ競技のイメージを前面に出すという、ラルフ・ロ
ーレンに係るポロ商標のブランドと同様の営業戦略を展開する一方、ポロクラブ関
連商標5に係る商品の出所表示を必ずしも十分明確にしない態様での宣伝広告を続
けたこと、その結果、ポロクラブ関連商標5は、それ自体としては、一般需要者の
間でも高い知名度を示すに至ったが、その多くは、ラルフ・ローレンに係るポロ商
標のブランドの「兄弟ブランド・ファミリーブランド」であると誤認していたこ
と、すなわち、ポロクラブ関連商標5を付した商品は、ラルフ・ローレンに係るポ
ロ商標を付した商品と同一の営業主体の業務に係る商品、又はその親子会社や系列
会社等の緊密な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループ
に属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤認していたこと、以上の事
実を認めることができる。
    そうすると、ポロクラブ関連商標に係る「PoloClub」、「ポロクラブ」の
ブランドに関する一般需要者の認識の相当部分は、ポロクラブ関連商標5とラル
フ・ローレンに係るポロ商標との誤認、混同を通じて形成されてきたものと推認す
るのが相当であり、このことを考慮すれば、ポロクラブ関連商標5を中心とするポ
ロクラブ関連商標が、ラルフ・ローレンに係るポロ商標とは無関係の原告又はその
ライセンシーに係る商品の出所を表示する標識として、少なくとも一般需要者間に
広く知られるに至ったと認めることはできないといわざるを得ない。
    なお、原告又は株式会社ポロクラブジャパンにおいて、平成12年以降、
「ポロクラブは、上野衣料株式会社の登録商標です」との表示を積極的に行うよう
になったことは前示のとおりであるが、本件において、商品の出所混同のおそれの
判断の基準時は、本件商標の商標登録出願時(平成7年3月22日)及び登録査定
時(平成9年4月10日)であるから、上記広告の影響を参酌することはできな
い。
 (4) 以上の認定判断を前提に、本件商標に係る商品の出所混同のおそれの有無
について判断する。
   ア 本件商標は「PoloClubMembers」との欧文字からなり、ポロクラブ関連
商標に係る「PoloClub」の末尾に「団体を構成する人」(広辞苑第4版)を意味す
る「Members」を付加した構成であって、指定商品はポロクラブ関連商標のそれを包
含するものであるが、「PoloClubMembers」それ自体として周知又は著名であるこ
とを認めるに足りる証拠がないばかりでなく、「PoloClub」がラルフ・ローレンに
係るポロ商標とは無関係の原告又はそのライセンシーに係る商品の出所識別標識と
して周知又は著名であるといえないことは上記のとおりである。そうする
と、「PoloClub」が著名であることを前提として、本件商標について商品の出所混
同のおそれの生じないことをいう原告の主張は、その前提を欠くものとして採用す
ることができない。
     他方、ラルフ・ローレンに係るポロ商標が、同人のデザインに係るファ
ッション関連商品に付されるものとして、遅くとも昭和50年代後半までに
は、「Polo(ポロ)」とも略称され強い自他商品識別力及び顧客吸引力を発揮する
著名な商標となり、「Polo」商標の著名性が、本件商標の商標登録出願時はもとよ
り、登録査定時を経て、その後に至るまで継続していたことは前示のとおりであ
る。
     そして、ファッションに興味や関心のある者を対象とする調査におい
て、ポロクラブ関連商標5とラルフ・ローレンに係るポロ商標の図形部分に係る
「ポロ・ラルフローレン」ブランドとが無関係であることを知らずに、それぞれの
商品を購入している者が相当数に上っているとの上記調査結果からもうかがわれる
ように、ファッション関連の企業は複数のブランドを展開している例が少なくな
く、一般需要者の多くも、そのことを認識しており、また、個々の商品の出所につ
いて正確な知識をもとに十分な吟味をすることなく短時間のうちに購入商品を決定
する場合もまれではないことは、当裁判所に顕著である。
     そうすると、本件商標をファッション関連商品であるその指定商品に使
用した場合、上記の取引の実情に照らすと、取引者、需要者において、著名なラル
フ・ローレンに係るポロ商標の略称である「Polo」の文字部分(引用標章)に着目
し、ラルフ・ローレンに係るポロ商標を想起して、その商品がラルフ・ローレンに
係るポロ商標のブランドと同一の営業主体の業務に係る商品、又はその親子会社や
系列会社等の緊密な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグル
ープに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されその出所につい
て混同を生ずるおそれがあるというべきであり(最高裁平成12年7月11日第三
小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)、このことは、本件商標の登録出願
時においても、登録査定時においても異なるところはない。
   イ 原告は、先行商標と同一又は類似する商標と、これに後れて使用される
ようになった商標との関係での商標法4条1項15号の適用に際しては、商標法の
先願主義との整合性から、先行する商標の優位性が認められ、後れて使用されるよ
うになった商標の著名性を厳格に認定し、混同可能性についても狭義の混同可能性
に限定すべきである旨主張する。しかし、先行商標が後れて使用されるようになっ
た商標に比肩すべき著名性を獲得していれば格別、本件において、ポロクラブ関連
商標のうち、ラルフ・ローレンに係るポロ商標の我が国での使用開始時期及び著名
性の獲得時期に先立って出願及び登録がされたものについてそのような著名性を認
めることができないことは前示のとおりであるし、商標法の先願主義(8条)があ
るからといって、著名性を欠く先行商標と同一又は類似する商標に優位性を認め、
著名な後行商標との関係で出所混同のおそれを狭義の混同可能性に限定すべき根拠
を見いだすことはできないから、原告の上記主張は採用することができない。
     また、原告は、補助参加人において、ポロ・ビーシーエス株式会社の前
主である公冠販売株式会社から「POLO」商標の使用許諾を受けているから、補助参
加人が、「POLO」の商標が補助参加人に帰属するものでないことを自認していた旨
主張するが、ラルフ・ローレンに係るポロ商標が補助参加人の業務に係る商品を表
示するものとして著名であった以上、補助参加人が何らかの事情で上記使用許諾を
受けたとしても、本件商標に係る商品の出所混同のおそれの有無に関する上記判断
を何ら左右するものとはいえない。
   ウ したがって、上記アと同旨をいう本件決定の判断に誤りはなく、原告の
取消事由2の主張は理由がない。
 3 以上のとおり、原告主張の本件決定取消事由は理由がなく、他に本件決定を
取り消すべき瑕疵は見当たらない。
   よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担に
つき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 長  沢  幸  男
    裁判官 宮  坂  昌  利
(別紙)
ポロクラブ関連商標ラルフ・ローレンに係るポロ商標

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職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛