弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小川長昌の上告理由第一点について。
 論旨は、原判決には本願考案の要旨を誤認し、旧実用新案法一条の適用を誤った
違法がある、というが、原判決が本願考案の要旨を上告人主張のとおりに認定して
いることは、判文上明らかであり、また、原判決が本願考案と審決摘示にかかる刊
行物に記載された考案とを比較して、枠体と裏蓋板との固着手段につき、前者が枠
体の内周にネジ山を設け、かつ裏蓋の外周にこれに対応するネジ山を設けて、これ
ら二つのものを螺合して一体としているのに対し、後者が枠体と裏蓋板と接着剤で
接着している点において、構造および作用効果を異にしていると認定したうえで、
一般に二つのものを一体に固着する手段として、螺合、溶着、接着、かしめ止め等
の方法が従来より用いられていることは、極めて周知のところであり、従って、二
つのものを一体に固着するに当り、これら周知の方法のいずれかが必要に応じて随
時、随所に採用され得ることは技術上の常識であるというべきであり、また、右作
用効果の相違も、固着方法の異なることから当然生ずる程度にとどまるものである
から、本願考案は旧実用新案法三条二号に該当し、同法一条の規定する登録要件を
具備しないものであるとした判断は正当であって、所論の違法はない。よって、論
旨は、採用できない(なお上告人は先願たる本件と類似の後願の考案が、出願公告
されたのにかかわらず、本願考案を拒否するのは違法であると主張するが、本願考
案が前示説示のとおり、登録要件を具備しない以上、この点の上告人の主張も採用
に値しない)。
 同第二点について。
 論旨は、原判決には旧実用新案法二六条によって準用される旧特許法七二条の適
用を誤つた違法がある、というが、旧実用新案法二六条によって実用新案の抗告審
判に準用される旧特許法七二条の規定によれば、「審査官ハ出願ヲ拒絶スヘキモノ
ト認メタルトキハ出願人ニ対シ拒絶ノ理由ヲ示シ期間ヲ指定シテ之ニ意見書提出ノ
機会ヲ与」えなければならないこととなっているところ、この場合の「拒絶ノ理由」
とは、原拒絶査定で示されなかった新たな拒絶理由の謂であると解すべきである。
しかるに、本件審決がその理由中で所論公報を引用したのは、右にいう新たな拒絶
理由を掲げたものでないことは、原判決の認定するところである。それ故、原判決
には所論の違法がないから、論旨は、理由なきに帰し、採用できない。
 よって、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    長   部   謹   吾

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