弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中上告人敗訴の部分を破棄する。
     前項の部分につき被上告人の控訴を棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人山田弘之助、同山田隆子の上告理由第一及び第二について
 所論は、本件協定の有効期間に関する原判決の解釈には、経験則違背ないしは理
由不備の違法があるというものである。原審の確定したところによれば、(1)上告
人はオートバイ等の製造販売業者であり、被上告人は輸出入業者であるが、昭和三
九年七月三一日頃右当事者間において上告人の製品カワサキオートバイB8型等の
タイ国向け輸出に関し、本件協定を締結し、英文の協定書(甲第一号証の一)を作
成したこと、(2)本件協定前における上告人の製品のタイ国内における販売実績は
比較的少なく、右協定はその販路拡充を意図するものであつたこと、(3)本件協定
の締結当時、被上告人はその資本、信用が比較的弱体であり、かつ、タイ国内の機
構も貧弱で、独立の事務所や専任駐在員もなく、テレツクス(加入電信)の設備も
ない状態であり、このような事情は上告人も知つていたこと、(4)被上告人の販売
能力や市場の将来性など不確定な要素があるため、本件協定による取引は、試験的
なものとして行われたこと、(5)被上告人は本件協定に基づき所定の期間に前記オ
ートバイ八〇〇台をタイ国D社向けに輸出したこと、(6)D社から上告人に対し被
上告人のタイ国内における機構、施設が貧弱なうえ、資金の援助も受けられないの
で、被上告人を介する取引を希望しない旨の申入れがあり、被上告人が取引代金の
支払を遅延することがあつたこと、(7)上告人は、昭和四〇年三月頃被上告人から
本件協定更新の申出を受けたがこれを拒絶し、同年八月一日以降被上告人に右製品
の輸出を取り扱わせなかつたこと、以上の事実が認められるというのである。
 原判決は、右事実関係のもとで、本件協定書第一条により、上告人は被上告人に
対し試験的に一年間カワサキオートバイB8型をタイ国D社向けに輸出させること
にし、被上告人が右一年間に六〇〇台を超す輸出成績を挙げることを条件として被
上告人を右製品の指定輸出業者とする旨を約定したものであり、同協定書第三条は、
第一条所定の試験期間とその更新について定め、被上告人が同条の条件を満足しな
かつた場合には、当事者の一方から試験期間の延長を申し入れ、被上告人が同条の
条件を満足した場合にも、上告人から試験期間の延長を申し入れることが、それぞ
れ可能な趣旨であると解し、被上告人が第一条所定の期間内に六〇〇台を超す成績
を挙げた以上、被上告人は指定輸出業者たる地位を取得したものであるとして、そ
の請求を一部認容した。
 おもうに、法律行為の解釈にあたつては、当事者の目的、当該法律行為をするに
至つた事情、慣習及び取引の通念などを斟酌しながら合理的にその意味を明らかに
すべきものである。これを本件についてみると、一般的に、輸出貿易の市場関係が、
他の同業者による介入、輸入業者の倒産その他の輸出先の販路の事故など市場関係
を急激に変化させる要因が極めて多く、変遷し易いものであることは、原審の確定
するところであるから、このような事情をも合せて考察すると、前記事実関係のも
とでは、本件協定による取引は、タイ国内における被上告人の販売能力や市場性に
つき不確定な要素があるため、試験的に行われたものであつて、本件協定書第一条
により、上告人は、被上告人が同条の製品を年に六〇〇台タイ国D社向けに発注す
ることを前提として被上告人をその輸出業者とする旨を約し、さらに、同第三条に
おいて、本件協定に基づく取引期間を一九六四年(昭和三九年)八月一日から一九
六五年七月三一日までの一年間とし、必要に応じて満了の三か月前に当事者双方の
協議によりこれを延長(更新)することができる旨を表明したものであり、その趣
旨とするところは、本件協定は、更新されない限り一九六五年七月三一日の経過と
ともに失効し、当事者の一方が右協議を申し入れても、相手方がこれに応ずる義務
はないものと解するのが相当である。けだし、これを原判決のように解するのは、
本件協定書の明文に反するのみならず、被上告人は同第一条のオートバイ六〇〇台
を第三条所定の一年間に輸出することにより当然に指定輸出業者たる地位を取得し、
その後は期間の制限なくその地位を保持しうることとなり、本件協定による取引を
試験的なものとした当事者の意思にも反する結果となるからである。
 そうすると、上告人が被上告人の更新申入れを拒絶したことは前記のとおりであ
るから、本件協定は一九六五年七月三一日の経過によつて終了したことになるので、
上告人が被上告人に対し同年八月一日以降右約定による製品の供給をしなくても、
そのことが、被上告人主張のように、債務不履行ないし不法行為となる筋合はなく、
この理は、被上告人が所定の六〇〇台以上を輸出したことによつて異なるものでは
ない。したがつて、被上告人の本訴第一次請求及び予備的請求は、その余の点につ
いて判断するまでもなくいずれも失当としてこれを棄却すべきであり、右と異なる
判断のもとに、被上告人の第一次請求を一部認容した原判決には、法律行為の解釈
を誤つた違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、そ
の余の点についてふれるまでもなく論旨は理由があり、原判決中上告人の敗訴部分
は破棄を免れない。
 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い裁判
官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛