弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人鍜治利一、同小谷勇雄ならびに同瀬戸藤太郎の各上告趣意書は末尾に添え
た別紙記載の通りである。
 (一) 鍜治、小谷両弁護人の論旨第一点 原判決は第一審相被告人Aに対する
司法警察官の聴取書およびB作成の盗難被害始末書を証拠としたが、この証拠につ
いては被告人に反対訊問の機会がなかつたのであつて、被告人の請求がなければか
ような反対訊問を経ない書類を採つて断罪の証拠となし得るものとした刑訴応急措
置法第一二条第一項は憲法違反であり、この規定に従つた原判決も違憲の裁判であ
る、というのである。しかし、刑訴応急措置法第一二条第一項が違憲の法律でない
ことは、当裁判所大法廷の判例とするところであつて(昭和二三年(れ)第二九四
号同年七月二九日判決)、論旨は理由がない。
 (二) 同論旨第二点は、原判決は右Aは第一審公判廷においては問題の自動車
を買い受けてこれを被告人Cに売却した旨を陳述しており、自身自動車を盗んだと
いう警察署における供述とはちがつているからそういう場合には、右の供述者を直
接に公判廷において訊問しなければ、審理不尽の違法があり、従つて憲法第三一条
に反する、というのである。しかしこういう場合にいずれの供述を採るかは、原審
の判断に属するところであり、また必ずしもその供述者を公判期日に訊問するを要
するものではない。なおかりにそれが違法としても、刑事訴訟上の手続違反を以て
直ちに憲法第三一条違反と言い得ないことについては、当裁判所大法廷の判例があ
るのであつて(昭和二三年(れ)第一八八号同年七月八日判決)、論旨はいずれの
点から見ても理由がない。
 (三) 同論旨第三点は、被告人がAから買受けた行為は、Aの故買行為とは全
く別箇の関係に属する売買行為で、故買ではない、と主張する。しかし贓物故買罪
は、問題の物品が贓物たる性質を有する間に贓物を知りつつこれを買うことによつ
て成立するのであつて、売主が盗取者から直接に買つたということは要件でないの
であるから、論旨の言うごとくAが盗取者でなくて故買者に過ぎないとしても被告
人について故買者が成立することを妨げず、論旨は上告の理由にならない。
 (四) 瀬戸弁護人の上告論旨(第一点と記号してあるが、第二点以下なし)は、
原審の裁判手続は刑訴応急措置法によつて行われたが、その根拠たる新刑事訴訟法
施行法第二条は憲法第一四条に違反するというのである。すなわち、原判決には量
刑不当があるが、新刑事訴訟法施行法第二条があるため新刑訴法第四一一条によつ
てそれを上告理由にすることができないのは、憲法第一四条平等待遇の保障に反す
る、という議論である。しかし刑事訴訟法施行法第二条の規定が憲法違反でないこ
とについては、既に当裁判所大法廷の判例があるのであつて(昭和二三年(れ)第
一五七七号同年五月一八日判決)、論旨は理由がない。
 (五) なお職権を以て調査するに、刑法第二五六条第二項(贓物故買罪)の罰
金は、昭和二四年二月一日施行の罰金等臨時措置法第三条によつて五万円以下とい
うことになつたのであるが、刑法第六条によつてなお従前の規定に従い、罰金千円
以下を以て処罰せらるべきものである。そこで昭和二四年二月一二日言渡の原判決
は前記両法条を適用法条中に列挙しなければならないのに、それが書かれていない。
しかし原判決の量刑から見て、原審は従前の規定に従つて適法に量刑したものと見
られ得る。
 よつて旧刑事訴訟法第四四六条および最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項
に従い、主文の通り判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二四年一〇月一一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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