弁護士法人ITJ法律事務所

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平成30年5月18日宣告
平成29年(わ)第1425号航空法違反被告事件
主文
被告会社を罰金150万円に,被告人を懲役1年に,それぞれ処す
る。
被告人に対し,この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予す
る。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社は,東京都調布市a町b番cに本店を置き,航空機の整備,修理及び改
造業等を営むもの,被告人は,平成22年3月23日から被告会社の代表取締役と
して被告会社の業務全般を統括する者であるが,被告人は,飛行機の事業用操縦士
及び自家用操縦士の資格についての航空従事者技能証明を受けているAと共謀の上,
国土交通大臣の許可を受けないで,被告会社の業務に関し,別表〔省略〕記載のと
おり,平成25年1月1日から平成27年7月26日までの間,4回にわたり,旅
客であるBほか14名の需要に応じ,別表運賃欄記載の運賃を受け取り又はその支
払いを受ける約束をして,Aが操縦する飛行機にBらを乗せ,東京都調布市a町b
番c所在のC飛行場ほか5か所から離陸し,大阪府八尾市d丁目e番地所在のD空
港ほか6か所まで飛行して運送し,もって無許可で航空運送事業を経営した。
(法令の適用)
1罰条
被告会社につき航空法155条1号,100条1項,159条2号
被告人につき刑法60条,航空法155条1号,100条1項,159条
2号
2刑種の選択
被告人につき懲役刑を選択
3刑の執行猶予
被告人につき刑法25条1項
(量刑の理由)
1被告会社は,判示のとおり,約2年7か月の間に4回にわたって無許可で旅
客の運送を行い,その対価として250万円余りの運賃を現に受け取っている。ま
た,被告会社は,航空機に関連する事業を営んでいながら,航空法の規律を適切に
理解することなく本件に及んだものである。のみならず,被告会社は,本件犯行に
先立ち,複数回にわたってC飛行場管理事務所及び国土交通省東京航空局から航空
法違反の疑いで行政調査,指導を受けており,航空法の規律を適切に調査,理解す
る機会は十分にあった。それにもかかわらず,適法な業務体制を整えることなく本
件犯行に及んだものである。安全確保を最大の目的とする航空法の趣旨をないがし
ろにしたものとして,厳しい非難を免れない。
他方,本件運送行為の回数や頻度に加えて,各運送行為はいずれも旅客側からの
要請に基づくものであり,被告会社が積極的に旅客を誘い込んだものとまで認める
ことはできないことなどの事情をも考慮すると,本件が,同種事犯の中で最も悪質
な部類に属するものとまではいいがたい。
そこで,被告会社に対しては,主文の罰金刑を科すのが相当と判断した。
2被告人は,本件犯行当時の被告会社の代表取締役であり,被告会社の事業に
関する最高責任者であったといえる。被告人は,不特定多数の者から客を募る営業
でないことなどから本件犯行が航空運送事業に該当しないと誤信していたと述べる
が,その根拠は薄弱というほかない。航空法の重要な規制に関する調査を怠り,前
記の誤信を解消しないまま本件犯行に及んだ点自体,厳しく非難すべきである。加
えて,被告人は代表取締役就任以前,前記行政調査の対応に関わってもいたという
のであるから,法軽視の姿勢は著しいといわねばならない。被告人については,一
定期間の懲役刑を免れない。
他方,本件運送行為の回数や頻度,そして,前記のとおり旅客側からの要請をき
っかけとする本件の経緯に加え,交通事故によるものを除いて前科,前歴が見当た
らないことなどの事情をも考慮すると,被告人を直ちに実刑に処するのが相当とま
ではいえない。
そこで,これらの事情に加え,被告人が本件犯行について事実関係を認め,反省
の弁を述べていること等,被告人に有利な事情をできるかぎり考慮し,被告人に対
しては,その刑期を主文のとおりとした上,その刑の執行を猶予するのが相当と判
断した。
(求刑被告会社につき罰金150万円,被告人につき懲役1年)
平成30年5月18日
東京地方裁判所立川支部刑事第1部
裁判長裁判官川本清巌
裁判官廣瀬裕亮
裁判官若林貴子

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